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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20220928BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220928BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F27/28 S
H01F27/29 G
H01F27/29 123
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2019125448
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021012920
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】野矢 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】後藤田 朋孝
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-082463(JP,A)
【文献】特開2018-142644(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204112(JP,U)
【文献】特開2017-163026(JP,A)
【文献】特開2015-032643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/28
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを含むコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示
自己共振周波数が800MHz以上である、インダクタ部品。
【請求項2】
前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において、前記インダクタ部品の幅寸法が0.36mm以下である、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において、前記インダクタ部品の幅寸法が0.33mm以下である、請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において、前記インダクタ部品の幅寸法が0.30mm以下である、請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記軸部の延びる第1の方向と直交する前記軸部の断面の面積は、前記第1の方向と直交する前記支持部の断面の面積の35%以上75%以下の範囲内である、請求項1から4の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の40%以上70%以下の範囲内である、請求項5に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の45%以上65%以下の範囲内である、請求項6に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の50%以上60%以下の範囲内である、請求項7に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の55%である、請求項8に記載のインダクタ部品。
【請求項10】
620nH以上740nH以下の範囲内のインダクタンス値を示す、請求項1から9の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項11】
680nHのインダクタンス値を示す、請求項10に記載のインダクタ部品。
【請求項12】
周波数が300MHzの入力信号に対して1100Ω以上のインピーダンス値を示す、請求項1から11の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項13】
周波数が600MHzの入力信号に対して2850Ω以上のインピーダンス値を示す、請求項12に記載のインダクタ部品。
【請求項14】
周波数が800MHzの入力信号に対して4800Ω以上のインピーダンス値を示す、請求項13に記載のインダクタ部品。
【請求項15】
自己共振周波数が900MHz以上である、請求項1から14の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項16】
前記軸部の体積に対するインダクタンス値が11500nH/mm以上を示す、請求項1から15の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項17】
前記軸部の体積に対するインダクタンス値が19300nH/mm以上を示す、請求項16に記載のインダクタ部品。
【請求項18】
前記軸部に巻回されたワイヤのターン数が20以上22以下のターンである、請求項1から17の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項19】
前記軸部に巻回されたワイヤのターン数が21ターンである、請求項18に記載のインダクタ部品。
【請求項20】
前記ワイヤが前記軸部に対して1層巻きで巻き回されている、請求項1から19の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項21】
前記端子電極は、前記支持部の底面に形成された底面部電極と、前記底面部電極と連続するように前記支持部の端面に形成された端面部電極と、を含み、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部よりも前記端面の幅方向の中央部が高い、請求項1から20の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項22】
前記端面部電極の上端が上側に凸となる弧状である、請求項21に記載のインダクタ部品。
【請求項23】
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.1以上である、請求項21または22に記載のインダクタ部品。
【請求項24】
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.2以上である、請求項21または22に記載のインダクタ部品。
【請求項25】
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.3以上である、請求項21または22に記載のインダクタ部品。
【請求項26】
前記端子電極はさらに、前記底面部電極と連続するように前記支持部の側面に形成された側面部電極を含み、
前記側面部電極は、前記一対の支持部の互いの対向面から前記端面にむかって徐々に高さが高くなるように形成されている、請求項21から25の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項27】
