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特許7147578組み合わせシールリング、及びハブユニット軸受
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】組み合わせシールリング、及びハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/80 20060101AFI20220928BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20220928BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20220928BHJP
   F16J 15/3256 20160101ALI20220928BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20220928BHJP
   B60B 35/18 20060101ALI20220928BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20220928BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F16C33/80
F16C19/18
F16J15/3232 201
F16J15/3256
F16J15/447
B60B35/18 C
F16J15/3204 201
F16C33/78 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019006501
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020115026
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊秋
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186319(JP,A)
【文献】特開2010-38346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00
F16C 33/00
F16J 15/00
B60B 27/00
B60B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合筒部、及び該嵌合筒部の軸方向端部から径方向外側に折れ曲がった円輪板部を有するスリンガと、
芯金、及び該芯金に固定されたシール材を有するシールリングと、
を備え、
前記シール材は、前記芯金に固定された基部と、該基部から前記スリンガの表面に向けて延出し、先端部を前記スリンガの表面に全周にわたり摺接させた、1乃至複数本のシールリップと、前記基部のうち、前記シールリップのうちで最も径方向外側のシールリップの基端部が結合された結合部よりも径方向外側に存在する延出基部から、軸方向に関して前記円輪板部に向かい、かつ、径方向外側に向けて延出する部分を含むラビリンスリップとを有しており、
前記ラビリンスリップが、前記延出基部から、軸方向に関して前記円輪板部に向かい、かつ、径方向外側に向けて延出する基半部と、該基半部の先端部から折れ曲がって径方向外側に向けて伸長する円輪状の先半部と、該先半部のうち、軸方向に関して前記円輪板部に近い側の側面に備えられた固定対向面とを有しており、
前記スリンガまたは該スリンガに固定された他の部材が、前記スリンガの中心軸に直交し、かつ、前記固定対向面と軸方向に対向する側面に、回転対向面を有するとともに、径方向内側を向いた段差面を全周にわたって有しており、
記回転対向面と前記固定対向面とを近接対向させることにより、前記回転対向面と前記固定対向面との間に径方向のラビリンスシールを構成し、かつ、前記先半部の先端面と前記段差面とを近接対向させることにより、前記先半部の先端面と前記段差面との間に軸方向のラビリンスシールを構成しており、
前記ラビリンスリップが、前記スリンガと前記シールリングとの相対回転に伴って、前記固定対向面と前記回転対向面との間隔が小さくなる方向に弾性変形するものであり、
前記シールリングと前記スリンガとが相対回転していない状態で、前記先半部のうち、軸方向に関して前記固定対向面と反対側の側面を、前記段差面のうちで軸方向に関して前記回転対向面から遠い側の端部よりも、軸方向に関して前記回転対向面から遠い側に位置させており、
前記ラビリンスリップの前記先半部の先端面と前記段差面との対向面積が、前記シールリングと前記スリンガとが相対回転していない状態よりも、前記シールリングと前記スリンガとが相対回転している状態で大きくなる、
組み合わせシールリング。
【請求項2】
前記ラビリンスリップの厚さが、前記最も径方向外側のシールリップの厚さよりも小さい、
請求項1に記載の組み合わせシールリング。
【請求項3】
前記ラビリンスリップの前記先半部の厚さが前記基半部の厚さよりも小さい、
請求項1または2に記載の組み合わせシールリング。
【請求項4】
内周面に外輪軌道を有する外輪部材と、
外周面に内輪軌道を有する内輪部材と、
