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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】サーバ装置および学習方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20220928BHJP
   F24F 11/54 20180101ALI20220928BHJP
   F24F 11/58 20180101ALI20220928BHJP
【FI】
G06N20/00 130
F24F11/54
F24F11/58
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019005312
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020113191
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 智文
【審査官】北川 純次
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-195221(JP,A)
【文献】特開2018-87662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0284212(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00
F24F 11/54
F24F 11/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機を制御する制御部が用いる学習モデルの生成に用いられ、複数の学習項目に対する運転履歴情報と操作情報とのデータセットを含む学習用データを収集するアダプタから、前記学習用データを取得する度に、取得した順番に基づいて、前記学習用データを、先入れ先出しのメモリとなるキューに格納するキュー管理部と、
前記キューに格納された複数の学習用データのうち、先頭に格納された学習用データを取り出して学習モデルに対する学習処理を実行し、学習処理が完了したとき、前記キューの先頭に格納された学習用データを取り出して学習処理を繰り返し実行する複数の学習部と
を有することを特徴とするサーバ装置。
【請求項2】
前記複数の学習部は、前記キューの先頭に格納された学習用データを取り出す際に、学習処理の対象となる学習モデル固有の学習項目に対応するデータセットを取り出し、取り出したデータセットを学習用データとして前記学習モデルの学習処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記アダプタから取得する複数の学習用データは、前記空気調和機に対する操作回数の情報がそれぞれ付与され、前記キュー管理部は、前記操作回数の情報を基にして、前記複数の学習用データを前記キューに格納する順番を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記アダプタから取得する複数の学習用データは、前記空気調和機の識別情報がそれぞれ付与され、前記キュー管理部は、前記識別情報を基にして、前記複数の学習用データを前記キューに格納する順番を制御することを特徴とする請求項1、2または3に記載のサーバ装置。
【請求項5】
前記アダプタから取得する複数の学習用データは、前記空気調和機の設置された地域の天気予報の情報が付与され、前記キュー管理部は、前記天気予報の情報を基にして、前記複数の学習用データのうち、前記キューに格納する学習用データを選択することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のサーバ装置。
【請求項6】
コンピュータが、
空気調和機を制御する制御部が用いる学習モデルの生成に用いられ、複数の学習項目に対する運転履歴情報と操作情報とのデータセットを含む学習用データを収集するアダプタから、前記学習用データを取得する度に、取得した順番に基づいて、前記学習用データを先入れ先出しのメモリとなるキューに格納するステップと、
前記キューに格納された複数の学習用データのうち、先頭に格納された学習用データを取り出して学習モデルに対する学習処理を実行し、学習処理が完了したとき、前記キューの先頭に格納された学習用データを取り出して学習処理を繰り返し実行する複数の学習VM(Virtual Machine)を実行するステップと
