(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】光部品、及びこれを用いた光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20220928BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/12 301
(21)【出願番号】P 2018225301
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 輝洋
(72)【発明者】
【氏名】柴田 康平
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 直樹
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-284097(JP,A)
【文献】米国特許第05032897(US,A)
【文献】特開2002-299486(JP,A)
【文献】特表平11-509372(JP,A)
【文献】特許第4245924(JP,B2)
【文献】米国特許第06014317(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/42 - 6/43
G02B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に実装される光部品であって、
前記配線基板と対向する面にキャビティを有する絶縁性セラミックスの筐体と、
前記キャビティの中に収容される光回路素子と、
前記キャビティを覆う蓋と、
前記筐体の
前記配線基板と対向する面の前記キャビティの外周に配置される突起電極と、
を有し、前記筐体の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも小さく、前記蓋の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする光部品。
【請求項2】
前記筐体と前記蓋を合わせた全体の線膨張係数は、前記配線基板の線膨張係数と釣り合っていることを特徴とする請求項1に記載の光部品。
【請求項3】
前記蓋の前記キャビティと反対側の面の高さ位置は、前記突起電極の高さ位置とそろっていることを特徴とする請求項1または2に記載の光部品。
【請求項4】
前記蓋の前記キャビティと反対側の面の高さ位置は、前記突起電極の高さ位置よりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載の光部品。
【請求項5】
前記蓋の前記キャビティと反対側の面は、はんだ付けを可能にする表面処理が施されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光部品。
【請求項6】
配線基板と、
前記配線基板にフリップチップ実装される光部品と、
を有し、
前記光部品は、
前記配線基板と対向する面にキャビティを有する絶縁性セラミックスの筐体と、
前記キャビティの中に収容される光回路素子と、
前記キャビティを覆う蓋と、
前記筐体の
前記配線基板と対向する面の前記キャビティの外周に配置される突起電極と、
を有し、前記筐体の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも小さく、前記蓋の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
前記配線基板は、前記突起電極と接合される接続パッドの配列と、前記接続パッドの配列の内側に配置される接合層とを有し、
前記蓋は、前記接合層に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光部品、及びこれを用いた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光デバイスが実装された光モジュールでは、小型化と高速化の要請に加えて、プラガブルな形態が求められている。データセンタ内の短距離光通信だけではなく、メトロネットワーク用のインタフェースとしても、プラガブルな光トランシーバモジュールが主流になりつつある。小型化と高速化のために、光デバイスと制御回路を同一のパッケージ内に組み込む構成も採用されつつある。
【0003】
LSI等の電子デバイスでは、微小なはんだボールを狭ピッチで配置したBGA(Ball Grid Array)によるフリップチップ実装が一般的である。半導体ICチップをキャビティ内に配置してカバーを設ける構成が知られている(たとえば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5032897号公報
