(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】負荷駆動装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/325 20200101AFI20220928BHJP
【FI】
H05B45/325
(21)【出願番号】P 2019060957
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 和則
(72)【発明者】
【氏名】杉本 恵一
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006187(JP,A)
【文献】特開2010-244815(JP,A)
【文献】特開2014-079043(JP,A)
【文献】特表2014-502411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動指示信号が入力されると、電源電圧に基づいて
制限抵抗(61b、62b)と所定の段数を有する発光ダイオード
(61a、62b)とが直列接続された負荷(60)の駆動を行う負荷駆動装置であって、
前記電源電圧を検出する電圧検出部(23)と、
前記発光ダイオードの電圧降下幅の電圧依存性のデータを記憶した記憶部(25)と、
前記駆動指示信号が入力されると、前記電圧検出部での電圧検出結果と前記記憶部に記憶された前記電圧依存性のデータとに基づいて、駆動信号のデューティ比を算出する制御部(21)と、
前記制御部で算出された前記デューティ比で前記駆動信号を出力する負荷駆動出力部(22)と、
前記駆動信号に基づいて前記デューティ比に応じたオンオフ駆動がなされることで前記電源電圧を前記負荷に対して印加し、前記発光ダイオードによる照明が行われるようにする駆動デバイス(50)と、を有し、
前記記憶部は、前記電圧依存性のデータとして、前記発光ダイオードの電圧降下幅をVf、前記電圧依存性をΔVfv、前記発光ダイオードを一定の照度とする際の目標電圧をVxを記憶しており、
前記制御部は、前記電源電圧をVBとして、前記デューティ比Tiを、
Ti=(Vx-Vf)/{VB-Vf-ΔVfv(VB-Vx)}
で表される数式により算出することを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項2】
駆動指示信号が入力されると、電源電圧に基づいて
制限抵抗(61b、62b)と所定の段数を有する発光ダイオード
(61a、62b)とが直列接続された負荷(60)の駆動を行う負荷駆動装置であって、
前記電源電圧を検出する電圧検出部(23)と、
前記発光ダイオードの電圧降下幅の電圧依存性のデータを記憶した記憶部(25)と、
前記駆動指示信号が入力されると、前記電圧検出部での電圧検出結果と前記記憶部に記憶された前記電圧依存性のデータとに基づいて、駆動信号のデューティ比を算出する制御部(21)と、
前記制御部で算出された前記デューティ比で前記駆動信号を出力する負荷駆動出力部(22)と、
前記駆動信号に基づいて前記デューティ比に応じたオンオフ駆動がなされることで前記電源電圧を前記負荷に対して印加し、前記発光ダイオードによる照明が行われるようにする駆動デバイス(50)と、を有し、
前記記憶部は、前記電圧依存性のデータとして、前記発光ダイオードの電圧降下幅をVf、前記電圧依存性をΔVfv、前記発光ダイオードを一定の照度とする際の目標電圧をVx、前記発光ダイオードの段数をnとして記憶しており、
前記制御部は、前記電源電圧をVBとして、前記デューティ比Tiを、
Ti=(Vx-nVf)/{VB-nVf-ΔVfv(VB-Vx)}
で表される数式により算出することを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項3】
周辺温度を検出する温度検出部(24)を有し、
前記記憶部は、前記発光ダイオードの温度依存性のデータも記憶しており、
前記制御部は、
前記駆動指示信号が入力されると、前記電圧検出部での電圧検出結果と前記記憶部に記憶された前記電圧依存性のデータに加えて、前記温度依存性のデータに基づいて、前記駆動信号のデューティ比を算出しており、
前記温度依存性をΔVft、前記周辺温度をTx、前記発光ダイオードを一定の照度とする際の目標温度をTaとして、
前記デューティ比を算出するための前記数式のうちの分母を、さらにΔVf
