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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】血圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A61B5/022 400N
A61B5/022 300K
A61B5/022 500N
A61B5/022 100A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019071535
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020168205
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ジェ▼
(72)【発明者】
【氏名】小椋 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊明
(72)【発明者】
【氏名】鴛海 明
(72)【発明者】
【氏名】東狐 義秀
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225697(JP,A)
【文献】特開2010-178908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0366921(US,A1)
【文献】国際公開第2014/184867(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/090072(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/067752(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/093515(WO,A1)
【文献】特開2007-7038(JP,A)
【文献】特開2002-78686(JP,A)
【文献】中国実用新案第205458888(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧測定を行うためのエア系を有し、上記エア系についての漏気検査を行うことが可能な血圧計であって、
電源オフ状態から、電源オン操作がなされると待機状態へ移行し、上記待機状態で測定開始操作がなされると、上記エア系を用いた血圧測定を行って、上記血圧測定後に上記待機状態へ移行し、上記待機状態で電源オフ操作がなされると、上記電源オフ状態へ移行する、というメイン制御を行うメイン制御部と、
上記エア系の漏気検査を行って、その漏気検査による漏気検査結果を得る漏気検査部と、
上記漏気検査結果を記憶する記憶部と、
上記電源オフ状態から上記待機状態もしくは測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行の過程、または、上記待機状態から上記電源オフ状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行の過程で、上記記憶部に記憶された上記漏気検査結果を第1の表示態様で表示器に表示する一方、上記待機状態および上記血圧測定中では、上記漏気検査結果を表示しないか、または、上記漏気検査結果を上記第1の表示態様に比して強調の程度が低い第2の表示態様で表示する、という通知制御を行う通知制御部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧計において、
上記通知制御部は、上記漏気検査結果の表示を開始した後、表示停止操作がなされるか又は予め定められた期間が経過したとき、上記電源オフ状態から上記待機状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行、または、上記待機状態から上記電源オフ状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行を実行して、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示を停止する、
ことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血圧計において、
上記漏気検査結果は、上記エア系の漏気量が予め定められた第1基準値よりも小さいことを表す第1漏気レベルと、上記エア系の漏気量が上記第1基準値よりも大きく設定された第2基準値よりも大きいことを表す第3漏気レベルと、上記エア系の漏気量が上記第1基準値と上記第2基準値との間に相当する第2漏気レベルとの、少なくとも3つの漏気レベルを含み、
上記通知制御部は、上記漏気検査結果が上記3つの漏気レベルのうち、上記第2漏気レベルであるときに限り上記通知制御を行い、上記漏気検査結果が上記第1漏気レベルであるときは上記漏気検査結果の表示を行わず、また、上記漏気検査結果が上記第3漏気レベルであるときは血圧測定ができない旨を上記表示器に表示する、
ことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記漏気検査部は、上記血圧測定に伴って上記エア系の漏気検査を行い、
上記記憶部は、上記エア系の漏気検査が行われる都度、その漏気検査による漏気検査結果を記憶する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項4に記載の血圧計において、
上腕が挿入されるように円筒状をなすカフユニットを備え、
上記カフユニットは、円筒状の外周部材と、この外周部材の内周面に沿って環状に配置された巻付用空気袋と、この巻付用空気袋の内周面に沿って湾曲して配置された可撓性を有する板材からなり、上記巻付用空気袋が加圧されて径方向内向きに膨張したとき縮径するカーラと、このカーラの内周面に沿って配置され、上記血圧測定のために加圧されて上記上腕を圧迫する測定用空気袋とを含み、
上記漏気検査部は、上記血圧測定に伴う減圧過程での血圧算出完了時における上記巻付用空気袋の圧力と上記測定用空気袋の圧力との間の差圧に基づいて、上記漏気検査結果を得る、
ことを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対する対処を示すメッセージの表示であり、
上記漏気検査結果の上記第2の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対応するアイコンの表示である、
ことを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対応するアイコンを点滅させる表示であり、
上記漏気検査結果の上記第2の表示態様での表示は、上記アイコンの点灯を維持する表示である、
ことを特徴とする血圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、血圧測定を行うためのエア系を有し、上記エア系についての漏気検査を行うことが可能な血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の血圧計としては、例えば特許文献1(特開2010-178908号公報)に開示されているように、血圧測定を行うためのエア系(空気袋、エア管など)を有し、上記エア系について漏気検査を行って漏気の有無を検出するものが知られている。上記血圧計では、漏気有りと判定された場合、漏気に異常があることを示す検査結果が表示器に表示される。これにより、上記血圧計のユーザは、メーカのサービスセンタ等に連絡して血圧計の修理を依頼するなどの対処をとることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-178908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記血圧計が、一般家庭で使用される場合は、漏気有りと判断されたとき、漏気に異常があることを示す検査結果が、単に表示器に表示されれば足りる。しかしながら、上記血圧計が、病院などの医療機関で使用される場合は、漏気検査結果が一般患者に分かると、多くの患者が、漏気に異常があることを、その医療機関の構成員(受付担当者、保守担当者(Medical Engineer)、医師、看護師など)に区々に連絡してしまう。このため、その医療機関では、機器管理の運用上、不都合が生じる。また、漏気は徐々に進行するため、漏気初期段階では血圧測定には支障はないという意味でも一般患者に通知する必要はないが、医療機関の構成員には早めにメンテナンスの必要性を通知する必要がある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、血圧測定を行うためのエア系を有し、上記エア系についての漏気検査を行うことが可能な血圧計であって、漏気検査結果を、一般患者には分かり難い態様で、医療機関の構成員に通知できる血圧計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この開示の血圧計は、
血圧測定を行うためのエア系を有し、上記エア系についての漏気検査を行うことが可能な血圧計であって、
電源オフ状態から、電源オン操作がなされると待機状態へ移行し、上記待機状態で測定開始操作がなされると、上記エア系を用いた血圧測定を行って、上記血圧測定後に上記待機状態へ移行し、上記待機状態で電源オフ操作がなされると、上記電源オフ状態へ移行する、というメイン制御を行うメイン制御部と、
