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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】物体検知装置および物体検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/32 20060101AFI20220928BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20220928BHJP
【FI】
G01S15/32
G01S15/931
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018236665
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020098159
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
(72)【発明者】
【氏名】松浦 充保
(72)【発明者】
【氏名】野呂 覚
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008044366(DE,A1)
【文献】特表2017-508133(JP,A)
【文献】特表2010-529472(JP,A)
【文献】特開2012-168122(JP,A)
【文献】特開2017-026604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0031701(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/64
G01S 13/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の物体(B)を検知するように構成された物体検知装置(1)であって、
送信波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(20A)を駆動する駆動信号を生成するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記送信波の前記物体による反射波を受信する受信器(21)による受信結果に対応する受信信号に基づいて、前記物体を検知するように設けられた検知部(42)と、
を備え、
前記駆動信号生成部は、第一最低周波数(Fti1)と第一最高周波数(Ftx1)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である第一周波数帯域(Bt1)にて時間的に変化する第一駆動信号(SD1)と、第二最低周波数(Fti2)と第二最高周波数(Ftx2)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域であって前記第一周波数帯域とは平均周波数または中心周波数である中間周波数(Ftc2)が異なり且つ前記第一周波数帯域と重複する第二周波数帯域(Bt2)にて時間的に変化する第二駆動信号(SD2)とを選択的に出力し、
前記検知部は、前記第一駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号とし、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合の当該第二駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号とすると、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する、
物体検知装置。
【請求項2】
前記駆動信号生成部が前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とのうちのいずれを出力するかを制御するように設けられた送信制御部(41)をさらに備えた、
請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
周囲の物体(B)を検知するように構成された物体検知装置(1)であって、
送信波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(20A)を駆動する駆動信号を生成して前記送信部に出力するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記駆動信号生成部が、第一最低周波数(Fti1)と第一最高周波数(Ftx1)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である第一周波数帯域(Bt1)にて時間的に変化する第一駆動信号(SD1)と、第二最低周波数(Fti2)と第二最高周波数(Ftx2)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域であって前記第一周波数帯域とは平均周波数または中心周波数である中間周波数(Ftc2)が異なり且つ前記第一周波数帯域と重複する第二周波数帯域(Bt2)にて時間的に変化する第二駆動信号(SD2)とのうちのいずれを前記駆動信号として出力するかを制御するように設けられた送信制御部(41)と、
前記送信波の前記物体による反射波を受信する受信器(21)による受信結果に対応する受信信号に基づいて、前記物体を検知するように設けられた検知部(42)と、
を備え、
前記検知部は、前記第一駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号とし、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合の当該第二駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号とすると、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する、
物体検知装置。
【請求項4】
前記第一周波数帯域および前記第二周波数帯域は、前記第一最低周波数と前記第二最低周波数とが異なり、且つ、前記第一最高周波数と前記第二最高周波数とが異なるように設定された、
請求項1~3のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記第一周波数帯域および前記第二周波数帯域は、前記第一最低周波数よりも前記第二最低周波数の方が高周波数となり、且つ、前記第一最高周波数よりも前記第二最高周波数の方が高周波数となるように設定された、
請求項4に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記第一最低周波数は、前記送信部における所定の送信周波数帯域の下限周波数であり、
前記第二最高周波数は、前記送信周波数帯域の上限周波数である、
請求項5に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記第一駆動信号は、前記第一最高周波数に向かって周波数が上昇する周波数変化を含み、
前記第二駆動信号は、前記第二最低周波数に向かって周波数が低下する周波数変化を含む、
