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特許7147599音信号処理装置、音響システム、音信号処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】音信号処理装置、音響システム、音信号処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H04R3/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019014016
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020123802
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大介
(72)【発明者】
【氏名】森川 直
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-278951(JP,A)
【文献】特開2015-070550(JP,A)
【文献】特開2013-247420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0072771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャンネルの音信号をネットワークを介して出力する出力部と、
利用者の操作を受け付ける受付部と、
表示部と、
前記出力部から出力される音信号の送信先機器から、該送信先機器の出力チャンネル数に係る情報を受信し、
前記出力チャンネル数に係る情報に基づいて、前記送信先機器の出力チャンネルを自装置のバスとして見せかける仮想バスを前記表示部に表示し、
前記出力部に係る複数チャンネルと前記仮想バスとの対応関係の設定を前記受付部で受け付けて、
前記設定に係る設定情報を生成し、
前記出力部から出力される音信号と、前記設定情報と、を前記送信先機器に送信する、
処理を行なう処理部と、
を備えた音信号処理装置。
【請求項2】
前記設定情報は、前記出力部の各チャンネルの音信号の、それぞれの仮想バスに対する送出レベルに関する情報を含む、
請求項1に記載の音信号処理装置。
【請求項3】
前記受付部は、チャンネル毎のレベルを受け付けるフェーダ操作子を備え、
前記送出レベルを前記フェーダ操作子で受け付ける、
請求項2に記載の音信号処理装置。
【請求項4】
複数チャンネルの音信号を入力する入力部を備え、
前記処理部は、前記入力部の各チャンネルの音信号を、前記出力部の各チャンネルの音信号にミキシングするミキシング処理を行なう、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の音信号処理装置。
【請求項5】
音信号処理装置と、前記音信号処理装置にネットワークを介して接続される送信先機器と、を備え、
前記音信号処理装置は、
複数チャンネルの音信号をネットワークを介して出力する出力部と、
利用者の操作を受け付ける受付部と、
表示部と、
前記出力部から出力される音信号の送信先機器から、該送信先機器の出力チャンネル数に係る情報を受信し、
前記出力チャンネル数に係る情報に基づいて、前記送信先機器の出力チャンネルを自装置のバスとして見せかける仮想バスを前記表示部に表示し、
前記出力部に係る複数チャンネルと前記仮想バスとの対応関係の設定を前記受付部で受け付けて、
前記設定に係る設定情報を生成し、
前記出力部から出力される音信号と、前記設定情報と、を前記送信先機器に送信する、
処理を行なう処理部と、
を備え、
前記送信先機器は、
前記音信号処理装置に前記出力チャンネル数に係る情報を送信し、
前記音信号処理装置から前記複数チャンネルの音信号と、前記設定情報と、を受信し、
前記設定情報に基づいて、前記複数チャンネルの音信号を、自装置の各出力チャンネルにミキシングするミキシング処理を行なう、
処理部を備えた、
音響システム。
【請求項6】
音信号処理装置は、
送信先機器の出力チャンネル数に係る情報を受信し、
前記出力チャンネル数に係る情報に基づいて、前記送信先機器の出力チャンネルを自装置のバスとして見せかける仮想バスを表示部に表示し、
自装置の出力部に係る複数チャンネルと前記仮想バスとの対応関係の設定を受付部で受け付けて、
前記設定に係る設定情報を生成し、
前記出力部から出力される音信号と、前記設定情報と、を前記送信先機器に送信する、
処理を行ない、
前記送信先機器は、
前記音信号処理装置に前記出力チャンネル数に係る情報を送信し、
前記音信号処理装置から前記複数チャンネルの音信号と、前記設定情報と、を受信し、
前記設定情報に基づいて、前記複数チャンネルの音信号を、自装置の各出力チャンネルにミキシングする、
処理を行なう、
音信号処理方法。
【請求項7】
前記設定情報は、前記出力部の各チャンネルの音信号の、それぞれの仮想バスに対する送出レベルに関する情報を含む、
請求項6に記載の音信号処理方法。
【請求項8】
前記受付部は、チャンネル毎のレベルを受け付けるフェーダ操作子を備え、
、前記送出レベルを前記フェーダ操作子で受け付ける、
