(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ドア用配線モジュール及びドア用配線モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20220928BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220928BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
B60R16/02 623T
B60J5/00 Z
H02G3/30
(21)【出願番号】P 2019021185
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-114720(JP,U)
【文献】実開昭63-130353(JP,U)
【文献】特開2014-088165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60J 5/00
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアパネルに組込まれるドア用面状部材と、
前記ドア用面状部材における主面上に配設された配線部材と、
前記ドア用面状部材における前記主面及び前記配線部材を覆いつ
つ前記ドア用面状部材における前記主面と直接接合するように形成されて前記配線部材を前記ドア用面状部材における主面上に配設された状態に保持する保持部材と、
を備え
、
前記配線部材は前記ドア用面状部材の前記主面に形成された保持溝に収まっており、
前記配線部材は複数の電線を含み、
前記ドア用面状部材には、前記保持溝が並列状態で複数形成され、
前記電線が1本ずつ前記保持溝に収まっており、
前記保持部材は前記主面上に注入された樹脂が硬化したものであり、前記主面のうち複数の前記保持溝を跨ぐように設けられて複数の前記保持溝の開口部を塞ぐ部分を有する、ドア用配線モジュール。
【請求項2】
請求項
1に記載のドア用配線モジュールであって、
前記ドア用面状部材は、前記保持部材が設けられる領域を仕切る壁部を含み、
前記保持部材の外縁が前記壁部に接している、ドア用配線モジュール。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載のドア用配線モジュールであって、
前記保持部材は発泡樹脂を材料として形成されて防音材を兼ねる、ドア用配線モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のドア用配線モジュールであって、
前記保持部材は、前記主面のう
ち前記配線部材が配設された部分を全面的に覆っている、ドア用配線モジュール。
【請求項5】
(a)車両のドアパネルに組込まれるドア用面状部材における主面上に配線部材を配設する工程と、
(b)前記工程(a)の後で、前記ドア用面状部材における前記主面及び前記配線部材上に軟化した樹脂材料を注入し
て前記主面と直接接合させる工程と、
を備え
、
前記ドア用面状部材における前記主面には前記配線部材における複数の電線を1本ずつ収めることが可能な複数の保持溝が形成され、
前記工程(a)は、前記複数の保持溝に前記複数の電線を収める工程を含み、
前記工程(b)は、前記主面のうち前記複数の保持溝に跨がる領域に樹脂材料を注入する工程を含む、ドア用配線モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドア用配線モジュール及びドア用配線モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドアにドア用のワイヤーハーネスを組付ける技術を開示している。特許文献1では、ワイヤーハーネスが取付けられたドアトリムをドアパネルに組付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ドア用ハーネスに取付けられたバンドがネジによってトリムパネルに固定されることによって、ドア用ハーネスがドアトリムに取付けられている。
【0005】