請求項1~6のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項8】
前記第一駆動信号は、前記第一最低周波数から前記第一最高周波数に周波数が上昇する周波数変化を含み、
前記第二駆動信号は、前記第二最高周波数から前記第二最低周波数に周波数が低下する周波数変化を含む、
請求項7に記載の物体検知装置。
【請求項9】
周囲の物体(B)を検知する物体検知方法であって、
送信波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(20A)を駆動する駆動信号を生成するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記送信波の前記物体による反射波を受信する受信器(21)による受信結果に対応する受信信号に基づいて、前記物体を検知するように設けられた検知部(42)と、
を用い、
前記駆動信号として、第一最低周波数(Fti1)と第一最高周波数(Ftx1)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である第一周波数帯域(Bt1)にて時間的に変化する第一駆動信号(SD1)と、第二最低周波数(Fti2)と第二最高周波数(Ftx2)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域であって前記第一周波数帯域とは平均周波数または中心周波数である中間周波数(Ftc2)が異なり且つ前記第一周波数帯域と重複する第二周波数帯域(Bt2)にて時間的に変化する第二駆動信号(SD2)とを選択的に出力し、
前記第一駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号とし、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合の当該第二駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号とすると、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する、
物体検知方法。
【請求項10】
前記駆動信号生成部に前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とのうちのいずれを出力させるかを制御する、
請求項9に記載の物体検知方法。
【請求項11】
周囲の物体(B)を検知する物体検知方法であって、
送信波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(20A)を駆動する駆動信号を生成するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記送信波の前記物体による反射波を受信する受信器(21)による受信結果に対応する受信信号に基づいて、前記物体を検知するように設けられた検知部(42)と、
を用い、
前記駆動信号として、第一最低周波数(Fti1)と第一最高周波数(Ftx1)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である第一周波数帯域(Bt1)にて時間的に変化する第一駆動信号(SD1)と、第二最低周波数(Fti2)と第二最高周波数(Ftx2)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域であって前記第一周波数帯域とは平均周波数または中心周波数である中間周波数(Ftc2)が異なり且つ前記第一周波数帯域と重複する第二周波数帯域(Bt2)にて時間的に変化する第二駆動信号(SD2)とのうちのいずれを前記駆動信号生成部に出力させるかを制御し、
前記第一駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号とし、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合の当該第二駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号とすると、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する、
物体検知方法。
【請求項12】
前記第一最低周波数と前記第二最低周波数とが異なり、且つ、前記第一最高周波数と前記第二最高周波数とが異なる、
請求項9~11のいずれか1つに記載の物体検知方法。
【請求項13】
前記第一最低周波数よりも前記第二最低周波数の方が高周波数となり、且つ、前記第一最高周波数よりも前記第二最高周波数の方が高周波数となる、
請求項12に記載の物体検知方法。
【請求項14】
前記第一最低周波数は、前記送信部における所定の送信周波数帯域の下限周波数であり、
前記第二最高周波数は、前記送信周波数帯域の上限周波数である、
請求項13に記載の物体検知方法。
【請求項15】
前記第一駆動信号は、前記第一最高周波数に向かって周波数が上昇する周波数変化を含み、
前記第二駆動信号は、前記第二最低周波数に向かって周波数が低下する周波数変化を含む、
請求項9~14のいずれか1つに記載の物体検知方法。
【請求項16】
前記第一駆動信号は、前記第一最低周波数から前記第一最高周波数に周波数が上昇する周波数変化を含み、
前記第二駆動信号は、前記第二最高周波数から前記第二最低周波数に周波数が低下する周波数変化を含む、
請求項15に記載の物体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の物体を検知する物体検知装置および物体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサを用いて物体を検知する装置が知られている。この種の物体検知装置を車両に搭載して障害物検知に用いた場合、混信等により物体の検知精度が低下する場合があり得る。混信は、例えば、自車両の周辺に存在する他車両に搭載された超音波センサから送信された超音波を、自車両に搭載された超音波センサが受信することで生じ得る。あるいは、かかる混信は、例えば、自車両に搭載された複数の超音波センサのうちの一つが、他の一つから送信された超音波を受信することで生じ得る。
【0003】
ところで、特許文献1は、超音波マルチセンサアレイを開示する。特許文献1に記載の超音波マルチセンサアレイは、少なくとも2つの送信ユニットと、少なくとも1つの受信ユニットとを有する。いくつかの送信ユニットは、並行して操作することが可能である。
【0004】
特許文献1に記載の超音波マルチセンサアレイにおいては、並列動作を可能とするために、超音波パルスが符号化される。具体的には、同時に動作する複数の送信ユニットにおける個々のパルス符号化のため、搬送波信号の周波数が線形変調される。すなわち、第一の送信ユニットの搬送波信号の周波数は、パルス持続時間中に線形的に増加される。一方、第二の送信ユニットの搬送波信号の周波数は、パルス持続時間中に線形的に低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第10106142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術を利用すれば、自車両に搭載された超音波センサは、受信波が、自身の送信した超音波の反射波であるか否かを識別することが可能となる。具体的には、自身の送信した超音波の周波数変化と同様の周波数変化が受信波に含まれるか否かに基づいて、かかる識別が行われる。所望の識別精度が得られれば、上記のような混信の問題は解決され得る。