請求項7に記載の音信号処理方法。
【請求項9】
前記音信号処理装置は、複数チャンネルの音信号を入力する入力部を備え、
前記音信号処理装置は、前記入力部の各チャンネルの音信号を、前記出力部の各チャンネルの音信号にミキシングするミキシング処理を行なう、
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の音信号処理方法。
【請求項10】
音信号処理装置に、
送信先機器の出力チャンネル数に係る情報を受信し、
前記出力チャンネル数に係る情報に基づいて、前記送信先機器の出力チャンネルを自装置のバスとして見せかける仮想バスを表示部に表示し、
自装置の出力部に係る複数チャンネルと前記仮想バスとの対応関係の設定を受付部で受け付けて、
前記設定に係る設定情報を生成し、
前記出力部から出力される音信号と、前記設定情報と、を前記送信先機器に送信する、
処理を実行させ、
前記送信先機器に、
前記音信号処理装置に前記出力チャンネル数に係る情報を送信し、
前記音信号処理装置から前記複数チャンネルの音信号と、前記設定情報と、を受信し、
前記設定情報に基づいて、前記複数チャンネルの音信号を、自装置の各出力チャンネルにミキシングする、
処理を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一実施形態は、音信号を入力するまたは出力する音信号処理装置、該音信号処理装置を備える音響システム、音信号処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、複数の入力信号をミキシングして、複数の出力系統に分配するマトリクス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-302597号公報
【文献】特開2002-169567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の音響システムでは、音響機器の数がマトリクス装置の出力系統の数よりも多くなった場合に対処できない。出力系統よりも多い音響機器を接続するためには、利用者は、既存のマトリクス装置をより出力系統の数の多いマトリクス装置に置き換えるか、新たにマトリクス装置を追加するしかない。また、マトリクス装置を置き換えたり追加した場合、利用者は、設定をやり直す必要もあり、煩わしい。
【0005】
そこで、この発明の一実施形態は、音響機器の数が増大した場合でも容易に対処できる音信号処理装置、音響システム、音信号処理方法およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
音信号処理装置は、出力部と、受付部と、表示部と、処理部と、を備えている。出力部は、複数チャンネルの音信号をネットワークを介して出力する。受付部は、利用者の操作を受け付ける。処理部は、前記出力部から出力される音信号の送信先機器から、該送信先機器の出力チャンネル数に係る情報を受信し、前記出力チャンネル数に係る情報に基づいて、前記送信先機器の出力チャンネルを自装置のバスとして見せかける仮想バスを前記表示部に表示し、前記出力部に係る複数チャンネルと前記仮想バスとの対応関係の設定を前記受付部で受け付けて、前記設定に係る設定情報を生成し、前記出力部から出力される音信号と、前記設定情報と、を前記送信先機器に送信する。
【発明の効果】
【0007】
利用者は、音響機器の数が増大した場合でも容易に対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】音響システム1の構成を示すブロック図である。
図2】ミキサの構成を示すブロック図である。
図3】信号処理の構成を機能的に示したブロック図である。
図4】アンプの構成を示すブロック図である。
図5】信号処理の構成を機能的に示したブロック図である。
図6】ミキサの動作を示すフローチャートである。
図7】アンプの動作を示すフローチャートである。
図8】表示器およびユーザI/Fの一例を示す平面図である。
図9】表示器およびユーザI/Fの一例を示す平面図である。
図10】従来のマトリクス装置の機能を示した概念図である。
図11】本実施形態の仮想マトリクスバスの機能を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、音響システム1の構成を示すブロック図である。音響システム1は、ネットワーク13を介して接続されるミキサ11、および複数(n個)のアンプ12-1乃至アンプ12-nを備えている。複数のアンプ12-1乃至12-nのそれぞれには、さらに複数のスピーカが接続されている。例えば、アンプ12-1には、複数(m個)のスピーカ121-1乃至121-mが接続されている。
【0010】
ミキサ11は、ネットワークを介して接続されているマイク等の音響機器(不図示)から音信号を入力する。また、ミキサ11は、アンプ12-1等の音響機器に対して音信号を出力する。
【0011】
アンプ12-1乃至12-nは、それぞれミキサ11から出力された音信号を受信する。アンプ12-1乃至12-nは、接続された複数のスピーカに音信号を出力する。複数のスピーカは、それぞれ入力した音信号に基づいて放音する。
