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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】絶縁回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/13 20060101AFI20220928BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220928BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220928BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/36 C
H05K1/02 G
H05K1/09 C
H05K1/02 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019022284
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020129631
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】北原 丈嗣
(72)【発明者】
【氏名】湯本 遼平
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027645(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03166140(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0026557(KR,A)
【文献】特開2003-078086(JP,A)
【文献】特開2009-158502(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02224484(EP,A1)
【文献】特開2018-137396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/13
H01L 23/36
H05K 1/02
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面に回路層が形成され、前記セラミックス基板の他方の面に金属層が形成された絶縁回路基板であって、
前記回路層は、前記セラミックス基板に形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1アルミニウム層と、前記第1アルミニウム層に固相拡散接合された銅又は銅合金からなる第1銅層と、を有し、
前記セラミックス基板は、第1分割溝により複数のセラミックス片に分割されるとともに、前記回路層は、第2分割溝により複数の回路パターンに分割され、
前記セラミックス基板の第1分割溝は、前記回路層の第2分割溝と重なって配置される重複部分と、前記第2分割溝とは異なる部位に前記重複部分を延長して形成される単独部分と、を有し、
前記単独部分においては、その分割溝に沿って前記第1アルミニウム層が分割され、前記第1銅層は、該分割溝上にまたがって配置されていることを特徴とする絶縁回路基板。
【請求項2】
前記第1分割溝は、前記セラミックス基板の辺に平行に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板。
【請求項3】
前記第1銅層の厚さは、0.8mm以上3.0mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁回路基板。
【請求項4】
セラミックス基板の一方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1アルミニウム層と、前記第1アルミニウム層に固相拡散接合された銅又は銅合金からなる第1銅層とからなる回路層が形成され、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第2アルミニウム層と、前記第2アルミニウム層に固相拡散接合された銅又は銅合金からなる第2銅層とからなる金属層が形成された絶縁回路基板の製造方法であって、
前記セラミックス基板の一方の面に前記第1アルミニウム層を接合するとともに、前記セラミックス基板の他方の面に前記第2アルミニウム層を接合した後、前記セラミックス基板を第1分割溝により分割して複数のセラミックス片を形成するとともに、前記第1分割溝の一部と重なって配置される第2分割溝により前記第1アルミニウム層を分割して複数のパターンを形成する分割工程と、
前記分割工程後に、複数の前記セラミックス片のそれぞれを前記第2銅層上に間隔を開けて配置するとともに、複数の前記セラミックス片の上面に前記第1銅層を重ねて積層体を形成し、前記積層体を加圧及び加熱することにより前記第1アルミニウム層及び前記第1銅層、並びに前記第2アルミニウム層及び前記第2銅層を固相拡散接合させる接合工程と、を備え、
前記分割工程における前記セラミックス基板を分割する前記第1分割溝は、前記第2分割溝と重なって配置される重複部分と、前記第2分割溝とは異なる部位に前記重複部分を延長して形成される単独部分と、を有し、
