(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】チューブ式熱交換器のリーク判断方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/02 20060101AFI20220928BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20220928BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20220928BHJP
F28F 11/00 20060101ALI20220928BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01M3/02 J
F28F1/00 D
F28D7/16 D
F28F11/00 A
F28F9/02 J
(21)【出願番号】P 2018207357
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 星斗
(72)【発明者】
【氏名】日暮 郁仁
(72)【発明者】
【氏名】安井 砂雄
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-033636(JP,A)
【文献】特開2015-007509(JP,A)
【文献】特開2008-144995(JP,A)
【文献】特開平08-285210(JP,A)
【文献】特開昭63-017388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0162830(US,A1)
【文献】米国特許第4337820(US,A)
【文献】特開2013-190229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
F28D 1/00-13/00
F28F 1/00- 1/44
F28F 9/00- 9/26
F28F 11/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法であって、
前記熱交換器の設置された煙風道の内部は負圧であり、
前記チューブにおける媒体の通過を停止し、
前記チューブ内の媒体を抜いて大気解放し、
所定時間経過後に前記煙風道の外側で前記チューブの温度を測定し、
前記チューブの温度が所定値未満であった場合に該チューブがリークしていると判断することを特徴とするチューブ式熱交換器のリーク判断方法。
【請求項2】
ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法であって、
前記チューブは複数本備えられていて、
前記熱交換器の設置された煙風道の内部は負圧であり、
前記チューブにおける媒体の通過を停止し、
前記チューブ内の媒体を抜いて大気解放し、
所定時間経過後に前記煙風道の外側で前記チューブの温度を測定し、
前記複数のチューブの温度差が所定値超過である場合に、該チューブがリークしていると判断することを特徴とするチューブ式熱交換器のリーク判断方法。
【請求項3】
ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法であって、
前記熱交換器の設置された煙風道の内部は正圧であり、
前記チューブにおける媒体の通過を停止し、
前記チューブ内の媒体を抜いて大気解放し、
所定時間経過後に前記煙風道の外側で前記チューブの温度を測定し、
前記チューブの温度が所定値超過であった場合に該チューブがリークしていると判断することを特徴とするチューブ式熱交換器のリーク判断方法。
【請求項4】
ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法であって、
前記チューブは複数本備えられていて、
前記熱交換器の設置された煙風道の内部は正圧であり、
前記チューブにおける媒体の通過を停止し、
前記チューブ内の媒体を抜いて大気解放し、
所定時間経過後に前記煙風道の外側で前記チューブの温度を測定し、
前記複数のチューブの温度差が所定値超過である場合に、該チューブがリークしていると判断することを特徴とするチューブ式熱交換器のリーク判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気・排ガスなどのガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や工場等、高温の排気が排出される設備では、排気を冷却するまたは排気の熱を回収するために熱交換器が設けられることがある。熱交換器には、様々な種類があるが、その1つとしてチューブ式熱交換器を例示することができる。例えば特許文献1では、排気される燃焼ガスの経路に潜熱を吸収する水が流通されるチューブが、燃焼ガスが導入されるケーシングの内部に収容された熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チューブ式熱交換器では、1本ではなく複数のチューブが用いられていることが一般的である。このため、例えば1本のチューブに劣化や損傷によって穴あきが生じ、内部の液体(媒体)が漏れ出た場合(リークが発生した場合)、他のチューブや周囲の機器等を損傷させないよう、早急に穴の開いたチューブを特定し、修理(取替、閉止栓など)をする必要がある。しかしながら、熱交換器の運転中には、熱交換器の設置環境(一般的には煙風道内に設置)よりチューブに生じたリークを目視にて確認することが困難である。