上記エア系の漏気検査を行って、その漏気検査による漏気検査結果を得る漏気検査部と、
上記漏気検査結果を記憶する記憶部と、
上記電源オフ状態から上記待機状態もしくは測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行の過程、または、上記待機状態から上記電源オフ状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行の過程で、上記記憶部に記憶された上記漏気検査結果を第1の表示態様で表示器に表示する一方、上記待機状態および上記血圧測定中では、上記漏気検査結果を表示しないか、または、上記漏気検査結果を上記第1の表示態様に比して強調の程度が低い第2の表示態様で表示する、という通知制御を行う通知制御部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【0007】
本明細書で、「電源オフ状態」とは、血圧計に電源供給が行われていない状態を指す。
【0008】
「電源オン操作」とは、例えば医療機関の構成員によって、上記血圧計に設けられた電源スイッチがオンされる操作、上記血圧計につながる電源ケーブルが電源コンセントに接続される操作など、上記血圧計の電源をオンするための操作を指す。逆に、「電源オフ操作」とは、例えば医療機関の構成員によって、上記血圧計に設けられた電源スイッチがオフされる操作、上記血圧計につながる電源ケーブルが電源コンセントから引き抜かれる操作など、上記血圧計の電源をオフするための操作を指す。これらの「電源オン操作」、「電源オフ操作」は、例えば、無線通信を用いた遠隔操作であってもよい。
【0009】
「測定開始操作」とは、例えば被測定者(典型的には、患者)によって、上記血圧計に設けられた測定開始スイッチが押される操作を指す。また、例えば、上記血圧計が、円筒状のカフと、このカフに腕が挿入されたことを検知するセンサとを備え、このセンサの出力(カフに腕が挿入されたことを表す)に応じて血圧測定を開始するようになっている場合、「測定開始操作」とは、被測定者によって上記カフに腕が挿入される操作に相当し得る。
【0010】
「待機状態」とは、測定開始操作がなされるのを待つ状態、すなわち、測定開始操作がなされると、血圧測定を行う用意がある状態を指す。この待機状態では、表示器による表示自体(例えば、電源が供給されていることを示す表示)は可能である。この血圧計が病院などの医療機関に設置される場合は、一般患者がこの血圧計を目にするのは、通常は、この血圧計が待機状態にあるときか又は血圧測定中に限られる。
【0011】
「測定開始操作不能な非血圧測定状態」とは、上記待機状態と同様に非血圧測定状態ではあるが、上記待機状態とは異なり、測定開始操作が不能な状態を指す。この「測定開始操作不能な非血圧測定状態」としては、例えば、この血圧計のメンテナンスを行うための状態(メンテナンスモード)、この血圧計の動作を規定する各種設定を行うための状態(設定モード)などが挙げられる。
【0012】
漏気検査結果を表示するときの「第1の表示態様」は、例えば、表示を見る人が上記漏気検査結果を容易に認識可能な態様に設定される。「第2の表示態様」は、「第1の表示態様に比して強調の程度が低い」態様、つまり、目立たない態様を意味する。
【0013】
この開示の血圧計では、メイン制御部は、電源オン操作がなされると待機状態へ移行し、上記待機状態で測定開始操作がなされると、上記エア系を用いた血圧測定を行って、上記血圧測定後に上記待機状態へ移行し、上記待機状態で電源オフ操作がなされると、上記電源オフ状態へ移行する、というメイン制御を行う。漏気検査部は、例えば上記血圧測定に伴って、上記エア系の漏気検査を行って、その漏気検査による漏気検査結果を得る。記憶部は、上記漏気検査結果を記憶する。通知制御部は、上記電源オフ状態から上記待機状態もしくは測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行の過程、または、上記待機状態から上記電源オフ状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行の過程で、上記記憶部に記憶された上記漏気検査結果を第1の表示態様で表示器に表示する。すなわち、この血圧計が病院などの医療機関に設置される場合、一般患者がこの血圧計を目にしないタイミングで、上記漏気検査結果が表示器に表示される。上記医療機関の構成員(受付担当者、保守担当者(Medical Engineer)、医師、看護師など)は、上記表示器に上記第1の表示態様で表示された上記漏気検査結果を見ることによって、上記漏気検査結果を容易に認識できる。一方、上記通知制御部は、上記待機状態および上記血圧測定中では、上記漏気検査結果を表示しないか、または、上記漏気検査結果を上記第1の表示態様に比して強調の程度が低い第2の表示態様で表示する。すなわち、この血圧計が病院などの医療機関に設置される場合、一般患者がこの血圧計を目にするタイミングでは、上記漏気検査結果は表示されないか、または、表示されたとしても、上記漏気検査結果は上記第2の表示態様で表示される。したがって、一般患者は、通常は、上記漏気検査結果に気づかない。このように、この血圧計では、上記通知制御部による上述のような通知制御によって、上記漏気検査結果を、一般患者には分かり難い態様で、医療機関の構成員に通知できる。
【0014】
なお、上記通知制御部は、上記漏気検査結果を上記第1の表示態様で表示器に表示するとき、その表示に加えて、ブザー音、音声などの表示以外の手段で通知してもよい。これにより、上記医療機関の構成員に対して上記漏気検査結果の通知が徹底される。
【0015】
一実施形態の血圧計では、
上記通知制御部は、上記漏気検査結果の表示を開始した後、表示停止操作がなされるか又は予め定められた期間が経過したとき、上記電源オフ状態から上記待機状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行、または、上記待機状態から上記電源オフ状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行を実行して、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示を停止する、
ことを特徴とする。
【0016】
ここで、「表示停止操作」とは、例えば医療機関の構成員によって、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示を停止させる指示が入力される操作を意味する。この「表示停止操作」は、典型的には、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示を停止させる指示を入力するための表示停止スイッチが押される操作を指す。また、「表示停止操作」は、例えば、無線通信を用いた遠隔操作であってもよい。
【0017】
この一実施形態の血圧計では、上記通知制御部は、上記漏気検査結果の表示を開始した後、表示停止操作がなされるか又は予め定められた期間が経過したとき、上記電源オフ状態から上記待機状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行、または、上記待機状態から上記電源オフ状態もしくは上記測定開始操作不能な非血圧測定状態への移行を実行して、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示を停止する。したがって、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示は、一時的にのみ行われることが保証される。例えば、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示が開始された後、上記医療機関の構成員が上記表示停止スイッチを押し忘れたとしても、一般患者が上記漏気検査結果に気づくことは避けられる。なお、上記通知制御部は、上記第1の表示態様での表示を停止した後、上記第1の表示態様に比して強調の程度が低い第2の表示態様での表示を行ってもよい。
【0018】
一実施形態の血圧計では、
上記漏気検査結果は、上記エア系の漏気量が予め定められた第1基準値よりも小さいことを表す第1漏気レベルと、上記エア系の漏気量が上記第1基準値よりも大きく設定された第2基準値よりも大きいことを表す第3漏気レベルと、上記エア系の漏気量が上記第1基準値と上記第2基準値との間に相当する第2漏気レベルとの、少なくとも3つの漏気レベルを含み、
上記通知制御部は、上記漏気検査結果が上記3つの漏気レベルのうち、上記第2漏気レベルであるときに限り上記通知制御を行い、上記漏気検査結果が上記第1漏気レベルであるときは上記漏気検査結果の表示を行わず、また、上記漏気検査結果が上記第3漏気レベルであるときは血圧測定ができない旨を上記表示器に表示する、
ことを特徴とする。
【0019】
ここで、「第1漏気レベル」とは、漏気が無い場合を含み、典型的には正常レベルに相当する。「第3漏気レベル」とは、典型的には、故障レベル、すなわち、もはや上記血圧計による血圧測定ができないレベルに相当する。「第2漏気レベル」は、第1漏気レベルと第3漏気レベルとの間に相当するレベルに相当する。例えば、一般的に言って、血圧計の使用が繰り返されると、上記エア系の漏気量は次第に増えていく傾向を示す。したがって、「第2漏気レベル」は、上記エア系の漏気が発生し始めた初期段階に相当する。
【0020】