前記接合工程における前記第1銅層は、前記第1アルミニウム層の複数のパターンと同じ複数のパターンに分断されており、その少なくとも一つは、前記単独部分において、その分割溝上にまたがって配置されて接合されることを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール用基板等の絶縁回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁回路基板として、窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板からなる絶縁基板の一方の面に回路層が接合されるとともに、他方の面に金属層が接合されたパワーモジュール用基板が知られている。このようなパワーモジュール用基板において、回路層にはアルミニウム又は銅が用いられており、例えば、特許文献1に開示されているパワーモジュール用基板では、絶縁基板に接合された回路層及び金属層のそれぞれは、純度が99.99%以上の純銅で構成されている。このような銅は、熱的特性、電気的特性がアルミニウムより優れるが、変形抵抗が高い。このため、冷熱サイクルが負荷された際に、セラミックス基板と銅の回路層との間に大きな熱応力が生じ、セラミックス基板に割れを生じやすい。
【0003】
近年、セラミックス基板の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム層が接合され、その上面に銅又は銅合金からなる銅層が固相拡散接合された絶縁回路基板が用いられており、例えば、特許文献2では、パワーモジュール用基板の絶縁層(セラミックス基板)の一方の面に形成された回路層を、絶縁層の一方の面に配設されたアルミニウム層と、このアルミニウム層の一方側(絶縁層とは接合されていない面側)に積層された銅層との二重構造とし、銅に比べて変形抵抗の小さいアルミニウム層を絶縁層との間に介在させて熱応力を緩和している。このため、銅層の厚さを例えば、1.0mm以上とすることができ、低熱抵抗の絶縁回路基板とすることが可能となる。また、特許文献2の構成では、回路層の銅層の上に半導体素子が搭載されることから、回路層を二重構造とすることで、半導体素子で発生する熱を伝熱する際に、銅層において面方向に拡げて効率的に放散している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-221547号公報
【文献】国際公開第2013/147144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、応力緩衝機能を有するアルミニウム層を介して銅層を接合した場合であっても、銅層の厚さや銅層に形成されるパターンの形状によっては、銅層のパターン間に残留応力(引張応力)が生じるため、加熱時の反り変化によってセラミックス基板が割れることがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、セラミックス基板の割れを抑制できる絶縁回路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の絶縁回路基板は、セラミックス基板の一方の面に回路層が形成され、前記セラミックス基板の他方の面に金属層が形成された絶縁回路基板であって、前記回路層は、前記セラミックス基板に形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1アルミニウム層と、前記第1アルミニウム層に固相拡散接合された銅又は銅合金からなる第1銅層と、を有し、前記セラミックス基板は、第1分割溝により複数のセラミックス片に分割されるとともに、前記回路層は、第2分割溝により複数の回路パターンに分割され、前記セラミックス基板の第1分割溝は、前記回路層の第2分割溝と重なって配置される重複部分と、前記第2分割溝とは異なる部位に前記重複部分を延長して形成される単独部分と、を有し、前記単独部分においては、その分割溝に沿って前記第1アルミニウム層が分割され、前記第1銅層は、該分割溝上にまたがって配置されている。
【0008】
本発明では、回路層を複数の回路パターンに分割する第2分割溝とは異なる部位に第1分割溝の単独部分が形成され、当該単独部分においては第1アルミニウム層が分断されているので、複数の回路パターンに熱伸縮が生じても、セラミックス基板に熱応力が生じにくい。したがって、加熱時の反り変化によってセラミックス基板が割れることを抑制できる。
【0009】
本発明の絶縁回路基板の好ましい態様としては、前記第1分割溝は、前記セラミックス基板の辺に平行に形成されているとよい。
【0010】
上記態様では、第1分割溝がセラミックス基板の辺に平行に形成されているので、当該絶縁回路基板を製造するのが容易となる。
【0011】
本発明の絶縁回路基板の好ましい態様としては、前記第1銅層の厚さは、0.8mm以上3.0mm以下であるとよい。
【0012】
第1銅層の厚さが0.8mm未満であると、第2分割溝により分断された回路層の複数の回路パターンに生じる熱応力が小さいため、上記対策を施す必要性が乏しい。一方、第1銅層の厚さが3.0mmを超えると、複数の回路パターンに生じる熱応力が大きいため、第1アルミニウム層を介してセラミックス基板に固定されたとしても、各回路パターンの略中央においてセラミックス基板に割れが生じる可能性がある。
【0013】
