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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ガス分離回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20220928BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20220928BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20220928BHJP
【FI】
B01D53/047
C01B3/56 Z
C01B32/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019185233
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021058856
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】原岡 たかし
(72)【発明者】
【氏名】田部 正大
(72)【発明者】
【氏名】紫垣 伸行
(72)【発明者】
【氏名】茂木 康弘
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-347125(JP,A)
【文献】特開2016-084272(JP,A)
【文献】特開2012-250215(JP,A)
【文献】特開2010-111562(JP,A)
【文献】特開2012-005920(JP,A)
【文献】特開平07-068119(JP,A)
【文献】特開2009-226258(JP,A)
【文献】特開昭60-155519(JP,A)
【文献】特許第4771668(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02 - 53/12
B01D 53/34 - 53/85
C01B 32/00 - 32/991
C01B 3/00 - 3/58
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分で構成される原料ガスから、第1の成分を主成分とする第1の回収ガス、および前記第1の成分とは異なる第2の成分を主成分とする第2の回収ガスを分離回収するガス分離回収設備であって、
前記第1の成分を吸着する吸着剤が充填されたガス分離装置を具え、
前記ガス分離装置の一次側に、バルブ操作により切り替え可能な、前記ガス分離装置内に前記原料ガスを供給する原料ガス供給配管と、前記ガス分離装置内のガスを排出する一次側ガス排出配管とを具え、前記一次側ガス排出配管はバルブ操作により切り替え可能な二系統のガス排出配管を有し、その内の前記第1の回収ガスを回収する一系統のガス排出配管にガス吸引装置を具える一方、
前記ガス分離装置の二次側に、バルブ操作により切り替え可能な二系統の二次側ガス排出配管を具え、前記二系統の二次側ガス排出配管の一方に前記第2の回収ガスを貯留する回収ガス貯留設備を具えることを特徴とするガス分離回収設備を用いて、多成分で構成される原料ガスから、第1の成分を主成分とする第1の回収ガス、および前記第1の成分とは異なる第2の成分を主成分とする第2の回収ガスを分離回収するガス分離回収方法であって、
前記ガス分離装置の一次側の原料ガス供給配管から前記原料ガスを前記ガス分離装置内に供給し、前記ガス分離装置の二次側から排出されるガスを二次側ガス排出配管の前記回収ガス貯留設備を有する一方を使用し、前記第2の回収ガスとして回収する第1のステップと、
前記第2の回収ガス濃度が所定の濃度より下回る、あるいは所定の回収時間経過後に、二次側ガス排出配管のバルブ操作を行って前記二次側ガス排出配管の系統を切替え、前記排出されるガスをオフガスとする第2のステップと、
前記原料ガスの供給を停止し、前記二次側ガス排出配管のバルブ操作を行い、前記二次側ガス排出配管内のガスをオフガスとして排出する第3のステップと、
前記一次側の二系統のガス排出配管のうち、前記ガス吸引装置が備えられていない系統にバルブ操作により切り替え、前記ガス分離装置内のガス圧力により、前記ガス分離装置内から排出されるガスをオフガスとする第4のステップと、
