(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】遠心式送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20220928BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F04D29/44 P
F04D29/28 H
F04D29/44 V
(21)【出願番号】P 2018216355
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 翔
(72)【発明者】
【氏名】小田 修三
(72)【発明者】
【氏名】安田 真範
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-35792(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074339(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外気二層流式の空調装置に適用され、車室内空気と車室外空気を区分しつつ同時に吸入することが可能な片側吸込式の遠心式送風機であって、
車室外空気が導入される外気導入口(11)と車室内空気が導入される内気導入口(12、13)とを有する内外気箱(10)と、
モータ(31)の駆動により回転し、前記内外気箱に導入された空気を回転軸方向の一方から吸入し、径方向外側に吹き出す羽根車(30)と、
前記羽根車の径方向外側を囲い、外周の一部に設けられたノーズ部(41)から周方向の一方に向かい次第に流路面積が拡大する通風路(42)を形成するスクロールケーシング(40)と、
前記スクロールケーシングのうち前記羽根車の回転軸方向の一方の端面(49)に設けられ、前記羽根車への空気の吸込口を形成する環状のベルマウス(50)と、
前記羽根車の径方向外側に形成される前記通風路を前記羽根車の軸方向の一方の上通風路(45)と軸方向の他方の下通風路(46)とに仕切る仕切壁(44)と、
前記羽根車に対し前記内外気箱側の領域の一部に設けられる空気導入板(61)、および前記空気導入板に形成される空気入口部(62)から前記羽根車の径方向内側を通って径方向外側に拡がる形状の筒状部(63)を有する分離筒(60)と、を備え、
前記内外気箱から前記空気導入板に流れる空気が前記空気入口部から前記筒状部の内側を通り前記羽根車を介して前記下通風路に流れ、前記内外気箱から前記空気導入板を除く領域に流れる空気が前記筒状部の外側を通り前記羽根車を介して前記上通風路に流れるように構成されており、
前記内外気箱から前記上通風路に空気が流れる流路のうち前記空気導入板の外縁(64)を含み前記羽根車の回転軸に平行な仮想平面(VS)上の流路断面において、前記分離筒を挟んで前記ノーズ部に近い側の流路断面を第1開口部(71)、前記ノーズ部から遠い側の流路断面を第2開口部(72)と呼ぶとき、前記第2開口部の流路断面積は前記第1開口部の流路断面積より大きく構成されて
おり、
前記空気導入板は、前記第1開口部側に位置する第1面(65)と、前記第2開口部側に位置し前記第1面よりも前記ベルマウスから遠くに配置される第2面(66)と、前記第1面と前記第2面とを接続する段差面(67)とを有しており、
前記第2開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積は、前記第1開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成されている、遠心式送風機。
【請求項2】
内外気二層流式の空調装置に適用され、車室内空気と車室外空気を区分しつつ同時に吸入することが可能な片側吸込式の遠心式送風機であって、
車室外空気が導入される外気導入口(11)と車室内空気が導入される内気導入口(12、13)とを有する内外気箱(10)と、
モータ(31)の駆動により回転し、前記内外気箱に導入された空気を回転軸方向の一方から吸入し、径方向外側に吹き出す羽根車(30)と、
前記羽根車の径方向外側を囲い、外周の一部に設けられたノーズ部(41)から周方向の一方に向かい次第に流路面積が拡大する通風路(42)を形成するスクロールケーシング(40)と、
前記スクロールケーシングのうち前記羽根車の回転軸方向の一方の端面(49)に設けられ、前記羽根車への空気の吸込口を形成する環状のベルマウス(50)と、
前記羽根車の径方向外側に形成される前記通風路を前記羽根車の軸方向の一方の上通風路(45)と軸方向の他方の下通風路(46)とに仕切る仕切壁(44)と、
前記羽根車に対し前記内外気箱側の領域の一部に設けられる空気導入板(61)、および前記空気導入板に形成される空気入口部(62)から前記羽根車の径方向内側を通って径方向外側に拡がる形状の筒状部(63)を有する分離筒(60)と、を備え、
前記内外気箱から前記空気導入板に流れる空気が前記空気入口部から前記筒状部の内側を通り前記羽根車を介して前記下通風路に流れ、前記内外気箱から前記空気導入板を除く領域に流れる空気が前記筒状部の外側を通り前記羽根車を介して前記上通風路に流れるように構成されており、
前記内外気箱から前記上通風路に空気が流れる流路のうち前記空気導入板の外縁(64)を含み前記羽根車の回転軸に平行な仮想平面(VS)上の流路断面において、前記分離筒を挟んで前記ノーズ部に近い側の流路断面を第1開口部(71)、前記ノーズ部から遠い側の流路断面を第2開口部(72)と呼ぶとき、前記第2開口部の流路断面積は前記第1開口部の流路断面積より大きく構成されており、
前記空気導入板は、前記第1開口部側の部位より前記第2開口部側の部位が前記ベルマウスから遠くなるように前記ベルマウスに対して傾斜しており、
前記第2開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積は、前記第1開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成されている、遠心式送風機。
【請求項3】
前記空気導入板のうち前記空気入口部の径方向外側の部位は、前記空気入口部の周方向において前記ベルマウスに対する傾斜率が一定となるようなスロープ状に形成されている、請求項2に記載の遠心式送風機。
【請求項4】