t(
Ta-Tx)を差し引いた値として、前記デューティ比Tiを算出することを特徴とする請求項1または2に記載の負荷駆動装置。
【請求項4】
前記負荷に対応して1つずつ備えられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の負荷駆動装置。
【請求項5】
異なる段数の前記発光ダイオードで構成された複数の前記負荷の駆動に用いられ、
前記駆動デバイスが複数の前記負荷それぞれに対応した数備えられ、
前記記憶部は、複数の前記負荷ごとに前記データを記憶しており、
前記制御部は、複数の前記負荷ごとに前記デューティ比Tiを算出し、複数の前記負荷と算出した前記デューティ比Tiとを紐付けして前記負荷駆動出力部に出力し、
前記負荷駆動出力部は、複数の前記負荷ごとに、紐付けられた前記デューティ比Tiで前記駆動信号を出力することで、対応する前記駆動デバイスをオンオフ駆動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の負荷駆動装置。
【請求項6】
異なる段数の前記発光ダイオードで構成された複数の前記負荷の駆動に用いられ、
前記負荷駆動出力部および前記駆動デバイスが複数の前記負荷それぞれに対応した数備えられ、
前記記憶部は、複数の前記負荷ごとに前記データを記憶しており、
前記制御部は、複数の前記負荷ごとに前記デューティ比Tiを算出し、複数の前記負荷のうち対応する前記負荷の駆動に用いられる前記負荷駆動出力部に対して該負荷と対応する前記デューティ比Tiを出力し、
前記負荷駆動出力部は、前記デューティ比Tiで前記駆動信号を出力することで、対応する前記駆動デバイスをオンオフ駆動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の負荷駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(以下、LED:light emitting diodeという)で構成されるLED照明などのLED負荷の駆動を行う負荷駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、フィラメントタイプのランプを負荷として、負荷の駆動を行う負荷駆動回路が開示されている。この負荷駆動回路は、ランプに印加される電源電圧から算出されたデューティ比でランプを駆動することで、ランプの照度が一定範囲内となるようにし、ランプのちらつきを防止している。
【0003】
一方、特許文献2において、LED負荷を駆動する駆動装置において、特許文献1と同様に、電源電圧から算出されたデューティ比でLEDを駆動することにより、ちらつきを防止する技術が提案されている。この駆動装置では、LEDの順方向での電圧降下幅をVf[V]、電源電圧をVB[V]とし、デューティ比を100%として目標電圧Vx[V]でLEDを駆動した場合の照度となるようにするデューティ比をTiを次式に基づいて設定している。なお、LEDの順方向での電圧降下幅Vf[V]については、メモリなどに予め記憶した固定値としている。
【0004】
(数1)
Ti=(Vx-Vf)/(VB―Vf)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-119236号公報
【文献】特開2018-6187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LEDの場合、ダイオード特性の影響を受けるため、特許文献1のように、単にLEDに印加される電源電圧に基づいてデューティ比を算出したとしても、ちらつき防止を的確に行うことができない。
【0007】
また、特許文献2のように電源電圧VB[V]と予め固定値として記憶しておいた電圧降下幅Vf[V]のみによってデューティ比を設定しても、実際には、LEDでの降下電圧はLEDの段数や電圧温度依存性を有しているため、適切なデューティ比を設定できない。このため、段数の異なる複数のLEDによるLEDランプを負荷として有している場合に、照度を一定に保つことができなかった。