【文献】国際公開第97/04629号(特表平11-509372号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光部品をパッケージ化する場合、光通信の高速特性と整合するように設定されたインピーダンスで接合電極(はんだボール等)のサイズが決まる。このため、応力に対するマージンが厳しく、外部応力によって接合箇所にクラック等が入りやすい。光部品と基板をピラー等の突起電極で接合する場合にも同様の問題が生じる。
【0006】
電子デバイスをボールグリッドアレイ(BGA)でフリップチップ実装する場合は、はんだボールによる接続強度の弱さを補うために、一般的にアンダーフィル剤による樹脂封止が行われている。しかし、光部品の場合、高速の信号伝送を担う接合部には、誘電率の影響を排除するためにアンダーフィル剤を使用できない箇所がある。
【0007】
本発明は、光部品を基板に接続する接続部にかかる応力を緩和して接続の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
配線基板に実装される光部品は、
キャビティを有する絶縁性セラミックスの筐体と、
前記キャビティの中に収容される光回路素子と、
前記キャビティを覆う蓋と、
前記筐体の前記キャビティの外周に配置される突起電極と、
を有し、前記筐体の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも小さく、前記蓋の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
光部品を基板に接続する接続部にかかる応力を緩和して、接続の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の光部品が適用される光モジュールの構成例を示す図である。
【
図2】
図1で用いられる光部品の概略断面図である。
【
図3】
図1のX-X’ラインに沿った実装構造の断面図である。
【
図4】蓋の材料の違いによる応力の分布を示す図である。
【
図6】はんだボールにかかる最大応力のボール径依存性を示す図である。
【
図9】
図8の光部品が実装される配線基板の概略図である。
【
図11】光部品のさらに別の変形例を示す図である。
【
図12】
図11の光部品が実装される配線基板の概略図である。
【
図14】光部品を用いた光モジュールの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態の光部品10を用いた光モジュール1の概略図である。光モジュール1は、たとえばプラガブル光トランシーバであり、光伝送装置2に対して挿抜可能な構成となっている。
【0012】
光モジュール1は、パッケージ21内にモジュール基板としての配線基板27を有し、配線基板27に光部品10、光源ユニット22、電気回路部品24、DSP(デジタル信号プロセッサ)25が実装されている。この例では、光モジュール1に光源ユニット22とDSP25が内蔵されているが、光源ユニット22とDSP25の少なくとも一方をパッケージ21の外部に配置してもよい。
【0013】
光モジュール1は、光伝送装置2との接続側にプラガブルな電気コネクタ26を有し、光伝送路側に、光ファイバ31a、31bに接続される光コネクタ23を有する。光コネクタ23は、光ファイバ31a、31b付きのプラガブルなコネクタであってもよい。
【0014】
光部品10は、後述するように、筐体内に収容された光回路素子105を有し、配線基板27にフリップチップ実装されている。光部品10は、光送受信のフロントエンド回路として機能し、光電気(O/E)変換回路101と、電気光(E/O)変換回路102を有する。
【0015】
O/E変換回路101は、たとえば、シリコンフォトニクス技術で形成された光導波路の回路と、受光素子を有する。光導波路で形成される回路要素は、たとえば、偏波ビームスプリッタ、90°ハイブリッド光ミキサ等を含む。受光素子としてゲルマニウム(Ge)フォトダイオードを用いる場合は、他の回路要素とともに受光素子もシリコン基板に作り込まれていてもよい。化合物半導体の受光素子を用いる場合は、シリコン基板に外付けで配置されてもよい。
【0016】
E/O変換回路102は、たとえばシリコンフォトニクス技術で形成された電界吸収型の半導体光変調器を有する。
【0017】
