(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】試料注入装置および試料注入システム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/04 20060101AFI20220928BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20220928BHJP
G01N 30/12 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01N30/04 F
G01N30/26 E
G01N30/12 A
(21)【出願番号】P 2018188515
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】福島 大貴
(72)【発明者】
【氏名】キング グレゴリー
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-042253(JP,A)
【文献】特開2017-075963(JP,A)
【文献】特開2014-002099(JP,A)
【文献】特開平04-366743(JP,A)
【文献】特開平06-102262(JP,A)
【文献】実開平04-036460(JP,U)
【文献】米国特許第07178414(US,B1)
【文献】特開2006-258732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0220037(US,A1)
【文献】国際公開第2005/036122(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
G01N 35/10-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を注入するためのシリンジと、
前記シリンジを洗浄するための複数種類の洗浄溶媒が配置される被配置部と、を備え、
複数種類の前記洗浄溶媒による前記シリンジの洗浄順序を設定可能に構成され
、第1の洗浄溶媒と第2の洗浄溶媒とを含む複数の洗浄溶媒で前記シリンジを洗浄する場合において、前記第1の洗浄溶媒による洗浄の後に前記第2の洗浄溶媒による洗浄を行う場合と、前記第2の洗浄溶媒による洗浄の後に前記第1の洗浄溶媒による洗浄を行う場合とのいずれの場合も設定可能である、試料注入装置。
【請求項2】
前記シリンジによる前記試料の注入前の前記洗浄順序、および、前記シリンジによる前記試料の注入後の前記洗浄順序を個別に設定可能に構成されている、請求項1に記載の試料注入装置。
【請求項3】
ユーザにより指定された前記洗浄順序が、前記洗浄順序として設定されるように構成されている、請求項1または2に記載の試料注入装置。
【請求項4】
前記試料の物性値に応じて、前記洗浄順序が設定されるように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の試料注入装置。
【請求項5】
前記試料の極性に応じて、複数種類の前記洗浄溶媒が極性順になるように、前記洗浄順序が設定されるように構成されている、請求項4に記載の試料注入装置。
【請求項6】
予め記録されている、前記試料または前記洗浄溶媒の候補である候補物質の物性値を示す候補物質情報に基づいて、前記試料または前記洗浄溶媒の物性値が取得されるように構成されている、請求項4または5に記載の試料注入装置。
【請求項7】
前記試料の物性値に応じて、前記洗浄溶媒による前記シリンジの洗浄回数が設定されるように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の試料注入装置。
【請求項8】
前記試料の粘性が大きくなるのに応じて、回数が大きくなるように前記洗浄回数が設定されるように構成されている、請求項7に記載の試料注入装置。
【請求項9】
前記被配置部には、同一種類の前記洗浄溶媒が複数配置されており、
前記洗浄溶媒を使い切った場合、使い切った前記洗浄溶媒と同一種類の新たな前記洗浄溶媒を使うように、使用する前記洗浄溶媒を切り替える制御を行う制御部をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の試料注入装置。
【請求項10】
設定装置と、
試料を注入するためのシリンジと、前記シリンジを洗浄するための複数種類の洗浄溶媒が配置される被配置部と、を含む試料注入装置と、を備え、
前記試料注入装置は、前記設定装置により、複数種類の前記洗浄溶媒による前記シリンジの洗浄順序を設定可能に構成され
、第1の洗浄溶媒と第2の洗浄溶媒とを含む複数の洗浄溶媒で前記シリンジを洗浄する場合において、前記第1の洗浄溶媒による洗浄の後に前記第2の洗浄溶媒による洗浄を行う場合と、前記第2の洗浄溶媒による洗浄の後に前記第1の洗浄溶媒による洗浄を行う場合とのいずれの場合も設定可能である、試料注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料注入装置および試料注入システムに関し、特に、洗浄溶媒によりシリンジを洗浄する試料注入装置および試料注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄溶媒によりシリンジを洗浄する試料注入装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ガスクロマトグラフ用の試料注入装置が開示されている。この試料注入装置は、分析装置であるガスクロマトグラフ装置に取り付けられており、ガスクロマトグラフ装置に分析対象である試料を注入するためのマイクロシリンジを備えている。また、この試料注入装置では、マイクロシリンジを清浄に保つために、試料の注入の前後において洗浄溶媒によるマイクロシリンジの洗浄が行われる。この際、マイクロシリンジにより洗浄溶媒を吸入させて放出させることにより、洗浄溶媒によるマイクロシリンジの洗浄が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載されるような従来の試料注入装置では、水や有機溶媒などの複数種類の洗浄溶媒によりマイクロシリンジの洗浄が行われる場合がある。