前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置された複数の転動体と、
前記外輪部材の内周面と前記内輪部材の外周面との間に存在する転動体設置空間の軸方向端部の開口を塞ぐ組み合わせシールリングと、
を備え、
前記組み合わせシールリングが、請求項1~のうちの何れか1項に記載の組み合わせシールリングであり、前記スリンガの前記嵌合筒部を、前記内輪部材の軸方向端部に外嵌固定するとともに、前記シールリングの前記芯金を、前記外輪部材の軸方向端部に内嵌固定している、
ハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリンガとシールリングとを組み合わせてなる組み合わせシールリング、及び、該組み合わせシールリングを備えるハブユニット軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受は、泥水が直接跳ねかかる環境で使用される。このため、このようなハブユニット軸受には、密封装置を組み込んで、雨水や泥などの異物が転動体を設置した転動体設置空間に入り込むことを防止するとともに、封入したグリースが外部に漏洩することを防止している。具体的には、転動体設置空間の軸方向端部の開口を、スリンガとシールリングとからなる組み合わせシールリングにより塞いでいる。
【0003】
図9は、特開2018-59594号公報に記載された、組み合わせシールリングを示している。組み合わせシールリング100は、スリンガ101と、シールリング102とを備える。
【0004】
スリンガ101は、内輪103の軸方向端部に外嵌された嵌合筒部104と、該嵌合筒部104の軸方向片側(図9の右側)の端部から径方向外側に折れ曲がった円輪板部105とを備える。
【0005】
シールリング102は、金属製の芯金106と、弾性材製のシール材107とを備える。
【0006】
芯金106は、外輪108の軸方向端部に内嵌された円筒部109と、該円筒部109の軸方向他側(図9の左側)の端部から径方向内側に折れ曲がった折れ曲がり部110とを備える。
【0007】
シール材107は、基部111と、複数本(図示の例では3本)のシールリップ112a、112b、112cと、ラビリンスリップ113とを備える。基部111は、芯金106の円筒部109の内周面及び軸方向片側の端部と、折れ曲がり部110の軸方向片側面及び径方向内側の端部とを覆うように、芯金106に固定されている。シールリップ112a、112b、112cのそれぞれは、基部111からスリンガ101の嵌合筒部104の外周面または円輪板部105の軸方向他側面に向けて延出し、先端部を、嵌合筒部104の外周面または円輪板部105の軸方向他側面に摺接させている。ラビリンスリップ113は、基部111のうち、シールリップ112a、112b、112cのうちで最も径方向外側のシールリップ112aの基端部が結合された結合部117よりも径方向外側に存在する延出基部118から軸方向片側かつ径方向内側に向けて延出している。このようなラビリンスリップ113の先端面を、スリンガ101の円輪板部105の軸方向他側面に近接対向させることにより、ラビリンスリップ113の先端面と、円輪板部105の軸方向他側面との間に、ラビリンスシール114を構成している。
【0008】
このような組み合わせシールリング100を備えるハブユニット軸受によれば、雨水や泥などの異物が、転動体設置空間の軸方向端部の開口から入り込むことを防止できるとともに、該転動体設置空間内に封入したグリースが外部に漏洩することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-59594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開2018-59594号公報に記載の構造では、ラビリンスリップ113が、基部111から軸方向片側かつ径方向内側に向けて延出している。このため、シールリング102のうち、ラビリンスリップ113の軸方向他側に位置する部分に、径方向外側に凹んだ凹溝115が全周にわたって形成されている。したがって、ラビリンスリップ113の先端面と、スリンガ101の円輪板部105の軸方向他側面との間部分から、ラビリンスシール114よりも内側(転動体設置空間側)に、雨水や泥などの異物116が一度侵入すると、この異物116が、凹溝115のうち、組み合わせシールリング100を備えるハブユニット軸受を車両に組み付けた状態で下側に位置する部分に堆積する可能性がある。凹溝115に堆積した異物116は、外部空間に排出されにくく、シールリップ112a、112b、112cの先端部を摩耗させて、耐久性を低下させる可能性がある。
【0011】
本発明は、上述のような事情に鑑み、密封性を長期間にわたり十分確保することができる、組み合わせシールリング、及び、該組み合わせシールリングを備えるハブユニット軸受の構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の組み合わせシールリングは、スリンガと、シールリングとを備える。
前記スリンガは、嵌合筒部と、該嵌合筒部の軸方向端部から径方向外側に折れ曲がった円輪板部とを有する。
前記シールリングは、芯金と、該芯金に固定されたシール材を有する。
前記シール材は、基部と、1乃至複数本のシールリップと、ラビリンスリップとを有する。