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、LEDで構成されるLED負荷を駆動する負荷駆動装置において、段数の異なる複数のLEDでLED負荷が構成されていても、ちらつきを抑制することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、駆動指示信号が入力されると、電源電圧に基づいて制限抵抗(61b、62b)と所定の段数を有する発光ダイオード(61a、62b)とが直列接続された負荷(60)の駆動に用いられる負荷駆動装置であって、電源電圧を検出する電圧検出部(23)と、LEDの電圧降下幅の電圧依存性のデータを記憶した記憶部(25)と、駆動指示信号が入力されると、電圧検出部での電圧検出結果と記憶部に記憶された電圧依存性のデータとに基づいて、駆動信号のデューティ比を算出する制御部(21)と、制御部で算出されたデューティ比で駆動信号を出力する負荷駆動出力部(22)と、駆動信号に基づいてデューティ比に応じたオンオフ駆動がなされることで電源電圧を負荷に対して印加し、LEDによる照明が行われるようにする駆動デバイス(50)と、を有し、記憶部は、電圧依存性のデータとして、LEDの電圧降下幅をVf、電圧依存性をΔVfv、LEDを一定の照度とする際の目標電圧をVxを記憶しており、制御部は、電源電圧をVBとして、デューティ比Tiを、後述する数式3により算出することを特徴としている。
【0010】
このように、負荷駆動装置に駆動対象となるLED負荷の特性を記憶してあり、電源電圧の変動に対応した電圧降下幅の変化量を加味してデューティ比Tiを算出している。これにより、複数のLED負荷がLEDの段数が異なったものとされていても、ちらつきを抑制することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、記憶部は、電圧依存性のデータとして、LEDの電圧降下幅をVf、電圧依存性をΔVfv、LEDを一定の照度とする際の目標電圧をVx、LEDの段数をnとして記憶しており、制御部は、電源電圧をVBとして、デューティ比Tiを、後述する数式4により算出することを特徴としている。
【0012】
このように、電源電圧VBの変動に対応した電圧降下幅の変化量に加えてLEDの段数を加味してデューティ比Tiを算出することで、ちらつきを更に抑制することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、周辺温度を検出する温度検出部(24)を有し、記憶部は、LEDの温度依存性のデータも記憶しており、制御部は、駆動指示信号が入力されると、電圧検出部での電圧検出結果と記憶部に記憶された電圧依存性のデータに加えて、温度依存性のデータに基づいて、駆動信号のデューティ比を算出しており、温度依存性をΔVft、周辺温度をTx、LEDを一定の照度とする際の目標温度をTaとして、デューティ比を算出するための数式のうちの分母を、さらにΔVft(Ta-Tx)を差し引いた値として、デューティ比Tiを算出することを特徴としている。
【0014】
このように、電源電圧の変動やLEDの段数に加えて、温度の変動に対応した電圧降下幅の変化量を加味してデューティ比Tiを算出することができる。このようにすれば、一層ちらつきを抑制することが可能となる。
【0015】
上記請求項1ないし3に記載の負荷駆動装置は、例えば、請求項4に記載したように、負荷に対応して1つずつ備えられるようにすることができる。
【0016】
また、上記請求項1ないし3に記載の負荷駆動装置は、請求項5または6に記載したように、異なる段数のLEDで構成された複数の負荷の駆動に用いられる共通のものとされても良い。
【0017】
その場合、請求項5に示したように、駆動デバイスを複数の負荷それぞれに対応した数備え、記憶部にて、複数の負荷ごとにデータを記憶し、制御部にて、複数の負荷ごとにデューティ比Tiを算出し、複数の負荷と算出したデューティ比Tiとを紐付けして負荷駆動出力部に出力すると共に、負荷駆動出力部にて、複数の負荷ごとに、紐付けられたデューティ比Tiで駆動信号を出力することで、対応する駆動デバイスをオンオフ駆動することができる。
【0018】
また、請求項6に示したように、負荷駆動出力部および駆動デバイスを複数の負荷それぞれに対応した数備え、記憶部にて、複数の負荷ごとにデータを記憶し、制御部にて、複数の負荷ごとにデューティ比Tiを算出し、複数の負荷のうち対応する負荷の駆動に用いられる負荷駆動出力部に対して該負荷と対応するデューティ比Tiを出力すると共に、負荷駆動出力部にて、デューティ比Tiで駆動信号を出力することで、対応する駆動デバイスをオンオフ駆動することができる。