また、このような従来の試料注入装置では、複数種類の洗浄溶媒によるマイクロシリンジの洗浄順序が固定されており、ユーザは固定された洗浄順序でしか複数種類の洗浄溶媒によるマイクロシリンジの洗浄を行うことができなかった。ここで、鋭意検討した結果、単に洗浄順序を変更するだけで、複数種類の洗浄溶媒によるマイクロシリンジの洗浄効果を高めることができる場合もあるため、本願発明者は、洗浄の設定の自由度を向上させることにより、複数種類の洗浄溶媒によるマイクロシリンジの洗浄効果を高める必要があるという課題があることを新たに発見した。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、洗浄順序の設定の自由度を向上させることにより、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を高めることが可能な試料注入装置および試料注入システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における試料注入装置は、試料を注入するためのシリンジと、シリンジを洗浄するための複数種類の洗浄溶媒が配置される被配置部と、を備え、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄順序を設定可能に構成され、第1の洗浄溶媒と第2の洗浄溶媒とを含む複数の洗浄溶媒でシリンジを洗浄する場合において、第1の洗浄溶媒による洗浄の後に第2の洗浄溶媒による洗浄を行う場合と、第2の洗浄溶媒による洗浄の後に第1の洗浄溶媒による洗浄を行う場合とのいずれの場合も設定可能である。
【0008】
この発明の第1の局面による試料注入装置では、上記のように構成することにより、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄順序が固定されている場合と異なり、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄順序を変更することができるので、洗浄順序の設定の自由度を向上させることができる。その結果、たとえば、使用回数が少ないために清浄度が高い洗浄溶媒が、試料の注入の直前のシリンジの洗浄を行うように、洗浄順序を変更することができる。この場合、清浄度が高い洗浄溶媒により試料の注入の直前のシリンジの洗浄を行うことにより、前の試料が今回の試料に混入すること(いわゆるキャリーオーバ)を効果的に低減することができるので、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を高めることができる。また、たとえば、複数種類の洗浄溶媒が極性順になるように、洗浄順序を変更することができる。この場合、極性が近い物質同士が互いに溶けやすいことを利用して、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を高めることができる。これらのように、洗浄順序の設定の自由度を向上させることにより、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を高めることが可能な試料注入装置を提供することができる。
【0009】
上記第1の局面による試料注入装置において、好ましくは、シリンジによる試料の注入前の洗浄順序、および、シリンジによる試料の注入後の洗浄順序を個別に設定可能に構成されている。このように構成すれば、シリンジによる試料の注入前後において、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄順序を個別に変更することができるので、洗浄順序の設定の自由度をより向上させることができる。その結果、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果をより高めることができる。
【0010】
上記第1の局面による試料注入装置において、好ましくは、ユーザにより指定された洗浄順序が、洗浄順序として設定されるように構成されている。このように構成すれば、ユーザが所望する洗浄順序を、洗浄順序として設定することができる。その結果、ユーザが試料や洗浄溶媒の物性に適した洗浄順序を設定することができるので、試料や洗浄溶媒の物性に応じて複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を確実に高めることができる。
【0011】
上記第1の局面による試料注入装置において、好ましくは、試料の物性値に応じて、洗浄順序が設定されるように構成されている。このように構成すれば、試料の物性に適した洗浄順序を自動的に設定することができるので、洗浄順序を設定するためのユーザの手間を省くことができる。また、試料の物性に詳しくないユーザであっても、試料の物性に適した洗浄順序が自動的に設定されるので、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を容易に高めることができる。
【0012】
この場合、好ましくは、試料の極性に応じて、複数種類の洗浄溶媒が極性順になるように、洗浄順序が設定されるように構成されている。このように構成すれば、極性が近い物質同士が互いに溶けやすいことを利用して、洗浄効果が高い洗浄順序を簡単かつ確実に設定することができる。
【0013】
上記試料の物性値に応じて洗浄順序が設定される構成において、好ましくは、予め記録されている、試料または洗浄溶媒の候補である候補物質の物性値を示す候補物質情報に基づいて、試料または洗浄溶媒の物性値が取得されるように構成されている。このように構成すれば、予め記録されている候補物質情報の候補物質の中にユーザが使用する試料または洗浄溶媒がある場合、ユーザは候補物質情報の候補物質から使用する試料または洗浄溶媒を選択するだけで、試料または洗浄溶媒の物性値を取得させることができる。この場合、ユーザは試料または洗浄溶媒の物性値を入力する作業を行う必要がないので、試料または洗浄溶媒の物性値を入力する作業を行うためのユーザの手間を省くことができる。
【0014】
