IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜名湖電装株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-警報音発生装置 図1
  • 特許-警報音発生装置 図2
  • 特許-警報音発生装置 図3
  • 特許-警報音発生装置 図4
  • 特許-警報音発生装置 図5
  • 特許-警報音発生装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】警報音発生装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 9/22 20060101AFI20220928BHJP
   G10K 9/12 20060101ALI20220928BHJP
   B60Q 5/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G10K9/22 B
G10K9/12 C
B60Q5/00 620C
B60Q5/00 670A
B60Q5/00 670C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019009680
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020118844
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】河合 達也
(72)【発明者】
【氏名】前橋 祐哉
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/22
G10K 9/12
B60Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
警報音を発生する警報音発生装置であって、
通電されて磁力を発生するコイル(13)と、
前記コイルから発生する磁力によって磁気吸引力を発生する固定鉄心(12)と、
前記固定鉄心から発生する磁気吸引力によって前記固定鉄心に対して変位する可動鉄心(11)と、
前記可動鉄心に固定され、前記可動鉄心の動きに伴って振動して音波を発生する振動板(14)と、
前記振動板に通じる音波路入口部(15a1)から音波路出口部(15a2)まで延びる音波路(15a)を内部に有する音響管(15)と、
前記音波路出口部を形成する前記音響管の開口端部に対して、離間して対向し音波を反射する反射壁部(16a)を有するカバー部材(16)と、
を備え、
前記音響管の前記開口端部と前記反射壁部との距離(CH)は、前記警報音の基本周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値±10%の範囲、または前記基本周波数の逓倍周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値±10%の範囲、に含まれる寸法に設定されている警報音発生装置。
【請求項2】
前記音響管の前記開口端部と前記反射壁部との距離(CH)は、前記基本周波数に基づいた波長を四分の一倍した値±10%の範囲、または前記基本周波数の逓倍周波数に基づいた波長の四分の一倍した値±10%の範囲、に含まれる寸法に設定されている請求項1に記載の警報音発生装置。
【請求項3】
前記音響管の前記開口端部と前記反射壁部との距離(CH)は、前記基本周波数に3、4、5、6のいずれかを乗じた逓倍周波数に基づいた波長を四分の一倍した値±10%の範囲に含まれる寸法に設定されている請求項1に記載の警報音発生装置。
【請求項4】
前記音響管の前記開口端部と前記反射壁部との距離(CH)は、前記基本周波数に4、5のいずれかを乗じた逓倍周波数に基づいた波長を四分の一倍した値±10%の範囲に含まれる寸法に設定されている請求項3に記載の警報音発生装置。
【請求項5】
前記音響管の前記開口端部は矩形状であり、
前記カバー部材は、前記開口端部における両端部と前記反射壁部とを連結する一組の側壁部(16b)を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の警報音発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、警報音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~特許文献3には、トランペット型ホーンが開示されている。これらの従来のトランペット型ホーンは、異物侵入防止のために、渦巻き状の共鳴管の先端に設けられた異物防止用のカバーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5132421号公報