を実行することを特徴とする学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーバ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には、学習機能を有する空調システムが開示されている。また、特許文献1には、記憶部が学習機能を有する場合、標準仕様設定(たとえば、人感センサの検知結果を用いた自動運転)による制御に、居住者等の好みや行動パターン等を反映させて、居住者等に対して好適な温度環境を実現することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-117933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サーバが空調システムに係るデータを収集し、学習モデルを生成する手法も提案されている。たとえば、サーバは、室温や外気温等の環境情報とともにユーザの操作情報を学習用データとして収集した後、これら各学習用データを用いて、環境情報が入力されると最適な空気調和機の操作情報を出力する学習モデルを生成する。
【0005】
また、このようなサーバでは、一般的に、複数の学習VM(Virtual Machine:仮想機械)を有し、各学習VMが予め決められた顧客(空調システム)の学習用データを用いて学習し、各顧客の学習モデルを生成している。学習VMは、学習部の一例である。例えば、顧客がn人(#0~#n)、学習VMが3個(#0~#2)の場合、学習VM#0が顧客#0、#3、#6、・・・、#n-2の収集データを学習し、学習VM#1が顧客#1、#4、#7、・・・、#n-1の収集データを学習し、学習VM#2が顧客#2、#5、#8、・・・、#nの収集データを学習する。
【0006】
しかしながら、上記の生成手法では、各学習VMにおいて、学習にかかる時間にバラツキが生じることがある。たとえば、学習VM#0が顧客#0、#3、#6、・・・、#n-2の学習用データの全てを処理したが、学習VM#1が顧客#1、#4、#7、・・・、#n-1のうち複数の顧客m人の学習用データをの処理をまだ行っていない場合、学習VM#0の処理時間より学習VM#1の処理時間の方が長くなる。学習用データは定期的(例えば、5分毎)に取得されるため、早く処理が完了した学習VMは次の学習用データを取得するまで処理を行わない待ち時間が発生し、計算リソースが無駄になる。
【0007】
本開示ではこのような問題に鑑み、学習処理時間にバラツキがあっても、学習VMに待ち時間を生じさせることがないサーバ装置および学習方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様のサーバ装置は、キュー管理部と、複数の学習部とを有する。キュー管理部は、空気調和機を制御する制御部が用いる学習モデルの生成に用いられ、複数の学習項目に対する運転履歴情報と操作情報とのデータセットを含む学習用データを収集するアダプタから、学習用データを取得する度に、取得した順番に基づいて、学習用データを、先入れ先出しのメモリとなるキューに格納する。複数の学習部は、キューに格納された複数の学習用データのうち、先頭に格納された学習用データを取り出して学習モデルに対する学習処理を実行し、学習処理が完了したとき、キューの先頭に格納された学習用データを取り出して学習処理を繰り返し実行する。
【発明の効果】
【0009】
一つの側面として、学習処理時間にバラツキがあっても、学習VM(学習部)に待ち時間の発生を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施例の空気調和システムの一例を示す図である。
図2図2は、アダプタの構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、サーバ装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、キューにおけるデータの先入れ先出し処理の一例を示す図である。
図5図5は、運転履歴データの内容の一例を示す説明図である。
図6図6は、収集パターンのデータ構造の一例を示す図である。
図7図7は、モデルメモリのデータ構造の一例を示す図である。
図8図8は、本実施例に係るキュー管理部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施例に係る学習VMの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本願の開示するサーバ装置および学習方法等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜変形しても良い。
【実施例
【0012】