この一実施形態の血圧計では、上記漏気検査結果は、上記第1漏気レベルと、上記第3漏気レベルと、上記第1漏気レベルと上記第3漏気レベルとの間に相当する第2漏気レベルとの、少なくとも3つの漏気レベルを含む。上記通知制御部は、上記漏気検査結果が上記3つの漏気レベルのうち、上記第2漏気レベルであるときに限り上記通知制御を行い、上記漏気検査結果が上記第1漏気レベルであるときは上記漏気検査結果の表示を行わず、また、上記漏気検査結果が上記第3漏気レベルであるときは血圧測定ができない旨を上記表示器に表示する。例えば、上記漏気検査結果が上記第2漏気レベルであり、これに応じて、上記漏気検査結果が第1の表示態様で表示器に表示されたとき、上記医療機関の構成員は、上記エア系の漏気が発生し始めた初期段階であることを知る。したがって、上記医療機関の構成員(特に、保守担当者)は、上記エア系の部品を交換したり、交換用の部品を用意したりすることができる。これにより、故障が発生するのを未然防止したり、または、仮に故障が発生したとしても、直ちに部品を交換して、血圧測定ができない期間を短くしたりすることができる。また、上記通知制御部は、上記漏気検査結果が上記第3漏気レベルであるときは上記血圧測定ができない旨を上記表示器に表示する。これにより、一般患者によって上記測定開始スイッチが押されて無駄に血圧測定が試みられるような事態が防止される。
【0021】
一実施形態の血圧計では、
上記漏気検査部は、上記血圧測定に伴って上記エア系の漏気検査を行い、
上記記憶部は、上記エア系の漏気検査が行われる都度、その漏気検査による漏気検査結果を記憶する
ことを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の血圧計では、上記漏気検査部は、上記血圧測定に伴って上記エア系の漏気検査を行う。したがって、ユーザが特に漏気検査の指示を入力しなくても、自動的に漏気検査が行われ得る。また、上記記憶部は、上記エア系の漏気検査が行われる都度、その漏気検査による漏気検査結果を記憶する。したがって、上記記憶部には、最新の漏気検査結果が記憶される。この結果、上記通知制御部は、最新の漏気検査結果を表示できる。
【0023】
一実施形態の血圧計では、
上腕が挿入されるように円筒状をなすカフユニットを備え、
上記カフユニットは、円筒状の外周部材と、この外周部材の内周面に沿って環状に配置された巻付用空気袋と、この巻付用空気袋の内周面に沿って湾曲して配置された可撓性を有する板材からなり、上記巻付用空気袋が加圧されて径方向内向きに膨張したとき縮径するカーラと、このカーラの内周面に沿って配置され、上記血圧測定のために加圧されて上記上腕を圧迫する測定用空気袋とを含み、
上記漏気検査部は、上記血圧測定に伴う減圧過程での血圧算出完了時における上記巻付用空気袋の圧力と上記測定用空気袋の圧力との間の差圧に基づいて、上記漏気検査結果を得る、
ことを特徴とする。
【0024】
ここで、「血圧算出完了時」とは、上記測定用空気袋の圧力に基づく血圧算出が完了して、上記巻付用空気袋と上記測定用空気袋が急速排気される直前の時点を指す。具体的には、上記血圧測定に伴って、上記巻付用カフと上記測定用カフは加圧され、続いて減圧されるが、血圧算出完了時まで上記巻付用カフと上記測定用カフには或る程度の圧力が残っている。血圧算出完了後は、上記巻付用カフと上記測定用カフが急速排気され、圧力が取り除かれる。「血圧算出完了時」とは、その急速排気される直前の時点を指す。
【0025】
上述のカフユニットを備えたタイプの血圧計では、故障事例の大部分は上記巻付用カフからの漏気が発生した事例である、という知見を、本発明者は経験的に得ている。
【0026】
そこで、この一実施形態の血圧計では、上記漏気検査部は、上記血圧測定に伴う減圧過程での血圧算出完了時における上記巻付用カフの圧力と上記測定用カフの圧力との間の差圧に基づいて、上記漏気検査結果を得る。これにより、上記測定用カフの圧力を基準として、上記巻付用カフからの漏気を精度良く検出できる。
【0027】
一実施形態の血圧計では、
上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対する対処を示すメッセージの表示であり、
上記漏気検査結果の上記第2の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対応するアイコンの表示である、
ことを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の血圧計では、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対する対処を示すメッセージの表示であるから、上記医療機関の構成員は、上記メッセージを見ることによって、上記漏気検査結果を容易に認識でき、上記メッセージによって示された対処をとることができる。一方、上記漏気検査結果の上記第2の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対応するアイコンの表示であるから、上記メッセージに比して、上記漏気検査結果を伝える強調の程度が低い。上記アイコンの意味を知らない一般患者は、上記漏気検査結果が表示されていることに気づかない。上記アイコンの意味を知っている医療機関の構成員(特に、保守担当者)は、上記アイコンを見ることによって、漏気検査結果を認識でき、上記アイコンによって示唆された対処をとることができる。
【0029】
一実施形態の血圧計では、
上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対応するアイコンを点滅させる表示であり、
上記漏気検査結果の上記第2の表示態様での表示は、上記アイコンの点灯を維持する表示である、
ことを特徴とする。
【0030】
この一実施形態の血圧計では、上記漏気検査結果の上記第1の表示態様での表示は、上記漏気検査結果に対応するアイコンを点滅させる表示であるから、目立つ。したがって、上記アイコンの意味を知っている医療機関の構成員は、上記アイコンを見ることによって、上記漏気検査結果を容易に認識でき、上記アイコンによって示唆された対処をとることができる。一方、上記漏気検査結果の上記第2の表示態様での表示は、上記アイコンの点灯を維持する表示であるから、上記点滅させる表示に比して、目立たない。したがって、上記アイコンの意味を知らない一般患者は、上記漏気検査結果が表示されていることに気づかない。
【発明の効果】
【0031】
以上より明らかなように、この開示の血圧計によれば、漏気検査結果を、一般患者には分かり難い態様で、医療機関の構成員に通知できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】この発明の一実施形態の、本体とカフユニットを有する血圧計を、前方斜め上方から見たところを示す図である。
図2】血圧測定中における上記カフユニットの動作を示す図である。
図3】上記本体に上記カフユニットが装着された状態の上記血圧計における、エア系と制御系を含むブロック構成を示す図である。
図4】上記血圧計におけるメイン制御のフローを示す図である。
図5図5(A)は上記血圧計の圧力センサを介して検出されたカフ圧信号を例示する図である。図5(B)は、上記カフ圧信号からハイパスフィルタを通して取り出された信号(HPF出力)を例示する図である。
図6】上記血圧計と同じ構成の血圧計における、上記エア系に含まれた巻付用カフと測定用カフの血圧測定中の圧力変化を示す図である。
図7】血圧算出完了時における上記巻付用カフの圧力と上記測定用カフの圧力との間の差圧と、巻付用エア系のみについて実測された漏気量との間の関係を示す散布図である。
図8】上記血圧計における漏気診断処理のフローを示す図である。
図9】上記血圧計における血圧測定終了時から待機状態への移行の過程での通知制御(待機移行前の漏気レベル表示処理)のフローを示す図である。
図10】上記血圧計における電源オフ状態から待機状態への移行の過程(起動時)での通知制御のフローを示す図である。
図11】上記血圧計における電源オフ状態からメンテナンスモードへの移行の過程(メンテナンス移行時)での通知制御のフローを示す図である。
図12】上記血圧計における待機状態から設定モードへの移行の過程(設定モード移行時)での通知制御のフローを示す図である。
図13】上記血圧計における待機状態から電源オフ状態への移行の過程(終了時)での通知制御のフローを示す図である。
図14】漏気検査結果が第2漏気レベルであるとき、上記漏気検査結果に対する対処を示すメッセージを含んだ第1の表示態様での表示例を示す図である。
図15】漏気検査結果が第2漏気レベルであるとき、上記漏気検査結果を表示しない例を示す図である。
図16】漏気検査結果が第2漏気レベルであるとき、上記漏気検査結果を第1の表示態様(図14)に比して強調の程度が低い第2の表示態様で表示する表示例を示す図である。
図17図17(A)は、漏気検査結果が第2漏気レベルであるとき、上記漏気検査結果に対応するアイコンを点滅させる第1の表示態様での表示例を示す図である。図17(B)は、漏気検査結果が第2漏気レベルであるとき、上記漏気検査結果を表示しない例を示す図である。図17(C)は、漏気検査結果が第2漏気レベルであるとき、上記漏気検査結果を第1の表示態様(図17(A))に比して強調の程度が低い第2の表示態様で表示する表示例を示す図である。
図18図18(A)は、漏気検査結果が第3漏気レベルであるとき、上記漏気検査結果をドットマトリクス方式で表示する例(表示例その1)を示す図である。図18(B)は、漏気検査結果が第3漏気レベルであるとき、上記漏気検査結果をセグメント方式で表示する別の例(表示例その2)を示す図である。