内外気二層流式の空調装置に適用され、車室内空気と車室外空気を区分しつつ同時に吸入することが可能な片側吸込式の遠心式送風機であって、
車室外空気が導入される外気導入口(11)と車室内空気が導入される内気導入口(12、13)とを有する内外気箱(10)と、
モータ(31)の駆動により回転し、前記内外気箱に導入された空気を回転軸方向の一方から吸入し、径方向外側に吹き出す羽根車(30)と、
前記羽根車の径方向外側を囲い、外周の一部に設けられたノーズ部(41)から周方向の一方に向かい次第に流路面積が拡大する通風路(42)を形成するスクロールケーシング(40)と、
前記スクロールケーシングのうち前記羽根車の回転軸方向の一方の端面(49)に設けられ、前記羽根車への空気の吸込口を形成する環状のベルマウス(50)と、
前記羽根車の径方向外側に形成される前記通風路を前記羽根車の軸方向の一方の上通風路(45)と軸方向の他方の下通風路(46)とに仕切る仕切壁(44)と、
前記羽根車に対し前記内外気箱側の領域の一部に設けられる空気導入板(61)、および前記空気導入板に形成される空気入口部(62)から前記羽根車の径方向内側を通って径方向外側に拡がる形状の筒状部(63)を有する分離筒(60)と、を備え、
前記内外気箱から前記空気導入板に流れる空気が前記空気入口部から前記筒状部の内側を通り前記羽根車を介して前記下通風路に流れ、前記内外気箱から前記空気導入板を除く領域に流れる空気が前記筒状部の外側を通り前記羽根車を介して前記上通風路に流れるように構成されており、
前記内外気箱から前記上通風路に空気が流れる流路のうち前記空気導入板の外縁(64)を含み前記羽根車の回転軸に平行な仮想平面(VS)上の流路断面において、前記分離筒を挟んで前記ノーズ部に近い側の流路断面を第1開口部(71)、前記ノーズ部から遠い側の流路断面を第2開口部(72)と呼ぶとき、前記第2開口部の流路断面積は前記第1開口部の流路断面積より大きく構成されており、
前記空気導入板と前記筒状部との接続部のうち前記第2開口部側の部位の曲率半径(R2)は、前記第1開口部側の部位の曲率半径(R1)よりも小さく形成されており、
前記第2開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積は、前記第1開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成されている、遠心式送風機。
【請求項5】
内外気二層流式の空調装置に適用され、車室内空気と車室外空気を区分しつつ同時に吸入することが可能な片側吸込式の遠心式送風機であって、
車室外空気が導入される外気導入口(11)と車室内空気が導入される内気導入口(12、13)とを有する内外気箱(10)と、
モータ(31)の駆動により回転し、前記内外気箱に導入された空気を回転軸方向の一方から吸入し、径方向外側に吹き出す羽根車(30)と、
前記羽根車の径方向外側を囲い、外周の一部に設けられたノーズ部(41)から周方向の一方に向かい次第に流路面積が拡大する通風路(42)を形成するスクロールケーシング(40)と、
前記スクロールケーシングのうち前記羽根車の回転軸方向の一方の端面(49)に設けられ、前記羽根車への空気の吸込口を形成する環状のベルマウス(50)と、
前記羽根車の径方向外側に形成される前記通風路を前記羽根車の軸方向の一方の上通風路(45)と軸方向の他方の下通風路(46)とに仕切る仕切壁(44)と、
前記羽根車に対し前記内外気箱側の領域の一部に設けられる空気導入板(61)、および前記空気導入板に形成される空気入口部(62)から前記羽根車の径方向内側を通って径方向外側に拡がる形状の筒状部(63)を有する分離筒(60)と、を備え、
前記内外気箱から前記空気導入板に流れる空気が前記空気入口部から前記筒状部の内側を通り前記羽根車を介して前記下通風路に流れ、前記内外気箱から前記空気導入板を除く領域に流れる空気が前記筒状部の外側を通り前記羽根車を介して前記上通風路に流れるように構成されており、
前記内外気箱から前記上通風路に空気が流れる流路のうち前記空気導入板の外縁(64)を含み前記羽根車の回転軸に平行な仮想平面(VS)上の流路断面において、前記分離筒を挟んで前記ノーズ部に近い側の流路断面を第1開口部(71)、前記ノーズ部から遠い側の流路断面を第2開口部(72)と呼ぶとき、前記第2開口部の流路断面積は前記第1開口部の流路断面積より大きく構成されており、
前記内外気箱および前記空気導入板の外縁は、前記スクロールケーシングの外縁よりも外側に位置しており、
前記スクロールケーシングの外周より径方向外側の領域、且つ、前記ベルマウスに対し前記空気導入板とは反対側の領域を含むように外側流路(48)が形成されており、
前記内外気箱に導入された空気の一部が前記第2開口部から前記外側流路を経由して前記羽根車に吸い込まれるように構成されている、遠心式送風機。
【請求項6】
前記内外気箱の中心(101)は、前記羽根車の回転軸(301)および前記分離筒が有する前記筒状部の中心軸(601)に対し前記第2開口部側にずれた位置にあり、
前記第2開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積は、前記第1開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成されている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の遠心式送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片側吸込式の遠心式送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内空気と車室外空気を区分しつつ同時に吸入することが可能な片側吸込式の遠心式送風機が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の遠心式送風機は、空気取り入れハウジング(以下、内外気箱という)から取り入れられた空気が、フィルタを経由して羽根車の内側に吸い込まれ、羽根車の径方向外側の通風路に吹き出されるように構成されている。羽根車の径方向外側の通風路は、仕切壁により、羽根車の軸方向の一方の上通風路と軸方向の他方の下通風路とに仕切られている。