(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
B63H 20/00 20060101AFI20220928BHJP
B63H 20/32 20060101ALI20220928BHJP
F02B 67/00 20060101ALI20220928BHJP
F01M 11/03 20060101ALI20220928BHJP
F02D 11/10 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B63H20/00 100
B63H20/00 510
B63H20/32 510
F02B67/00 R
F02B67/00 E
F01M11/03 E
F01M11/03 H
F02D11/10 A
(21)【出願番号】P 2018150364
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】奥西 大樹
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-298093(JP,A)
【文献】特開平6-129223(JP,A)
【文献】特開平10-8936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 20/32,20/20,20/00,
F02B 67/00,
F01M 11/03,
F02D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンホルダと、該エンジンホルダの上部にエンジンブロックが装着されるエンジンと、該エンジンに対して船外機幅方向の一方側に装着されるエンジン用のオイルフィルタと、シフト操作を担うシフトロッドをリンク機構を介して作動させるシフト用の電動アクチュエータと、前記エンジン側を覆うアッパ
エンジンカバーと前記エンジンホルダ側を覆うロアエンジンカバーとを有するエンジンカバーと、を備える船外機において、
前記船外機の使用時の姿勢で、
前記オイルフィルタは、装着部側が前記船外機幅方向の内側で且つ先端部側が前記船外機幅方向の外側となる装着姿勢にて前記装着部側が前記先端部側よりも低くなるように傾斜して配置され、
前記アッパエンジンカバーと前記ロアエンジンカバーとのカバー合せ位置が、傾斜して配置された前記オイルフィルタの先端部の上部よりも低い位置であって前記オイルフィルタの前記装着部の下部よりも高い位置に設定され、
前記電動アクチュエータは、前記エンジンブロックの下部に装着されるとともに、前記エンジンの幅方向にて前記オイルフィルタの最も外側端の位置よりも前記エンジンの中心寄りの位置に装着されていることを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記エンジンは、前記オイルフィルタの上方に位置するように設けられたインテークマニホールドと、前記オイルフィルタが装着された側とは前記船外機の幅方向中心線に対して反対側に設けられたサイレンサボックスと、前記インテークマニホールドと前記サイレンサボックスとの間にスロットルボディが前記電動アクチュエータに隣接して設けられている請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記電動アクチュエータは、当該船外機の前後方向において、前記サイレンサボックスまたは前記スロットルボディの前端部よりも後方側に配置されている請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記電動アクチュエータの軸線は略水平に配置されるとともにその軸線の高さは前記カバー合せ位置の高さと略同一の高さに設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の船外機。
【請求項5】
前記リンク機構は、複数の揺動アームと複数のリンクとが連動するように構成されており、これら複数の揺動アームと複数のリンクとは、前記エンジンホルダよりも上方の位置にて上下方向に重ねられて配置されている請求項1~4のいずれか一項に記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを搭載するとともに電動アクチュエータを作動させてシフト操作を行う船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の船外機として、例えば特許文献1が開示されている。