図19】上記血圧計におけるメイン制御のフローを変形した変形例のフローを示す図である。
図20図19における漏気診断処理のフローを具体的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
(本体の概略構成)
図1は、この発明の一実施形態の血圧計(符号1で示す。)を前方斜め上方から見たところを示している。なお、この図1中には、理解の容易のために、XYZ直交座標系を併せて示している。X軸は前後方向、Y軸は左右方向、Z軸は上下方向に向けられている。図1に示すように、血圧計1は、大別して、本体2と、カフ3と、アームレスト9とを備えている。この血圧計1は、医家向けの血圧計であり、この例では医療機関としての病院に設置されているものとする。この血圧計1は、被測定者(典型的には、患者)が自ら操作を行って、被測定部位としての上腕の血圧を測定するように設計されている。
【0035】
本体2の上面2aのうち、右側前部には、略円筒状のカフ3が配置されている。カフ3の中心軸Cは、この例では、前方から後方へ(-X方向へ)向かって次第に高さが低く(Z座標が小さく)なる態様で傾斜している。本体2の底面2bは略平坦で、図示しない水平面(XY平面に沿った台のような面)上に置かれている。
【0036】
本体2の上面2aのうち、右側後部には、アームレスト9が配置されている。アームレスト9は、上方へ開いた略円弧状の断面を有し、カフ3の後面側の開口から、本体2の上面2aの傾斜よりも急な傾斜で略ストレートに本体2の後方へ延在している。血圧測定を行う際には、被測定者が本体2の前方に座り、カフ3の前面側(被測定者に面する側)から後面側へ腕を通すことによって、被測定者の上腕がカフ3内に位置し、前腕がアームレスト9上に置かれた状態になることが予定されている。
【0037】
本体2の上面2aのうち、左側前部には、被測定者が左手で測定開始または停止を指示するための測定開始/停止スイッチ13Aと、血圧計1の機能を選択するためのモードスイッチ13Cと、ユーザが血圧測定結果の表示終了を指示するための測定結果表示終了スイッチ14と、血圧測定結果の印刷を指示するためのプリンタ12とが配置されている。本体2の上面2aのうち、左側後部には、血圧測定結果を表示するための表示器(この例では、LCD(液晶ディスプレイ)からなる)11が配置されている。なお、表示器11は、表示画面が被測定者に正対するように、本体2の上面2aに立設されていてもよい。また、本体2の上面2aのうち、アームレスト9よりもさらに右側には、ユーザが右手で測定開始または停止を指示するための測定開始/停止スイッチ13Bが配置されている。これらの測定開始/停止スイッチ13A,13B、および測定結果表示終了スイッチ14は、それぞれ、押下された時だけ一時的に作動(指示を入力)するスイッチになっている。なお、2つの測定開始/停止スイッチ13A,13Bは、それぞれ、被測定者がカフ3に右上腕、左上腕を通して測定するときの便宜のために設けられている。以下の例では、簡単のため、2つの測定開始/停止スイッチ13A,13Bのうち、測定開始/停止スイッチ13Aのみが用いられるものとする。
【0038】
また、本体2の後面(-X側の面)には、商用電源(この例では、AC100Vとする。)が供給される電源接続部(図示せず)と、この商用電源からの電力供給をオン、オフするための電源スイッチ10が設けられている。電源スイッチ10は、オン(電源オン操作)されると、商用電源からの電力が供給される状態(電源オン状態)を維持する一方、オフ(電源オフ操作)されると、商用電源からの電力供給が遮断される状態(電源オフ状態)を維持する。
【0039】
カフ3は、本体2に設けられたスライド受け部4と、このスライド受け部4に着脱可能に装着される円筒状のカフユニット5とによって構成されている。
【0040】
スライド受け部4は、上方へ開いた円弧状(この例では、半円状)断面を有する前面側部分4aと、この前面側部分4aの後方に連なり、前面側部分4aの円弧状断面と同心(中心軸C)の円形断面を有する後面側部分4fとを、一体に含んでいる。
【0041】
カフユニット5は、上腕90が挿入されるように円筒状をなすカフ構造体7と、このカフ構造体7を覆うようにカフ構造体7に対して着脱可能に装着されたカバー6とによって構成されている。
【0042】
カバー6は、下方へ開いた円弧状(この例では、半円状)断面を有する後面側部分6aと、この後面側部分6aの前方に連なり、後面側部分6aの円弧状断面と同心(中心軸C)の円形断面を有する前面側部分6eとを、一体に含んでいる。
【0043】
カフ構造体7は、図2(A)(カフユニット5の中心軸Cに対して垂直な断面を示す。)に示すように、円筒状の外周部材70と、この外周部材70の内周面に沿って環状に配置された巻付用空気袋としての巻付用カフ79と、この巻付用カフ79の内周面に沿って湾曲して配置された可撓性を有する板材からなるカーラ78と、このカーラ78の内周面に沿って配置され、血圧測定のために加圧されて上腕90を圧迫する測定用空気袋としての測定用カフ77とを含んでいる。
【0044】
巻付用カフ79は、伸縮可能な樹脂(例えば、ポリウレタン)からなり、この例では、外周部材70の内周面に沿って6つに区分して設けられている。
【0045】
カーラ78は、適度の可撓性を有する樹脂(例えば、ポリプロピレン)からなり、展開状態では平板状であるが、図2(A)の状態(自然状態)では上腕90を取り巻く略環状の形状をもち、周方向の端部同士がオーバラップするように作製されている。
【0046】
測定用カフ77は、巻付用カフ79と同様に、伸縮可能な樹脂(例えば、ポリウレタン)からなっている。この測定用カフ77は、カーラ78の内周面に沿って、上腕90の略3分の2周以上を取り巻くことが可能な長さ(周方向寸法)に設定されている(ただし、図2(A)の状態では、測定用カフ77の周方向の端部同士が比較的大きく離れている。)。
【0047】
(エア系と制御系のブロック構成)
図3は、本体2にカフユニット5が装着された状態における血圧計1の、エア系と制御系を含むブロック構成を示している。図3中に示すように、カフユニット5内の測定用カフ77は、流体配管81を介して、本体2内の測定用エア系20に接続されている。カフユニット5内の巻付用カフ79は、流体配管82を介して、本体2内の巻付用エア系30に接続されている。また、測定用エア系20および巻付用エア系30の動作は、それぞれCPU(Central Processing Unit;中央処理装置)40によって制御される。
【0048】
測定用エア系20は、測定用カフ77に加えて、エアポンプ21と、エアバルブ22と、圧力センサ23とを含んでいる。エアポンプ21は、測定用カフ77内を加圧するための手段であり、CPU40からの指令を受けたエアポンプ駆動回路26によって駆動される。このエアポンプ21は、血圧測定中において測定用カフ77内の圧力が所定の圧力となるように、流体としての空気を送り込む。
【0049】
エアバルブ22は、測定用カフ77内の圧力を維持したり、あるいは減圧したりするための手段であり、CPU40からの指令を受けたエアバルブ駆動回路27によってその開閉状態が制御される。このエアバルブ22は、血圧測定中においてエアポンプ21によって高圧状態となった測定用カフ77内の圧力の維持または減圧を行うとともに、血圧算出完了後において測定用カフ77内を急速排気して大気圧に復帰させる。
【0050】
圧力センサ23は、測定用カフ77内の圧力を検出するための手段であり、血圧測定開始時から血圧算出完了時まで時々刻々と変化する測定用カフ77内の圧力を検出し、その検出値に応じた信号を増幅器28に対して出力する。増幅器28は、圧力センサ23から出力される信号を増幅し、A/Dコンバータ29に出力する。A/Dコンバータ29は、増幅器28から出力されたアナログ信号をデジタル化し、CPU40に出力する。
【0051】
巻付用エア系30は、巻付用カフ79に加えて、エアポンプ31と、エアバルブ32と、圧力センサ33とを含んでいる。エアポンプ31は、巻付用カフ79内を加圧するための手段であり、CPU40からの指令を受けたエアポンプ駆動回路36によって駆動される。このエアポンプ31は、血圧測定開始時において巻付用カフ79内の圧力が所定の圧力となるように、流体としての空気を送り込む。
【0052】
エアバルブ32は、巻付用カフ79内の圧力を維持したり、あるいは減圧したりするための手段であり、CPU40からの指令を受けたエアバルブ駆動回路37によってその開閉状態が制御される。このエアバルブ32は、血圧測定中においてエアポンプ31によって高圧状態となった巻付用カフ79内の圧力の維持または減圧を行うとともに、血圧算出完了後において巻付用カフ79内を急速排気して大気圧に復帰させる。
【0053】
圧力センサ33は、巻付用カフ79内の圧力を検出するための手段である。この圧力センサ33は、血圧測定開始時から血圧算出完了時まで時々刻々と変化する巻付用カフ79内の圧力を検出し、その検出値に応じた信号を増幅器38に対して出力する。
【0054】
増幅器38は、圧力センサ33から出力される信号を増幅し、A/Dコンバータ39に出力する。A/Dコンバータ39は、増幅器38から出力されたアナログ信号をデジタル化し、CPU40に出力する。
【0055】
出力部42は、この例では、既述の表示器11と、プリンタ12とを含んでいる。
【0056】
操作部43は、この例では、既述の電源スイッチ10と、測定開始/停止スイッチ13A,13Bと、モードスイッチ13Cと、測定結果表示終了スイッチ14とを含んでいる。