前記一次側の二系統のガス排出配管をバルブ操作により、前記ガス吸引装置が備えられている系統のガス排出配管に切り替え、前記ガス吸引装置を稼働させ、前記ガス分離装置内のガスを吸引し、オフガスとする第5のステップと、
前記一次側の二系統のガス排出配管をバルブ操作により、前記一次側のガス排出配管内に残存したオフガスを前記ガス吸引装置によりオフガスとする第6のステップと、
前記オフガス中の前記第1の回収ガス濃度が所定の濃度を上回る、あるいは所定時間経過後に、前記一次側のガス排出配管のバルブ操作により前記ガス分離装置内に残存するガスを第1の回収ガスとして回収する第7のステップと、
前記一次側のガス排出配管のバルブを全て閉状態とし、前記二次側のガス排出配管のバルブ操作により、前記ガス貯留設備から前記ガス分離装置へ第2の回収ガスを充填する第8のステップと、
前記二次側のガス排出配管のバルブを全て閉状態とし、前記ガス供給配管から原料ガスを前記ガス分離装置に供給し、前記ガス分離装置内を所定の圧力にまで昇圧させる第9のステップとを有することを特徴とするガス分離回収方法。
【請求項2】
前記第1の回収ガスが二酸化炭素ガスであり、前記第2の回収ガスが水素ガスである、請求項に記載のガス分離回収方法。
【請求項3】
前記原料ガスが高炉ガスである、請求項またはに記載のガス分離回収方法。
【請求項4】
前記ガス分離装置が圧力スイング吸着装置であり、圧力スイング吸着法によって前記原料ガスから前記第1の回収ガスおよび前記第2の回収ガスを分離回収する、請求項1~3のいずれか一項に記載のガス分離回収方法。
【請求項5】
前記ガス分離回収設備が前記原料ガス供給配管にガス加圧装置をさらに具え、前記第1のステップにおいて、前記ガス加圧装置により前記原料ガスを前記ガス分離装置内に供給する、請求項1~4のいずれか一項に記載のガス分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離回収設備およびガス分離回収方法に関し、特に、製鉄所において排出されるガスから有機物を合成する原料ガスを、従来よりも効率的に分離して回収するのに用いることができるガス分離回収設備およびガス分離回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所においては、コークス炉、高炉、転炉等の設備から副生ガスと呼ばれるガスが発生する。この副生ガスには、水素(以下、「H2」とも言う。)、一酸化炭素(以下、「CO」とも言う。)、メタン(以下、「CH4」とも言う。)といった燃料として利用可能な成分のほかに、窒素(以下、「N2」とも言う。)、二酸化炭素(以下、「CO2」とも言う。)が含有されている。特に、高炉炉頂から排出される高炉ガスは、体積では製鉄所から排出される副生ガスの8割を占めるとともに、製鉄所から排出されるCO2の約4割がここに含まれている。また、COあるいはCH4は、所内の加熱炉や熱風炉、コークス炉において燃料として使用されることによって、これらも最終的にCO2として排出される。
【0003】
最近のCO2排出削減の要請から、CO2を分離回収する技術の開発が多方面で行われており、化学吸収法を筆頭として様々な手法が提案されている。その中でも、圧力スイング吸着法(以下、「PSA法」とも言う。)は、分離回収に要する動力が比較的小さいこと、常温での運転が可能な場合が多いこと、時間当たりで数千Nm3程度の比較的大規模なガス処理も可能であることから、有用な技術の一つである。
【0004】
PSA法は、活性炭やゼオライトといった、ガスの種類によって吸着の強さが異なる材料(吸着剤)を充填した吸着塔に、複数種類のガスからなる混合ガスを原料ガスとして導入することにより、吸着剤に比較的吸着しやすいガス成分(通常複数のガス種である)と、比較的吸着しづらいガス成分(これも通常複数のガス種である)とを分離する方法である。通常は、原料ガスの導入を所定時間行うことによって、原料ガス中の吸着しやすいガス成分を吸着剤に吸着させるとともに吸着しづらいガス成分を吸着塔からオフガスとして排出する、「吸着工程」と称する工程と、その後に、上記のガス導入時よりも吸着塔内を減圧することによって吸着したガス成分を脱着させて回収するとともに、吸着剤のガス吸着性能の再生を行う、「脱着工程」と称する工程をそれぞれ所定時間毎に繰り返すことにより、ガスの分離操作を繰り返すことが可能となる。
【0005】