上記第1の局面による試料注入装置において、好ましくは、試料の物性値に応じて、洗浄溶媒によるシリンジの洗浄回数が設定されるように構成されている。このように構成すれば、試料の物性に適した洗浄回数を自動的に設定することができるので、洗浄回数を設定するためのユーザの手間を省くことができる。また、試料の物性に詳しくないユーザであっても、試料の物性に適した洗浄回数が自動的に設定されるので、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を容易に高めることができる。
【0015】
この場合、好ましくは、試料の粘性が大きくなるのに応じて、回数が大きくなるように洗浄回数が設定されるように構成されている。このように構成すれば、試料の粘性が大きい程シリンジへの試料の付着量が多くなるため、洗浄回数が多くなることを考慮して、洗浄効果が高い洗浄回数を簡単かつ確実に設定することができる。
【0016】
上記第1の局面による試料注入装置において、好ましくは、被配置部には、同一種類の洗浄溶媒が複数配置されており、洗浄溶媒を使い切った場合、使い切った洗浄溶媒と同一種類の新たな洗浄溶媒を使うように、使用する洗浄溶媒を切り替える制御を行う制御部をさらに備える。ここで、洗浄溶媒を使用する際に、シリンジで洗浄溶媒が収容されたバイアルのセプタム(蓋)に穴を開けるため、洗浄溶媒は使用中に揮発する。このため、同一種類の複数の洗浄溶媒を並行して使用する場合、並行して使用中の複数の洗浄溶媒の全部において溶媒の揮発が生じる。この場合、洗浄溶媒の揮発量が多くなるという不都合がある。そこで、上記のように構成すれば、ある洗浄溶媒を使い切ってから、使い切った洗浄溶媒と同一種類の新たな洗浄溶媒を使用することができるので、同一種類の複数の洗浄溶媒を並行して使用する場合と異なり、未使用の洗浄溶媒については使用を開始するまで溶媒が揮発することを抑制することができる。その結果、洗浄溶媒の揮発量を低減することができるので、同一種類の複数の洗浄溶媒が用意されている場合に、同一種類の洗浄溶媒を効率的に使用することができる。
【0017】
この発明の第2の局面における試料注入システムは、設定装置と、試料を注入するためのシリンジと、シリンジを洗浄するための複数種類の洗浄溶媒が配置される被配置部と、を含む試料注入装置と、を備え、試料注入装置は、設定装置により、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄順序を設定可能に構成され、第1の洗浄溶媒と第2の洗浄溶媒とを含む複数の洗浄溶媒で前記シリンジを洗浄する場合において、第1の洗浄溶媒による洗浄の後に第2の洗浄溶媒による洗浄を行う場合と、第2の洗浄溶媒による洗浄の後に第1の洗浄溶媒による洗浄を行う場合とのいずれの場合も設定可能である。
【0018】
この発明の第2の局面による試料注入システムでは、上記のように構成することにより、上記第1の局面による試料注入装置と同様に、洗浄順序の設定の自由度を向上させることにより、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を高めることが可能な試料注入システムを提供することができる
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、洗浄順序の設定の自由度を向上させることにより、複数種類の洗浄溶媒によるシリンジの洗浄効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による試料注入システムを示した模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による試料注入装置を示したブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による設定装置を示したブロック図である。
【
図4】(A)は、本発明の一実施形態による設定装置の設定画面を示した図であり、(B)は、本発明の一実施形態による設定装置の設定画面における洗浄溶媒の種類の選択を説明するための図である。
【
図5】(A)は、本発明の一実施形態による試料注入装置における試料の極性が小さい場合の洗浄溶媒の洗浄順序の設定を説明するための図であり、(B)は、本発明の一実施形態による試料注入装置における試料の極性が大きい場合の洗浄溶媒の洗浄順序の設定を説明するための図である。
【
図6】(A)は、本発明の一実施形態による試料注入装置における試料の粘性が小さい場合の洗浄溶媒の洗浄回数の設定を説明するための図であり、(B)は、本発明の一実施形態による試料注入装置における試料の粘性が大きい場合の洗浄溶媒の洗浄回数の設定を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態による設定装置の候補物質情報を説明するための図である。
【
図8】(A)は、本発明の一実施形態による試料注入装置における洗浄溶媒を使用中の状態を示した図であり、(B)は、本発明の一実施形態による試料注入装置における洗浄溶媒を使い切った状態を示した図であり、(C)は、本発明の一実施形態による試料注入装置における使用する洗浄溶媒を新たな洗浄溶媒に切り替えた状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態による試料注入システム100の構成について説明する。
【0023】
(試料注入システムの構成)
図1に示すように、試料注入システム100は、試料注入装置10と、設定装置20とを備えている。試料注入装置10は、分析装置であるクロマトグラフ装置200の試料導入部210に、分析対象である試料S1(液体試料)を注入するための装置である。試料注入装置10は、クロマトグラフ装置200に取り付けられている。設定装置20は、ユーザが試料注入装置10の設定を行うための装置である。設定装置20は、たとえば、試料注入装置10の設定用のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータである。
【0024】
試料注入装置10と設定装置20とは、有線または無線により、互いに通信可能に接続されている。設定装置20は、ユーザの操作に基づいて生成された設定情報A1を試料注入装置10に送信する。試料注入装置10は、設定装置20から受信した設定情報A1に基づいて試料S1の注入に関する動作を行う。