前記ワイヤの導線の直径は、12μm以上18μm以下の範囲内である、請求項1から26の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項28】
前記ワイヤの導線の直径は、13μm以上15μm以下の範囲内である、請求項27に記載のインダクタ部品。
【請求項29】
前記ワイヤの導線の直径は、14μmである、請求項28に記載のインダクタ部品。
【請求項30】
前記ワイヤの直径は、16μm以上22μm以下の範囲内である、請求項1から26の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項31】
前記ワイヤの直径は、17μm以上19μm以下の範囲内である、請求項30に記載のインダクタ部品。
【請求項32】
前記ワイヤの直径は、18μmである、請求項31に記載のインダクタ部品。
【請求項33】
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを有するコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示し、
前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の55%であり、
620nH以上740nH以下の範囲内のインダクタンス値を示
自己共振周波数が800MHz以上である、インダクタ部品。
【請求項34】
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを有するコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示し、
自己共振周波数が900MHz以上であり、
前記端子電極は、前記支持部の底面に形成された底面部電極と、前記底面部電極と連続するように前記支持部の端面に形成された端面部電極と、を含み、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部よりも前記端面の幅方向の中央部が高く、
前記端面部電極の上端が上側に凸となる弧状であり、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.2以上であり、
前記ワイヤの導線の直径は、14μmである、インダクタ部品。
【請求項35】
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを有するコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示し、
前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において前記端子電極を含む幅寸法が0.30mm以下であり、
680nHのインダクタンス値を示し、
前記軸部に巻回されたワイヤのターン数が21ターンであり、
前記ワイヤが前記軸部に対して1層巻きで巻き回されており
自己共振周波数が800MHz以上である、インダクタ部品。
【請求項36】
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを有するコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示し、
前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において前記端子電極を含む幅寸法が0.30mm以下であり、
前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の55%であり、
680nHのインダクタンス値を示し、
自己共振周波数が900MHz以上であり、
前記軸部の体積に対するインダクタンス値が11500nH/mm以上を示し、
前記軸部に巻回されたワイヤのターン数が21ターンであり、
前記ワイヤが前記軸部に対して1層巻きで巻き回されており、
前記端子電極は、前記支持部の底面に形成された底面部電極と、前記底面部電極と連続するように前記支持部の端面に形成された端面部電極と、を含み、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部よりも前記端面の幅方向の中央部が高く、
前記端面部電極の上端が上側に凸となる弧状であり、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.2以上であり、
前記ワイヤの導線の直径は、14μmである、インダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2006-253394号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、コアと、コアに設けられた端子電極と、コアに巻回され端子電極に接続されたワイヤと、ワイヤを被覆する磁性粉含有樹脂とを有する。
【0003】
磁性粉含有樹脂により磁気効率を向上してインダクタンスを向上できる。これにより、通常よりワイヤの巻き数を少なくでき、銅損も低減でき、この結果、全体形状を小さくしながらQ特性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-253394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のインダクタ部品のように、信号系に用いられるインダクタ部品では、高いQ特性の実現が課題とされており、小型化、信号周波数の高周波化という使用環境の変化においてもいかに高いQ特性を維持するかという点が技術開発の主眼であった。
【0006】
小型化、高周波化における高いQ特性の維持という観点では、インダクタンス値の取得効率、具体的には、いかに少ないワイヤの巻き数で、従来同等のインダクタンス値を維持するかがポイントであり、例えば、前記従来のインダクタ部品では、磁性粉含有樹脂によって課題を達成しようとしている。
【0007】
一方で、本願発明者らは、前記従来のインダクタ部品のような信号系インダクタ部品の技術開発において、低周波領域におけるインピーダンス値の観点が抜け落ちていることに着目した。具体的には、低周波領域では高周波領域と比較して、インダクタンス値を取得する上でのワイヤの巻き数の依存度が高く、また、巻き数の低減による銅損(レジスタンス成分)の低減の影響も大きいため、従来の信号用インダクタ部品では、低周波領域で十分なインピーダンス値が取得できていないことを発見した。すなわち、従来の信号用インダクタ部品は、低周波領域での使用に適切ではない。
【0008】
なお、前記従来のインダクタ部品とは逆の手法を用いて、1MHz帯などの低周波領域でのインピーダンス値を確保することは可能であるが、この場合、高周波領域でのインピーダンス値がトレードオフになる。
【0009】
そこで、本開示は、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響も低減できるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、500MHz帯が信号系の分野においては低周波領域と認識されてはいるものの、500MHz帯のインピーダンス値の向上が、例えば1GHz帯などの高周波領域のインピーダンス値の向上の大きなトレードオフとはならないことを発見した。これは、インピーダンス値の向上のメカニズム(交流信号に対するインダクタ部品のLCR成分の振る舞い)が500MHz帯と1GHz帯で近いためと考えられる。このようにして、本願発明者らは、本開示のインダクタ部品を想到するに至った。