ドア用の面状部材にドア用の配線部材を取付けるための新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のドア用配線モジュールは、車両のドアパネルに組込まれるドア用面状部材と、前記ドア用面状部材における主面上に配設された配線部材と、前記ドア用面状部材における前記主面及び前記配線部材を覆いつつ少なくとも前記ドア用面状部材における前記主面と直接接合するように形成されて前記配線部材を前記ドア用面状部材における主面上に配設された状態に保持する保持部材と、を備える、ドア用配線モジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ドア用の面状部材にドア用の配線部材を取付けるための新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態にかかるドア用配線モジュールが組込まれたドアを示す概略側面図である。
【
図2】
図2は
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。
【
図3】
図3は
図1のIII-III線に沿って切断した断面図である。
【
図4】
図4は配線部材がドア用面状部材から外方に延びる部分を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は配線部材がドア用面状部材から外方に延びる部分を示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は実施形態にかかるドア用配線モジュールの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のドア用配線モジュール及びドア用配線モジュールの製造方法は、次の通りである。
(1)車両のドアパネルに組込まれるドア用面状部材と、前記ドア用面状部材における主面上に配設された配線部材と、前記ドア用面状部材における前記主面及び前記配線部材を覆いつつ少なくとも前記ドア用面状部材における前記主面と直接接合するように形成されて前記配線部材を前記ドア用面状部材における主面上に配設された状態に保持する保持部材と、を備える、ドア用配線モジュールである。
ドア用面状部材と直接接合される保持部材によって、配線部材をドア用面状部材に取付けることができる。ドア用の面状部材にドア用の配線部材を取付けるための新規な技術を提供することができる。
ここでドア用面状部材とは厚み方向の寸法が面方向の寸法よりも小さい面状の部材である。
(2)前記配線部材は前記ドア用面状部材の前記主面に形成された保持溝に収まっていることが好ましい。保持部材によって、配線部材が保持溝から抜けることを抑制できるからである。
(3)前記配線部材は複数の電線を含み、前記ドア用面状部材には、前記保持溝が並列状態で複数形成され、前記電線が1本ずつ前記保持溝に収まっていると良い。電線を並列状態で保持することができるからである。また保持部材を薄くすることができるからである。
(4)前記ドア用面状部材は、前記保持部材が設けられる領域を仕切る壁部を含み、前記保持部材の外縁が前記壁部に接していると良い。樹脂を注入して保持部材を形成する時に樹脂が漏れることを抑制することができるからである。
(5)前記保持部材はウレタンを材料として形成されて防音材を兼ねると良い。配線部材を固定する部材と、防音材とを別に設けずに済むからである。
(6)前記保持部材は、前記主面のうち少なくとも前記配線部材が配設された部分を全面的に覆っているとよい。主面上に配設された配線部材を全長に亘って保持することができるからである。
(7)また、本開示のドア用配線モジュールの製造方法は、(a)車両のドアパネルに組込まれるドア用面状部材における主面上に配線部材を配設する工程と、(b)前記工程(a)の後で、前記ドア用面状部材における前記主面及び前記配線部材上に軟化した樹脂材料を注入して少なくとも前記主面と直接接合させる工程と、を備えるドア用配線モジュールの製造方法である。注入した樹脂がドア用面状部材と直接接合されることによって、配線部材をドア用面状部材に取付けることができる。ドア用の面状部材にドア用の配線部材を取付けるための新規な技術を提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のドア用配線モジュール及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
[実施形態]
以下、実施形態に係るドア用配線モジュール及びその製造方法について説明する。
図1は、実施形態にかかるドア用配線モジュール20が組込まれたドア10を示す概略側面図である。
図2は
図1のII-II線に沿って切断した断面図である。
図3は
図1のIII-III線に沿って切断した断面図である。
図4は配線部材40がドア用面状部材22から外方に延びる部分を示す概略斜視図である。
図5は配線部材40がドア用面状部材22から外方に延びる部分を示す概略斜視図である。
図6は実施形態にかかるドア用配線モジュール20の製造方法を示す説明図である。なお、
