(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20220928BHJP
H02J 1/10 20060101ALI20220928BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H02J1/00 306K
H02J1/10
H02J9/06 110
(21)【出願番号】P 2019507427
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2018004902
(87)【国際公開番号】W WO2018173546
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2017057524
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 大輔
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207922(JP,A)
【文献】特開2015-204652(JP,A)
【文献】特開2006-288162(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072304(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/021371(WO,A1)
【文献】A. Werth, N. Kitamura and K. Tanaka,Conceptual Study for Open Energy Systems: Distributed Energy Network Using Interconnected DC Nanogrids,IEEE Transactions on Smart Grid,Vol. 6, No. 4,米国,IEEE,2015年07月,pp. 1621-1630,<DOI: 10.1109/TSG.2015.2408603>,<ISSN: 1949-3053>, <ULR: https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=7070698>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02J 1/10
H02J 9/06
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器と、
他の電力制御装置との間で通信する通信部と、
前記他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御モードとドループ率とを少なくとも制御し、
前記制御モードは、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含み、
前記制御部は、前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる場合に、前記ドループ率を0%以外の
、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定する制御を行う、電力制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記制御モードが前記第1のモードである場合に、他の電力制御装置から前記直流バスラインの制御権の移動要求を前記通信部が受信すると、前記制御モードを前記第1のモードにしたまま前記ドループ率を0%以外の
前記所定の値に設定する、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ドループ率の前記所定の値を、前記他の電力制御装置と同じ値に設定する、請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ドループ率の前記所定の値を、前記他の電力制御装置と異なる値に設定する、請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記他の電力制御装置の前記制御モードが前記第1のモードになったことを確認すると前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードに切り替え、前記ドループ率を0%に切り替える、請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項6】
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器と、
他の電力制御装置との間で通信する通信部と、
前記他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御モードとドループ率とを少なくとも制御し、
前記制御モードは、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含み、
前記制御部は、前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合に、前記ドループ率を0%以外の
、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定する制御を行う、電力制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記直流バスラインの制御権を得ている他の電力制御装置へ、前記直流バスラインの制御権の移動要求を前記通信部が送信し、前記他の電力制御装置が前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定したことを確認すると、前記制御モードを前記第1のモードに変更すると共に前記ドループ率を0以外の