前記基部は、前記芯金に固定されている。
前記シールリップは、前記基部から前記スリンガの表面に向けて延出し、先端部を前記スリンガの表面に全周にわたり摺接させている。
前記ラビリンスリップは、前記基部のうち、前記シールリップのうちで最も径方向外側のシールリップの基端部が結合された結合部よりも径方向外側に存在する延出基部から、軸方向に関して前記円輪板部に向かい、かつ、径方向外側に向けて延出する部分を含む。
前記ラビリンスリップは、前記延出基部から軸方向に関して前記円輪板部に向かい、かつ、径方向外側に向けて延出する基半部と、該基半部の先端部から折れ曲がって径方向外側に向けて伸長する円輪状の先半部と、該先半部のうち、軸方向に関して前記円輪板部に近い側の側面に備えられた前記固定対向面とを有する。
前記スリンガまたは該スリンガに固定された他の部材は、前記スリンガの中心軸に直交し、かつ、前記固定対向面と軸方向に対向する側面に、前記回転対向面を有するとともに、径方向内側を向いた段差面を全周にわたって有する。
さらに、本発明の組み合わせシールリングでは、前記回転対向面と前記固定対向面とを近接対向させることにより、前記回転対向面と前記固定対向面との間に径方向のラビリンスシールを構成し、かつ、前記先半部の先端面と前記段差面とを近接対向させることにより、前記先半部の先端面と前記段差面との間に軸方向のラビリンスシールを構成している。
また、前記ラビリンスリップは、前記スリンガと前記シールリングとの相対回転に伴って、前記固定対向面と前記回転対向面との間隔が小さくなるように弾性変形する。
さらに、前記シールリングと前記スリンガとが相対回転していない状態で、前記先半部のうち、軸方向に関して前記固定対向面と反対側の側面を、前記段差面のうちで軸方向に関して前記回転対向面から遠い側の端部よりも、軸方向に関して前記回転対向面から遠い側に位置させる。そして、前記ラビリンスリップの前記先半部の先端面と前記段差面との対向面積を、前記シールリングと前記スリンガとが相対回転していない状態よりも、前記シールリングと前記スリンガとが相対回転している状態で大きくする。
【0013】
なお、本発明の技術的範囲からは外れるが、前記ラビリンスリップを、外周面または内周面に、前記固定対向面を有するものとするとともに、前記スリンガまたは該スリンガに固定された他の部材を、前記固定対向面と径方向に対向する周面に、前記回転対向面を有するものとすることできる。
【0014】
追加的に、前記ラビリンスリップの厚さを、前記最も径方向外側のシールリップの厚さよりも小さくすることができる。
追加的または代替的に、前記ラビリンスリップの前記先半部の厚さを前記基半部の厚さよりも小さくすることができる。
【0015】
本発明のハブユニット軸受は、外輪部材と、内輪部材と、複数の転動体と、組み合わせシールリングとを備える。
前記外輪部材は、内周面に外輪軌道を有する。
前記内輪部材は、外周面に内輪軌道を有する。
前記転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置されている。
前記組み合わせシールリングは、前記外輪部材の内周面と前記内輪部材の外周面との間に存在する転動体設置空間の軸方向端部の開口を塞ぐ。
特に本発明のハブユニット軸受は、前記組み合わせシールリングを、本発明の組み合わせシールリングとし、前記スリンガの前記嵌合筒部を、前記内輪部材の軸方向端部に外嵌固定するとともに、前記シールリングの前記芯金を、前記外輪部材の軸方向端部に内嵌固定している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組み合わせシールリング及びハブユニット軸受によれば、密封性を長期間にわたり十分確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、参考例の第1例にかかるハブユニット軸受の断面図である。
図2図2は、図1のX部拡大図である。
図3図3は、参考例の第2例を示す、図2に相当する図である。
図4図4は、実施の形態の第例を示す、図2に相当する図である。
図5図5は、図4のY部拡大図である。
図6図6は、実施の形態の第例を示す、図2に相当する図である。
図7図7は、参考例の第例を示す、図2に相当する図である。
図8図8は、参考例の第例を示す、図2に相当する図である。
図9図9は、組み合わせシールリングの従来構造の1例について、取付状態での上方に位置する部分の断面と、下方に位置する部分の断面とを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
参考例の第1例]
図1及び図2は、本発明に関連する参考例の第1例を示している。本参考例のハブユニット軸受1は、使用状態で回転しない、外輪部材である外輪2と、使用状態で車輪及びディスク、ドラムなどの制動用回転体とともに回転する、内輪部材であるハブ3と、複数個の転動体4と、外側密封部材5と、組み合わせシールリング6とを備える。
【0019】
外輪2は、中炭素鋼などの硬質金属製で、複列の外輪軌道7a、7bと、外輪2を懸架装置に固定するための静止フランジ8とを備える。複列の外輪軌道7a、7bは、外輪2の内周面の軸方向中間部にそれぞれ形成されている。静止フランジ8は、外輪2の軸方向中間部に、径方向外側に向けて突出するように形成されており、円周方向複数箇所に支持孔9を有する。外輪2は、支持孔9に螺合または挿通されたボルトなどの結合部材により、懸架装置のナックルに支持固定される。