【0025】
試料注入装置10は、試料S1を吸入して注入するためのシリンジ11を備えている。シリンジ11は、ニードル11aと、筒部11bと、プランジャ11cとを含んでいる。ニードル11aは、中空の針であり、筒部11bの先端部に設けられている。筒部11bは、ニードル11aを介して吸引された試料S1を内部に収容して保持するように構成されている。プランジャ11cは、ピストンであり、筒部11bの内部に往復移動可能に挿入されている。シリンジ11は、プランジャ11cを吸入方向に移動させることにより、ニードル11aを介して試料S1を筒部11bの内部に吸入するように構成されている。また、シリンジ11は、プランジャ11cを吸入方向とは反対方向である吐出方向に移動させることにより、ニードル11aを介して試料S1を筒部11bの内部から吐出するように構成されている。これにより、シリンジ11は、試料S1をクロマトグラフ装置200の試料導入部210に注入するように構成されている。また、シリンジ11は、移動機構(図示せず)により上下方向に移動可能に構成されている。また、シリンジ11は、上下方向だけでなく、水平方向にも移動可能に構成されていてもよい。
【0026】
また、試料注入装置10は、試料S1を配置するための被配置部12を備えている。被配置部12は、複数の試料S1を配置可能な配置台である。試料S1は、ガラス製の容器であるバイアル30に収容された状態で、被配置部12に配置される。また、被配置部12には、水やメタノール、ヘキサンなどの、シリンジ11を洗浄するための洗浄溶媒S2が配置される。被配置部12には、複数種類の洗浄溶媒S2が配置されたり、同一種類の複数の洗浄溶媒S2が配置されたりされる。洗浄溶媒S2は、バイアル30に収容された状態で、被配置部12に配置される。被配置部12は、たとえば、試料S1や洗浄溶媒S2の吸入を行うためのテーブルである。また、たとえば、被配置部12は、試料S1や洗浄溶媒S2の吸入を行うためのテーブルに供給される試料S1や洗浄溶媒S2の待機用のテーブルである。
【0027】
洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄は、シリンジ11を清浄に保つために、試料S1の注入前または試料S1の注入後のうちの少なくとも一方において行われる。具体的には、シリンジ11により洗浄溶媒S2を吸入させて吐出させることにより、洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄が行われる。これにより、シリンジ11のニードル11aや筒部11bの内部を洗浄溶媒S2により洗浄することができるので、前の分析に用いられた試料S1が次の分析に用いられる試料S1に混入することを抑制可能である。
【0028】
また、
図2に示すように、試料注入装置10は、記憶部13と、制御部14とを備えている。記憶部13は、たとえばフラッシュメモリを含む記憶媒体であり、情報を記憶するように構成されている。記憶部13には、設定装置20から受信した設定情報A1が記憶される。制御部14は、CPUなどのプロセッサ、メモリなどを含んでおり、記憶部13に記憶された設定情報A1に基づいて、試料注入装置10の動作を制御するように構成されている。
【0029】
図3に示すように、設定装置20は、操作部21と、表示部22と、記憶部23と、制御部24とを備えている。操作部21は、たとえばマウスやキーボードであり、ユーザが設定装置20による試料注入装置10の設定操作などの操作を行うために設けられている。表示部22は、たとえば液晶モニタであり、試料注入装置10の設定を行うための設定画面などの情報を表示するように構成されている。記憶部23は、たとえばフラッシュメモリを含む記憶媒体であり、情報を記憶するように構成されている。記憶部23には、試料S1または洗浄溶媒S2の候補である候補物質に関する候補物質情報A2が予め記憶されている。なお、候補物質情報A2の詳細は、後述する。制御部24は、CPUなどのプロセッサ、メモリなどを含んでおり、設定装置20の動作を制御するように構成されている。
【0030】
(洗浄の設定に関する構成)
図4(A)に示すように、設定装置20は、試料注入装置10における洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄に関する設定を行うことが可能に構成されている。設定装置20の制御部24は、試料注入装置10における洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄に関する設定を行う場合、設定画面40を表示部22に表示する制御を行う。設定画面40は、洗浄溶媒S2の洗浄順序を設定するための情報、洗浄を行う洗浄溶媒S2の種類を設定するための情報、洗浄溶媒S2の洗浄液量を設定するための情報、洗浄溶媒S2の洗浄回数を設定するための情報、および、洗浄溶媒S2の残量を示す情報を含んでいる。また、設定装置20の制御部24は、操作部21を用いた、試料注入装置10における洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄に関する設定操作を受け付ける。
【0031】
ここで、本実施形態では、試料注入装置10は、設定装置20により、シリンジ11の洗浄を行う洗浄溶媒S2の種類、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄順序、複数種類の洗浄溶媒S2の各々の洗浄液量、および、複数種類の洗浄溶媒S2の各々の洗浄回数を設定可能に構成されている。試料注入装置10の制御部14は、設定装置20において設定された、洗浄溶媒S2、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数により、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄を行うように、試料注入装置10を動作させるように構成されている。
【0032】