【0011】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを含むコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示す。
【0012】
前記態様によれば、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示しているので、特定の低周波領域(500MHz帯)において高いインピーダンス値が確保されつつ、かつ、高周波領域(例えば1GHz帯)におけるインピーダンス値の低減が小さい。したがって、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響を低減できる。
【0013】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において、前記インダクタ部品の幅寸法が0.36mm以下である。
【0014】
前記実施形態によれば、インダクタ部品を小型としても、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得することができる。
【0015】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において、前記インダクタ部品の幅寸法が0.33mm以下である。
【0016】
前記実施形態によれば、インダクタ部品を一層小型としても、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得することができる。
【0017】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において、前記インダクタ部品の幅寸法が0.30mm以下である。
【0018】
前記実施形態によれば、インダクタ部品を一層小型としても、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得することができる。
【0019】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の延びる第1の方向と直交する前記軸部の断面の面積は、前記第1の方向と直交する前記支持部の断面の面積の35%以上75%以下の範囲内である。
【0020】
前記実施形態によれば、35%以上とすることで、軸部の断面積の下限を設定して特性の低下を防止でき、75%以下とすることで、軸部の断面積の上限を設定して軸部に巻回されるワイヤが端子電極に接触することを防止できる。
【0021】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の40%以上70%以下の範囲内である。
【0022】
前記実施形態によれば、特性の低下とワイヤの端子電極への接触をより確実に防止できる。
【0023】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の45%以上65%以下の範囲内である。
【0024】
前記実施形態によれば、特性の低下とワイヤの端子電極への接触をより確実に防止できる。
【0025】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の50%以上60%以下の範囲内である。
【0026】
前記実施形態によれば、特性の低下とワイヤの端子電極への接触をより確実に防止できる。
【0027】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の55%である。
【0028】
前記実施形態によれば、特性の低下とワイヤの端子電極への接触をより確実に防止できる。
【0029】
また、インダクタ部品の一実施形態では、620nH以上740nH以下の範囲内のインダクタンス値を示す。
【0030】
前記実施形態によれば、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得する際に、有効なインダクタンス値となる。
【0031】
また、インダクタ部品の一実施形態では、680nHのインダクタンス値を示す。
【0032】
前記実施形態によれば、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得する際に、さらに有効なインダクタンス値となる。
【0033】
また、インダクタ部品の一実施形態では、周波数が300MHzの入力信号に対して1100Ω以上のインピーダンス値を示す。
【0034】
前記実施形態によれば、より低周波の領域でもインピーダンス値を確保できる。
【0035】
また、インダクタ部品の一実施形態では、周波数が600MHzの入力信号に対して2850Ω以上のインピーダンス値を示す。
【0036】
前記実施形態によれば、高周波領域での使用への影響がより低減される。
【0037】
また、インダクタ部品の一実施形態では、周波数が800MHzの入力信号に対して4800Ω以上のインピーダンス値を示す。
【0038】
前記実施形態によれば、高周波領域での使用への影響がより低減される。
【0039】
また、インダクタ部品の一実施形態では、自己共振周波数が800MHz以上である。
【0040】
前記実施形態によれば、高周波領域での使用への影響がより確実に低減される。
【0041】
また、インダクタ部品の一実施形態では、自己共振周波数が900MHz以上である。
【0042】
前記実施形態によれば、高周波領域での使用への影響がより確実に低減される。
【0043】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の体積に対するインダクタンス値が11500nH/mm以上を示す。
【0044】
前記実施形態によれば、インダクタンス値の取得効率を向上でき、インダクタ部品を小型にできる。
【0045】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部の体積に対するインダクタンス値が19300nH/mm以上を示す。
【0046】
前記実施形態によれば、インダクタンス値の取得効率をさらに向上でき、インダクタ部品をより小型にできる。
【0047】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部に巻回されたワイヤのターン数が20以上22以下のターンである。
【0048】
前記実施形態によれば、低周波領域におけるインピーダンス値を容易に向上できる。
【0049】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記軸部に巻回されたワイヤのターン数が21ターンである。
【0050】
前記実施形態によれば、低周波領域におけるインピーダンス値をさらに容易に向上できる。
【0051】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記ワイヤが前記軸部に対して1層巻きで巻き回されている。