同文献に記載されるように、この種の船外機は、エンジンホルダの上部に4サイクルエンジンが搭載される。エンジンおよびエンジンホルダの周囲は、エンジンカバーによって覆われている。エンジンカバーは、エンジン側を覆うアッパエンジンカバーと、エンジンホルダ側を覆うロアエンジンカバーと、を有する。
特に、同文献記載の技術では、シフト操作を行うための電動アクチュエータがエンジンホルダの上部に配置されている(例えば同文献の段落0027参照)。また、この種の船外機では、エンジンオイルの循環機構に介装されるオイルフィルタが構造上必須の部品であるところ、同文献記載の技術において、オイルフィルタの装着姿勢は、円筒状軸線を水平とする姿勢でエンジンに装着されている(例えば同文献の
図9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の船外機において、船外機の幅を狭くして船外機を小型化することは重要な課題である。特に、大型で高出力の船外機は、船に複数の船外機を装着(所謂、多機掛け)して運転することが多く、船外機の幅を狭くすることは、実用上、重要なポイントである。また、アッパエンジンカバーの剛性を確保して騒音を低減するとともに、エンジンカバーの着脱作業性を向上させることも重要な課題である。
つまり、エンジンカバーが大型化(例えば、前後長さ約80cm×幅約50cm程度で、一人で着脱作業を行うには周囲全体が見えにくく、手が届きにくい箇所が発生する程度の大きさ)した場合、エンジンカバーの剛性(特に、側面が平面状になり易いアッパエンジンカバー)が十分でないと、運転中にエンジンカバーが振動して騒音の原因になりうるという問題がある。
【0005】
また、アッパエンジンカバーが大型化すれば、その剛性が確保されていない場合には、手で持った際に変形し易くなるので、ロアエンジンカバーからの着脱作業が行い難くなるという問題がある。エンジンカバーの剛性は、一般に、肉厚を増加すれば向上させることができるものの、その肉厚の増加に応じてエンジンカバーの重量が増すことになり、大型で重いエンジンカバーはメンテナンス時の作業性が低下するという問題がある。
【0006】
ところで、船外機幅方向の一側に配置されるオイルフィルタは、その先端部の位置が船外機の幅(一側方向)を決める箇所になりやすい。一方、メンテナンス時の作業性を考慮すると、オイルフィルタは船外機の側部に配置することが望ましい。
さらに、オイルフィルタの着脱方向に関して、エンジンカバーとの干渉を考慮した着脱作業のし易さを考える上では、アッパエンジンカバーとロアエンジンカバーとの合せ位置に対しても配慮が必要である。
【0007】
また、電動アクチュエータのメンテナンス時、工具とロアエンジンカバーとの干渉防止を考慮した場合、アッパエンジンカバーとロアエンジンカバーとのカバー合わせ位置を低くすることが望ましい。しかし、単にカバー合わせ位置を低くすれば、その分だけアッパエンジンカバー自身の高さが高くなる。そのため、アッパエンジンカバーが高さのある大柄なものになり、軽量化しつつ必要な剛性を確保することが難しくなる。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものである。すなわち、エンジンを搭載し、電動アクチュエータを作動させてシフト操作を行う船外機において、船外機の幅を狭くして船外機を小型化するとともに、アッパエンジンカバーの剛性を確保しつつ軽量化させ得る船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本発明の一態様に係る船外機は、エンジンホルダと、該エンジンホルダの上部にエンジンブロックが装着されるエンジンと、該エンジンに対して船外機幅方向の一方側に装着されるエンジン用のオイルフィルタと、シフト操作を担うシフトロッドをリンク機構を介して作動させるシフト用の電動アクチュエータと、前記エンジンおよび前記エンジンホルダの部分を覆うエンジンカバーと、を備える。