また、本実施形態では、試料注入装置10は、試料S1の注入前後において、洗浄溶媒S2、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数を個別に設定可能に構成されている。また、試料注入装置10は、洗浄溶媒S2、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数をユーザにより手動で設定可能に構成されている。試料注入装置10は、設定装置20の操作部21を用いてユーザにより指定された、洗浄溶媒S2、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数が、それぞれ洗浄溶媒S2、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数として設定されるように構成されている。
【0033】
たとえば、まず、ユーザは、設定装置20の操作部21を用いて、試料S1の注入前の洗浄順序の1番目について、シリンジ11の洗浄を行う洗浄溶媒S2を指定する。この際、
図4(B)に示すように、ユーザは、設定画面40に表示された候補物質の中から、シリンジ11の洗浄を行う洗浄溶媒S2を選択して指定する。設定装置20の記憶部23には、代表的な試料S1または洗浄溶媒S2に関する情報が候補物質情報A2として予め記憶されている。なお、候補物質の中にシリンジ11の洗浄を行う洗浄溶媒S2がない場合、ユーザが候補物質の中にない洗浄溶媒S2について入力して設定装置20に登録してもよい。そして、ユーザは、設定装置20の操作部21を用いて、指定した洗浄溶媒S2について、洗浄液量および洗浄回数をそれぞれ入力して指定する。ユーザは、これらの操作を、シリンジ11の洗浄を行う洗浄溶媒S2の各々について行う。この結果、試料S1の注入の前後における、洗浄溶媒S2、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数がそれぞれユーザにより指定される。
【0034】
なお、洗浄溶媒S2の種類を示す情報は、被配置部12における実際の洗浄溶媒S2の位置を示す位置情報と対応付けられている。このため、試料注入装置10は、洗浄溶媒S2の種類に基づいて、被配置部12における実際の洗浄溶媒S2の位置を取得可能である。この結果、試料注入装置10は、設定上の洗浄溶媒S2の種類や洗浄順序を変えるだけで、実際に用いられる洗浄溶媒S2の種類や、実際に実行される洗浄順序を変更可能に構成されている。これにより、ユーザが被配置部12における洗浄溶媒S2の位置を変更する必要がないので、ユーザの手間を省くことが可能である。
【0035】
また、
図5(A)(B)に示すように、試料注入装置10は、洗浄順序を自動で設定可能に構成されている。試料注入装置10は、試料S1の物性値に応じて、洗浄順序が設定されるように構成されている。具体的には、試料注入装置10は、試料S1の極性に応じて、複数種類の洗浄溶媒S2が極性順になるように、洗浄順序が設定されるように構成されている。また、試料注入装置10は、試料S1の極性に応じて、試料S1の注入の前後において複数種類の洗浄溶媒S2が互いに逆の極性順になるように、洗浄順序が設定されるように構成されている。
【0036】
たとえば、試料S1の極性が小さい場合、
図5(A)に示すように、試料S1の注入前において複数種類の洗浄溶媒S2が徐々に極性が小さくなる極性順になり、かつ、試料S1の注入後において複数種類の洗浄溶媒S2が徐々に極性が大きくなる極性順になるように、洗浄順序が設定される。この場合、試料S1の注入の直前および直後に、複数種類の洗浄溶媒S2のうちの試料S1の極性に近い洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄が行われるように、洗浄順序が設定される。なお、試料S1の極性が小さい場合とは、たとえば、試料S1の極性が予め決められたしきい値以下である場合などである。
【0037】
具体例としては、水、メタノールおよびヘキサンが洗浄溶媒S2としてユーザにより指定されている場合、試料S1の注入前においては、洗浄順序が早い方から遅い方に向かって水、メタノール、ヘキサンの順になるように、洗浄順序が設定される。また、この場合、試料S1の注入後においては、洗浄順序が早い方から遅い方に向かってヘキサン、メタノール、水の順になるように、洗浄順序が設定される。
【0038】
また、たとえば、試料S1の極性が大きい場合、
図5(B)に示すように、試料S1の注入前において複数種類の洗浄溶媒S2が徐々に極性が大きくなる極性順になり、かつ、試料S1の注入後において複数種類の洗浄溶媒S2が徐々に極性が小さくなる極性順になるように、洗浄順序が設定される。この場合にも、試料S1の注入の直前および直後に、複数種類の洗浄溶媒S2のうちの試料S1の極性に近い洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄が行われるように、洗浄順序が設定される。なお、試料S1の極性が大きい場合とは、たとえば、試料S1の極性が予め決められたしきい値以上である場合などである。
【0039】
具体例としては、水、メタノールおよびヘキサンが洗浄溶媒S2としてユーザにより指定されている場合、試料S1の注入前においては、洗浄順序が早い方から遅い方に向かってヘキサン、メタノール、水の順になるように、洗浄順序が設定される。また、この場合、試料S1の注入後においては、洗浄順序が早い方から遅い方に向かって水、メタノール、ヘキサンの順になるように、洗浄順序が設定される。
【0040】
洗浄順序を自動で設定する場合、ユーザは、設定装置20の操作部21を用いて、設定装置20において洗浄順序の自動設定を行うための操作を行う。ユーザの操作を受け付けると、設定装置20の制御部24は、試料S1の物性値に応じて、洗浄順序を決定して設定する制御を行うように構成されている。具体的には、設定装置20の制御部24は、試料S1の極性に応じて、上記の通り、洗浄順序を決定して設定する制御を行うように構成されている。なお、決定された洗浄順序は、設定装置20の表示部22に表示されることにより、ユーザに提示される。ユーザは、設定装置20の操作部21を用いて、決定された洗浄順序をさらに変更することが可能である。
【0041】