図1は、本実施例の空気調和システムの一例を示す図である。図1に示す空気調和システム1は、室内機2A,2B,2Cと、アダプタ50A,50B,50Cと、アクセスポイント4と、中継装置6と、通信端末7と、通信網8とを有する。ここでは、室内機2Aから2C、アダプタ50A~50Cを示すが、空気調和システム1は、他の室内機、アダプタを有していてもよい。
【0013】
室内機2Aは、例えば、室内に配置され、室内の空気を加熱又は冷却する空気調和機の一部である。尚、室内機2Aの利用者は、リモコン9Aの操作により室内機2Aを遠隔操作することが可能である。室内機2Aは、本体3Aと、当該本体3Aを制御する制御部4Aとを有する。本体3Aには、室内ファンや室内熱交換器が備えられ、室内熱交換器で冷媒と熱交換を行った室内空気が本体3Aから吹き出されることで、部屋の暖房、冷房、除湿等が行われる。
【0014】
室内機2Bは、本体3B、制御部4Bを有する。室内機2B、本体3B、制御部4Bに関する説明は、室内機2A、本体3A、制御部4Aに関する説明と同様である。室内機2Bの利用者は、リモコン9Bの操作により室内機2Bを遠隔操作することが可能である。
【0015】
室内機2Cは、本体3C、制御部4Cを有する。室内機2C、本体3C、制御部4Cに関する説明は、室内機2A、本体3A、制御部4Aに関する説明と同様である。室内機2Cの利用者は、リモコン9Cの操作により室内機2Cを遠隔操作することが可能である。
【0016】
アダプタ50Aは、室内機2Aとアクセスポイント4との間を無線通信で接続する通信機能と、室内機2AをAI(Artificial Intelligence)制御する制御機能とを有する。アダプタ50Bは、室内機2Bとアクセスポイント4との間を無線通信で接続する通信機能と、室内機2BをAI制御する制御機能とを有する。アダプタ50Cは、室内機2Cとアクセスポイント4との間を無線通信で接続する通信機能と、室内機2CをAI制御する制御機能とを有する。
【0017】
以下の説明では、特に区別しない場合に、室内機2A,2B,2Cをまとめて、室内機2と表記する。また、アダプタ50A,50B,50Cをまとめて、アダプタ50と表記する。
【0018】
アクセスポイント4は、例えば、WLAN(Wireless Local Area Network)等を使用してアダプタ50Aと通信網8とを無線通信で接続する装置である。通信網8は、例えば、インターネット等の通信網である。通信端末7は、利用者が持つスマートフォン等の端末装置である。利用者は、外出先から通信端末7を使用して、室内機2の運転条件(冷房/暖房といった運転モードや設定温度など)を送信することができる。
【0019】
中継装置6は、アダプタ50とサーバ装置100との間でAI制御に関わる各種データを中継する装置である。
【0020】
サーバ装置100は、室内機2を制御するAIの学習モデルを生成する機能や学習用データ等を記憶するデータベース等を有する。尚、サーバ装置100は、例えば、データセンタに配置されている。
【0021】
図2は、アダプタの構成の一例を示すブロック図である。ここでは一例として、アダプタ50Aを用いて説明を行う。図2に示すように、アダプタ50Aは、第1の通信部51と、第2の通信部52と、記憶部53と、CPU(Central Processing Unit)54とを有する。第1の通信部51は、CPU54と室内機2A内の制御部4Aと通信接続する、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)等の通信IF(Interface)である。第2の通信部52は、CPU54とアクセスポイント4を通信接続する、例えば、WLAN等の通信IF等の通信部である。記憶部53は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を有し、データやプログラム等の各種情報を格納する。CPU54は、アダプタ50全体を制御する。
【0022】
図2に示すアダプタ50A内の記憶部53は、室内機2Aから取得した運転履歴データを一時記憶する運転履歴メモリ53Aと、サーバ装置100から取得した学習モデルを記憶するモデルメモリ53Bと、天気予報等の外部データを記憶する外部メモリ53Cとを有する。
【0023】
CPU54は、取得部54Aと、送信部54Bと、受信部54Cと、設定部54Dと、予測制御部54Eとを有する。
【0024】
取得部54Aは、室内機2Aから所定周期、例えば5分毎の取得タイミングで運転履歴データと、操作履歴データとを取得する。取得部54Aは、5分周期で取得した運転履歴データと、操作履歴データとを運転履歴メモリ53Aに記憶する。
【0025】