【文献】特許第5546561号公報
【文献】特許第5410230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトランペット型ホーンは、異物侵入防止に関して一定の性能を有しているが、音圧レベルの向上に関して改善の余地がある。
【0005】
この明細書に開示する目的は、音圧の向上が図れる警報音発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された警報音発生装置の一つは、警報音を発生する警報音発生装置であって、
通電されて磁力を発生するコイル(13)と、
コイルから発生する磁力によって磁気吸引力を発生する固定鉄心(12)と、
固定鉄心から発生する磁気吸引力によって固定鉄心に対して変位する可動鉄心(11)と、
可動鉄心に固定され、可動鉄心の動きに伴って振動して音波を発生する振動板(14)と、
振動板に通じる音波路入口部(15a1)から音波路出口部(15a2)まで延びる音波路(15a)を内部に有する音響管(15)と、
音波路出口部を形成する音響管の開口端部に対して、離間して対向し音波を反射する反射壁部(16a)を有するカバー部材(16)と、
を備え、
音響管の開口端部と反射壁部との距離(CH)は、警報音の基本周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値±10%の範囲、または基本周波数の逓倍周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値±10%の範囲、に含まれる寸法に設定されている。
【0008】
警報音発生装置において音波路出口部である音響管の開口端部は、音波の腹が位置するようになる。この警報音発生装置は、音響管の開口端部と反射壁部との距離が、前述の範囲に含まれる寸法に設定されていることにより、音波の節が反射壁部に位置するようになる。反射壁部が波形の節に位置することにより定在波が反射するので、音響管の共鳴効果を阻害しにくい反射波を提供できる。したがって、警報音発生装置は、共鳴効果が得られた警報音を、音波路出口部をなす音響管の開口端部から放出することができる。以上の開示によれば、音圧の向上が図れる警報音発生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の警報音発生装置の構成を示す断面図である。
図2】警報音発生装置における音の伝わりを示す概念図である。
図3】カバー部までの音の波を示す概念図である。
図4】第1実施形態の警報音発生装置の外観図である。
図5】従来の警報音発生装置の外観図である。
図6】第1実施形態の警報音発生装置について、逓倍波の周波数および波長とカバー高さとの関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の警報音発生装置について図1図6を参照しながら説明する。警報音発生装置は、警音器の警報音を発生させるための装置である。この実施形態では、警報音発生装置の一例として、各種の車両に搭載可能な車両用警音器1について開示する。車両用警音器1は、例えば、コイル13に印加される電圧変化に伴う磁力変化を利用して可聴帯域の警報音を車外へ向けて放出する。
【0012】
車両用警音器1は、車両における所定の操作部が操作された際に、警報音を車外へ放出する。所定の操作部は、乗員によって操作されるホーンスイッチ、例えば、ステアリングのホーンボタンである。車両用警音器1は、駆動部が出力する電圧信号に応じた警報音を発生する電磁式警報器である。
【0013】
図1は、警報音発生装置の一例である車両用警音器1の主要構成を示した概要図である。車両用警音器1は、ステー2を介して車両の前部、例えば、ラジエータの前方部などに取り付けることができる。車両用警音器1は、図4に示すように、ステー2を上にし、反射壁部16aを下にし、可動鉄心11の軸方向を前後方向にし、音放出用開口部16cを前方に向けた姿勢で、車両に搭載されている。
【0014】
車両用警音器1は、通電により磁力を発生するコイル13と、コイル13が発生する磁力により磁気吸引力を発生する固定鉄心12と、固定鉄心12に向かって移動可能に支持される可動鉄心11とを備える。可動鉄心11は、振動板14の中心部に固定支持されている。振動板14はダイヤフラムとも呼ばれ、その周縁部は車両用警音器1の駆動機構部を内蔵または付属するハウジング10に固定されている。振動板14は、ハウジング10の開口部を覆っている。振動板14は、ハウジング10の開口部と渦巻き状管15の音波路入口部15a1との間に形成された振動室141に位置している。振動板14の外周部は、ハウジング10の外周端部に巻きかしめされている。可動鉄心11の前部の小径部には、振動板14の中心部が挿入されてかしめ固定されている。