ここで、分離したい原料ガスに含まれる各種ガス成分の吸着剤への吸着性能にあまり差がない場合、例えば同じガス分圧での吸着量が数十倍程度の差しかない場合には、分離されたガスも、先述のように複数種のガス成分を含む混合ガスであることが多い。このため、例えば、高炉ガスのようなCO2に加えてCOやN2を含む混合ガスを活性炭やゼオライトを用いてガス成分毎に分離させると、CO2を主成分としてCOやN2も多少含んだガスと、それ以外のガスに分離されることが多い。
【0006】
一方で、製鉄所内ではH2も利用されており、コークス炉ガス(H2を55体積%程度含む)を原料として、PSA法によって99.999%以上の高濃度で分離されている。
【0007】
また、上述した高炉ガス、および、銑鉄に含まれる炭素やその他の成分の除去を行う転炉と呼ばれる設備から排出される転炉ガスにはCOが多く含まれており、これを水蒸気と反応させることによってH2に転換する水性ガスシフト反応によってH2濃度を高めたガスとして、ここからH2をPSA法等によって高濃度のH2ガスとすることも可能である。
[化1]
CO+H2O ⇔ H2+CO2 (1)
【0008】
ところで、先述のように分離されたCO2を、化学反応によって有用な物質に転換して再利用するCCU(Carbon Capture and Utilization)と呼ばれる手法の開発が昨今さかんになされている。その一つとして、下記の式(1)で表されるCO2とH2との反応によるメタノール(CH3OH)合成がある。
[化2]
CO2+3H2 ⇔ CH3OH+H2O (2)
【0009】
上記メタノール合成は、平衡上では低温である方が有利である。しかしながら、低温では反応速度が低下するため、実際には200℃程度以上の温度で反応させることが必要である。また、反応器内ではCO2とH2との反応で生成するメタノールおよび水が反応を抑制するために、通常、この反応でH2およびCO2が反応する割合(以下、「転化率」と表す。)は、せいぜい10%程度であった。
【0010】
そのため、CO2とH2とからメタノールを合成する反応器から出た後のガスを冷却してメタノールと水を液化させ、さらに気液分離器でこれらと未反応のCO2およびH2とを分離することにより得られた未反応ガスを、再び原料ガスに混合して反応器に戻すことによって、原料ガスの転化率を向上させる操作が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第4043235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記操作では、各原料ガスの純度が99~100体積%(メタノール合成の原料となるCO2およびH2以外の不純物成分をほとんど含まない)ではなく、反応に寄与しない不純物成分(例えば、N2)が多く含まれる場合、上述したようなプロセスではガスを再循環させるたびに不純物成分が蓄積し、反応転化率を低減させてしまう。そのため、通常は、循環されるガスの一部を系外に排出して、不純物成分の蓄積を回避する必要がある。ただし、この操作を行うと、メタノールの原料となるCO2およびH2もともに排出されてしまうため、損失となる。
【0013】
しかしながら、原料ガスの高純度化、特にH2ガスの濃度の向上は、コストの増大となるほかに、高純度化するためのエネルギー消費量の増加によるCO2の排出量増加によって、CO2排出量の削減効果が低減するという課題を有している。
【0014】
そのため、上述した製鉄所から排出されるコークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス等の副生ガスや、これらを水性ガスシフト反応等で得られたガス、あるいはこれらの混合ガスから、メタノール合成等のCCUプロセスに利用可能な濃度のH2およびCO2をより効率的に分離する方法が求められていた。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製鉄所において排出されるガスから有機物を合成する原料ガスを、従来よりも効率的に分離して回収するのに用いることができるガス分離回収設備およびガス分離回収方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1]多成分で構成される原料ガスから、第1の成分を主成分とする第1の回収ガス、および前記第1の成分とは異なる第2の成分を主成分とする第2の回収ガスを分離回収するガス分離回収設備であって、
前記第1の成分を吸着する吸着剤が充填されたガス分離装置を具え、
