(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】配線部材の配設構造
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20220928BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220928BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620C
H02G3/22
(21)【出願番号】P 2019017135
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-217875(JP,A)
【文献】実開平02-126957(JP,U)
【文献】特開2013-247805(JP,A)
【文献】特開2018-114964(JP,A)
【文献】特開2009-179117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記
車体と回転軸回りに回転可能に連結される
ドアと、
少なくとも前記
車体及び前記
ドア間に配設される
渡り部分を有する複数の
被覆電線と、
を備え、
前記複数の
被覆電線のうち前記
車体及び前記
ドア間に配設される
前記渡り部分において、前記複数の
被覆電線が前記回転軸の延びる方向に平行に並ぶように配設されて
おり、
前記複数の被覆電線のうち前記車体の孔に通される部分に前記車体の前記孔に嵌るグロメットが設けられ、
前記グロメットの内部において前記複数の被覆電線が平行に並び、前記グロメットが前記複数の被覆電線の並ぶ方向に扁平に形成されており、
前記複数の被覆電線は前記車体に配設される車体配設部分において丸断面状に束ねられて延びており、
前記ドアが開状態にあるときと閉状態にあるときとの間における前記渡り部分の長さ寸法の差を吸収するための余長部が、前記複数の被覆電線のうち前記渡り部分又は前記車体配設部分に設けられている、配線部材の配設構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の配線部材の配設構造であって、
前記複数の
被覆電線のうち前記ドアに配設される部分においても前記複数の
被覆電線が平行に並んで延びている、配線部材の配設構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材の配設構造であって、
前記渡り部分を覆う渡り部保護部と、前記ドアに取付けられるドア取付部とを含む取付用部材をさらに備え、
前記渡り部保護部は、前記ドア取付部と一体に形成されて前記ドア取付部を介して前記ドアに取付けられると共に、前記ドアの開閉時に伸縮する、配線部材の配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材の配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車体とドアとの間にワイヤーハーネスを配索する技術を開示している。特許文献1では、複数の電線が1本に束ねられて構成されている電線束が、ドアヒンジの回転軸に対して離れた位置において、車体からドアに架け渡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-99974号公報
【文献】特開平11-198742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように電線がドアヒンジの回転軸に対して離れた位置に配置されると、ドアの開閉に伴って経路差が生じる。この経路差を吸収するため、通常、電線は可動するように配設される。この場合、特許文献1のように複数の電線が1本に束ねられた電線束が車体とドアとの間に配索されていると、電線束のうちドアヒンジの回転軸に対して離れた位置に配置される電線の可動量が、それよりドアヒンジ側に配置される電線の可動量よりも多くなる。
【0005】
そこで、回転可能に連結される2部材間に配設される電線の可動量を小さくすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材の配設構造は、第1部材と、前記第1部材と回転軸回りに回転可能に連結される第2部材と、少なくとも前記第1部材及び前記第2部材間に配設される部分を有する複数の電線と、を備え、前記複数の電線のうち前記第1部材及び前記第2部材間に配設される部分において、前記複数の電線が前記回転軸の延びる方向に平行に並ぶように配設されている、配線部材の配設構造である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回転可能に連結される第1、第2部材間に配設される電線の可動量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態にかかる配線部材の配設構造を示す側面図である。
【
図2】
図2は
図1におけるII-II線に沿って切断した断面図である。
【
図4】