【0019】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態にかかる負荷駆動装置のブロック構成を示した図である。
【
図2A】LEDが1段の場合のLED負荷の回路図である。
【
図2B】LEDが3段の場合のLED負荷の回路図である。
【
図3】電源電圧の変動に対する電流変化量の関係をLED負荷を構成するLEDの段数を変えて調べた結果を示す図である。
【
図4】周辺温度の変動に対する電流変化量の関係をLED負荷を構成するLEDの段数を変えて調べた結果を示す図である。
【
図5】第2実施形態にかかる負荷駆動装置のブロック構成を示した図である。
【
図6】第3実施形態にかかる負荷駆動装置のブロック構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる負荷駆動装置について説明する。
図1は、負荷駆動装置10のブロック構成を示した図である。この図を参照して、まず負荷駆動装置10の構成について説明する。なお、本実施形態では、LED負荷毎に負荷駆動装置10が備えられる形態について説明する。
図1は、そのうちの1つのLED負荷に対して備えられた負荷駆動装置10のみを示しているが、各負荷駆動装置10は同じ構成とされている。
【0023】
図1に示す負荷駆動装置10は、複数備えられるLED負荷60ごとに備えられ、制御用の集積回路(以下、制御ICという)20、電圧検出回路30、温度検出回路40および駆動デバイス50を備えた構成とされている。
【0024】
制御IC20は、例えばCPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータで構成され、所定の電圧(例えば5V)で駆動される。本実施形態の場合、制御IC20は、制御部21、負荷駆動出力部22、電圧検出部23、温度検出部24、不揮発性メモリ25等を有し、駆動指示信号に基づいてLED負荷60を駆動する。
【0025】
制御部21は、例えば車両からの駆動指示信号に基づいてデューティ比を算出し、LED負荷を駆動するために、算出されたデューティ比を示す制御信号を負荷駆動出力部22に出力するものである。具体的には、制御部21は、電圧検出部23での電圧検出結果、温度検出部24での温度検出結果、および、不揮発性メモリ25に記憶されている各種データに基づいて、デューティ比を設定している。なお、このデューティ比の算出方法の詳細については後述する。
【0026】
負荷駆動出力部22は、制御部21で算出されたデューティ比に応じて駆動デバイス50をオンオフ駆動するための駆動信号を出力することで、LED負荷60を駆動する。後述するように、駆動デバイス50は、スイッチング素子によって構成されるため、負荷駆動出力部22は、駆動デバイス50を構成するスイッチング素子を駆動するための所定のデューティ比とされた電圧もしくは電流を駆動信号として出力する。
【0027】
電圧検出部23は、電圧検出回路30で検出された電源電圧VBと対応するモニタ電圧Vsをデジタル値に変換することで電源電圧VBを検出するものであり、AD変換回路などによって構成されている。制御IC20の入力許容電圧が5V以下となっていることから、上記した電圧検出回路30にて、電源電圧VBが5V以下まで分圧されてモニタ電圧Vsが生成されるようになっている。電圧検出部23は、この電圧検出回路30で生成されたアナログ値で示されるモニタ電圧Vsをデジタル値に変換し、それを制御部21に入力している。
【0028】
温度検出部24は、温度検出回路40から伝えられる周辺温度に応じた温度検出信号を入力し、それをデジタル値に変換するものであり、AD変換回路などによって構成されている。
【0029】
不揮発性メモリ25は、記憶部に相当し、制御IC20に内蔵されたROM等を構成するフラッシュメモリ等の非遷移有形記録媒体であり、各種データが記憶されていて制御部21で読み出せるようになっている。具体的には、不揮発性メモリ25は、LED負荷60の特性として、Vf[V]、Vx[V]、Tx[℃]、ΔVfv[V/V]、ΔVft[V/℃]を記憶している。Vfは、LEDの順方向での電圧降下幅である。Vxは、LED負荷60の照度を一定とする際の目標電圧であり、目標電圧Vxでデューティ比100%駆動したときの照度で一定とすることを想定している。Txは、LED負荷60の照度を一定とする目標温度であり、目標温度Txでデューティ比100%駆動したときの照度で一定とすることを想定している。ΔVfvは、Vfの電圧依存性、つまり電源電圧が1V変動したときのVfの変化量である。ΔVftは、Vfの温度依存性、つまり周辺温度が1℃変動したときのVfの変化量である。