【0015】
図2に示すように、固定鉄心12から発生する磁気吸引力によって可動鉄心11が移動すると、振動板14は、周縁部が固定された状態で中心部が可動鉄心11と一体に移動して変形する。コイル13に通電される電圧が低下状態または非通電状態になると、固定鉄心12の磁気吸引力が弱まり、振動板14の弾性力によって可動鉄心11が元の位置に戻ろうとする。またコイル13に通電される電圧が増加すると、固定鉄心12からの磁気吸引力によって可動鉄心11が固定鉄心12に近づく。これらの動作が繰り返されることにより、振動板14が振動するので空気が振動して、車両用警音器1は警報音を発生する。すなわち、車両用警音器1は、固定鉄心12と可動鉄心11との隙間が最適な値に調節されることにより、高品質、高能力の好ましい警報音を発生することができる。
【0016】
車両用警音器1は、図2に示すように、共鳴効果により、振動板14の振動による警報音を増幅させて車外へ放出する音波路15aを形成する渦巻き状管15を備える。渦巻き状管15は、ハウジング10に固定されている。渦巻き状管15は、共鳴効果を利用する音響管の一例である。渦巻き状管15は、渦巻き状の音波路15aを区画しているが、開口の断面積が出口部に近づくほど大きいラッパ状部材に置き換えることも可能である。
【0017】
渦巻き状管15は、振動板14の振動によって発生する音波が伝搬する音波路15aを内部に形成する。音波路15aの音波路入口部15a1は、振動室141に面しており、振動室141を介して振動板14に通じている。音波路15aは、音波路入口部15a1を中心とした渦巻き状の通路を形成する。音波路15aの音波路出口部15a2は、渦巻き状管15の開口端部によって形成されている。渦巻き状管15の開口端部は矩形状の開口縁であるため、音波路出口部15a2は四角形状の開口をなしている。
【0018】
図2図4に示すように、車両用警音器1は、音波路出口部15a2から放出された音波を反射する反射壁部16aを備えている。反射壁部16aは、音波路出口部15a2を形成する渦巻き状管15の開口端部に対して、離間して対向する位置関係にある壁部である。反射壁部16aは、四角形状をなす音波路出口部15a2の開口面と平行になるように設けられている。
【0019】
カバー部材16は、反射壁部16aを備えている。カバー部材16は、少なくとも、警報音放出側とは反対側である車両用警音器1の後面側において渦巻き状管15の開口端部と反射壁部16aとを連結する後部壁を備えている。つまり、渦巻き状管15の開口端部と反射壁部16aとは、少なくとも後部壁によって連結されている構成であればよい。カバー部材16は、少なくとも、音波路出口部15a2を形成する渦巻き状管15の開口端部と反射壁部16aとの間であって警報音放出側である車両用警音器1の前面側に、四角形状の音放出用開口部16cを形成している。
【0020】
この構成によれば、カバー部材16は、警報音放出側である車両用警音器1の前面側と左右の側面側とに開口部を形成している。これらの開口部には、異物の侵入を防止可能な、格子、メッシュ等が設けられている。車両用警音器1は、カバー部材16の前面側開口部と側面側開口部とから警報音を放出することができる。
【0021】
カバー部材16は、音波路出口部15a2を形成する開口端部における両端部と反射壁部16aとを連結する一組の側壁部16bを備えることが好ましい。側壁部16bは、渦巻き状管15の開口端部における、前側の辺と後側の辺を除く対向する二辺全体から反射壁部16aまで下方に延びる板状部である。この構成によれば、カバー部材16は、警報音放出側である車両用警音器1の前面側に開口部を形成している。この開口部には、異物の侵入を防止可能な、格子、メッシュ等が設けられている。車両用警音器1は、カバー部材16の前面側開口部から警報音を放出することができ、警報音の音波は左右の一組の側壁部16bによって前方に進むように案内されるので、警報音がより遠くの前方へ届くことに寄与する。
【0022】
車両用警音器1の警報音は、基本周波数の音波とその逓倍波の波とが合成された音等によって作られている。警報音の強さであるオーバーオールの音圧レベルは、合成される各音の音圧を総合して形成される。このため、警報音の強さを向上するには、各音の音圧を上げる必要がある。この明細書の開示は、各音の音圧を上げるために、音波路15aにおける、渦巻き状管15内の開口端部近傍の音波が大きく乱されないことに、着眼している。そこで、この明細書は、反射壁部16aによる音波の反射波を、渦巻き状管15内の開口端部近傍の音波を乱しにくい状態にする車両用警音器1を提供する。