図4は扁平化部材の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は扁平化部材の別の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は複数の電線の経路の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の配線部材の配設構造は、次の通りである。
(1)第1部材と、前記第1部材と回転軸回りに回転可能に連結される第2部材と、少なくとも前記第1部材及び前記第2部材間に配設される部分を有する複数の電線と、を備え、前記複数の電線のうち前記第1部材及び前記第2部材間に配設される部分において、前記複数の電線が前記回転軸の延びる方向に平行に並ぶように配設されている、配線部材の配設構造である。
複数の電線のうち第1部材及び第2部材間に配設される部分において、複数の電線が回転軸の延びる方向に平行に並ぶように配設されているため、複数の電線において他の電線と比べて軸からの距離が大きくなる電線が生じにくい。これにより、回転可能に連結される第1、第2部材間に配設される電線の可動量を小さくすることができる。
(2)前記配線部材の配設構造において、前記第1部材が車体であり、前記第2部材がドアであることが好ましい。車体とドアとの間に配設される電線の可動量を小さくすることができるからである。
(3)前記配線部材の配設構造は、前記複数の電線のうち前記ドアに配設される部分においても前記複数の電線が平行に並んで延びていると良い。ドアに配設される部分から車体とドアとの間に配設される部分にかけて複数の電線が平行に並んで延びる構成とすることができるからである。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の配設構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
以下、実施形態に係る配線部材の配設構造について説明する。
図1は実施形態にかかる配線部材の配設構造10を示す側面図である。
図1は車両においてドア30が開いた状態のもとでドア30を室内側から見た図である。
図2は
図1におけるII-II線に沿って切断した断面図である。
図3は
図2と同様の方向から見た断面図であり、ドア30が閉じた状態における断面図である。
図2及び
図3はドアヒンジHの回転軸Pの延在方向から見た図である。
【0012】
配線部材の配設構造10は、第1部材20と、第2部材30と、複数の電線40と、を備える。第1部材20と第2部材30とは、回転軸P回りに回転可能に連結される部材である。複数の電線40は、少なくとも第1部材20及び第2部材30間に配設される部分を有する。複数の電線40のうち第1部材20及び第2部材30間に配設される部分において、複数の電線40が回転軸Pの延びる方向に平行に並ぶように配設されている。以下では、複数の電線40のうち第1部材20と第2部材30との間に配設される部分を渡り部と称する。また複数の電線40のうち第1部材20に配設される部分を第1部材配設部と称し、第2部材30に配設される部分を第2部材配設部と称する。
【0013】
以下では、第1部材20が車体20であり、第2部材30がドア30である例を用いて説明する。車体20とドア30とはドアヒンジHを介して回転可能(旋回可能)に連結されている。複数の電線40のうち渡り部は、車体20及びドア30間に配設される部分である。複数の電線40のうち渡り部において、複数の電線40がドアヒンジHにおける回転軸P(旋回軸P)の延びる方向に平行に並ぶように配設されている。
【0014】
ドア30は、アウターパネル32と、インナーパネル34とを備える。アウターパネル32は、ドア30のうち車両外側に面する部分に設けられ、車両の外観を構成する部分である。ドア30は、インナーパネル34の内側に取付けられる意匠トリム(図示省略)をさらに備える。ドア30は、車体20の側方部に設けられるドア30であってもよいし、車体20の後部に設けられるドア30であってもよい。ドアヒンジHの回転軸Pは、主として鉛直方向に沿って延びるものであってもよいし、主として水平方向に沿って延びるものであってもよい。
【0015】
複数の電線40は、車体20に取付けられるバッテリなどからドア30に取付けられる部品に電力を供給したり、車体20に取付けられる部品とドア30に取付けられる部品との間で信号の授受をしたりするための部材である。本例では、複数の電線40は、それぞれ芯線42と芯線42を覆う被覆44とを有する被覆電線40である(
図4参照)。
図1に示す例では、複数の電線40の本数は、4本であるが、2本又は3本でもよいし、5本以上であってもよい。
図1及び
図2に示すように、渡り部において複数の電線40が一列の状態となって回転軸Pの延びる方向に並んでいる。もっとも、電線40の本数が多い場合、渡り部において複数の電線40が回転軸P及びその延長線に対して離れる方向に複数列となっていてもよい。つまり電線40の本数が多い場合、渡り部において複数の電線40が複数列の状態となって回転軸Pの延びる方向に並んでいてもよい。複数の電線40は、渡り部において扁平に並んでいればよい。