本発明の絶縁回路基板の製造方法は、セラミックス基板の一方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1アルミニウム層と、前記第1アルミニウム層に固相拡散接合された銅又は銅合金からなる第1銅層とからなる回路層が形成され、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第2アルミニウム層と、前記第2アルミニウム層に固相拡散接合された銅又は銅合金からなる第2銅層とからなる金属層が形成された絶縁回路基板の製造方法であって、前記セラミックス基板の一方の面に前記第1アルミニウム層を接合するとともに、前記セラミックス基板の他方の面に前記第2アルミニウム層を接合した後、前記セラミックス基板を第1分割溝により分割して複数のセラミックス片を形成するとともに、前記第1分割溝の一部と重なって配置される第2分割溝により前記第1アルミニウム層を分割して複数のパターンを形成する分割工程と、前記分割工程後に、複数の前記セラミックス片のそれぞれを前記第2銅層上に間隔を開けて配置するとともに、複数の前記セラミックス片の上面に前記第1銅層を重ねて積層体を形成し、前記積層体を加圧及び加熱することにより前記第1アルミニウム層及び前記第1銅層、並びに前記第2アルミニウム層及び前記第2銅層を固相拡散接合させる接合工程と、を備え、前記分割工程における前記セラミックス基板を分割する前記第1分割溝は、前記第2分割溝と重なって配置される重複部分と、前記第2分割溝とは異なる部位に前記重複部分を延長して形成される単独部分と、を有し、前記接合工程における前記第1銅層は、前記第1アルミニウム層の複数のパターンと同じ複数のパターンに分断されており、その少なくとも一つは、前記単独部分において、その分割溝上にまたがって配置されて接合される。
【0014】
本発明では、第2分割溝により複数のパターンに分断された第1アルミニウム層及び第2アルミニウム層が接合されたセラミックス片を第2銅層上に配置し、その上に第1銅層を配置して、加圧及び加熱する方法で、これらを一体化できる。この場合、分割溝の配置のみ工夫すればよく、接合工程自体は、通常のアルミニウム及び銅の二層積層構造のものと同様であり、特別の設備を必要としない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路層の回路パターンに熱応力が生じることにより発生するセラミックス基板の割れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る複数の回路パターンが形成された絶縁回路基板を回路層側から見た図である。
図2図1に示す絶縁回路基板のA1-A1線に沿う矢視断面図である。
図3図1に示す絶縁回路基板のB1-B1線に沿う矢視断面図である。
図4図1に示す絶縁回路基板のC1-C1線に沿う矢視断面図である。
図5】上記実施形態における絶縁回路基板の製造方法を示す図である。
図6】上記実施形態の第1変形例における絶縁回路基板を回路層側から見た図である。
図7】上記実施形態の第2変形例における絶縁回路基板を回路層側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
[絶縁回路基板の概略構成]
図1は、本実施形態の複数の回路パターンが形成された絶縁回路基板1を回路層12側から見た平面図であり、図2は、絶縁回路基板1のA1-A1線に沿う矢視断面図であり、図3は絶縁回路基板1のB1-B1線に沿う矢視断面図であり、図4は、絶縁回路基板1のC1-C1線に沿う矢視断面図である。
【0019】
絶縁回路基板1は、図1に示すように、平面視で縦寸法70mm及び横寸法36mmの矩形状に形成されている。このような絶縁回路基板1は、図2~4に示すように、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に形成された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に形成された金属層13とを備えている。これら回路層12及び金属層13は、セラミックス基板11よりも若干小さい矩形板状に形成されている。
【0020】
セラミックス基板11は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)、アルミナ(Al)等からなるセラミックス材料により形成され、厚さが0.3mm~1.0mmとされている。また、セラミックス基板11は、平面視で矩形板状に形成され、回路層12及び金属層13のそれぞれよりも若干大きく形成されている。また、セラミックス基板11は、複数の第1分割溝L1により3つのセラミックス片101~103に分割されている。これら第1分割溝L1は、絶縁回路基板1の幅方向に沿って横断するように形成され、各第1分割溝L1は、相互に平行に形成されている。
【0021】
回路層12は、セラミックス基板11に形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1アルミニウム層121と、第1アルミニウム層121に固相拡散接合された銅又は銅合金からなる第1銅層122と、を有している。この回路層12は、第2分割溝L2により複数(3つ)の回路パターンP1~P3に分割されている。例えば、図1に示すように、矩形状の回路パターンP2と、回路パターンP2の三方を囲む回路パターンP1と、回路パターンP1の端部と間隔をあけて配置される矩形状の回路パターンP3とに、第2分割溝L2により分割されている。
【0022】
金属層13は、セラミックス基板11に形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第2アルミニウム層131と、第2アルミニウム層131に固相拡散接合された銅又は銅合金からなる第2銅層132と、を有している。これらのうち、第2アルミニウム層131は、セラミックス基板11とともに第1分割溝L1により分割されている。一方、第2銅層132は、第1分割溝L1及び第2分割溝L2のいずれにも分割されることがない。すなわち、1枚の銅板として存在している。
【0023】