【0030】
なお、本実施形態の場合、不揮発性メモリ25に記憶されるLED負荷60の特性は、負荷駆動装置10の駆動対象となるLED負荷60のものである。このため、各負荷駆動装置10の不揮発性メモリ25には、駆動するLED負荷60に対応する特性がそれぞれ別々に記憶されている。
【0031】
電圧検出回路30は、電源電圧VBを電源電圧VBに対応するモニタ電圧Vsに変換し、それを電圧検出部23に入力するものである。例えば、電圧検出回路30は、分圧抵抗によって構成され、分圧抵抗によって電源電圧VBを分圧してモニタ電圧Vsを生成している。電圧検出回路30が生成するモニタ電圧Vsは、制御IC20への入力許容電圧、例えば5V以下とされている。
【0032】
温度検出回路40は、温度センサなどで構成され、周辺温度に応じた温度検出信号を温度検出部24に入力するものである。ここでいう周辺温度とは、駆動対象となるLED負荷60の温度と相関があるLED負荷60の周囲の温度のことである。LED負荷60の温度を直接測定できると好ましいが、直接測定することが難しいことから、温度検出回路40によってLED負荷60の周辺温度を測定し、それをLED負荷60の温度としている。勿論、周辺温度をそのままLED負荷60の温度とせずに、例えばその温度に対して所定の係数を掛けて補正したり、予め実験によって調べておいた相関図を用いて周辺温度と対応するLED負荷60の温度を求めたりするようにして、LED負荷60の温度がより正確に求められるようにしても良い。例えば、温度センサは、多段に並べられたダイオードで構成され、温度特性によってダイオードの順方向での電圧降下幅Vfが変化することに基づいて、周辺温度に応じた温度検出信号を出力する。
【0033】
駆動デバイス50は、負荷駆動出力部22からの駆動信号に基づいてLED負荷60を駆動する駆動電流を供給するものである。例えば、駆動デバイス50は、MOSFET、トランジスタ、IPD(インテリジェントパワーデバイス)などによって構成される。駆動デバイス50が駆動信号に基づいてデューティ駆動されることで、LED負荷60に対して供給される駆動電流の平均電流値がLED負荷60の照度を一定とする値に制御されるようになっている。
【0034】
LED負荷60は、駆動デバイス50がデューティ駆動されることでLED照明を行うものである。具体的には、LED負荷60は、駆動デバイス50がオンされたときに電源電圧VBが印加されることでLED照明を行う。LED照明の照度はLED負荷60に供給される平均電流値、つまり単位時間当たりの電流値の大きさに応じて変化し、平均電流値が大きいほど照度が高くなる。そして、駆動デバイス50の駆動電流のデューティ比に応じて平均電流値が可変となることから、制御部21で設定されるデューティ比に基づいて、LED負荷60の照度が調整されるようになっている。
【0035】
図1ではLED負荷60を1つのみ示してあるが、実際には段数が異なる複数のLED負荷60が備えられており、本実施形態の場合は、その1つ1つが別々の負荷駆動装置10によって駆動される。
図2Aでは、LED負荷60として第1負荷61を備えた構成、
図2Bでは、LED負荷60として第2負荷62を備えた構成をそれぞれ図示してある。第1負荷61と第2負荷62は、それぞれ備えられるLED61aの段数とLED62aの段数が異なっている。また、第1負荷61にはLED61aに対して制限抵抗61bが直列接続され、第2負荷62にはLED62aに対して制限抵抗62bが直列接続されている。このため、各LED61a、62aに過大な電流が流れないように電流制限がなされている。
【0036】
以上のようにして、本実施形態にかかる負荷駆動装置10が構成されている。続いて、本実施形態の負荷駆動装置10の作動について説明する。
【0037】