【0005】
そこで従来リークしたチューブの特定する際には、まず媒体をチューブから排出した後、複数のチューブのうち、1本を切断し、気密試験を行う。その結果、圧力が保たれていれば、リークしていないと判断できるため切断したチューブを復旧し、リークしたチューブが見つかるまで切断、気密、復旧の作業を繰り返す。そして、気密試験において圧力降下が生じていたチューブが確認されたら、そのチューブがリークしているチューブだと特定する。リークしているチューブを特定したら、該当チューブの修理(取替、閉止栓)をする。そして、媒体をチューブに流し、熱交換器を復旧する。
【0006】
上述したように、従来の方法であると、リークしたチューブを特定するまで例えば端から順に切断、気密および復旧の作業を繰り返さなくてはならない。このため、特定までに多くの時間を要し補修費用も嵩み、作業員の負担も大きい。このため、リークしたチューブをより効率的に特定することができる手法の開発が求められていた。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、リークしたチューブを容易且つ迅速に特定することができ、特定までの時間を短縮し、補修費用を低減し、作業員の負担を軽減することが可能なチューブ式熱交換器のリーク判断方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるチューブ式熱交換器のリーク判断方法の代表的な構成は、ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法であって、熱交換器の設置された煙風道の内部は負圧であり、チューブにおける媒体の通過を停止し、チューブ内の媒体を抜いて大気解放し、所定時間経過後に煙風道の外側でチューブの温度を測定し、チューブの温度が所定値未満であった場合にチューブがリークしていると判断することを特徴とする。
【0009】
熱交換器の設置された煙風道の内部が負圧となっている場合、仮にチューブにリークが生じていると、媒体を抜いたチューブの内部も負圧となる。その状態で大気解放すると、チューブ内部に大気が吸い込まれることにより、リークしたチューブの温度は、大気温度に近づき、所定値未満となる。したがって、チューブの温度を測定し、その温度が所定値未満であれば、チューブがリークしていると判断することができる。これにより、例えば端から順に切断、気密および復旧の作業を必要とすることなくリークしたチューブを容易且つ迅速に特定することができ、特定までの時間を短縮し、補修費用を低減し、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるチューブ式熱交換器のリーク判断方法の他の構成は、ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法であって、チューブは複数本備えられていて、熱交換器の設置された煙風道の内部は負圧であり、チューブにおける媒体の通過を停止し、チューブ内の媒体を抜いて大気解放し、所定時間経過後に煙風道の外側でチューブの温度を測定し、複数のチューブの温度差が所定値超過である場合に、チューブがリークしていると判断することを特徴とする。
【0011】
かかる構成においても、仮にチューブにリークが生じていると、大気解放した際にチューブ内部に大気が吸い込まれることにより、リークしたチューブの温度が低下する。このとき、複数のチューブのうち、リークが生じていない正常なチューブは、大気が吸い込まれないため温度の低下が生じない。このため、リークしているチューブとリークしていないチューブに明確な温度差が生じる。したがって、その温度差が所定値超過であれば、温度が低い側のチューブにおいてリークが生じていると判断することができ、上記と同様の効果を得ることが可能となる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかるチューブ式熱交換器のリーク判断方法の他の構成は、ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法であって、熱交換器の設置された煙風道の内部は正圧であり、チューブにおける媒体の通過を停止し、チューブ内の媒体を抜いて大気解放し、所定時間経過後に煙風道の外側で前記チューブの温度を測定し、チューブの温度が所定値超過であった場合にチューブがリークしていると判断することを特徴とする。
【0013】
熱交換器の設置された煙風道の内部が正圧となっている場合、仮にチューブにリークが生じていると、媒体を抜いたチューブの内部も正圧となる。その状態で大気解放すると、チューブ内部に煙風道内のガス状物質が吸い込まれることにより、リークしたチューブの温度は、ガス状物質の温度に近づき、所定値超過となる。したがって、チューブの温度を測定し、その温度が所定値超過であれば、チューブがリークしていると判断することができる。これにより、例えば端から順に切断、気密および復旧の作業を必要とすることなくリークしたチューブを容易且つ迅速に特定することができ、特定までの時間を短縮し、補修費用を低減し、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかるチューブ式熱交換器のリーク判断方法の他の構成は、ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法であって、チューブは複数本備えられていて、熱交換器の設置された煙風道の内部は正圧であり、チューブにおける媒体の通過を停止し、チューブ内の媒体を抜いて大気解放し、所定時間経過後に煙風道の外側でチューブの温度を測定し、複数のチューブの温度差が所定値超過である場合に、チューブがリークしていると判断することを特徴とする。
