(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20220928BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20220928BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G03G15/16
F16C13/00 B
G03G21/00 370
(21)【出願番号】P 2019003626
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志部谷 哲平
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
F16C 13/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成部と、
駆動ローラー及び従動ローラーに掛け渡されて前記複数の画像形成部に沿って配置され、前記複数の画像形成部それぞれで形成された前記トナー像が順次重ねて一次転写される無端状の中間転写ベルトと、
前記従動ローラーの回転軸線方向における前記中間転写ベルトの変位を検出するベルト変位検出部と、
前記従動ローラーの回転軸線方向の両端部側それぞれの、前記中間転写ベルトに対する静電吸着力を変更可能な吸着力可変部と、
前記吸着力可変部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ベルト変位検出部によって前記中間転写ベルトの前記変位が検出された場合に、前記吸着力可変部によって前記変位の方向とは逆方向側の前記従動ローラーの前記中間転写ベルトに対する静電吸着力を高めることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記従動ローラーは、外周面が回転軸線方向の中央部と両端部とを含む少なくとも3つの領域に分割され、
前記吸着力可変部は、
前記従動ローラーの前記領域それぞれに個別に接触する接触部材と、
前記接触部材を介して前記従動ローラーの前記領域に電圧を印加する電圧印加部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記吸着力可変部は、
前記従動ローラーの外周面の回転軸線方向の略全域に接触して回転し、外周面が回転軸線方向の中央部と両端部とを含む少なくとも3つの領域に分割された回転体と、
前記回転体の前記領域それぞれに個別に接触する接触部材と、
前記接触部材を介して前記回転体の前記領域に電圧を印加する電圧印加部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記従動ローラーの電気抵抗値は、100Vの電圧を印加した場合に1.0×10
6Ω以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記従動ローラーの外周面の前記中間転写ベルトに対する摩擦係数は、前記駆動ローラーの外周面の前記中間転写ベルトに対する摩擦係数よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記従動ローラーの表層の硬度は、前記駆動ローラーの表層の硬度よりも高いことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記従動ローラーの外周面に滑剤が塗布されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等の電子写真方式の画像形成装置では、複数の画像形成部に沿って配置された中間転写ベルトに、複数の画像形成部それぞれで形成された異なる色のトナー像を順次重ねて一次転写し、さらにトナー像を用紙に二次転写する中間転写方式の画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、中間転写ベルトの蛇行やねじれが生じる虞があることが懸念されている。中間転写ベルトの蛇行やねじれを抑制できる画像形成装置の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1で開示された従来の画像形成装置は、ベルトが掛け渡されたローラーの外周面のうち、回転軸線方向の中央部が高摩擦係数面であり、回転軸線方向の両側が低摩擦係数面である。これにより、ローラーの中央部は両側よりも相対的にベルトの搬送力が強まり、ベルトが常にローラーの中央部に寄せられる。この働きにより、ベルトの蛇行を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示された従来の画像形成装置では、ローラーの外周面の、回転軸線方向の中央部の高摩擦係数面を粗面で構成した場合、その粗さによってベルトの裏面を削り、ベルトに厚みむらが生じる虞がある。これにより、画像不良が生じることが懸念される。
【0006】