図1では、配線部材40を覆う保持部材50が二点鎖線で示されている。
【0012】
ドア10は、全体として偏平な形状に形成されており、車両において車室内と車室外とを仕切るように開閉可能に設けられる部分である。ドア10は、運転席側ドア、助手席側ドア、後部座席用ドアである場合等が想定される。ドア10は、ドアパネル12と、ドア用配線モジュール20とを備える。
【0013】
ドアパネル12は、アウターパネル(図示省略)と、インナーパネル14とを備える。アウターパネルは、ドア10のうち車両外側に面する部分に設けられ、ボディと共に車両の外観を構成する部分である。インナーパネル14は、アウターパネルの車室側に設けられている。インナーパネル14及びアウターパネルの間には、通常、ウインドウなどを収納ための空間が形成されている。当該空間には、雨水環境に曝されるウインドウが収容され、また、当該空間の上方には、ウインドウが出入りするスリット状の開口が形成されている。このため、当該空間は、水が侵入する可能性がある空間である。また、当該空間は、外部空間と繋がる可能性のある空間であるため、外部からの風切り音等が侵入する恐れがある空間でもある。一方、インナーパネル14には、ドア10の製造時、メンテナンス時等に上記空間にアクセスするための開口15が設けられている。この開口15は車両の通常使用時等には塞がれることが好ましい。そこで、当該開口15を閉じるようにドア用配線モジュール20が取付けられる。
【0014】
ドア用配線モジュール20は、ドア用面状部材22と、配線部材40と、保持部材50と、を備える。配線部材40は保持部材50によってドア用面状部材22に保持されている。このため、ドア用面状部材22がドア10に組込まれることによって、配線部材40も併せてドア10に組み込まれる。
【0015】
本例では、ドア用面状部材22は、車両のドア10においてドアパネル12と意匠トリム(図示省略)との間に組込まれる部材である。ドア用面状部材22は、車両のドア10においてドアパネル12と意匠トリムとの間に組込まれる部材であれば特に限定されるものではなく、種々の面状部材を用いることができる。以下では、ドア用面状部材22がインナートリムであるものとして説明する。
【0016】
なお本例におけるドア10は、意匠トリムをさらに備える。意匠トリムは、ドア10のうち車室内側に面する部分に設けられ、車両の内観を構成する部分である。意匠トリムには例えば、ドアハンドル、車載機器の操作部等が取付けられる。
【0017】
ドア用面状部材22は、インナーパネル14と共に車室空間と外部空間とをより完全に仕切る部材として設けられている。ドア用面状部材22は、面状の部材である。なお、ここでいう面状の部材とは、厚み寸法が、面方向(厚み方向に直交する2方向)の寸法よりも小さい2次元的に広がる部材を言い、必ずしも表裏方向(厚み方向)に平坦である必要はなく、表裏方向に凹凸が生じていてもよい。
【0018】
ドア用面状部材22は、主板部24と、収容空間形成部28とを含む。ドア用面状部材22がインナーパネル14の開口15を塞ぐ所定位置に位置する状態で、ネジ止、係止構造等によってインナーパネル14に組付けられる。
【0019】
主板部24は、開口15を塞ぐことができる程度の大きさで板状に広がる部分である。なお、主板部24には、スピーカを組込むためのスピーカ組込孔25が形成されている。ドア用面状部材22にスピーカ組込孔25が形成されていることは必須ではない。例えば、インナーパネル14にスピーカ組込孔が形成されており、ドア用面状部材22は、インナーパネル14に対してスピーカが組込まれる部分を除く領域に組込まれる構成であってもよい。収容空間形成部28は、主板部24の一方主面側(車室側)に開口すると共に、主板部24の他方主面側(外側)に突出する容器状に形成されている。収容空間形成部28は、開口15よりも小さい容器状に形成されている。ドア用面状部材22がインナーパネル14の開口15に嵌め込まれた状態で、収容空間形成部28が開口15の内側に配設される。また、収容空間形成部28の開口縁部と開口15の周縁部との間が、主板部24によって塞がれる。例えば、主板部24の周縁部のうちインナーパネル14に重なる部分がネジ等によってインナーパネル14にネジ止されれば、それらの間の隙間を可及的に塞ぐことができる。
【0020】
ドア用面状部材22の収容空間形成部28等には、ドア10に組込まれる電気部品16、17、18の一部又は全部を組込むことができる。ここでは電気部品17、18が組込まれている。電気部品17、18としては、ウインドウを開閉するモータ、ドア10をロック及びアンロックするためのアクチュエーター、各種スイッチであること等が想定される。