【0023】
車両用警音器1において、渦巻き状管15の開口端部と反射壁部16aとの距離CHは、警報音の基本周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値を中心として±10%の範囲に含まれる寸法に設定されている。または、距離CHは、基本周波数の逓倍周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値±10%の範囲に含まれる寸法に設定されている。つまり、車両用警音器1は、このような距離CHを満たすように、渦巻き状管15の開口端部に対して向かい合う反射壁部16aを備えている。±10%の範囲としたのは、波長の四分の一を奇数倍した値を狙って設計した製品であっても、製造における部品精度や組立精度により、±10%程度ばらつくものであり、またこの程度のばらつきである場合、前述の効果を奏する反射波を提供可能だからである。
【0024】
警報音の基本周波数は、ホーン単品認証(ECE No.28)で定義されている定格音響周波数が相当する。ホーン単品認証は、国連欧州委員会の車両・装置等の型式認定相互承認協定に基づく認証である。基本周波数は、ホーン単品認証で定義されている2mの測定環境において定義されている測定器を用いて0~600Hzの範囲に観測される音の成分のうち、所定の音圧レベルより大きい周波数の中で一番低い周波数である。また、基本周波数は、ホーン単品認証に基づく測定方法によって測定された、0~600Hz範囲の複数の音圧ピークのうち、最も小さい周波数である。所定の音圧レベルは、例えば60dB(A)としてもよい。この明細書でいう逓倍波とは、基本周波数を自然数倍した周波数をもつ音波のことである。この明細書でいう逓倍周波数は、基本周波数に自然数を乗じて求めた周波数のことである。
【0025】
図4に示す車両用警音器1における反射壁部16aと渦巻き状管15の開口端部との距離CHは、図5に示す従来の車両用警音器100におけるカバー部材160の反射壁部160aと渦巻き状管15の開口端部との距離CHと異なり、十分な長さを有している。従来の車両用警音器100における距離CHは10mm程度であるが、車両用警音器1における距離CHは20mmを上回る長さに設定されている。
【0026】
ホーン単品認証(ECE No.28)によって認証される基本周波数は、低い音質の警報音については400Hz程度であり、高い音質の警報音については480Hz程度である。図6は、400Hzが基本周波数である場合について、基本周波数、逓倍波の周波数および波長と、カバー高さとの関係を示した図表である。
【0027】
図6に示すように、基本周波数が400Hzの場合、2倍の逓倍波、3倍の逓倍波、4倍の逓倍波、5倍の逓倍波は、波長がそれぞれ425mm、283mm、213mm、170mmになる。図6に示す波長は、音速c=周波数f×波長λの計算式を用いて算出されている。図6には、8倍の逓倍波まで波長と四分の一波長とを示している。車両用警音器1において前述の距離CHは、図6のカバー高さである一波長の四分の一に設定されていることが好ましい。図6に示したいずれの逓倍波に対する四分の一波長であっても、図5に図示した従来の車両用警音器100に対して、距離CHが明らかに大きく、音圧向上効果を奏する車両用警音器1を提供することができる。
【0028】
車両用警音器1において渦巻き状管15の開口端部と反射壁部16aとの距離CHは、警報音の基本周波数に基づいた波長を四分の一倍した値を中心として±10%の範囲に含まれる寸法に設定されていることが好ましい。また、距離CHは、基本周波数の逓倍周波数に基づいた波長の四分の一倍した値を中心として±10%の範囲に含まれる寸法に設定されていることが好ましい。
【0029】
さらに渦巻き状管15の開口端部と反射壁部16aとの距離CHは、警報音の基本周波数に3、4、5、6のいずれかを乗じた逓倍周波数を求め、この逓倍周波数に基づいた波長を四分の一倍した値を中心として±10%の範囲に含まれる寸法に設定されていることが好ましい。この明細書を開示した者は、基本周波数400Hz、4倍の逓倍波に相当する波長の四分の一である53mmに距離CHを設定した車両用警音器1について音圧レベルを測定し、音圧レベル向上の効果を確認した。この車両用警音器1は、図5に示す従来の車両用警音器100に対して、1dB向上する効果が得られた。
【0030】