また、特許文献1で開示された従来の画像形成装置では、ローラーの外周面にトナー等が付着したり、ローラーの外周面に経時変化が生じたりすることによって、ローラーの外周面の摩擦係数や粗さが軸線方向において均一になってしまう虞がある。これにより、長期にわたってベルトの蛇行を防止することができないことが懸念される。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、構成部材を損耗させることなく、長期にわたって中間転写ベルトの蛇行及びねじれを抑制することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、複数の画像形成部と、中間転写ベルトと、ベルト変位検出部と、吸着力可変部と、制御部と、を備える。複数の画像形成部は、異なる色のトナー像を形成する。中間転写ベルトは、無端状であり、駆動ローラー及び従動ローラーに掛け渡されて複数の画像形成部に沿って配置され、複数の画像形成部それぞれで形成されたトナー像が順次重ねて一次転写される。ベルト変位検出部は、従動ローラーの回転軸線方向における中間転写ベルトの変位を検出する。吸着力可変部は、従動ローラーの回転軸線方向の両端部側それぞれの、中間転写ベルトに対する静電吸着力を変更可能である。制御部は、吸着力可変部の動作を制御する。さらに、制御部は、ベルト変位検出部によって中間転写ベルトの変位が検出された場合に、吸着力可変部によって変位の方向とは逆方向側の従動ローラーの中間転写ベルトに対する静電吸着力を高める。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成によれば、中間転写ベルトが変位した場合に、その変位の方向とは逆方向側の従動ローラーの中間転写ベルトに対する静電吸着力を高めることができる。これにより、中間転写ベルトの位置を、中間転写ベルトの変位の方向とは逆方向側に寄せることができる。したがって、構成部材を損耗させることなく、長期にわたって中間転写ベルトの蛇行及びねじれを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態の画像形成装置の転写部周辺を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の画像形成装置の従動ローラー周辺を示す上面図である。
【
図5】実施例及び比較例の画像形成装置の従動ローラーの電気抵抗値とグリップ力との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施形態の変形例の画像形成装置の転写部周辺を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態の変形例の画像形成装置の従動ローラー周辺を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0012】
図1は、画像形成装置1の構成を示す概略断面図である。
図2は、画像形成装置1の構成を示すブロック図である。
図3は、画像形成装置1の転写部30周辺を示す断面図である。本実施形態の画像形成装置1の一例としては、中間転写ベルト31を用いてトナー像を用紙Pに転写するタンデム方式のカラープリンターである。画像形成装置1は、例えばプリント(印刷)、スキャン(画像読取)、ファクシミリ送信等の機能を備えたいわゆる複合機であっても良い。
【0013】
画像形成装置1は、
図1、
図2及び
図3に示すようにその本体2に、給紙部3、用紙搬送部4、露光部5、画像形成部20、転写部30、定着部7、用紙排出部8、制御部9及び記憶部10を含む。
【0014】
給紙部3は、複数枚の用紙Pを収容し、印刷時に用紙Pを1枚ずつ分離して送り出す。用紙搬送部4は、給紙部3から送り出された用紙Pを二次転写部33及び定着部7へと搬送し、さらに定着後の用紙Pを用紙排出口4aから用紙排出部8に排出する。両面印刷が行われる場合、用紙搬送部4は、第一面の定着後の用紙Pを分岐部4bによって反転搬送部4cに振り分け、用紙Pを再度、二次転写部33及び定着部7へと搬送する。露光部5は、画像データに基づき制御されたレーザー光を画像形成部20に向かって照射する。
【0015】
画像形成部20は、イエロー用の画像形成部20Y、マゼンタ用の画像形成部20M、シアン用の画像形成部20C及びブラック用の画像形成部20Bを含む。これらの4つの画像形成部20は、基本的な構成が同じである。これにより、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、各色を表す「Y」、「M」、「C」、「B」の識別記号は省略することがある。
【0016】
画像形成部20は、所定の方向(
図1及び
図3における時計回り)に回転可能に支持された像担持体である感光体ドラム21を備える。画像形成部20は、さらに感光体ドラム21の周囲に、その回転方向に沿って帯電部22、現像部23及びドラムクリーニング部24を備える。なお、現像部23とドラムクリーニング部24との間に一次転写部32が配置される。