また、
図6(A)(B)に示すように、試料注入装置10は、洗浄回数を自動で設定可能に構成されている。試料注入装置10は、試料S1の物性値に応じて、洗浄回数が設定されるように構成されている。具体的には、試料注入装置10は、試料S1の粘性(粘度)が大きくなるのに応じて、回数が大きくなるように、洗浄回数が設定されるように構成されている。また、試料注入装置10は、試料S1の注入の前後において、試料S1の粘性に応じた洗浄回数がそれぞれ設定されるように構成されている。
【0042】
たとえば、予め決められたしきい値範囲に基づいて、試料S1の粘性に応じた洗浄回数が設定される。この場合、たとえば、試料S1の粘性がしきい値範囲内である場合に、洗浄回数が所定の回数に設定される。また、試料S1の粘性がしきい値範囲よりも小さい場合に、洗浄回数が所定の回数よりも小さい回数に設定される。また、試料S1の粘性がしきい値範囲よりも大きい場合に、洗浄回数が所定の回数よりも大きい回数に設定される。なお、しきい値範囲は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、洗浄回数は、シリンジ11の洗浄を行う複数種類の洗浄溶媒S2の全部について自動で設定されてもよいし、シリンジ11の洗浄を行う複数種類の洗浄溶媒S2の一部について自動で設定されてもよい。一部について自動設定される場合、たとえば、洗浄順序が試料S1の注入の直前または直後の洗浄溶媒S2について、洗浄回数が設定されてもよい。
【0043】
洗浄回数を自動で設定する場合、ユーザは、設定装置20の操作部21を用いて、設定装置20において洗浄回数の自動設定を行うための操作を行う。ユーザの操作を受け付けると、設定装置20の制御部24は、試料S1の物性値に応じて、洗浄回数を決定して設定する制御を行うように構成されている。具体的には、設定装置20の制御部24は、試料S1の粘性に応じて、上記の通り、洗浄回数を決定して設定する制御を行うように構成されている。なお、決定された洗浄回数は、設定装置20の表示部22に表示されることにより、ユーザに提示される。ユーザは、設定装置20の操作部21を用いて、決定された洗浄回数をさらに変更することが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、
図7に示すように、試料注入装置10は、設定装置20の記憶部23に予め記録されている、試料S1または洗浄溶媒S2の候補である候補物質の物性値を示す候補物質情報A2に基づいて、試料S1または洗浄溶媒S2の物性値(粘性、極性)が取得されるように構成されている。候補物質情報A2は、候補物質の物性値(粘性(粘度)、極性(双極子モーメント))の情報を含んだテーブルである。
図7に示す候補物質情報A2は、代表的な試料S1または洗浄溶媒S2である候補物質として、アセトン、ヘキサン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、水およびメタノールを含んでいる。
【0045】
上記のように洗浄順序または洗浄回数を自動で設定する場合、ユーザは、設定装置20の操作部21を用いて、候補物質の中から、分析を行う試料S1または洗浄を行う洗浄溶媒S2を選択して予め指定しておく。候補物質の中から分析を行う試料S1または洗浄を行う洗浄溶媒S2が指定されている場合、設定装置20の制御部24は、候補物質情報A2に基づいて、試料S1または洗浄溶媒S2の物性値(粘性、極性)を取得するように構成されている。なお、候補物質の中に分析を行う試料S1または洗浄を行う洗浄溶媒S2がない場合、ユーザが候補物質の中にない試料S1または洗浄溶媒S2の物性値について入力して設定装置20に登録してもよい。
【0046】
また、候補物質情報A2は、シリンジ11による候補物質の適正な注入速度の情報およびシリンジ11による候補物質の適正な吸入速度の情報を含んでいる。候補物質の中から分析を行う試料S1または洗浄を行う洗浄溶媒S2が指定されている場合、設定装置20の制御部24は、候補物質情報A2に基づいて、試料S1または洗浄溶媒S2のシリンジ11による注入速度および吸入速度を取得して設定するように構成されている。これにより、試料注入装置10は、候補物質情報A2に基づいて、試料S1または洗浄溶媒S2のシリンジ11による注入速度および吸入速度が設定されるように構成されている。
【0047】
(洗浄溶媒の切り替えに関する構成)
被配置部12には、同一種類の洗浄溶媒S2が複数配置されている場合がある。この場合、試料注入装置10の制御部14は、洗浄溶媒S2を使い切った場合に、使い切った洗浄溶媒S2と同一種類の新たな洗浄溶媒S2(未使用の予備の洗浄溶媒S2)を使うように、使用する洗浄溶媒S2を切り替える制御を行うように構成されている。
【0048】
具体的には、試料注入装置10の制御部14は、使用中の洗浄溶媒S2の過去の使用状況(洗浄液量、洗浄回数)に基づいて、使用中の洗浄溶媒S2の使用量を取得するように構成されている。また、試料注入装置10の制御部14は、取得した使用中の洗浄溶媒S2の使用量に基づいて、使用中の洗浄溶媒S2を使い切ったか否かを判断するように構成されている。たとえば、試料注入装置10の制御部14は、取得した使用中の洗浄溶媒S2の使用量に基づいて、使用中の洗浄溶媒S2の残量が予め決められたしきい値以下であると判断された場合、使用中の洗浄溶媒S2を使い切ったと判断する。また、試料注入装置10の制御部14は、取得した使用中の洗浄溶媒S2の使用量に基づいて、使用中の洗浄溶媒S2の残量が予め決められたしきい値よりも大きいと判断された場合、使用中の洗浄溶媒S2を使い切っていないと判断する。
【0049】
また、試料注入装置10の制御部14は、使用中の洗浄溶媒S2を使い切ったと判断された場合、被配置部12における使用する洗浄溶媒S2の位置の設定を、使い切った洗浄溶媒S2の位置から、新たな洗浄溶媒S2(未使用の予備の洗浄溶媒S2)の位置に切り替える制御を行うように構成されている。これにより、洗浄溶媒S2の実際の位置を切り替えることなく、使用する洗浄溶媒S2を新たな洗浄溶媒S2に切り替える制御が行われる。使用する洗浄溶媒S2が切り替わった後、試料注入装置10の制御部14は、被配置部12における使用する洗浄溶媒S2の位置の新たな設定に基づいて、新たな洗浄溶媒S2を使用する制御を行うように構成されている。