【0021】
ドア用面状部材22には、その主面上に配線部材40が収容される保持溝30が形成されている。保持溝30は、配線部材40の延在方向に沿った少なくとも一部を保持する。配線部材40が保持溝30に収容保持されることによって、配線部材40がドア用面状部材22に配線されて保持された状態となる。保持溝30は、配線部材40の配線形態に応じて形成されている。ここでは主板部24と収容空間形成部28との両方に保持溝30が形成されているが、主板部24のみに形成されている場合もあり得るし、収容空間形成部28のみに形成されている場合もあり得る。保持溝30は電線41、42、43と同じかそれよりも大きく形成されている。このため、電線41、42、43の周囲全体が保持溝30内に収まっている。もっとも保持溝30は電線41、42、43よりも小さく形成されていてもよい。この場合、電線41、42、43の一部が保持溝30の開口部から突出していてもよい。
【0022】
ドア用面状部材22は、表裏方向に曲げ困難な剛性を有しているとよい。これにより、ドア用面状部材22がドアパネル12に組付けられるときに、縁部などが曲がりにくく、広がった形状に保たれやすいことによって、組付けが容易となる。例えば、ドア用面状部材22は、保持部材50よりも高剛性に形成されている。ドア用面状部材22は、例えば樹脂又は金属を材料として金型成型された部材である。ドア用面状部材22は、金型内に溶融材料が流し込まれて成型されたものでもよいし、板材が金型を用いたプレス成型されて成型されたものであってもよい。
【0023】
配線部材40は、ドア10に設けられ、当該ドア10に組込まれた電気部品16、17、18に接続される電気的な配線である。ドア10の配線部材40は、通常、ドア10のヒンジ側で車両と接続されており、ドア10の前側から後側に向う際に分岐して各種電気部品16、17、18に接続される。ここでは、配線部材40は、複数の電線41、42、43を含む。電線41、42、43としては、導体で構成された芯線の周囲に被覆が形成された被覆電線を用いることができる。芯線は、単芯線であってもよいし、撚り合せ線であってもよい。
【0024】
ここでは、複数の電線41、42、43は、それぞれの一端側では並列状態に集合されている。複数の電線41、42、43の一端部は、例えば、束ねられた状態でドア10のヒンジ側から当該ドア10から延出し、車両本体内に導かれ、共通コネクタ等を介して車両本体内の他のコネクタに接続されることが想定される。電線41は、電線42、43に対して最も長く延在し、電線42、43は、電線41の延在方向中間部で分岐している。電線41、42、43のそれぞれの他端部には、コネクタ44、45、46が取付けられている。電線41、42、43は、当該コネクタ44、45、46を介して電気部品16、17、18に接続される。
【0025】
電線41、42、43は、複数の保持溝30内に個別に保持されている。ここでは、複数の保持溝30は、複数の電線41、42、43に応じた数、並列状態で形成されている。電線41、42、43の分岐に伴い、保持溝30も分岐している。
【0026】
より具体的には、電線41は、主板部24の前縁部の上下方向中間部から当該主板部24の前側の主面、収容空間形成部28の底の主面、主板部24の後側の主面を経由して、主板部24の後縁部の上下方向中間部に至る一定経路に沿って保持されている。電線42は、電線41の上側で、主板部24の前縁部の上下方向中間部から当該主板部24の前側の主面を経由して収容空間形成部28の底の主面までに至る一定経路に沿って保持されている。電線43は、電線41の下側で、主板部24の前縁部の上下方向中間部から当該主板部24の前側の主面を経由して収容空間形成部28の底の主面までに至る一定経路に沿って保持されている。
【0027】
電線41は、ドア用面状部材22の後端部から延出して電気部品16に接続される。電気部品16は、ドア10の後部に組込まれる部品であり、例えば、ドアロック及びアンロック用モータなどが想定される。電線42、43は、収容空間形成部28内で電線41と分岐し、当該収容空間形成部28内の電気部品17、18に接続される。なお、電線42と、電線43とは電線41の延在方向中間部において同じ位置で分岐しているが、異なる位置で分岐していてもよい。
【0028】
本実施形態では、複数の電線41、42、43が、個別に保持溝30に収容されているが、複数の電線41、42、43の全てが共通する保持溝に収容されて保持されてもよい。また、複数の電線41、42、43が複数のグループに分けられると共に、当該複数のグループに応じた数の保持溝が形成され、複数の電線41、42、43が複数のグループ毎に複数の保持溝に収容されて保持されてもよい。