【0057】
CPU40は、血圧測定を含むメイン制御を行うメイン制御部、エア系20,30の漏気検査を行う漏気検査部、および、漏気検査結果についての通知制御を行う通知制御部として働く。CPU40は、血圧測定結果および後述の漏気検査結果を出力部42の表示器11およびメモリ部41に出力する。また、CPU40は、プリント指示操作がなされた(例えば、図示しないプリント指示スイッチが押された)とき、血圧測定結果をプリンタ12によって紙(この例では、ロール紙)にプリントアウトさせる。モードスイッチ13C、測定結果表示終了スイッチ14については、後述する。
【0058】
メモリ部41は、記憶部として、血圧測定結果と漏気検査結果を記憶する。
【0059】
ここで、図5(A)に示すように、圧力センサ23によって検出される測定用カフ77の圧力(カフ圧)は、血圧測定中に時間経過に伴って略直線的に上昇(加圧過程)または低下(減圧過程)する圧力に対して、1拍毎の動脈容積変化に伴う変動成分が重畳された信号(カフ圧信号)である。このカフ圧信号からハイパスフィルタ(HPF)を通して図5(B)に示すような脈波波形(HPF出力)SM1,SM2が取り出される。後述するように、この血圧計1では、オシロメトリック法により、加圧過程での脈波波形SM1に基づいて概ねの最高血圧(収縮期血圧)が算出された後、減圧過程での脈波波形SM2に基づいて高精度に最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)が算出される。
【0060】
(メイン制御)
図4は、上述の構成の血圧計1におけるCPU40によるメイン制御のフローを示している。この例では、メイン制御は、オシロメトリック法による血圧測定処理と、漏気検査としての漏気診断処理とを含む。
【0061】
最初に、図4のステップS1では、血圧計1は電源オフ状態にあるものとする。電源オフ状態では、表示器11の表示はオフ(消灯)されている(以下同様)。この電源オフ状態で、例えば病院の構成員によって電源スイッチ10がオンされると、後に詳述する漏気検査結果についての通知制御を経て、血圧計1は待機状態となる(ステップS2)。ここで、「待機状態」とは、測定開始スイッチ(この例では、測定開始/停止スイッチ13A)が押されるのを待つ状態、すなわち、測定開始操作として測定開始スイッチが押されると、血圧測定を行う用意がある状態を指す。この例では、この待機状態では、表示器11に、後述の図15に示す表示と同じ表示がなされる。被測定者である一般患者がこの血圧計1を目にするのは、通常は、この血圧計1が待機状態にあるときか又は血圧測定中に限られる。
【0062】
次に、被測定者がカフ3(カフユニット5)に上腕90を通した状態で、本体2に設けられた測定開始/停止スイッチ13Aを押下すると(ステップS3)、血圧計1は血圧測定動作に移行する。
【0063】
血圧測定動作に移行すると、まず、血圧計1の初期化が行われる。このとき、カフユニット5(カフ構造体7)では、図2(A)中に示したように、測定用カフ77と巻付用カフ79内の圧力はいずれもゼロ(大気圧)になっている。この状態(自然状態)では、カーラ78の周方向の端部同士がオーバラップし、測定用カフ77の周方向の端部同士が比較的大きく離れている。
【0064】
次に、図4のステップS4において、CPU40が圧力制御部として働いて、エアポンプ21から流体配管81を介して、測定用カフ77に少量だけ(この例では、流量を一定にして250ミリ秒間だけ)空気を供給する。この理由は、後のステップS6で巻付用カフ79の加圧終了タイミングを、測定用カフ77の圧力上昇によって検出するためである。
【0065】
次に、図4のステップS5において、CPU40が圧力制御部として働いて、エアポンプ31から流体配管82を介して、巻付用カフ79に空気を供給する。これにより、巻付用カフ79の加圧が開始される。このとき、カフユニット5(カフ構造体7)では、図2(B)中に矢印A11で示すように、巻付用カフ79が径方向内向きに膨張してカーラ78を径方向内向きに圧迫する。これにより、カーラ78が縮径し、矢印A12で示すようにカーラ78の周方向の端部同士のオーバラップ寸法が増えて、測定用カフ77の周方向の端部同士が接近する。そして、測定用カフ77内の圧力が所定の圧力(この例では、20mmHg)に達した時点で、巻付用カフ79の加圧が終了する(図4のステップS6)。この結果、図2(C)中に示すように、上腕90が測定用カフ77によって取り巻かれた状態になる。
【0066】
次に、図4のステップS7において、CPU40が圧力制御部として働いて、エアポンプ21から流体配管81を介して、測定用カフ77に空気を供給する。これにより、測定用カフ77の加圧が開始される。この加圧過程での脈波波形SM1(図5(B)参照)に基づいて、オシロメトリック法により概ねの最高血圧(収縮期血圧)が算出(推定)される(図4のステップS8)。測定用カフ77の加圧は、この測定用カフ77の圧力が上記算出された最高血圧の値プラス40mmHgに達するまで、つまり、上腕90の動脈を通る血流が確実に止まるまで、継続される(図4のステップS9)。そして、エアポンプ21は停止される。
【0067】
次に、図4のステップS10において、CPU40が圧力制御部として働いて、測定用カフ77内から、流体配管81とエアバルブ22を介して、空気を徐々に排気するとともに、巻付用カフ79内から、流体配管82とエアバルブ32を介して、空気を徐々に排気する。これにより、測定用カフ77と巻付用カフ79の減圧が開始される。この例では、測定用カフ77の減圧速度、巻付用カフ79の減圧速度は、いずれも5mmHg/秒に設定されている。この減圧過程での脈波波形SM2(図5(B)参照)に基づいて、オシロメトリック法により最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)が算出される(図4のステップS11,S12)。これとともに、この例では、CPU40が漏気検査部として働いて、血圧算出完了時における巻付用カフ79の圧力と測定用カフ77の圧力との間の差圧(これをΔPとする。)を求める。なお、血圧算出完了時まで巻付用カフ79と測定用カフ77には或る程度の圧力が残っているものとする。CPU40は、メモリ部41に、血圧測定結果(最高血圧と最低血圧)と脈拍数に加えて、血圧算出完了時の差圧ΔPを記憶させる。
【0068】
血圧算出完了後に、図4のステップS13において、CPU40がエアバルブ22,32を全開にして、巻付用カフ79と測定用カフ77の急速排気を開始する。これにより、巻付用カフ79と測定用カフ77から圧力が取り除かれる。これとともに、この例では、CPU40が漏気検査部として働いて、後述する漏気検査としての漏気診断処理を行う(ステップS14)。
【0069】
次に、図4のステップS15において、CPU40が、表示器11に血圧測定結果(最高血圧と最低血圧)と脈拍数を表示させる。これにより、被測定者は、血圧測定結果(最高血圧と最低血圧)と脈拍数を知ることができる(血圧測定終了)。
【0070】
次に、図4のステップS16において、例えば被測定者としての一般患者(または病院の構成員)によって、測定結果表示終了スイッチ14が押されるか又は予め定められた期間(例えば、1分間)が経過したとき(ステップS16でYES)、CPU40が通知制御部として働いて、通知制御の一部として後述の待機移行前の漏気レベル表示処理を実行する(ステップS17)。
【0071】
この後、基本的に(漏気が故障レベルでない限り)、血圧計1は待機状態へ移行する(ステップS18)。この例では、この待機状態では、表示器11に、後述の図15に示す表示と同じ表示がなされる。この待機状態で、例えば病院の構成員によって、電源オフ操作として電源スイッチ10がオフされると、後に詳述する漏気検査結果についての通知制御を経て、血圧計1は電源オフ状態に戻る(ステップS19)。
【0072】
なお、CPU40は、血圧測定に伴ってエア系20,30の漏気検査を行い、その都度、メモリ部41に、血圧測定結果(最高血圧と最低血圧)と脈拍数に加えて、血圧算出完了時の差圧ΔPを記憶させる。
【0073】
(漏気診断処理)
この血圧計1における漏気診断処理(図4のステップS14)は、上述のカフユニット5を備えたタイプの血圧計では、故障事例の大部分は巻付用カフ79からの漏気が発生した事例である、という知見に基づいて設定されている。
【0074】
詳しくは、図6は、血圧計1と同じ構成の血圧計における、巻付用カフ79と測定用カフ77の血圧測定中の圧力変化を示している(なお、横軸は1回の血圧測定中における圧力のサンプリング回数を示している。)。1回の血圧測定中、巻付用カフ79の圧力Ptは、加圧時(図4のステップS5~S6)に図6中に破線で示すように上昇し、ピークPtpを示した後、低下してゆく。測定用カフ77の圧力Pcは、加圧過程(図4のステップS7~S9)で図6中に実線で示すように上昇し、ピークPcpを示した後、低下してゆく。ここで、血圧測定が複数回(この例では、約1000回)繰り返された場合、典型的には、巻付用カフ79の圧力Ptは、漏気が次第に多くなるため、図6中に矢印C1で示すように上昇速度が次第に遅くなるとともに、矢印C1′で示すように下降速度が次第に速くなる。一方、測定用カフ77の圧力Pcは、図6中に矢印C2で示すように上昇速度が次第に遅くなるが、巻付用カフ79からのカーラ78を介した圧迫の下降速度が次第に速くなるため、矢印C2′で示すように下降速度が次第に遅くなる。
【0075】