【0012】
図2は、ミキサ11の構成を示すブロック図である。ミキサ11は、表示器201、ユーザI/F202、オーディオI/O(Input/Output)203、信号処理部(DSP)204、ネットワークI/F205、CPU206、フラッシュメモリ207、およびRAM208を備えている。これら構成は、通信バス171を介して接続されている。
【0013】
表示器201は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)またはOLED(Organic Light-Emitting Diode)等からなり、種々の情報を表示する。ユーザI/F202は、スイッチ、摘まみ、またはタッチパネル等からなり、ユーザの操作を受け付ける。ユーザI/F202がタッチパネルである場合、該ユーザI/F202は、表示器201とともに、GUI(Graphical User Interface以下略)を構成する。
【0014】
CPU206は、ミキサ11の動作を制御する制御部である。CPU206は、記憶媒体であるフラッシュメモリ207に記憶された所定のプログラムをRAM208に読み出して実行することにより各種の動作を行なう。
【0015】
なお、CPU206が読み出すプログラムは、自装置内のフラッシュメモリ207に記憶されている必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU206は、該サーバから都度プログラムをRAM208に読み出して実行すればよい。
【0016】
信号処理部204は、各種信号処理を行なうためのDSPから構成される。信号処理部204は、オーディオI/O203またはネットワークI/F205を介して入力される音信号に、ミキシング等の信号処理を施す。信号処理部204は、信号処理後の音信号を、オーディオI/O203またはネットワークI/F205を介して、他の機器に出力する。
【0017】
図3は、信号処理部204およびCPU206で実現される信号処理の機能的ブロック図である。図3に示すように、信号処理は、機能的に、入力チャンネル301、バス302、および出力チャンネル303で構成される。
【0018】
入力チャンネル301は、複数チャンネル(例えば32チャンネル)の信号処理機能を有する。入力チャンネル301の各チャンネルには、入力信号が供給される。入力チャンネル301の各チャンネルは、入力信号に対して、各種の信号処理を施す。また、入力チャンネル301の各チャンネルは、信号処理後のオーディオ信号を、後段のバス302へ送出する。
【0019】
バス302は、複数のバスを有する。バス302は、例えばステレオバス、ミックス(MIX)バス、またはマトリクス(MX)バス等の複数のバスを有する。ステレオバスは、ホールや会議室におけるメインスピーカに対応するバスである。ミックスバスは、1または複数の入力チャンネルの音信号をモニタスピーカ等の特定の場所に送出するためのバスである。マトリクスバスは、ステレオバスやミックスバスの音信号をさらに複数のスピーカ等に分配するために利用される。
【0020】
利用者は、ユーザI/F202を操作して、各チャンネルの入力信号について、それぞれのバスに対する送出レベルを設定する。バス302における各バスは、設定された送出レベルに応じて、入力チャンネル301から入力されるオーディオ信号をミキシングする。
【0021】
各バスでミキシングされた音信号は、出力チャンネル303に出力される。出力チャンネル303は、各バスに対応する各チャンネルで信号処理を施す。
【0022】
その後、信号処理を施された音信号は、オーディオI/O203またはネットワークI/F205に供給される。ネットワークI/F205は、対応する機器(例えばアンプ12-1)に、各出力チャンネルの音信号を送信する。
【0023】
図4は、アンプ12-1の構成を示すブロック図である。なお、アンプ12-1乃至12-nは、全て同じ構成を有するため、図4では代表してアンプ12-1の構成を示す。
【0024】
アンプ12-1は、ネットワークインタフェース(I/F)101、CPU102、DSP103、フラッシュメモリ104、RAM105、D/A変換器106、パワーアンプ(AMP)107、およびオーディオインタフェース(I/F)108を備えている。
【0025】
ネットワークインタフェース(I/F)101、CPU102、DSP103、フラッシュメモリ104、RAM105、D/A変換器106、およびパワーアンプ(AMP)107は、通信バス151に接続されている。パワーアンプ107は、D/A変換器106およびオーディオI/F108に接続されている。
【0026】
CPU102は、記憶媒体であるフラッシュメモリ104に記憶されているプログラムをRAM105に読み出して、所定の機能を実現する。なお、CPU102が読み出すプログラムも、自装置内のフラッシュメモリ104に記憶されている必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU102は、該サーバから都度プログラムをRAM105に読み出して実行すればよい。
【0027】