前記ガス分離装置の一次側に、バルブ操作により切り替え可能な、前記ガス分離装置内に前記原料ガスを供給する原料ガス供給配管と、前記ガス分離装置内のガスを排出する一次側ガス排出配管とを具え、前記一次側ガス排出配管はバルブ操作により切り替え可能な二系統のガス排出配管を有し、その内の前記第1の回収ガスを回収する一系統のガス排出配管にガス吸引装置を具える一方、
前記ガス分離装置の二次側に、バルブ操作により切り替え可能な二系統の二次側ガス排出配管を具え、前記二系統の二次側ガス排出配管の一方に前記第2の回収ガスを貯留する回収ガス貯留設備を具えることを特徴とするガス分離回収設備。
【0017】
[2]前記ガス分離装置が圧力スイング吸着装置である、前記[1]に記載のガス分離回収設備。
【0018】
[3]前記原料ガス供給配管にガス加圧装置をさらに具える、前記[1]および[2]に記載のガス分離回収設備。
【0019】
[4]前記[1]~[3]のいずれか一項に記載のガス分離回収設備を用いて、多成分で構成される原料ガスから、第1の成分を主成分とする第1の回収ガス、および前記第1の成分とは異なる第2の成分を主成分とする第2の回収ガスを分離回収するガス分離回収方法であって、
前記ガス分離装置の一次側の原料ガス供給配管から前記原料ガスを前記ガス分離装置内に供給し、前記ガス分離装置の二次側から排出されるガスを二次側ガス排出配管の前記回収ガス貯留設備を有する一方を使用し、前記第2の回収ガスとして回収する第1のステップと、
前記第2の回収ガス濃度が所定の濃度より下回る、あるいは所定の回収時間経過後に、二次側ガス排出配管のバルブ操作を行って前記二次側ガス排出配管の系統を切替え、前記排出されるガスをオフガスとする第2のステップと、
前記原料ガスの供給を停止し、前記二次側ガス排出配管のバルブ操作を行い、前記二次側ガス排出配管内のガスをオフガスとして排出する第3のステップと、
前記一次側の二系統のガス排出配管のうち、前記ガス吸引装置が備えられていない系統にバルブ操作により切り替え、前記ガス分離装置内のガス圧力により、前記ガス分離装置内から排出されるガスをオフガスとする第4のステップと、
前記一次側の二系統のガス排出配管をバルブ操作により、前記ガス吸引装置が備えられている系統のガス排出配管に切り替え、前記ガス吸引装置を稼働させ、前記ガス分離装置内のガスを吸引し、オフガスとする第5のステップと、
前記一次側の二系統のガス排出配管をバルブ操作により、前記一次側のガス排出配管内に残存したオフガスを前記ガス吸引装置によりオフガスとする第6のステップと、
前記オフガス中の前記第1の回収ガス濃度が所定の濃度を上回る、あるいは所定時間経過後に、前記一次側のガス排出配管のバルブ操作により前記ガス分離装置内に残存するガスを第1の回収ガスとして回収する第7のステップと、
前記一次側のガス排出配管のバルブを全て閉状態とし、前記二次側のガス排出配管のバルブ操作により、前記ガス貯留設備から前記ガス分離装置へ第2の回収ガスを充填する第8のステップと、
前記二次側のガス排出配管のバルブを全て閉状態とし、前記ガス供給配管から原料ガスを前記ガス分離装置に供給し、前記ガス分離装置内を所定の圧力にまで昇圧させる第9のステップとを有することを特徴とするガス分離回収方法。
【0020】
[5]前記第1の回収ガスが二酸化炭素ガスであり、前記第2の回収ガスが水素ガスである、前記[4]に記載のガス分離回収方法。
【0021】
[6]前記原料ガスが高炉ガスである、前記[4]または[5]に記載のガス分離回収方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、製鉄所において排出されるガスから有機物を合成する原料ガスを、従来よりも効率的に分離して回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明よるガス分離回収設備の好適な一例を示す図である。
図2図1に示した設備の一部を示す図である。
図3A】本発明によるガス分離回収方法の第1のステップを説明する図である。
図3B】本発明によるガス分離回収方法の第2のステップを説明する図である。
図3C】本発明によるガス分離回収方法の第3のステップを説明する図である。
図3D】本発明によるガス分離回収方法の第4および第5のステップを説明する図である。
図3E】本発明によるガス分離回収方法の好適な追加のステップを説明する図である。
