(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】パイロットロック弁
(51)【国際特許分類】
F15B 11/08 20060101AFI20220928BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F15B11/08 B
F15B11/00 D
(21)【出願番号】P 2019089291
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】垣尾 雅文
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-131373(JP,A)
【文献】実開昭52-116722(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0206405(US,A1)
【文献】中国実用新案第206972991(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/08
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧アクチュエータと流体貯留部との間の流路に設けられるパイロットロック弁であって、
所定の軸方向に延びる第1の内周面を有する第1の弁収容部、前記流体圧アクチュエータに接続可能な第1のポート、および前記流体貯留部に接続可能な第2のポートを有する本体部と、
前記軸方向に延びる第1の外周面を有し、前記第1の弁収容部内において前記軸方向に往復移動可能に設けられた第1のポペットと、
第1および第2の連通孔を有し、前記第1の弁収容部の前記第1の内周面と前記第1のポペットの前記第1の外周面との間に配置された第1のスリーブと、
パイロット圧力を受けて前記第1のポペットを駆動する駆動部材とを備え、
前記第1のポートは、前記第1の内周面の第1の連通開口で前記第1の弁収容部に連通し、
前記第2のポートは、前記第1の内周面の第2の連通開口で前記第1の弁収容部に連通し、
前記第1のポペットは、前記駆動部材により駆動されないときに、前記第1のポートと前記第2のポートとを前記第1の外周面で互いに分離するように配置され、前記駆動部材により駆動されたときに、前記第1のポートと前記第2のポートとを前記第1のスリーブの前記第1の連通孔および前記第2の連通孔を通して連通させる第1の主流路が形成されるように移動し、
前記第1のスリーブは、前記流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力に応じて、前記第1の主流路の前記第1の連通孔における第1の開口面積および前記第2の連通孔における第2の開口面積のうち少なくとも一方が変化するように前記軸方向に移動可能に設けられた、パイロットロック弁。
【請求項2】
前記第1のスリーブは、前記流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力が大きいほど前記第1の開口面積および前記第2の開口面積の前記少なくとも一方が大きくなるように構成された、請求項1記載のパイロットロック弁。
【請求項3】
前記第1のポペットは、前記軸方向における第1の方向に付勢され、
前記第1のスリーブは、前記第1の方向とは逆の第2の方向に付勢され、
前記駆動部材は、前記パイロット圧力を受けて前記第1のポペットを前記第1の方向への付勢力に抗して前記第2の方向に移動させ、
前記本体部は、前記第1のスリーブが前記第2の方向への付勢力に抗して移動するように前記第1のポートに供給される流体の一部を前記第1の弁収容部に供給する流体供給通路を有する、請求項1または2記載のパイロットロック弁。
【請求項4】
前記第1の弁収容部は、前記第1のポペットおよび前記第1のスリーブにより第1および第2の内部空間に分離され、
前記流体供給通路は、前記第1の内部空間に連通し、前記第2のポートは、前記第1のポペットが前記第2の方向へ駆動されたときに前記第2の内部空間に連通し、
前記第1のスリーブは、前記第1の内部空間の圧力と前記第2の内部空間の圧力との差が大きいほど前記第1および第2の開口面積の前記少なくとも一方が大きくなるように移動する、請求項3記載のパイロットロック弁。
【請求項5】
前記駆動部材は、前記パイロット圧力を受けて前記軸方向に移動可能に設けられたピストンを含み、
前記第1のポペットと前記ピストンとの間にダンパ空間が形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のパイロットロック弁。
【請求項6】
前記第2のポートは、前記流体貯留部および流体供給部のいずれか一方に選択的に接続可能であり、
前記第1のポペットは、前記流体供給部により前記第2のポートに供給される流体の圧力を受けて、前記第2のポートと前記第1のポートとを前記第1のスリーブの前記第2の連通孔および前記第1の連通孔を通して連通させる第2の主流路が形成されるように移動する、請求項1~5のいずれか一項に記載のパイロットロック弁。
【請求項7】
前記本体部は、前記軸方向に延びる第2の内周面を有する第2の弁収容部、前記流体圧アクチュエータに接続可能な第3のポート、ならびに前記流体貯留部および前記流体供給部の一方に選択的に接続可能な第4のポートをさらに有し、
前記軸方向に延びる第2の外周面を有し、前記第2の弁収容部内において前記軸方向に往復移動可能に設けられた第2のポペットと、
第3および第4の連通孔を有し、前記第2の弁収容部の前記第2の内周面と前記第2のポペットの前記第2の外周面との間に配置された第2のスリーブとをさらに備え、
前記駆動部材は、前記第2のポートに前記流体貯留部が接続されかつ前記第4のポートに前記流体供給部が接続されているときに前記流体供給部からの流体の圧力を前記パイロット圧力として受けて前記第1のポペットを駆動し、前記第2のポートに前記流体供給部が接続されかつ前記第4のポートに前記流体貯留部が接続されているときに前記流体供給部からの流体の圧力を前記パイロット圧力として受けて前記第2のポペットを駆動し
前記第3のポートは、前記第2の内周面の第3の連通開口で前記第2の弁収容部に連通し、