【0020】
ハブ3は、外輪2の径方向内側に該外輪2と同軸に配置されており、複列の内輪軌道10a、10bと、車輪及び制動用回転体を支持固定するための回転フランジ11とを備える。複列の内輪軌道10a、10bは、ハブ3の外周面のうち、複列の外輪軌道7a、7bに対向する部分に形成されている。回転フランジ11は、ハブ3のうち、外輪2の軸方向外側の端部よりも軸方向外側に存在する部分に、径方向外側に向けて突出するように形成されており、円周方向複数箇所に取付孔12を有する。車輪及び制動用回転体は、取付孔12に圧入されたスタッド13、または、ねじ孔である取付孔12に螺合されるハブボルトにより、回転フランジ11に対し支持される。
【0021】
なお、本参考例において、軸方向外側とは、ハブユニット軸受1を車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる図1および図2の左側をいい、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる図1および図2の右側をいう。
【0022】
本参考例では、ハブ3は、ハブ本体14と内輪15とを結合固定してなる。
【0023】
ハブ本体14は、軸方向中間部外周面に、複列の内輪軌道10a、10bのうち、軸方向外側の内輪軌道10aを有するとともに、軸方向外側の内輪軌道10aよりも軸方向外側に存在する部分に、径方向外側に向けて突出した回転フランジ11を有する。さらに、ハブ本体14は、軸方向内側部分に、軸方向外側に隣接する部分よりも外径寸法が小さい小径筒部16を有するとともに、小径筒部16の軸方向外側の端部に、軸方向内側を向いた段差部17を有する。
【0024】
内輪15は、軸方向中間部外周面に、複列の内輪軌道10a、10bのうち、軸方向内側の内輪軌道10bを有する。
【0025】
本参考例では、内輪15を小径筒部16に外嵌した状態で、小径筒部16のうちで内輪15の軸方向内側の端面よりも軸方向内側に突出した部分を径方向外側に向けて塑性変形させることにより形成したかしめ部18により、内輪15の軸方向内側の端面を抑え付けている。これにより、内輪15を、かしめ部18と段差部17との間で軸方向に挟持して、ハブ本体14と内輪15とを結合固定することにより、ハブ3を構成している。
【0026】
なお、ハブ3を、ハブ本体の小径筒部に内輪を外嵌した状態で、前記ハブ本体のうち、前記内輪の軸方向内側の端面よりも軸方向内側に突出した部分の外周面に形成された雄ねじ部にナットを螺合して結合固定することにより構成しても良い。
【0027】
転動体4は、複列の外輪軌道7a、7bと複列の内輪軌道10a、10bとの間に、列ごとに複数個ずつ、それぞれ保持器19のポケット20に保持された状態で、転動自在に配置されている。なお、本参考例では、転動体4として、玉を使用しているが、円すいころを使用することもできる。
【0028】
外側密封部材5は、シールリングであって、鋼板などの十分な強度及び剛性を有する金属板製で、外輪2の軸方向外側の端部に内嵌固定された外側芯金21と、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材製で、外側芯金21に固定されるとともに、複数本(図示の例では3本)のシールリップ22a、22b、22cを有する外側シール材23とを備える。
【0029】
本参考例では、シールリップ22a、22b、22cのうちで最も径方向内側のシールリップ22cの先端部を、軸方向外側の外輪軌道7aの軸方向外側に隣接する肩部24aの外周面に摺接させるとともに、残りのシールリップ22a、22bの先端部を、回転フランジ11の軸方向内側面、乃至、該回転フランジ11の軸方向内側面と肩部24aの外周面との接続部に摺接させている。これにより、外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在し、転動体4が配置された円筒状の転動体設置空間25に封入されたグリースが、転動体設置空間25の軸方向外側開口から漏洩するのを防止するとともに、泥や雨水などの異物が、転動体設置空間25の軸方向外側開口から侵入するのを防止している。
【0030】
組み合わせシールリング6は、スリンガ26と、シールリング27とを備える。
【0031】
スリンガ26は、ステンレス鋼板など防錆性を有するとともに、十分な強度及び剛性を有する金属板を曲げ成形することにより、断面L字形で全体を円環状に造られたもので、円筒状の嵌合筒部28と、該嵌合筒部28の軸方向内側の端部から径方向外側に直角に折れ曲がった円輪板部29とを有する。嵌合筒部28は、ハブ3の軸方向内側の端部外周面、具体的には、内輪15のうち、軸方向内側の内輪軌道10bの軸方向内側に隣接する肩部24bの外周面に、締り嵌めで外嵌固定されている。
【0032】
シールリング27は、芯金30と、該芯金30に固定されたシール材31とを備える。
【0033】
芯金30は、鋼板などの十分な強度及び剛性を有する金属板を曲げ成形することにより、断面略L字形で全体を円環状に造られたもので、円筒部32と、該円筒部32の軸方向外側の端部から径方向内側に折れ曲がった折れ曲がり部33とを有する。円筒部32は、外輪2の軸方向内側の端部内周面に締り嵌めで内嵌固定されている。