【0017】
帯電部22は、例えば帯電ローラーによって感光体ドラム21の外周面を所定電位に帯電させる。そして、露光部5から照射されたレーザー光によって感光体ドラム21の外周面に原稿画像の静電潜像が形成される。すなわち、像担持体である感光体ドラム21は、静電潜像を担持する。現像部23は、この静電潜像にトナーを供給して現像し、トナー像を形成する。4つの画像形成部20それぞれは、異なる色のトナー像を形成する。
【0018】
転写部30は、中間転写ベルト31、一次転写部32Y、32M、32C、32B、二次転写部33及びベルトクリーニング部34を備える。中間転写ベルト31は、所定の方向(
図1及び
図3における反時計回り)に回転可能に支持され、4つの画像形成部20それぞれで形成されたトナー像が順次重ねて一次転写される中間転写体である。4つの画像形成部20は、中間転写ベルト31の回転方向上流側から下流側に向けて一列に並んだいわゆるタンデム方式にして配置される。
【0019】
一次転写部32Y、32M、32C、32Bは、各色の画像形成部20Y、20M、20C、20Bの上方に配置される。二次転写部33は、用紙搬送部4の、定着部7よりも用紙搬送方向上流側であって、転写部30の、各色の画像形成部20Y、20M、20C、20Bよりも中間転写ベルト31の回転方向下流側に配置される。ベルトクリーニング部34は、各色の画像形成部20Y、20M、20C、20Bよりも中間転写ベルト31の回転方向上流側に配置される。
【0020】
トナー像は、各色の一次転写部32Y、32M、32C、32Bで中間転写ベルト31の外周面に一次転写される。そして、中間転写ベルト31の回転とともに所定のタイミングで各画像形成部20のトナー像が連続して重ねて中間転写ベルト31に転写されることにより、中間転写ベルト31の外周面にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。ドラムクリーニング部24は、一次転写後に感光体ドラム21の外周面に残留するトナー等を除去してクリーニングする。
【0021】
中間転写ベルト31の外周面のカラートナー像は、用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた用紙Pに、二次転写部33に形成される二次転写ニップ部で転写される。ベルトクリーニング部34は、二次転写後に中間転写ベルト31の外周面に残留するトナー等を除去してクリーニングする。
【0022】
定着部7は、トナー像が転写された用紙Pを加熱、加圧してトナー像を用紙Pに定着させる。
【0023】
制御部9は、不図示のCPU、画像処理部、その他の電子回路及び電子部品を含む。CPUは、記憶部10に記憶された制御用のプログラムやデータに基づき、画像形成装置1に設けられた各構成要素の動作を制御して画像形成装置1の機能に係る処理を行う。給紙部3、用紙搬送部4、露光部5、画像形成部20、転写部30及び定着部7それぞれは、制御部9から個別に指令を受け、それら構成要素が連動して用紙Pへの印刷を実行する。また、制御部9は、後述するベルト変位検出部41から出力値を得ることができ、後述する吸着力可変部50の動作を制御することができる。
【0024】
記憶部10は、例えば不図示のプログラムROM(Read Only Memory)、データROMなどといった不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)のような揮発性の記憶装置との組み合わせで構成される。
【0025】
続いて、転写部30とその周辺の構成について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図4は、画像形成装置1の従動ローラー36周辺を示す上面図である。
【0026】
中間転写ベルト31は、駆動ローラー35及び従動ローラー36に掛け渡された無端状である。中間転写ベルト31は、不図示の駆動モーターによって動力を得た駆動ローラー35によって、
図3における反時計回りに回転される。従動ローラー36は、中間転写ベルト31の回転に従って、
図3における反時計回りに回転する。二次転写部33には、二次転写ローラー33rが配置される。二次転写ローラー33rは、中間転写ベルト31を挟んで駆動ローラー35と対向し、中間転写ベルト31の外周面に接触する。
【0027】
中間転写ベルト31は、4つの画像形成部20に沿って配置される。4つ画像形成部20それぞれの上方には、中間転写ベルト31を隔てて一次転写ローラー32rが配置される。各一次転写ローラー32rは、中間転写ベルト31を挟んで感光体ドラム21と対向し、中間転写ベルト31の内周面に接触する。
【0028】