前記所定の値に設定する、請求項6に記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ドループ率の前記所定の値を、前記他の電力制御装置と同じ値に設定する、請求項7に記載の電力制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ドループ率の前記所定の値を、前記他の電力制御装置と異なる値に設定する、請求項7に記載の電力制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記他の電力制御装置の前記制御モードが前記第2のモードまたは前記第3のモードになったことを確認すると前記制御モードを前記第1のモードに切り替え、前記ドループ率を0%に切り替える、請求項7に記載の電力制御装置。
【請求項11】
プロセッサが、
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、
前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、
前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、
を含み、
前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる際に、前記ドループ率を0%以外の
、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、電力制御方法。
【請求項12】
プロセッサが、
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、
前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、
前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、
を含み、
前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合、前記ドループ率を0%以外の
、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、電力制御方法。
【請求項13】
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、
前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、
前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、
をコンピュータに実行させ、
前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる際に、前記ドループ率を0%以外の
、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、コンピュータプログラム。
【請求項14】
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、
前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、
前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、
をコンピュータに実行させ、
前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合、前記ドループ率を0%以外の
、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御装置、電力制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【0002】
蓄電池を備えることで、入力電源からの電力が途絶えても、接続されている機器に対して、停電することなく所定の時間電力を蓄電池から供給し続けることができる無停電電源装置の存在が知られている。このような電源装置を需要家単位に拡大して、例えば、停電等の商用電源からの電力供給の異常発生時に電力を需要家に供給する技術が提案されている(特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-205871号公報
【文献】特開2013-90560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直流の電力線を通じて電力を需要家間で融通し合うシステムにおいて、継続的に複数のDC/DC変換器の電力融通を実施する際には、電力線の電圧を制御するDC/DC変換器が必要になる。あるDC/DC変換器からの電力供給が終了し、別のDC/DC変換器へ電力線の電圧の制御を移行させる際に、電圧制御権の安定した移行が求められる。
【0005】
そこで、本開示では、直流の電力線を通じて需要家間で電力供給を行う際に電圧制御権の安定した移行が可能な、新規かつ改良された電力制御装置、電力制御方法及びコンピュータプログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、直流バスラインに接続されるDC/DC変換器と、他の電力制御装置との間で通信する通信部と、前記他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、制御モードとドループ率とを少なくとも制御し、前記制御モードは、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含み、前記制御部は、前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる場合に、前記ドループ率を0%以外の、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定する制御を行う、電力制御装置が提供される。
【0007】