【0034】
シール材31は、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材製で、芯金30の表面に全周にわたり、加硫接着により固定されている。シール材31は、基部34と、複数本(図示の例では3本)のシールリップ35a、35b、35cと、1本のラビリンスリップ36とを備える。
【0035】
基部34は、芯金30の円筒部32の外周面及び軸方向内側の端部と、折れ曲がり部33の軸方向内側面及び径方向内側の端部とを覆うように、当該部分に加硫接着により固定されている。
【0036】
シールリップ35a、35b、35cは、基部34からスリンガ26の表面に向けて延出し、先端部を、スリンガ26の表面に全周にわたり摺接させている。具体的には、シールリップ35a、35b、35cのうち、最も径方向外側のシールリップ35aは、基部34からスリンガ26の円輪板部29に向けて、軸方向内側かつ径方向外側に延出し、先端部を、円輪板部29の軸方向外側面に全周にわたり摺接させている。また、径方向内側の2本のシールリップ35b、35cは、基部34からスリンガ26の嵌合筒部28に向けて、径方向内側に延出し、先端部を、嵌合筒部28の外周面に全周にわたり摺接させている。
【0037】
ラビリンスリップ36は、基半部37と、先半部38とを有する。
【0038】
基半部37は、基部34のうち、最も径方向外側のシールリップ35aの基端部が結合された結合部49よりも径方向外側に存在する延出基部50から、軸方向内側かつ径方向外側に向けて延出している。したがって、基半部37の内周面は、軸方向内側に向かうほど、内径が大きくなる方向に傾斜した円すい面となっている。なお、本参考例では、基部34の表面のうちで、基半部37の内周面の軸方向外側に隣接する部分を、該基半部37の内周面と同一円すい面上に存在させており、当該部分と、最も径方向外側のシールリップ35aの基端部が結合された結合部49とを、外輪2の中心軸に直交する平坦面により接続している。要するに、本参考例の組み合わせシールリング6では、ラビリンスリップ36と最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間48に、特開2018-59594号公報に記載の組み合わせシールリング100が備えるような、径方向外側に凹んだ凹溝115は存在しない(図9参照)。
【0039】
先半部38は、円輪状で、基半部37の先端部(軸方向内側の端部)から折れ曲がり、径方向外側に向けて伸長している。先半部38は、外輪2の中心軸に直交する平坦面である軸方向内側面に、固定対向面39を有する。本参考例では、固定対向面39を、スリンガ26の円輪板部29の軸方向外側面の径方向外側部分に備えられた回転対向面40に軸方向に近接対向させることにより、固定対向面39と回転対向面40との間に、径方向に伸長したラビリンスシール41を構成している。
【0040】
また、本参考例では、ラビリンスリップ36の厚さを適度に規制することにより、該ラビリンスリップ36の剛性を適度な大きさとしている。すなわち、ハブ3の回転に伴って、固定対向面39と回転対向面40との間に発生する気流の作用により、ラビリンスリップ36が、固定対向面39と回転対向面40との間隔が小さくなる方向に弾性変形できる程度に、該ラビリンスリップ36の剛性を規制している。
【0041】
このような組み合わせシールリング6により、転動体設置空間25の軸方向内側開口を塞ぐことにより、転動体設置空間25に封入されたグリースが、転動体設置空間25の軸方向内側開口から漏洩するのを防止するとともに、泥や雨水などの異物が、転動体設置空間25の軸方向内側開口から侵入するのを防止している。
【0042】
本参考例のハブユニット軸受1によれば、組み合わせシールリング6が設置された、転動体設置空間25の軸方向内側開口の密封性を長期間にわたり十分確保することができる。
【0043】
すなわち、本参考例では、シールリング27を構成するラビリンスリップ36の基半部37を、基部34から軸方向内側かつ径方向外側に向けて延出させることにより、基半部37の内周面を、軸方向内側に向かうほど、内径が大きくなる方向に傾斜した円すい面としている。このため、本参考例では、ラビリンスリップ36と最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間48に、特開2018-59594号公報に記載の組み合わせシールリング100が備えるような、径方向外側に凹んだ凹溝115が存在しない。したがって、仮に、雨水や泥水などの異物が、先半部38の軸方向内側面(固定対向面39)と、スリンガ26の円輪板部29の軸方向外側面(回転対向面40)との間部分(ラビリンスシール41)を通じて、ラビリンスシール41よりも内側(転動体設置空間25側)の空間48に侵入した場合でも、この異物が、空間48に堆積することを防止することができる。このため、空間48に入り込んだ異物は、重力の作用により、基半部37の内周面に沿って案内されて軸方向内側に移動した後、ハブ3(スリンガ26)の回転に伴う遠心力により、ラビリンスシール41を通じて、外部空間に排出される。