【0007】
しかしながら、超音波を発信する発信器として用いられるトランスデューサを含む、送信部は、所定の共振周波数を有している。かかる共振周波数から離れた駆動周波数では、送信部の追従性が悪い。このため、特許文献1に開示された技術のように駆動周波数を単に線形的に増加あるいは低減させても、所望の識別精度が得られにくくなる。
【0008】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、識別精度をよりいっそう向上し得る装置構成および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の物体検知装置(1)は、周囲の物体(B)を検知するように構成されている。
この物体検知装置は、
送信波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(20A)を駆動する駆動信号を生成するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記送信波の前記物体による反射波を受信する受信器(21)による受信結果に対応する受信信号に基づいて、前記物体を検知するように設けられた検知部(42)と、
を備え、
前記駆動信号生成部は、第一最低周波数(Fti1)と第一最高周波数(Ftx1)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である第一周波数帯域(Bt1)にて時間的に変化する第一駆動信号(SD1)と、第二最低周波数(Fti2)と第二最高周波数(Ftx2)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域であって前記第一周波数帯域とは平均周波数または中心周波数である中間周波数(Ftc2)が異なり且つ前記第一周波数帯域と重複する第二周波数帯域(Bt2)にて時間的に変化する第二駆動信号(SD2)とを選択的に出力し、
前記検知部は、前記第一駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号とし、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合の当該第二駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号とすると、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する。
請求項3に記載の物体検知装置(1)は、周囲の物体(B)を検知するように構成されている。
この物体検知装置は、
送信波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(20A)を駆動する駆動信号を生成して前記送信部に出力するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記駆動信号生成部が、第一最低周波数(Fti1)と第一最高周波数(Ftx1)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である第一周波数帯域(Bt1)にて時間的に変化する第一駆動信号(SD1)と、第二最低周波数(Fti2)と第二最高周波数(Ftx2)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域であって前記第一周波数帯域とは平均周波数または中心周波数である中間周波数(Ftc2)が異なり且つ前記第一周波数帯域と重複する第二周波数帯域(Bt2)にて時間的に変化する第二駆動信号(SD2)とのうちのいずれを前記駆動信号として出力するかを制御するように設けられた送信制御部(41)と、
前記送信波の前記物体による反射波を受信する受信器(21)による受信結果に対応する受信信号に基づいて、前記物体を検知するように設けられた検知部(42)と、
を備え、
前記検知部は、前記第一駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号とし、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合の当該第二駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号とすると、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する。
請求項9に記載の物体検知方法は、周囲の物体(B)を検知する方法であって、
送信波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(20A)を駆動する駆動信号を生成するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記送信波の前記物体による反射波を受信する受信器(21)による受信結果に対応する受信信号に基づいて、前記物体を検知するように設けられた検知部(42)と、
を用い、
前記駆動信号として、第一最低周波数(Fti1)と第一最高周波数(Ftx1)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である第一周波数帯域(Bt1)にて時間的に変化する第一駆動信号(SD1)と、第二最低周波数(Fti2)と第二最高周波数(Ftx2)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域であって前記第一周波数帯域とは平均周波数または中心周波数である中間周波数(Ftc2)が異なり且つ前記第一周波数帯域と重複する第二周波数帯域(Bt2)にて時間的に変化する第二駆動信号(SD2)とを選択的に出力し、
前記第一駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号とし、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合の当該第二駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号とすると、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する。
請求項11に記載の物体検知方法は、周囲の物体(B)を検知する方法であって、
送信波を外部に向けて送信する送信器(21)を備えた送信部(20A)を駆動する駆動信号を生成するように設けられた駆動信号生成部(3)と、
前記送信波の前記物体による反射波を受信する受信器(21)による受信結果に対応する受信信号に基づいて、前記物体を検知するように設けられた検知部(42)と、
を用い、