中間転写ベルト31は、例えば内周側から順に基材層、弾性層、コート層を有する積層構造の導電性ベルトである。基材層は、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリイミド樹脂等が用いられ、基材としての所定の剛性を有する。弾性層は、例えばヒドリンゴムやクロロプレンゴム、ポリウレタンゴム等が用いられ、応力集中による画像の中抜け現象を防止する弾性を有する。コート層は、例えばアクリル、シリコン、フッ素樹脂等が用いられ、弾性層を保護する。外周面であるコート層が、感光体ドラム21及び二次転写ローラー33rと接触する。
【0029】
なお、中間転写ベルト31は、基材層を含まない構造や、基材層、弾性層、コート層以外の他の層を含む構造であっても良いし、弾性層のみの単層構造としても良い。
【0030】
ベルトクリーニング部34は、中間転写ベルト31を挟んで従動ローラー36と対向し、中間転写ベルト31の外周面に接触する。ベルトクリーニング部34は、例えばスクレーパー34a及び搬送スパイラル34bを備える。スクレーパー34aは、中間転写ベルト31の外周面に接触し、二次転写後の中間転写ベルト31の外周面に残留するトナー等を掻き取る。搬送スパイラル34bは、スクレーパー34aによって中間転写ベルト31の外周面から掻き取られたトナー等を、ベルトクリーニング部34の外部に設けられた不図示の廃トナー回収容器へ搬送する。
【0031】
さらに、画像形成装置1は、ベルト変位検出部41及び吸着力可変部50を備える。ベルト変位検出部41及び吸着力可変部50は、従動ローラー36の近傍に配置される。
【0032】
ベルト変位検出部41は、
図3及び
図4に示すように、例えば従動ローラー36の、中間転写ベルト31の回転方向上流側に配置される。ベルト変位検出部41は、中間転写ベルト31の回転軸線方向両端部それぞれに配置される。ベルト変位検出部41は、例えば不図示のアクチュエーター及び透過型光センサーを有する。アクチュエーターは中間転写ベルト31に接触して揺動する。光センサーは揺動するアクチュエーターが光路を遮蔽することを検知する。ベルト変位検出部41は、従動ローラー36の回転軸線方向における中間転写ベルト31の変位を検出する。ベルト変位検出部41の検出信号は、制御部9に入力される。
【0033】
吸着力可変部50は、回転体51、接触部材52、電圧印加部53及びスイッチ54を備える。
【0034】
回転体51は、
図4に示すように、従動ローラー36に隣接して配置される。回転体51の回転軸線は、従動ローラー36の回転軸線と平行である。回転体51は、従動ローラー36の外周面の回転軸線方向の略全域に接触して回転する。回転体51は、例えば発泡体またはソリッドの導電性ゴムローラーや、導電糸を用いたブラシローラー等で構成される。
【0035】
回転体51は、回転軸線方向において複数に分割される。回転体51は、例えば回転軸線方向において5つの領域51a、51b、51c、51d、51eに分割される。回転体51の5つの領域51a、51b、51c、51d、51eは、互いに回転軸線方向に所定の間隔を空けて軸部51xに固定される。なお、回転体51の分割数は、5つに限定されるわけではなく、外周面が回転軸線方向の中央部(領域51c)と両端部(領域51a、51e)とを含む少なくとも3つの領域に分割されていれば良い。
【0036】
接触部材52は、回転体51に隣接して配置される。接触部材52は、例えば導電性の板バネや、導電糸を用いたバー状のブラシ等で構成され、回転体51の外周部に接触し、電圧印加部53から出力された電力を回転体51に導く。接触部材52は、回転体51の5つの領域51a、51b、51c、51d、51eそれぞれに対応する5つの接触部材52a、52b、52c、52d、52eを含む。接触部材52a、52b、52c、52d、52eは、回転体51の5つの領域51a、51b、51c、51d、51eそれぞれに個別に接触する。
【0037】
電圧印加部53は、不図示の電源及び制御回路を含む。電圧印加部53は、スイッチ54a、54b、54c、54d、54eを介して接触部材52a、52b、52c、52d、52eと電気的に接続される。電圧印加部53は、接触部材52a、52b、52c、52d、52eを介して回転体51の5つの領域51a、51b、51c、51d、51eに電圧を印加する。回転体51の5つの領域51a、51b、51c、51d、51eが従動ローラー36の外周面の回転軸線方向の略全域にわたって接触するので、吸着力可変部50は、従動ローラー36の回転軸線方向の両端部側それぞれの、中間転写ベルト31に対する静電吸着力を変更可能である。
【0038】
そして、制御部9は、ベルト変位検出部41によって中間転写ベルト31の変位が検出された場合に、吸着力可変部50によって当該変位の方向とは逆方向側の従動ローラー36の中間転写ベルト31に対する静電吸着力を高める。
【0039】
具体的には、例えば制御部9は、ベルト変位検出部41によって
図4における右方向の中間転写ベルト31の変位が検出された場合に、電圧印加部53によって