前記第4のポートは、前記第2の内周面の第4の連通開口で前記第2の弁収容部に連通し、
前記第2のポペットは、前記駆動部材により駆動されないときに、前記第3のポートと前記第4のポートとを前記第2の外周面で互いに分離するように配置され、前記駆動部材により駆動されたときに、前記第3のポートと前記第4のポートとを前記第2のスリーブの前記第3の連通孔および前記第4の連通孔を通して連通させる第3の主流路が形成されるように移動し、
前記第2のスリーブは、前記流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力に応じて、前記第3の主流路の前記第3の連通孔における第3の開口面積および前記第4の連通孔における第4の開口面積のうち少なくとも一方が変化するように前記軸方向に移動可能に設けられた、請求項6記載のパイロットロック弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットロック弁に関する。
【背景技術】
【0002】
油等の作動流体の流れを制御するロック弁としてパイロットロック弁(パイロットチェック弁)が知られている。例えば、特許文献1には、ヘルムポンプと、シリンダと、タンクとの間に設けられたパイロットチェック弁が記載されている。このパイロットチェック弁は、パイロットピストン、左右のポペットおよび弁筐体を含む。パイロットピストンは、左右のポペットの間に位置する。弁筐体は、パイロットピストンおよび左右のポペットを収容する。
【0003】
弁筐体には、ヘルムポンプとシリンダとを接続する左の流路、およびタンクとシリンダとを接続する右の流路が形成される。また、左右の流路とそれぞれ交差する左右の隔壁が設けられ、各隔壁には開口が形成される。ヘルムポンプ未作動時には、左右のポペットが左右の隔壁の開口をそれぞれ閉止する。これにより、各流路が遮断され、シリンダは移動しない。
【0004】
ヘルムポンプの動作時には、例えば左の流路に油が流れ込む。この場合、油圧により、左のポペットが左方に移動して左の隔壁の開口を開放するとともにパイロットピストンが右方に移動する。また、右のポペットは、パイロットピストンの押棒部により押圧されて右方に移動し、右の隔壁の開口を開放する。これにより、左右の流路が開通され、ヘルムポンプからシリンダに油が流れ込むとともにシリンダからタンクに油が戻る。その結果、シリンダが右方に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のパイロットチェック弁においては、隔壁の開口の開放時には、パイロットピストンの押棒部が開口に挿通されるため、パイロットピストンの押棒部の外周部と隔壁の開口の内周部との間の円環状の領域が実質的な流路となる。当該流路の断面積が小さい場合、圧力損失が大きくなるので、流路の断面積を大きくすることが望まれる。
【0007】
しかしながら、流路の断面積を大きくするには、隔壁の開口の径と、当該開口を開閉するポペットの径とを大きくする必要があるため、弁筐体が大型化する。そのため、パイロットチェック弁のコストが増大するとともに、パイロットチェック弁の配置の自由度が低下する。
【0008】
本発明の目的は、大型化することなく圧力損失が低減されたパイロットロック弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従う態様は、流体圧アクチュエータと流体貯留部との間の流路に設けられるパイロットロック弁であって、所定の軸方向に延びる第1の内周面を有する第1の弁収容部、前記流体圧アクチュエータに接続可能な第1のポート、および前記流体貯留部に接続可能な第2のポートを有する本体部と、前記軸方向に延びる第1の外周面を有し、前記第1の弁収容部内において前記軸方向に往復移動可能に設けられた第1のポペットと、第1および第2の連通孔を有し、前記第1の弁収容部の前記第1の内周面と前記第1のポペットの前記第1の外周面との間に配置された第1のスリーブと、パイロット圧力を受けて前記第1のポペットを駆動する駆動部材とを備え、前記第1のポートは、前記第1の内周面の第1の連通開口で前記第1の弁収容部に連通し、前記第2のポートは、前記第1の内周面の第2の連通開口で前記第1の弁収容部に連通し、前記第1のポペットは、前記駆動部材により駆動されないときに、前記第1のポートと前記第2のポートとを前記第1の外周面で互いに分離するように配置され、前記駆動部材により駆動されたときに、前記第1のポートと前記第2のポートとを前記第1のスリーブの前記第1の連通孔および前記第2の連通孔を通して連通させる第1の主流路が形成されるように移動し、前記第1のスリーブは、前記流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力に応じて、前記第1の主流路の前記第1の連通孔における第1の開口面積および前記第2の連通孔における第2の開口面積のうち少なくとも一方が変化するように前記軸方向に移動可能に設けられた、パイロットロック弁に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パイロットロック弁を大型化することなく圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るパイロットロック弁を備える作業機械の構成を示す図である。
【
図2】
図1のパイロットロック弁の構成を示す断面図である。
【
図3】
図2のパイロットロック弁の拡大部分断面図である。
【
図4】パイロットロック弁の接続関係を示す図である。
【
図5】パイロットロック弁の接続関係を示す図である。
【
図6】パイロットロック弁の動作を説明するための図である。
【
図7】パイロットロック弁の動作を説明するための図である。
【
図8】ポート間が開通している場合におけるパイロットロック弁の拡大部分断面図である。
【
図9】ポート間が開通している場合におけるパイロットロック弁の拡大部分断面図である。
【
図10】参考例に係るパイロットロック弁の構成を示す断面図である。
【
図11】
図10のパイロットロック弁の動作を説明するための図である。
【
図12】
図11のパイロットロック弁のA-A線断面図である。
【