【0016】
図2に示すように複数の電線40のうち渡り部は、回転軸Pの延びる方向から見て、回転軸Pから離れた位置に設けられている。このため、ドア30が開状態にあるときと閉状態にあるときとで、複数の電線40に経路差が生じ、渡り部の長さが変わる。複数の電線40に余長部が設けられることによって、ドア30が開状態にあるときと閉状態にあるときとの間における渡り部の長さ寸法の差を吸収可能とされる。つまり渡り部の長さが短いとき(ドア30が閉状態のとき)に、複数の電線40に余長部が生じる。渡り部の長さが長くなろうとする(ドア30が開状態になろうとする)と、余長部の部分が渡り部に用いられることによって、渡り部の長さが長くなることができる。余長部は、渡り部に設けられていてもよいし、第1部材配設部に設けられていてもよいし、第2部材配設部に設けられていてもよい。余長部が第1部材配設部又は第2部材配設部に設けられている場合、渡り部が、第1部材配設部又は第2部材配設部に対して引出収納可能に設けられているとよい。
【0017】
複数の電線40は、例えば渡り部の端部において孔に通されることもあり得るし、孔に通されないこともあり得る。ここでは複数の電線40は、渡り部の一端部において車体20に形成された孔に通されるものとして説明する。また複数の電線40は、渡り部の他端部において、ドア30に形成された孔に通されていないものとして説明する。具体的には、ドア30のインナーパネル34において、主面(車室内側を向く面)から側面(車体20の前後方向を向く面)に向けて凹む凹部36が形成されている。そして、複数の電線40のうち渡り部の他端部を含む部分が、後述するドア取付部60ごと凹部36に嵌められている。従って、渡り部の他端部は、ドア30のインナーパネル34における側面(車体20の前後方向を向く面)に達した後、曲がりつつ主面側に向かって延びる。渡り部の他端部は、主面に対して車室内側に達した後、曲がりつつ主面に沿って延びている。
【0018】
複数の電線40には、取付用部材50が取付けられている。取付用部材50は、車体取付部52と、渡り部保護部56と、ドア取付部60とを含む。車体取付部52は、渡り部の一端部を含む領域に設けられ、渡り部の一端部を含む部分を車体20に取付けるための部分である。渡り部保護部56は、少なくとも渡り部の中間部に設けられ、渡り部を保護するための部分である。ドア取付部60は、渡り部の他端部を含む領域に設けられ、渡り部の他端部を含む部分をドア30に取付けるための部分である。取付用部材50は、一体成形品であってもよいし、複数の別成形品が組み合わさって形成された部材であってもよい。
【0019】
車体取付部52は、車体20に形成された孔に嵌る部材である。例えば、車体取付部52は、大径筒部53と小径筒部54とを有する筒状に形成される。車体取付部52の内部に複数の電線40が通される。車体取付部52は、例えばゴム、エラストマなどを材料として形成された一体成形品である。車体取付部52のように孔に嵌った状態で孔に通される電線40の外周を覆って保護する部材は、グロメットなどとも呼ばれる。ここでは車体取付部52の内部において複数の電線40が平行に並んでいる。この場合、車体取付部52における横断面は、複数の電線40の並ぶ方向に扁平に形成されているとよい。
【0020】
大径筒部53は、車体20に取付けられる部分である。大径筒部53の周面には周溝が形成される。この周溝に孔の周縁部が嵌ることによって、車体取付部52が車体20に形成された孔に嵌った状態に取付けられる。
【0021】
小径筒部54は、複数の電線40に取付けられる部分である。例えば小径筒部54の内部に、複数の電線40が通された状態で、小径筒部54及び複数の電線40のうち小径筒部54の端部から延出する部分の周囲に粘着テープ等が巻付けられることによって、小径筒部54が複数の電線40に取付けられる。
【0022】
車体取付部52の大径筒部53は、硬質樹脂を材料として形成された車体係止部と、ゴム、エラストマなどを材料としたシール部とによって構成されている場合もあり得る。車体係止部は、車体20に形成された孔に嵌る筒部と、筒部の外面に弾性変形可能に形成された係止爪とを有する。係止爪は、筒部が車体20に形成された孔に嵌った状態で、車体20に形成された孔の周縁部に対して車体20の内側から係止する。シール部は、車体係止部と組み合される。シール部は、係止爪とは反対側から車体20に形成された孔の周縁部に対して周方向全体にわたって環状に接触し、車体20に形成された孔から車体20内部への水等の浸入を抑制する。
【0023】
なお車体20に形成された孔から車体20内部への水等の浸入を抑制する必要性が低い場合、車体取付部52として、ゴム、エラストマなどを材料とした部材が採用されていないこともあり得る。
【0024】