そこで、この血圧計1では、上記血圧測定に伴う減圧過程での血圧算出完了時(図4のステップS12)における巻付用カフ79の圧力Ptと測定用カフ77の圧力Pcとの間の差圧ΔPに基づいて、漏気検査結果を得ることとしている。例えば、差圧ΔPは、血圧測定の繰り返しの初期には、図6中に矢印ΔPoで示すように正の値を示し、繰り返し回数が増えると、図6中に矢印ΔPiで示すように値が次第に減少し、極端な場合は、図6中に矢印ΔPnで示すように負の値を示す。これにより、測定用カフ77の圧力Pcを基準として、巻付用カフ79からの漏気を検出できる。
【0076】
また、図7は、血圧計1と同じ構成の血圧計について実測された血圧算出完了時の差圧ΔP(単位mmHg)と、巻付用エア系30のみについて実測された漏気量AL(単位mmHg/分)との関係を、散布図として示している。図7中の△印が個々の実測データDを示している。具体的には、図7において或る実測データDが示す漏気量ALは、図3に示した巻付用エア系30において、巻付用カフ79に代えて、エアタンク(容量500cc)を取り付けるとともに、流体配管82に相当する箇所にエア系30内の空気を大気中へ漏洩させるリーク弁(リーク流量を可変設定可能)を取り付けた状態で、上記リーク弁のリーク流量を或る値(これをLx1とする。)に設定して、実測された量である。この測定手順としては、まず、巻付用エア系30を400mmHgまで加圧する。加圧直後は空気圧縮による温度変化に起因して圧力が低下するため、少なくとも15秒間以上、圧力安定を待つ。その後、上記リーク弁のリーク流量を或る値に維持した状態で、1分間の圧力低下を観測して、漏気量AL(単位mmHg/分)を求めた。一方、図7においてその実測データDが示す差圧ΔPは、血圧計1と同じ構成の血圧計に対して、流体配管82に相当する箇所に上記リーク弁を取り付けた状態で、上記リーク弁のリーク流量を上記と同じ値Lx1に設定し、血圧測定を実行して、血圧算出完了時に実測された量である。図7中に示す複数の実測データDは、それぞれ同様な手順で、上記リーク弁のリーク流量を様々な値(例えば、Lx1,Lx2,Lx3,…)に可変設定することによって得られたものである。
【0077】
この図7中に示す近似直線AXから分かるように、実測された血圧算出完了時の差圧ΔPと巻付用エア系30のみについて実測された漏気量ALとは、強い負の相関を示している。
【0078】
そこで、この血圧計1では、漏気検査結果として、エア系20,30(主に、エア系30を指す。以下同様。)の漏気量ALが予め定められた第1基準値AL1よりも小さいことを表す第1漏気レベルL1と、エア系20,30の漏気量ALが第1基準値AL1よりも大きく設定された第2基準値AL2よりも大きいことを表す第3漏気レベルL3と、エア系20,30の漏気量ALが第1基準値AL1と第2基準値AL2との間に相当する第2漏気レベルL2との、3つの漏気レベルL1,L2,L3を設定する。第1漏気レベルL1は、漏気が無い場合を含み、この例では正常レベルに相当する。第3漏気レベルL3は、この例では、故障レベル、すなわち、もはや血圧計による血圧測定ができないレベルに相当する。第2漏気レベルL2は、第1漏気レベルL1と第3漏気レベルL3との間に相当するレベル、すなわち、エア系20,30の漏気が発生し始めた初期段階に相当する。
【0079】
具体的には、この例では、第1基準値AL1は差圧ΔP=60mmHgに相当し、第1漏気レベルL1は差圧ΔP>60mmHgに相当する。第2基準値AL2は差圧ΔP=40mmHgに相当し、第3漏気レベルL3は差圧ΔP≦40mmHgに相当する。第2漏気レベルL2は、40mmHg<ΔP≦60mmHgに相当する。
【0080】
このような設定の下で、上述の漏気診断処理(図4のステップS14)は、次のようにして行われる。すなわち、CPU40が漏気検査部として働いて、図8のステップS20で漏気診断を開始する。まず、ステップS21で、CPU40は、メモリ部41に記憶されている最新の血圧算出完了時の差圧ΔPを読み出し、読み出した差圧ΔPが、第1基準値AL1に相当する60mmHgよりも大きいか否か、および、第2基準値AL2に相当する40mmHgよりも大きいか否か、を判定する。ここで、差圧ΔP>60mmHgである場合は、エア系20,30の漏気レベルは第1漏気レベルL1であると判定する(ステップS22)。40mmHg<ΔP≦60mmHgである場合は、エア系20,30の漏気レベルは第2漏気レベルL2であると判定する(ステップS23)。また、差圧ΔP≦40mmHgである場合は、エア系20,30の漏気レベルは第3漏気レベルL3であると判定する(ステップS24)。いずれの場合も、CPU40は、メモリ部41にそれぞれ漏気レベルL1,L2またはL3を記憶させて、漏気診断処理を終了する(ステップS25)。
【0081】
血圧測定に伴って上述の漏気診断処理(図8)が行われる都度、メモリ部41には、漏気検査結果として最新の漏気レベルL1,L2またはL3が記憶される。なお、血圧計1が全く血圧測定を行っていない段階(例えば、血圧計1が組み立てられた直後の、製品出荷検査前の段階)では、メモリ部41には、デフォルトとして漏気レベルL1が記憶されている。
【0082】
(通知制御)
この血圧計1では、CPU40は通知制御部として働いて、次に述べる5つの過程で漏気検査結果についての通知制御を実行する。この通知制御は、メモリ部41に記憶されている最新の漏気レベルに基づいて行われる。
【0083】
(1)血圧測定終了時から待機状態への移行の過程での通知制御
図9は、血圧計1における血圧測定終了時から待機状態への移行の過程での通知制御として、上述の待機移行前の漏気レベル表示処理(図4のステップS17)のフローを具体的に示している。この例では、CPU40は通知制御部として働いて、図9のステップS80で待機移行前の漏気レベル表示処理を開始する。まず、CPU40は、メモリ部41に記憶されている最新の漏気レベルを読み出し、読み出した漏気レベルがL1,L2またはL3のいずれであるかを判定する(ステップS81)。ここで、漏気レベルがL1またはL2であるときは、CPU40は、漏気検査結果の表示を行わず、そのまま待機状態へ移行する(ステップS82)。これにより、血圧計1における血圧測定終了から待機状態へ移行する過程で、一般患者が漏気検査結果(ここでは、漏気レベルL1,L2)に気づくことは避けられる。一方、漏気レベルがL3であるときは、CPU40は、直ちに(すなわち、一般患者がこの血圧計1を目にする時期であっても)血圧測定ができない旨(故障通知および腕帯交換通知)を、表示器11に表示させる(ステップS83)。その後、CPU40は、安全のため、血圧計1を電源オフ状態にする(ステップS84)。
【0084】
図18(A)、図18(B)は、それぞれ図9のステップS83での、表示器11における表示例を示している。図18(A)に示す表示例DS7では、上段DS71に「管理者に連絡してください」というメッセージが表示され、下段DS72に「腕帯交換エラー E6」というエラーコードの意味およびコードが表示されている(ドットマトリクス方式)。図18(B)に示す表示例DS8では、エラーコード「E6」のみが表示されている(セグメント方式)。この例では、エラーコード「E6」は、漏気による腕帯(カフユニット5)の故障を意味している。このような表示によって、一般患者によって測定開始スイッチが押されて無駄に血圧測定が試みられるような事態が防止される。
【0085】
(2)電源オフ状態から待機状態への移行の過程での通知制御
図10は、血圧計1における電源オフ状態から待機状態への移行過程(起動時)での通知制御のフローを示している。この例では、最初の図10のステップS30では、図4のステップS1におけるのと同様に、血圧計1は電源オフ状態にあるものとする。この電源オフ状態で、例えば病院の構成員によって電源スイッチ10がオンされると(図10のステップS31)、CPU40は、メモリ部41に記憶されている最新の漏気レベルを読み出し、読み出した漏気レベルがL1,L2またはL3のいずれであるかを判定する(ステップS32)。ここで、漏気レベルがL1であるときは、CPU40は、漏気検査結果の表示を行わず、そのまま待機状態へ移行する(ステップS36)。漏気レベルがL1であるとき移行した待機状態(ステップS36)では、この例では、漏気検査結果を表示せず、通常の待機状態における表示(後述の図15に示す表示例と同じ)を、表示器11に表示させる。
【0086】
また、図10のステップS32で漏気レベルがL3であるときは、CPU40は、血圧測定ができない旨(故障通知および腕帯交換通知)を、表示器11に表示させる(ステップS35)。この血圧測定ができない旨の表示は、例えば図18(A)または図18(B)に示したものと同様である。病院の構成員は、この表示を見ることによって、故障が発生したこと、および、腕帯(この例では、カフユニット5)を交換すべきことを認識できる。なお、図10のステップS35から待機状態へは移行しない。これにより、一般患者によって測定開始スイッチが押されて無駄に血圧測定が試みられるような事態が防止される。
【0087】