図13】実施例および比較例における圧力損失の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)作業機械
本発明の一実施の形態に係るパイロットロック弁について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るパイロットロック弁を含む作業機械の構成を示す図である。
図1に示すように、作業機械200は、パイロットロック弁100、流体貯留部110、流体供給部120および流体圧アクチュエータ130を備える。
【0013】
また、本実施の形態においては、作業機械200はフォークリフトであり、フォーク(ツメ)210、シート220および操作子230をさらに備える。なお、実施の形態はこれに限定されず、作業機械200はフォークリフト以外の作業機械であってもよい。
【0014】
フォーク210は、作業対象の荷物を昇降させる。シート220には、作業機械200の使用者(以下、作業者と呼ぶ。)が着席する。シート220の下方には、シートスイッチ221が設けられる。作業者がシート220に着席しているときには、シートスイッチ221がオン状態となる。一方、作業者がシート220から離席しているときには、シートスイッチ221はオフ状態となる。
【0015】
操作子230は、例えばフォーク210を操作するためのシフトレバーであり、作業者により操作される。操作子230は、ニュートラル状態、第1の動作状態または第2の動作状態のいずれかにあり、作業者により操作されないとき(作業者が操作子230から手を離したとき)にはニュートラル状態となる。
【0016】
パイロットロック弁100は、流体貯留部110と流体供給部120と流体圧アクチュエータ130との間の流路に設けられる。パイロットロック弁100の構成の詳細については後述する。本例では、パイロットロック弁100と、流体貯留部110および流体供給部120との間に方向制御弁231が介挿される。方向制御弁231は、操作子230の状態に対応して、パイロットロック弁100と流体貯留部110および流体供給部120との間の接続関係を切り替える。
【0017】
流体貯留部110は、例えばタンクであり、油等の作動流体(以下、単に流体と略記する。)を貯留する。流体供給部120は、例えばポンプであり、流体貯留部110に貯留された流体を方向制御弁231に向けて圧送する。また、流体供給部120には、流体貯留部110から圧送される流体を流体貯留部110に戻すための戻り管121が接続される。戻り管121には、電磁アンロード弁222が介挿される。電磁アンロード弁222は、シートスイッチ221がオン状態のときに閉止状態となり、シートスイッチ221がオフ状態のときに開放状態となる。
【0018】
流体圧アクチュエータ130は、例えばフォーク210を左右にシフトさせる流体圧シリンダ(フォークシフタ)であり、流体の圧力により動作する。なお、本例では、流体圧シリンダである流体圧アクチュエータ130は、ピストン131(後述する
図4参照)を含む。流体圧アクチュエータ130が動作することは、ピストン131が所定の方向またはその逆方向に移動することを意味する。
【0019】
(2)パイロットロック弁の構造
図2は、
図1のパイロットロック弁100の構成を示す断面図である。
図2に示すように、パイロットロック弁100は、一方向に延びる筒状の本体部10および駆動部材20を含む。本体部10が延びる方向を軸方向と呼ぶ。本体部10内には、軸方向に延びるように空洞部が形成される。軸方向における空洞部の中央付近の部分を中央収容部11と呼ぶ。軸方向における空洞部の両端部の各々を弁収容部12と呼ぶ。すなわち、中央収容部11は、軸方向において一対の弁収容部12の間に位置する。
【0020】
本体部10の両端部の各々には、外側面の一部から弁収容部12の内周面13まで貫通するポート1が形成されるとともに、外側面の他の一部から弁収容部12の内周面13まで貫通するポート2が形成される。したがって、一方のポート1は、一方の内周面13の連通開口14で一方の弁収容部12に連通する。一方のポート2は、一方の内周面13の連通開口15で一方の弁収容部12に連通する。他方のポート1は、他方の内周面13の連通開口14で他方の弁収容部12に連通する。他方のポート2は、他方の内周面13の連通開口15で他方の弁収容部12に連通する。なお、内周面13の形状は、円形であってもよいし、多角形等の他の形状であってもよい。
【0021】
駆動部材20は、例えばパイロット圧力(流体の圧力)を受けて駆動するピストンを含み、ピストン本体21と一対の押棒部22とにより構成される。一対の押棒部22は、軸方向におけるピストン本体21の両端部からそれぞれ突出して延びる。中央収容部11には、ピストン本体21が軸方向に往復移動可能に収容される。ピストン本体21は、一対の弁収容部12間の作業流体の移動を阻止する。
【0022】
各弁収容部12には、バルブボディ30、プラグ40、スリーブ50およびポペット60およびバネ部材70,80が設けられる。以下、一方の弁収容部12の構成について説明する。他方の弁収容部12の構成は、一方の弁収容部12の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0023】
図3は、
図2のパイロットロック弁100の拡大部分断面図である。
図3に示すように、バルブボディ30は、筒状の側面部31と底面部32とを含む。底面部32は、側面部31の一端部を閉塞する。バルブボディ30は、底面部32が駆動部材20のピストン本体21の方(内方)を向く状態で弁収容部12に挿入される。
【0024】
側面部31には、ポート1,2にそれぞれつながる連通孔33,34が形成される。底面部32には、駆動部材20の一方の押棒部22を軸方向に移動可能に保持する開口35が形成される。バルブボディ30の側面部31における他端部は、本体部10から軸方向に突出した状態で開口する。側面部31の他端部の開口36にプラグ40が充填される。これにより、側面部31の開口36が閉塞される。
【0025】