光モジュール1が電気コネクタ26によって光伝送装置2に接続されている状態で、光ファイバ31aから受信された光信号は、光コネクタ23を介して光部品10のO/E変換回路101に入力される。O/E変換回路101は、たとえば光信号を偏波分離し、光源ユニット22からの局発光を用いて、90°ハイブリッド光ミキサで偏波ごとに同相(I)成分と直交(Q)成分を検波する。各偏波の各位相成分は対応する受光素子で検出され、光電流が出力される。
【0018】
光部品10から出力される光電流は、配線基板27を介して電気回路部品24に入力される。光電流は、電気回路部品24のアンプ241で電圧信号に変換され、増幅されて、DSP25に入力される。DSP25で、A/D変換と波形ひずみの補償を行って電気コネクタ26から光伝送装置2に送られる。
【0019】
送信側では、光伝送装置2から供給されるデータ信号は、DSP25によって誤り訂正符号化、データの論理値に応じた電界情報(位相/振幅)へのマッピング、波形処理等を受けて、電気回路部品24のドライバ242に入力される。ドライバ242は、入力されたデジタル信号から高速のアナログ駆動信号を生成する。生成されたアナログ駆動信号は配線基板27を介して光部品10のE/O変換回路102に入力される。
【0020】
E/O変換回路102の光変調器は、光源ユニット22から入力される光をアナログ駆動信号で変調し、変調光信号を光ファイバ31bに出力する。
【0021】
このような光モジュール1に用いられる光部品10は、他の部品とともに配線基板27に実装され、配線基板27を介して電気回路部品24との間で高速の電気信号のやり取りを行う。そのため、光部品10と配線基板27との接続部には信頼性の高い接続強度が求められる。
【0022】
図2は、
図1で用いられる光部品10の概略断面図である。光部品10は、絶縁性のセラミックの筐体11と、筐体11に形成されたキャビティ12内に配置される光回路素子105と、キャビティを覆う蓋15を有する。筐体11のキャビティ12の外周には、配線基板27への実装用の突起電極が多数形成されている。この例で、突起電極ははんだボール18である。
【0023】
はんだ材料としては、光部品10の接続に用いるため、低温から中温系の材料が望ましく、SnAgCu(SAC)のほか、Sn-In-Ag-Bi、Sn-Ag-Bi-Cu、Sn-An-BVi、Sn-Bi、Sn-In等で形成する。
【0024】
筐体11には、電気配線16が形成され、はんだボール18の少なくとも一部は電気配線16と接続されている。
図2の例では、筐体11に3層の電気配線16a~16cが形成され、電気配線16cに接続される電極パッド19にはんだボール18が搭載されているが、この例に限定されず、必要な総数の多層配線が形成されていてもよい。
【0025】
筐体11は、多層配線の形成が可能、かつ蓋15による封止に耐え得る強度を有していることが望ましい。一例として、筐体11を絶縁性のセラミックスで形成する。絶縁性セラミックスとして、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)等を用いることができる。
【0026】
アルミナ、窒化アルミ、ステアタイトの線膨張係数は7ppm/℃前後、ムライトの線膨張係数は約4ppm/℃、フォルステライトの線膨張係数は10.5ppm/℃程度であり、配線基板27との間で線膨張係数の差が大きい。配線基板27にFR-4等の樹脂基材を用いる場合、その線膨張係数は13ppm/℃、樹脂基材に設けられる配線を銅(Cu)配線とする場合、配線の線膨張係数は17ppm/℃である。光部品10に使用される主な材料のおよその線膨張係数をリストすると以下のようになる。
【0027】
シリコン(光回路素子) 6ppm/℃
アルミナ(筐体) 7ppm/℃
SACはんだ(突起電極) 20ppm/℃
FR-4(配線基板) 13ppm/℃
Cu(配線基板の配線層) 17ppm/℃
【0028】
実施形態では、筐体11と配線基板27との間の線膨張係数の差を吸収するために、蓋15を線膨張係数の大きな材料で形成する。蓋15の線膨張係数は、配線基板27の線膨張係数よりも大きく、一方、筐体11の線膨張係数は、配線基板の線膨張係数よりも小さい。筐体11の線膨張係数をCTECASE、配線基板27の線膨張係数をCTEPCB、蓋15の線膨張係数をCTELIDとすると、一例として
CTECASE < CTEPCB < CTELID
を満たす材料で光部品10を形成する。良好な構成例では、蓋15と筐体11を合わせた全体の線膨張係数が、配線基板27の線膨張係数とほぼ等しくなるように設計する。このような条件を満たす蓋15の材料として、Cu,Al、SUS(ステンレス鋼)等を用いることができる。