また、第1アルミニウム層121及び第2アルミニウム層131の厚さは、0.2mm以上0.6mm以下に設定され、第1銅層122及び第2銅層132の厚さは、0.8mm以上3.0mm以下に設定されている。これらのうち、第1銅層122の厚さが0.8mm未満であると、第2分割溝L2により分断された回路層12の複数の回路パターンP1~P3に生じる熱応力が小さいため、上記対策を施す必要性が乏しい。一方、第1銅層122の厚さが3.0mmを超えると、複数の回路パターンP1~P3に生じる熱応力が大きいため、第1アルミニウム層121を介してセラミックス基板11に固定されたとしても、各回路パターンP1~P3の略中央においてセラミックス基板11に割れが生じる可能性がある。
【0024】
[第1分割溝の構成]
第1分割溝L1は、セラミックス基板11の辺に平行に形成されている。この第1分割溝L1は、例えば、図1の破線に示す位置に形成され、セラミックス基板11を3つのセラミックス片101~103に分割する。この第1分割溝L1は、回路層12を回路パターンP1と回路パターンP2とに分割する第2分割溝L2の一部と重なって配置されるとともに、回路層12を回路パターンP2と回路パターンP3とに分割する第2分割溝L2と重なっている。これらのうち、回路層12の第2分割溝L2と重なって配置される部分を重複部分L11とし、第2分割溝L2と重なっていない部分を単独部分L12とする。単独部分L12は、第2分割溝L2とは異なる部位に重複部分L11を延長して形成される。本実施形態では、図1図3に示すように、回路層12を回路パターンP1と回路パターンP2とに分割する第2分割溝L2の一部は、セラミックス基板11をセラミックス片101とセラミックス片102とに分割する第1分割溝L1の重複部分L11に重なって配置され、回路層12を回路パターンP1と回路パターンP3とに分割する第2分割溝L2は、セラミックス基板11をセラミックス片102とセラミックス片103とに分割する第1分割溝L1の重複部分L11に重なって配置されている。
【0025】
また、第1分割溝L1の単独部分L12においては、図3に示すように、その分割溝に沿って第1アルミニウム層121が分割され、第1銅層122は、該分割溝上にまたがって配置されている。すなわち、セラミックス基板11におけるセラミックス片101とセラミックス片102とを分割する第1分割溝L1上では、図3に示すように、セラミックス基板11、第1アルミニウム層121及び第2アルミニウム層131は、第1分割溝L1の単独部分L12により分割されているが、回路パターンP1を構成する第1銅層122は、単独部分L12において、分割されていない。
【0026】
[絶縁回路基板の製造方法]
次に、以上のように構成される絶縁回路基板1の製造方法について説明する。この製造方法は、セラミックス基板11にスクライブライン111を形成し、そのセラミックス基板11に各アルミニウム板121A,131Aを接合した後、複数のセラミックス片101~103に分割する分割工程と、分割工程後に第2銅板132A上に各セラミックス片101~103を配置し、その上に第1銅板122Aを重ねて積層体とし、この積層体を加圧加熱することにより接合する接合工程と、を備える(図5参照)。また、接合工程は、スクライブライン形成工程、アルミニウム層形成工程及び個片化工程と、を有している。
以下、各工程のそれぞれについて、工程順に説明する。
【0027】
[スクライブライン形成工程]
まず、図5(a)に示すように、セラミックス基板11(縦70mm×横36mm)の一方の面(回路層12が形成される側の面)に、各セラミックス片101~103を分割するためのスクライブライン111を形成する。このスクライブライン111は、例えば、レーザ光を照射することにより、セラミックス基板11の一方の面を線状に除去して形成される。これらスクライブライン111は、セラミックス基板11に形成される溝部であり、セラミックス基板11の分割の起点となる。なお、スクライブライン111の加工は、例えばCOレーザ、YAGレーザ、YVOレーザ、YLFレーザ等によっても加工可能である。
【0028】
[アルミニウム層形成工程]
次に、スクライブライン111が形成されたセラミックス基板11の一方の面に第1アルミニウム層121を形成し、他方の面に第2アルミニウム層131を形成する。具体的には、セラミックス基板11を洗浄液等により洗浄した後、第1アルミニウム層121となる第1アルミニウム板121Aを配置し、他方の面に第2アルミニウム層131となる第2アルミニウム板131Aを配置し、ろう材を介して接合した後、これらの積層体をカーボン板により挟持し、積層方向に荷重をかけながら真空中で加熱することにより、セラミックス基板11と各アルミニウム板121A,131Aを接合する。
【0029】
[個片化工程]
そして、図5(b)に示すように、セラミックス基板11をスクライブライン111により分割して複数のセラミックス片101~103とする。また、この際、第1分割溝L1の一部と重なって配置される第2分割溝L2により第1アルミニウム層121を分割して複数のパターンを、例えば、エッチング等により形成する。
なお、これら複数のパターン形成は、エッチングにより行うこととしたが、第2分割溝L2により予め複数のパターンに分断された第1アルミニウム板121Aを接合することにより形成してもよい。
【0030】
[接合工程]