スリーブ50は、筒状の側面部51と底面部52とを含み、軸方向に移動可能にかつ底面部52が内方を向く状態でバルブボディ30の内部に収容される。側面部51には、連通孔33に対応する連通孔53,54が形成されるとともに、連通孔34に対応する連通孔55,56が形成される。軸方向におけるスリーブ50の位置によっては、連通孔53または連通孔54が連通孔33(ポート1)に重なり、連通孔55または連通孔56が連通孔34(ポート2)に重なる。また、底面部52には、連通孔57が形成される。各連通孔53~57の形状は、例えば円形であるが、他の形状であってもよい。
【0026】
ポペット60は、軸方向に延びる棒状を有し、軸方向に移動可能にスリーブ50の内部に配置される。したがって、スリーブ50は、弁収容部12の内周面13とポペット60の外周面61との間に位置する。外周面61の断面形状は、円形であってもよいし、多角形等の他の形状であってもよい。軸方向におけるポペット60の位置によっては、ポペット60はスリーブ50の連通孔53~57の少なくとも一部を閉塞する。ポペット60の外周面61により閉塞される各連通孔53~56の部分の面積は、軸方向におけるポペット60の位置により変化する。
【0027】
弁収容部12は、スリーブ50およびポペット60により内部空間16と内部空間17とに分離される。また、本体部10には、ポート1から内部空間16に連通する流体供給通路18が形成される。ポート2は、ポペット60が開口36の方(外方)へ駆動されたときに流体供給通路18に連通する。
【0028】
バネ部材70は、駆動部材20の一方の押棒部22を取り囲む状態で、内部空間17におけるバルブボディ30の底面部32とスリーブ50の底面部52との間に配置される。バネ部材70は、スリーブ50をバルブボディ30の底面部32に支持するとともに、外方に向けて付勢する。バネ部材80は、内部空間16におけるプラグ40とポペット60の一方の端面(後端面63)との間に配置される。バネ部材は、ポペット60をプラグ40に支持するとともに内方に向けて付勢する。
【0029】
バネ部材70,80は、操作子230がニュートラル状態にあるときには、スリーブ50の連通孔53~56がポペット60の外周面61により閉塞され、スリーブ50の連通孔57がポペット60の他方の端面(先端面62)により閉塞されるように構成される。すなわち、ポペット60は、駆動部材20により駆動されないときには、ポート1とポート2とを外周面61で互いに分離する。
【0030】
一方、ポペット60は、操作子230が第1または第2の動作状態にあるときには、駆動部材20により駆動される。この場合、ポペット60は、連通孔53,54の少なくとも一部が開放されかつ連通孔55~57の少なくとも一部が開放されるように移動する。これにより、ポート1とポート2とを連通させる主流路が形成され、弁収容部12を通してポート1とポート2との間で流体の移動が可能となる。以下、パイロットロック弁100の動作について説明する。
【0031】
(3)パイロットロック弁の動作
以下の
図4~7においては、一方および他方の弁収容部12をそれぞれ弁収容部12a,12bと呼ぶ。また、弁収容部12aに対応する構成要素については、当該構成要素の符号に“a”を追加して説明する。弁収容部12bに対応する構成要素については、当該構成要素の符号に“b”を追加して説明する。例えば、弁収容部12aに対応するポート1,2はそれぞれポート1a,2aと記載され、弁収容部12bに対応するポート1,2はそれぞれポート1b,2bと記載される。
【0032】
図4および
図5は、パイロットロック弁100の接続関係を示す図である。
図4および
図5に示すように、パイロットロック弁100のポート1a,1bは、流体圧アクチュエータ130の一端部および他端部にそれぞれ接続される。パイロットロック弁100のポート2a,2bは、方向制御弁231に接続される。方向制御弁231は、流体貯留部110および流体供給部120に接続され、操作子230の状態に対応してポート2a,2bと流体貯留部110および流体供給部120との接続関係を切り替える。
【0033】
具体的には、操作子230が第1の動作状態にあるときに、方向制御弁231は、ポート2aと流体貯留部110とを接続し、ポート2bと流体供給部120とを接続する。操作子230が第2の動作状態にあるときに、方向制御弁231は、ポート2aと流体供給部120とを接続し、ポート2bと流体貯留部110とを接続する。操作子230がニュートラル状態にあるときに、方向制御弁231は、ポート2a,2bと流体貯留部110および流体供給部120との接続を遮断する。
【0034】
図4の例では、操作子230はニュートラル状態にある。この場合、スリーブ50aの連通孔53a~57aがポペット60aにより閉塞されるため、ポート1aとポート2aとの間で流体が移動しない。また、スリーブ50bの連通孔53b~57bがポペット60bにより閉塞されるため、ポート1bとポート2bとの間で流体が移動しない。したがって、電磁アンロード弁222の状態に関わらず、流体圧アクチュエータ130は動作しない。なお、
図4の例では、作業者が
図1のシート220に着座しているので、電磁アンロード弁222は閉止状態となる。
【0035】
図5の例では、作業者が離席した状態(シートスイッチ221がオフ状態)にある。この場合、流体供給部120から流体貯留部110への戻り管121に介挿された電磁アンロード弁222は開放状態となるため、流体供給部120により圧送される流体の大部分は、戻り管121を通して流体貯留部110に戻される。したがって、流体は方向制御弁231にほとんど供給されない。この状態をアンロード状態と呼ぶ。アンロード状態においては、方向制御弁231に供給される流体の圧力は、ポペット60a,60bのクラッキング圧力よりも小さい。
【0036】
ここで、操作子230がニュートラル状態から異なる動作状態(
図5の例では第1の動作状態)に切り替えられると、ポート1aから流体供給通路18aを通して内部空間16aに流体の一部が流入する。この場合、流体の圧力によりスリーブ50aがバネ部材70aによる外方への付勢力に抗してバネ部材70aを縮めながら内方に移動する。また、流体の圧力およびバネ部材80aの付勢力によりポペット60aが内方に移動し、駆動部材20の押棒部22aの端面に当接する。この場合でも、スリーブ50aの連通孔53a~57aがポペット60aにより閉塞されたままの状態が維持されるため、ポート1aとポート2aとの間で流体が移動しない。