前記駆動信号として、第一最低周波数(Fti1)と第一最高周波数(Ftx1)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である第一周波数帯域(Bt1)にて時間的に変化する第一駆動信号(SD1)と、第二最低周波数(Fti2)と第二最高周波数(Ftx2)とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域であって前記第一周波数帯域とは平均周波数または中心周波数である中間周波数(Ftc2)が異なり且つ前記第一周波数帯域と重複する第二周波数帯域(Bt2)にて時間的に変化する第二駆動信号(SD2)とのうちのいずれを前記駆動信号生成部に出力させるかを制御し、
前記第一駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号とし、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合の当該第二駆動信号による前記送信波の反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号とすると、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する。
【0010】
上記構成および方法においては、前記駆動信号生成部は、前記駆動信号を生成して前記送信部に向けて出力する。かかる駆動信号により前記送信部が駆動されることで、前記送信波が前記送信器から外部に向けて送信される。前記送信波の前記物体による前記反射波が前記受信器に受信されると、前記受信器による前記受信結果に対応する前記受信信号が発生する。前記検知部は、前記受信信号に基づいて、前記物体を検知する。
【0011】
上記構成および方法においては、前記駆動信号として、第一駆動信号と第二駆動信号とを選択的に出力する。また、上記構成においては、前記駆動信号生成部は、前記第一駆動信号と前記第二駆動信号とを選択的に出力可能である。前記第一駆動信号は、前記第一最低周波数と前記第一最高周波数とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である前記第一周波数帯域にて時間的に変化する。前記第二駆動信号は、前記第二最低周波数と前記第二最高周波数とによって形成され前記送信部の共振周波数を含むように設定された周波数帯域である前記第二周波数帯域にて時間的に変化する。前記第二周波数帯域は、前記第一周波数帯域とは前記平均周波数または前記中心周波数である前記中間周波数が異なり、且つ前記第一周波数帯域と重複する。すなわち、前記第二周波数帯域は、前記第一周波数帯域と部分的に重複する。
【0012】
前記第一駆動信号による前記送信波の前記反射波に対応する前記受信信号を第一受信信号と称する。また、前記第二駆動信号による前記送信波の前記反射波に対応する前記受信信号を第二受信信号と称する。上記構成および方法によれば、前記第二駆動信号における周波数の増減方向が前記第一駆動信号とは反対である場合、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号と前記第二受信信号とが周波数シフトして重ならないことに基づいて、前記偽符号信号による前記第二受信信号の誤判定の発生を抑制する。よって、前記受信器(21)を備えた受信部(20B)にて、隣り合う前記第一受信信号のつなぎ目に発生する偽符号信号とは重ならない前記第二受信信号を受信すると、前記検知部にて、前記第二受信信号に基づいて、前記物体を検知する。これにより、前記第一受信信号および前記第二受信信号の識別精度が向上する。したがって、上記構成および方法によれば、従来よりも識別精度をよりいっそう向上することが可能となる。
【0013】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を、単に示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る物体検知装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号の一具体例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図3図2に示された周波数特性を有する駆動信号に対応する受信信号の特性を示すグラフである。
図4図2に示された周波数特性を有する駆動信号に対応する受信信号の特性を示すグラフである。
図5】比較例の駆動信号における周波数特性を示すタイムチャートである。
図6図5に示された周波数特性を有する駆動信号に対応する受信信号の特性を示すグラフである。
図7】他の比較例の駆動信号における周波数特性を示すタイムチャートである。
図8図7に示された周波数特性を有する駆動信号に対応する受信信号の特性を示すグラフである。
図9図7に示された周波数特性を有する駆動信号に対応する受信信号の特性を示すグラフである。
図10図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号の一変形例における周波数特性を示すタイムチャートである。
図11図1に示された駆動信号生成部が出力する駆動信号の他の一変形例における周波数特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0016】
(構成)
図1を参照すると、物体検知装置1は、不図示の車両例えば自動車に搭載された車載状態にて、当該車両の周囲の物体Bを検知するように構成されている。本実施形態に係る物体検知装置1を搭載する車両を、以下「自車両」と称する。
【0017】
本実施形態においては、物体検知装置1は、いわゆる超音波センサとしての構成を有している。すなわち、物体検知装置1は、超音波である送信波を自車両の外部に向けて送信するように構成されている。また、物体検知装置1は、自身の送信した送信波の物体Bによる反射波を受信することで、自車両の外部の物体Bとの距離を取得するように構成されている。具体的には、物体検知装置1は、送受信部2と、駆動信号生成部3と、制御部4とを備えている。本実施形態においては、送受信部2、駆動信号生成部3、および制御部4は、一個のセンサ筐体により支持されている。
【0018】
本実施形態においては、物体検知装置1は、一個の送受信部2にて送受信機能を奏するように構成されている。すなわち、一個の送受信部2は、一個のトランスデューサ21を有している。また、送受信部2は、送信部20Aと受信部20Bとを有している。送信部20Aおよび受信部20Bは、共通のトランスデューサ21を用いて、送信機能および受信機能をそれぞれ実現するように構成されている。
【0019】
具体的には、送受信部2は、トランスデューサ21と、送信回路22と、受信回路23とを備えている。送信部20Aは、トランスデューサ21と送信回路22とを備えている。また、受信部20Bは、トランスデューサ21と受信回路23とを備えている。
【0020】
トランスデューサ21は、送信回路22および受信回路23と電気接続されている。トランスデューサ21は、送信波を外部に向けて送信する送信器としての機能と、反射波を受信する受信器としての機能とを有している。具体的には、トランスデューサ21は、圧電素子等の電気-機械エネルギー変換素子を内蔵した、超音波マイクロフォンとして構成されている。トランスデューサ21は、送信波を自車両の外部に送信可能および反射波を自車両の外部から受信可能なように、車載状態にて自車両の外表面に面する位置に配置されるようになっている。