送信部54Bは、運転履歴メモリ53Aに記憶された運転履歴データと、操作履歴データとを通信網8経由でサーバ装置100に送信する。
【0026】
受信部54Cは、通信網8経由でサーバ装置100から学習モデルを受信し、受信した学習モデルをモデルメモリ53Bに記憶する。
【0027】
設定部54Dは、モデルメモリ53Bに記憶中の学習モデルを予測制御部54Eに適用する。
【0028】
予測制御部54Eは、設定部54Dにて適用された学習モデルに基づき、室内機2A内の制御部4Aを制御する。尚、説明の便宜上、予測制御部54Eは、学習モデルに基づき、室内機2A内の制御部4Aを制御する場合を例示したが、予測制御部54Eは、学習モデルに基づき、室内機2Aの本体3Aを直接的に制御しても良い。また、予測制御部54Eは、学習モデルに基づく制御態様を含む信号を制御部4Aに送信する。つまり、予測制御部54Eが、制御部4Aを介して本体2Aを間接的に制御するようにしても良く、適宜変更可能である。
【0029】
ところで、アダプタ50B,50Cのハードウェア構成は、アダプタ50Aと同様である。なお、アダプタ50Bの処理の対象は、室内機2B、本体3B、制御部4Bとなる。アダプタ50Cの処理の対象は、室内機2C、本体3C、制御部4Cとなる。
【0030】
図3は、サーバ装置100の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すサーバ装置100は、通信部110と、記憶部120と、CPU130とを有する。通信部110は、CPU130と中継装置6を通信接続する通信IFである。記憶部120は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、ROMやRAM等を有し、データやプログラム等の各種情報を記憶する。CPU130は、サーバ装置100全体を制御する。
【0031】
図3に示すサーバ装置100内の記憶部120は、キュー保存部120A、収集パターンメモリ120B、モデルメモリ120Cを有する。
【0032】
キュー120Aは、運転履歴データと、操作履歴データとの学習用データを、先入れ先出しのリスト構造で保持するメモリである。キュー120Aからデータを取り出す場合、先に入れられた学習用データから順に取り出される。以下の説明では、運転履歴データと、操作履歴データとの組をそれぞれ、データ(学習用データ)と表記する。運転履歴データと、操作履歴データとの組はデータセットの一例である。キュー120Aの最後尾にデータを入れることを「エンキュー」と表記し、取り出すことを「デキュー」と表記する。
【0033】
図4は、キューにおけるデータの先入れ先出し処理の一例を示す図である。図4のステップS10において、キュー120Aには、先頭から順に、学習用データ10-1~10-4が格納されている。ここで、学習用データ10-5が、エンキュー(Enqueue)されると、ステップS11に示すように、最後尾の学習用データ10-4の後ろに、学習用データ10-5が格納される。
【0034】
図4のステップのステップS12において、デキュー(Dequeue)されると、キュー120Aの先頭に格納されていた学習用データ10-1が取り出される。そうすると、ステップS13に示すように、キュー120Aには、学習用データ10-2~10-5が順に格納される。
【0035】
続いて、学習用データに含まれる運転履歴データの内容の一例について説明する。図5は、運転履歴データの内容の一例を示す説明図である。運転履歴データには、複数の項目があり、各項目には、項目を一意に識別するための項番が対応付けられる。たとえば、運転履歴データの項目には、運転状態、運転モード、設定温度、室内温度、室内湿度、風量、風向、人感センサ、輻射センサ、室内熱交温度、室外温度、圧縮機回転数、室外風量、運転電流、室外熱交温度等である。更に、運転履歴データは、たとえば、吐出温度、圧縮機温度、膨張弁開度、放熱器温度、起動失敗履歴、異常停止履歴、応急運転履歴、空気調和機ID、設置場所や施設種類等がある。
【0036】