【0037】
一方、駆動部材20は、ポペット60aにより押圧されることによりポペット60bに近づく方向に移動するが、押棒部22bの先端面がポペット60bに接触するほど大きくは移動しない。したがって、スリーブ50bの連通孔53b~57bがポペット60bにより閉塞されたままの状態が維持されることとなり、ポート1bとポート2bとの間で流体が移動しない。このように、作業者の離席時においては、操作子230が第1または第2の動作状態に切り替えられた場合でも、流体圧アクチュエータ130が動作することが防止される。これにより、作業機械200の信頼性を向上させることができる。
【0038】
図6および
図7は、パイロットロック弁100の動作を説明するための図である。
図6および
図7の例では、作業者が
図1のシート220に着座した状態(電磁アンロード弁222が閉止された状態)で、操作子230が第1の動作状態に切り替えられる。この場合、
図5の例と同様に、
図6に示すように、弁収容部12aにおいて、ポート1aから流体供給通路18aを通して内部空間16aに流体の一部が流入することにより、スリーブ50aおよびポペット60aが内方に移動し始める。
【0039】
一方で、弁収容部12bには、流体供給部120によりポート2bを通して流体が供給される。この場合、流体の圧力により駆動部材20がポペット60aの方に移動し、押棒部22aの先端面がポペット60aに当接する。このとき、中央収容部11におけるピストン本体21とバルブボディ30aとの間の空間がダンパ空間19となる。
【0040】
具体的には、駆動部材20がバルブボディ30aに近づくにつれてダンパ空間19の圧力が上昇することにより、駆動部材20の移動速度が低下する。したがって、押棒部22aが強い勢いでポペット60aに当接することがない。これにより、押棒部22aまたはポペット60aが損傷することが防止される。また、押棒部22aがポペット60aに当接する際に衝撃音が発生することが防止される。その後、
図7に示すように、駆動部材20は、押棒部22aによりポペット60aを内方への付勢力に抗して外方に押圧する。
【0041】
ポペット60aは押棒部22により押圧されることにより外方に移動する。ここで、スリーブ50aとポペット60aとの移動方向は逆であるため、ポペット60aはスリーブ50aから離脱し、スリーブ50aの連通孔53a~57aが開放される。また、バルブボディ30aの連通孔33a,34aは、スリーブ50aの連通孔53a,56aとそれぞれ重なる。これにより、ポート1aとポート2aとの間が、連通孔33a,53a,56a,34aを通して弁収容部12a内で開通する。
【0042】
弁収容部12bにおいては、ポート2bから供給される流体の圧力によりポペット60bがバネ部材80bを縮めながら外方に移動する。この場合、スリーブ50bの連通孔54b,56b,57bが開放される。また、バルブボディ30bの連通孔33bは、スリーブ50bの連通孔54bと重なる。これにより、ポート2bとポート1bとの間が、連通孔34b,57b,54b,33bを通して弁収容部12b内で開通する。
【0043】
上記のパイロットロック弁100の動作によれば、流体圧アクチュエータ130の一端部に接続されたポート1aから流体貯留部110に接続されたポート2aに流体が移動するための主流路101が形成される。これにより、ポート1aとポート2aとが連通する。また、流体供給部120に接続されたポート2bから流体圧アクチュエータ130の他端部に接続されたポート1bに流体が移動するための主流路102が形成される。これにより、ポート2bとポート1bとが連通する。これらの結果、ピストン131が一方向に移動するように流体圧アクチュエータ130が動作する。
【0044】
同様に、操作子230が第2の動作状態に切り替えられた場合には、流体圧アクチュエータ130の他端部に接続されたポート1bから流体貯留部110に接続されたポート2bに流体が移動するための主流路101が形成される。これにより、ポート1bとポート2bとが連通する。また、流体供給部120に接続されたポート2aから流体圧アクチュエータ130の一端部に接続されたポート1aに流体が移動するための主流路102が形成される。これにより、ポート2aとポート1aとが連通する。これらの結果、ピストン131が他方向に移動するように流体圧アクチュエータ130が動作する。
【0045】
図8および
図9は、ポート1,2間が開通している場合におけるパイロットロック弁100の拡大部分断面図である。
図8の例においては、ポート1に供給される流体の流量(圧力)が大きい。この場合、内部空間16の圧力と内部空間17の圧力との差が大きいので、スリーブ50の移動量が大きい。この移動量においては、スリーブ50は、主流路101の連通孔53における開口面積(
図8のX部)が大きく、かつ主流路101の連通孔56における開口面積(
図8のY部)が大きくなるように構成される。これにより、圧力損失を低減することができる。
【0046】
一方、
図9の例においては、ポート1に供給される流体の流量が小さい。この場合、内部空間16の圧力と内部空間17の圧力との差が小さいので、スリーブ50の移動量が小さい。この移動量においては、主流路101の連通孔53における開口面積(
図9のX部)が小さく、かつ主流路101の連通孔56における開口面積(
図9のY部)が小さくなる。しかしながら、流体の流量が小さいので、過剰な圧力損失は発生しない。
【0047】
このように、スリーブ50は、流体圧アクチュエータ130から供給される流体の圧力に応じて、主流路101の連通孔53における開口面積および連通孔56における開口面積が変化するように軸方向に移動する。なお、スリーブ50は、上記の流体の圧力に応じて、主流路101の連通孔53における開口面積および連通孔56における開口面積のいずれか一方のみが変化するように軸方向に移動してもよい。
【0048】
本例では、流体の流量が所定値以上である場合には、スリーブ50の移動量は最大となり、主流路の連通孔53における開口面積および連通孔56における開口面積が最大の一定値になる。この流体の流量の領域を固定絞り領域と呼ぶ。流体の流量が所定の値よりも小さい場合には、スリーブ50の移動量に応じて、主流路の連通孔53における開口面積および連通孔56における開口面積が変化する。この流体の流量の領域を可変絞り領域と呼ぶ。