【0050】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
本実施形態では、上記のように、試料注入装置10を、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄順序を設定可能に構成する。これにより、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄順序が固定されている場合と異なり、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄順序を変更することができるので、洗浄順序の設定の自由度を向上させることができる。その結果、たとえば、使用回数が少ないために清浄度が高い洗浄溶媒S2が、試料S1の注入の直前のシリンジ11の洗浄を行うように、洗浄順序を変更することができる。この場合、清浄度が高い洗浄溶媒S2により試料S1の注入の直前のシリンジ11の洗浄を行うことにより、前の試料S1が今回の試料S1に混入すること(いわゆるキャリーオーバ)を効果的に低減することができるので、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄効果を高めることができる。また、たとえば、複数種類の洗浄溶媒S2が極性順になるように、洗浄順序を変更することができる。この場合、極性が近い物質同士が互いに溶けやすいことを利用して、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄効果を高めることができる。これらのように、洗浄順序の設定の自由度を向上させることにより、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄効果を高めることが可能な試料注入装置10を提供することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、試料注入装置10を、シリンジ11による試料S1の注入前の洗浄順序、および、シリンジ11による試料S1の注入後の洗浄順序を個別に設定可能に構成する。これにより、シリンジ11による試料S1の注入前後において、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄順序を個別に変更することができるので、洗浄順序の設定の自由度をより向上させることができる。その結果、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄効果をより高めることができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、試料注入装置10を、ユーザにより指定された洗浄順序が、洗浄順序として設定されるように構成する。これにより、ユーザが所望する洗浄順序を、洗浄順序として設定することができる。その結果、ユーザが試料S1や洗浄溶媒S2の物性に適した洗浄順序を設定することができるので、試料S1や洗浄溶媒S2の物性に応じて複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄効果を確実に高めることができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、試料注入装置10を、試料S1の物性値に応じて、洗浄順序が設定されるように構成する。これにより、試料S1の物性に適した洗浄順序を自動的に設定することができるので、洗浄順序を設定するためのユーザの手間を省くことができる。また、試料S1の物性に詳しくないユーザであっても、試料S1の物性に適した洗浄順序が自動的に設定されるので、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄効果を容易に高めることができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、試料注入装置10を、試料S1の極性に応じて、複数種類の洗浄溶媒S2が極性順になるように、洗浄順序が設定されるように構成する。これにより、極性が近い物質同士が互いに溶けやすいことを利用して、洗浄効果が高い洗浄順序を簡単かつ確実に設定することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、試料注入装置10を、予め記録されている、試料S1または洗浄溶媒S2の候補である候補物質の物性値を示す候補物質情報に基づいて、試料S1または洗浄溶媒S2の物性値が取得されるように構成する。これにより、予め記録されている候補物質情報の候補物質の中にユーザが使用する試料S1または洗浄溶媒S2がある場合、ユーザは候補物質情報の候補物質から使用する試料S1または洗浄溶媒S2を選択するだけで、試料S1または洗浄溶媒S2の物性値を取得させることができる。この場合、ユーザは試料S1または洗浄溶媒S2の物性値を入力する作業を行う必要がないので、試料S1または洗浄溶媒S2の物性値を入力する作業を行うためのユーザの手間を省くことができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、試料注入装置10を、試料S1の物性値に応じて、洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄回数が設定されるように構成する。これにより、試料S1の物性に適した洗浄回数を自動的に設定することができるので、洗浄回数を設定するためのユーザの手間を省くことができる。また、試料S1の物性に詳しくないユーザであっても、試料S1の物性に適した洗浄回数が自動的に設定されるので、複数種類の洗浄溶媒S2によるシリンジ11の洗浄効果を容易に高めることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、試料注入装置10を、試料S1の粘性が大きくなるのに応じて、回数が大きくなるように洗浄回数が設定されるように構成する。