【0029】
光回路素子105は、光導波路で形成された光回路106を有する。光回路106のうち、光電気変換と電気光変換を担う部分は、ボンディングワイヤ17等の接続手段によって、筐体11に形成された配線16に接続されている。配線16は、ボンディングワイヤ17によって、たとえば光変調器に高速駆動信号を印加するRF電極、DCバイアスを印加するDC電極、フォトダイオードから光電流を出力する出力電極等に接続されている。
【0030】
図2の例では、光回路素子105は、キャビティ12の底面に設けられたマウント13に配置されている。光回路素子105が半導体材料で形成される場合は厳密な温度制御は必要ないが、たとえば光変調器が電気光学結晶材料で形成される場合は、マウント13に替えて温度制御素子を配置してもよい。
【0031】
筐体11は蓋15によって密封され、キャビティ12内への水分等の侵入を防止している。気密密閉とすることで、光回路106と光ファイバとの間の光学的な結合にレンズ等の光学素子が使用される場合でも、光学素子への悪影響を防止することができる。
【0032】
筐体11の底面は、放熱面14となっている。放熱面14とマウント13を熱伝導率の高い同じ材料、たとえばAlNで形成してもよい。放熱面14を、はんだボール18による接合面と反対側に設けることで、電気的な接合部と光回路素子105から発生する熱を筐体11の外部に逃がすことができる。
【0033】
光部品10の作製では、たとえば、筐体11のキャビティ12内に光回路素子105を配置し、筐体11の配線16と光回路素子105をワイヤボンディングで接続する。キャビティ12を蓋15で覆い、蓋15の周囲にはんだボール18を配置してリフローで形を整えることで光部品10が得られる。
【0034】
図3は、光部品10を配線基板27に実装した実装構造20を、
図1のX-X’ラインに沿った概略断面図で示している。光部品10は、配線基板27にフリップチップ実装されている。光部品10を、フリップチップボンダ等を用いて配線基板27に位置合わせして搭載し、はんだボール18と配線基板27に形成された接続電極273をリフローにて接合する。
【0035】
接続電極273は、たとえば配線基板27に近い側の第1導電層271と、第1導電層271の上に配置される第2導電層272を含む。第1導電層271は、一例としCu/Auめっき層であり、第2導電層272ははんだ層である。はんだ層として、SnAgCu(SAC)の他に、Sn-In-Ag-Bi、Sn-Ag-Bi-Cu、Sn-An-BVi、Sn-Bi、Sn-In等の低温~中温度系の材料を用いてもよい。
【0036】
光部品10のはんだボール18はキャビティ12の外周に設けられているので、接続面積が限られ、応力に対する強度が不十分になりやすい。はんだボール18の径を大きくすることで接合強度を上げることはできるが、高速伝送におけるインピーダンス整合の要請から、はんだボール18のピッチとサイズが決まってしまう。光部品10の全体をアンダーフィル剤で封止する場合は、接合部にかかる応力を吸収することができるが、高速伝送における誘電率の影響を排除するために、アンダーフィル剤を適用できない箇所がある。
【0037】
実施形態では、光部品10の全体としての熱膨張率と、配線基板27の熱膨張率を釣り合わせることで、熱膨張率の差による応力の影響を緩和する。光部品10の蓋15を配線基板27の熱膨張率よりも大きな熱膨張率の材料で形成し、接合部の近傍で筐体11と配線基板27との間の熱膨張率の差を吸収する。配線基板27の樹脂基材と金属配線を含む全体の線熱膨張係数が14~15ppm/℃とすると、蓋15の熱膨張係数は17~30ppm/℃であるのが望ましい。より好ましくは、筐体11と蓋15を合わせた全体の線膨張係数が、配線基板27の熱膨張係数と略等しくなるのが望ましい。
【0038】
図4は、蓋15の材料の違いによる応力の分布を示す図である。横軸は材料の線膨張係数(ppm/℃)、縦軸ははんだボール18にかかるミーゼス応力(MPa)である。蓋15の材料名の後ろに記載されているカッコ内の表記は、はんだボール18の材料である。白丸が-40℃での応力、ハッチ付きのマル印は100℃での応力である。
【0039】
図5は、
図4の計算のためのモデル図である。筐体11として、底面のサイズ(L×W)が14mm×10mm、高さ(h)が3.5mmのアルミナケースを用いる。アルミナケースの外周に沿って配置されるはんだボールの総数は153個、直径は200μmである。ハンダボールキャビティを密封する蓋15の材料と、キャビティの外周に配置されるはんだボール18の材料を、様々に変更する。
