(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H01R13/11 A
(21)【出願番号】P 2019057807
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 有規
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-149504(JP,A)
【文献】特開2008-004342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11-13/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子と嵌合される雌端子であって、
底壁と、弾性接触片と、ガタつき抑制部と、を備え、
前記弾性接触片は、前記底壁から片持ち状に延出され、前記底壁側に変位することで前記雄端子に弾性的に接触し、
前記ガタつき抑制部は、前記雄端子が前記底壁側に変位した際に前記雄端子に接触可能とされて
おり、
前記弾性接触片が前記底壁側に変位した際に前記弾性接触片に接触することで前記弾性接触片の過度な撓みを規制する過度撓み規制部を備え、
前記ガタつき抑制部は、前記過度撓み規制部と一体に設けられている、雌端子。
【請求項2】
前記ガタつき抑制部は一対設けられており、
一対の前記ガタつき抑制部は、前記雄端子の嵌合方向および前記弾性接触片の変位方向の双方に直交する幅方向に間隔を空けて配されている、請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記弾性接触片は、前記ガタつき抑制部との干渉を防ぐ切り欠き部を有する、請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌端子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体部と、弾性接触片と、過度撓み規制板と、を備える雌端子金具が開示されている。雌端子金具は、雄端子金具に嵌合される。雄端子金具の先端には、タブが形成されている。
【0003】
本体部は前後方向に開口した角筒状をなしている。弾性接触片は、本体部内の底板側に設けられている。弾性接触片は、底板の先端縁から前方に延出された舌片が、本体部内に折り返されることによって形成されている。雄端子金具のタブは、本体部の前方の開口から本体部内に挿通される。タブが挿通されると、弾性接触片は接点部を介してタブと接触する。これにより、弾性接触片は底板側に弾性変形する。
【0004】
過度撓み規制板は、底板を切り起こすことにより形成されている。過度撓み規制板は、弾性接触片における接点部の裏側に位置している。過度撓み規制板を設けることにより、弾性接触片が底板側に過度に撓むことが規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
雌端子金具に雄端子金具が嵌合された状態で振動が生じると、タブが弾性接触片を底板側に押すこととなる。弾性接触片は、弾性接触片の下面と過度撓み規制板との間で変位できるため、その間においてタブはガタつくこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の雌端子は、雄端子と嵌合される雌端子であって、底壁と、弾性接触片と、ガタつき抑制部と、を備え、前記弾性接触片は、前記底壁から片持ち状に延出され、前記底壁側に変位することで前記雄端子に弾性的に接触し、前記ガタつき抑制部は、前記雄端子が前記底壁側に変位した際に前記雄端子に接触可能とされている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、タブのガタつきを抑える雌端子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる雌端子の斜視図である。
【
図2】
図2は、底面から見た雌端子の斜視図である。
【
図6】
図6は、雄端子と嵌合された状態における雌端子の斜視図である。
【
図7】
図7は、雄端子と嵌合された状態における雌端子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の雌端子は、
(1)雄端子と嵌合される雌端子であって、底壁と、弾性接触片と、ガタつき抑制部と、を備え、前記弾性接触片は、前記底壁から片持ち状に延出され、前記底壁側に変位することで前記雄端子に弾性的に接触し、前記ガタつき抑制部は、前記雄端子が前記底壁側に変位した際に前記雄端子に接触可能とされている。
雄端子が底壁側に変位すると、雄端子はガタつき抑制部に接触することとなる。これにより、雄端子が底壁側に変位してガタつくことを抑制できる。