そして、本発明の一態様に係る船外機では、当該船外機の使用時の姿勢において、前記オイルフィルタは、その装着部側が船外機幅方向の内側で且つ先端部側が船外機幅方向の外側となる装着姿勢にて装着部の側が低くなるように傾斜配置される。
【0009】
また、前記エンジンカバーは、前記エンジン側を覆うアッパエンジンカバーと、前記エンジンホルダ側を覆うロアエンジンカバーと、を有する。そして、前記アッパエンジンカバーと前記ロアエンジンカバーとのカバー合せ位置が、前記傾斜配置されたオイルフィルタの先端部の上部よりも低い位置であって前記装着部の下部よりも高い位置に設定される。
さらに、前記電動アクチュエータは、前記エンジンブロックの下部に装着されるとともに、前記エンジンの幅方向において前記オイルフィルタの最も外側端の位置よりもエンジンの中心寄りの位置に装着される。
【発明の効果】
【0010】
上述のように、本発明によれば、船外機の幅を狭くして船外機を小型化するとともに、アッパエンジンカバーの剛性を確保しつつ軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一態様に係る船外機の一実施形態を説明する模式的右側面図である。
【
図2】
図1のエンジン部分とオイルフィルタおよび電動アクチュエータの配置部分の近傍を拡大して示す要部説明図である。
【
図8】エンジンホルダとの接合面部分で破断しエンジンブロックを裏面側から見た図である。
【
図9】オイルフィルタおよび電動アクチュエータの配置部分を説明する要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることがあることに留意すべきである。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、この船外機1には、船舶S側にブラケット装置30が取り付けられ、ブラケット装置30を介して船外機1が船舶SのトランサムTに装着される。なお、本実施形態の船外機1において、船舶S側を前方、同図手前側を右側とし、上下方向については、船外機1がチルトダウンした使用時の姿勢(同図の状態)を基準に呼称する。以下、当該船外機1の使用時の姿勢における各部配置について詳しく説明する。
【0014】
この船外機1は、同図に示すように、機体上下方向の略中央部にエンジンホルダ3を有する。エンジンホルダ3の下方には、潤滑オイルを貯留するオイルパン4が配置されている。エンジンホルダ3の上部にはエンジン10が設置されている。このエンジン10は4サイクルエンジンである。本実施形態のエンジン10は、水冷4サイクル4気筒エンジンであり、その内部にクランクシャフト11が縦(上下方向)に配設され、シリンダヘッド14が横置き(前後方向)に配置されている。
【0015】
エンジン10、エンジンホルダ3およびオイルパン4の周囲は、エンジンカバー40によって覆われる。エンジンカバー40は、エンジン10の下半分を側方から覆うロアエンジンカバー42と、ロアエンジンカバー42の上方から覆って、エンジン10の上半分を覆うアッパエンジンカバー41とを有する。本実施形態のロアエンジンカバー42は、エンジンホルダ3に固定され、アッパエンジンカバー41はロアエンジンカバー42に着脱自在に取り付けられる。
【0016】
オイルパン4の周囲およびその下部には、ドライブシャフトハウジング5が設置される。エンジンホルダ3、オイルパン4およびドライブシャフトハウジング5内にはエンジン10の出力軸であるドライブシャフト6が略垂直に配置される。
ドライブシャフトハウジング5の下部に設けられたギヤケース7内には、クラッチ機構8が軸線を水平とした姿勢で配設される。ドライブシャフト6は、ドライブシャフトハウジング5内を下方に向かって延び、クラッチ機構8、プロペラシャフト9等を介してプロペラ2を駆動するように構成される。
【0017】
クラッチ機構8には、前方側の端部の位置にシフトロッド58が接続される。ブラケット装置30に備えられたスイベルブラケット32には、ステアリング軸31が鉛直方向に且つ回動自在に軸支される。ステアリング軸31は中空に形成され、その内部にクラッチロッド55が挿通される。クラッチロッド55は、電動アクチュエータ50の駆動に応じて回転するように構成されている。