また、図10のステップS32で漏気レベルがL2であるときは、CPU40は、漏気検査結果としての腕帯交換通知を、第1の表示態様で表示器11に表示させる(ステップS33)。例えば、図14は、図10のステップS33における、第1の表示態様での表示例DS1を示している(ドットマトリクス方式)。この表示例DS1では、上段DS11に「腕帯の交換時期です 正しく測定するためにあたらしい腕帯に交換をお願いします。」という、漏気検査結果に対する対処を示すメッセージが表示され、下段DS12に「腕帯交換のお知らせ」という標題が表示されている。これにより、一般患者がこの血圧計1を目にしないタイミングで、漏気検査結果が表示器11に表示される。病院の構成員は、表示器11に第1の表示態様(図14)で表示された漏気検査結果を見ることによって、漏気検査結果を容易に認識でき、上記メッセージによって示された対処をとることができる。この例では、病院の構成員は、エア系20,30の漏気が発生し始めた初期段階であることを知ることができる。したがって、病院の構成員(特に、保守担当者)は、エア系20,30の部品(この例では、カフユニット5)を交換したり、交換用の部品を用意したりすることができる。これにより、故障が発生するのを未然防止したり、または、仮に故障が発生したとしても、直ちに部品を交換して、血圧測定ができない期間を短くしたりすることができる。
【0088】
CPU40は、漏気検査結果の第1の表示態様(図14)での表示(図10のステップS33)を開始した後、表示停止スイッチとしての測定開始/停止スイッチ13Aが押されるか又は予め定められた期間(例えば、1分間)が経過したとき(図10のステップS34でYES)、待機状態への移行を実行する(ステップS36)。これにより、上記漏気検査結果の第1の表示態様(図14)での表示を停止する。したがって、漏気検査結果の第1の表示態様での表示は、一時的にのみ行われることが保証される。例えば、漏気検査結果の第1の表示態様での表示が開始された後、病院の構成員が表示停止スイッチ(測定開始/停止スイッチ13A)を押し忘れたとしても、一般患者が漏気検査結果に気づくことは避けられる。
【0089】
図10のステップS33からステップS34を経て移行した待機状態(ステップS36)では、CPU40は、例えば、漏気検査結果を表示せず、図15に示すような通常の待機状態における表示を、表示器11に表示させる。図15に示す表示例DS2では、上段DS21に「測定できます」というメッセージが表示され、中段DS22には、「腕を入れてください」というメッセージと、測定姿勢を示すイラストレーションDS22Iとが表示されている。また、下段DS23には、測定番号を表示する領域DS23-1と、血圧計1の状態を示す各種のアイコンを表示する領域DS23-2と、現在の年月日を表示する領域DS23-3とが設けられている。この表示例DS2では、漏気検査結果が表示されていないので、一般患者は、漏気検査結果に気づかない。
【0090】
図15の表示例DS2に代えて、CPU40は、例えば図16に示すように、漏気検査結果を第1の表示態様(図14)に比して強調の程度が低い第2の表示態様で表示してもよい。図16に示す表示例DS3では、図15の表示例DS2に対して、アイコンを表示する領域DS23-2に、カフユニットを取り出すことを表すイラストレーションからなるアイコンIC1が追加的に表示されている点のみが異なっている。このアイコンIC1は、領域DS23-2に表示された他の複数のアイコンに対して追加的に表示されているだけであるから、第1の表示態様(図14)でのメッセージを含む表示例DS1に比して、上記漏気検査結果を伝える強調の程度が低く、目立たない。したがって、アイコンIC1の意味を知らない一般患者は、漏気検査結果に気づかない。一方、アイコンIC1の意味を知っている病院の構成員(特に、保守担当者)は、表示器11に表示されたアイコンIC1を見ることによって、漏気検査結果を認識でき、アイコンIC1によって示唆された対処をとることができる。
【0091】
待機状態(ステップS36)では、表示器11に図15の表示例DS2、図16の表示例DS3のいずれが表示されている場合であっても、図4のステップS2における待機状態と同様に、被測定者である一般患者は、カフ3(カフユニット5)に上腕90を通した状態で測定開始/停止スイッチ13Aを押下する(図4のステップS3)ことによって、血圧測定を行うことができる。血圧測定中(特に、図4のステップS4~S15)には、表示器11に、上記漏気検査結果は表示されないか、または、表示されたとしても、第1の表示態様(図14)に比して強調の程度が低い第2の表示態様(図16)で表示される。したがって、一般患者は、漏気検査結果に気づかない。
【0092】
(表示の変形例)
例えば、第1の表示態様として、図14の表示例DS1に代えて図17(A)の表示例DS4を用いてもよい。また、漏気検査結果を表示しない例として、図15の表示例DS2に代えて図17(B)の表示例DS5を用いてもよい。また、第2の表示態様として、図16の表示例DS3に代えて図17(C)の表示例DS6を用いてもよい。
【0093】
第1の表示態様としての図17(A)の表示例DS4では、上段DS40に現在の年月日が表示され、中上段DS41に最高血圧(単位mmHg)が表示され、中下段DS42に最低血圧(単位mmHg)が表示され、また、下段DS43に脈拍数(単位拍/分)が表示されるようになっている。さらに、右辺に沿って、血圧計1の状態を示す各種のアイコンを表示する領域DS44が設けられている。この表示例DS4では、領域DS44の最下部に、漏気検査結果に対応した、カフユニットを取り出すことを表すイラストレーションからなるアイコンIC1が、点滅する態様で表示されている(なお、放射状のマークFLは、アイコンIC1の点滅を表現するために便宜上図示されているに過ぎず、実際の表示器11には表示されない。)。これにより、一般患者がこの血圧計1を目にしないタイミングで、漏気検査結果が表示器11に表示される。アイコンIC1を点滅させる表示は、目立つ。病院の構成員は、表示器11に第1の表示態様(図17(A))で表示された漏気検査結果を見ることによって、漏気検査結果を容易に認識でき、アイコンIC1によって示唆された対処をとることができる。この例では、病院の構成員は、エア系20,30の漏気が発生し始めた初期段階であることを知ることができる。したがって、病院の構成員(特に、保守担当者)は、エア系20,30の部品(この例では、カフユニット5)を交換したり、交換用の部品を用意したりすることができる。これにより、故障が発生するのを未然防止したり、または、仮に故障が発生したとしても、直ちに部品を交換して、血圧測定ができない期間を短くしたりすることができる。
【0094】
漏気検査結果を表示しない例としての図17(B)に示す表示例DS5では、図17(A)の表示例DS4に対して、アイコンIC1が省略されている点のみが異なっている。この表示例DS5では、漏気検査結果が表示されていないので、一般患者は、漏気検査結果に気づかない。
【0095】
第2の表示態様としての図17(C)に示す表示例DS6では、図17(A)の表示例DS4に対して、アイコンIC1の点灯が維持されている点のみが異なっている。このアイコンIC1は、点灯が維持されているので、図17(A)の点滅させる表示に比して強調の程度が低く、目立たない。したがって、アイコンIC1の意味を知らない一般患者は、漏気検査結果に気づかない。一方、アイコンIC1の意味を知っている病院の構成員(特に、保守担当者)は、表示器11に表示されたアイコンIC1を見ることによって、漏気検査結果を認識でき、アイコンIC1によって示唆された対処をとることができる。
【0096】
(3)電源オフ状態からメンテナンスモードへの移行の過程での通知制御
図11は、血圧計1における電源オフ状態から測定開始操作不能な非血圧測定状態としてのメンテナンスモードへの移行の過程(メンテナンス移行時)での通知制御のフローを示している。メンテナンスモードとは、この血圧計1のメンテナンスを行うためのモードであり、各種の機能をチェックしたり、修復したりするモードを意味する。
【0097】
この例では、最初の図11のステップS40では、図4のステップS1におけるのと同様に、血圧計1は電源オフ状態にあるものとする。この電源オフ状態で、例えば病院の構成員によって電源スイッチ10とモードスイッチ13Cとが同時にオンされると(図11のステップS41)、CPU40は、メモリ部41に記憶されている最新の漏気レベルを読み出し、読み出した漏気レベルがL1,L2またはL3のいずれであるかを判定する(ステップS42)。ここで、漏気レベルがL1であるときは、図10の例におけるのと同様に、CPU40は、漏気検査結果の表示を行わず、そのままメンテナンスモードへ移行する(ステップS46)。
【0098】
また、図11のステップS42で漏気レベルがL3であるときは、図10の例におけるのと同様に、CPU40は、血圧測定ができない旨(故障通知および腕帯交換通知)を、表示器11に表示させる(ステップS45)。この血圧測定ができない旨の表示は、図18(A)または図18(B)に示したものと同様である。病院の構成員は、この表示を見ることによって、故障が発生したこと、および、腕帯(この例では、カフユニット5)を交換すべきことを認識できる。この後、後述する図11のステップS44へ進む。
【0099】
また、図11のステップS42で漏気レベルがL2であるときは、CPU40は、漏気検査結果としての腕帯交換通知を、第1の表示態様で表示器11に表示させる(ステップS43)。この第1の表示態様での表示は、図14または図17(A)に示したものと同様である。病院の構成員は、この表示を見ることによって、漏気検査結果を認識でき、必要な対処をとることができる。
【0100】