【0011】
(2)また、前記ガタつき抑制部は一対設けられており、一対の前記ガタつき抑制部は、前記雄端子の嵌合方向および前記弾性接触片の変位方向の双方に直交する幅方向に間隔を空けて配されていることが好ましい。
一対のガタつき抑制部は、幅方向に間隔を空けて一対配されていることから、雄端子が捻回しようとすると、一対のガタつき抑制部のうち、一方のガタつき抑制部が雄端子に接触することとなる。これにより、雄端子が捻回することを抑制できる。
【0012】
(3)また、前記弾性接触片が前記底壁側に変位した際に前記弾性接触片に接触することで前記弾性接触片の過度な撓みを規制する過度撓み規制部を備え、前記ガタつき抑制部は、前記過度撓み規制部と一体に設けられており、前記弾性接触片は、前記ガタつき抑制部との干渉を防ぐ切り欠き部を有することが好ましい。
弾性接触片が底壁側に変位した際に、弾性接触片が過度撓み規制部に接触することとなる。これにより、弾性接触片が過度に撓むことを抑制できる。また、弾性接触片が切り欠き部を有することで、ガタつき抑制部が弾性接触片に干渉することを防ぎつつ、ガタつき抑制部を過度撓み規制部と一体に設けることができる。例えば雌端子のサイズの制約上、過度撓み規制部とガタつき抑制部を別々の箇所に設けることが困難な場合においても、過度撓み規制部およびガタつき抑制部の双方を1つの箇所に設けることができる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の雌端子10の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
雌端子10は、
図1に示すように、本体部12と、電線接続部13と、を備えている。本体部12の内部には、
図4に示すように、弾性接触片14と、過度撓み規制部16と、が設けられている。
図8に示すように、雌端子10に嵌合される雄端子20はタブ22を備えている。タブ22は、前後方向(雄端子20の嵌合方向)に長い板状をなしている。
【0015】
図1に示すように、本体部12は、前後方向に長い角筒状をなしている。
図4に示すように、本体部12は、前後方向に開口している。本体部12は、上下方向に対向する天井壁24および底壁26と、左右方向に対向する一対の側壁28と、を備えて構成されている。天井壁24は一対の側壁28の上縁同士を連結している。一方、底壁26は一対の側壁28の下縁同士を連結している。本体部12の後方には、電線(図示せず)に接続される電線接続部13が設けられている。電線接続部13は、本体部12の底壁26から後方に連なっている。
【0016】
図4に示すように、弾性接触片14は、本体部12における底壁26の前端から後方に折り返されて片持ち状に延出されている。弾性接触片14は、下方(底壁26側)に弾性変位することが可能とされる。
図5に示すように、弾性接触片14には、一対の切り欠き部14Aが設けられている。一対の切り欠き部14Aは、弾性接触片14における両側縁の後部から後端縁にかけてL字状に形成されている。すなわち、切り欠き部14Aは、弾性接触片14の後端における両角部を切り欠いた形状をなしている。
図3、
図4に示すように、弾性接触片14には、接点部14Bが設けられている。接点部14Bは、弾性接触片14の上面から上方に突出している。
【0017】
図3に示すように、天井壁24には一対のビード部24Aが設けられている。一対のビード部24Aは、左右方向(雄端子20の嵌合方向および弾性接触片14の変位方向の双方に直交する幅方向)に間隔を空けて配されている。ビード部24Aは、天井壁24の下面から下方に突出している。また、
図4に示すように、ビード部24Aは前後方向に長い形状をなしている。
【0018】
図6、
図7に示すように、雄端子20におけるタブ22は、本体部12における前方の開口から本体部12内に挿通される。
図8に示すように、雌端子10に雄端子20が嵌合されると、弾性接触片14における接点部14Bは、タブ22に下方から弾性的に接触する。これにより、タブ22は上方に押されてビード部24Aに接触し、雄端子20と雌端子10とは電気的に接続される。
【0019】
図2、
図4に示すように、過度撓み規制部16は、底壁26の一部を上方に切り起こすことによって形成されている。
図5に示すように、過度撓み規制部16は左右一対設けられている。一対の過度撓み規制部16の一部は、弾性接触片14の下面と対向している。これにより、例えば、雌端子10に雄端子20が嵌合される際に、雄端子20が傾いた状態で本体部12内に挿通されたとする。このとき、タブ22は弾性接触片14に強く接触するとともに、弾性接触片14は下方に大きく変位する。弾性接触片14が下方へ変位すると、弾性接触片14の下面は一対の過度撓み規制部16に接触し、弾性接触片14がさらに下方に変位することが阻止される。したがって、弾性接触片14が過度に撓むことを抑制できる。
