(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20220928BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20220928BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20220928BHJP
C08K 5/5425 20060101ALI20220928BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220928BHJP
C08F 255/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08L23/16
C08L23/08
C08L23/10
C08K5/5425
C08K5/14
C08F255/02
(21)【出願番号】P 2019007671
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2018015414
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】広田 保史
(72)【発明者】
【氏名】戸田 麻奈美
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086384(JP,A)
【文献】特開平08-020691(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/16
C08L 23/08
C08L 23/10
C08K 5/5425
C08K 5/14
C08F 255/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含み、且つ下記成分(E)によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物
であって、下記成分(A)の含有量が下記成分(A)と下記記成分(B)との合計100質量部中に5~50質量部であり、下記成分(B)の含有量が下記成分(A)と下記成分(B)との合計100質量部中に95~50質量部である変性エラストマー組成物。
成分(A):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
成分(B):エチレン単位含有量60~99質量%で、非共役ジエン単位を含まないエチレン・
1-オクテン共重合体ゴム
成分(C):ポリエチレン、及び/又は、プロピレン単位含有量が40~100質量%であるプロピレン系樹脂
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【請求項2】
前記成分(C)の含有量が前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して1~200質量部であり、前記成分(D)の含有量が前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して0.01~3質量部である、請求項1に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記成分(B)の密度が0.880g/cm
3以下である、請求項1又は2に記載の変性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記成分(E)の使用量が、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して0.01~3質量部である、請求項1~3のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【請求項5】
さらに成分(F):架橋助剤を、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して0.001~2質量部含む、請求項1~4のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記成分(D)が下記式(1)で表される化合物である、請求項1~5のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
RSi(R’)
3 …(1)
(ただし、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。)
【請求項7】
さらに成分(G):軟化剤を、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して0.5~200質量部含む、請求項1~6のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【請求項8】
前記成分(C)が、ポリエチレン、及び/又は、エチレン単位含有量が0~50質量%のプロピレン系樹脂である、請求項1~7のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の変性エラストマー組成物を成分(H):シラノール縮合触媒により架橋反応させてなる架橋エラストマー組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の変性エラストマー組成物又は請求項9に記載の架橋エラストマー組成物で成形された成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及びその成形体に関する。詳しくは、本発明は、圧縮永久歪、耐久性、押出成形外観に優れる変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物と、これを用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーとは、加熱により軟化して流動性を有し、冷却するとゴム弾性を有するエラストマーをいう。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有すると共に、ゴム弾性を有し、また、リサイクルが可能であることから、自動車部品、建築部品、医療用部品、電線被覆材、雑貨等の用途に幅広く用いられている。
【0003】
シール性が求められる用途に使われる場合には良好なゴム弾性、ないしは圧縮永久歪特性、良好な押出成形外観を有することが重要であり、そのために多くの研究がなされているが、熱可塑性エラストマーは熱可塑性を確保するためにポリオレフィンのような熱可塑性樹脂を含有するため、熱硬化性ゴムと比較すると圧縮永久歪特性が不十分で、使用できる用途に制限があった。一方、EPDMのような熱硬化性ゴムは優れた圧縮永久歪特性を有するが、長い架橋工程が必要であり、また耐久性に劣るという欠点があった。
【0004】
例えば、特許文献1~3には圧縮永久歪特性を改善したシラン変性によるエラストマー組成物が提案されているが、圧縮永久歪特性を改善するのに多量の不飽和シラン化合物を添加する必要があり、経済性、生産性に問題があった。特許文献4には同じくシラン変性によるエラストマー組成物が提案されているが、圧縮永久歪(70℃×22時間)で50%強に留まり不十分であった。特許文献5にはフェノール樹脂等の架橋剤を用いた動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物が提案されているが、前述の通り成分中に非架橋の熱可塑性樹脂を含有するため、圧縮永久歪特性は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/140251号
【文献】国際公開第2016/140252号
【文献】国際公開第2016/140253号
【文献】特許第5346285号公報
【文献】特表第2005-516098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされてものであり、その目的は従来の熱硬化性ゴムと同様の圧縮永久歪特性を示し、かつ熱可塑性エラストマー組成物と同様の耐久性、成形性を有し、良好な押出成形外観となる変性エラストマー組成物、架橋エラストマー組成物及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム;非共役ジエン単位を含まないエチレン・α-オレフィン共重合体ゴム;ポリエチレン、ポリプロピレンまたはプロピレン・α-オレフィン共重合体;不飽和シラン化合物を含む組成物をグラフト変性させて得られる変性エラストマー組成物、或いは更にこれを架橋反応させてなる架橋エラストマー組成物が、本来不可能と考えられていた熱硬化性ゴム同等の圧縮永久歪特性と、熱可塑性エラストマー同様の簡便な押出成形性を両立させて、圧縮永久歪に優れ良好な押出成形外観を有する成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[10]に存する。