【0044】
さらに本参考例では、ラビリンスリップ36の剛性を適度な大きさとしているため、車両の走行に伴ってハブ3が回転すると、固定対向面39と回転対向面40との間に発生する気流の作用により、ラビリンスリップ36が、固定対向面39と回転対向面40との間隔が小さくなる方向に弾性変形する。この結果、ラビリンスシール41の軸方向に関する幅寸法を小さくできて、ラビリンスリップ36によるシール効果を向上させることができる。これに対し、車両の停止に伴いハブ3が停止すると、先半部38が弾性的に復元して、固定対向面39と回転対向面40との間隔が拡がる。したがって、ラビリンスリップ36と最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間48に入り込んだ異物を、重力の作用により、ラビリンスシール41を通じて、外部空間に排出しやすくすることができる。
【0045】
以上のような理由により、ラビリンスシール41よりも内側の空間48に異物が入り込んだ場合でも、この異物が、ラビリンスリップ36と最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間に堆積するのを防止することができる。このため、異物により、シールリップ35a、35b、35cの先端部が摩耗するのを防止できて、転動体設置空間25の軸方向内側開口の密封性を長期間にわたり確保することができる。
【0046】
参考例の第2例]
図3は、本発明に関連する参考例の第2例を示している。本参考例の組み合わせシールリング6aを構成するスリンガ26aは、略コ字形(略U字形)の断面形状を有する。すなわち、スリンガ26aは、ハブ3(図1参照)の軸方向内側の端部外周面に外嵌された嵌合筒部28と、該嵌合筒部28の軸方向内側の端部から径方向外側に直角に折れ曲がった円輪板部29と、該円輪板部29の径方向外側の端部から軸方向外側に直角に折れ曲がった庇部42とを備える。庇部42は、ハブ3の中心軸を中心とする円筒面である内周面に、回転対向面40aを有する。
【0047】
また、シールリング27aを構成するシール材31aのラビリンスリップ36aは、基部34から軸方向内側かつ径方向外側に向けて延出した基半部37aと、該基半部37aの先端部から折れ曲がって、軸方向内側に向けて伸長する円筒状の先半部38aとを備える。基半部37aの内周面は、軸方向内側に向かうほど、内径が大きくなる方向に傾斜した円すい面となっている。先半部38aは、外輪2(図1参照)の中心軸を中心とする円筒面である外周面に、固定対向面39aを有する。本参考例では、ラビリンスリップ36aの固定対向面39aと、スリンガ26aの回転対向面40aとを径方向に近接対向させることにより、固定対向面39aと回転対向面40aとの間に、軸方向に伸長したラビリンスシール41aを構成している。
【0048】
また、本参考例では、ラビリンスリップ36aの厚さを適度に規制することにより、該ラビリンスリップ36aの剛性を適度な大きさとしている。具体的には、ハブ3の回転に伴って、固定対向面39aと回転対向面40aとの間に発生する気流の作用により、ラビリンスリップ36aが、これら固定対向面39aと回転対向面40aとの間隔が小さくなる方向に弾性変形できる程度に、ラビリンスリップ36aの剛性を規制している。
【0049】
本参考例の場合も、ラビリンスリップ36aの基半部37aを、基部34から軸方向内側かつ径方向外側に延出させているため、ラビリンスリップ36aと最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間48aに、特開2018-59594号公報に記載の組み合わせシールリング100が備えるような、径方向外側に凹んだ凹溝115は存在しない。したがって、仮に、ラビリンスシール41aよりも内側(転動体設置空間25側)の空間48aに、雨水や泥水などの異物が侵入した場合でも、この異物が、空間48aに堆積することを防止することができる。
【0050】
また、ラビリンスリップ36aの剛性を適度な大きさとしているため、車両の走行に伴ってハブ3が回転すると、固定対向面39aと回転対向面40aとの間に発生する気流の作用により、ラビリンスリップ36aが、固定対向面39aと回転対向面40aとの間隔が小さくなる方向に弾性変形する。この結果、ラビリンスシール41aの径方向に関する幅寸法を小さくできて、ラビリンスリップ36aによるシール効果を向上させることができる。これに対し、車両の停止に伴いハブ3が停止すると、先半部38aが弾性的に復元して、固定対向面39aと回転対向面40aとの間隔が拡がり、ラビリンスリップ36aと最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間48aに入り込んだ異物を、外部空間に排出しやすくできる。その他の部分の構成及び作用効果は、参考例の第1例と同様である。
【0051】
[実施の形態の第例]
図4及び図5は、本発明の実施の形態の第例を示している。本例の組み合わせシールリング6bは、スリンガ26及びシールリング27に加え、エンコーダ43を備える。エンコーダ43は、ゴム磁石やプラスチック磁石などの永久磁石製で、全体が円輪状に構成されており、スリンガ26の円輪板部29の軸方向内側面に、ハブ3(図1参照)と同軸に添着固定されている。エンコーダ43は、径方向外側の端部に、円輪板部29の軸方向外側面(回転対向面40)よりも軸方向外側に突出した突条部44を全周にわたり有するとともに、突条部44の内周面に、径方向内側を向いた段差面45を有する。本例では、段差面45を、軸方向外側に向かうほど、内径が大きくなる方向に傾斜した円すい面としている。