また本開示によれば、直流バスラインに接続されるDC/DC変換器と、他の電力制御装置との間で通信する通信部と、前記他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、制御モードとドループ率とを少なくとも制御し、前記制御モードは、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含み、前記制御部は、前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合に、前記ドループ率を0%以外の、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定する制御を行う、電力制御装置が提供される。
【0008】
また本開示によれば、プロセッサが、直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、を含み、前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる際に、前記ドループ率を0%以外の、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、電力制御方法が提供される。
【0009】
また本開示によれば、プロセッサが、直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、を含み、前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合、前記ドループ率を0%以外の、前記直流バスラインにおける電圧降下に応じた所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、電力制御方法が提供される。
【0010】
また本開示によれば、直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、をコンピュータに実行させ、前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる際に、前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、コンピュータプログラムが提供される。
【0011】
また本開示によれば、直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、をコンピュータに実行させ、前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合、前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、コンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本開示によれば、直流の電力線を通じて需要家間で電力供給を行う際に電圧制御権の安定した移行が可能な、新規かつ改良された電力制御装置、電力制御方法及びコンピュータプログラムを提供することが出来る。
【0013】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電力供給システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】同実施の形態に係る電力供給装置に含まれるコントローラの機能構成例を示す説明図である。
【
図3】既存のドループ制御について説明するための説明図である。
【
図4】直流バスラインを利用したP2Pの電力融通について説明するための説明図である。
【
図5】電力供給装置のDC/DC変換器の動作例を示す流れ図である。
【
図6A】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図6B】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図6C】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図6D】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図7】電圧モードで動作するDC/DC変換器が2つ存在している状態の例を示す説明図である。
【
図8】同実施形態に係る各電力供給装置のDC/DC変換器の動作例を示す流れ図である。
【
図9A】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図9B】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図9C】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図9D】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図9E】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図9F】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図10】ドループ制御を用いた電圧モードの並列動作を示す説明図である。
【
図11】ドループ制御について説明するための説明図である。
【
図12】DC/DC変換器のドループ率の設定例を示す説明図である。
【
図13】DC/DC変換器のドループ率の設定例を示す説明図である。
【
図14】DC/DC変換器がどの動作モードで動作しているかを確認するための表示例を示す説明図である。
【
図15】同実施形態に係る各電力供給装置のDC/DC変換器の動作例を示す流れ図である。
【
図16A】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図16B】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図16C】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図16D】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図16E】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図16F】DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