【0008】
[1] 下記成分(A)~(D)を含み、且つ下記成分(E)によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物。
成分(A):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
成分(B):エチレン単位含有量60~99質量%で、非共役ジエン単位を含まないエチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(C):ポリエチレン、及び/又は、プロピレン単位含有量が40~100質量%であるプロピレン系樹脂
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
【0009】
[2] 前記成分(A)の含有量が前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部中に5~70質量部であり、前記成分(B)の含有量が前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部中に95~30質量部であり、前記成分(C)の含有量が前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して1~200質量部であり、前記成分(D)の含有量が前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して0.01~3質量部である、[1]に記載の変性エラストマー組成物。
【0010】
[3] 前記成分(B)の密度が0.880g/cm3以下である、[1]又は[2]に記載の変性エラストマー組成物。
【0011】
[4] 前記成分(E)の使用量が、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して0.01~3質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【0012】
[5] さらに成分(F):架橋助剤を、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して0.001~2質量部含む、[1]~[4]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【0013】
[6] 前記成分(D)が下記式(1)で表される化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
RSi(R’)3 …(1)
(ただし、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。)
【0014】
[7] さらに成分(G):軟化剤を、前記成分(A)と前記成分(B)との合計100質量部に対して0.5~200質量部含む、[1]~[6]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【0015】
[8] 前記成分(C)が、ポリエチレン、及び/又は、エチレン単位含有量が0~50質量%のプロピレン系樹脂である、[1]~[7]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物。
【0016】
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物を成分(H):シラノール縮合触媒により架橋反応させてなる架橋エラストマー組成物。
【0017】
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の変性エラストマー組成物又は[9]に記載の架橋エラストマー組成物で成形された成形体。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧縮永久歪特性に優れ、且つ耐久性、押出成形性、押出成形外観が良好な変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物、並びにこれを用いた成形体を提供することができる。
本発明の変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物、並びにこれを用いた成形体は、従来熱硬化性ゴムが使用されている良好なゴム弾性が要求される用途、さらに厳しい使用環境に曝される種々の用途への展開が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0020】
[変性エラストマー組成物]
本発明の変性エラストマー組成物は、下記成分(A)~(D)を含み、且つ下記成分(E)によりグラフトされてなる変性エラストマー組成物であり、好ましくは更に下記成分(F)~(G)を含む。
成分(A):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
成分(B):エチレン単位含有量60~99質量%で、非共役ジエン単位を含まないエチレン・α-オレフィン共重合体ゴム
成分(C):ポリエチレン、及び/又は、プロピレン単位含有量が40~100質量%であるプロピレン系樹脂
成分(D):不飽和シラン化合物
成分(E):過酸化物
成分(F):架橋助剤
成分(G):軟化剤
【0021】
成分(A)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部中に5~70質量部であることが好ましい。
成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部中に95~30質量部であることが好ましい。
成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して1~200質量部であることが好ましい。
成分(D)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して0.01~3質量部であることが好ましい。
成分(E)は、好ましくは、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して0.01~3質量部使用される。
成分(F)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.001~2質量部であることが好ましい。
成分(G)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.5~200質量部であることが好ましい。
【0022】
[架橋エラストマー組成物]
本発明の架橋エラストマー組成物は、本発明の変性エラストマー組成物を下記成分(H)により架橋反応させてなる。
成分(H):シラノール縮合触媒
【0023】
<メカニズム>
本発明の変性エラストマー組成物並びに架橋エラストマー組成物が、圧縮永久歪特性に優れ、耐久性が良好であるという効果を奏するメカニズムは以下の通り推定される。
成分(D),(E),(H)さらに成分(E),(F)の効果により、成分(A),(B)の架橋度が格段に上がり、高いゴム弾性を得ることができ、また残存二重結合が存在しないことから良好な耐久性を得ることができる。
【0024】
<成分(A):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム>