さらに渦巻き状管15の開口端部と反射壁部16aとの距離CHは、警報音の基本周波数に4、5のいずれかを乗じた逓倍周波数に基づいた波長を四分の一倍した値を中心として±10%の範囲に含まれる寸法に設定されていることが好ましい。
【0031】
次に、第1実施形態の車両用警音器1がもたらす作用効果について説明する。車両用警音器1は、振動板14に通じる音波路入口部15a1から音波路出口部15a2まで延びる音波路15aを内部に有する音響管と、音波路出口部15a2からの音波を反射する反射壁部16aを有するカバー部材16とを備える。カバー部材16は、音波路出口部15a2を形成する音響管の開口端部に対して、離間して対向し音波を反射する反射壁部16aを備える。音響管の開口端部と反射壁部16aとの距離CHは、警報音の基本周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値±10%の範囲、または基本周波数の逓倍周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値±10%の範囲、に含まれる寸法に設定されている。
【0032】
車両用警音器1において音波は、波形の腹が音響管の開口端部に位置するようになる。この車両用警音器1は、音響管の開口端部と反射壁部16aとの距離CHが、警報音の基本周波数または逓倍周波数に基づいた波長の四分の一を奇数倍した値±10%の範囲に含まれる寸法に設定されているため、音波の節が反射壁部16aに位置するようになる。反射壁部16aが波形の節に位置することにより、図3に示すように定在波が反射するので、音波路15aを進む音の波を乱す影響を小さくできる。このため、音響管の共鳴効果を阻害しにくい反射波を提供できる。したがって、車両用警音器1は、十分に共鳴効果が得られた警報音を、音波路出口部15a2をなす音響管の開口端部から放出することができる。この車両用警音器1によれば、音圧の向上を図ることができる。
【0033】
音響管の開口端部と反射壁部16aとの距離CHは、警報音の基本周波数に基づいた波長を四分の一倍した値±10%の範囲、または基本周波数の逓倍周波数に基づいた波長の四分の一した値±10%の範囲、に含まれる寸法に設定されている。この構成によれば、距離CHの長さを短くすることができる。したがって、音圧向上効果を奏し、かつカバー部材16の体格を抑えた車両用警音器1を提供できる。
【0034】
音響管の開口端部と反射壁部16aとの距離CHは、警報音の基本周波数に3、4、5、6のいずれかを乗じて得られた逓倍周波数に基づいた波長を四分の一倍した値±10%の範囲に含まれる寸法に設定されている。この構成によれば、さらに距離CHの長さが短くなる位置に反射壁部16aを設置できる。したがって、さらにカバー部材16の体格を抑えた車両用警音器1を提供できる。
【0035】
音響管の開口端部と反射壁部16aとの距離CHは、警報音の基本周波数に4、5のいずれかを乗じた逓倍周波数に基づいた波長を四分の一倍した値±10%の範囲に含まれる寸法に設定されている。この構成によれば、基本周波数に基づいた波長を四分の一倍した値に比べて、さらに距離CHの長さが短くなる位置に反射壁部16aを設置できるので、カバー部材16の体格を抑えた車両用警音器1を提供できる。
【0036】
カバー部材16は、音響管の開口端部における両端部と反射壁部16aとを連結する一組の側壁部16bを備える。この構成によれば、警報音の音波が一組の側壁部16bによって案内されて進むため、警報音をより遠くへ届かせることが可能な車両用警音器1を提供できる。
【0037】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0038】
前述の実施形態において車両用警音器1は、開口が形成されていない音放出用開口部16cを備えるが、貫通穴などの開口が形成された音放出用開口部16cを備えるように構成してもよい。また、車両用警音器1における音放出用開口部16cには、格子などが設けられているが、完全に開放された音放出用開口部16cを備える構成でもよい。
【0039】
前述の実施形態においてカバー部材16は、渦巻き状管15に対して別部品として装着されている構成でもよく、渦巻き状管15の一部である構成でもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…車両用警音器、 11…可動鉄心、12…固定鉄心、 13…コイル
14…振動板、 15…渦巻き状管(音響管) 15a…音波路
15a1…音波路入口部、 15a2…音波路出口部
16…カバー部材、 16a…反射壁部、 16b…側壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6