【
図17】DC/DC変換器の状態遷移図を示す説明図である。
【
図18】DC/DC変換器の状態遷移図を示す説明図である。
【
図19】同実施形態に係る電力供給装置の動作例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.本開示の実施の形態
1.1.構成例
1.2.動作例
2.まとめ
【0017】
<1.本開示の実施の形態>
[1.1.構成例]
まず、図面を参照しながら本開示の一実施形態に係る電力供給装置を有する電力供給システムの構成例について説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る電力供給システムの構成例を示す説明図である。以下、
図1を用いて本開示の一実施形態に係る電力供給システムの構成例について説明する。
【0018】
図1に示した、本開示の一実施形態に係る電力供給システム1は、直流のバスラインで電力を融通しあうシステムである。
図1に示したように、本開示の一実施形態に係る電力供給システム1は、電力供給装置100、200、300、400を含んで構成される。電力供給装置100、200、300、400は、それぞれ、通信回線500と、直流バスライン600と、で相互に接続されている。
【0019】
電力供給装置100、200、300、400は、いずれも自装置の内部または外部にバッテリを備える装置であり、本開示の電力制御装置の一例である。例えば家庭や事業所等に設置される装置である。本実施形態では、電力供給装置100、200、300、400は、いずれも内部にバッテリ130、230、330、430を備えているものとする。電力供給装置100、200、300、400は、このバッテリ130、230、330、430に電力を蓄え、電力を蓄えたバッテリ130、230、330、430から、電力供給装置100、200、300、400に接続されている機器に電力を供給することができる。
【0020】
本実施形態に係る電力供給装置100、200、300、400は、例えば、商用電源からの電力供給が途絶えた場合に、バッテリ130、230、330、430に蓄えてある電力を、それぞれ接続されている機器170、270、370、470に供給することで、電力を消費する機器170、270、370、470への電力供給の途絶を防ぐことができる装置である。電力を消費する機器170、270、370、470の例としては、例えばエアーコンディショナ、冷蔵庫、テレビ、パーソナルコンピュータ(PC)等の家電製品の他、電気自動車のような電気を動力源とする車両も含まれ得る。
【0021】
なお、
図1では1つの電力供給装置に1つの機器が接続されている形態が示されているが、本開示は係る例に限定されるものではない。1つの電力供給装置に電力を消費する複数の機器が接続されていても良い。
【0022】
電力供給装置100、200、300、400は、商用電源からの電力供給が途絶え、バッテリに蓄えてある電力が所定量以下になった場合に、他の電力供給装置から直流バスライン600を介して電力の供給を受けたり、また他の電力供給装置へ直流バスライン600を介して電力を供給したりする機能を有する装置である。
【0023】
図1に示した電力供給装置100、200、300、400の中から、電力供給装置100を取り上げて、電力供給装置100、200、300、400の機能構成例について説明する。
図1に示したように、本開示の一実施形態に係る電力供給装置100は、AC/DC変換器110と、DC/AC変換器120と、バッテリ130と、DC/DC変換器140と、コントローラ150と、を含んで構成される。
【0024】
AC/DC変換器110は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換する。AC/DC変換器110は、交流電力から変換した直流電力を、DC/AC変換器120やバッテリ130、DC/DC変換器140に出力する。
【0025】
DC/AC変換器120は、直流電力を交流電力に変換し、電力供給装置100に接続されている機器170に交流電力を供給する。電力供給装置100から機器170に供給される交流電力の電力源は、商用電源またはバッテリ130である。
【0026】
バッテリ130は、充放電が可能な蓄電池であり、例えば商用電源からの電力供給が途絶しても、機器170へ所定の時間電力を供給できるだけの容量を有する。電力供給装置100は、商用電源からの電力供給が途絶した場合に、バッテリ130からの電力供給に切り替えて、機器170へ電力を供給するよう動作する。バッテリ130は、AC/DC変換器110で変換された直流電力を蓄えることが出来る他、例えば太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギによって発電された直流電力を蓄えてもよい。
【0027】
DC/DC変換器140は、AC/DC変換器110で変換された直流電力またはバッテリ130から供給される直流電力を、直流バスライン600へ出力できる直流電力に変換する。直流バスライン600へ出力できる直流電力への変換については、後に詳述する。
【0028】
コントローラ150は、電力供給装置100の動作を制御する。本実施形態では、コントローラ150は、自装置への商用電源からの電力供給が途絶し、バッテリ130の容量が所定量以下になった場合に、通信回線500を通じて、他の電力供給装置200、300、400へ向けて直流バスライン600への電力の供給を要求するよう、電力供給装置100の動作を制御する。
【0029】