運転状態とは、室内機2の運転のON-OFF状態である。運転モードは、室内機2の冷房や暖房等の動作モードである。設定温度は、室内機2を使用する室内の室内目標温度である。室内温度は、室内機2を使用する室内の実際の温度である。室内湿度は、室内機2を使用する室内の実際の湿度である。風量は、室内機2から吹き出される空調空気の風量である。風向は、室内機2から吹き出される空調空気の風向きである。人感センサは、室内の人の有無や活動量のセンサによる検出結果である。輻射センサは、室内の床や壁の温度のセンサによる検出結果である。室内熱交温度は、室内機2の本体2Aの一部をなす図示しない室内熱交換器の温度である。室外温度は、室外の実際の温度である。圧縮機回転数は、室内機2と冷媒配管で接続される図示しない室外機に備えられた圧縮機の運転回転数である。室外風量は、室外機に備えられる室外ファンの風量である。運転電流は、例えば、室内機2及び室外機等の空気調和機全体の運転電流である。室外熱交温度は、室外機に備えられる室外熱交換機の温度である。吐出温度は、圧縮機から吐出される冷媒の温度である。圧縮機温度は、圧縮機底部の温度である。膨張弁開度は、室外機に備えられる電子膨張弁の開度である。放熱器温度は、圧縮機を駆動制御するパワー半導体の温度である。起動失敗履歴は、圧縮機起動失敗の履歴である。異常停止履歴は、異常停止の履歴である。応急運転履歴は、応急運転の実施履歴である。タイムスタンプは、データ取得時の年月日時分秒である。空気調和機IDは、室内機2等の空気調和機を識別するために室内機2に付与するIDである。設置場所は、空気調和機が設置された場所の住所である。施設種類は、室内機2等の空気調和機が設置された店舗、飲食店、工場等の施設の種類である。
【0037】
運転履歴データには、家庭用の空気調和機に使用するデータと、業務用の空気調和機に使用するデータとがある。家庭用の空気調和機に使用される運転履歴データとしては、例えば、運転状態、運転モード、設定温度、室内温度、室内湿度、風量、風向、人感センサで検出した値、輻射センサで検出した値、タイムスタンプ、空気調和機ID、設置場所等である。家庭用の空気調和機では、快適性や省エネ性の追求にAIを用いて操作や提案を行うため、例えば、設定温度、運転モード、室内や周囲環境等が家庭用に必要なデータである。
【0038】
また、業務用の空気調和機に使用される運転履歴データとしては、例えば、運転状態、運転モード、設定温度、室内温度、室内湿度、風量、風向、人感センサで検出した値、輻射センサで検出した値、室内熱交温度、室外温度、圧縮機回転数、室外風量、運転電流及び室外熱交温度等である。更に他の運転履歴データとしては、例えば、吐出温度、圧縮機温度、膨張弁開度、放熱器温度、起動失敗履歴、異常停止履歴、応急運転履歴、タイムスタンプ、空気調和機ID、設置場所や施設種類等である。業務用の空気調和機では、AIが各装置の故障やメンテナンスの必要性を予測するため、例えば、故障予測に使用する空気調和機内の各部品レベルの運転状況や履歴を蓄積し、故障の予兆をAIで判定する。上記に加えて、業務用の空気調和機に必要な運転履歴データは、例えば、故障予測に使用するデータである。尚、空気調和機に使用する圧縮機やファンモータの回転数等は空気調和機の停止中は停止し、各々の運転履歴データが発生しないため、例えば、圧縮機回転数、室外風量、運転電流及び室外熱交温度等のデータは空気調和機の停止中は取得しないものとする。
【0039】
操作履歴データは、室内機2に対する利用者の操作履歴を示すものである。たとえば、操作履歴データには、変更された設定温度、風量、風速等が含まれる。
【0040】
収集パターンメモリ120Bは、学習モデルと、この学習モデルの生成に使用する運転履歴データとを対応付けた収集パターン120BBを記憶するメモリである。図6は、収集パターンのデータ構造の一例を示す図である。図6に示すように、収集パターン120BBは、学習モデル識別情報と、項目の項番とが対応付けられている。学習モデル識別情報は、生成した学習モデルを一意に識別する情報である。学習対象の項番は、学習モデルを生成する場合に用いる、運転履歴データの項目を一意に識別する情報である。たとえば、学習モデルを生成する場合に用いる、運転履歴データの項目は、「学習項目」の一例である。
【0041】
たとえば、学習モデル識別情報「E001」の学習モデルを生成する場合には、図6で説明した全項目のうち、項番「1~7」の項目のデータを用いて、生成されることを示す。学習モデル識別情報「E002」の学習モデルを生成する場合には、図6で説明した全項目のうち、項番「1~11」の項目のデータを用いて、生成されることを示す。学習モデル識別情報「E003」の学習モデルを生成する場合には、図6で説明した全項目のうち、項番「1~15」の項目のデータを用いて、生成されることを示す。
【0042】
モデルメモリ120Cは、学習部130Cにより生成された学習モデルを記憶する。図7は、モデルメモリのデータ構造の一例を示す図である。図7に示すように、モデルメモリ120Cは、学習モデル識別情報と、学習モデルとを対応付ける。
【0043】
サーバ装置100のCPU130は、キュー管理部131と、学習部132と、通知部133とを有する。
【0044】