図4における左方向側、すなわち回転体51の領域51a、51bの少なくともいずれか一方への印加電圧を高める。すなわち、制御部9は、中間転写ベルト31が右方向に変位した場合に、従動ローラー36の左側部分の、中間転写ベルト31に対する静電吸着力を高める。これにより、中間転写ベルト31の位置を、左方向に寄せることができ、適正位置とすることが可能である。
【0040】
また、例えば制御部9は、ベルト変位検出部41によって
図4における左方向の中間転写ベルト31の変位が検出された場合に、電圧印加部53によって
図4における右方向側、すなわち回転体51の領域51e、51dの少なくともいずれか一方への印加電圧を高める。すなわち、制御部9は、中間転写ベルト31が左方向に変位した場合に、従動ローラー36の右側部分の、中間転写ベルト31に対する静電吸着力を高める。これにより、中間転写ベルト31の位置を、右方向に寄せることができ、適正位置とすることが可能である。
【0041】
なお、中間転写ベルト31の変位の程度に応じて、電圧印加部53による印加電圧を増減させることが好ましい。例えば、中間転写ベルト31の変位が大きいほど、電圧印加部53による印加電圧を高くする。また、中間転写ベルト31の変位が、画像形成動作にとって問題ないレベルである場合、電圧印加部53による印加電圧をOFFにして良い。また、中間転写ベルト31の変位の程度に応じて、軸線方向中央部の領域51cに電圧を印加しても良い。
【0042】
上記の構成によれば、中間転写ベルト31が変位した場合に、その変位の方向とは逆方向側の従動ローラー36の中間転写ベルト31に対する静電吸着力を高めることができる。これにより、中間転写ベルト31の位置を、中間転写ベルト31の変位の方向とは逆方向側に寄せることができる。したがって、構成部材を損耗させることなく、長期にわたって中間転写ベルト31の蛇行及びねじれを抑制することが可能である。また、構造が複雑化することを抑制することができ、画像形成装置1をコンパクト且つシンプルにすることが可能である。
【0043】
また、吸着力可変部50は、上記構成の回転体51、接触部材52及び電圧印加部53を有する。この構成によれば、従動ローラー36に、回転体51を介して間接的に電圧を印加することができる。例えば、ベルトクリーニング部34が、中間転写ベルト31を挟んで従動ローラー36と対向して中間転写ベルト31の外周面に接触する場合に、従動ローラー36の外周面は、回転軸線方向の全域にわたって段差がない形態である必要がある。そこで、上記構成の吸着力可変部50であれば、従動ローラー36の回転軸線方向の両端部側それぞれの、中間転写ベルト31に対する静電吸着力を変更することができる。
【0044】
図5は、従動ローラー36の電気抵抗値とグリップ力との関係を示すグラフである。詳細には、
図5は、100Vの電圧を印加した場合の電気抵抗値が異なる5種の従動ローラーに関して、印加電圧を徐々に高くしたときの、外周面のグリップ力の推移を示した図である。
【0045】
図5によれば、100Vの電圧を印加した場合の電気抵抗値が1.0×10
5Ω以下の従動ローラーは、印加電圧を高くしても、グリップ力が大きく上昇しないことが分かる。これに対して、100Vの電圧を印加した場合の電気抵抗値が1.0×10
6Ω以上の従動ローラーは、印加電圧を高くするほど、グリップ力が上昇していくことが分かる。これにより、従動ローラーの電気抵抗値は、100Vの電圧を印加した場合に1.0×10
6Ω以上であることが好ましい。
【0046】
また、従動ローラー36の外周面の中間転写ベルト31に対する摩擦係数は、駆動ローラー35の外周面の中間転写ベルト31に対する摩擦係数よりも小さいことが好ましい。この構成によれば、従動ローラー36の外周面上を、中間転写ベルト31が滑り易くなる。したがって、変位した中間転写ベルト31を、適正な位置へ寄せ易くすることが可能である。
【0047】
また、従動ローラー36の表層の硬度は、駆動ローラー35の表層の硬度よりも高いことが好ましい。この構成によれば、従動ローラー36の外周面上を、中間転写ベルト31が滑り易くなる。したがって、変位した中間転写ベルト31を、適正な位置へ寄せ易くすることが可能である。
【0048】
また、従動ローラー36の外周面に滑剤が塗布されることが好ましい。この構成によれば、従動ローラー36の外周面上を、中間転写ベルト31が滑り易くなる。したがって、変位した中間転写ベルト31を、適正な位置へ寄せ易くすることが可能である。
【0049】
次に、本発明の実施形態の変形例の画像形成装置1について、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、変形例の画像形成装置1の転写部周辺を示す断面図である。
図7は、変形例の画像形成装置1の従動ローラー38周辺を示す上面図である。変形例の画像形成装置1は、
図6及び
図7に示すベルトクリーニング部37、従動ローラー38及び吸着力可変部50を備える。
【0050】