成分(A)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、共重合成分としてエチレンとα-オレフィンと非共役ジエン化合物とを含有する共重合体である。エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムには、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物(以下、「油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム」と称することもある。)である油展タイプのものと、炭化水素系ゴム用軟化剤を含まない非油展タイプのものがあり、本実施形態では油展タイプの共重合体ゴムを意図しているが、非油展タイプのものも好適に用いることができる。すなわち、本発明において、成分(A)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、油展タイプと非油展タイプのいずれでも使用可能であり、非油展タイプのもの又は油展タイプのものの1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよく、油展タイプの1種又は2種以上と非油展タイプの1種又は2種以上とを任意の組み合わせ及び比率で用いることもできる。
なお、油展タイプの場合、混合物中に含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤は、成分(G)の軟化剤として分類される。
【0025】
油展タイプのものに含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤としては、後述の成分(F)として例示したものが挙げられる。また、油展タイプのエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤の混合物において、油展タイプのエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対する炭化水素系ゴム用軟化剤の割合(油展量)は通常10~200質量部程度である。
【0026】
成分(A)中のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-オクタデセン等の炭素数3~20、より好ましくは炭素数3~8のα-オレフィンが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテンが好ましく、より好ましくはプロピレン、1-ブテンである。なお、α-オレフィンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0027】
成分(A)中の非共役ジエン化合物としては、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロへキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロオクタジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビニリデンノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)等のエチリデンノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)等のメチレンノルボルネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、架橋性等の観点から、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニリデンノルボルネンが好ましく、より好ましくはジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ビニリデンノルボルネンである。なお、非共役ジエンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0028】
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの具体例としては、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体ゴム等のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)や、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴムなどが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0029】
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中のエチレン単位の含有量は、特に限定されないが、50~90質量%が好ましく、より好ましくは55~85質量%であり、さらに好ましくは60~80質量%である。エチレン単位の含有量が上記好ましい範囲内であると、機械的強度やゴム弾性に優れるエラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
【0030】
また、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中のα-オレフィン単位の含有量は、特に限定されないが、10~50質量%が好ましく、より好ましくは15~45質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。α-オレフィン単位の含有量が上記好ましい範囲内であると、機械的強度、適度な柔軟性、ゴム弾性に優れるエラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
【0031】
さらに、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中の非共役ジエン単位の含有量は、特に限定されないが、0.5~30質量%が好ましく、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは2~10質量%である。非共役ジエン単位の含有量が上記好ましい範囲内であると、架橋性や成形性の調整が容易となり、機械的強度やゴム弾性に優れるエラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
【0032】
なお、成分(A)及び後述の成分(B)、成分(C)の各構成単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
【0033】
本発明において、成分(A)としては、特に、エチレン単位の含有量が55~75質量%であり、プロピレン単位の含有量が15~40質量%であり、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及びビニリデンノルボルネンよりなる群から選択される少なくとも1種の非共役ジエン単位の含有量が1~10質量%のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム共重合体が好ましい。
【0034】
成分(A)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0035】
<成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体>
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン単位含有量が60~99質量%で、非共役ジエン単位を含まない共重合体、すなわち成分(A)を除くエチレン・α-オレフィン共重合体である。成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体はこのようなものであればその種類は特に限定されず、公知のエチレン・α-オレフィン共重合体が適宜用いられる。
【0036】
エチレン・α-オレフィン共重合体の具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレンと、炭素数3~10のα-オレフィンの1種又は2種以上との共重合体が挙げられる。
【0037】
エチレン・α-オレフィン共重合体を製造する際に用いられる触媒の種類は特に制限されないが、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられる。これらの中でも、メタロセン触媒により製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体であることが好ましい。
【0038】