図3F】本発明によるガス分離回収方法の第6のステップを説明する図である。
図3G】本発明によるガス分離回収方法の第7のステップを説明する図である。
図3H】本発明によるガス分離回収方法の第8のステップを説明する図である。
図3I】本発明によるガス分離回収方法の第9のステップを説明する図である。
図4】吸着塔を2本とした場合の各吸着塔での工程の進行表、およびその際の吸着塔内の圧力の変動の例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明によるガス分離回収設備は、多成分(3種類以上の成分)で構成される原料ガスから、第1の成分(例えば、CO2)を主成分とする第1の回収ガス、および上記第1の成分とは異なる第2の成分(例えば、H2)を主成分とする第2の回収ガスを分離して回収するガス分離回収設備である。
【0025】
図1は、本発明によるガス分離回収設備の好適な一例を示している。図1に示したガス分離回収設備1は、上記第1の成分に対する吸着能を有する吸着剤が充填された、ガス分離装置としての吸着塔、図示例では2つの吸着塔101、102を具える。吸着塔101、102は、例えば圧力スイング吸着(PSA)装置とすることができる。
【0026】
上記吸着塔101、102の一次側に、バルブ(例えば、自動弁)の操作により切り替え可能な、吸着塔内に原料ガスを供給する原料ガス供給配管tiと、吸着塔101、102内のガスを排出する一次側のガス排出配管to1とが設けられている。この一次側のガス排出配管to1は、バルブ操作により切り替え可能な二系統のガス排出配管to11、to12を有し、その内の第1の回収ガスを回収する一系統のガス排出配管to12にガス吸引装置としてのガス排気手段120が設けられている。
【0027】
一方、吸着塔101、102の二次側には、バルブ操作により切り替え可能な二系統の二次側ガス排出配管to21、to22が設けられている。この二系統の二次側ガス排出配管to21、to22の一方to21には、第2の回収ガスを貯留する回収ガス貯留設備としてのガス貯蔵手段(例えば、タンク)130が設けられている。
【0028】
また、吸着塔101、102の一次側の配管には、自動弁11、12、51、52、40、60、81、82が設けられているとともに、二次側の配管には、自動弁21、22、30、41、42、80および背圧弁90が設けられており、吸着塔101、102に供給される原料ガスaの制御、および吸着塔101、102から排出されるガスの流れの制御が可能となるように構成されている。
【0029】
図2は、説明のため、図1に示した設備1の一部を示しており、吸着塔101、102のうちの1本101と、それに係る自動弁および設備のみを示している。
【0030】
ここで、図3A~3Iを参照して、本発明によるガス分離回収方法を具体的に説明する。以下、原料ガスaが高炉ガス、第1の回収ガスがCO2ガス、第2の回収ガスがH2ガス、吸着剤がゼオライトまたは活性炭である場合を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、原料ガスaの各ガス成分は、H2、N2、CO、CO2等であり、吸着材への各ガスの吸着強さは(弱い)H2<N2<CO<CO2(強い)である。
【0031】
まず、図3Aに示すように、自動弁11、21、41を開状態とし、背圧弁90は所定の圧力に設定された状態で、吸着塔101の一次側の原料ガス供給配管tiから原料ガスaを吸着塔101内に供給する(第1のステップ)。なお、図3Aにおいて、白いバルブは開状態のバルブ、黒いバルブは閉状態のバルブ、太線はガスが流通している配管、細線はガスが流通していない配管をそれぞれ示している。図3B~3Iの図面も同様である。
【0032】
より具体的には、ガス加圧装置としての送ガス手段(例えば、ブロア、圧縮機)110により原料ガスaを自動弁11を通じて吸着塔101に導入する。その際、吸着塔101内は、後段の背圧弁90によって所定の圧力に制御されている。すると、吸着塔101に充填されたゼオライトに原料ガスaの成分のうち、吸着剤に吸着されやすい成分であるN2、CO、CO2等が吸着され、吸着剤に吸着しづらい成分であるH2を多く含むガスb1が吸着塔101から排出される。排出されたガスb1は第2の回収ガスとして回収され、ガス貯蔵手段130に貯蔵される。
【0033】
(原料ガス導入、吸着オフガス排出1)