羽根車の径方向内側には、内外気箱から取り入れられた空気を上通風路と下通風路に分離して流すための分離筒が設けられている。分離筒は、羽根車とフィルタとの間の領域の一部に設けられる空気導入板、およびその空気導入板に形成される空気入口部から羽根車の径方向内側を通って径方向外側に拡がる形状の筒状部を有する。この構成により、内外気箱から取り入れられた空気の一部は、空気導入板に設けられる空気入口部から筒状部の内側を通り、羽根車を介して下通風路に流れる。一方、内外気箱から取り入れられた空気の他の一部は、空気導入板を通らず筒状部の外側を通り、羽根車を介して上通風路に流れる。このように、この遠心式送風機は、羽根車の軸方向の一方から吸い込んだ空気を上通風路と下通風路とに分けて吹き出す構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、遠心式送風機では、羽根車の径方向外側の通風路は、羽根車の翼の後縁とスクロールケーシングの内壁との距離が、ノーズ部近傍が最も狭く、ノーズ部から周方向の一方に向かい次第に遠くなるように構成される。そのため、羽根車から通風路へ吹き出される空気の圧力損失は、ノーズ部近傍が大きく、ノーズ部から周方向の一方に向かって次第に小さくなる。したがって、羽根車に吸い込まれる風量は、ノーズ部近傍が少なく、ノーズ部から周方向の一方に向かって次第に多くなるといった特性を有する。
【0006】
このことに関し、特許文献1に記載の遠心式送風機は、分離筒が有する筒状部の外側左右の開口部からそれぞれ分離筒の裏側の流路(すなわち、空気導入板とベルマウスとの間に形成される流路)に回り込む空気の流れについて記載されていない。そして、特許文献1では、分離筒が有する筒状部より左側の開口部の流路断面積と、筒状部より右側の開口部の流路断面積とが同じ大きさになっている。この場合、ノーズ部から遠い側の開口部を通過する空気の圧力損失は、ノーズ部に近い側の開口部を通過する空気の圧力損失より大きくなる。このように、ノーズ部から遠い側の開口部を通過する空気の圧力損失と、ノーズ部に近い側の開口部を通過する空気の圧力損失とのバランスが、羽根車に吸い込まれる風量特性に対応したものでない場合、分離筒の裏側の流路を流れる風量が減少する。その結果、分離筒の裏側の流路から羽根車に吸い込まれる風量が減少し、送風機の送風効率が低下することが懸念される。
なお、このことは、特許文献1に記載されているような片側吸込式の遠心式送風機において、羽根車の回転軸方向の体格(すなわち遠心式送風機の高さ方向の体格)を小さくするために、空気導入板とベルマウスとの間隔を狭くする程、大きく影響することになる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、送風効率を向上することの可能な遠心式送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
内外気二層流式の空調装置に適用され、車室内空気と車室外空気を区分しつつ同時に吸入することが可能な片側吸込式の遠心式送風機であって、
車室外空気が導入される外気導入口(11)と車室内空気が導入される内気導入口(12、13)とを有する内外気箱(10)と、
モータ(31)の駆動により回転し、内外気箱に導入された空気を回転軸方向の一方から吸入し、径方向外側に吹き出す羽根車(30)と、
羽根車の径方向外側を囲い、外周の一部に設けられたノーズ部(41)から周方向の一方に向かい次第に流路面積が拡大する通風路(42)を形成するスクロールケーシング(40)と、
スクロールケーシングのうち羽根車の回転軸方向の一方の端面(49)に設けられ、羽根車への空気の吸込口を形成する環状のベルマウス(50)と、
羽根車の径方向外側に形成される通風路を羽根車の軸方向の一方の上通風路(45)と軸方向の他方の下通風路(46)とに仕切る仕切壁(44)と、
羽根車に対し前記内外気箱側の領域の一部に設けられる空気導入板(61)、および空気導入板に形成される空気入口部(62)から羽根車の径方向内側を通って径方向外側に拡がる形状の筒状部(63)を有する分離筒(60)と、を備え、
内外気箱から空気導入板に流れる空気が空気入口部から筒状部の内側を通り羽根車を介して下通風路に流れ、内外気箱から空気導入板を除く領域に流れる空気が筒状部の外側を通り羽根車を介して上通風路に流れるように構成されており、
内外気箱から上通風路に空気が流れる流路のうち空気導入板の外縁(64)を含み羽根車の回転軸に平行な仮想平面(VS)上の流路断面において、分離筒を挟んでノーズ部に近い側の流路断面を第1開口部(71)、ノーズ部から遠い側の流路断面を第2開口部(72)と呼ぶとき、第2開口部の流路断面積は第1開口部の流路断面積より大きく構成されている。
さらに、請求項1に係る発明は、前記空気導入板は、前記第1開口部側に位置する第1面(65)と、前記第2開口部側に位置し前記第1面よりも前記ベルマウスから遠くに配置される第2面(66)と、前記第1面と前記第2面とを接続する段差面(67)とを有しており、
前記第2開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積は、前記第1開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成されている。
また、請求項2に係る発明は、前記空気導入板は、前記第1開口部側の部位より前記第2開口部側の部位が前記ベルマウスから遠くなるように前記ベルマウスに対して傾斜しており、
前記第2開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積は、前記第1開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成されている。
また、請求項4に係る発明は、前記空気導入板と前記筒状部との接続部のうち前記第2開口部側の部位の曲率半径(R2)は、前記第1開口部側の部位の曲率半径(R1)よりも小さく形成されており、
前記第2開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積は、前記第1開口部のうち前記羽根車より前記空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成されている。
また、請求項5に係る発明は、前記内外気箱および前記空気導入板の外縁は、前記スクロールケーシングの外縁よりも外側に位置しており、