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解の終了ピーク温度(以下「融解終了点」と称す場合がある。)が115℃以上のものが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点が115℃以上であると高温でも結晶により形状を保持可能である。この観点からエチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点は115℃以上であることが好ましい。ただし、エチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点が過度に高いと、成形昇温時の未溶融のブツや成形冷却時の早期結晶化(メルトフラクチャー)により外観不良となる恐れがあることから、エチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点は通常145℃以下である。エチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
【0039】
本発明で用いる成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体の密度(JIS K6922-1,2:1997にて測定)は、0.850~0.910g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.860~0.900g/cm3、更に好ましくは0.860~0.880g/cm3である。密度が上記上限値以下であると柔軟で密封性能に優れる傾向がある。また、密度が上記下限値以上では、室温で形状を維持でき、ヒステリシスロスも少ないことからヘタリ(圧縮永久歪)に優れる傾向がある。
【0040】
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体のエチレン単位の含有量は、60~99質量%、好ましくは60~85質量%である。エチレン単位の含有量が上記範囲内であると、機械的強度やゴム弾性に優れるエラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
【0041】
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999)に準拠して温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)で、好ましくは0.01~30g/10分である。MFRが大き過ぎると、圧縮永久歪が大きくなり密封性が低下するおそれがある。また、MFRが小さ過ぎると、変性押出時のモーター負荷が大きく、樹脂圧力が上昇し、生産性が悪化するほか、成形後の表面も荒れるおそれがある。これらの観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、より好ましくは0.1g/10分以上であり、一方、より好ましくは10g/10分以下である。
【0042】
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体は市販品として入手することができる。例えば、ダウ・ケミカル社製エンゲージ(登録商標)シリーズ、日本ポリエチレン社製カーネル(登録商標)シリーズ、ダウ・ケミカル社製インフューズ(商標登録)シリーズ、三井化学社製タフマー(登録商標)シリーズ、三井化学社製エボリュー(商標登録)シリーズ等から該当品を選択して用いることができる。
【0043】
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0044】
<成分(C):ポリエチレン、及び/又は、プロピレン系樹脂>
本発明に用いる成分(C)は、ポリエチレン、及び/又は、プロピレン単位含有量が40~100質量%であるプロピレン系樹脂であり、成分(C)は成形性に寄与する。
【0045】
成分(C)としては、ポリエチレンの1種のみを用いてもよく、物性の異なるポリエチレンの2種以上を用いてもよい。また、プロピレン系樹脂の1種のみを用いてもよく、組成や物性の異なるプロピレン系樹脂の2種以上を用いてもよい。更には、ポリエチレンの1種又は2種以上とプロピレン系樹脂の1種又は2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明に用いる成分(C)のうち、ポリエチレン(エチレン単独重合体)としては、高密度ポリエチレン(低圧法ポリエチレン)、低密度ポリエチレン(高圧法ポリエチレン)、線状低密度ポリエチレンなどの中から選ばれた1種又は2種以上が好ましく用いられる。中で特に好ましいのは高密度ポリエチレンである。
【0047】
ポリエチレンの密度(JIS K6922-1,2)は0.91~0.97g/cm3が好ましく、更に好ましくは0.94~0.97g/cm3である。密度が0.91g/cm3を下回る場合は、組成物の融点が下がり耐熱変形温度が低下する可能性がある。密度が0.97g/cm3を超えるものの製造は通常困難である。
【0048】
JIS K 7210(1999)により、190℃、荷重21.2Nで測定される成分(C)のポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から好ましくは0.05g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上である。一方、通常50g/10分以下であり、成形性の観点から、好ましくは40g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。
【0049】
本発明に用いる成分(C)のうち、プロピレン系樹脂は、プロピレン系樹脂に含まれる全単量体単位に対するプロピレン単位の含有量が40~100質量%のプロピレン系樹脂であり、好ましくはエチレン単位の含有量が0~50質量%のものである。
【0050】
成分(C)のプロピレン系樹脂としては、その種類は特に制限ざれず、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体等のいずれも使用することができる。また、これらのうちの1種を用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
成分(C)がプロピレンランダム共重合体又はプロピレンブロック共重合体である場合、プロピレンと共重合する単量体としては、エチレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの1種又は2種以上を例示することができる。また、成分(C)がプロピレンブロック共重合体である場合、多段階で重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられ、より具体的には、第一段階でポリプロピレンを重合し、第二段階でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0052】
成分(C)のポリプロピレン系樹脂におけるプロピレン単位の含有量は、40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上である。プロピレン単位の含有量が上記下限値以上であることにより、成形性、成形外観が良好となる傾向にある。一方、プロピレン単位の含有量の上限については特に制限されず、通常100質量%である。
【0053】
JIS K 7210(1999)により、230℃、荷重21.2Nで測定される成分(C)のプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から好ましくは0.05g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。一方、通常200g/10分以下であり、成形性の観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下である。
【0054】
成分(C)のポリエチレンは市販の該当品を用いることが可能である。市販のポリエチレンとしては、例えば、日本ポリエチレン社のノバテック(登録商標)HD、プライムポリマー社のハイゼックス(登録商標)、住友化学社のスミカセン(登録商標)等が挙げられ、適宜選択することができる。
【0055】