次に、上記第2の回収ガスのH2濃度が所定の濃度より下回る、あるいは所定の回収時間経過後に、図3Bに示すように、自動弁41を閉状態にするとともに自動弁42を開状態とし、二次側のガス排出配管の系統をto22に切り替えて、原料ガスaの成分のうち、H2濃度が低くなったガスb2をオフガスとする(第2のステップ)。
【0034】
(原料ガス導入、吸着オフガス排出2)
第1のステップから第2のステップへの切替えは、あらかじめ第2の回収ガスのH2濃度の試験を行った上で切替える時間(すなわち、回収時間)を決めるか、吸着塔101から排出されるガスの各成分のH2濃度の変化を検知して行うことができる。前者の方法は、原料ガスaの各ガス成分組成が比較的安定している場合に用いることができ、後者の方法は、製鉄所の排出ガスのように、ガス組成が時間的に変動する可能性がある場合に有効である。
【0035】
続いて、図3Cに示すように、自動弁11を閉状態にして原料ガスaの吸着塔101への導入を停止するとともに、吸着塔101の二次側では、自動弁21を閉状態にし、自動弁30を開状態とすることにより、自動弁21の後段の配管内に残ったb2ガスを、背圧弁90の設定圧から大気圧付近まで低下するまでオフガスとして排出する(第3のステップ)。但し、配管内の圧力は大気圧以下にはならないため、b1ガスの一部は配管内に残存する。
【0036】
(二次側配管放圧)
また、吸着塔101の一次側では、自動弁51および60を開状態とすることによって、吸着塔101内の圧力を常圧付近まで低下させる。これにより、吸着塔101の吸着剤に吸着していたガス成分であるN2やCO等が一部脱着し、吸着塔101内のガス圧力により、c1ガス(オフガス)として排出される(第4のステップ)。
【0037】
(吸着塔内放圧)
次いで、図3Dに示すように、自動弁60および82を閉状態とするとともに自動弁40および81を開状態とし、一次側のガス排出配管to1をto12に切り替えた状態で、ガス排気手段(例えば、真空ポンプ)120によって吸着塔101内の圧力を常圧以下に低下させることによって、吸着塔101において吸着剤に吸着していたガス成分であるN2やCO等が脱着させてこれらの成分のガスを吸引し、c1ガス(オフガス)として排出する(第5のステップ)。
【0038】
(吸着塔内減圧、ガス脱着1)
続いて、図3Eに示すように、自動弁51を閉状態として、自動弁51とガス排気手段120との間の一次側のガス排出配管to1内に残存するN2ガスやCOガスをc1ガス(オフガス)として排出することによって、次の工程で排出されるCO2を主成分とするガスへのこれらのガス成分の混入をなるべく低減する(第6のステップ)。先の図3Dに示した工程4から図3Eに示した工程5への切替えも、先述と同様の理由であらかじめ実際に試験行った上で切替える時間を決めて行うか、吸着塔101から排出されるガスの各成分の濃度変化を検知して行うことができる。
【0039】
(一次側ガス回収配管脱気1)
なお、この時点で排気手段より後の配管にはc1ガスは残存している。そのため、図3Fに示すように、自動弁51を短時間開状態として吸着塔101内のガスを排出させて、ガス排気手段120により後段の配管内のc1ガスを強制的に排気させることも可能である(第6’のステップ)。この工程の時間も、先述と同様に、あらかじめ実際に試験行ったうえで切替える時間を決めて行うか、吸着塔101から排出されるガスの各成分の濃度変化を検知して行うことができる。
【0040】
(一次側ガス回収配管脱気2)
次に、c1ガス(オフガス)中のCO2ガスの濃度が所定の濃度を上回る、あるいは所定時間経過後に、図3Gに示すように、自動弁81を閉状態とするとともに自動弁82を開状態とし、ガス排気手段120により吸着塔101内の圧力をさらに低減させて、吸着剤に吸着していたCO2を脱着させて排出させ、吸着塔101内に残存するCO2を主成分とするガスc2を第2の回収ガスとして回収する(第7のステップ)。
【0041】
(吸着塔内減圧、ガス脱着2)
続いて、図3Hに示すように、自動弁51を閉状態として一次側のガス排出配管to1の自動弁51を閉状態とするとともに、自動弁21、30、41を開状態として、ガス貯蔵手段130に貯蔵されたH2を主成分とするガスの一部を吸着塔101に充填する(第8のステップ)。これにより、自動弁21と自動弁41と間の配管内に残存していたN2やCOを含むガスb2を吸着塔101内に押し戻し、図3Aに示した第1のステップにおいて排出される、H2を主成分とするb1ガス(第2の回収ガス)へのこれらのガスの混入をなるべく低減する。