前記スクロールケーシングの外周より径方向外側の領域、且つ、前記ベルマウスに対し前記空気導入板とは反対側の領域を含むように外側流路(48)が形成されており、
前記内外気箱に導入された空気の一部が前記第2開口部から前記外側流路を経由して前記羽根車に吸い込まれるように構成されている。
【0009】
これによれば、第1開口部の流路断面積と第2開口部の流路断面積とが同一である場合に比べて、第2開口部を流れる空気の圧力損失が小さくなる。すなわち、第1開口部を通過する空気の圧力損失と第2開口部を通過する空気の圧力損失のバランスが、羽根車に吸い込まれる風量特性に対応するものとなり、分離筒の裏側の流路に流れる風量が増加する。その結果、分離筒の裏側の流路から羽根車に吸い込まれる風量が増加し、送風機の送風効率を向上することができる。なお、分離筒の裏側の流路とは、スクロールケーシングのうち羽根車の回転軸方向の一方の端面およびベルマウスと、空気導入板との間に形成される流路をいう。また、送風効率とは、羽根車を回転させるモータに供給する電力に対する遠心式送風機の送風量をいう。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る遠心式送風機の断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る遠心式送風機の内外気箱を除いた状態の斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る遠心式送風機において、第1開口部と第2開口部を説明するための説明図である。
【
図6】第2実施形態に係る遠心式送風機の内外気箱を除いた状態の斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係る遠心式送風機において、第1開口部と第2開口部を説明するための説明図である。
【
図8】第3実施形態に係る遠心式送風機の内外気箱を除いた状態の斜視図である。
【
図9】第3実施形態に係る遠心式送風機において、第1開口部と第2開口部を説明するための説明図である。
【
図10】第4実施形態に係る遠心式送風機の内外気箱を除いた状態の斜視図である。
【
図11】第5実施形態に係る遠心式送風機の内外気箱を除いた状態の斜視図である。
【
図12】第5実施形態に係る遠心式送風機において、第1開口部と第2開口部を説明するための説明図である。
【
図13】第6実施形態に係る遠心式送風機の内外気箱を除いた状態の斜視図である。
【
図14】第6実施形態に係る遠心式送風機において、第1開口部と第2開口部を説明するための説明図である。
【
図15】第7実施形態に係る遠心式送風機の内外気箱を除いた状態の斜視図である。
【
図16】第7実施形態に係る遠心式送風機において、第1開口部と第2開口部を説明するための説明図である。
【
図17】第8実施形態に係る遠心式送風機の内外気箱を除いた状態の斜視図である。
【
図18】第8実施形態に係る遠心式送風機において、第1開口部と第2開口部を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の遠心式送風機1は、内外気二層流式の車両用空調装置に適用される。この遠心式送風機1は、車室内空気(以下、内気という)と車室外空気(以下、外気という)を区分しつつ同時に吸入して吹き出すことの可能な送風機である。
【0014】
図1~
図4に示すように、遠心式送風機1は、内外気箱10、フィルタ20、羽根車30、スクロールケーシング40、ベルマウス50、仕切壁44および分離筒60などを備えている。
【0015】
内外気箱10は、遠心式送風機1の上部に配置されている。内外気箱10は、車両前方側から順に、外気導入口11、第1内気導入口12および第2内気導入口13を有している。外気導入口11には、外気が導入される。第1内気導入口12と第2内気導入口13には、内気が導入される。内外気箱10の内側には、第1切替ドア14と第2切替ドア15とが設けられている。第1切替ドア14は、外気導入口11と第1内気導入口12とを選択的に開閉可能である。第2切替ドア15は、第2内気導入口13を開閉可能である。第1切替ドア14と第2切替ドア15は、例えばロータリドアにより構成されている。
【0016】
フィルタ20は、内外気箱10の下部に設けられている。フィルタ20は、内外気箱10に導入された空気(すなわち、外気および内気)に含まれる異物を捕集する。フィルタ20は、例えば、所定の通気性を有する除塵用濾材がひだ形状に折り曲げられて構成されている。フィルタ20は、外気導入口11と第1内気導入口12と第2内気導入口13が並ぶ方向(すなわち、車両前後方向)に、ひだ形状が折り重なるように形成されている。換言すれば、フィルタ20は、外気導入口11と第1内気導入口12と第2内気導入口13が並ぶ方向に対し直交する方向(すなわち、車幅方向)に、ひだ形状の折り目が延びている。なお、内外気箱10とフィルタ20は、上方から視て、その外形が略矩形状に形成されている。
【0017】
羽根車30は、モータ31の駆動により回転する遠心ファンである。羽根車30は、モータ31のシャフト32に固定される主板33、および、その主板33に固定される複数の翼34を有している。羽根車30は、フィルタ20を通過した空気を回転軸方向の一方から吸入し、径方向外側に吹き出すように構成されている。なお、複数の翼34同士の間には、翼34のうち軸方向上側の領域を流れる風と、翼34のうち軸方向下側の領域を流れる風とを仕切る翼仕切壁35が設けられている。
【0018】
スクロールケーシング40は、羽根車30の径方向外側を囲っている。スクロールケーシング40は、その外周の一部にノーズ部41を有している。そして、スクロールケーシング40は、そのノーズ部41から周方向の一方に向かい次第に流路面積が拡大する通風路42を形成している。通風路42は、主に、スクロールケーシング40の内壁と羽根車30の翼34の後縁36との間に形成される。通風路42のうち流路面積が最大となる箇所は、空調装置が備える図示しない空調ケーシングに連通する。そのため、スクロールケーシング40の通風路42から吹き出された空気は、その空調ケーシングに導入される。
【0019】