【0040】
図4に戻って、蓋15の材料として、配線基板27よりも大きな線膨張係数を有するものが望ましい。金属配線が形成された樹脂基材の配線基板の線膨張係数を13~15ppm/℃とすると、これよりも線膨張係数の大きいCu、Al、Zn、SUS等で蓋15を形成するのが望ましい。図中の「Inv」はNi-Fe合金材料である。この材料は線膨張係数が小さく、筐体11と配線基板27の応力の差を十分に吸収することができない。
【0041】
亜鉛(Zn)は、線膨張係数は大きいが、蓋15をZnで形成したときにSACのはんだボール18にかかる応力が大きくなる。
【0042】
図4の計算結果から、線膨張係数の関数としての応力をフィッティングすると、20ppm/℃前後ではんだボール18にかかる応力が最小となり、蓋15の材料として、線膨張係数が18~30ppm/℃の材料を用いるのが望ましい。この場合、はんだボールの材料はSn-Bi、Sn-Inのような低温系材料でもよいし、SACのような中温系の材料を用いることも可能である。
【0043】
図6は、はんだボール18の径の関数としてはんだボールにかかる最大応力を示す図である。はんだボール18として、Sn
95.5Ag
3.5Cu
0.7を使用する。
【0044】
はんだボール18の径が小さくなるほど、1個当たりのはんだボール18にかかる応力は大きくなる。光部品10と配線基板27の間の接続の信頼性を確保するためには、
図5のモデルでは、はんだボール18の径は200μm以上であるのが望ましい。一方、高速伝送特性を維持する観点からは、はんだボール18の径は250μm以下であることが望ましい。
【0045】
図4~
図6のシミュレーションの傾向は、はんだボールだけではなく、ピラー電極、カラム電極等の突起電極全般に当てはまる。
【0046】
図7は、はんだボール18の材料の別の例を示す。上述した低温~中温系のはんだ材料の他に、Cuコア、または耐熱性の樹脂コアのはんだボールを用いることができる。この例では、はんだボール18Aは、樹脂コア181をNi膜182、及びSu/Ag膜184の順にめっき被膜して得られる。
【0047】
樹脂コア181とすることで、はんだボール18Aにかかる応力を緩和することができる。Cuコアの場合も、応力緩和効果を有し、また導電性に優れる。樹脂コアあるいはCuコアのはんだボールは、めっき層の種類と厚さを制御することで、はんだボールのサイズと融点の制御が容易になる。めっきとして、Su/Ag膜184に替えて、SACめっきを用いることによっても、耐衝撃性と温度サイクル性を向上することができる。
【0048】
<変形例1>
図8は、光部品10の変形例である光部品10Aの概略図である。光部品10Aでは、蓋15Aの外側の表面に表面処理層151が形成されている。表面処理層151は、たとえばはんだ付けが可能なめっき層である。蓋15Aのキャビティ12に対向する面と反対側の面に表面処理層151を設けることで、蓋15Aを光部品10Aの接合に利用することができる。
【0049】
図9は、
図8の光部品10Aが実装される配線基板27Aの構成例である。配線基板27Aの表面には、光部品10Aのはんだボール18を受け取る位置に、接続電極273がたとえば矩形を描いて配置されている。接続電極273は、第1導電層271と第2導電層272の積層で形成されていてもよい。
【0050】
接続電極273の配列の内側に、アイランド状の接合層276が配置されている。接合層276は、たとえば第1導電層275と、第1導電層275の上に形成された第2導電層274の積層構造となっている。接合層276の第1導電層275は、接続電極273の第1導電層271と同じ工程で形成されてもよい。接合層276は、接続電極273よりも厚く、接合層276の第2導電層274は、たとえば、はんだペーストを印刷法、スプレー法等で塗布して形成される。第2導電層274の厚さは、光部品10Aのはんだボール18の高さとほぼ同じである。
【0051】
図10は、
図9の配線基板27Aに
図8の光部品10Aを実装した実装構造20Aの概略図である。光部品10Aのはんだボール18をリフローで接続電極273に接合するときに、光部品10Aの蓋15Aに設けられた表面処理層151と、配線基板27Aの接合層276が溶融して互いに固定される。
【0052】
蓋15Aを配線基板27Aとの接合に利用することで、光部品10Aと配線基板27Aとの接合強度が向上し、はんだボール18への応力集中を緩和することができる。これによって、光部品10Aと光モジュール1の動作の信頼性が向上する。
【0053】