【0042】
(二次側配管、吸着塔パージ)
ガス貯蔵手段130からの吸着塔101へのb1ガス(第2の回収ガス)の充填は、あらかじめ実際に試験を行った上で吸着塔101内の圧力が所定の値になった時点、あるいは自動弁21と自動弁30との間のガスの分析値が所定値となった時点で停止することができる。
【0043】
上述した自動弁21と自動弁41との間の配管内のガスの置換が終了した後、図3Iに示すように、自動弁11を開状態とするとともに、自動弁30、41を閉状態として二次側のガス排出配管の自動弁を全て閉状態とし、送ガス手段110によって原料ガスaを吸着塔101内に供給し、吸着塔101内を所定の圧力にまで昇圧させ、吸着剤にガス成分を吸着させる(第9のステップ)。
【0044】
(原料ガス導入、昇圧)
図4は、吸着塔を2本(101、102)とした場合の各吸着塔での工程の進行表、およびその際の吸着塔内の圧力の変動の例を模式的に示している。
【0045】
本発明において原料ガスとして利用可能なガスは、上述した、製鉄所の副生ガス(コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス等)およびこれらの混合ガス、反応を利用して水素濃度を増やしたガスおよびこれらの混合ガスが好適である。中でも、高炉ガスはCO2を豊富に含むため、特に好適である。
【0046】
また、これらの原料ガスのH2およびCO2濃度は、それぞれ20体積%以上であることが好ましい。これにより、PSA装置での分離効率をより高めることができる。
【実施例
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0048】
高炉ガス(H2:4体積%、N2:52体積%、CO:24体積%、CO2:20体積%)を水蒸気を添加して水性ガスシフト反応させた後のガス(H2:21体積%、N2:42体積%、CO:1体積%、CO2:36%)想定した模擬ガスを、図1に示したPSAガス分離回収設備1を用いてガス分離試験を行った。
【0049】
吸着塔101および102には、塔下部に活性炭吸着剤を、塔上部にはゼオライト(Na置換13X型ゼオライト)をそれぞれ重量比で80:20になるよう充填した。原料ガスの流量はガス流量÷吸着剤体積=6NL-原料ガス/分/L-吸着剤体積で導入し、背圧弁90の設定圧を890kPaG、ガス排気手段120での吸着塔内の減圧は-90kPaGに到達するまで排気した。
【0050】
図4に示した工程の時間は、工程1~工程3、および工程4~工程8がそれぞれ5分となるように自動弁の切替え設定を行った。
【0051】
上記ガス分離試験では、図3Eおよび図3Hに示した、配管内のH2およびCO2以外の成分を含むガスを除去する工程を行った場合(発明例)と、行わなかった場合(従来例)とで比較を行った。発明例では、工程5を1分、工程7を5秒で行い、比較例では、これらの工程において関係する自動弁を閉状態にして吸着塔内および配管内にガスの流通が起こらないようにした。
【0052】
ガス分離試験の結果、発明例については、b1ガスに含まれるH2の濃度は99.0%であり、c2ガスに含まれるCO2の濃度は99.5%であった。一方、従来例については、b1ガスに含まれるH2の濃度は97.5%であり、c2ガスに含まれるCO2の濃度は98%であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、製鉄所において排出されるガスから有機物を合成する原料を従来よりも効率的に分離することができるため、製鉄業において有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 ガス分離回収設備
11,12,21,22,30,40,41,42,51,52,60,80,81,82 自動弁
90 背圧弁
101,102 吸着塔(ガス分離装置)
110 送ガス手段(ガス加圧装置)
120 ガス排気手段(ガス吸引装置)
130 ガス貯蔵手段(回収ガス貯蔵設備)
a 原料混合ガス
b1,b2 吸着オフガス(非吸着ガス)
c1,c2 脱着ガス(吸着ガス)
i 原料ガス供給配管
o1,to11,to12 一次側のガス排出配管
o21,to22 二次側のガス排出配管
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4