なお、図示していないが、その空調ケーシング内には、空気の温度および湿度を調整するためのエバポレータ、ヒータコアおよびエアミックスドアなどが配置されている。そして、その空調ケーシング内で温度および湿度が調整された空調風は、フェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口などから車室内に吹き出されるように構成されている。
【0020】
スクロールケーシング40のうち羽根車30の回転軸方向の一方の端面49(以下、スクロールケーシング40の上面49という)には、羽根車30への空気の吸込口を形成する環状のベルマウス50が設けられている。フィルタ20を通過した空気は、ベルマウス50から羽根車30に吸い込まれる。
【0021】
また、スクロールケーシング40の上面49には、上述した内外気箱10とフィルタ20を取り付けるための取付枠43が設けられている。すなわち、この取付枠43の上に、内外気箱10とフィルタ20が取り付けられる。
【0022】
また、スクロールケーシング40の内側には、通風路42を、羽根車30の軸方向の一方の領域と、羽根車30の軸方向の他方の領域とに仕切る仕切壁44が設けられている。仕切壁44は、羽根車30の翼34同士の間に設けられる翼仕切壁35に対応する位置に設けられている。以下の説明では、通風路42のうち仕切壁44より上側の領域を上通風路45と呼び、通風路42のうち仕切壁44より下側の領域を下通風路46と呼ぶこととする。
【0023】
分離筒60は、フィルタ20と羽根車30との間の領域から羽根車30の径方向内側の領域に亘って設けられている。分離筒60は、羽根車30とフィルタ20との間の領域の一部に設けられる空気導入板61と、その空気導入板61に形成される空気入口部62から羽根車30の径方向内側を通って径方向外側に拡がる形状の筒状部63を有している。
【0024】
図3に示すように、空気導入板61は、上方から視て、外形が略矩形状に形成されている。そして、その空気導入板61は、ベルマウス50のほぼ半分の領域を覆っている。具体的には、
図1に示すように、空気導入板61のうち羽根車30の回転軸301側に配置される外縁64は、内外気箱10の第2切替ドア15が第2内気導入口13を全開にしたとき、第2切替ドア15のフィルタ20側の端部16に対応する位置(すなわち、第2切替ドア15の端部16の下側)に設けられている。
【0025】
空気導入板61と筒状部63とは漏斗状に接続されている。筒状部63は、羽根車30の径方向内側の領域において筒状となっている。そして、筒状部63のうち空気導入板61とは反対側の端部68は、羽根車30の翼34同士の間に設けられた翼仕切壁35に対応する位置(すなわち、翼仕切壁35の径方向内側)に設けられている。
【0026】
上述した構成において、遠心式送風機1は、内外気箱10に導入されてフィルタ20の所定の領域を通過した空気を、羽根車30の軸方向の一方から分離筒60の内側を経由して下通風路46に流すことが可能である。また、この遠心式送風機1は、フィルタ20の他の領域を通過した空気を羽根車30の軸方向の一方から分離筒60の外側を経由して上通風路45に流すことが可能である。すなわち、この遠心式送風機1は、片側吸込式の送風機である。なお、フィルタ20の所定の領域とは、例えば、フィルタ20のうち第2切替ドア15の端部16が当接する位置よりも車両後方側の領域である。また、フィルタ20の他の領域とは、例えば、フィルタ20のうち第2切替ドア15の端部16が当接する位置よりも車両前方側の領域である。
【0027】
図1では、第1切替ドア14が外気導入口11を開放しつつ第1内気導入口12を閉塞し、且つ、第2切替ドア15が第2内気導入口13を開放した状態を示している。このような状態で、遠心式送風機1は、内気と外気とを区分しつつ同時に吸入して吹き出すことが可能である。
【0028】
図1の矢印Aに示すように、第2内気導入口13から導入される内気は、フィルタ20のうち空気導入板61の略直上に位置する領域を通過した後、空気導入板61に形成される空気入口部62から筒状部63の内側を通り、羽根車30を介して下通風路46に流れる。
【0029】
一方、
図1の矢印B、Cに示すように、外気導入口11から導入される外気は、フィルタ20のうち空気導入板61の略直上を除く領域を通過した後、空気導入板61を除く空間から筒状部63の外側を通り、羽根車30に吸い込まれ、上通風路45に流れる。
詳細には、
図1の矢印Bおよび
図3の矢印Dに示すように、空気導入板61を除く領域を流れる空気の一部は、そのまま羽根車30に放射状に吸い込まれる。また、
図1の矢印Cおよび
図3の矢印E、Fに示すように、空気導入板61を除く領域を流れる空気の他の一部は、分離筒60が有する筒状部63の外側左右それぞれの空間から分離筒60の裏側の流路47に回り込んで羽根車30に吸い込まれる。なお、分離筒60の裏側の流路47とは、スクロールケーシング40の上面49およびベルマウス50と、空気導入板61との隙間に形成される流路である。
【0030】
ここで、本実施形態では、フィルタ20から上通風路45に空気が流れる流路の中で空気導入板61の外縁64を含み羽根車30の回転軸301に平行な仮想平面VS(
図1参照)を定義する。そして、
図5に示すように、本実施形態では、その仮想平面VS上の流路断面において、分離筒60を挟んでノーズ部41に近い側の流路断面を第1開口部71と呼び、ノーズ部41から遠い側の流路断面を第2開口部72と呼ぶこととする。
【0031】
図5では、説明のため、断面ではないが、第1開口部71に破線のハッチングを付し、第2開口部72に一点鎖線ハッチングを付している。なお、このことは、後述する第2~第8実施形態で参照する
図7、9、12、14、16、18でも同様である。
【0032】
図4および
図5に示すように、本実施形態では、内外気箱10の中心101は、羽根車30の回転軸301および分離筒60が有する筒状部63の中心軸601に対し第2開口部72側にずれた位置にある。そのため、第2開口部72の流路断面積は、第1開口部71の流路断面積より大きく構成されている。詳細には、本実施形態では、第2開口部72のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積が、第1開口部71のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積より大きく構成されている。