図1に示した負荷駆動装置10は、例えば車両からの駆動指示信号に基づいて駆動される。例えば、ユーザが車両に備えられている照明点灯スイッチをオフからオンに切り替えると、それに伴ってLED負荷60を駆動してLED照明を点灯させるための駆動指示信号が負荷駆動装置10に入力される。これにより、制御部21において、電圧検出部23での電圧検出結果や温度検出部24での温度検出結果および不揮発性メモリ25に記憶されている各種データに基づいてデューティ比が設定され、負荷駆動出力部22よりそのデューティ比とされた電圧もしくは電流の駆動信号が出される。これにより、駆動デバイス50が駆動信号に基づいてデューティ駆動され、LED負荷60が駆動されて、LED照明が点灯させられる。
【0038】
ここで、制御部21によるデューティ比の算出方法の詳細について説明する。
【0039】
上記したように、制御部21は、電圧検出部23での電圧検出結果や温度検出部24での温度検出結果および不揮発性メモリ25に記憶されている各種データに基づいて、次式よりデューティ比Tiを算出している。
【0040】
(数2)
Ti=(Vx-nVf)/
{VB-nVf-ΔVfv(VB-Vx)-ΔVft(Ta-Tx)}
LED負荷60は、構成されるLEDの段数によって、電源電圧VBが同じ電圧値であったとしても、LEDに流れる電流値が変化する。
図3は、
図2に示したように、LED61aを1段とした第1負荷61とLED62aを3段とした第2負荷62それぞれについて、電源電圧VBを変化させたときの電流変化量を測定した結果を示している。ここでは電源電圧VBが13Vのときを基準として、そこからの電流変化量を図示してある。また、
図4は、LED61aを1段とした第1負荷61とLED62aを3段とした第2負荷62それぞれについて、周辺温度Taを変化させたときの電流変化量を測定した結果を示している。ここでは周辺温度Taを車両の使用環境として-30℃~80℃を想定し、-30℃のときを基準として、そこからの電流変化量を図示してある。
【0041】
これらの図に示されるように、1段のLED61aの場合と、3段のLED62aの場合とで、電源電圧VBの変化や周辺温度Taの変化に対する電流変化量の傾きが異なっている。このように、電源電圧VBや周辺温度Taが変動した場合、電流変化量が変わることから、単に電源電圧VBを検出して上記した数式1を用いてデューティ比Tiを算出したとしても、LEDの段数や電源電圧VBや周辺温度Taが変動した場合に対応することができない。
【0042】
このため、本実施形態では、上記した数式2に基づき、LEDの段数や電源電圧VBや周辺温度Taが変動した場合を加味したデューティ比Tiが算出されるようにしている。
【0043】
具体的には、各項におけるVfに対して段数nを掛け合わせることで、段数に応じた電圧降下幅としている。また、電源電圧VBと目標電圧Vxとの差に対してΔVfvを掛け合わせることで、電源電圧VBと目標電圧Vxとの間に電圧差が有る場合に、その電圧差に対応する電圧降下幅の変化量が得られる。同様に、周辺温度Taと目標温度Txとの差に対してΔVftを掛け合わせることで、周辺温度Taと目標温度Txとの間に温度差が有る場合に、その温度差に対応する電圧降下幅の変化量が得られる。したがって、目標電圧VxからLEDの段数に対応する電圧降下幅Vfを差し引き、それを電源電圧VBからLEDの段数に対応する電圧降下幅Vfと電圧差や温度差に対応する電圧降下幅の変化量を差し引いた値で割ることで、デューティ比Tiを算出している。
【0044】
なお、このデューティ比Tiについては、第1負荷61、第2負荷62それぞれに対して算出され、目標電圧Vxについては同じ電圧とされる。例えば、法規においては、LED寿命などを考慮して、13.5Vの電圧でデューティ比100%でLED駆動を行った場合を上限として、それ以下の電圧でLED駆動を行うことが決められている。このため、例えばそれ以下となる13.0Vを目標電圧Vxとして設定している。そして、電源電圧VBが目標電圧Vxより大きい場合であれば、その電圧差VB-Vxを求め、それに電圧差に対応する電圧降下幅の変化量を掛けることで、数式2の分母の第3項が求められる。
【0045】
以上説明したように、負荷駆動装置10に駆動対象となるLED負荷60の特性を記憶してあり、各負荷駆動装置10でその特性を加味してデューティ比Tiを算出するようにしている。このため、複数のLED負荷60について、LEDの段数が異なったものとされていても、ちらつきを抑制することが可能となる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して複数のLED負荷60が共通の負荷駆動装置10で駆動されるようにするようにしたものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図5に示すように、本実施形態の負荷駆動装置10は、LED負荷60に対応した数の駆動デバイス50を備えており、負荷駆動出力部22から各駆動デバイス50に対して駆動信号が出力されるようになっている。