【0049】
(4)実施例および比較例
図10は、参考例に係るパイロットロック弁の構成を示す断面図である。
図10に示すように、パイロットロック弁300は、本体部310、ピストン320および左右のポペット330,340を含む。本体部310は、左右方向に延びる筒状を有し、ピストン320およびポペット330,340を収容する。左右方向における本体部310の両端部は閉塞されている。
【0050】
本体部310の内部には、左右の隔壁350,360が平行にかつ離間するように設けられる。これにより、本体部310の内部の空間が3つに区画される。本体部310の内部において、隔壁350,360の間の空間を中央空間311と呼び、隔壁350よりも左空間312と呼び、隔壁360よりも右の空間を右空間313と呼ぶ。隔壁350,360には、開口351,361がそれぞれ形成される。
【0051】
ピストン320は、ピストン本体321と左右の押棒部322,323とを含む。ピストン320のピストン本体321は、左右方向に移動可能に中央空間311に配置される。押棒部322,323は、ピストン本体321の左右の端面からそれぞれ突出して延びる。ポペット330は、左空間312に配置され、隔壁350の開口351を左方から閉塞するように付勢される。ポペット340は、右空間313に配置され、隔壁360の開口361を右方から閉塞するように付勢される。
【0052】
本体部310の側面部には、ポート314~317が形成される。ポート314は、外部から中央空間311におけるピストン本体321と隔壁350との間の領域まで貫通する。ポート315は、外部から中央空間311におけるピストン本体321と隔壁360との間の領域まで貫通する。ポート316は、外部から左空間312まで貫通する。ポート317は、外部から右空間313まで貫通する。ポート314,315は、流体供給部120および流体貯留部110にそれぞれ接続される。ポート316,317は、流体圧アクチュエータ130の一端部および他端部にそれぞれ接続される。
【0053】
図11は、
図10のパイロットロック弁300の動作を説明するための図である。
図12は、
図11のパイロットロック弁300のA-A線断面図である。
図11に太い矢印で示すように、流体供給部120の動作時には、流体がポート314から流れ込む。この場合、流体の圧力によりポペット330が左方に移動して隔壁350の開口351を開放するとともにピストン320が右方に移動する。
【0054】
また、ポペット340は、押棒部323により押圧されて右方に移動し、隔壁360の開口361を開放する。これにより、ポート314,316間の流路およびポート315,317間の流路が開通され、流体供給部120から流体圧アクチュエータ130に流体が流れ込むとともに流体圧アクチュエータ130から流体貯留部110に流体が戻る。その結果、流体圧アクチュエータ130が動作する。
【0055】
ここで、
図12に示すように、隔壁360の開口361の開放時には、押棒部323が開口361に挿通されるため、押棒部323の外周部と開口361の内周部との間の円環状の領域が実質的な流路318となる。したがって、流路318の断面積が小さい場合、圧力損失が大きくなる。
【0056】
実施例として、
図2のパイロットロック弁100を用いて圧力損失を測定した。また、比較例として、実施例に係るパイロットロック弁100と同程度の径を有するパイロットロック弁300を用いて圧力損失を測定した。
図13は、実施例および比較例における圧力損失の測定結果を示す図である。
図13の横軸は流体の流量を示し、縦軸は圧力損失を示す。また、実線は実施例における測定結果を示し、点線は比較例における測定結果を示す。
【0057】
図13に示すように、流体の流量が小さい可変絞り領域においては、実施例における圧力損失は比較例における圧力損失よりも大きくなることが測定された。しかしながら、実用上、可変絞り領域でパイロットロック弁100が使用されることはほとんどない。また、上記のように、可変絞り領域においては、流体の流量が小さいため、過剰な圧力損失は発生しない。
【0058】
一方で、固定絞り領域においては、流体の流量が大きくなるほど、実施例における圧力損失と比較例における圧力損失との差が小さくなることが測定された。また、一点鎖線で示されるように、実用的に使用される流体の流量の領域においては、実施例における圧力損失は比較例における圧力損失よりも小さくなることが測定された。これにより、実施例に係るパイロットロック弁100によれば、本体部10を大型化することなく圧力損失が低減されることが確認された。
【0059】
(5)効果
本実施の形態に係るパイロットロック弁100においては、本体部10における弁収容部12の内周面13と、ポペット60の外周面61との間にスリーブ50が配置される。本体部10のポート1は、流体圧アクチュエータ130に接続可能であり、内周面13の連通開口14で弁収容部12に連通する。本体部10のポート2は、流体貯留部110および流体供給部120のいずれか一方に選択的に接続可能であり、内周面13の連通開口15で弁収容部12に連通する。
【0060】
駆動部材20がポペット60を駆動しないときには、ポート1とポート2とがポペット60の外周面61により互いに分離される。一方、パイロット圧力を受けて駆動部材20がポペット60を駆動するときには、ポート1とポート2とをスリーブ50の連通孔53,54のいずれかと連通孔55~57のいずれかとを通して連通させる主流路101が形成されるように、弁収容部12内において軸方向にポペット60が移動する。ここで、流体圧アクチュエータ130から供給される流体の圧力に応じて、スリーブ50が軸方向に移動することにより、主流路101の連通孔53,54における開口面積および連通孔55~57における開口面積のうち少なくとも一方が変化する。
【0061】