【0033】
以上説明した本実施形態の遠心式送風機1において、第2開口部72の流路断面積を第1開口部71の流路断面積より大きく構成したことの意義を説明する。
【0034】
上述したように、羽根車30の径方向外側に形成される通風路42は、ノーズ部41から周方向の一方に向かい次第に流路面積が拡大するように構成されている。すなわち、羽根車30の翼34の後縁36とスクロールケーシング40の内壁との距離は、ノーズ部41近傍が最も狭く、ノーズ部41から周方向の一方に向かい次第に遠くなる。そのため、羽根車30から通風路42に流れる空気の圧力損失は、ノーズ部41近傍が大きく、ノーズ部41から周方向の一方に向かって次第に小さくなる。したがって、羽根車30に吸い込まれる風量は、ノーズ部41近傍が少なく、ノーズ部41から周方向の一方に向かって次第に多くなるといった特性を有する。そのため、仮に、第1開口部71の流路断面積と第2開口部72の流路断面積とが同一である場合、第1開口部71を経由して羽根車30に吸い込まれる風量は、第2開口部72を経由して羽根車30に吸い込まれる風量より少ないものとなる。その場合、第2開口部72を通過する空気の圧力損失は、第1開口部71を通過する空気の圧力損失より大きいものとなる。このように、第1開口部71を通過する空気の圧力損失と第2開口部72を通過する空気の圧力損失とのバランスが、羽根車30に吸い込まれる風量特性に対応したものでない場合、分離筒60の裏側の流路47を流れる風量が減少する。その結果、分離筒60の裏側の流路47から羽根車30に吸い込まれる風量が減少し、送風機の送風効率が低下することが懸念される。
【0035】
そこで、本実施形態では、内外気箱10の中心101を、羽根車30の回転軸301および分離筒60が有する筒状部63の中心軸601に対して第2開口部72側にずらし、第2開口部72の流路断面積を第1開口部71の流路断面積より大きく構成している。これにより、第1開口部71の流路断面積と第2開口部72の流路断面積とが同一である場合に比べて、第2開口部72を流れる空気の圧力損失が小さくなる。そのため、第1開口部71を通過する空気の圧力損失と第2開口部72を通過する空気の圧力損失とのバランスが、羽根車30に吸い込まれる風量特性に対応するものとなり、分離筒60の裏側の流路47に流れる風量が増加する。したがって、分離筒60の裏側の流路47から羽根車30に吸い込まれる風量が増加し、送風機の送風効率を向上することができる。
【0036】
また、本実施形態では、内外気箱10の中心101を、羽根車30の回転軸301および分離筒60が有する筒状部63の中心軸601に対し第2開口部72側にずらす構成としている。そのため、遠心式送風機1における羽根車30の回転軸方向の体格(すなわち遠心式送風機1の高さ方向の体格)を大きくすることなく、第1開口部71の流路断面積と第2開口部72の流路断面積を調整することが可能である。
また、本実施形態では、内外気箱10の構成および分離筒60の構成を、従来の遠心式送風機から大きく変更することなく、第1開口部71と第2開口部72の流路断面積を調整することが可能である。なお、従来の遠心式送風機とは、内外気箱10の中心101と羽根車30の回転軸301と分離筒60の中心軸601とが一致しているものをいう。
また、本実施形態では、内外気箱10の構成および分離筒60の構成を、従来の遠心式送風機から大きく変更していないので、内外気箱10から分離筒60の内側を通って下通風路46に流れる空気の流れに影響を及ぼすこともない。
【0037】
(第2~第8実施形態)
第2~第8実施形態について説明する。第2~第8実施形態は、第1実施形態に対して分離筒60または内外気箱10の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0038】
(第2実施形態)
図6および
図7に示すように、第2実施形態では、分離筒60が有する空気導入板61は、第1開口部71側に位置する第1面65と、第2開口部72側に位置する第2面66と、その第1面65と第2面66とを接続する段差面67とを有している。第2面66は、第1面65よりもベルマウス50から遠くに配置されている。なお、第2実施形態でも、内外気箱10の中心101は、羽根車30の回転軸301および分離筒60が有する筒状部63の中心軸601に対し第2開口部72側にずれた位置にある。
【0039】
上述した構成により、第2実施形態においても、第2開口部72のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積は、第1開口部71のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積より大きく構成されている。したがって、第2開口部72の流路断面積は、第1開口部71の流路断面積より大きく構成されている。よって、第2実施形態も、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0040】
(第3実施形態)
図8および
図9に示すように、第3実施形態では、分離筒60が有する空気導入板61は、第1開口部71側の部位より第2開口部72側の部位がベルマウス50から遠くなるように、ベルマウス50に対して傾斜している。なお、第3実施形態でも、内外気箱10の中心101は、羽根車30の回転軸301および分離筒60が有する筒状部63の中心軸601に対し第2開口部72側にずれた位置にある。
【0041】
上述した構成により、第3実施形態においても、第2開口部72のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積は、第1開口部71のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積より大きく構成されている。したがって、第2開口部72の流路断面積は、第1開口部71の流路断面積より大きく構成されている。よって、第3実施形態も、第1実施形態等と同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
(第4実施形態)
図10に示すように、第4実施形態も、分離筒60が有する空気導入板61は、第1開口部71側の部位より第2開口部72側の部位がベルマウス50から遠くなるように、ベルマウス50に対して傾斜している。さらに、第4実施形態では、