成分(C)のプロピレン系樹脂も市販の該当品を用いることが可能である。市販のプロピレン系樹脂としては下記に挙げる製造者等から調達可能であり、適宜選択することができる。入手可能な市販品としては、プライムポリマー社のPrim Polypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、Adflex、Hiflex、Hifax、ExxonMobil社のExxonMobil PP、Formosa Plastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealis PP、LG Chemical社のSEETEC PP、A.Schulman社のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社のINEOS PP、Braskem社のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社のSumsung Total、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)、三菱ケミカル社のTefabloc等がある。
【0056】
<成分(D):不飽和シラン化合物>
本発明で用いる成分(D)の不飽和シラン化合物は限定されないが、下記式(1)で表される不飽和シラン化合物が好適に用いられる。
RSi(R’)3 ・・・(1)
【0057】
上記式(1)において、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0058】
式(1)において、Rは好ましくは炭素数2~10のエチレン性不飽和炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2~6のエチレン性不飽和炭化水素基である。具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0059】
式(1)において、R’は好ましくは炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4の炭化水素基又は炭素数1~4のアルコキシ基である。また、R’のうちの少なくとも1つは、好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基である。R’の炭素数1~10の炭化水素基は脂肪族基、脂環族基、芳香族基のいずれであってもよいが、脂肪族基であることが望ましい。また、R’の炭素数1~10のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましい。R’が炭化水素基の場合、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基、i-ブチル基、シクロヘキシル基等に代表されるアルキル基、又はフェニル基等に代表されるアリール基等が挙げられる。R’がアルコキシ基の場合、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、β-メトキシエトキシ基が挙げられる。
【0060】
不飽和シラン化合物が前記式(1)で表される場合、3つのR’のうち少なくとも1つはアルコキシ基であるが、2つのR’がアルコキシ基であることが好ましく、全てのR’がアルコキシ基であることがより好ましい。
【0061】
不飽和シラン化合物としては、式(1)で表されるものの中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン等に代表されるビニルトリアルコキシシランが望ましい。これはビニル基によって成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体への変性を可能とし、アルコキシ基によって後述の架橋反応が進行するからである。即ち、不飽和シラン化合物によりエチレン・α-オレフィン共重合体にグラフト変性されて導入されたアルコキシ基が、シラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解してシラノール基を生成させ、シラノール基同士が脱水縮合することにより、エチレン・α-オレフィン共重合体同士が結合して架橋反応が起こる。なお、これらの不飽和シラン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
<成分(E):過酸化物>
成分(E)の過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれる有機過酸化物が挙げられ、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0063】
ハイドロパーオキサイド群にはキュメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等が含まれ、ジアルキルパーオキサイド群にはジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン-3、ジ(2-ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が含まれ、ジアシルパーオキサイド群にはラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が含まれる。パーオキシエステル群にはターシャリーパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が含まれ、ケトンパーオキサイド群にはシクロヘキサノンパーオキサイド等が含まれる
これらの有機過酸化物は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
後述の成分(F)の架橋助剤と併用する場合、熱分解温度が高いラジカル発生剤が好ましい。この観点からジターシャリーブチルパーオキサイド、ジ(2-ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0065】
<成分(F):架橋助剤>
成分(F)の架橋助剤としては例えば、メトロハイドロジェンシリコン等の水素化ケイ素化合物、硫黄、p-キノンジオキシム、p-ジニトロソベンゼン、1,3-ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド等のビスマレイミド構造を有する化合物;トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、塩化錫(SnCl2)等が挙げられる。これらの中では、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物や多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0066】
その他の架橋助剤としてフェノール樹脂を用いることもできる。フェノール樹脂としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド、臭化アルキルフェノールノールホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0067】
これらの架橋助剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0068】
<成分(G):軟化剤>
本発明の変性エラストマー組成物は、柔軟性を増加させるとともに、加工性や流動性、耐油性を向上させる観点から、成分(G)として軟化剤を含有することができる。
【0069】
成分(G)としては、例えば鉱物油系ゴム用軟化剤、合成樹脂系ゴム用軟化剤等が挙げられ、これらの中でも、他の成分との親和性等の観点から、鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。
【0070】
鉱物油系ゴム用軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子に対し、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50質量%以上のものはパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30~45質量%のものはナフテン系オイル、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35質量%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中でも、軟化剤としては、常温(23±2℃)で液体である液状炭化水素系ゴム用軟化剤が好ましく、常温で液体である液状パラフィン系オイルがより好ましい。
軟化剤として液状炭化水素系ゴム用軟化剤を用いることで、本発明の変性エラストマー組成物の柔軟性や弾性を増加させることができ、また加工性や流動性が飛躍的に向上する傾向にある。