また本実施形態では、他の電力供給装置200、300、400への電力供給が途絶し、バッテリ230、330、430の容量が所定量以下になった場合に、電力供給装置200、300、400が通信回線500を通じて送信した直流バスライン600への電力供給要求を受信すると、コントローラ150は、電力の供給が可能であれば、電力供給要求を送信した電力供給装置200、300、400へ、直流バスライン600を通じて電力供給を行なうよう、電力供給装置100の動作を制御する。
【0030】
コントローラ150は、直流バスライン600を通じて電力供給を行なうよう電力供給装置100の動作を制御する際に、既に他の電力供給装置200、300、400が、直流バスライン600の制御権を得ているか否かで動作を変化させる。直流バスライン600の制御権とは、直流バスライン600の電圧の設定を行うことができる権利のことをいう。コントローラ150は、直流バスライン600の定格を超えないよう、直流バスライン600を通じて電力供給を行なうよう電力供給装置100の動作を制御する。
【0031】
他の電力供給装置200、300、400が直流バスライン600の制御権を得ていなければ、コントローラ150は、直流バスライン600の制御権を得たことを他の電力供給装置200、300、400に通知した上で、直流バスライン600を通じて電力供給を行なうよう電力供給装置100の動作を制御する。
【0032】
一方、他の電力供給装置200、300、400のいずれかが直流バスライン600の制御権を得ていれば、コントローラ150は、直流バスライン600の制御権を他の電力供給装置200、300、400のいずれかが得ていることを前提として、直流バスライン600を通じて電力供給を行なうよう、電力供給装置100の動作を制御する。
【0033】
電力供給装置100、200、300、400は、DC/DC変換器140、240、340、440を介した電力授受の際に、少なくとも3つの状態を有する制御モードを切り替えながら動作する。この制御モードは、DC/DC変換器の状態を制御するものであり、本実施形態では、直流バスライン600の制御権を得ている場合の制御モードを電圧モードと称し、直流バスライン600に電流を流したり、直流バスライン600から電流を受けたりする場合の制御モードを電流モードと称する。また直流バスライン600の制御権を得ておらず、直流バスライン600からの電力の授受も行っていない場合の制御モードを停止モードと称する。
【0034】
コントローラ150は、電力の供給が可能かどうかを、バッテリ130に蓄えてある電力量、近い将来の機器170の電力消費予測、近い将来へのバッテリ130への蓄電量予測等の情報を用いて判断しても良い。またコントローラ150は、電力の供給が可能かどうかを、電力供給を要求してきた電力供給装置の優先度に基づいて判断しても良い。
【0035】
他の電力供給装置200、300、400は、電力供給装置100と同様の構成を有する。すなわち、本開示の一実施形態に係る電力供給装置200は、AC/DC変換器210と、DC/AC変換器220と、バッテリ230と、DC/DC変換器240と、コントローラ250と、を含んで構成される。本開示の一実施形態に係る電力供給装置300は、AC/DC変換器310と、DC/AC変換器320と、バッテリ330と、DC/DC変換器340と、コントローラ350と、を含んで構成される。本開示の一実施形態に係る電力供給装置400は、AC/DC変換器410と、DC/AC変換器420と、バッテリ430と、DC/DC変換器440と、コントローラ450と、を含んで構成される。
【0036】
以上、
図1を用いて本開示の実施の形態に係る電力供給システム1の構成例を説明した。続いて、本開示の実施の形態に係る電力供給装置100に含まれるコントローラ150の機能構成例について説明する。
【0037】
図2は、本開示の実施の形態に係る電力供給装置100に含まれるコントローラ150の機能構成例を示す説明図である。以下、
図2を用いて本開示の実施の形態に係る電力供給装置100に含まれるコントローラ150の機能構成例について説明する。
【0038】
図2に示したように、コントローラ150は、電力判断部151と、通信部152と、電力制御部153と、を含んで構成される。
【0039】
電力判断部151は、例えば、電力供給装置100への商用電源からの電力供給が途絶したかどうかを判断する。電力判断部151は、商用電源からの電力供給の途絶の発生の有無を、例えば所定の電力線の電圧値を検出することで判断する。また電力判断部151は、例えば、商用電源からの電力供給が途絶すると、機器170へのバッテリ130からの電力供給に伴って、バッテリ130の容量が所定量以下になったかどうかを判断する。電力判断部151は、商用電源からの電力供給の途絶が発生するなどして、バッテリ130の容量が所定量以下に低下したと判断すると、通信回線500を通じて電力供給要求を通信部152から送信させるよう動作する。また電力判断部151は、他の電力供給装置200、300、400から電力供給要求が送信されてきた場合に、その電力供給要求を送信した装置へ電力供給が可能か否かを判断する。電力供給要求を送信した装置へ電力供給が可能である場合は、通信回線500を通じて電力供給候補者としてその装置へ通信部152から返信させるよう動作する。
【0040】
通信部152は、通信回線500を通じて電力の送電及び受電に関する様々な情報を送信する。また通信部152は、通信回線500を通じて電力の送電及び受電に関する様々な情報を受信する。
【0041】
通信部152は、商用電源からの電力供給の途絶が発生し、バッテリ130の容量が所定量以下に低下したと電力判断部151が判断すると、通信回線500を通じ、他の電力供給装置200、300、400へ電力要求を送信する。また通信部152は、他の電力供給装置200、300、400からの電力供給の許諾に応じ、電力の供給を受ける電力供給装置を選択し、選択した電力供給装置に向けて、通信回線500を通じ、電力供給者として選択した旨を送信する。
【0042】
また通信部152は、他の電力供給装置200、300、400において商用電源からの電力供給の途絶が発生し、バッテリの容量が所定量以下に低下したと判断された場合に送信される電力要求を受信する。
【0043】