【0052】
前記実施形態によれば、浮遊容量を小さくでき、高周波特性を向上できる。
【0053】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記端子電極は、前記支持部の底面に形成された底面部電極と、前記底面部電極と連続するように前記支持部の端面に形成された端面部電極と、を含み、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部よりも前記端面の幅方向の中央部が高い。
【0054】
前記実施形態によれば、端面部電極の高さを高く設定できるため、端子電極の表面積を大きくでき、回路基板に対する固着力を向上できる。
【0055】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記端面部電極の上端が上側に凸となる弧状である。
【0056】
前記実施形態によれば、端子電極の表面積をより大きくでき、回路基板に対する固着力をより向上できる。
【0057】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.1以上である。
【0058】
前記実施形態によれば、端子電極の表面積をより大きくでき、回路基板に対する固着力をより向上できる。
【0059】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.2以上である。
【0060】
前記実施形態によれば、端子電極の表面積をより大きくでき、回路基板に対する固着力をより向上できる。
【0061】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.3以上である。
【0062】
前記実施形態によれば、端子電極の表面積をより大きくでき、回路基板に対する固着力をより向上できる。
【0063】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記端子電極はさらに、前記底面部電極と連続するように前記支持部の側面に形成された側面部電極を含み、
前記側面部電極は、前記一対の支持部の互いの対向面から前記端面にむかって徐々に高さが高くなるように形成されている。
【0064】
前記実施形態によれば、側面部電極における支持部の対向面側の高さを低くできるので、軸部に巻回されるワイヤが端子電極に接触することを防止でき、また、軸部の断面積を大きくでき特性の低下を防止できる。
【0065】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記ワイヤの導線の直径は、12μm以上18μm以下の範囲内である。
【0066】
前記実施形態によれば、ワイヤの軸部への巻密度を容易に高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がしやすくなる。
【0067】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記ワイヤの導線の直径は、13μm以上15μm以下の範囲内である。
【0068】
前記実施形態によれば、ワイヤの軸部への巻密度をさらに容易に高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がよりしやすくなる。
【0069】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記ワイヤの導線の直径は、14μmである。
【0070】
前記実施形態によれば、ワイヤの軸部への巻密度をさらに容易に高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がよりしやすくなる。
【0071】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記ワイヤの直径は、16μm以上22μm以下の範囲内である。
【0072】
前記実施形態によれば、ワイヤの軸部への巻密度を容易に高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がしやすくなる。
【0073】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記ワイヤの直径は、17μm以上19μm以下の範囲内である。
【0074】
前記実施形態によれば、ワイヤの軸部への巻密度をさらに容易に高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がよりしやすくなる。
【0075】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記ワイヤの直径は、18μmである。
【0076】
前記実施形態によれば、ワイヤの軸部への巻密度をさらに容易に高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がよりしやすくなる。
【発明の効果】
【0077】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す斜視図である。
図2】インダクタ部品の正面図である。
図3】インダクタ部品の端面図である。
図4】コアの断面を説明するための概略斜視図である。
図5】周波数と挿入損失の関係を示すグラフである。
図6】周波数とインダクタンス値の関係を示すグラフである。
図7】周波数とインピーダンス値の関係を示すグラフである。
図8】インダクタ部品の第2実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0080】
(第1実施形態)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す斜視図である。図2は、インダクタ部品の正面図である。図3は、インダクタ部品の端面図である。
【0081】
図1図2図3に示すように、インダクタ部品10は、コア20と、一対の端子電極40と、ワイヤ50とを有する。コア20は、柱状の軸部21と一対の支持部22とを有している。軸部21は直方体状に形成されている。一対の支持部22は、軸部21の両端から軸部21の延びる第1の方向と直交する第2の方向に延びている。支持部22は、軸部21を実装対象(回路基板)と平行に支持する。一対の支持部22は、軸部21と一体に形成されている。
【0082】
端子電極40は、各支持部22に形成されている。ワイヤ50は、軸部21に巻回されている。ワイヤ50の両端部は、端子電極40にそれぞれ接続されている。このインダクタ部品10は、巻線型インダクタである。
【0083】
インダクタ部品10は、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示す。そして、本願発明者らが見出したように、500MHz帯の低周波領域のインピーダンス値の向上は、例えば1GHz帯などの高周波領域のインピーダンス値の向上の大きなトレードオフとはならない。したがって、特定の低周波領域(500MHz帯)において高いインピーダンス値が確保されつつ、かつ、高周波領域(例えば1GHz帯)におけるインピーダンス値の低減が小さい。これにより、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響を低減できる。