<変形例2>
図11は、光部品10の別の変形例として、光部品10Bを示す。光部品10Bでは、蓋15Bの外側表面の高さ位置と、はんだボール18の高さ位置を合わせる。別の言い方をすると、蓋15Bの外側表面の位置を、はんだボール18を搭載する筐体11の上端面の位置よりも高くする。
【0054】
蓋15Bの外側表面には、表面処理層151が形成されている。表面処理層151は、たとえばはんだ付けが可能なめっき層である。蓋15Bのキャビティ12に対向する面と反対側の面に表面処理層151を設けることで、蓋15Bを光部品10Bの接合に利用することができる。
【0055】
図12は、
図11の光部品10Bが実装される配線基板27Bの構成例である。配線基板27Bの表面には、光部品10Bのはんだボール18を受け取る位置に、接続電極273がたとえば矩形を描いて配置されている。接続電極273は、第1導電層271と第2導電層272の積層で形成されていてもよい。
【0056】
接続電極273の配列の内側に、パッド状の接合層278が配置されている。接合層278は、たとえば第1導電層275と、第1導電層275の上に形成された第2導電層277の積層構造となっている。接合層278の第1導電層275は、接続電極273の第1導電層271と同じ工程で形成されてもよい。接合層278の第2導電層277は、接続電極273の第2導電層272と同じ工程で形成されてもよい。
【0057】
図13は、
図12の配線基板27Bに
図11の光部品10Bを実装した実装構造20Bの概略図である。光部品10Bのはんだボール18をリフローで接続電極273に接合するときに、光部品10Bの蓋15Bに設けられた表面処理層151と、配線基板27Bの接合層278が溶融して互いに固定される。
【0058】
蓋15Bを配線基板27Bとの接合に利用することで、光部品10Bと配線基板27Bとの接合強度が向上し、はんだボール18への応力集中を緩和することができる。これによって、光部品10Aと光モジュール1の動作の信頼性が向上する。
【0059】
<その他の変形例>
図14は、光部品10を搭載した別の光モジュール1Aの概略図である。光モジュール1Aは、光フロントエンドの機能を有し、たとえば、デジタルコヒーレントトランシーバの構成部品として用いられる。光部品10に替えて、光部品10A、10Bも適用可能である。
【0060】
光モジュール1は、パッケージ21A内にモジュール基板としての配線基板27を有する。配線基板27に、光部品10と電気回路部品24が実装されている。受信光を入力する光ファイバ31aと、送信光を出力する光ファイバ31bと、光源ユニット22からの光を入力する光ファイバ31cが、光コネクタ23によって光モジュール1に接続され、光部品10との間で光の入出力を行う。
【0061】
光部品10は、配線基板27にフリップチップ実装されて、電気回路部品24と電気的に接続されている。電気回路部品24は、たとえば、フレキシブルプリント回路(FPC)基板36によって外部の信号処理回路(DSP等)と接続され、高速の電気信号の入出力が行われる。FPC基板36の他に、光モジュール1Aに制御用の入出力端子が設けられていてもよい。
【0062】
光部品10の光回路素子105と、電気回路部品24の動作は、
図1を参照して説明したとおりであり、重複する説明を省略する。
【0063】
光回路素子105は、光部品10のキャビティ12内に配置され、蓋15によって密封されている。蓋15と筐体11を組み合わせた構成の熱膨張率と、配線基板27の熱膨張率が釣り合うように設計されているので、接続用のはんだボール18にかかる応力が緩和されている。変形例のように、蓋15Aまたは15Bの外側表面にはんだ付けが可能な材料で表面処理層151を設ける場合は、光部品10と配線基板27との接続面積が増大して、接続信頼性を向上することができる。
【0064】
光部品とこれを適用した光モジュールは、上述した構成例に限定されない。たとえば、光モジュールを、光送信モジュール、または光受信モジュールとしてもよい。光部品10を光送信モジュールに適用する場合は、絶縁性セラミックスの筐体11のキャビティ12内にリチウムナイオベート(LiNbO3)の光変調器を収容してもよい。この場合も、絶縁性のセラミックスと蓋15で水分の侵入を防止した気密パッケージを形成することができる。また、マウント13に替えて温度制御素子を配置してもよい。
【0065】
光部品10を光受信モジュールに適用する場合は、たとえば、光回路素子105をInP等の化合物半導体で形成して、90°ハイブリット光ミキサとPDを含む/集積回路としてもよい。
【0066】