図5は、CPU102およびDSP103で実現される信号処理の機能的ブロック図である。図5に示すように、信号処理は、機能的に、入力チャンネル401、バス402、および出力チャンネル403で構成される。
【0028】
入力チャンネル401は、複数チャンネル(例えば16チャンネル)の信号処理機能を有する。入力チャンネル401の各チャンネルには、ネットワークI/F101を介してミキサ11から送信された音信号が入力される。
【0029】
入力チャンネル401の各チャンネルは、入力信号に対して、各種の信号処理を施す。また、入力チャンネル401の各チャンネルは、信号処理後のオーディオ信号を、後段のバス402へ送出する。
【0030】
バス402は、複数のバス(例えば8つのBUS1乃至BUS8)を有する。それぞれのバスに対する送出レベルは、ミキサ11から送信される設定情報に基づいて行なう。バス402における各バスは、設定情報に基づいて、入力チャンネル401から入力されるオーディオ信号をミキシングする。
【0031】
各バスでミキシングされた音信号は、出力チャンネル403に出力される。出力チャンネル403は、各バスに対応する各チャンネルで信号処理を施す。
【0032】
その後、信号処理を施された音信号は、オーディオI/F108に供給される。オーディオI/F108は、スピーカ121-1乃至121-mに音信号を出力する。
【0033】
図6は、ミキサ11の動作を示すフローチャートである。図7は、アンプ12-1の動作を示すフローチャートである。
【0034】
ミキサ11は、まず、ネットワーク内にアンプ12-1等の、出力対象となる音響機器が接続されているか否かを確認する(S11)。ミキサ11は、出力対象となる音響機器が接続されていると判断した場合(S11がYesの場合)、出力対象となる音響機器から、出力チャンネル数に係る情報を受信する(S12)。例えば、上記アンプ12-1では、8つの出力チャンネル数を有する。ミキサ11は、アンプ12-1の識別情報(例えばIPアドレス、MACアドレス等)と、出力チャンネル数に係る情報と、を受信する。
【0035】
そして、ミキサ11は、取得した情報に基づいて、表示器201に仮想マトリクスバスを表示する(S13)。図8は、表示器201およびユーザI/F202の一例を示す平面図である。
【0036】
ミキサ11の操作パネル上には、図8に示すように、タッチスクリーン251およびチャンネルストリップ252が配置されている。タッチスクリーン251は、表示器201およびユーザI/F202を構成する。フェーダ操作子は、ユーザI/Fの一例である。なお、実際のミキサでは、さらに多数のノブまたはスイッチ等が設けられている。
【0037】
チャンネルストリップ252は、1つのチャンネルに対する操作を受け付ける複数の操作子を縦に並べて配置した領域である。この図では、操作子として、チャンネル毎に1つフェーダ操作子だけが配置されているが、実際には多数のノブまたはスイッチ等が設けられている。
【0038】
通常、チャンネルストリップ252の各チャンネルは、入力チャンネルに対応する。利用者は、各入力チャンネルのフェーダ操作子を操作して、各入力チャンネルに対する音信号の入力レベルを設定する。また、利用者は、各入力チャンネルのノブを操作して、各入力チャンネルからバスへの送出レベルを設定する。
【0039】
ただし、図8におけるフェーダ操作子は、各バスに対する送出レベルを設定するための操作子として機能している。利用者が、タッチスクリーン251に表示されている「SENDS ON FADER」をタッチすると、ミキサ11は、フェーダ操作子を、各バスに対する送出レベルを設定するための操作子として機能させる、センズオンフェーダーモードに移行する。
【0040】
図8の例では、マトリクスバスMT1が選択されている。チャンネルストリップ252における各フェーダ操作子は、入力側のMIXバスに対応する。利用者は、チャンネルストリップ252の各フェーダ操作子を操作することで、マトリクスバスMT1に対する各MIXバスの送出レベルを設定することができる。
【0041】
図9は、仮想マトリクスバスが表示された場合の表示器201およびユーザI/F202の一例を示す平面図である。
【0042】
ミキサ11は、アンプ12-1の8つの出力系統に対応させて、タッチスクリーン251に、8つの仮想マトリクスバスVMT1乃至VMT8を表示する。図9の例では、チャンネルストリップ252の各フェーダ操作子は、VMT1に対する送出レベルを設定するための操作子として機能している。利用者は、チャンネルストリップ252の各フェーダ操作子を操作することで、仮想マトリクスバスVMT1に対する各MIXバスの送出レベルを設定することができる。
【0043】
この様に、ミキサ11は、送信先機器から出力チャンネル数に係る情報を受信し、出力チャンネル数に係る情報に基づいて、送信先機器の出力チャンネルを自装置のバスとして見せかける仮想バスを表示する。これにより、利用者は、あたかもマトリクスバスが拡張された様に認識することができる。
【0044】