分割工程後、複数のセラミックス片101~103を図5(c)に示すように、第2銅層132となる第2銅板132A上に間隔を開けて配置する。そして、複数のセラミックス片101~103の上面に第2分割溝L2により分割されて第1アルミニウム層121の複数のパターンと同形状の複数のパターンに分断された第1銅層122となる第1銅板122Aを配置する。この際、第1分割溝L1の単独部分L12においては、第1銅板122Aは、分割溝L1上にまたがって配置される。そして、この積層体を加圧及び加熱することにより第1アルミニウム板121A及び第1銅板122A、並びに第2アルミニウム板131A及び第2銅板132Aを固相拡散接合させて、絶縁回路基板1を製造する。
【0031】
本実施形態では、回路層12を複数の回路パターンに分割する第2分割溝L2とは異なる部位に第1分割溝L1の単独部分L12が形成され、当該単独部分L12においては第1アルミニウム層121が分断されているので、複数の回路パターンに熱伸縮が生じても、セラミックス基板11に熱応力が生じにくい。したがって、加熱時の反り変化によってセラミックス基板11が割れることを抑制できる。また、第1分割溝L1がセラミックス基板11の辺に平行に形成されているので、当該絶縁回路基板1を製造するのが容易となる。さらに、第1銅層の厚さが0.8mm以上3.0mm以下とされているので、セラミックス基板11に割れが生じる可能性を抑制できる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、第2分割溝L2により3つの回路パターンP1~P3に分割されることとしたが、これに限らず、回路パターンは、適宜変更できる。図6は、上記実施形態の第1変形例に係る絶縁回路基板1Aを回路層12A側から見た平面図である。
この絶縁回路基板1Aの回路層12Aは、図6に示すように、第2分割溝L2により複数(5つ)の回路パターンP4~P8に分割されている。例えば、図6に示すように、第2分割溝L2は、絶縁回路基板1Aの幅方向を直線で横断するものではなく、複数回屈曲したり、枠状に各回路パターンP6~P8を囲んだりする形状である。これら第2分割溝L2は、回路層12A(セラミックス基板11)の辺に平行に延びるとともに、複雑に入り組んでいる。このような第2分割溝L2により分断された回路パターンP6,P7,P8は、矩形状に形成されている。
【0033】
なお、第1分割溝L1は、第1実施形態の第1分割溝L1と同じ位置に配置され、これらの一部は、第2分割溝L2と重なっている。具体的には、回路層12Aを回路パターンP4と回路パターンP5とに分割する第2分割溝L2の一部と、セラミックス基板11をセラミックス片101とセラミックス片102とに分割する第1分割溝L1の重複部分L11とが重なって配置されている。また、回路層12Aを回路パターンP6,P7と回路パターンP5,P8とに分割する第2分割溝L2の一部と、セラミックス基板11をセラミック片102とセラミックス片103とに分割する第1分割溝L1の重複部分L11とが重なって配置されている。
【0034】
図7は、上記実施形態の第2変形例に係る絶縁回路基板1Bを回路層12B側から見た平面図である。
この絶縁回路基板1Bの回路層12Bは、図7に示すように、第2分割溝L2により複数(2つ)の回路パターンP9,P10に分割されている。例えば、図7に示すように、回路層12BにL字状に形成され、回路層12Bを矩形状の回路パターンP10と、矩形状の回路層12Bの一部を矩形状に切欠いた形状の回路パターンP9とに分割する第2分割溝L2が形成されている。この第2分割溝L2は、回路層12B(セラミックス基板11)の辺に平行に延びている。
【0035】
この第1分割溝L1は、セラミックス基板11を横方向に分断する直線状に形成され、その一部が、第2分割溝L2と重なっている。具体的には、回路層12Bを回路パターンP9と回路パターンP10とに分割する第2分割溝L2の横方向に延びる部分と、セラミックス基板11をセラミックス片101Bとセラミックス片102Bとに分割する第1分割溝L1の重複部分L11とが重なって配置されている。
【0036】
上述した第1変形例及び第2変形例のいずれにおいても、セラミックス基板11が分割されているので、回路層12A,12Bを複数の回路パターンに分割する第2分割溝L2とは異なる部位に第1分割溝L1の単独部分L12が形成され、当該単独部分L12においては第1アルミニウム層121が分断されているので、複数の回路パターンに熱伸縮が生じても、セラミックス基板11に熱応力が生じにくい。したがって、加熱時の反り変化によってセラミックス基板11が割れることを抑制できる。
【0037】
上記実施形態では、第1分割溝L1は、セラミックス基板11の辺に平行に形成されていることとしたが、これに限らない。セラミックス基板11の辺に交差する方向に形成されていてもよい。すなわち、セラミックス基板11の割れを抑制できれば、いずれの位置に形成されていてもよい。
【0038】
上記実施形態では、第1分割溝L1により、セラミックス基板11、第1アルミニウム層121及び第2アルミニウム層131が分割されていることとしたが、これに限らず、第2アルミニウム層131は、分割されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 1A 1B 絶縁回路基板
11 セラミックス基板
12 12A 12B 回路層
121 第1アルミニウム層
122 第1銅層
13 金属層
131 第2アルミニウム層
132 第2アルミニウム層
101 102 103 101A 102B セラミックス片
P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P8 P9 P10 回路パターン
L1 第1分割溝
L11 重複部分
L12 単独部分
L2 第2分割溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7