【0071】
パラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常10cst(センチストークス)以上、好ましくは20cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものである。また、流動点は通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。また、流動点は、通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。さらに、引火点(COC)は、通常200℃以上、好ましくは250℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
【0072】
成分(G)の軟化剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0073】
なお、前述の成分(A)として油展タイプのものを用いた場合、油展タイプのエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤の混合物としてエラストマー組成物に導入される炭化水素系ゴム用軟化剤も、成分(G)の軟化剤に該当する。この場合、成分(G)として別途軟化剤を添加してもよく、別添の軟化剤を用いてもよい。軟化剤を別添する場合、油展タイプの成分(A)に含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤と別添する軟化剤とは同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0074】
<成分(H):シラノール縮合触媒>
本発明の変性エラストマー組成物に成分(H)シラノール縮合触媒を配合することにより、組成物を分子間で架橋反応させることができる。この場合、前述の通り、成分(D)の不飽和シラン化合物により、成分(A)や成分(B)にグラフト変性されて導入されたアルコキシ基が、成分(H)のシラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解することによりシラノール基が生成し、更にシラノール基同士が脱水縮合することにより、架橋反応が進行し、変性エラストマー同士が結合して耐熱性に優れた架橋エラストマー組成物を生成させる。
【0075】
本発明に用いることのできる成分(H)のシラノール縮合触媒としては、金属有機酸塩、チタネート、ホウ酸塩、有機アミン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、無機酸及び有機酸、並びに無機酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物等が挙げられる。
【0076】
金属有機酸塩としては例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ナフテン酸コバルト、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸鉄、オクチル酸鉄、ステアリン酸鉄等が挙げられる。チタネートとしては例えば、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ-イソプロピルチタネート等が挙げられる。有機アミンとしては例えば、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルソーヤアミン、テトラメチルグアニジン、ピリジン等が挙げられる。アンモニウム塩としては例えば、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。ホスホニウム塩としては例えば、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。無機酸及び有機酸としては例えば、硫酸、塩酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、アルキルナフチルスルホン酸などのスルホン酸等が挙げられる。無機酸エステルとしては例えば、リン酸エステル等が挙げられる。
【0077】
これらの中で、好ましくは金属有機酸塩、スルホン酸、リン酸エステルが挙げられ、更に好ましくは錫の金属カルボン酸塩、例えばジオクチル錫ジラウレート、アルキルナフチルスルホン酸、エチルヘキシルリン酸エステルが挙げられる。
【0078】
以上に挙げたシラノール縮合触媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
シラノール縮合触媒は、ポリオレフィンとシラノール縮合触媒とを配合したマスターバッチとして用いることが好ましい。このマスターバッチに用いることのできるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0080】
ポリエチレンとしては、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等の(分岐状又は直鎖状)エチレン単独重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられる。これらの中でもエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。
【0081】
これらの中でも本発明においては、耐熱性と強度のバランスに優れた高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体としては、より好ましくはエチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体であり、このエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種又は2種以上のα-オレフィン2~60質量%と、エチレン40~98質量%とを共重合させたものであることがより好ましい。シラノール縮合触媒のマスターバッチには、これらのポリオレフィンの1種のみを用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0082】
シラノール縮合触媒を、ポリオレフィンとシラノール縮合触媒とを配合したマスターバッチとして用いる場合、マスターバッチ中のシラノール縮合触媒の含有量には特に制限は無いが、通常0.1~5.0質量%程度とすることが好ましい。
【0083】
シラノール縮合触媒含有マスターバッチとしては市販品を用いることができ、例えば、三菱ケミカル(株)製「LZ082」「LZ033」を用いることができる。
【0084】
<配合割合>
本発明の変性エラストマー組成物は、成分(A)を5~70質量部、成分(B)を95~30質量部の割合でこれらを合計で100質量部となるように含むことが好ましい。成分(A)の含有割合が上記上限よりも多く、成分(B)の含有割合が上記下限よりも少ないと良好な外観が得られない傾向にある。成分(A)の含有割合が上記下限よりも少なく、成分(B)の含有割合が上記上限よりも多いと光沢が高くなったり、ブロッキングしたりする傾向にある。このような観点から、成分(A)と成分(B)との合計100質量部中の成分(A)の割合はより好ましくは5~70質量部、更に好ましくは5~50質量部であり、成分(B)の割合はより好ましくは95~30質量部、更に好ましくは95~50質量部である。
【0085】
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(C)の含有量は、平滑な成形外観と柔軟性を保つ観点から1~200質量部であることが好ましく、より好ましくは5~80質量部であり、更に好ましくは10~50質量部である。
【0086】
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(D)の含有量は、架橋反応を十分に進行させる観点から、0.01~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~5質量部、更に好ましくは0.1~3質量部である。
【0087】
成分(E)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、好ましくは0.01~3質量部であり、十分な架橋反応を得ると共に平滑な成形外観を保つ観点からより好ましくは0.05~2質量部、更に好ましくは0.1~1質量部である。