【0084】
インダクタ部品10は、好ましくは、周波数が300MHzの入力信号に対して1100Ω以上のインピーダンス値を示し、さらに好ましくは、周波数が600MHzの入力信号に対して2850Ω以上のインピーダンス値を示し、さらに好ましくは、周波数が800MHzの入力信号に対して4800Ω以上のインピーダンス値を示す。このように、さらに他の特定の低周波領域(300MHz帯、600MHz帯)で一定以上のインピーダンス値が確保され、他の高周波領域(800MHz帯)でインピーダンス値が低減されないことにより、特定の低周波領域での使用にさらに適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響をさらに低減できる。
【0085】
インダクタ部品10は、好ましくは、620nH以上740nH以下の範囲内のインダクタンス値を示し、さらに好ましくは、680nHのインダクタンス値を示す。このインダクタンス値は、周波数が10MHzで計測したときの値である。このように、インダクタンス値を一定の範囲とすることで、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得する際に、有効なインダクタンス値となる。
【0086】
インダクタ部品10は、好ましくは、自己共振周波数が800MHz以上であり、さらに好ましくは、自己共振周波数が900MHz以上である。これにより、高周波領域での使用への影響がより確実に低減される。
【0087】
インダクタ部品10は、概略で直方体状に形成されている。なお、本明細書において、「直方体状」には、角部や稜線部が面取りされた直方体や、角部や稜線部が丸められた直方体が含まれるものとする。また、主面及び側面の一部又は全部に凹凸などが形成されていてもよい。また、「直方体状」では対向する面が必ずしも完全に平行となっている必要はなく、多少の傾きがあってもよい。
【0088】
本明細書において、軸部21の延びる方向を「長さ方向L(第1の方向)」と定義し、「長さ方向L」に直交する方向のうち図2及び図3の上下方向を「高さ方向(厚み方向)T」と定義し、「長さ方向L」及び「高さ方向T」のいずれにも直交する方向(図3の左右方向)を「幅方向W」と定義する。なお、本明細書において、「幅方向」は、長さ方向と直交する方向のうち、インダクタ部品10が回路基板に実装された際、つまり端子電極40により実装される回路基板と平行となる方向となる。
【0089】
インダクタ部品10の長さ方向Lの大きさ(長さ寸法L1)は、0mmよりも大きく、1.0mm以下が好ましい。インダクタ部品10の高さ方向Tの大きさ(高さ寸法T1)は、0mmよりも大きく、0.8mm以下であることが好ましい。
【0090】
インダクタ部品10の幅方向Wの大きさ(幅寸法W1)は、0mmよりも大きく、0.6mm以下であることが好ましい。また、幅寸法W1は、0.36mm以下であることが好ましく、0.33mm以下であることがより好ましく、0.30mm以下であることがより好ましい。このように、幅寸法W1を0.36mm以下とするなど、インダクタ部品10を小型とした場合には、より低周波領域での使用と高周波領域での使用を両立することが困難になるため、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示すことによる効果がより一層効果的に発揮される。
【0091】
軸部21は、長さ方向Lに延在した直方体状に形成されている。一対の支持部22は、長さ方向Lに薄い板状に形成されている。一対の支持部22は、幅方向Wに対して高さ方向Tに長い直方体状に形成されている。
【0092】
一対の支持部22は、高さ方向T及び幅方向Wに向かって軸部21の周囲に張り出すように形成されている。具体的には、長さ方向Lから見たときの各支持部22の平面形状は、軸部21に対して高さ方向T及び幅方向Wに張り出すように形成されている。
【0093】
各支持部22は、長さ方向Lにおいて相対向する内面31及び端面32と、幅方向Wにおいて相対向する一対の側面33,34と、高さ方向Tにおいて相対向する上面35及び底面36を有している。一方の支持部22の内面31は、他方の支持部22の内面31と相対向している。
【0094】
なお、図示の通り、本明細書において、「底面」とはインダクタを回路基板に実装する際に、回路基板と対向する面を意味する。特に、支持部の底面とは、両側の支持部ともに端子電極が形成されている側の面を意味する。また、「端面」とは支持部のうち、軸部とは逆側に向く面を意味する。さらに「側面」は底面及び端面に隣接する面を意味する。
【0095】
コア20の材料としては、磁性材料(例えば、ニッケル(Ni)-亜鉛(Zn)系フェライト、マンガン(Mn)-Zn系フェライト)、アルミナ、金属磁性体などを用いることができる。これらの材料の粉末を、成型及び焼結することによりコア20が得られる。
【0096】
図4に示すように、軸部21の軸方向(長さ方向L)と直交する断面21aの面積は、その軸方向と直交する支持部22の断面22aの面積に対して、35%以上75%以下の範囲内であることが好ましい。このように、軸部21の断面積の比率を35%以上とすることで、軸部21の太さの下限を設定し、これにより、コア20を通過する磁束の飽和量が向上して、特性の低下を抑制できる。一方、軸部21の断面積の比率を75%以下とすることで、軸部21の太さの上限を設定し、これにより、軸部21に巻回されるワイヤ50が、支持部22の底面36に接近して、端子電極40に接触することを防止できる。
【0097】
軸部21の断面の面積は、好ましくは、支持部22の断面の面積の40%以上70%以下の範囲内であり、さらに好ましくは、45%以上65%以下の範囲内であり、さらに好ましくは、50%以上60%以下の範囲内であり、さらに好ましくは、55%である。これにより、特性の低下とワイヤ50の端子電極40への接触を一層防止できる。
【0098】
軸部21の体積に対するインダクタンス値は、好ましくは、11500nH/mm以上を示す。このとき、例えば、インダクタンス値が670nHであり、軸部21は、L寸法が0.44mmであり、W寸法が0.30mmであり、T寸法が0.44mmである。これによれば、インダクタンス値の取得効率を向上でき、インダクタ部品10を小型にできる。
【0099】
軸部21の体積に対するインダクタンス値は、さらに好ましくは、19300nH/mm以上を示す。このとき、例えば、インダクタンス値が680nHであり、軸部21は、L寸法が0.44mmであり、W寸法が0.25mmであり、T寸法が0.32mmである。これによれば、インダクタンス値の取得効率を向上でき、インダクタ部品10を小型にできる。
【0100】
ワイヤ50は、軸部21に巻回されている。ワイヤ50の両端部は、端子電極40にそれぞれ電気的に接続されている。ワイヤ50と端子電極40の接続には、例えばはんだを用いることができる。
【0101】
ワイヤ50のターン数は、好ましくは、20以上22以下のターンであり、さらに好ましくは、21ターンである。これによれば、低周波領域におけるインピーダンス値を容易に向上できる。つまり、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を容易に実現できる。