渡り部保護部56は、筒状に形成される。渡り部保護部56は、横断面が扁平形状に形成される。ここではドア30が開状態にあるときと閉状態にあるときとで、渡り部の長さが異なる。またドア30が開状態にあるときと閉状態にあるときとで、渡り部の延びる方向が異なる。このため、渡り部保護部56は、伸縮可能かつ曲げ可能に形成される。渡り部保護部56は、例えば蛇腹筒状に形成されることによって伸縮可能かつ曲げ可能に形成される。ここでは渡り部保護部56は、車体取付部52と一体成形されている。ここでは渡り部保護部56の内部において複数の電線40が平行に並んでいる。この場合、渡り部保護部56における横断面は、複数の電線40の並ぶ方向に扁平に形成されているとよい。
【0025】
ドア取付部60は、渡り部の他端部を含む部分をドア30に取付けている。ドア取付部60は、L字筒状に形成されている。L字の一端側部分がインナーパネル34に形成された凹部36に嵌る部分である。L字の一端側部分は、インナーパネル34の外側からインナーパネル34に形成された凹部36に嵌まることが可能に設けられている。L字の他端側部分は、インナーパネル34の主面に沿って広がりつつ延びている。複数の電線40のうち渡り部の他端部を含む部分がドア取付部60の内部に通されることによって、渡り部の他端部を含む部分の経路がL字状に規制されている。例えば、ドア取付部60は、並列状の複数の電線40を一方側から覆う第1部分と、並列上の複数の電線40を他方側から覆う第2部分とを有する。例えば、第1部分は、渡り部保護部56及び車体取付部52と一体成形されている。第2部分は、例えば、第1部分よりも高剛性に形成されて、インナーパネル34に取付けられる。ここではドア取付部60の内部において複数の電線40が平行に並んでいる。この場合、ドア取付部60における横断面は、複数の電線40の並ぶ方向に扁平に形成されているとよい。
【0026】
もっとも渡り部の他端部は、ドア30のインナーパネル34に形成された孔に通される場合もあり得る。この場合、ドア取付部60は、上記車体取付部52と同様の形状に形成されることが考えられる。
【0027】
複数の電線40は、第1部材配設部において、渡り部における並びを保って扁平なまま延びていてもよいし、丸断面状に束ねられて延びていてもよい。複数の電線40が第1部材配設部において扁平なまま延びている場合、例えば、複数の電線40がシート状部材等に並んだ状態で固定されることによって扁平状を保っていてもよい。複数の電線40が第1部材配設部において丸断面状に束ねられて延びている場合、例えば、シート状部材等に固定されることなく結束部材等によって束ねられることによって、丸断面状に束ねられた状態を保っていてもよいし、シート状部材等に扁平状に固定されたものが、いわゆるすし巻状に曲げられることによって、丸断面状に束ねられた状態を保っていてもよい。
【0028】
複数の電線40のうちドア30に配設される部分においても複数の電線40が平行に並んで延びている。つまり複数の電線40は、第2部材配設部において、渡り部における並びを保って扁平なまま延びている。
図1に示す例では、第2部材配設部は、ドア30のインナーパネル34より車室内側を通ってドア30の各部に向けて延びている。なお、インナーパネル34よりも車室内側に意匠トリムが設けられる。第2部材配設部は、インナーパネル34と意匠トリムとの間を通って延びる。例えば、複数の電線40は、第2部材配設部において、インナーパネル34と意匠トリムと主面との間に設けられてインナーパネル34の主面を覆う面状部材等に並んだ状態で固定されることによって扁平状を保っていてもよい。このとき、第2部材配設部は、面状部材80上で適宜分岐してドア30の各部に向けて延びていてもよい。また複数の電線40は、第2部材配設部において、丸断面状に束ねられて延びていてもよい。
【0029】
配線部材の配設構造10は、複数の電線40を、渡り部において扁平な並びに保つための扁平化部材を有していることが考えられる。扁平化部材は、複数の電線40に取付けられて、複数の電線40を扁平状態に保持する部材である。
【0030】
例えば、扁平化部材は、
図4に示すようなシート状部材70である。この場合、シート状部材70に複数の電線40が並んだ状態で固定されることによって、複数の電線40が扁平状態に保持される。電線40とシート状部材70との固定態様は特に限定されるものではなく、溶着等によって被覆44とシート状部材70とを直接固定する態様であってもよいし、接着剤、両面粘着テープなどの介在物によって電線40とシート状部材70とを間接固定する態様であってもよいし、縫い糸又は片面粘着テープ等によって、電線40をシート部材に向けて押さえつける態様であってもよい。
【0031】
また例えば、扁平化部材は、
図5に示すような主面に保持溝82が形成された面状部材80である。この場合、面状部材80に形成された溝に複数の電線40が収容されることによって、複数の電線40が扁平状態に保持される。この溝は、1つ形成され、複数の電線40をまとめて収容していてもよい。また溝が複数形成され、複数の溝が複数の電線40を複数のグループごと別々に収容していてもよく、複数の電線40を1本ずつ別々に収容していてもよい。また複数の電線40は、保持溝82にその長手方向に沿って動くことができるように保持されているとよい。例えば、電線40が保持溝82に収容された状態で、保持溝の開口部を閉塞部84によって塞ぐことによって電線40が保持溝に保持された状態とすることが考えられる。この場合、電線40は、保持溝内で長手方向に動くことが可能でありつつ、閉塞部84によって電線40が保持溝から抜けるのを防ぐことが可能となる。閉塞部84は、例えば、