ベルトクリーニング部37は、二次転写部33よりも中間転写ベルト31の回転方向下流側であって、且つ従動ローラー38よりも中間転写ベルト31の回転方向上流側に、従動ローラー38から離隔して配置される。ベルトクリーニング部37は、例えばスクレーパー37a、搬送スパイラル37b及び対向ローラー37cを備える。スクレーパー37aは、中間転写ベルト31を挟んで対向ローラー37cと対向し、中間転写ベルト31の外周面に接触し、二次転写後の中間転写ベルト31の外周面に残留するトナー等を掻き取る。搬送スパイラル37bは、スクレーパー37aによって中間転写ベルト31の外周面から掻き取られたトナー等を、ベルトクリーニング部37の外部に設けられた不図示の廃トナー回収容器へ搬送する。
【0051】
従動ローラー38は、回転軸線方向において複数に分割される。従動ローラー38は、例えば回転軸線方向において5つの領域38a、38b、38c、38d、38eに分割される。従動ローラー38の5つの領域38a、38b、38c、38d、38eは、互いに回転軸線方向に所定の間隔を空けて軸部38xに固定される。なお、従動ローラー38の分割数は、5つに限定されるわけではなく、外周面が回転軸線方向の中央部(領域38c)と両端部(領域38a、38e)とを含む少なくとも3つの領域に分割されていれば良い。
【0052】
吸着力可変部50は、接触部材52、電圧印加部53及びスイッチ54を備える。
【0053】
接触部材52は、従動ローラー38に隣接して配置される。接触部材52は、例えば導電性の板バネや、導電糸を用いたバー状のブラシ等で構成され、従動ローラー38の外周部に接触し、電圧印加部53から出力された電力を回転体51に導く。接触部材52は、従動ローラー38の5つの領域38a、38b、38c、38d、38eそれぞれに対応する5つの接触部材52a、52b、52c、52d、52eを含む。接触部材52a、52b、52c、52d、52eは、従動ローラー38の5つの領域38a、38b、38c、38d、38eそれぞれに個別に接触する。
【0054】
電圧印加部53は、不図示の電源及び制御回路を含む。電圧印加部53は、スイッチ54a、54b、54c、54d、54eを介して接触部材52a、52b、52c、52d、52eと電気的に接続される。電圧印加部53は、接触部材52a、52b、52c、52d、52eを介して従動ローラー38の5つの領域38a、38b、38c、38d、38eに電圧を印加する。これにより、吸着力可変部50は、従動ローラー38の回転軸線方向の両端部側それぞれの、中間転写ベルト31に対する静電吸着力を変更可能である。
【0055】
そして、制御部9は、ベルト変位検出部41によって中間転写ベルト31の変位が検出された場合に、吸着力可変部50によって当該変位の方向とは逆方向側の従動ローラー38の中間転写ベルト31に対する静電吸着力を高める。
【0056】
上記の変形例の構成においても、先に説明した実施形態と同様に、中間転写ベルト31が変位した場合に、その変位の方向とは逆方向側の従動ローラー38の中間転写ベルト31に対する静電吸着力を高めることができる。これにより、中間転写ベルト31の位置を、中間転写ベルト31の変位の方向とは逆方向側に寄せることができる。したがって、構成部材を損耗させることなく、長期にわたって中間転写ベルト31の蛇行及びねじれを抑制することが可能である。
【0057】
また、変形例の画像形成装置1では、従動ローラー38の外周面が、回転軸線方向の中央部と両端部とを含む少なくとも3つの領域に分割され、吸着力可変部50が、接触部材52及び電圧印加部53を有する。この構成によれば、従動ローラー38に、直接的に電圧を印加することができる。したがって、部品点数がより少ない簡便な構成で、従動ローラー38の回転軸線方向の両端部側それぞれの、中間転写ベルト31に対する静電吸着力を変更することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0059】
例えば、上記実施形態では、画像形成装置1は、いわゆるタンデム型のカラー印刷用の画像形成装置であることとしたが、このような機種に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを備える機種であれば、タンデム型ではない他の形式のカラー印刷用の画像形成装置であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、画像形成装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置
9 制御部
20 画像形成部
21 感光体ドラム
30 転写部
31 中間転写ベルト
35 駆動ローラー
36、38 従動ローラー
38a、38b、38c、38d、38e 領域
41 ベルト変位検出部
50 吸着力可変部
51 回転体
51a、51b、51c、51d、51e 領域
52 接触部材
53 電圧印加部