この構成によれば、弁収容部12の内周面13の寸法を径方向に大型化することなく、主流路101の連通孔55~57のいずれかを大きくすることが可能になる。また、主流路101の連通孔55~57における開口面積は、流体の流量に応じて変化するので、主流路101で過剰な圧力損失が発生することがない。特に、ポペット60の移動方向とスリーブ50の移動方向とが逆であるため、流体圧アクチュエータ130から供給される流体の圧力が比較的小さい場合でも、開口面積を大きくすることが可能になる。これにより、パイロットロック弁100を大型化することなく圧力損失を低減することができる。
【0062】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明する。上記実施の形態においては、弁収容部12a,12bがそれぞれ第1および第2の弁収容部の例であり、内部空間16,17がそれぞれ第1および第2の内部空間の例である。
【0063】
弁収容部12aにおける内周面13が第1の内周面の例であり、ポート1,2がそれぞれ第1および第2のポートの例であり、外周面61が第1の外周面の例であり、ポペット60が第1のポペットの例である。弁収容部12aにおける連通孔53,54のいずれかが第1の連通孔の例であり、連通孔55~57のいずれかが第2の連通孔の例であり、スリーブ50が第1のスリーブの例であり、連通開口14,15がそれぞれ第1および第2の連通開口の例である。
【0064】
弁収容部12bにおける内周面13が第2の内周面の例であり、ポート1,2がそれぞれ第3および第4のポートの例であり、外周面61が第2の外周面の例であり、ポペット60が第2のポペットの例である。弁収容部12bにおける連通孔53,54のいずれかが第3の連通孔の例であり、連通孔55~57のいずれかが第4の連通孔の例であり、スリーブ50が第2のスリーブの例であり、連通開口14,15がそれぞれ第3および第4の連通開口の例である。
【0065】
操作子230が第1の動作状態にあるときには、弁収容部12aにおける主流路101が第1の主流路の例である。操作子230が第2の動作状態にあるときには、弁収容部12aにおける主流路102が第2の主流路の例であり、弁収容部12bにおける主流路101が第3の主流路の例である。
【0066】
(7)態様
(第1項)一態様に係るパイロットロック弁は、
流体圧アクチュエータと流体貯留部との間の流路に設けられるパイロットロック弁であって、
所定の軸方向に延びる第1の内周面を有する第1の弁収容部、前記流体圧アクチュエータに接続可能な第1のポート、および前記流体貯留部に接続可能な第2のポートを有する本体部と、
前記軸方向に延びる第1の外周面を有し、前記第1の弁収容部内において前記軸方向に往復移動可能に設けられた第1のポペットと、
第1および第2の連通孔を有し、前記第1の弁収容部の前記第1の内周面と前記第1のポペットの前記第1の外周面との間に配置された第1のスリーブと、
パイロット圧力を受けて前記第1のポペットを駆動する駆動部材とを備え、
前記第1のポートは、前記第1の内周面の第1の連通開口で前記第1の弁収容部に連通し、
前記第2のポートは、前記第1の内周面の第2の連通開口で前記第1の弁収容部に連通し、
前記第1のポペットは、前記駆動部材により駆動されないときに、前記第1のポートと前記第2のポートとを前記第1の外周面で互いに分離するように配置され、前記駆動部材により駆動されたときに、前記第1のポートと前記第2のポートとを前記第1のスリーブの前記第1の連通孔および前記第2の連通孔を通して連通させる第1の主流路が形成されるように移動し、
前記第1のスリーブは、前記流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力に応じて、前記第1の主流路の前記第1の連通孔における第1の開口面積および前記第2の連通孔における第2の開口面積のうち少なくとも一方が変化するように前記軸方向に移動可能に設けられてもよい。
【0067】
このパイロットロック弁においては、本体部における第1の弁収容部の第1の内周面と、第1のポペットの第1の外周面との間に第1のスリーブが配置される。本体部の第1のポートは、流体圧アクチュエータに接続可能であり、第1の内周面の第1の連通開口で第1の弁収容部に連通する。本体部の第2のポートは、流体貯留部に接続可能であり、第1の内周面の第2の連通開口で第1の弁収容部に連通する。
【0068】
駆動部材が第1のポペットを駆動しないときには、第1のポートと第2のポートとが第1のポペットの第1の外周面により互いに分離される。一方、パイロット圧力を受けて駆動部材が第1のポペットを駆動するときには、第1のポートと第2のポートとを第1のスリーブの第1の連通孔および第2の連通孔を通して連通させる第1の主流路が形成されるように、第1の弁収容部内において軸方向に第1のポペットが移動する。ここで、流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力に応じて、第1のスリーブが軸方向に移動することにより、第1の主流路の第1の連通孔における第1の開口面積および第2の連通孔における第2の開口面積のうち少なくとも一方が変化する。
【0069】
この構成によれば、第1の弁収容部の第1の内周面の寸法を径方向に大型化することなく、第1の主流路の第1または第2の連通孔を大きくすることが可能になる。また、第1の連通孔における第1の開口面積または第2の連通孔における第2の開口面積は、流体の流量に応じて変化するので、第1の主流路で過剰な圧力損失が発生することがない。これにより、パイロットロック弁を大型化することなく圧力損失を低減することができる。
【0070】
(第2項)第1項に記載のパイロットロック弁において、
前記第1のスリーブは、前記流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力が大きいほど前記第1の開口面積および前記第2の開口面積の前記少なくとも一方が大きくなるように構成されてもよい。
【0071】
この場合、流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力が大きいほど第1の開口面積または第2の開口面積が大きくなる。これにより、流体の流量が大きい場合、圧力損失をより効率的に低減することができる。
【0072】
(第3項)第1または2項に記載のパイロットロック弁において、