いずれの場合も、光回路素子105を収容する筐体11と蓋15を、配線基板27と釣り合う熱膨張率となるように設計することで、光部品10の接続部にかかる応力を緩和して、接続の信頼性を向上することができる。
【0067】
以上の説明に対し、以下の付記を呈示する。
(付記1)
配線基板に実装される光部品であって、
キャビティを有する絶縁性セラミックスの筐体と、
前記キャビティの中に収容される光回路素子と、
前記キャビティを覆う蓋と、
前記筐体の前記キャビティの外周に配置される突起電極と、
を有し、前記筐体の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも小さく、前記蓋の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする光部品。
(付記2)
前記筐体と前記蓋を合わせた全体の線膨張係数は、前記配線基板の線膨張係数と釣り合っていることを特徴とする付記1に記載の光部品。
(付記3)
前記蓋の前記キャビティと反対側の面の高さ位置は、前記突起電極の高さ位置とそろっていることを特徴とする付記1または2に記載の光部品。
(付記4)
前記蓋の前記キャビティと反対側の面の高さ位置は、前記突起電極の高さ位置よりも低いことを特徴とする付記1または2に記載の光部品。
(付記5)
前記蓋の前記キャビティと反対側の面は、はんだ付けを可能にする表面処理が施されていることを特徴とする付記1~4のいずれかに記載の光部品。
(付記6)
前記筐体の面であって前記蓋と反対側の面は、放熱面であることを特徴とする付記1~5のいずれかに記載の光部品。
(付記7)
前記突起電極は樹脂コアまたは銅コアのはんだボールであることを特徴とする付記1~6のいずれかに記載の光部品。
(付記8)
前記突起電極の径は200μm~250μmであることを特徴とする付記1~6のいずれかに記載の光部品。
(付記9)
前記筐体には電気配線が形成されており、前記突起電極の少なくとも一部は前記電気配線を介して前記光回路素子に接続されていることを特徴とする付記1~8のいずれかに記載の光部品。
(付記10)
前記筐体には電気配線が形成されており、前記光回路素子はワイヤボンディングで前記電気配線に接続されていることを特徴とする付記1~9のいずれかに記載の光部品。
(付記11)
配線基板と、
前記配線基板にフリップチップ実装される光部品と、
を有し、
前記光部品は、
キャビティを有する絶縁性セラミックスの筐体と、
前記キャビティの中に収容される光回路素子と、
前記キャビティを覆う蓋と、
前記筐体の前記キャビティの外周に配置される突起電極と、
を有し、前記筐体の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも小さく、前記蓋の線膨張係数は前記配線基板の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする光モジュール。
(付記12)
前記配線基板は、前記突起電極と接合される接続電極の配列と、前記接続電極の配列の内側に配置される接合層とを有し、
前記蓋は、前記接合層に固定されていることを特徴とする付記11に記載の光モジュール。
(付記13)
前記接合層は前記接続電極よりも厚く、
前記接合層の厚さと、前記突起電極の高さはほぼ同じであることを特徴とする付記12に記載の光モジュール。
(付記14)
前記接合層と前記接続電極の厚さは同じであり、
前記光部品の前記蓋の外側表面の高さ位置と前記突起電極の高さ位置がそろっていることを特徴とする付記12に記載の光モジュール。
(付記15)
前記光回路素子は、光電気変換回路と電気光変換回路の少なくとも一方を有し、
前記光部品は、電気回路部品とともに前記配線基板に実装されていることを特徴とする付記11~14のいずれかに記載の光モジュール。
(付記16)
前記光部品を外部の光配線に接続する光コネクタと、前記電気回路部品を外部の装置に接続する電気コネクタを有することを特徴とする付記15に記載の光モジュール。
【符号の説明】
【0068】
1、1A 光モジュール
2 光伝送装置
10、10A,10B 光部品
11 筐体
12 キャビティ
13 マウント
14 放熱面
15、15A、15B 蓋
151 表面処理層
16、16a~16c 電気配線
17 ボンディングワイヤ
18、18A はんだボール(突起電極)
20、20A、20B 実装構造
21 パッケージ
22 光源ユニット
23 光コネクタ
24 電気回路部品
25 DSP
105 光回路素子
27、27A,27B 配線基板
273 接続電極
276,278 接合層