【0102】
ワイヤ50は、好ましくは、軸部21に対して1層巻きで巻き回されている。これによれば、ワイヤ50間の浮遊容量を小さくでき、高周波特性を向上できる。
【0103】
ワイヤ50は、例えば円形状の断面を有する導線と、導線の表面を被覆する被膜とを含む。導線の材料としては、例えば、CuやAg等の導電性材料を主成分とすることができる。被膜の材料としては、例えばポリウレタンやポリエステル等の絶縁材料を用いることができる。
【0104】
ワイヤ50の導線の直径は、好ましくは、12μm以上18μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは、13μm以上15μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは、14μmである。また、ワイヤ50の直径(つまり、導線の直径と被膜の厚みを合算した値)は、好ましくは、16μm以上22μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは、17μm以上19μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは、18μmである。
【0105】
このように、ワイヤ50やワイヤ50の導線を細線となる上記範囲に設定することで、ワイヤ50の軸部21への巻密度を容易に高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がしやすくなる。つまり、直径の上限値を設定することで巻密度を確保でき、直径の下限値を設定することでワイヤ50の強度を確保できる。
【0106】
端子電極40は、支持部22の底面36に形成された底面部電極41を有している。底面部電極41は、支持部22の底面36の全体にわたって形成されている。端子電極40は、支持部22の端面32に形成された端面部電極42を有している。端面部電極42は、支持部22の端面32の一部(下側部分)を覆うように形成されている。端面部電極42は、底面部電極41から連続するように形成されている。
【0107】
図3に示すように、端面部電極42は、支持部22の端面32において、幅方向の両端部42bよりも幅方向の中央部42aが高く形成されている。端面部電極42の上端42cは上側に凸となる弧状である。これによれば、端面部電極42の高さを高く設定できるため、端子電極40の表面積を大きくできる。このため、インダクタ部品1を回路基板にはんだを介して実装する際、端子電極40のはんだとの接触面積を大きくでき、インダクタ部品1の回路基板に対する固着力を向上できる。さらに、端面部電極42の上端42cは弧状であるので、端子電極40の表面積をより大きくでき、回路基板に対する固着力をより向上できる。
【0108】
端面部電極42は、端部42bの高さTbに対する中央部42aの高さTaの比が1.1以上であることが好ましく、高さの比が1.2以上であることがより好ましく、高さの比が1.3以上であることがさらに好ましい。これによれば、端子電極40の表面積をより大きくでき、回路基板に対する固着力をより向上できる。
【0109】
なお、端面部電極42の高さとは、端面32側から見て、底面部電極41の表面(下端)から高さ方向Tに沿って測定した端面部電極42の端部(上端)までの長さである。また、特に、端部42bの高さTbは、端面32の平面部分における幅方向の端部の高さである。図3では、端面32における平面部分の端部を一点鎖線にて示している。コア20は、外表面(角部や稜線部)に曲面状の丸みを持つように面取りが施されている。面取りは、例えばバレル研磨により行われる。曲面状の部分では、下端の位置が変動するため、端面部電極42の高さにばらつきを生じやすい。このため、端面部電極42の端部42bは、端面32における平面部分の幅方向の端部とする。なお、端面32の平面部分の端部が不明確である場合は、端部42bを、図3において、支持部22の側面33,34から50μm内側の箇所とする。
【0110】
端子電極40は、支持部22の側面33,34に形成された側面部電極43を有している。側面部電極43は、支持部22の側面33の一部(下側部分)を覆うように形成されている。側面部電極43は、底面部電極41及び端面部電極42から連続するように形成されている。側面部電極43は、一対の支持部22の互いの対向面(内面31)から、端面32に向かって、徐々に高くなるように、即ち、支持部22の側面33における端子電極40の上辺が傾斜した態様で形成されている。なお、側面34における側面部電極43も同様に形成されている。これによれば、側面部電極43における支持部22の対向面側の高さを低くできるので、軸部21に巻回されるワイヤ50が端子電極40に接触することを防止でき、また、軸部21の断面積を大きくでき特性の低下を防止できる。
【0111】
端子電極40は、金属層と、その金属層の表面のめっき層とを含む。金属層としては例えば銀(Ag)であり、めっき層としては例えば錫(Sn)めっきである。なお、金属層として、銅(Cu)等の金属、ニッケル(Ni)-クロム(Cr)、Ni-銅(Cu)等の合金を用いてもよい。また、めっき層として、Niめっき、2種類以上のめっきを用いてもよい。
【0112】
このような端子電極40を形成するには、端子電極40を構成する導電性ペーストにコア20の支持部22の底面36を浸漬する。支持部22の底面36が斜め上方を向くように、コア20を傾斜して配置する。そうすると、導電性ペーストは、端面32を伝い広がり、上記形状の端子電極40を形成することができる。
【0113】
インダクタ部品10は、さらにカバー部材60を有している。カバー部材60は、軸部21に巻回されたワイヤ50を覆うように、軸部21の上面と支持部22の上面とに塗布されている。カバー部材60の上面60aは、平面である。カバー部材60の材料としては、例えば、エポキシ系の樹脂を用いることができる。
【0114】
カバー部材60は、例えば、インダクタ部品10を回路基板に実装する際に、吸引ノズルによる吸着が確実に行えるようにする。また、カバー部材60は、吸引ノズルによる吸着時にワイヤ50に傷がつくのを防止する。なお、カバー部材60に磁性材料を用いることで、インダクタ部品10のインダクタンス値(L値)を向上することができる。一方、カバー部材60に非磁性材料を用いることで、磁性損失を低減し、Q値を向上することができる。
【0115】
次に、上記のインダクタ部品10の作用を説明する。
【0116】
図5は、周波数と挿入損失の関係を示すグラフである。図6は、周波数とインダクタンス値の関係を示すグラフである。図7は、周波数とインピーダンス値の関係を示すグラフである。実線は実施例のインダクタ部品10の特性を示し、点線は比較例のインダクタ部品の特性を示す。
【0117】
実施例および比較例では、同じ形状のコアおよび端子電極を用いている。一方、実施例では、500MHzのインピーダンス値を向上させるため、比較例よりも細線のワイヤを用いてワイヤの巻き数を増やしている。具体的には、実施例および比較例では、L/W/T=0.7mm/0.3mm/0.5mmのコアを用い、比較例では19μm径のワイヤを19ターン巻回し、実施例では18μm径のワイヤを21ターン巻回している。
【0118】