キュー管理部131は、アダプタ50から学習用データを受信する。キュー管理部131は、受信した学習用データを受信した順番にキュー120Aにエンキューする処理部である。たとえば、図4のステップS10、S11で説明したように、学習用データ10-5を受信すると、学習用データ10-5を学習用データ10-4の後ろにエンキューする。
【0045】
学習部132は、学習VM132a、学習VM132b、学習VM132cを有する。学習VM132a~132cは、キュー120Aに格納された学習用データをデキューし、デキューした学習用データを基にして、学習モデルを生成する。学習VM132a~132cが学習する学習モデルの学習モデル識別情報は、学習VM132a~132cに予め割り当てられているものとする。たとえば、学習VM132aには、学習モデル識別情報「E001」が割り当てられ、学習VM132aには、学習モデル識別情報「E002」が割り当てられ、学習VM132bには、学習モデル識別情報「E003」が割り当てられているものとする。学習VM132a~132cは、新しい学習モデルを生成する場合には、新たな学習モデル識別情報を生成する。
【0046】
学習VM132aは、キュー120Aに格納された学習用データをデキューし、デキューした学習用データの運転履歴データの全項目のうち、収集パターン120Bに定義された学習対象の項番「1~7」に対応する項目のデータを用いて、学習モデル識別情報「E001」の学習モデルを生成する。学習VM132aは、デキューした学習用データを用いた学習モデルの生成が終了すると、再度、キュー120Aに格納された学習用データをデキューして、上記処理を繰り返し実行する。学習VM132aは、生成した学習モデルによって、モデルメモリ120Cに記憶された前回の学習モデルを更新する。
【0047】
学習VM132bは、キュー120Aに格納された学習用データをデキューし、デキューした学習用データの運転履歴データの全項目のうち、収集パターン120Bに定義された学習対象の項番「1~11」に対応する項目のデータを用いて、学習モデル識別情報「E002」の学習モデルを生成する。学習VM132bは、デキューした学習用データを用いた学習モデルの生成が終了すると、再度、キュー120Aに格納された学習用データをデキューして、上記処理を繰り返し実行する。学習VM132bは、生成した学習モデルによって、モデルメモリ120Cに記憶された前回の学習モデルを更新する。
【0048】
学習VM132cは、キュー120Aに格納された学習用データをデキューし、デキューした学習用データの運転履歴データの全項目のうち、収集パターン120Bに定義された学習対象の項番「1~7」に対応する項目のデータを用いて、学習モデル識別情報「E001」の学習モデルを生成する。学習VM132cは、デキューした学習用データを用いた学習モデルの生成が終了すると、再度、キュー120Aに格納された学習用データをデキューして、上記処理を繰り返し実行する。学習VM132cは、生成した学習モデルによって、モデルメモリ120Cに記憶された前回の学習モデルを更新する。
【0049】
通知部130Eは、モデルメモリ120Cに格納された各学習モデルを、アダプタ50に送信する処理部である。
【0050】
次に、本実施例に係るサーバ装置100のキュー管理部131の動作について説明する。図8は、本実施例に係るキュー管理部の処理動作の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、サーバ装置100のキュー管理部131は、学習用データをアダプタ50から受信したか否かを判定する(ステップS101)。キュー管理部131は、学習用データをアダプタ50から受信していない場合には(ステップS101,No)、再度ステップS101に移行する。
【0051】
一方、キュー管理部131は、学習用データをアダプタ50から受信した場合には(ステップS101,Yes)、アダプタ50から受信した学習用データをキュー120Aにエンキューする(ステップS102)。
【0052】
キュー管理部131は、処理を継続する場合には(ステップS103,Yes)、ステップS101に移行する。キュー管理部131は、処理を継続しない場合には(ステップS103,No)、処理を終了する。
【0053】
続いて、学習部132に含まれる学習VM132a~132cの動作について説明する。一例として、学習VM132aの動作について説明する。学習VM132b,132cの動作は、学習VM132aの動作と同様であるため、説明を省略する。図9は、本実施例に係る学習VMの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0054】