【0029】
保持部材50は、配線部材40をドア用面状部材22における主面上に配設された状態に保持する部材である。保持部材50は、ドア用面状部材22における主面及び配線部材40を覆いつつ少なくともドア用面状部材22における主面と直接接合するように形成されている。ここで直接接合された状態とは、接着剤等の介在物を介さずに直接くっついている状態を言う。保持部材50と電線41、42、43とは、接していてもよいし、接していなくてもよい。保持部材50と電線41、42、43とが接している部分においては直接接合されていてもよい。
【0030】
保持部材50とドア用面状部材22とは、接する部分が全体的に直接接合している。保持部材50は、例えば、ウレタンフォーム等の発泡樹脂を材料として形成される。保持部材50は、発泡樹脂でない樹脂(非発泡樹脂と称する)などの樹脂を材料として形成されていてもよい。保持部材50は、同一材料による一層であってもよいし、複数層であってもよい。
【0031】
保持部材50は防音材を兼ねる。防音材は、音を減らす部材である。防音材は、吸音材としての機能を有するものであってもよいし、遮音材としての機能を有するものであってもよい。吸音材は、厚み方向の断面を見て空間があるものである。吸音材は、例えば、入射した音エネルギーを吸収等することで、音の反射をなるべく少なくする。例えば、保持部材50がウレタンフォーム等の発泡樹脂を材料として形成されることによって、保持部材50が吸音材を兼ねることができる。遮音材は、厚み方向の断面を見て空間がないものである。遮音材は、例えば、音エネルギーを吸収したり反射したりすることで音をなるべく遮る。例えば、保持部材50が発泡樹脂でない樹脂(非発泡樹脂と称する)などの樹脂を材料として形成されることによって、保持部材50が遮音材を兼ねることができる。保持部材50は、発泡樹脂を材料とした層と、非発泡樹脂を材料とした層との2層構造などに形成されて吸音材としての機能と遮音材としての機能を兼ね備えていてもよい。
【0032】
保持部材50は、ドア用面状部材22における主面のうち少なくとも配線部材40が配設された部分を全面的に覆っている。なおここでいう全面的とは、ドア用面状部材22における主面のうち少なくとも配線部材40の中間部が配設された部分全体を覆っていることを言う。
図1に示す例では、保持部材50は、配線部材40における端部及び配線部材40のうちドア用面状部材22の縁部に位置する部分を除いて、ドア用面状部材22における主面のうち少なくとも配線部材40が配設された部分全体を覆っている。もっとも保持部材50は、配線部材40を保持可能であれば配線部材40を覆う領域は適宜設定されていればよく、一部であってもよい。
【0033】
保持部材50は、ドア用面状部材22における収容空間形成部28に設けられている。ドア用面状部材22は、保持部材50が設けられる領域を仕切る壁部29を含む。ここでは、ドア用面状部材22において収容空間形成部28の内面を構成する部分が、保持部材50が設けられる領域を仕切る壁部29とされている。保持部材50の外縁の少なくとも一部が壁部29に接している。保持部材50の周縁部の少なくとも一部は、壁部29に沿って延びている。もっともドア用面状部材22において壁部29が形成されていなくてもよい。また保持部材50の外縁部が壁部29に達していなくてもよい。
【0034】
ドア用面状部材22上に組み込まれる電気部品17は、保持部材50で覆われている。このようにドア用面状部材22上に組み込まれる電気部品17、18には保持部材50で覆われている電気部品17があってもよい。例えば保持部材50が形成されるより先に電線42と接続される電気部品17については、保持部材50で覆われていてもよい。ドア用面状部材22上に組み込まれる電気部品18は、保持部材50で覆われていない。このようにドア用面状部材22上に組み込まれる電気部品17、18には保持部材50で覆われていない電気部品18があってもよい。例えば、保持部材50が形成されるより後に電線43と接続される電気部品18については、保持部材50で覆われていないとよい。もちろん、保持部材が形成されるより先に電線と接続される電気部品について保持部材で覆われていなくてもよい。ドア用面状部材22上に組み込まれる電気部品の中に保持部材50で覆われていない電気部品18がある場合、この保持部材50によって覆われていない電気部品18は例えば、保持部材50の形成時に周囲に樹脂が入らないように金型等で仕切られていることによって、保持部材50で覆われていない状態とすることができる。ドア用面状部材22上に組み込まれる電気部品は、すべて保持部材50で覆われてもよいし、すべて保持部材50で覆われなくてもよいし、保持部材50で覆われる電気部品と保持部材50で覆われない電気部品とが併存していてもよい。