通信部152は、他の電力供給装置200、300、400から電力供給要求が送信されて、その装置へ電力供給が可能であると電力判断部151が判断すると、電力供給候補者としてその装置に返答するための情報を送信する。通信部152は、返答の際に、例えば電力供給の際の料金、供給開始までの時間、供給可能な時間、電力供給を要求した装置への過去の供給実績等の情報を含んでいても良い。通信部152から電力供給候補者としてその装置に返答するための情報を送信することで、受信した他の電力供給装置200、300、400は、その情報に基づいて電力供給候補者を決定することが出来る。
【0044】
商用電源からの電力供給の途絶が発生して、バッテリ130の容量が所定量以下に低下した際に送信される電力要求には、例えば、要求する電力量や、電力の供給を要求する時間帯、希望するコストの情報、過去の電力の受電実績等が含まれ得る。そして電力供給に対する応答には、例えば、供給可能な電力量、電力を送電できる時間、電力のコストの情報、電力供給を要求した装置への過去の供給実績などが含まれ得る。電力供給装置100、200、300、400は、直流バスライン600を通じて電力を融通し合う際に、これらの情報をやり取りすることで、電力の供給元や供給先、供給時間等を決定する事が出来る。
【0045】
なお、通信部152が送信する情報、または受信する情報は、暗号化されていてもよい。情報の暗号化や、暗号化された情報の復号は通信部152が実行しても良い。情報の暗号化には、例えば共通鍵暗号方式、公開鍵暗号方式等の暗号方式が用いられ得る。
【0046】
通信部152が送信する情報および受信する情報が暗号化されることで、悪意のある第三者による情報の盗聴による不都合が回避できる。また通信部152からの情報の送信や、通信部152での情報の受信に先立って、相手との間で予め認証処理が行われても良い。相手との間で予め認証処理が行われることで、なりすまし等による不都合が回避できる。なお、暗号化方式や認証方式は、特定の方法に限られないことは言うまでもない。
【0047】
電力制御部153は、直流バスライン600を通じたDC/DC変換器140からの電力の送電及びDC/DC変換器140での電力の受電を制御する。電力制御部153による電力の送受電の制御は、通信部152が送信または受信する情報に基づいて行われる。
【0048】
また電力制御部153は、他の電力供給装置から電力供給が送信されてきた場合に、電力の供給が可能かどうかを、バッテリ130に蓄えてある電力量や、近い将来の機器170の電力消費予測等の情報が用いて判断しても良い。
【0049】
図2には、電力供給装置100に含まれるコントローラ150の機能構成例を示したが、電力供給装置200に含まれるコントローラ250、電力供給装置300に含まれるコントローラ350及び電力供給装置400に含まれるコントローラ450についても、
図2に示した構成と同様の構成を有する。また、コントローラ150は、例えば電力制御プロセッサや通信プロセッサなどの複数の異なるコントローラから構成されていても良い。さらに、電力判断部151と、通信部152と、電力制御部153の機能の各々あるいはその一部が異なるコントローラで実現されるようにしても良い。
【0050】
以上、
図2を用いて本開示の一実施形態に係る電力供給装置100に含まれるコントローラ150の機能構成例について説明した。続いて、本開示の一実施形態に係る電力供給システム1の動作例について説明する。
【0051】
[1.2.動作例]
まず、
図1に示した本開示の一実施形態に係る電力供給システム1を用いて、本開示の実施の形態に至る経緯について説明する。
【0052】
図1に示したような、直流バスライン600を共有して1対1(Peer to Peer;P2P)の電力融通を実現するシステムにおいて、継続的に複数のDC/DC変換器による電力融通を実施するためには、直流バスライン600に接続されているDC/DC変換器の中に、必ず電圧モードで動作するDC/DC変換器が存在する必要がある。
【0053】
この条件を満たすために、例えば、電圧モードで動いているDC/DC変換器を、自身の電力融通が終了した後も、他の電力融通が継続する限り電圧モードでの動作を継続させる方法がある。この方法では、自身が電力融通を終了しているにもかかわらず、電圧モードとして動作を継続するために、そのDC/DC変換器に接続されているバッテリの電力を消費してしまう。
【0054】
一方で、電圧モードであるDC/DC変換器の電力融通が終了した際に、直流バスライン600の全電力融通を一度終了(停止)してから、継続したい電力融通のみ再度開始するという方法がある。この方法では、電力融通の停止処理、さらに開始処理に時間がかかってしまい、直流バスライン600の利用効率が下がってしまう。
【0055】
また、電圧モードにあるDC/DC変換器の電力融通が終了した際に、電力融通を継続する他のDC/DC変換器を電圧モードに切り替えて動作させることにより、直流バスライン600の電圧制御権を移動する方法がある、しかし、他のDC/DC変換器への電圧制御権の移動時に、一時的に電圧モードであるDC/DC変換器が2つ存在することになり、この際に、直流バスライン600の配線抵抗による電圧降下や、機器の設定値の誤差の影響により直流バスライン600を目標の電圧に設定できない場合、DC/DC変換器は電流制限値まで電流を流し続けてしまう。
【0056】
図3は、既存のドループ制御について説明するための説明図である。
図3は、横軸に直流バスライン600を流れる電流、縦軸に直流バスライン600の電圧を現したグラフを示している。
図3に示したグラフでは、基準負荷(電流I_0)で電圧がV_0となるが、負荷が増えて電流がIとなると直流バスライン600の電圧がVまで降下する。この制御により、2つの電圧源を並列動作させる場合、例えばある電圧源からの電流が増えると、電圧が低下し、その結果、別の電圧源から電流が流れるという動作になる。このように電圧源が動作することで、一つの電圧源から大きな電流が流れることはなく、受動的に電流のバランスを取ることが出来る。このように、ドループ制御では受動的に電流のバランスが決まってしまうために、例えばあるバッテリから別のバッテリへ能動的に決められた量の電力を送電するようなP2Pの電力融通を行うためには別の方法と組み合わせる必要がある。ドループ制御を用いて能動的なP2Pの電力融通を実現する本開示の好適な実施例については、第二及び第三の実施例として、後述する。