【0052】
本例では、ラビリンスリップ36の先半部38に備えられた固定対向面39を、スリンガ26の円輪板部29に備えられた回転対向面40に軸方向に近接対向させるとともに、先半部38の先端面(外周面)を、段差面45に径方向に近接対向させている。これにより、固定対向面39と回転対向面40との間に、径方向に伸長したラビリンスシール41を構成するとともに、先半部38の先端面と段差面45との間に、ラビリンスシール41の径方向外側の端部から軸方向外側に折れ曲がった軸方向のラビリンスシール46を構成している。本例では、ハブ3が回転していない状態において、先半部38の先端面の軸方向内側部分を、段差面45の軸方向外側部分に近接対向させている。換言すれば、ハブ3が回転していない状態では、先半部38の軸方向外側面を、突条部44の軸方向外側面よりも軸方向外側に位置させている。
【0053】
本例では、ハブ3の回転に伴って、ラビリンスリップ36が、固定対向面39と回転対向面40との間隔が小さくなる方向に弾性変形すると、ラビリンスシール41の軸方向に関する幅寸法が小さくなるとともに、先半部38の先端面と段差面45との対向面積が大きくなる。換言すれば、先半部38の先端面と段差面45とが径方向に重畳している部分の軸方向長さ、すなわち軸方向のラビリンスシール46の軸方向長さが長くなる。
【0054】
本例では、ハブ3の回転に伴ってラビリンスリップ36が弾性変形すると、ラビリンスシール41の軸方向に関する幅寸法が小さくなるとともに、該ラビリンスシール41の径方向外側の端部から軸方向外側に折れ曲がった軸方向のラビリンスシール46の軸方向長さが長くなる。このため、ラビリンスリップ36によるシール効果を、参考例の第1例の組み合わせシールリング6に比べて、より一層向上させることができる。
【0055】
一方、ハブ3の停止に伴いラビリンスリップ36が弾性的に復元すると、ラビリンスシール41の軸方向に関する幅寸法が大きくなるとともに、軸方向のラビリンスシール46の軸方向長さが短くなる。したがって、ラビリンスリップ36と最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間48に入り込んだ異物を、重力の作用により、ラビリンスシール41及び軸方向のラビリンスシール46を通じて、外部空間に排出しやすくすることができる。特に本例では、段差面45を、軸方向外側に向かうほど、内径が大きくなる方向に傾斜した円すい面としているため、先半部38の先端部まで移動した異物を、外部空間に向けて案内することができる。その他の部分の構成及び作用効果は、参考例の第1例と同様である。
【0056】
[実施の形態の第例]
図6は、本発明の実施の形態の第例を示している。本例の組み合わせシールリング6cは、スリンガ26及びシールリング27に加え、スリンガ26の円輪板部29の軸方向内側面及び径方向外側の端部に添着固定されたエンコーダ43aを備える。エンコーダ43aは、径方向外側の端部に、スリンガ26の軸方向外側面よりも軸方向外側に突出した凸部47を全周にわたり有するとともに、凸部47の先端面(軸方向外側面)の径方向内側部分に、ハブ3(図1参照)の中心軸に直交する平坦面である回転対向面40bを有する。さらに、エンコーダ43aは、凸部47の先端面の径方向外側部分に、径方向内側部分(回転対向面40b)よりも軸方向外側に突出した突条部44aを有するとともに、突条部44aの内周面に、径方向内側を向いた段差面45aを有する。なお、段差面45aは、軸方向外側に向かうほど、内径が大きくなる方向に傾斜した円すい面である。
【0057】
本例では、ラビリンスリップ36の先半部38に備えられた固定対向面39を、エンコーダ43aに備えられた回転対向面40bに軸方向に近接対向させるとともに、先半部38の先端面(外周面)を、段差面45aに径方向に近接対向させている。これにより、固定対向面39と回転対向面40bとの間に、径方向に伸長したラビリンスシール41bを構成するとともに、先半部38の先端面と段差面45aとの間に、ラビリンスシール41bの径方向外側の端部から軸方向外側に折れ曲がった軸方向のラビリンスシール46aを構成している。なお、本例では、ハブ3が回転していない状態において、先半部38の先端面の軸方向内側部分を、段差面45aの軸方向外側部分に近接対向させている。その他の部分の構成及び作用効果については、参考例の第1例及び実施の形態の第1例と同様である。
【0058】
参考例の第例]
図7は、本発明に関連する参考例の第例を示している。本参考例の組み合わせシールリング6dを構成するスリンガ26bは、嵌合筒部28及び円輪板部29に加え、円輪板部29の径方向外側の端部から軸方向外側かつ径方向内側に向けて鋭角に折れ曲がった庇部42aを有する。したがって、庇部42aの外周面は、軸方向内側に向かうほど、外径が大きくなる方向に傾斜した円すい面である。
【0059】