図5に示すように保持溝の周囲に突設されたリブ86が加熱加圧部材90によって潰されて形成されたものであってもよいし、粘着テープ等が貼り付けられて形成されたものであってもよい。
【0032】
また例えば、扁平化部材は、複数の電線40を両側から覆って保持する両側覆い部材である。この場合、両側覆い部材は複数の電線40を両側からそれぞれ覆う第1覆い部、第2覆い部を有する。第1覆い部、第2覆い部の間に複数の電線40を扁平に保つ経路が形成される。上記ドア取付部60は、両側覆い部材の一例である。
【0033】
扁平化部材の設けられる位置は特に限定されるものではない。扁平化部材は、渡り部に設けられていてもよいし、第1部材配設部に設けられていてもよいし、第2部材配設部に設けられていてもよい。例えば、渡り部保護部56の内部において扁平化部材が設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。また例えば、取付用部材50の内部において扁平化部材が設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。
【0034】
本開示によると、複数の電線40のうち第1部材20及び第2部材30間に配設される部分において、複数の電線40が回転軸Pの延びる方向に平行に並ぶように配設されているため、複数の電線40において他の電線40と比べて軸からの距離が大きくなる電線40が生じにくい。これにより、回転可能に連結される第1、第2部材20、30間に配設される電線40の可動量を小さくすることができる。この場合、渡り部保護部56の形状を簡易なものとすることもできる。つまり、回転可能に連結される第1、第2部材30間に配設される電線40の可動量を小さくすることができるため、渡り部保護部56の伸縮する寸法を小さくでき、もって渡り部保護部56の形状が簡易なものとなる。
【0035】
また第1部材20が車体20であり、第2部材30がドア30であるため、車体20とドア30との間に配設される電線40の可動量を小さくすることができる。また複数の電線40のうちドア30に配設される部分においても複数の電線40が平行に並んで延びているため、ドア30に配設される部分から車体20とドア30との間に配設される部分にかけて複数の電線40が平行に並んで延びる構成とすることができる。
【0036】
[付記]
図6は複数の電線40の経路の変形例を示す断面図である。
図6に示す例では、実施形態に示す例と比べて、複数の電線40が渡り部において回転軸Pに近い位置に配設されている。複数の電線40が、回転軸Pと重なるように、つまり回転軸Pの延長部分を横切るように延びている場合もあり得る。これらの場合、ドア30が開状態のときと閉状態のときとの間で、渡り部における経路差が短くなり、電線40の可動量が小さくなる。このため渡り部保護部56は、伸縮できる寸法が短くて済み、伸縮可能でなくともよい場合もあり得る。この結果、渡り部保護部56の形状を簡易なものとすることができる。具体的には、渡り部保護部56はゴム、エラストマ、軟質樹脂等の材料によって曲げ可能に形成されていればよく、縦断面が蛇腹状ではなく平坦状に形成されていること、つまり同じ横断面が長手方向に連続する形状に形成されていることも考えられる。
【0037】
このほか、これまで複数の電線40は、それぞれ別の被覆電線40であるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。複数の電線40の一部又は全部は、複数の芯線42を共通の被覆44が一括して覆うフレキシブルフラットケーブルなどであってもよい。
【0038】
またこれまで第1部材20が車体20であり、第2部材30がドア30であるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。例えば、第1部材20が座席の座面部であり、第2部材30が座席の背もたれ部であってもよい。また例えば、第1部材20がアームレストなどの箱状収容部において箱状に形成された収容本体部であり、第2部材30がアームレストなどの箱状収容部において収容本体部の開口部を塞ぐ蓋部であってもよい。第1部材20、第2部材30は、車両において回転可能に連結されるものであるとよい。
【0039】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 配線部材の配設構造
20 第1部材(車体)
30 第2部材(ドア)
32 アウターパネル
34 インナーパネル
36 凹部
40 電線
42 芯線
44 被覆
50 取付用部材
52 車体取付部
53 大径筒部
54 小径筒部
56 渡り部保護部
60 ドア取付部
70 シート状部材
80 面状部材
82 保持溝
84 閉塞部
86 リブ
H ドアヒンジ
P 回転軸