クラッチロッド55はエンジン10近傍から下方に延びて、ドライブシャフトハウジング5とギヤケース7との接合部付近でシフトロッド58と連結されている。シフトロッド58は、クラッチロッド55の回転により動作してクラッチドッグ56を軸方向に駆動し、これにより、プロペラシャフト9を正転または逆転させるシフト切り換えが可能になっている。
【0018】
図2、
図3および
図4に要部を拡大図示するように、エンジン10の前方には、吸気マニホールド22およびサージタンク23が設けられる。サージタンク23の上流側にはサイレンサボックス24が接続される。エンジン10の右側には、前方から右側面を覆うようにインテークマニホールド25が設けられ、これらにより吸気系が構成される。
エンジン10は、エンジンホルダ3の上部にシリンダブロック13が装着される。船外機1の使用時の姿勢において、クランクケース12が前部に配置され、クランクケース12の後方にシリンダブロック13が配置される。クランクケース12とシリンダブロック13の合面にクランクシャフト11(
図1参照)が軸支されている。
【0019】
シリンダブロック13にシリンダヘッド14が設けられ、シリンダヘッド14の後部にシリンダヘッドカバー15が被装される。ここで、本実施形態の構成において、クランクケース12、シリンダブロック13およびシリンダヘッド14を含む部材が「エンジンブロック」に対応する。
クランクシャフト11(
図1参照)の上方には、不図示のマグネト装置を覆うフライホイールマグネトカバー16が装着される。クランクケース12の前方側に不図示のスタータモータおよび電装ボックスが配設される。船舶Sにはシフト操作やスロットル操作を行うためのリモコンボックスが設けられ、操船者の操作に応じてリモコンボックスから操作信号が電装ボックスに出力される。
【0020】
この船外機1は、エンジン10に対して船外機1幅方向の一方側にオイルフィルタ60装着されている。本実施形態では、シリンダブロック13の右側面下部の略中央にオイルフィルタ60が配設される。
ここで、本実施形態のオイルフィルタ60は、船外機1の使用時の姿勢において、オイルフィルタ60の装着姿勢は、その装着部60s側が船外機幅方向の内側で、先端部側が船外機幅方向の外側とされる。そして、船外機1の幅方向にて装着部60s側が先端部側より低くなるように傾斜配置されている。
つまり、オイルフィルタ60の先端は、船外機1の斜め上方に向けて装着され、斜め上方からシリンダブロック13に着脱可能に取り付けられる。そして、本実施形態では、オイルフィルタ60の先端が、船外機1のやや前方側に向けた状態で設置されている。
【0021】
また、本実施形態のオイルフィルタ60は、インテークマニホールド25の下方に配置される。オイルフィルタ60とエンジン10との合わせ面(つまり、オイルフィルタ60の装着部60sの装着面)の位置は、船外機1幅方向において、インテークマニホールド25の側端面よりも船外機1の幅方向の中心線CL寄りの位置とされている。
さらに、アッパエンジンカバー41とロアエンジンカバー42とのカバー合せ位置Mは、傾斜配置されたオイルフィルタ60の先端部の上部よりも低い位置で、装着部60sの下部よりも高い位置に設定されている。本実施形態では、アッパエンジンカバー41とロアエンジンカバー42とのカバー合わせ位置Mの高さは、傾斜姿勢で装着されているオイルフィルタ60の装着部60sの上部近傍の高さとされている。
【0022】
なお、本実施例でのアッパエンジンカバー41は一体構造を前提としている。しかしながら、例えば、アッパエンジンカバー41を上下に2分割して組み立て、エンジンカバー40における合わせ位置が上記Mの高さの他に、更にもう一ヶ所存在するようなアッパエンジンカバー41とする構造等も考えられる。また、その他にも様々なカバー合わせ位置としたエンジンカバー40の構造が考えられる。
ところで、本願発明では、上記Mの高さ位置にエンジンカバー40の合わせ位置が存在することを重要事項としている。このため、エンジンカバー40において、Mの高さの位置にカバーの合わせが存在し、更に他の位置にもカバーの合わせ位置が存在するような構造としたエンジンカバー40についても、本願発明の対象になり得る。
【0023】