ここで、インダクタンス測定条件として、以下に示す。
テスト信号レベル(Test signal level):約0dBm
電極間隔(Electrode spaces):0.2mm
電気長(Electrical length):10.0mm
加重(Adding weight):約1~3N
測定器具(Measuring Fixture):KEYSIGHT 16197A
【0119】
図5に示すように、実施例の挿入損失は、500MHzなどの低周波領域において、比較例の挿入損失よりも明らかに大きい一方、1GHzを超える高周波においても、実施例の挿入損失は、比較例の挿入損失と同等であることが分かる。挿入損失(I.L.: Insertion loss)が大きい(グラフの下方側に向かう)ほど、インピーダンス値が大きいことを意味する。
【0120】
図6に示すように、低周波領域において、実施例のインダクタンス値は、比較例のインダクタンス値よりも大きい。これは、500MHzなどの低周波領域において、実施例は、比較例よりも、高いインピーダンス値を有することを意味する。
【0121】
図7に示すように、周波数が500MHzにおいて、実施例のインピーダンス値は、2100Ω以上であり、比較例のインピーダンス値は、2100Ωよりも小さい。さらに、周波数が1GHzにおいて、実施例のインピーダンス値は、比較例のインピーダンス値と比べて小さくならない。
【0122】
したがって、実施例のインダクタ部品によれば、500MHz帯付近の低周波領域においても、2100Ωという非常に高いインピーダンス値が確保されつつ、1GHz帯におけるインピーダンス値も大きく低減されないため、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ高周波領域での使用への影響も低減できる。
【0123】
なお、上述したようなコア寸法、ワイヤ径および巻き数は、あくまで500MHzにおいて2100Ω以上を実現する手段の一例である。電気的には、500MHzにおいて2100Ω以上という指標が重要なのであって、この条件を満たすインダクタ部品であれば、上記発明の効果は得られる。つまり、500MHzにおいてインピーダンス値を向上する手段としては、上述したようにワイヤ径やワイヤの巻き数をパラメータとして変更する以外に、軸部の断面積(ワイヤのターン内径)、コアの材料(特に500MHz帯での透磁率)、ワイヤが巻回された部分の軸部の長さ(コイル長)、端子電極の位置、端子電極の面積を変更することができ、これらの2つ以上を組み合わせてもよい。
【0124】
(第2実施形態)
図8は、インダクタ部品の第2実施形態を示す斜視図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、端子電極およびカバー部材の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0125】
図8に示すように、第2実施形態のインダクタ部品10Aでは、端子電極40Aは、底面部電極41のみを有する構成である。したがって、端子電極40Aの製造が容易となる。
【0126】
インダクタ部品10Aは、前記第1実施形態のカバー部材60の代わりに、天面カバー部材80と底面カバー部材90を有している。天面カバー部材80は、一対の支持部22の間に配設され、上面35側でワイヤ50を覆っている。底面カバー部材90は、一対の支持部22の間に配設され底面36側でワイヤ50を覆っている。天面カバー部材80および底面カバー部材90を設けることで、インダクタ部品10Aの強度を向上できる。
【0127】
また、本開示の他の実施形態では、
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを有するコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示し、
前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の55%であり、
620nH以上740nH以下の範囲内のインダクタンス値を示す。
【0128】
前記実施形態によれば、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示しているので、特定の低周波領域(500MHz帯)におけるインピーダンス値が確保されつつ、かつ、高周波領域(1GHz帯)におけるインピーダンス値の低減が小さい。したがって、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響を低減できる。
【0129】
また、軸部の断面の面積は、支持部の断面の面積の55%であるので、特性の低下とワイヤの端子電極への接触をより確実に防止できる。
【0130】
また、620nH以上740nH以下の範囲内のインダクタンス値を示すので、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得する際に、有効なインダクタンス値である。
【0131】
また、本開示の他の実施形態では、
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを有するコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示し、
自己共振周波数が900MHz以上であり、
前記端子電極は、前記支持部の底面に形成された底面部電極と、前記底面部電極と連続するように前記支持部の端面に形成された端面部電極と、を含み、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部よりも前記端面の幅方向の中央部が高く、
前記端面部電極の上端が上側に凸となる弧状であり、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.2以上であり、
前記ワイヤの導線の直径は、14μmである。
【0132】
前記実施形態によれば、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示しているので、特定の低周波領域(500MHz帯)におけるインピーダンス値が確保されつつ、かつ、高周波領域(例えば1GHz帯)におけるインピーダンス値の低減が小さい。したがって、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響を低減できる。
【0133】
また、自己共振周波数が900MHz以上であるので、高周波領域での使用への影響がより確実に低減される。
【0134】
また、端面部電極は、端面の幅方向の端部よりも端面の幅方向の中央部が高く、端面部電極の上端が上側に凸となる弧状であるので、端面部電極の高さを高く設定でき、これにより、端子電極の表面積を大きくでき、回路基板に対する固着力を向上できる。
【0135】
また、端面部電極は、端面の幅方向の端部の高さに対する端面の幅方向の中央部の高さの比が1.2以上であるので、端子電極の表面積をより大きくでき、回路基板に対する固着力をより向上できる。
【0136】
また、ワイヤの導線の直径は、14μmであるので、ワイヤの軸部への巻密度を高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がよりしやすくなる。