【0021】
送信回路22は、入力された駆動信号に基づいてトランスデューサ21を駆動することで、トランスデューサ21にて超音波帯域の送信波を発信させるように設けられている。具体的には、送信回路22は、デジタル/アナログ変換回路等を有している。すなわち、送信回路22は、駆動信号生成部3から出力された駆動信号に対してデジタル/アナログ変換等の処理を施し、これにより生成された交流電圧をトランスデューサ21に印加するように構成されている。
【0022】
受信回路23は、トランスデューサ21における超音波の受信結果に対応する受信信号を生成するとともに、生成した受信信号を制御部4に出力するように設けられている。具体的には、受信回路23は、増幅回路およびアナログ/デジタル変換回路等を有している。すなわち、受信回路23は、トランスデューサ21から入力された電圧信号に対して、増幅およびアナログ/デジタル変換等の信号処理を行うことで、受信した超音波の振幅に応じた受信信号を生成および出力するように構成されている。
【0023】
このように、送受信部2は、送受信器としてのトランスデューサ21により、送信波を送信するとともに自身の送信した送信波の反射波を受信することで、物体Bとの距離に応じた受信信号を生成するように構成されている。送受信器としてのトランスデューサ21が、自身の送信した送信波の反射波を受信した場合の受信波を、以下「正規波」と称する。これに対し、他装置からの送信波に起因する受信波を、以下「非正規波」と称する。
【0024】
駆動信号生成部3は、送信部20Aを駆動する駆動信号を生成するように設けられている。駆動信号は、送信部20Aを駆動してトランスデューサ21から送信波を送信させるための信号であって、例えば超音波帯域のパルス状信号である。本実施形態においては、駆動信号生成部3は、二種類の駆動信号である第一駆動信号と第二駆動信号とを選択的に出力可能に構成されている。第一駆動信号と第二駆動信号とは、異なる周波数変調状態を有している。第一駆動信号および第二駆動信号の具体例については後述する。
【0025】
制御部4は、駆動信号生成部3から送信部20Aへの駆動信号の出力を制御するとともに、受信部20Bから出力された受信信号を処理するように設けられている。具体的には、制御部4は、送信制御部41と検知部42とを有している。
【0026】
送信制御部41は、駆動信号生成部3に制御信号を出力することで、送信部20Aからの送信波の発信状態を制御するように構成されている。具体的には、送信制御部41は、駆動信号生成部3にて生成される駆動信号の周波数と出力タイミングとを制御するようになっている。駆動信号の周波数を、以下「駆動周波数」と称する。本実施形態においては、送信制御部41は、駆動信号生成部3が第一駆動信号と第二駆動信号とのうちのいずれを出力するかを制御するように設けられている。
【0027】
検知部42は、受信回路23から出力された受信信号に基づいて、物体Bを検知するように設けられている。具体的には、検知部42は、受信回路23の動作を制御しつつ受信回路23から受信信号を受領することで、物体Bの存在およびトランスデューサ21と物体Bとの距離を検知するように構成されている。
【0028】
検知部42は、ドップラシフト検出部43を有している。ドップラシフト検出部43は、トランスデューサ21が受信した反射波における周波数のドップラシフト量を検出するように設けられている。すなわち、検知部42は、ドップラシフト検出部43により検出したドップラシフト量に基づいて、受信信号を補正するようになっている。また、検知部42は、補正後の信号と参照信号との類似性算出結果に基づいて、受信信号が正規波に対応するものであるか否かを識別するようになっている。
【0029】
(動作概要)
以下、本実施形態の構成の動作概要について、同構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。図2は、第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2の一具体例を示す。
【0030】
図1を参照すると、本実施形態の構成においては、送信制御部41は、制御信号を駆動信号生成部3に出力する。すると、駆動信号生成部3は、駆動信号を生成して送信部20Aに向けて出力する。かかる駆動信号により、送信部20Aが駆動される。すなわち、送信回路22は、入力された駆動信号に基づいて、トランスデューサ21を励振する。これにより、送信器として機能するトランスデューサ21から、送信波が、物体検知装置1の外部、すなわち自車両の外部に向けて送信される。
【0031】
制御信号には、駆動信号生成部3が第一駆動信号SD1と第二駆動信号SD2とのうちのいずれを出力するかを制御するための、信号すなわち情報が含まれる。すなわち、送信制御部41は、駆動信号生成部3に第一駆動信号SD1と第二駆動信号SD2とのうちのいずれを出力させるかを制御する。このため、駆動信号生成部3は、第一駆動信号SD1に対応する制御信号を受領すると、第一駆動信号SD1を生成して送信部20Aに向けて出力する。一方、駆動信号生成部3は、第二駆動信号SD2に対応する制御信号を受領すると、第二駆動信号SD2を生成して送信部20Aに向けて出力する。
【0032】
図2に示されているように、第一駆動信号SD1と第二駆動信号SD2とは、異なる周波数変調状態を有している。図2において、横軸Tは時間を示す。送信開始時刻Ttsは、駆動信号出力の開始時刻を示す。送信終了時刻Tteは、駆動信号出力の終了時刻を示す。また、縦軸Fは駆動周波数を示す。Fkは送信部20Aの共振周波数を示す。共振周波数Fkは、典型的には、トランスデューサ21の共振周波数とほぼ一致する。
【0033】
第一駆動信号SD1は、第一最低周波数Fti1と第一最高周波数Ftx1とによって形成される第一周波数帯域Bt1にて時間的に変化するように設定されている。第一最低周波数Fti1は第一周波数帯域Bt1の下限周波数である。第一最高周波数Ftx1は第一周波数帯域Bt1の上限周波数である。本具体例においては、第一周波数帯域Bt1は、共振周波数Fkを含むように設定されている。中間周波数Ftc1は、第一周波数帯域Bt1の中心周波数である。
【0034】
第一駆動信号SD1は、第一最高周波数Ftx1に向かって周波数が上昇する周波数変化を含むように設定されている。すなわち、第一駆動信号SD1は、いわゆるアップチャープである。具体的には、第一駆動信号SD1は、第一最低周波数Fti1から第一最高周波数Ftx1に周波数が上昇する周波数変化を含むように設定されている。本具体例においては、第一駆動信号SD1は、送信開始時刻Ttsにおける第一最低周波数Fti1から送信終了時刻Tteにおける第一最高周波数Ftx1まで、周波数が線形的すなわち直線的に上昇するように設定されている。この場合、第一周波数帯域Bt1の中心周波数である中間周波数Ftc1は、第一周波数帯域Bt1の平均周波数と一致する。
【0035】