図10の矢印Sに示すように、空気導入板61のうち空気入口部62の径方向外側の部位は、空気入口部62の周方向においてベルマウス50に対する傾斜率が一定となるようなスロープ状に形成されている。なお、第4実施形態でも、内外気箱10の中心101は、羽根車30の回転軸301および分離筒60が有する筒状部63の中心軸601に対し第2開口部72側にずれた位置にある。
【0043】
上述した構成により、第4実施形態においても、第2開口部72のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積は、第1開口部71のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積より大きく構成されている。したがって、第2開口部72の流路断面積は、第1開口部71の流路断面積より大きく構成されている。よって、第4実施形態も、第1実施形態等と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
さらに、第4実施形態では、空気導入板61のうち空気入口部62の径方向外側の部位を上述したスロープ状に形成することで、分離筒60の裏側の流路47を周方向に流れる風の圧力損失を低減することができる。
【0045】
(第5実施形態)
図11および
図12に示すように、第5実施形態では、分離筒60が有する空気導入板61と筒状部63との接続部のうち第2開口部72側の部位の曲率半径R2は、第1開口部71側の部位の曲率半径R1よりも小さく形成されている。なお、第5実施形態でも、内外気箱10の中心101は、羽根車30の回転軸301および分離筒60が有する筒状部63の中心軸601に対し第2開口部72側にずれた位置にある。
【0046】
上述した構成により、第5実施形態においても、第2開口部72のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積は、第1開口部71のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積より大きく構成されている。したがって、第2開口部72の流路断面積は、第1開口部71の流路断面積より大きく構成されている。よって、第5実施形態も、第1実施形態等と同様の作用効果を奏することができる。
【0047】
(第6実施形態)
図13および
図14に示すように、第6実施形態では、内外気箱10の中心101と羽根車30の回転軸301とは、ほぼ重なる位置にある。そして、第6実施形態では、分離筒60が有する筒状部63の中心軸601は、羽根車30の回転軸301および内外気箱10の中心101に対し第1開口部71側にずれた位置にある。
【0048】
上述した構成により、第6実施形態においても、第2開口部72の流路断面積は、第1開口部71の流路断面積より大きく構成されている。詳細には、第2開口部72のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積は、第1開口部71のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積より大きく構成されている。また、第2開口部72のうち羽根車30の径内側の領域の流路断面積も、第1開口部71のうち羽根車30の径内側の領域の流路断面積より大きく構成されている。したがって、第6実施形態も、第1実施形態等と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
(第7実施形態)
図15および
図16に示すように、第7実施形態では、内外気箱10および空気導入板61は、その一部が、スクロールケーシング40の外縁よりも外側に位置している。そして、スクロールケーシング40の外周より径方向外側の領域には、円弧状の外側流路48が形成されている。外側流路48は、スクロールケーシング40の外周より径方向外側において、スクロールケーシング40の上面49およびベルマウス50に対し空気導入板61とは反対側の領域を含むように形成されている。これにより、第7実施形態では、フィルタ20を通過した空気の一部が、第2開口部72から外側流路48を経由して羽根車30に吸い込まれるように流れる。
【0050】
上述した構成により、第7実施形態においても、第2開口部72の流路断面積は、第1開口部71の流路断面積より大きく構成されている。したがって、第7実施形態も、第1実施形態等と同様の作用効果を奏することができる。
【0051】
(第8実施形態)
図17および
図18に示すように、第8実施形態では、内外気箱10の中心101は、羽根車30の回転軸301に対し第2開口部72側にずれた位置にある。さらに、第8実施形態では、分離筒60が有する筒状部63の中心軸601は、羽根車30の回転軸301に対し第1開口部71側にずれた位置にある。
【0052】
上述した構成により、第8実施形態においても、第2開口部72の流路断面積は、第1開口部71の流路断面積より大きく構成されている。詳細には、第2開口部72のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積は、第1開口部71のうち羽根車30より空気導入板61側の領域の流路断面積より大きく構成されている。また、第2開口部72のうち羽根車30の径内側の領域の流路断面積も、第1開口部71のうち羽根車30の径内側の領域の流路断面積より大きく構成されている。したがって、第8実施形態も、第1実施形態等と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0054】
例えば、上記第1実施形態の説明では、上通風路45に外気が流れ、下通風路46に内気が流れる状態について説明したが、これに限られるものではない。遠心式送風機1は、内外気箱10の第1切替ドア14と第2切替ドア15の位置調整により、上通風路45と下通風路46の両方に、外気のみ又は内気のみが流れるようにすることも可能であるし、内気と外気とを混合した空気が流れるようにすることも可能である。
【0055】
また、例えば、上記第1実施形態の説明では、スクロールケーシング40の車幅方向右側にノーズ部41と空調ケーシングを配置したが、これに限られるものではない。遠心式送風機1は、スクロールケーシング40の車幅方向左側にノーズ部41と空調ケーシングを配置する構成としてもよい。