【0088】
本発明の変性エラストマー組成物が成分(F)を含む場合、成分(F)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、0.001~2質量部であり、経済性と十分な架橋反応を得る観点から好ましくは0.003~1質量部である。
【0089】
本発明の変性エラストマー組成物が成分(G)を含む場合、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(G)(成分(A)として油展タイプを用いた場合は、成分(A)中の炭化水素系ゴム用軟化剤を含む。)の含有量は0.5~200質量部である。成分(G)の含有量が上記下限未満では、成分(G)による柔軟性や流動性、耐油性の向上効果を十分に得ることができない。成分(G)の含有量が上記上限を超えると表面からブリードアウトする恐れがある。この観点から、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(G)の含有量は、1~100質量部が好ましく、5~80質量部がより好ましい。
【0090】
本発明の変性エラストマー組成物に成分(H)のシラノール縮合触媒を添加して架橋反応させる場合、その添加量としては特に限定されるものではないが、成分(H)をのぞく本発明の変性エラストマー組成物100質量部に対し、好ましくは0.001~0.5質量部であり、更に好ましくは0.001~0.1質量部である。シラノール縮合触媒の添加量が上記下限値以上であると架橋反応が十分に進行し、耐熱性が良好となる傾向にあるために好ましい。シラノール縮合触媒の添加量が上記上限値以下であると押出機内で早期架橋が起こりにくく、ストランド表面や製品外観の荒れが発生しにくくなる傾向があるために好ましい。
【0091】
<その他の成分>
本発明の変性エラストマー組成物には、上記成分の他に、その他の成分として各種の添加剤や充填剤、成分(A)~(C)以外の樹脂やエラストマー等を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0092】
添加剤としては、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、防錆剤、粘度調整剤、発泡剤、滑剤及び顔料等を挙げることができる。これらのうち、酸化防止剤、特にフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤又はリン系の酸化防止剤を含有させるのが好ましい。酸化防止剤は、本発明の変性エラストマー組成物100質量%中に0.1~1質量%含有させるのが好ましい。
【0093】
また、その他の樹脂としては、例えば、成分(C)以外のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ロジンとその誘導体、テルペン樹脂や石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹脂、成分(A)~(B)以外のオレフィン系エラストマー、ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリブタジエン系エラストマー、スチレン系エラストマー、これらの水添物や、酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの、更に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたもの等が挙げられる。
【0094】
<変性エラストマー組成物の製造・成形>
本発明の変性エラストマー組成物は、成分(A)~(C)と、成分(D)の不飽和シラン化合物及び成分(E)の過酸化物、必要に応じて架橋助剤、軟化剤、その他の成分等を、公知の方法、例えば、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、タンブラーブレンダー等で機械的に混合した後、公知の方法で機械的に溶融混練することにより製造することができる。この溶融混練には、バンバリーミキサー、各種ニーダー、単軸又は二軸押出機等の一般的な溶融混練機を用いることができる。また、後掲の実施例に示すように、本発明の組成物を単軸又は二軸押出機等で混練して製造する場合、通常120~240℃、好ましくは120~220℃に加熱した状態で溶融混練を行うことができる。
【0095】
本発明の変性エラストマー組成物において、前述のシラノール縮合触媒を配合し、押出成形、射出成形、プレス成形等の各種成形方法により成形した後、水雰囲気中に曝すことにより、シラノール基間の架橋反応を進行させ、架橋されたエラストマー組成物とすることができる。水雰囲気中に曝す方法は、各種の条件を採用することができ、水分を含む空気中に放置する方法、水蒸気を含む空気を送風する方法、水浴中に浸漬する方法、温水を霧状に散水する方法等が挙げられる。
【0096】
この場合、成分(A)、(B)のグラフト変性に用いた不飽和シラン化合物由来の加水分解可能なアルコキシ基がシラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解することによりシラノール基が生成し、更にシラノール基同士が脱水縮合することにより、架橋反応が進行し、変性エラストマー同士が結合して架橋したエラストマー組成物を生成する。
【0097】
架橋反応の進行速度は水雰囲気中に曝す条件によって決まるが、通常0~130℃の温度範囲、かつ5分~1週間の範囲で曝せばよい。特に好ましい条件は、40~90℃の温度範囲、30分~24時間の範囲である。水分を含む空気を使用する場合、相対湿度は1~100%の範囲から選択される。
【0098】
このようにして得られる架橋エラストマー組成物の架橋度はシラノール縮合触媒の種類と配合量、架橋させる際の条件(温度、時間)等を変えることにより、調整することができる。
【0099】
<用途>
本発明の変性エラストマー組成物及び架橋エラストマー組成物の用途は特に限定されないが、グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ホース、ワイパーブレード、グロメット等の自動車部品やパッキン、ガスケット、クッション、防振ゴム、チューブ等の建築、工業部品、その他スポーツ、雑貨用品、医療用部品、食品用部品、家電用部品、電線被覆材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0101】
以下の実施例及び比較例において、エラストマー組成物の調製に用いた原料及び得られたエラストマー組成物の評価方法は次の通りである。
【0102】
[原材料]
以下の実施例・比較例で使用した原材料は以下の通りである。
【0103】
<油展タイプのエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム>
(A-1):JSR EP(登録商標)EP501EC(JSR社製)
V触媒系油展EPDM
非共役ジエン:5-エチリデン-2-ノルボルネン
エチレン単位含有量:66質量%
ムーニー粘度:54ML(予備加熱1分、および回転後4分後の値)125℃
油展量:40質量部
(A-2):三井EPT(登録商標)3072EPM(三井化学社製)
メタロセン触媒系油展EPDM
非共役ジエン:5-エチリデン-2-ノルボルネン
エチレン単位含有量:64質量%
ムーニー粘度:51ML(予備加熱1分、および回転後4分後の値)125℃
油展量:40質量部
【0104】
<エチレン・α-オレフィン共重合体>
(B):エンゲージ(登録商標) XLT8677(ダウ・ケミカル社製)
エチレン・α-オレフィン共重合体
α-オレフィン:1-オクテン
MFR:0.5g/10分(190℃、21.2N荷重)
密度:0.87g/cm3
融解終了点:123℃
(なお、成分(B)の融解終了点の測定方法は後述の通りである。)
【0105】
<ポリエチレン又はプロピレン系樹脂>
(C-1)LyondellBasell社製Adflex Q300F
プロピレン・α-オレフィン共重合体
MFR:0.7g/10分(230℃、21.2N荷重)
プロピレン単位含有量:65質量%
α-オレフィン:エチレン
(C-2)LyondellBasell社製Adflex Q200F
プロピレン・α-オレフィン共重合体
MFR:0.8g/10分(230℃、21.2N荷重)
プロピレン単位含有量:84質量%
α-オレフィン:エチレン
(C-3)LyondellBasell社製Hifax X1956A