第二駆動信号SD2は、第二最低周波数Fti2と第二最高周波数Ftx2とによって形成される第二周波数帯域Bt2にて時間的に変化するように設定されている。第二最低周波数Fti2は第二周波数帯域Bt2の下限周波数である。第二最高周波数Ftx2は第二周波数帯域Bt2の上限周波数である。本具体例においては、第二周波数帯域Bt2は、共振周波数Fkを含むように設定されている。中間周波数Ftc2は、第二周波数帯域Bt2の中心周波数である。
【0036】
第二駆動信号SD2は、第二最低周波数Fti2に向かって周波数が低下する周波数変化を含むように設定されている。すなわち、第二駆動信号SD2は、いわゆるダウンチャープである。具体的には、第二駆動信号SD2は、第二最高周波数Ftx2から第二最低周波数Fti2に周波数が低下する周波数変化を含むように設定されている。本具体例においては、第二駆動信号SD2は、送信開始時刻Ttsにおける第二最高周波数Ftx2から送信終了時刻Tteにおける第二最低周波数Fti2まで、周波数が線形的すなわち直線的に低下するように設定されている。この場合、第二周波数帯域Bt2の中心周波数である中間周波数Ftc2は、第二周波数帯域Bt2の平均周波数と一致する。
【0037】
第一駆動信号SD1と第二駆動信号SD2とは、互いに部分的に重複するように設定されている。具体的には、第一周波数帯域Bt1および第二周波数帯域Bt2は、第一最低周波数Fti1と第二最低周波数Fti2とが異なるように設定されている。また、第一周波数帯域Bt1および第二周波数帯域Bt2は、第一最高周波数Ftx1と第二最高周波数Ftx2とが異なるように設定されている。
【0038】
本具体例においては、第一周波数帯域Bt1および第二周波数帯域Bt2は、第一最低周波数Fti1よりも第二最低周波数Fti2の方が高周波数となるように設定されている。また、第一周波数帯域Bt1および第二周波数帯域Bt2は、第一最高周波数Ftx1よりも第二最高周波数Ftx2の方が高周波数となるように設定されている。
【0039】
また、第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2は、中間周波数Ftc1と中間周波数Ftc2とが異なるように設定されている。本具体例においては、中間周波数Ftc1は、共振周波数Fkよりも0.5~数kHz程度低くなるように設定されている。一方、中間周波数Ftc2は、共振周波数Fkよりも0.5~数kHz程度高くなるように設定されている。
【0040】
超音波を発信する発信器として用いられるトランスデューサ21を含む送信部20Aは、所定の共振周波数frを有している。共振型の超音波マイクロフォンであるトランスデューサ21は、帯域通過フィルタと同様の特性を有する。すなわち、送信部20Aにより良好に送受信可能な周波数帯域は、実質的に、共振周波数frを中心とした±数%の幅に限定される。共振周波数frから離れた駆動周波数では、送信部20Aの追従性が悪い。
【0041】
このため、送信部20Aに対しては、所定の送信周波数帯域が設定される。かかる送信周波数帯域は、共振周波数frにおける感度を0[dB]とした場合の、感度が0~Sb[dB]となる範囲である。すなわち、送信部20Aにより良好に送受信可能な周波数範囲である送信周波数帯域は、感度が0~Sb[dB]となる上限周波数fuと下限周波数fdとの間の帯域である。Sbは、典型的には、例えば、-3[dB]である。感度は、トランスデューサ21を受信器として用いた場合の感度である。
【0042】
本具体例においては、第一最低周波数Fti1は、送信部20Aにおける上記の送信周波数帯域の下限周波数Fdと一致するように設定されている。また、第二最高周波数Ftx2は、かかる送信周波数帯域の上限周波数Fuと一致するように設定されている。
【0043】
上記の通り、第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2は、それぞれ異なる態様で周波数変調されている。送信波の周波数は、トランスデューサ21の励振周波数である駆動周波数に応じたものとなる。このため、送信波は、駆動周波数の時間的変化に対応する周波数変化を、識別性に対応する特徴として有することとなる。すなわち、第一駆動信号SD1に基づく送信波と、第二駆動信号SD2に基づく送信波とは、周波数変調状態について、それぞれ異なる特徴を有している。
【0044】
送信波の物体Bによる反射波が、受信器として機能するトランスデューサ21により受信されると、受信回路23は、トランスデューサ21における超音波の受信結果に対応する受信信号を生成する。トランスデューサ21における受信波が正規波である場合、受信信号は、周波数変調状態について、送信波と同様の特徴を有している。
【0045】
よって、検知部42は、ドップラシフト補正後の受信信号と参照信号との類似性算出結果に基づいて、受信信号が正規波に対応するものであるか否かを識別する。検知部42は、受信信号が正規波に対応するものである場合、受信信号に基づいて物体Bを検知する。これにより、トランスデューサ21と物体Bとの距離が取得される。
【0046】
本実施形態においては、駆動信号として、第一駆動信号SD1と第二駆動信号SD2とが用いられる。具体的には、駆動信号生成部3は、第一駆動信号SD1と第二駆動信号SD2とを選択的に出力可能である。第一駆動信号SD1は、第一最低周波数Fti1と第一最高周波数Ftx1とによって形成される第一周波数帯域Bt1にて時間的に変化する。第二駆動信号SD2は、第二最低周波数Fti2と第二最高周波数Ftx2とによって形成される第二周波数帯域Bt2にて時間的に変化する。第二周波数帯域Bt2と第一周波数帯域Bt1とは、中間周波数Ftc1と中間周波数Ftc2とが異なる態様で互いに重複する。すなわち、第二周波数帯域Bt2は、第一周波数帯域Bt1と部分的に重複する。
【0047】
第一駆動信号SD1による送信波の反射波に対応する受信信号を第一受信信号SR1と称する。また、第二駆動信号SD2による送信波の反射波に対応する受信信号を第二受信信号SR2と称する。図3において、Tは時間を示す。受信開始時刻Trsは、送信開始時刻Ttsにおける送信波に対応する受信時刻である。受信終了時刻Treは、送信終了時刻Tteにおける送信波に対応する受信時刻である。また、Vaは受信信号の振幅を示す。さらに、Fは受信波の周波数を示す。受信波の周波数を、以下「受信周波数」と称する。
【0048】
図3を参照すると、アップチャープである第一駆動信号SD1に対応する第一受信信号SR1において、受信周波数は、受信開始時刻Trsと受信終了時刻Treとのほぼ中間程度の時刻Tr1にて、最低値Fri1となる。そして、この受信周波数は、時刻Tr1から徐々に上昇し、受信終了時刻Treにて最高値Frx1に達する。第一受信信号SR1における受信周波数の上昇幅ΔFr1は、識別性に対応する特徴を示すものであって、最高値Frx1と最低値Fri1との偏差である。最高値Frx1と最低値Fri1との中央値Frc1は、共振周波数frよりも低くなる。
【0049】