【0056】
また、例えば、上記第1実施形態の説明では、内外気箱10は、車両前方側から順に、外気導入口11、第1内気導入口12および第2内気導入口13を有するものとして説明したが、これに限られるものではない。内外気箱10は、外気導入口11、第1内気導入口12および第2内気導入口13を、車幅方向に配置してもよく、または、車両後方側から順に配置してもよい。
【0057】
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、内外気二層流式の空調装置に適用され、車室内空気と車室外空気を区分しつつ同時に吸入することが可能な片側吸込式の遠心式送風機は、内外気箱、羽根車、スクロールケーシング、ベルマウス、仕切壁および分離筒を備える。内外気箱は、車室外空気が導入される外気導入口と車室内空気が導入される内気導入口とを有する。羽根車は、モータの駆動により回転し、内外気箱に導入された空気を回転軸方向の一方から吸入し、径方向外側に吹き出す。スクロールケーシングは、羽根車の径方向外側を囲い、外周の一部に設けられたノーズ部から周方向の一方に向かい次第に流路面積が拡大する通風路を形成する。羽根車への空気の吸込口を形成するベルマウスは、環状に形成され、スクロールケーシングのうち羽根車の回転軸方向の一方の端面に設けられる。仕切壁は、羽根車の径方向外側に形成される通風路を羽根車の軸方向の一方の上通風路と軸方向の他方の下通風路とに仕切る。分離筒は、羽根車に対し内外気箱側の領域の一部に設けられる空気導入板、およびその空気導入板に形成される空気入口部から羽根車の径方向内側を通って径方向外側に拡がる形状の筒状部を有する。この遠心式送風機は、内外気箱から空気導入板に流れる空気が空気入口部から筒状部の内側を通り羽根車を介して下通風路に流れ、内外気箱から空気導入板を除く領域に流れる空気が筒状部の外側を通り羽根車を介して上通風路に流れるように構成されている。ここで、内外気箱から上通風路に空気が流れる流路のうち空気導入板の外縁を含み羽根車の回転軸に平行な仮想平面上の流路断面において、分離筒を挟んでノーズ部に近い側の流路断面を第1開口部、ノーズ部から遠い側の流路断面を第2開口部と呼ぶ。このとき、第2開口部の流路断面積は、第1開口部の流路断面積より大きく構成されている。
【0058】
第2の観点によれば、内外気箱の中心は、羽根車の回転軸および分離筒が有する筒状部の中心軸に対し第2開口部側にずれた位置にある。これにより、第2開口部のうち羽根車より空気導入板側の領域の流路断面積を、第1開口部のうち羽根車より空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成することが可能である。
これによれば、遠心式送風機における羽根車の回転軸方向(すなわち遠心式送風機の高さ方向)の体格を大きくすることなく、また、内外気箱の構成および分離筒の構成を大きく変更することなく、第1開口部と第2開口部の流路断面積を調整することが可能である。
【0059】
第3の観点によれば、空気導入板は、第1開口部側に位置する第1面と、第2開口部側に位置し第1面よりもベルマウスから遠くに配置される第2面と、第1面と第2面とを接続する段差面とを有している。これにより、第2開口部のうち羽根車より空気導入板側の領域の流路断面積を、第1開口部のうち羽根車より空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成することが可能である。
【0060】
第4の観点によれば、空気導入板は、第1開口部側の部位より第2開口部側の部位がベルマウスから遠くなるようにベルマウスに対して傾斜している。これにより、第2開口部のうち羽根車より空気導入板側の領域の流路断面積を、第1開口部のうち羽根車より空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成することが可能である。
【0061】
第5の観点によれば、空気導入板のうち空気入口部の径方向外側の部位は、空気入口部の周方向においてベルマウスに対する傾斜率が一定となるようなスロープ状に形成されている。これにより、分離筒の裏側の流路を周方向に流れる風の圧力損失を低減することができる。
【0062】
第6の観点によれば、空気導入板と筒状部との接続部のうち第2開口部側の部位の曲率半径は、第1開口部側の部位の曲率半径よりも小さく形成されている。これにより、第2開口部のうち羽根車より空気導入板側の領域の流路断面積を、第1開口部のうち羽根車より空気導入板側の領域の流路断面積より大きく構成することが可能である。
【0063】
第7の観点によれば、分離筒が有する筒状部の中心軸は、羽根車の回転軸および内外気箱の中心に対し第1開口部側にずれた位置にある。これにより、第2開口部の流路断面積を、第1開口部の流路断面積より大きく構成することが可能である。
これによれば、遠心式送風機における羽根車の回転軸方向(すなわち高さ方向)の体格、および羽根車の回転軸方向に垂直な方向(すなわち幅方向)の体格を大きくすることなく、第1開口部と第2開口部の流路断面積を調整することが可能である。
【0064】
第8の観点によれば、内外気箱の中心は、羽根車の回転軸に対し第2開口部側にずれた位置にあり、且つ、分離筒が有する筒状部の中心軸は、羽根車の回転軸に対し第1開口部側にずれた位置にある。これにより、第2開口部の流路断面積を、第1開口部の流路断面積より大きく構成することが可能である。
【0065】
第9の観点によれば、内外気箱および空気導入板の外縁は、スクロールケーシングの外縁よりも外側に位置している。そして、スクロールケーシングの外周より径方向外側の領域、且つ、ベルマウスに対し空気導入板とは反対側の領域を含むように外側流路が形成されている。そして、内外気箱に導入された空気の一部が第2開口部から外側流路を経由して羽根車に吸い込まれるように構成されている。これにより、第2開口部の流路断面積を第1開口部の流路断面積よりも大きくすることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 遠心式送風機
30 羽根車
40 スクロールケーシング
41 ノーズ部
50 ベルマウス
60 分離筒
61 空気導入板
63 筒状部
71 第1開口部
72 第2開口部