プロピレン・α-オレフィン共重合体
MFR:1.0g/10分(230℃、21.2N荷重)
プロピレン単位含有量:90質量%
α-オレフィン:エチレン
(C-4)LyondellBasell社製Hiflex CA7600A
プロピレン・α-オレフィン共重合体
MFR:2.0g/10分(230℃、21.2N荷重)
プロピレン単位含有量:42質量%
α-オレフィン:エチレン
(C-5)三菱ケミカル株式会社製Tefabloc 5013
プロピレン・α-オレフィン共重合体
MFR:0.7g/10分(230℃、21.2N荷重)
プロピレン単位含有量:79質量%
α-オレフィン:エチレン
(C-6)日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP EA9
プロピレン単独重合体
MFR:0.5g/10分(230℃、21.2N荷重)
(C-7)日本ポリエチレン株式会社製ノバテックHD HY430
高密度ポリエチレン
MFR:0.8g/10分(190℃、21.2N荷重)
密度:0.956cm3/g
【0106】
<不飽和シラン化合物>
(D)ビニルトリメトキシシラン:KBM-1003(信越化学社製)
【0107】
<有機過酸化物>
(E)2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(化薬アクゾ株式会社製 商品名:カヤヘキサAD40C 2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と有機フィラー60質量%との混合物)
【0108】
<架橋助剤>
(F):ジビニルベンゼン(和光純薬工業株式会社製 ジビニルベンゼン55質量%とエチルビニルベンゼン45質量%との混合物)
【0109】
<成分(G-1):軟化剤>
(G-1)パラフィン系ゴム用軟化剤(出光興産株式会社製 パラフィン系オイル:ダイアナ(登録商標) プロセスオイルPW90)
40℃の動粘度:95.54cSt(センチストークス)
流動点:-15℃
引火点:272℃
【0110】
<触媒マスターバッチ(MB)>
(H)シラノール縮合触媒MB:LZ033(三菱ケミカル株式会社製、1.2%錫触媒(ジオクチル錫ジラウレート)含有線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンのMFR:2g/10分(190℃、21.2N荷重)、低密度ポリエチレンの密度:0.92g/cm3)
【0111】
[成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体の融解終了点の測定]
(株)日立ハイテクサイエンス社製の示差走査熱量計、商品名「DSC6220」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約5mgを加熱速度100℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で3分間保持した後、冷却速度10℃/分で-10℃まで降温し、その後、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから補外ピーク終了点(℃)を算出し、融解終了点とした。
【0112】
[評価方法]
実施例及び比較例におけるエラストマー組成物の各種評価方法を以下に示す。
【0113】
(1)表面硬度
表面硬度評価用のシートについて、JIS K6253(Duro-A)に準拠し、デュロA硬度(15秒後)を測定した。
【0114】
(2)圧縮永久歪
圧縮永久歪評価用のシートについて、JIS K6262の規格に準拠し、70℃、22時間、25%圧縮条件で測定した。
【0115】
(3)押出成形外観
押出成形外観評価用のシート(表面積:250cm2)の表面状態を目視にて確認を行い、表面平滑性について下記基準で評価を行った。
優 : 押出成形外観が非常に優れる。
良 : 押出成形外観が優れる。
可 : 押出成形外観が若干劣るが、許容範囲内である。
不可: 押出成形外観が非常に劣る。
【0116】
[実施例1]
表1の通りに示す原料配合で、(G-1)以外の各原料を配合し、ヘンシェルミキサーにて1分間混合した。次いで、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製、商品番号:TEX30、L/D=46、シリンダーブロック数:12)の上流の供給口に、得られた混合物を質量式フィーダーにて投入した。そして、液添ポンプにて成分(G-1)を押出機の途中の供給口から供給し、合計25kg/hの吐出量にて、上流部から下流部を120~200℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ペレット化して変性エラストマー組成物を製造した。得られた変性エラストマー組成物100質量部に対して、成分(H)シラノール縮合触媒MBとしてLZ033を4質量部(錫触媒として0.048質量部)加えて触媒MBを含有する変性エラストマー組成物を得た。これをインラインスクリュータイプの射出成形機(東芝機械社製、商品番号:IS130)を用い、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件下にて、組成物を射出成形して厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシートを成形した。さらに85℃、85%RHの条件で恒温恒湿機に24時間曝して、表面硬度及び圧縮永久歪評価用のシートとした。
【0117】
また、押出成形外観に関しては変性エラストマー組成物100質量部に対して、成分(H)シラノール縮合触媒MBとしてLZ033を4質量部(錫触媒として0.048質量部)加えた触媒MBを含有する変性エラストマー組成物を、三菱重工製の直径40mm単軸押出機(L/D=22、圧縮比=2.77、フルフライトスクリュー)、幅25mm、厚み1mmのシート形状のダイスを使用して変性エラストマー組成物を得たのち、成形温度がホッパー下:170℃、シリンダー180℃~200℃、ダイス200℃、スクリュー回転数が30rpmの条件で成形を行い押出成形外観評価用のシートを得た。
得られた実施例1のエラストマー組成物の各種物性および押出成形外観の評価結果を表1に示す。
【0118】
[実施例2~9及び比較例1~3]
表1に示す原料配合に変更する以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2~9及び比較例1~3の変性エラストマー組成物のペレットをそれぞれ得、同様に変性エラストマー組成物から各評価用シートを成形した。それぞれの各種物性および押出成形外観の評価結果を表1に示す。
【0119】
なお、表1中、成分(A-1),(A-2)については、実際の配合量ではなく、成分(A-1),(A-2)中のEPDMのみの配合量で示し、これらの成分中のオイルは別途成分(G)中に示す。
同様に、成分(E)についても、実際の配合量ではなく、成分(E)のうちの2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンのみの配合量(実配合量の40%)で示し、成分(F)についても、実際の配合量ではなく、成分(F)のうちのジビニルベンゼンのみの配合量(実配合量55%)で示す。
【0120】
【0121】
[評価結果]
表1に示すとおり、本発明のエラストマー組成物に該当する実施例1~9は、いずれも良好な圧縮永久歪特性、押出成形外観を有していることがわかる。
これらの結果から、本発明のエラストマー組成物は良好なシール特性、押出成形外観を有することが判明した。
【0122】
比較例1~2はそれぞれ成分(A)、成分(C)の一方又は双方を使用しなかった例であるが、押出成形外観が悪化したことがわかる。
比較例3は成分(D)を使用しなかった例であるが、架橋反応が十分に進まず表面硬度が低く、圧縮永久歪特性、押出成形外観が大きく劣ることがわかる。
上記の通り比較例1~3のエラストマー組成物は、圧縮永久歪、押出成形外観のいずれかが不十分であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のエラストマー組成物は、圧縮永久歪、押出成形外観に優れるため、これらが要求される各種用途、例えばグラスランチャンネル、ウェザーストリップなどの自動車部品、建築ガスケットなどの土木・建材部品、スポーツ用品、工業用部品、家電部品、医療用部品、食品用部品、医療用機器部品、電線、雑貨等において、広く且つ有効に利用可能である。