【0035】
ここでは、保持部材50は、保持溝30のうちその底とは反対側の開口部を塞ぐように形成されて、保持溝30内の電線41、42、43の抜けを抑制する。なお保持部材50は、保持溝30に入り込んでいてもよいし、保持溝30に入り込んでいなくてもよい。保持部材50は、保持溝30に入り込む場合、保持溝30の開口部から底部まで全体を満たしていてもよいし、開口部側の一部のみを満たしていてもよい。保持部材50は、開口部側の一部のみを満たしている場合、電線41、42、43まで達していてもよいし、達していなくてもよい。
【0036】
保持部材50は、電線41、42、43のうち保持溝30に収まっていない部分を保持するものであってもよい。保持部材50がドア用面状部材22における平坦な面上に位置する電線41、42、43を保持する場合、保持部材50のうちドア用面状部材22と直接接合している部分において保持部材50のうちドア用面状部材22と直接接合している層の厚みが電線41、42、43の厚みよりも大きいとよい。
【0037】
保持部材50の外縁において、保持部材50から延出する電線41、42、43が存在する。電線41、42、43の一方端部は、ドアヒンジに向けて延出する部分である。電線41、42、43の一方端部は、ドア用面状部材22における前縁部から外方に延出する。電線41の他端部は、ドア10において、ドア用面状部材22に設けられない電気部品16に接続される。電線41の他端部は、ドア用面状部材22における後縁部から外方に延出する。電線43の他端部は、壁部29の内部において保持部材50から延出する。例えば電線43の他端部は、保持部材50の形成後に、電気部品18に接続されるため、電線43の他端部が保持部材50から延出している。
【0038】
保持部材50の厚み寸法は特に限定されるものではなく、配線部材40を保持できればよい。保持部材50が防音材を兼ねる場合、保持部材50における厚み寸法が大きいと、防音性能が高くなる。
図2に示す例では、保持部材50における厚み寸法は、収容空間形成部28における深さ寸法(壁部29の高さ寸法)と同じである。もちろん、保持部材50における厚み寸法は、収容空間形成部28における深さ寸法(壁部29の高さ寸法)よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。保持部材50は、ドア用面状部材22の主面において最も外側に突出する部分に対してそれと同じかそれよりも突出しないように形成されていてもよい。ドア用配線モジュール20における厚み寸法が大きくなることを抑制できるからである。
【0039】
電線41、42、43の一方端部、電線41の他端部のように収容空間形成部28から主板部24に延びる部分が存在する場合、収容空間形成部28の底の主面から主板部24の主面に向けて垂直面よりも緩やかに傾斜する傾斜面が形成されて、この部分に電線が配設されていてもよい。また主板部24のうち電線41、42、43が外方に延出する部分では、周囲の部分よりも凹んだ延出用部分26があってもよい。延出用部分26は、保持部材50に覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0040】
電線41、42、43のうちドア用面状部材22の主面上において、保持部材50によって保持されない部分は、別の保持部によって保持されていてもよいし、保持されていなくてもよい。例えば、保持溝30に収められた電線41、42、43を保持する保持部として、
図3に示す例では、抜止部32が形成されている。抜止部32は、開口15を狭くするように或は閉じるように形成されて、開口15から電線41、42、43が抜けることを抑制する部分である。抜止部32は、例えば、保持溝30のうち底とは反対側の開口部周縁部に、当該底とは反対側に突出するように形成された突出部分33が潰されて形成された部分である。突出部分33は、例えば、加熱部材60等が押し当てられて熱によって溶かされて潰される。
【0041】
<製造方法>
上記ドア用配線モジュール20を製造する方法について説明する。ドア用配線モジュール20の製造方法は、以下の工程(a)、工程(b)を備える。
【0042】