これにより、試料S1の粘性が大きい程シリンジ11への試料S1の付着量が多くなるため、洗浄回数が多くなることを考慮して、洗浄効果が高い洗浄回数を簡単かつ確実に設定することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、被配置部12に、同一種類の洗浄溶媒S2が複数配置する。また、試料注入装置10を、洗浄溶媒S2を使い切った場合、使い切った洗浄溶媒S2と同一種類の新たな洗浄溶媒S2を使うように、使用する洗浄溶媒S2を切り替える制御を行う制御部14を備えるように構成する。ここで、洗浄溶媒S2を使用する際に、シリンジ11で洗浄溶媒S2が収容されたバイアル30のセプタム(蓋)に穴を開けるため、洗浄溶媒S2は使用中に揮発する。このため、同一種類の複数の洗浄溶媒S2を並行して使用する場合、並行して使用中の複数の洗浄溶媒S2の全部において溶媒の揮発が生じる。この場合、洗浄溶媒S2の揮発量が多くなるという不都合がある。そこで、上記のように構成することにより、ある洗浄溶媒S2を使い切ってから、使い切った洗浄溶媒S2と同一種類の新たな洗浄溶媒S2を使用することができるので、同一種類の複数の洗浄溶媒S2を並行して使用する場合と異なり、未使用の洗浄溶媒S2については使用を開始するまで溶媒が揮発することを抑制することができる。その結果、洗浄溶媒S2の揮発量を低減することができるので、同一種類の複数の洗浄溶媒S2が用意されている場合に、同一種類の洗浄溶媒S2を効率的に使用することができる。
【0060】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0061】
たとえば、上記実施形態では、設定装置が、パーソナルコンピュータにより構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試料注入装置の設定が可能であれば、設定装置が、パーソナルコンピュータ以外の装置により構成されていてもよい。たとえば、設定装置が、クロマトグラフ装置により構成されていてもよい。また、たとえば、設定装置が、試料注入装置により構成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、試料注入装置が、洗浄溶媒、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数を設定可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、少なくとも洗浄順序が設定可能であれば、試料注入装置が、洗浄溶媒、洗浄液量および洗浄回数を必ずしも設定可能でなくてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、試料注入装置が、試料の注入前後において、洗浄溶媒、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数を個別に設定可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試料注入装置が、試料の注入前または試料の注入後のうちの一方のみにおいて、洗浄溶媒、洗浄順序、洗浄液量および洗浄回数を設定可能に構成されていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、試料注入装置が、試料の極性に応じて、洗浄順序が設定されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試料注入装置が、極性以外の試料の物性値に応じて、洗浄順序が設定されるように構成されていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、試料注入装置が、試料の極性に応じて、複数種類の洗浄溶媒が極性順になるように、洗浄順序が設定されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試料注入装置が、複数種類の洗浄溶媒の極性に応じて、複数種類の洗浄溶媒が極性順になるように、洗浄順序が設定されるように構成されていてもよい。この場合、試料の極性の情報が設定装置に入力されていなくても、複数種類の洗浄溶媒が極性順になるように、洗浄順序を自動で設定することが可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、設定装置に、候補物質情報が予め記憶されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、設定装置に、必ずしも予め記憶されている候補物質情報が記憶されていなくてもよい。この場合、たとえば、設定装置が、洗浄に関する設定を行う際に、ユーザにより試料または洗浄溶媒に関する情報が入力されるように構成されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、試料注入装置が、試料の粘性に応じて、洗浄回数が設定されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試料注入装置が、粘性以外の試料の物性値に応じて、洗浄回数が設定されるように構成されていてもよい。また、試料注入装置が、洗浄溶媒の粘性に応じて、洗浄回数が設定されるように構成されていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、試料注入装置が、洗浄溶媒を使い切った場合、使い切った洗浄溶媒と同一種類の洗浄溶媒を使うように、使用する洗浄溶媒を切り替えるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試料注入装置が、必ずしも、洗浄溶媒を使い切った場合、使い切った洗浄溶媒と同一種類の洗浄溶媒を使うように、使用する洗浄溶媒を切り替えるように構成されていなくてもよい。たとえば、試料注入装置が、同一種類の複数の洗浄溶媒を並行して使用するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 試料注入装置
11 シリンジ
12 被配置部
20 設定装置
100 試料注入システム
S1 試料
S2 洗浄溶媒