【0137】
また、本開示の他の実施形態では、
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを有するコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示し、
前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において前記端子電極を含む幅寸法が0.30mm以下であり、
680nHのインダクタンス値を示し、
前記軸部に巻回されたワイヤのターン数が21ターンであり、
前記ワイヤが前記軸部に対して1層巻きで巻き回されている。
【0138】
前記実施形態によれば、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示しているので、特定の低周波領域(500MHz帯)におけるインピーダンス値が確保されつつ、かつ、高周波領域(例えば1GHz帯)におけるインピーダンス値の低減が小さい。したがって、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響を低減できる。
【0139】
また、軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において端子電極を含む幅寸法が0.30mm以下であるので、インダクタ部品を一層小型としても、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得することができる。
【0140】
また、680nHのインダクタンス値を示すので、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得する際に、有効なインダクタンス値である。
【0141】
また、軸部に巻回されたワイヤのターン数が21ターンであるので、低周波領域におけるインピーダンス値を容易に向上できる。
【0142】
また、ワイヤが軸部に対して1層巻きで巻き回されているので、浮遊容量を小さくでき、高周波特性を向上できる。
【0143】
また、本開示の他の実施形態では、
柱状の軸部と、前記軸部の両端部の一対の支持部とを有するコアと、
前記一対の支持部のそれぞれに設けられた端子電極と、
前記軸部に巻回され、両端部がそれぞれ前記一対の支持部の前記端子電極に接続されたワイヤと
を有し、
周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示し、
前記軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、前記端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において前記端子電極を含む幅寸法が0.30mm以下であり、
前記軸部の断面の面積は、前記支持部の断面の面積の55%であり、
680nHのインダクタンス値を示し、
自己共振周波数が900MHz以上であり、
前記軸部の体積に対するインダクタンス値が11500nH/mm以上を示し、
前記軸部に巻回されたワイヤのターン数が21ターンであり、
前記ワイヤが前記軸部に対して1層巻きで巻き回されており、
前記端子電極は、前記支持部の底面に形成された底面部電極と、前記底面部電極と連続するように前記支持部の端面に形成された端面部電極と、を含み、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部よりも前記端面の幅方向の中央部が高く、
前記端面部電極の上端が上側に凸となる弧状であり、
前記端面部電極は、前記端面の幅方向の端部の高さに対する前記端面の幅方向の中央部の高さの比が1.2以上であり、
前記ワイヤの導線の直径は、14μmである。
【0144】
前記実施形態によれば、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を示しているので、特定の低周波領域(500MHz帯)におけるインピーダンス値が確保されつつ、かつ、高周波領域(例えば1GHz帯)におけるインピーダンス値の低減が小さい。したがって、特定の低周波領域での使用に適切であって、かつ、高周波領域での使用への影響を低減できる。
【0145】
また、軸部の延びる第1の方向と直交する方向のうち、端子電極により実装される回路基板と平行となる方向において端子電極を含む幅寸法が0.30mm以下であるので、インダクタ部品を一層小型としても、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得することができる。
【0146】
また、軸部の断面の面積は、支持部の断面の面積の55%であるので、特性の低下とワイヤの端子電極への接触をより確実に防止できる。
【0147】
また、680nHのインダクタンス値を示すので、周波数が500MHzの入力信号に対して2100Ω以上のインピーダンス値を取得する際に、有効なインダクタンス値である。
【0148】
また、自己共振周波数が900MHz以上であるので、高周波領域での使用への影響がより確実に低減される。
【0149】
また、軸部の体積に対するインダクタンス値が11500nH/mm以上を示すので、インダクタンス値の取得効率を向上でき、インダクタ部品を小型にできる。
【0150】
また、軸部に巻回されたワイヤのターン数が21ターンであるので、低周波領域におけるインピーダンス値を容易に向上できる。
【0151】
また、ワイヤが軸部に対して1層巻きで巻き回されているので、浮遊容量を小さくでき、高周波特性を向上できる。
【0152】
また、端面部電極は、端面の幅方向の端部よりも端面の幅方向の中央部が高く、端面部電極の上端が上側に凸となる弧状であるので、端面部電極の高さを高く設定でき、これにより、端子電極の表面積を大きくでき、回路基板に対する固着力を向上できる。
【0153】
また、端面部電極は、端面の幅方向の端部の高さに対する端面の幅方向の中央部の高さの比が1.2以上であるので、端子電極の表面積をより大きくでき、回路基板に対する固着力をより向上できる。
【0154】
また、ワイヤの導線の直径は、14μmであるので、ワイヤの軸部への巻密度を容易に高くでき、低周波領域においてインダクタンス値の確保がしやすくなる。
【0155】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1と第2実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。また、コアの形状や端子電極の形状は、適宜、設計変更可能である。また、カバー部材を省略してもよい。また、ワイヤは、軸部に対して1層巻きで巻き回されているが、ワイヤは、軸部に対して複数層巻きで巻き回されてもよい。
【符号の説明】
【0156】
10,10A インダクタ部品
20 コア
21 軸部
22 支持部
31 内面
32 端面
33,34 側面
35 上面
36 底面
40,40A 端子電極
41 底面部電極
42 端面部電極
42a 中央部
42b 両端部
42c 上端
43 側面部電極
50 ワイヤ
60,80,90 カバー部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8