工程(a)は、車両のドアパネル12に組込まれるドア用面状部材22における主面上に配線部材40を配設する工程である。これにより、配線部材40が所望の配線状態となる。工程(b)は、工程(a)の後で、ドア用面状部材22における主面及び配線部材40上に軟化した樹脂材料Bを注入して少なくともドア用面状部材22における主面と直接接合させる工程である。工程(b)において、樹脂材料Bがドア用面状部材22における主面と直接接合した状態で固まることによって、上記保持部材50となり、配線部材40をドア用面状部材22における主面上に保持する。
【0043】
工程(a)に関し、ここではドア用面状部材22における主板部24、収容空間形成部28における主面上に配線部材40を配設する。このとき、ドア用面状部材22に形成された保持溝30に沿って配線部材40を配設していく。配線部材40は、保持溝30に収容保持されることによって所定の配線状態に維持される。
【0044】
工程(b)に関し、樹脂材料Bは、例えば注入口70から注入された後に軟化した状態でドア用面状部材22における主面と接する。樹脂材料Bは、軟化した状態でドア用面状部材22における主面と接することによって、ドア用面状部材22における主面と直接接合可能な材料である。ここでは樹脂材料Bとして発泡樹脂を用いることによって、保持部材50が防音材を兼ねることができる。
【0045】
樹脂材料Bの注入時に注入領域の周囲が壁部29、金型等によって仕切られる。これにより、樹脂材料Bを注入させたくない部分に樹脂材料Bが注入することが抑制される。樹脂材料Bが壁部29、金型等に達した部分は、保持部材50における外縁部となる。樹脂材料Bが壁部29に達した部分では、壁部29と直接接合する。また樹脂材料Bの粘度が高い場合などには、樹脂材料Bが保持溝30に入らない場合があり得る。また樹脂材料Bの粘度が低い場合などには、樹脂材料Bが保持溝30に入る場合があり得る。
【0046】
樹脂材料Bが所定量注入された状態で、その表面部(ドア用面状部材22における主面と接する側とは反対側の面)はならされていてもよいし、ならされていなくてもよい。樹脂材料Bがならされていると、保持部材50における表面部が平坦となることができる。また周囲が壁部29、金型等によって仕切られる注入領域の上部に対して蓋をする金型があってもよい。この場合、保持部材50における表面部は、蓋をする金型の内面形状に応じた形状に形成されうる。
【0047】
本開示によると、ドア用面状部材22と直接接合される保持部材50によって、配線部材40をドア用面状部材22に取付けることができる。ドア10用の面状部材にドア10用の配線部材40を取付けるための新規な技術を提供することができる。
【0048】
電線41、42、43が収容される保持溝30が形成されており、保持部材50が保持溝30を覆っているため、保持部材50によって、配線部材40が溝から抜けることを抑制できる。複数の保持溝30が形成されているため、電線41、42、43を並列状態で保持することができる。また保持溝30からの電線41、42、43の突出が抑えられ、保持部材50を薄くすることができる。
【0049】
ドア用面状部材22は保持部材50が設けられる領域を仕切る壁部29を含み、保持部材50の外縁が壁部29に接しているため、樹脂材料Bを注入して保持部材50を形成する時に樹脂材料Bが漏れることを抑制することができる。
【0050】
保持部材50は発泡樹脂を材料として形成されて防音材を兼ねるため、配線部材40を固定する部材と、防音材とを別に設けずに済む。
【0051】
保持部材50は、主面のうち少なくとも配線部材40が配設された部分を全面的に覆っているため、主面上に配設された配線部材40を全長に亘って保持することができる。
【0052】
[付記]
実施形態では、ドア用配線モジュール20におけるドア用面状部材22がインナートリムである例で説明したが、このことは必須の構成ではない。ドア用配線モジュール20におけるドア用面状部材はドア10に組付けられる面状の部材であればよく、例えば意匠トリムであってもよい。
【0053】
ドア用面状部材22において保持溝30が形成されていなくてもよい。この場合、ドア用面状部材22上において電線41、42、43は重なるように配線されていてもよいし、重ならないように並んだ状態で配線されていてもよい。
【0054】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 ドア
12 ドアパネル
14 インナーパネル
15 開口
16、17、18 電気部品
20 ドア用配線モジュール
22 ドア用面状部材
24 主板部
25 スピーカ組込穴
26 延出用部分
28 収容空間形成部
29 壁部
30 保持溝
32 抜止部
33 突出部分
40 配線部材
41、42、43 電線
44、45、46 コネクタ
50 保持部材
60 加熱部材
70 注入口
B 樹脂材料