【0015】
かかる構成においても、仮にチューブにリークが生じていると、大気解放した際にチューブ内部に煙風道内のガス状物質が吸い込まれることにより、リークしたチューブの温度が上昇する。このとき、複数のチューブのうち、リークが生じていない正常なチューブは、ガス状物質が吸い込まれないため温度の上昇が生じない。このため、リークしているチューブとリークしていないチューブとに明確な温度差が生じる。したがって、その温度差が所定値超過であれば、温度が高い側のチューブにおいてリークが生じていると判断することができ、上記と同様の効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リークしたチューブを容易且つ迅速に特定することができ、特定までの時間を短縮し、補修費用を低減し、作業員の負担を軽減することが可能なチューブ式熱交換器のリーク判断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態にかかるチューブ式熱交換器のリーク判断方法を適用する設備を説明する図である。
【
図3】本実施形態にかかるリーク判断方法のフローチャートである。
【
図4】複数のチューブの温度の測定結果を説明する図である。
【
図5】複数のチューブの温度の測定結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本実施形態にかかるチューブ式熱交換器のリーク判断方法を適用する設備を説明する図である。なお、本実施形態では、設備として火力発電所100を例示するが、これに限定するものではない。本実施形態のリーク判断方法は、チューブ式熱交換器を備える設備であれば、他の設備であっても適用可能である。
【0020】
図1に示すように、火力発電所100では、第1熱交換器110および第2熱交換器108からなるガス-ガスヒーターが備えられている。ガス-ガスヒーターは、排気から熱を回収し、集塵や脱硫などの所定の処理を行った後に、排気を再加熱する装置である。まず、ボイラ102からの高熱の排気が第1熱交換器110に送られる。第1熱交換器110では、媒体(不図示)との熱交換により排気が冷却される。冷却された排気は、電気式集塵器104を通過することにより塵埃が除去される。その後、排気は、電気式集塵器104の下段の誘引通風機106によって吸引され、第2熱交換器108において、第1熱交換器110が排気から得た熱を用いて再加熱される。そして、煙突109から排出される。
【0021】
図2は、
図1の第1熱交換器110を説明する図である。
図2に示す第1熱交換器110は、空気・排ガスなどのガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブ114を備えるチューブ式熱交換器である。本実施形態のリーク判断方法では、第1熱交換器110におけるチューブ114のリークの有無を判断する。
【0022】
ボイラ102からの高温の排気は、第1熱交換器110の設置された煙風道112を通過する。上述したように、排気は誘引通風機106によって吸引されているため、煙風道の内部は負圧となっている。
図2に示すように、煙風道内には、媒体である水などが通過するチューブ114が配置されている。
【0023】
なお、図示の都合上、
図2では3本のチューブ114が配置されている構成を例示しているが、実際には、上下方向に更に複数のチューブ114が配置されている。また本実施形態では、第1熱交換器110が複数のチューブ114を備える構成を例示したが、これに限定するものではない。後述するように、1本のチューブ114のみを備える構成であっても本実施形態のリーク判断方法を適用することが可能である。
【0024】
チューブ114の端部は、第1熱交換器110の設置された煙風道112の外側に配置されていて、入口ヘッダー116aおよび出口ヘッダー116bがそれぞれ接続されている。入口ヘッダー116aおよび出口ヘッダー116bには、それぞれベント弁118またはブロー弁119、もしくは両方が設けられている。ベント弁118およびブロー弁119を開状態とすると、チューブ114を通過する媒体を排出し、チューブ114を大気解放することができる。
【0025】
図2の破線円Dに示すように、劣化や損傷によってチューブ114に穴あきが生じると、内部の媒体が漏れ出る、いわゆるリークが発生する。このリークを放置すると、漏れ出た媒体によって他のチューブ114や周囲の機器等が腐食などにより損傷されるおそれがあるため、リークが発生したチューブ114を早急に特定し、修理(取替、閉止栓など)をする必要がある。
【0026】
図3は、本実施形態にかかるリーク判断方法のフローチャートである。
図3に示すように、本実施形態のリーク判断方法では、まずチューブ114における媒体の通過を停止する(ステップS202)。そして、ベント弁118およびブロー弁119を開状態とすることにより、チューブ114内の媒体を抜いて大気解放する(ステップS204)。
【0027】
大気解放後、所定時間経過したら、温度計120を用いて第1熱交換器110の設置された煙風道112の外側で複数のチューブ114の温度を測定し(ステップS206)、複数のチューブ114の温度差が所定値超過であるかを判断する(ステップS208)。温度差が所定値以下であった場合、そのチューブ114はリークしていないと判断する(ステップS210)。一方、温度差が所定値超過であった場合、そのチューブ114はリークしていると判断する(ステップS212)。