CPU40は、漏気検査結果の第1の表示態様(図14または図17(A))での表示(図11のステップS43)を開始した後、または、血圧測定ができない旨(図18(A)または図18(B))の表示(図11のステップS45)を開始した後、表示停止スイッチとしての測定開始/停止スイッチ13Aが押されるか又は予め定められた期間(例えば、1分間)が経過したとき(図11のステップS44でYES)、メンテナンスモードへの移行を実行する(ステップS46)。これにより、上記漏気検査結果の第1の表示態様(図14または図17(A))での表示を停止する。したがって、漏気検査結果の第1の表示態様での表示は、一時的にのみ行われることが保証される。
【0101】
メンテナンスモード(ステップS46)では、表示器11に、メンテナンスを助けるためのメンテナンスガイド表示(図示せず)がなされる。このメンテナンスガイド表示に従って、病院の構成員(特に、保守担当者)は、血圧計1のメンテナンスを実施することができる。一般患者は、通常は、このメンテナンスモードにある血圧計1を目にすることはない。
【0102】
(4)待機状態から設定モードへの移行の過程での通知制御
図12は、血圧計1における待機状態から測定開始操作不能な非血圧測定状態としての設定モードへの移行の過程(設定モード移行時)での通知制御のフローを示している。設定モードとは、この血圧計1の動作を規定する各種設定を行うためのモードを意味する。設定の項目としては、プリンタ12の印刷内容設定、音声ガイダンスのボリューム設定、音声ガイダンスの内容設定などが挙げられる。
【0103】
この例では、最初の図12のステップS50では、血圧計1は待機状態にあるものとする。この待機状態で、例えば病院の構成員によってモードスイッチ13Cが3秒間以上連続して押下されると(ステップS51)、CPU40は、メモリ部41に記憶されている最新の漏気レベルを読み出し、読み出した漏気レベルがL1,L2またはL3のいずれであるかを判定する(ステップS52)。この後、ステップS53~S55に示すように、図11の例におけるステップS43~S45の処理と同様の処理を行った後、設定モードへ移行する(ステップS56)。これにより、上記漏気検査結果の第1の表示態様(図14または図17(A))での表示を停止する。したがって、漏気検査結果の第1の表示態様での表示は、一時的にのみ行われることが保証される。
【0104】
このように、この例でも、図11の例におけるのと同様の作用効果を奏することができる。
【0105】
設定モード(ステップS56)では、表示器11に、各種設定を助けるための設定ガイド表示(図示せず)がなされる。この設定ガイド表示に従って、病院の構成員(特に、保守担当者)は、血圧計1の各種設定を行うことができる。一般患者は、通常は、この設定モードにある血圧計1を目にすることはない。
【0106】
(5)待機状態から電源オフ状態への移行の過程での通知制御
図13は、血圧計1における待機状態から電源オフ状態への移行の過程(終了時)での通知制御のフローを示している。
【0107】
この例では、最初の図13のステップS60では、図11のステップS40におけるのと同様に、血圧計1は待機状態にあるものとする。この待機状態で、例えば病院の構成員によって電源スイッチ10がオフされると(ステップS61)、CPU40は、メモリ部41に記憶されている最新の漏気レベルを読み出し、読み出した漏気レベルがL1,L2またはL3のいずれであるかを判定する(ステップS62)。この後、ステップS63~S65に示すように、図11の例におけるステップS43~S45(または図12の例におけるステップS53~S55)の処理と同様の処理を行った後、電源オフ状態へ移行する(ステップS66)。これにより、上記漏気検査結果の第1の表示態様(図14または図17(A))での表示を停止する。したがって、漏気検査結果の第1の表示態様での表示は、一時的にのみ行われることが保証される。
【0108】
このように、この例でも、図11の例(または図12の例)におけるのと同様の作用効果を奏することができる。
【0109】
(メイン制御の変形例)
図19は、上述のメイン制御のフロー(図4)を変形した変形例のフローを示している。この変形例のフローでは、ステップS1~S13までは、上述のメイン制御のフローにおけるのと同様に処理を進める(図19において図4におけるのと同じステップには同じ番号を付している。)。なお、この例では、ステップS13における急速排気開始時に、CPU40は、表示器11に血圧測定結果(最高血圧と最低血圧)と脈拍数を表示させる。
【0110】
次に、図19のステップS94で、CPU40が漏気検査部として働いて、上述の漏気診断処理(図8のステップS20~S25)に代えて、図20のフローに示すような漏気診断処理を行う。図20において図8におけるのと同じステップには同じ番号を付している。
【0111】
図8のステップS20におけるのと同様に、図20のステップS20で漏気診断を開始すると、まず、ステップS21で、CPU40は、メモリ部41に記憶されている最新の血圧算出完了時の差圧ΔPを読み出し、読み出した差圧ΔPが、第1基準値AL1に相当する60mmHgよりも大きいか否か、および、第2基準値AL2に相当する40mmHgよりも大きいか否か、を判定する。ここで、差圧ΔP>60mmHgである場合は、エア系20,30の漏気レベルは第1漏気レベルL1であると判定する(ステップS22)。40mmHg<ΔP≦60mmHgである場合は、エア系20,30の漏気レベルは第2漏気レベルL2であると判定する(ステップS23)。これらの場合は、CPU40は、メモリ部41にそれぞれ漏気レベルL1またはL2を記憶させて、漏気診断処理を終了する(ステップS25)。一方、差圧ΔP≦40mmHgである場合は、エア系20,30の漏気レベルは第3漏気レベルL3であると判定する(ステップS24)。この場合は、CPU40は、メモリ部41に漏気レベルL3を記憶させるとともに、通知制御部として働いて、直ちに(すなわち、一般患者がこの血圧計1を目にする時期であっても)血圧測定ができない旨(故障通知および腕帯交換通知)を、表示器11に表示させる(ステップS26)。血圧測定ができない旨の表示は、例えば図18(A)または図18(B)に示したものと同様である。病院の構成員は、この表示を見ることによって、故障が発生したこと、および、腕帯(この例では、カフユニット5)を交換すべきことを認識できる。その後、CPU40は、安全のため、血圧計1を電源オフ状態にする(ステップS27)。
【0112】
図20のステップS25で漏気診断を終了したときは、図19のステップS95で急速排気が終了すると、血圧計1は待機状態となる(ステップS96)。この例では、この待機状態では、表示器11に、既述の図15に示す表示と同じ表示がなされる。したがって、一般患者は、漏気検査結果に気づかない。この待機状態で、例えば病院の構成員によって電源スイッチ10がオフされると、既述の待機状態から電源オフ状態への移行の過程での通知制御(図13の例)を経て、血圧計1は電源オフ状態に戻る(ステップS97)。
【0113】
以上のように、この血圧計1によれば、一般患者がこの血圧計1を目にしないタイミングで、漏気検査結果が表示器11に表示される。病院の構成員は、表示器11に第1の表示態様(図14または図17(A))で表示された漏気検査結果を見ることができ、漏気検査結果を容易に認識できる。一般患者がこの血圧計1を目にするタイミングでは、漏気検査結果は表示されないか、または、表示されたとしても、漏気検査結果は強調の程度が低い第2の表示態様(図16または図17(C))で表示される。したがって、一般患者は、通常は、漏気検査結果に気づかない。このように、この血圧計1では、上述のような通知制御によって、漏気検査結果を、一般患者には分かり難い態様で、病院の構成員に通知できる。
【0114】
なお、CPU40は、漏気検査結果を第1の表示態様(図14または図17(A))で表示器11に表示するとき、その表示に加えて、ブザー音、音声などの表示以外の手段で通知してもよい。これにより、病院の構成員に対して漏気検査結果の通知が徹底される。
【0115】
また、上述の実施形態では、カフユニット5は、外周部材70内に、巻付用カフ79、カーラ78、測定用カフ77を備えたが、これに限られるものではない。巻付用カフ79とカーラ78を省略して、測定用カフ77のみによって被測定部位を圧迫するようになっていてもよい。その場合、巻付用カフ79の圧力Ptと測定用カフ77の圧力Pcとの間の差圧ΔPに基づいて漏気検査結果を得るのに代えて、測定用カフ77の圧力(したがって、漏気量)を予め定められた期間だけ観測して、漏気検査結果を得ることができる。そして、その漏気検査結果が示す漏気レベルに応じて、上述のような通知制御を行うことができる。
【0116】
また、上述の実施形態では、血圧計1は、血圧測定が行われる都度、漏気検査を行ったが、これに限られるものではない。血圧測定が予め定められた複数回行われる度に、漏気検査を行ってもよい。また、血圧測定の回数とは別に、時間の経過に応じて定期的に漏気検査を行ってもよい。
【0117】
また、上述の実施形態では、血圧計1が病院に設置されているものとしたが、これに限られるものではない。血圧計1は、保健所、学校・会社の保健室など、他の医療機関に設置されてもよい。
【0118】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 血圧計
2 本体
3 カフ
4 スライド受け部
5 カフユニット
6 カバー
7 カフ構造体
77 測定用カフ
79 巻付用カフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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