学習VM132aは、キュー120Aから学習用データをデキューする(ステップS201)。学習VM132aは、学習用データを用いて学習モデルを生成する(ステップS202)。学習VM132aは、学習モデルの生成が終了した場合に、生成した学習モデルを、モデルメモリ120Cに記憶する(ステップS203)。
【0055】
学習VM132aは、処理を継続する場合には(ステップS204,Yes)、ステップS201に移行する。学習VM132aは、処理を継続しない場合には(ステップS204,No)、処理を終了する。
【0056】
以上説明したように、本実施例に係るサーバ装置100は、アダプタ50から受信する学習用データをキュー120Aにエンキューし、各学習VM132a~132cは、キュー120Aから、学習用データをデキューして、学習モデルを生成する。このように、各学習VM132a~132cは、学習用データの生成が終わると、キュー120Aから学習用データをデキューするため、学習処理時間にバラツキがあっても、学習VMに待ち時間を生じさせることがない。
【0057】
各学習VM132a~132cは、学習モデルを生成する場合に、収集パターン120Bを基にして、生成する学習モデルに対応する学習用データを、運転履歴データの全項目のデータから取得する。これによって、それぞれ異なる学習モデルを生成する場合も、学習モデル毎に、学習用データを格納する必要が無くなり、メモリ資源を有効に活用できる。
【0058】
ところで、図3で説明したキュー管理部131は、アダプタ50から学習用データを受信した順番で、学習用データをキュー120Aにエンキューしていたが、これに限定されるものでは無い。以下では、キュー管理部131のその他の処理1~3について説明する。
【0059】
キュー管理部131のその他の処理1について説明する。その他の処理1では、キュー管理部131が受信する学習用データに、室内機2に対する操作回数の情報が付与されているものとする。たとえば、キュー管理部131は、一定期間(たとえば1分)、アダプタ50から受信する複数の学習用データを一旦保持し、保持した複数の学習用データのうち、操作回数の多い学習用データを優先して、キュー120Aにエンキューする。キュー管理部131は、一定期間毎に、上記処理を繰り返し実行する。
【0060】
キュー管理部131のその他の処理2について説明する。その他の処理1では、キュー管理部131が受信する学習用データに、室内機2の固有情報(MACアドレス等)が付与されているものとする。たとえば、キュー管理部131は、一定期間(たとえば1分)、アダプタ50から受信する複数の学習用データを一旦保持し、保持した複数の学習用データのうち、高い優先順位が設定されているMACアドレスが付与された学習用データを優先して、キュー120Aにエンキューする。キュー管理部131は、一定期間毎に、上記処理を繰り返し実行する。各MACアドレスの優先順位は、事前に設定されているものとする。
【0061】
キュー管理部131のその他の処理3について説明する。その他の処理1では、キュー管理部131が受信する学習用データに、室内機2周辺の天気予報の情報が付与されているものとする。たとえば、キュー管理部131は、所定の条件を満たす、天気予報の情報に付与された学習用データのみを選択して、キュー120Aにエンキューする。所定の条件とは、気温が一定温度以上となるという条件、または、一定温度未満となるという条件である。または、外気温の変動が閾値以上であるとうい条件である。所定の条件は、事前に設定されているものとする。
【0062】
ところで、アダプタ50は、室内機2の運転履歴データ等を中継装置6経由でサーバ装置100に送信する場合を例示したが、運転履歴データ等を中継装置6を経由することなく、そのまま、サーバ装置100に送信しても良く、適宜変更可能である。
【0063】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0064】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1 空気調和システム
2A,2B,2C 室内機
3A,3B,3C 本体
4A,4B,4C 制御部
50A,50B,50C アダプタ
51 第1の通信部
52 第2の通信部
53,120 記憶部
53A 運転履歴メモリ
53B、120C モデルメモリ
53C 外部メモリ
54,130 CPU
54A 取得部
54B 送信部
54C 受信部
54D 設定部
54E 予測制御部
100 サーバ装置
120A キュー
120B 収集パターンメモリ
131 キュー管理部
132 学習部
132a,132b,132c 学習VM
133 通知部
図1
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図9