【0048】
このような形態では、不揮発性メモリ25に対して、各LED負荷60の特性をすべて記憶し、制御部21で各LED負荷60の特性に応じたデューティ比Tiを別々に算出する。そして、LED負荷60ごとの算出結果をどのLED負荷60のデューティ比Tiを示しているかが判るように紐付けして負荷駆動出力部22に伝え、負荷駆動出力部22からLED負荷60と対応する駆動デバイス50に算出結果のデューティ比Tiに応じた駆動信号を出力する。
【0049】
このようにすることで、共通の負荷駆動装置10によって複数のLED負荷60を駆動する場合において、複数のLED負荷60がLEDの段数が異なったものとされていても、ちらつきを抑制することが可能となる。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対して複数のLED負荷60が共通の負荷駆動装置10で駆動されるようにするようにしたものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図6に示すように、本実施形態の負荷駆動装置10も、第2実施形態と同様に、LED負荷60に対応した数の駆動デバイス50を備えているが、さらに負荷駆動出力部22もLED負荷60に対応した数備えてある。本実施形態の場合、負荷駆動出力部22を制御IC20から独立させた外付け部品として複数個備えるようにすることで、LED負荷60の数に合わせ易くしてあるが、制御IC20内において複数個備えるようにしても良い。
【0052】
このように、負荷駆動出力部22および駆動デバイス50をLED負荷60の数に対応した数備えるようにしても良い。この場合にも、第2実施形態と同様に、不揮発性メモリ25に対して、各LED負荷60の特性をすべて記憶し、制御部21で各LED負荷60の特性に応じたデューティ比Tiを別々に算出する。そして、LED負荷60ごとの算出結果をそのLED負荷60の駆動に用いられる負荷駆動出力部22に伝え、負荷駆動出力部22から対応する駆動デバイス50に算出結果のデューティ比Tiに応じた駆動信号を出力する。このようにしても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、LED負荷60として、第1負荷61と第2負荷62を例に挙げたが、LED負荷60の数については任意であるし、各LED負荷60を構成するLEDの段数についても任意である。
【0055】
また、上記実施形態では、LED負荷60を構成するLEDの段数、電源電圧VBおよび周辺温度Taが変動した場合のすべてに対応できるようにする例を示している。しかしながら、これらすべてに対応できなくても、少なくとも電源電圧VBの変動に対応した電圧降下幅の変化量を加味して、デューティ比Tiを設定できれば良い。
【0056】
例えば、電源電圧VBの変動に対応した電圧降下幅の変化量のみを加味してデューティ比Tiを設定する場合には、数式3によってデューティ比Tiを算出すれば良い。また、電源電圧VBの変動に対応した電圧降下幅の変化量に加えてLEDの段数を加味するのであれば、数式4によってデューティ比Tiを算出すれば良い。さらに、電源電圧VBの変動に対応した電圧降下幅の変化量に加えて温度の変動に対応した電圧降下幅の変化量を加味するのであれば、数式5によってデューティ比Tiを算出すれば良い。
【0057】
(数3)
Ti=(Vx-Vf)/{VB-Vf-ΔVfv(VB-Vx)}
【0058】
(数4)
Ti=(Vx-nVf)/{VB-nVf-ΔVfv(VB-Vx)}
【0059】
(数5)
Ti=(Vx-Vf)/{VB-Vf-ΔVfv(VB-Vx)-ΔVft(Ta-Tx)}
【符号の説明】
【0060】
10…負荷駆動装置、20…制御IC、21…制御部、22…負荷駆動出力部、23…電圧検出部、24…温度検出部、25…不揮発性メモリ、30…電圧検出回路、40…温度検出回路、50…駆動デバイス、60…LED負荷、61…第1負荷、61a…LED、61b…制限抵抗、62…第2負荷、62a…LED、62b…制限抵抗