これに対し、ダウンチャープである第二駆動信号SD2に対応する第二受信信号SR2において、受信周波数は、受信開始時刻Trsと受信終了時刻Treとのほぼ中間程度の時刻Tr2にて、最高値Frx2となる。そして、この受信周波数は、時刻Tr2から徐々に低下し、受信終了時刻Treにて最低値Fri2に達する。第二受信信号SR2における受信周波数の低下幅ΔFr2は、識別性に対応する特徴を示すものであって、最高値Frx2と最低値Fri2との偏差である。最高値Frx2と最低値Fri2との中央値Frc2は、共振周波数frよりも高くなる。
【0050】
図4は、第一受信信号SR1が二回連続して受信された場合の、受信信号の様子を示す。図4に示されているように、隣り合う第一受信信号SR1同士の繋ぎ目には、ダウンチャープ様の偽符号信号SRFが発生する。しかしながら、本来のダウンチャープ信号に相当する第二受信信号SR2は、図4にて二点鎖線で示されているように、偽符号信号SRFよりも高周波数側にシフトした位置に生じるはずである。したがって、本実施形態においては、偽符号信号SRFによる誤判定の発生が、良好に抑制され得る。
【0051】
これに対し、図5および図6に示されている比較例は、アップチャープである第一駆動信号SD1とダウンチャープである第二駆動信号SD2の間に、周波数の重複がない例を示す。なお、本比較例における図5は、上記の具体例における図2に対応する。同様に、本比較例における図6は、上記の具体例における図3に対応する。
【0052】
図5に示されているように、本比較例では、第一駆動信号SD1は、送信開始時刻Ttsにおける第一最低周波数Fti1から送信終了時刻Tteにおける第一最高周波数Ftx1まで、周波数が線形的に上昇するように設定されている。第一最低周波数Fti1は、送信部20Aにおける上記の送信周波数帯域の下限周波数Fdと一致するように設定されている。第一最高周波数Ftx1は、共振周波数Fkと一致するように設定されている。このように、第一周波数帯域Bt1は、上記の送信周波数帯域における共振周波数Fkよりも低周波数側の領域である、下限周波数Fdと共振周波数Fkとの間の周波数帯域によって形成されている。
【0053】
また、本比較例では、第二駆動信号SD2は、送信開始時刻Ttsにおける第二最高周波数Ftx2から送信終了時刻Tteにおける第二最低周波数Fti2まで、周波数が線形的に低下するように設定されている。第二最低周波数Fti2は、共振周波数Fkと一致するように設定されている。第二最高周波数Ftx2は、送信部20Aにおける上記の送信周波数帯域の上限周波数Fuと一致するように設定されている。換言すれば、第二周波数帯域Bt2は、上記の送信周波数帯域における共振周波数Fkよりも高周波数側の領域である、共振周波数Fkと上限周波数Fuとの間の周波数帯域によって形成されている。
【0054】
図6に示されているように、本比較例においては、上記の具体例よりも、第一周波数帯域Bt1および第二周波数帯域Bt2が狭くなる。これに対応して、本比較例においては、上記の具体例よりも、第一受信信号SR1における受信周波数の上昇幅ΔFr1が小さくなる。同様に、本比較例においては、上記の具体例よりも、第二受信信号SR2における受信周波数の低下幅ΔFr2が小さくなる。したがって、本比較例においては、上記の具体例よりも、識別性が低下する。
【0055】
一方、図7図9に示されている比較例は、アップチャープである第一駆動信号SD1とダウンチャープである第二駆動信号SD2の間で、周波数が完全に重複する例を示す。なお、本比較例における図7図8,および図9は、上記の具体例における図2図3,および図4にそれぞれ対応する。
【0056】
図7に示されているように、本比較例では、第一駆動信号SD1は、送信開始時刻Ttsにおける第一最低周波数Fti1から送信終了時刻Tteにおける第一最高周波数Ftx1まで、周波数が線形的に上昇するように設定されている。第一最低周波数Fti1は、送信部20Aにおける上記の送信周波数帯域の下限周波数Fdと一致するように設定されている。第一最高周波数Ftx1は、上記の送信周波数帯域の上限周波数Fuと一致するように設定されている。
【0057】
また、本比較例では、第二駆動信号SD2は、送信開始時刻Ttsにおける第二最高周波数Ftx2から送信終了時刻Tteにおける第二最低周波数Fti2まで、周波数が線形的に低下するように設定されている。第二最低周波数Fti2は、送信部20Aにおける上記の送信周波数帯域の下限周波数Fdと一致するように設定されている。第二最高周波数Ftx2は、上記の送信周波数帯域の上限周波数Fuと一致するように設定されている。
【0058】
図8に示されているように、本比較例においては、上記の具体例よりも、第一周波数帯域Bt1および第二周波数帯域Bt2が広くなる。これに対応して、本比較例においては、上記の具体例よりも、第一受信信号SR1における受信周波数の上昇幅ΔFr1が大きくなる。同様に、本比較例においては、上記の具体例よりも、第二受信信号SR2における受信周波数の低下幅ΔFr2が大きくなる。
【0059】
しかしながら、図9に示されているように、第一受信信号SR1が二回連続して受信された場合、隣り合う第一受信信号SR1同士の繋ぎ目には、ダウンチャープ様の偽符号信号SRFが発生する。かかる偽符号信号SRFは、本来のダウンチャープ信号に相当する第二受信信号SR2との識別が困難である。したがって、本比較例においては、偽符号信号SRFによる誤判定の発生が懸念される。
【0060】
具体例と比較例とを用いて以上詳述したように、本実施形態の構成によれば、第一受信信号SR1および第二受信信号SR2の識別精度が向上する。すなわち、第一受信信号SR1と第二受信信号SR2との間の識別が良好に行われ得る。したがって、本実施形態によれば、従来よりも識別精度をよりいっそう向上することが可能となる。
【0061】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0062】
物体検知装置1は、車載すなわち車両に搭載されるものに限定されない。すなわち、例えば、物体検知装置1は、船舶あるいは飛行体にも搭載され得る。
【0063】
物体検知装置1は、図1に示されているような、送受信部2および駆動信号生成部3をそれぞれ一個ずつ備えた構成に限定されない。すなわち、物体検知装置1は、送受信部2を複数個備えていてもよい。この場合、駆動信号生成部3は、送受信部2と同数設けられ得る。
【0064】
物体検知装置1は、単一のトランスデューサ21によって超音波を送受信可能な構成に限定されない。すなわち、例えば、送信回路22に電気接続された送信用のトランスデューサ21と、受信回路23に電気接続された受信用のトランスデューサ21とが、並列に設けられていてもよい。
【0065】
一個の送受信部2に対して一種類の駆動信号のみが入力されるように、物体検知装置1が構成されていてもよい。すなわち、自車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部3は、第一駆動信号SD1のみを出力するように構成されていてもよい。また、ある一台の他車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部3は、第二駆動信号SD2のみを出力するように構成されていてもよい。さらに、他の一台の他車両に搭載された物体検知装置1における駆動信号生成部3は、第一駆動信号SD1とも第二駆動信号SD2とも異なる第三駆動信号のみを出力するように構成されていてもよい。第三駆動信号は、第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2とは異なる変調状態を有している。第三駆動信号は、例えば、時間的に変化しない一定周波数(例えば共振周波数Fk)であってもよい。