【0020】
図4に示すように、過度撓み規制部16にはガタつき抑制部18が設けられている。
図5に示すように、ガタつき抑制部18は左右一対設けられている。
図4に示すように、一対のガタつき抑制部18は、一対の過度撓み規制部16と一体に設けられている。ガタつき抑制部18は、過度撓み規制部16の上端から上方に突出している。
図5に示すように、ガタつき抑制部18の一部は、弾性接触片14の切り欠き部14A内(
図5における点線Rの範囲内)に位置している。
【0021】
図8、
図9に示すように、雄端子20および雌端子10が嵌合された状態において、ガタつき抑制部18は、タブ22の下面と対向している。例えば、振動等により雄端子20が上下方向に揺れ動くと、タブ22は、弾性接触片14を下方に押しつつ、ガタつき抑制部18に接触することとなる。これにより、タブ22がさらに下方へ変位することが阻止される。したがって、タブ22の上下方向の振れ幅は、ガタつき抑制部18を設けない場合と比較して小さくなることから、タブ22のガタつきを抑えることができる。タブ22のガタつきが抑えられることによって、振動環境下においてタブ22と弾性接触片14とが摺動することにより、弾性接触片14が摩耗することを抑制できる。このため、雄端子20と雌端子10との間の接続信頼性を確保できる。
【0022】
弾性接触片14に切り欠き部14Aを設けることによって、ガタつき抑制部18が弾性接触片14に干渉することを防ぎつつ、ガタつき抑制部18を過度撓み規制部16と一体に設けることができる。例えば、弾性接触片14に切り欠き部14Aを設けない構成とすると、ガタつき抑制部を弾性接触片と干渉しない位置に設ける必要がある。すなわち、ガタつき抑制部を
図5に示す点線Rの範囲の外側(例えば、弾性接触片の両側方または後方)に設ける必要がある。かかる場合、ガタつき抑制部と過度撓み規制部を別々の箇所に設ける必要がある。したがって、切り欠き部14Aを設けることによって、例えば雌端子10のサイズの制約上、過度撓み規制部16とガタつき抑制部18を別々の箇所に設けることが困難な場合においても、過度撓み規制部16およびガタつき抑制部18の双方を1つの箇所に設けることができる。
【0023】
図9に示すように、雄端子20が矢線Dに示す回転方向に捻回しようとすると、タブ22は、一対のガタつき抑制部18のうち左側のガタつき抑制部18に接触することとなる。これにより、雄端子20の回転は阻止される。また、雄端子20が矢線Dに示す回転方向とは逆の方向に捻回しようとすると、タブ22は、一対のガタつき抑制部18のうち右側のガタつき抑制部18に接触することとなる。これにより、雄端子20の回転は阻止される。以上により、一対のガタつき抑制部18によって、雄端子20が捻回することを抑制できる。
【0024】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、弾性接触片14は底壁26の前端から後方に片持ち状に延出される構成としたが、これに限られることはなく、例えば、弾性接触片は底壁の後端側から前方に片持ち状に延出される構成としても良い。
【0025】
(2)上記実施形態では、ガタつき抑制部18は過度撓み規制部16と一体に設けられる構成としたが、これに限られることはなく、例えば、ガタつき抑制部は過度撓み規制部と別体に設けられる構成としても良い。
【0026】
(3)上記実施形態では、弾性接触片14は切り欠き部14Aを有する構成としたが、これに限られることはなく、例えば、弾性接触片は切り欠き部を有しない構成としても良い。この場合、ガタつき抑制部は弾性接触片と干渉しない位置(例えば、弾性接触片の両側方または後方)に設けられる。
【0027】
(4)上記実施形態では、過度撓み規制部16は左右一対設けられる構成としたが、例えば、過度撓み規制部は左右のいずれか一方にのみ設けられる構成としても良い。また、ガタつき抑制部18は左右一対設けられる構成としたが、これに限られることはなく、例えば、ガタつき抑制部は左右のいずれか一方にのみ設けられる構成としても良い。
【0028】
(5)上記実施形態では、過度撓み規制部16およびガタつき抑制部18は底壁26から切り起こされる構成としたが、これに限られることはなく、例えば、過度撓み規制部およびガタつき抑制部は、側壁から切り起こされる構成としても良い。また、過度撓み規制部およびガタつき抑制部は、本体部とは別体の部品により構成されることとしても良い。
【符号の説明】
【0029】
10:雌端子
12:本体部
13:電線接続部
14:弾性接触片
14A:切り欠き部
14B:接点部
16:過度撓み規制部
18:ガタつき抑制部
20:雄端子
22:タブ
24:天井壁
24A:ビード部
26:底壁
28:側壁