図2および
図3に示すように、エンジン10の前方右側方に、シフト機構を作動させるための電動アクチュエータ50が配置される。本実施形態では、電動アクチュエータ50は、アッパエンジンカバー41とロアエンジンカバー42とのカバー合せ位置Mの近傍において、ケーブル類をロアエンジンカバー42に挿通するためのリギングポート(不図示)に近接して配置される。電動アクチュエータ50からクラッチ機構8にかけての機構がシフト装置を構成する。
【0024】
図8、
図9に示すように、電動アクチュエータ50は、シリンダブロック13の下部に取り付けられている。本実施形態の電動アクチュエータ50は、ギヤ機構が内蔵されたアクチュエータ本体部51と、アクチュエータ本体部51の後部に設けられた円筒状をなすモータ部52と、を有する。アクチュエータ本体部51の中心部には、下部から下方に駆動軸51dが突出しており、この駆動軸51dが、シフト操作のためのリンク機構54に接続されている。
【0025】
電動アクチュエータ50は、円筒状をなすモータ部52の長手方向を略水平な姿勢とし、モータ部52の軸線を船外機1の前後方向に向けてシリンダブロック13にシフトベース53を介して取り付けられる。なお、本実施形態のように、電動アクチュエータ50は、シフトベース53を介して装着してもよいし、電動アクチュエータ50をシリンダブロック13に直接装着してもよい。いずれの場合も、電動アクチュエータ50がエンジンホルダ3に取り付かない構造なので、エンジンホルダ3の小型化が可能になる。
【0026】
特に、本実施形態の電動アクチュエータ50は、オイルフィルタ60に隣接配置されるとともに、電動アクチュエータ50の配置位置を、船外機1の幅方向においてオイルフィルタ60の先端位置よりも船外機1の幅方向の中心線CL寄りに位置させている。
つまり、正面視において、幅方向では、電動アクチュエータ50の最も外側端の部分が、オイルフィルタ60の最も外側端の部分よりも外側に張り出さない位置に配置される。シフト操作のためのリンク機構54は、
図7に示すように、複数の揺動アームと複数のリンクとが連動するように、エンジンホルダ3の上方にて、船外機1の上下方向に重ねて配置されている。
【0027】
本実施形態のリンク機構54では、
図8および
図9に示すように、上記駆動軸51dに第一揺動アーム54aが連結される。そして、以下順に、第一リンク54b、第二揺動アーム54c、連結縦軸54d、第三揺動アーム54e、第二リンク54fおよび第四揺動アーム54gに連結され、第四揺動アーム54gがクラッチロッド55に連結されている。これにより、駆動軸51dに出力される電動アクチュエータ50の作動力を、リンク機構54を介してクラッチロッド55からシフトロッド58に伝達可能になっている。
【0028】
特に、本実施形態では、
図4に示すように、電動アクチュエータ50に対し、サイレンサボックス24は、船外機1の幅方向の中心線CLに対して他方の側に配置されている。そして、サイレンサボックス24とインテークマニホールド25との間の位置にスロットルボディ26が配置され、このスロットルボディ26に隣接して電動アクチュエータ50が配置されている。この配置において、電動アクチュエータ50は、サイレンサボックス24およびスロットルボディ26よりも、船外機1の前後方向での前側には張り出さないように配置される。
【0029】
次に、本実施形態の船外機1の作用・効果について説明する。
上述したように、本実施形態の船外機1では、当該船外機1の使用時の姿勢において、オイルフィルタ60の装着姿勢が、船外機1の幅方向にて装着部60sがオイルフィルタ60の先端部分よりも低くなるように傾斜配置されている。このため、オイルフィルタ60を船外機1の幅方向に水平姿勢で配置した場合に比べて、船外機1をその幅方向において小型化できる。
これにより、本実施形態の船外機1によれば、アッパエンジンカバー41の大型化を抑制できる。そのため、軽量・小型化による効果によって、側面が平面状になり易いアッパエンジンカバー41からの騒音を低減可能となり、また、着脱作業性も向上する。
【0030】
さらに、本実施形態の船外機1では、アッパエンジンカバー41とロアエンジンカバー42との合せ位置Mを、傾斜配置されているオイルフィルタ60の先端部の上部よりも低い位置で、装着部60sの下部よりも高い位置に設定している。