前記第1のポペットは、前記軸方向における第1の方向に付勢され、
前記第1のスリーブは、前記第1の方向とは逆の第2の方向に付勢され、
前記駆動部材は、前記パイロット圧力を受けて前記第1のポペットを前記第1の方向への付勢力に抗して前記第2の方向に移動させ、
前記本体部は、前記第1のスリーブが前記第2の方向への付勢力に抗して移動するように前記第1のポートに供給される流体の一部を前記第1の弁収容部に供給する流体供給通路を有してもよい。
【0073】
この場合、第1のポペットの移動方向と第1のスリーブの移動方向とが逆であるため、流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力が比較的小さい場合でも、第1の開口面積および第2の開口面積の少なくとも一方を大きくすることが可能になる。これにより、圧力損失をより低減することができる。
【0074】
(第4項)第3項に記載のパイロットロック弁において、
前記第1の弁収容部は、前記第1のポペットおよび前記第1のスリーブにより第1および第2の内部空間に分離され、
前記流体供給通路は、前記第1の内部空間に連通し、前記第2のポートは、前記第1のポペットが前記第2の方向へ駆動されたときに前記第2の内部空間に連通し、
前記第1のスリーブは、前記第1の内部空間の圧力と前記第2の内部空間の圧力との差が大きいほど前記第1および第2の開口面積の前記少なくとも一方が大きくなるように移動してもよい。
【0075】
この場合、第1の開口面積または第2の開口面積を流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力に応じて容易に変化させることができる。
【0076】
(第5項)第1~4のいずれか一項に記載のパイロットロック弁において、
前記駆動部材は、前記パイロット圧力を受けて前記軸方向に移動可能に設けられたピストンを含み、
前記第1のポペットと前記ピストンとの間にダンパ空間が形成されてもよい。
【0077】
この場合、第1のポペットを駆動するときのピストンの勢いがダンパ空間により低減される。これにより、ピストンまたは第1のポペットが損傷することが防止される。第1のポペットを駆動するときに衝撃音が発生することが防止される。
【0078】
(第6項)第1~5のいずれか一項に記載のパイロットロック弁において、
前記第2のポートは、前記流体貯留部および流体供給部のいずれか一方に選択的に接続可能であり、
前記第1のポペットは、前記流体供給部により前記第2のポートに供給される流体の圧力を受けて、前記第2のポートと前記第1のポートとを前記第1のスリーブの前記第2の連通孔および前記第1の連通孔を通して連通させる第2の主流路が形成されるように移動してもよい。
【0079】
この場合、第2のポートに接続された流体供給部から第2の主流路を通して第1のポートに接続された流体圧アクチュエータに流体が供給される。これにより、流体圧アクチュエータを動作させることができる。
【0080】
(第7項)第6項に記載のパイロットロック弁において、
前記本体部は、前記軸方向に延びる第2の内周面を有する第2の弁収容部、前記流体圧アクチュエータに接続可能な第3のポート、ならびに前記流体貯留部および前記流体供給部の一方に選択的に接続可能な第4のポートをさらに有し、
前記軸方向に延びる第2の外周面を有し、前記第2の弁収容部内において前記軸方向に往復移動可能に設けられた第2のポペットと、
第3および第4の連通孔を有し、前記第2の弁収容部の前記第2の内周面と前記第2のポペットの前記第2の外周面との間に配置された第2のスリーブとをさらに備え、
前記駆動部材は、前記第2のポートに前記流体貯留部が接続されかつ前記第4のポートに前記流体供給部が接続されているときに前記流体供給部からの流体の圧力を前記パイロット圧力として受けて前記第1のポペットを駆動し、前記第2のポートに前記流体供給部が接続されかつ前記第4のポートに前記流体貯留部が接続されているときに前記流体供給部からの流体の圧力を前記パイロット圧力として受けて前記第2のポペットを駆動し
前記第3のポートは、前記第2の内周面の第3の連通開口で前記第2の弁収容部に連通し、
前記第4のポートは、前記第2の内周面の第4の連通開口で前記第2の弁収容部に連通し、
前記第2のポペットは、前記駆動部材により駆動されないときに、前記第3のポートと前記第4のポートとを前記第2の外周面で互いに分離するように配置され、前記駆動部材により駆動されたときに、前記第3のポートと前記第4のポートとを前記第2のスリーブの前記第3の連通孔および前記第4の連通孔を通して連通させる第3の主流路が形成されるように移動し、
前記第2のスリーブは、前記流体圧アクチュエータから供給される流体の圧力に応じて、前記第3の主流路の前記第3の連通孔における第3の開口面積および前記第4の連通孔における第4の開口面積のうち少なくとも一方が変化するように前記軸方向に移動可能に設けられてもよい。
【0081】
この場合、第2または第4のポートに選択的に接続された流体供給部からの流体の圧力がパイロット圧力として駆動部材に与えられる。これにより、第1または第2のポペットを選択的に駆動し、第1~第3の主流路を選択的に形成することができる。
【符号の説明】
【0082】
1,2,314~317…ポート,10,310…本体部,11…中央収容部,12,…弁収容部,13…内周面,14,15…連通開口,16,17…内部空間,18…流体供給通路,19…ダンパ空間,20…駆動部材,21,321…ピストン本体,22,322,323…押棒部,30…バルブボディ,31,51…側面部,32,52…底面部,33,34,53~57…連通孔,35,36,351,361…開口,40…プラグ,50…スリーブ,60,330,340…ポペット,61…外周面,62…先端面,63…後端面,70,80…バネ部材,100,300…パイロットロック弁,101,102…主流路,110…流体貯留部,120…流体供給部,121…戻り管,130…流体圧アクチュエータ,131,320…ピストン,200…作業機械,210…フォーク,220…シート,221…シートスイッチ,222…電磁アンロード弁,230…操作子,231…方向制御弁,318…流路,350,360…隔壁