ミキサ11は、フェーダ操作子が操作され、仮想マトリクスバスに対する設定変更がなされたか否かを判断する(S14)。なお、ミキサ11は、S11の判断において、出力対象の音響機器が接続されていないと判断した場合(S11がNoの場合)、S12およびS13の処理を回避して、S14の判断を行なう。
【0045】
ミキサ11は、設定変更がなされていないと判断した場合(S14がNoの場合)、S11の判断に戻る。ミキサ11は、仮想マトリクスバスの設定変更がされたと判断した場合(S14がYesの場合)、設定された内容に基づいて、対応する音響機器に対して、設定情報を送信する(S15)。また、ミキサ11は、全ての出力チャンネルの音信号を出力する。
【0046】
一方、アンプ12-1は、自装置の出力チャンネルの数を示す情報を送信する(S20)。自装置の出力チャンネルの数を示す情報は、定期的にネットワーク内にブロードキャストで送信してもよいし、ミキサ11からの問い合わせに対してユニキャストで返信してもよい。
【0047】
また、アンプ12-1は、ネットワークを介して、出力チャンネル303の各チャンネルの音信号を受信する(S21)。
【0048】
アンプ12-1は、設定情報を受信したか否かを判断する(S22)。アンプ12-1は、設定情報を受信したと判断した場合(S22がYes)、受信した設定情報に基づいて、ミキシングを行なう(S23)。
【0049】
ミキサ11が送信する設定情報は、ミキサ11における出力チャンネル303の各チャンネルの音信号の、各仮想マトリクスバスに対する送出レベルに関する情報を含む。各仮想マトリクスバスは、送信先機器であるアンプ12-1の各バス(出力チャンネル)に対応する。例えば、仮想マトリクスバスVMT1は、アンプ12-1のBUS1(出力チャンネル1)に対応する。したがって、アンプ12-1の入力チャンネル401は、各音信号を、VMT1に対する送出レベルでBUS1に送出する。
【0050】
これにより、ミキサ11で利用者から受け付けた仮想マトリクスバスの設定が、アンプ12-1において反映される。
【0051】
図10は、参考例として、従来のマトリクス装置(マトリクスプロセッサ)91の機能を示す概念図である。従来、利用者は、ミキサ11のバスの数よりも出力系統の数が多い場合には、マトリクスプロセッサ91を接続して、出力チャンネルの音信号を再分配していた。従来のマトリクスプロセッサ91は、ミキサ11から出力された各出力チャンネルの音信号を分配して、アンプ等の音響機器に出力する。利用者は、マトリクスプロセッサのユーザI/Fまたは専用のアプリケーションソフトウェアを用いて、各出力チャンネルの音信号の送出レベルを設定する。
【0052】
ここで、利用者がマトリクスプロセッサ91の出力系統の数よりも多くの音響機器を接続したい場合、利用者は、出力系統の数の多いマトリクスプロセッサに置き換えるか、新たにマトリクスプロセッサ91を追加する必要がある。また、マトリクスプロセッサを置き換えたり追加した場合、利用者は、設定をやり直す必要もあり、煩わしい。
【0053】
これに対して、図11は、本実施形態の仮想マトリクスバスの機能を示した概念図である。ミキサ11は、複数の出力系統を有する音響機器がネットワークを介して接続された場合、自装置の仮想マトリクスバスを設定する。ミキサ11は、出力系統の増減に応じて、自装置の仮想マトリクスバスを増減させる。ミキサ11は、出力チャンネルの音信号および設定情報を出力する。実際の音信号の再分配は、設定情報に基づいて各音響機器において行なわれる。これにより、ミキサ11は、利用する音響機器の数がミキサ11のバスの数よりも多くなった場合でも、自装置のバスが拡張された様に見せかけることができる。つまり、音響機器の数が増減した場合でも、利用者にとってはバスの数が増減しただけのように認識できるため、容易に対処できる。
【0054】
本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0055】
例えば、本実施形態では、センズオンフェーダーモードにおいて、仮想マトリクスバスを表示する例を示した。しかし、本発明は、送信先機器の出力チャンネルを自装置のバスとして見せかける仮想バスを表示する態様であれば、センズオンフェーダーに限るものではない。
【0056】
また、本実施形態では、送信先機器の一例として、ミキシング機能を備えたアンプを示した。他にも、ミキシング機能を備えたパワードスピーカも、本発明の送信先機器の一例である。
【符号の説明】
【0057】
1…音響システム
11…ミキサ
12…アンプ
13…ネットワーク
91…マトリクスプロセッサ
101…表示器
102…CPU
103…DSP
104…フラッシュメモリ
105…RAM
106…D/A変換器
107…パワーアンプ
108…オーディオI/F
121…スピーカ
151,171…通信バス
201…表示器
202…ユーザI/F
203…オーディオI/O
204…信号処理部
205…ネットワークI/F
206…CPU
207…フラッシュメモリ
208…RAM
251…タッチスクリーン
252…チャンネルストリップ
301,401…入力チャンネル
302,402…バス
303,403…出力チャンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11