【0028】
上述したように第1熱交換器110の設置された煙風道112の内部が負圧となっている場合、仮にチューブ114にリークが生じていると、媒体を抜いたチューブ114の内部も負圧となる。その状態で大気解放すると、チューブ114内部に大気が吸い込まれて冷却されることにより、リークしているチューブ114の温度は、リークしていないチューブ114の温度よりも低くなる。したがって、リークしているチューブ114とリークしていないチューブ114とに明確な温度差が生じる。これにより、その温度差が所定値超過であれば、温度が低い側のチューブにおいてリークが生じていると判断することができる。
【0029】
図4および
図5は、複数のチューブ114の温度の測定結果を説明する図である。
図4は、リークしているチューブ114が1本だった場合を例示していて、
図5は、リークしているチューブ114が複数本だった場合を例示している。
図4および
図5では、縦軸を温度とし、横軸を複数のチューブ114の各チューブ番号としている。上管温度は、煙風道112において上段に配置されているチューブ114の温度であり、下管温度は、煙風道112において下段に配置されているチューブ114の温度である。
【0030】
図4に示す例では、13番の上管(チューブ)の温度が他のチューブより10℃以上低い(温度差が所定値超過)。したがって、13番の上管(チューブ)においてリークが生じていると判断することができる。このように、本実施形態のリーク判断方法によれば、従来行っていたしらみつぶしの切断、気密および復旧の作業を必要とすることなくリークしたチューブ114を容易且つ迅速に特定することができる。したがって、特定までの時間を短縮し、補修費用を低減し、作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0031】
図5に示す例では、12番の上管(チューブ)は、他のチューブ114よりも15℃程度温度が低く、14番および16番の上管(チューブ)は、他のチューブ114よりも10℃程度温度が低い。したがって、他のチューブ114より10℃以上温度が低い、すなわち温度差が所定値超過であるこれらの3つのチューブ114においてリークが生じていると判断することができる。このように、本実施形態のリーク判断方法によれば、チューブ114が複数本リークしている場合であっても、リークしているチューブ114を容易に特定することができる。
【0032】
上述したリーク判断方法を用いて、56本のチューブの温度測定を行い、温度差が所定値超過であったチューブ114を切断し、気密試験を行った。その結果、圧力降下が確認されたため、一例として取替ではなく閉止栓を取り付けた後に第1熱交換器110を復旧した。過去の実績からチューブ56本の気密を行うと作業日数12日程度を要していたが、本実施形態のリーク判断方法を適用したところ、作業日数2日となり、大幅な工期短縮を実現することが可能であった。
【0033】
なお、上記実施形態では、複数のチューブ114の温度差が所定値超過であるかを判断した。すなわちチューブ114の温度を相対的に判断することによりリークしたチューブ114を特定した。しかし本発明は、これに限定するものではない。例えばチューブの温度が所定値未満であった場合にそのチューブ114がリークしていると判断する、すなわちチューブ114の温度の絶対値でリークしたチューブ114を特定してもよい。これによれば、チューブ114が1本の場合であってもリークの有無を判断することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、煙風道112が負圧になっている場合におけるリーク判断方法について説明したが、本発明のリーク判断方法は、煙風道112が正圧の場合においても適用することができる。煙風道112の内部が正圧となっている場合、仮にチューブ114にリークが生じていると、媒体を抜いたチューブ114の内部も正圧となる。その状態で大気解放すると、チューブ114内部に煙風道112の排気が吸い込まれることにより、チューブ114の温度が上昇する。
【0035】
一方、リークが生じていない正常なチューブ114は、排気が吸い込まれないため温度の上昇が生じない。このため、リークしているチューブ114とリークしていないチューブ114とに明確な温度差が生じる。したがって、その温度差が所定値超過であれば、温度が高い側のチューブ114においてリークが生じていると判断することができ、上記と同様の効果を得ることが可能となる。また温度の絶対値で判断する場合には、煙風道112が負圧のときの場合とは反対に、チューブ114の温度が所定値超過であった場合にそのチューブ114がリークしていると判断することができる。
【0036】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ガス状物質と熱交換を行う媒体が内部を通過するチューブのリークの有無を判断するチューブ式熱交換器のリーク判断方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
100…火力発電所、102…ボイラ、104…電気式集塵器、106…誘引通風機、108…第2熱交換器、109…煙突、110…第1熱交換器、112…煙風道、114…チューブ、116a…入口ヘッダー、116b…出口ヘッダー、118…ベント弁、119…ブロー弁、120…温度計