そのため、本実施形態の船外機1によれば、オイルフィルタ60のメンテナンス時の、エンジンカバー40との干渉を防止できる。そして、アッパエンジンカバー41とロアエンジンカバー42との合せ位置Mを可及的に低くして、アッパエンジンカバー41を軽量化する構成として優れている。
【0031】
また、本実施形態の船外機1によれば、電動アクチュエータ50がエンジンブロックを構成するシリンダブロック13の下部に装着されている。このため、電動アクチュエータ50がエンジンホルダ3に装着されている構成に比べて、電動アクチュエータ50の取り付け部分が不要となり、エンジンホルダ3を一層小型化できる。また、電動アクチュエータ50とエンジンホルダ3との間に隙間を確保し易くなるので、被水したとしても排水性がよくなるという優れた作用効果を奏する。
【0032】
特に、本実施形態の船外機1によれば、電動アクチュエータ50が、エンジン10の幅方向においてオイルフィルタ60の先端部の上部よりも船外機1の幅方向中心線CL寄り(エンジンの中心寄り)の位置に装着されているので、船外機1幅方向の寸法を狭くして小型化する上で好適である。
また、本実施形態の船外機1によれば、カバー合せ位置Mに対し、オイルフィルタ60の先端部の上部とほぼ同じ高さに電動アクチュエータ50が配置されているので、オイルフィルタ60および電動アクチュエータ50の整備性を確保し易いという優れた作用効果を奏する。
【0033】
本実施形態の船外機1の吸気系配置に対して、電動アクチュエータ50が、当該船外機1の前後方向において、サイレンサボックス24またはスロットルボディ26の前端部よりも後方側に配置されている。このため、船外機1の前後方向においても無駄なくコンパクト化され、船外機1を小型化する上で優れたレイアウトである。
また、本実施形態の船外機1によれば、電動アクチュエータ50を構成する円筒状のモータ部52の軸線は、略水平に配置されるとともにその軸線の高さがカバー合せ位置Mの高さと略同一の高さに設けられているので、船外機1の上下方向においても配置姿勢が無駄なくコンパクト化される。そのため、船外機1を小型化する上で優れたレイアウトであるとともに、電動アクチュエータ50に対する作業性を良くして、メンテナンス性を向上させる上で優れている。
【0034】
また、本実施形態の船外機1によれば、シフト操作のためのリンク機構54は、複数の揺動アームおよびリンク54a~54gが連動するように構成され、これら複数の揺動アームと複数のリンクとは、エンジンホルダ3よりも上方の位置にて上下方向に重ねられて配置される。このため、船外機1の上下・左右方向において無駄なくコンパクト化されるため、船外機1を小型化する上で極めて優れたリンク配置になっている。
以上説明したように、本実施形態の船外機1によれば、船外機幅方向の寸法を狭くして船外機の小型化が可能となり、船への多機掛けをし易くなる。なお、本発明に係る船外機1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 船外機
2 プロペラ
3 エンジンホルダ
4 オイルパン
5 ドライブシャフトハウジング
6 ドライブシャフト
7 ギヤケース
8 クラッチ機構
9 プロペラシャフト
10 (4サイクル)エンジン
11 クランクシャフト
12 クランクケース(エンジンブロック)
13 シリンダブロック(エンジンブロック)
14 シリンダヘッド(エンジンブロック)
15 シリンダヘッドカバー
16 フライホイールマグネトカバー
22 吸気マニホールド
23 サージタンク
24 サイレンサボックス
25 インテークマニホールド
26 スロットルボディ
30 ブラケット装置
31 ステアリング軸
32 スイベルブラケット
40 エンジンカバー
41 アッパエンジンカバー
42 ロアエンジンカバー
50 電動アクチュエータ
51 アクチュエータ本体部
52 モータ部
53 シフトベース
54 リンク機構
54a~54g 複数の揺動アーム、リンク
55 クラッチロッド
56 クラッチドッグ
58 シフトロッド
60 オイルフィルタ
M カバー合せ位置
S 船舶
T トランサム
CL 幅方向の中心線