【0066】
送受信部2が複数個設けられる場合、複数個の送受信部2の各々に対して、異なる波形の駆動信号が入力されるように、物体検知装置1が構成される。具体的には、例えば、送受信部2が二個設けられている場合、一方には第一駆動信号SD1が入力され、他方には第二駆動信号SD2が入力され得る。さらに、駆動信号は三種類以上あってもよい。具体的には、第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2とは異なる変調状態を有する第三駆動信号も設定され得る。これにより、複数個の送受信部2の各々からの送信波が、良好に識別され得る。以上の説明から明らかなように、駆動信号は、第一駆動信号SD1と第二駆動信号SD2との二種類に限定されない。すなわち、駆動信号生成部3は、第一駆動信号SD1と第二駆動信号SD2とを含む複数種類の駆動信号のうちのいずれかを、選択的に出力する。また、送信制御部41は、駆動信号生成部3が複数種類の駆動信号のうちのいずれを出力するかを制御する。
【0067】
複数個のトランスデューサ21を用いた三角測量により物体Bの自車両に対する二次元位置を検知する場合があり得る。この場合、自車両に搭載された複数個のトランスデューサ21からは、同一の周波数特性を有する送信波がそれぞれ発信される。このとき、「正規波」は、自車両から送信した送信波の反射波を受信した場合の受信波となる。これに対し、「非正規波」は、他車両から送信した送信波の反射波を受信した場合の受信波となる。
【0068】
送信回路22、受信回路23等の各部の構成も、上記実施形態にて示された具体例に限定されない。すなわち、例えば、デジタル/アナログ変換回路は、送信回路22に代えて、駆動信号生成部3に設けられていてもよい。
【0069】
駆動信号波形は、上記の各具体例に限定されない。すなわち、例えば、第一駆動信号SD1における周波数変化が非線形的であって、中心周波数と平均周波数とが一致しない場合があり得る。この場合、中間周波数Ftc1は、第一周波数帯域Bt1の中心周波数であってもよいし、平均周波数であってもよい。第二駆動信号SD2においても同様である。
【0070】
図10は、図2に示された駆動信号の具体例を一部変更したものである。すなわち、図10に示された第一駆動信号SD1は、図2に示された第二駆動信号SD2における駆動周波数の時間変化の態様をアップチャープに変更したものである。同様に、図10に示された第二駆動信号SD2は、図2に示された第一駆動信号SD1における駆動周波数の時間変化の態様をダウンチャープに変更したものである。
【0071】
具体的には、本変形例においては、第一駆動信号SD1は、送信開始時刻Ttsにおける第一最低周波数Fti1から送信終了時刻Tteにおける第一最高周波数Ftx1まで、周波数が線形的に上昇するように設定されている。一方、第一駆動信号SD1は、送信開始時刻Ttsにおける第二最高周波数Ftx2から送信終了時刻Tteにおける第二最低周波数Fti2まで、周波数が線形的に低下するように設定されている。
【0072】
第一周波数帯域Bt1および第二周波数帯域Bt2は、第一最低周波数Fti1よりも第二最低周波数Fti2の方が低周波数となるように設定されている。また、第一周波数帯域Bt1および第二周波数帯域Bt2は、第一最高周波数Ftx1よりも第二最高周波数Ftx2の方が低周波数となるように設定されている。
【0073】
第二最低周波数Fti2は、送信部20Aにおける上記の送信周波数帯域の下限周波数Fdと一致するように設定されている。また、第一最高周波数Ftx1は、かかる送信周波数帯域の上限周波数Fuと一致するように設定されている。
【0074】
中間周波数Ftc1は、共振周波数Fkよりも0.5~数kHz程度高くなるように設定されている。一方、中間周波数Ftc2は、共振周波数Fkよりも0.5~数kHz程度低くなるように設定されている。
【0075】
図10に示された第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2によっても、上記具体例と同様の効果が得られる。
【0076】
図11は、図2に示された駆動信号の具体例を一部変更したものである。すなわち、図11に示された第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2は、周波数変化をステップ状としたものである。
【0077】
具体的には、第一駆動信号SD1においては、駆動周波数は、送信開始時刻Ttsから中間時刻Ttmまで第一最低周波数Fti1で一定である。また、駆動周波数は、中間時刻Ttmにて、第一最低周波数Fti1から第一最高周波数Ftx1までステップ状に上昇する。中間時刻Ttmは、送信開始時刻Ttsと送信終了時刻Tteとのほぼ中間程度の時刻である。その後、駆動周波数は、送信終了時刻Tteまで第一最高周波数Ftx1で一定である。第一最低周波数Fti1、第一最高周波数Ftx1、および中間周波数Ftc1は、上記の具体例と同一である。
【0078】
また、第二駆動信号SD2においては、駆動周波数は、送信開始時刻Ttsから中間時刻Ttmまで第二最高周波数Ftx2で一定である。また、駆動周波数は、中間時刻Ttmにて、第二最高周波数Ftx2から第二最低周波数Fti2までステップ状に低下する。その後、駆動周波数は、送信終了時刻Tteまで第二最低周波数Fti2で一定である。第二最低周波数Fti2、第二最高周波数Ftx2、および中間周波数Ftc2は、上記の具体例と同一である。
【0079】
図11に示された第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2によっても、上記具体例と同様の効果が得られる。
【0080】
図11に示された第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2における周波数変化は、離散的なものであった。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、駆動周波数は、中間時刻Ttmの前後にて、線形的に変化してもよい。あるいは、例えば、第一駆動信号SD1および第二駆動信号SD2における周波数変化は、シグモイド曲線状であってもよい。
【0081】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0082】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0083】
1 物体検知装置
2 送受信部
20A 送信部
20B 受信部
21 トランスデューサ
3 駆動信号生成部
4 制御部
41 送信制御部
42 検知部
B 物体
図1
図2
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図4
図5
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図9
図10
図11