また、本参考例では、シールリング27bを構成するシール材31bのラビリンスリップ36b全体が、基部34から軸方向内側かつ径方向外側に向けて延出している。ラビリンスリップ36bの内周面は、軸方向内側に向かうほど、内径が大きくなる方向に傾斜した円すい面である。本参考例では、ラビリンスリップ36bの内周面の軸方向内側部分に備えられた固定対向面39bと、庇部42aの外周面の軸方向外側部分に備えられた回転対向面40cとを近接対向させることにより、固定対向面39bと回転対向面40cとの間に、軸方向内側に向かうほど径方向外側に向かう方向に伸長した、ラビリンスシール41cを構成している。
【0060】
本参考例では、ハブ3が回転すると、固定対向面39bと回転対向面40cとの間に発生する気流の作用により、ラビリンスリップ36bが、固定対向面39bと回転対向面40cとの間隔が小さくなる方向に弾性変形する。この結果、ラビリンスシール41cの幅寸法が小さくなり、ラビリンスリップ36bによるシール効果を向上させることができる。これに対し、ハブ3が停止すると、ラビリンスリップ36bが弾性的に復元して、ラビリンスシール41cの幅寸法が大きくなるため、ラビリンスリップ36bと最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間48bに入り込んだ異物を排出しやすくできる。特に本参考例では、異物を、円すい面であるラビリンスリップ36bの内周面により、径方向外側に向けて案内することができるため、異物の排出性をより良好にすることができる。その他の部分の構成及び作用効果は、参考例の第1例及び第2例と同様である。
【0061】
参考例の第例]
図8は、本発明に関連する参考例の第例を示している。本参考例の組み合わせシールリング6eを構成するスリンガ26cは、円輪板部29の径方向外側の端部から軸方向外側に直角に折れ曲がった庇部42bを有する。また、エンコーダ43bは、径方向外側の端部に、庇部42bを覆うように形成された、断面略台形の凸部47aを全周にわたり有する。凸部47aは、外周面を、軸方向外側に向かうほど、外径が大きくなる方向に傾斜した円すい面としているのに対し、内周面を、ハブ3(図1参照)の中心軸を中心とする円筒面としている。
【0062】
本参考例では、ラビリンスリップ36bの内周面の軸方向内側部分に備えられた固定対向面39bと、凸部47aの外周面の軸方向外側部分に備えられた回転対向面40dとを近接対向させることにより、固定対向面39bと回転対向面40dとの間に、軸方向内側に向かうほど径方向外側に向かう方向に伸長した、ラビリンスシール41dを構成している。
【0063】
本参考例では、凸部47aの内周面を円筒面とすることにより、ラビリンスリップ36bと最も径方向外側のシールリップ35aとの間に存在する空間48b内に、径方向外側に凹んだ凹部が形成されることを防止している。これにより、空間48bに入り込んだ異物が、該空間48b内に堆積することを防止している。その他の部分の構成及び作用効果については、参考例の第1例及び第例と同様である。
【0064】
上述した参考例の各例及び実施の形態の各例では、組み合わせシールリングを、転動体設置空間の軸方向内側の開口部に設置した場合について説明したが、本発明のハブユニット軸受を実施する場合には、本発明の組み合わせシールリングを、転動体設置空間の軸方向外側の開口部に設置することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 ハブユニット軸受
2 外輪
3 ハブ
4 転動体
5 外側密封部材
6、6a、6b、6c、6d、6e 組み合わせシールリング
7a、7b 外輪軌道
8 静止フランジ
9 支持孔
10a、10b 内輪軌道
11 回転フランジ
12 取付孔
13 スタッド
14 ハブ本体
15 内輪
16 小径筒部
17 段差部
18 かしめ部
19 保持器
20 ポケット
21 外側芯金
22a、22b、22c シールリップ
23 外側シール材
24a、24b 肩部
25 転動体設置空間
26、26a、26b、26c スリンガ
27、27a、27b シールリング
28 嵌合筒部
29 円輪板部
30 芯金
31、31a、31b シール材
32 円筒部
33 折れ曲がり部
34 基部
35a、35b、35c シールリップ
36、36a、36b ラビリンスリップ
37、37a 基半部
38、38a 先半部
39、39a、39b 固定対向面
40、40a、40b、40c、40d 回転対向面
41、41a、41b、41c、41d ラビリンスシール
42、42a、42b 庇部
43、43a、43b エンコーダ
44、44a 突条部
45、45a 段差面
46、46a 軸方向のラビリンスシール
47、47a 凸部
48、48a、48b 空間
49 結合部
50 延出基部
100 組み合わせシールリング
101 スリンガ
102 シールリング
103 内輪
104 嵌合筒部
105 円輪板部
106 芯金
107 シール材
108 外輪
109 円筒部
110 折れ曲がり部
111 基部
112a、112b、112c シールリップ
113 ラビリンスリップ
114 ラビリンスシール
115 凹溝
116 異物
117 結合部
118 延出基部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9