【0057】
(第一の実施例)
ドループ制御を用いずに、直流バスライン600に接続されているDC/DC変換器同士で能動的なP2Pの電力融通を実現することができる。この実施例では直流バスライン600に接続されているDC/DC変換器のうち、一つのDC/DC変換器を電圧モードで動作させて直流バスライン600の電圧を一定に保ち、その他のDC/DC変換器を電流モードとして動作させて、直流バスライン600に流れる電流を制御する方法を採ることができる。
【0058】
図4は、直流バスライン600を利用したP2Pの能動的な電力融通について説明するための説明図である。例えば、電力供給装置100のDC/DC変換器140を電圧モードで動作させ、その他の電力供給装置200、300、400のDC/DC変換器240、340、440を電流モードとして動作させる。この方式では、ドループ制御を用いず、電圧モードのDC/DC変換器が直流バスライン600の電圧を一定に保つことにより、定量の電力融通を実現することが可能となる。なお、
図4以降の図では、DC/DC変換器140を「DCDC1」、DC/DC変換器240を「DCDC2」、DC/DC変換器340を「DCDC3」、DC/DC変換器440を「DCDC4」とも表記する。
【0059】
この方式は、電力融通に参加するDC/DC変換器のみが動作していることが特徴であり、自身の電力融通が終わると、DC/DC変換器の動作を停止することにより電力効率を上げることが可能となる。一方で、この実施例では、電圧モードの電力供給装置のDC/DC変換器の動作を停止する際には、別の電力供給装置に直流バスライン600の電圧制御権を移動する必要があり、この移動の際に、システムの動作が不安定な状態になる可能性があることについては、実施において考慮する必要がある。
【0060】
図5は、各電力供給装置のDC/DC変換器の動作例を示す流れ図である。また
図6A~
図6Dは、
図5に示した動作例における各動作に対応した、各電力供給装置の状態を示す説明図である。
図5の例では、まずは電力供給装置100の制御モードが電圧モードで、かつドループ制御をせずに(ドループ率0%で)動作し、電力供給装置200、300、400の制御モードがいずれも電流モードで動作している。
図6Aには、電力供給装置100の制御モードが電圧モードで、かつドループ制御をせずに(ドループ率0%で)動作し、電力供給装置200、300、400の制御モードがいずれも電流モードで動作していることが示されている。またこの例では、予め電力供給装置100、200の間での合意によりDC/DC変換器140からDC/DC変換器240へ、電力供給装置300、400の間での合意によりDC/DC変換器340からDC/DC変換器440へ、それぞれ電力融通が行われているとする。
【0061】
例えば、DC/DC変換器140からDC/DC変換器240へ電力を融通している場合、電力制御部153は所定の電力融通の終了条件を満たしたかどうかを判定する(ステップS11)。所定の電力融通の終了条件を満たしていれば、電力供給装置100は電力供給装置200へ電力融通の停止要求を送信する。電力供給装置200は、電力融通の停止要求の受信に基づき、制御モードを停止モードに移行させる(ステップS12)。
図6Bには、電力供給装置200の制御モードが停止モードに移行したことが示されている。
【0062】
その後、DC/DC変換器140からDC/DC変換器340へ直流バスライン600の制御権を渡すため、電力供給装置300の制御モードは電流モードから電圧モードに移行される(ステップS13)。この際、電圧モードで動作する電力供給装置が一時的に2つとなる。
図6Cには、電力供給装置100、300の制御モードが電圧モードとなっている例が示されている。その後、電力供給装置100の制御モードが電圧モードから停止モードに移行される(ステップS14)。
図6Dには、電力供給装置100の制御モードが停止モードに移行したことが示されている。
【0063】
ここで、上記ステップS13の時点で、電圧モードで動作するDC/DC変換器が2つ存在し、DC/DC変換器140、340が並列に動作している。配線抵抗による電圧降下や機器の設定値の誤差の影響により、電圧モードで動作しているDC/DC変換器の一方、または両方が直流バスライン600の電圧をターゲット電圧に制御できず、電流制限値まで電流を流そうとすることにより、一時的にシステムの動作が不安定になることがある。
【0064】
図7は、電圧モードで動作するDC/DC変換器が2つ存在している状態の例を示す説明図である。このケースでは直流バスライン600に流れる電流および直流バスライン600の配線抵抗により、直流バスライン600のA点とB点との間に電位差が生じる。この状態で、DC/DC変換器140とDC/DC変換器340の2つを電圧モードで動作させるためには、直流バスライン600のA点とB点の電位差を考慮した電圧設定を行う必要がある。そこで、そのような電圧設定を行うためには、電位差の要因となる、直流バスライン600の電流、直流バスライン600の抵抗値、DC/DC変換器の電圧設定誤差などを全てモニタするように実施することが望ましい。
【0065】
(第二の実施例)
本実施形態では、直流バスライン600の電圧制御権をあるDC/DC変換器から別のDC/DC変換器へ移動させる場合にのみ、DC/DC変換器に0以上の所定の値を持つドループ率を設定する。直流バスライン600の電圧制御権をあるDC/DC変換器から別のDC/DC変換器へ移動させる場合にのみ、DC/DC変換器に所定の値を持つドループ率を設定することで、直流バスライン600を利用したP2Pの能動的な電力融通において、電力供給装置間で、安定して直流バスライン600の電圧制御権を移動させることができる。
【0066】
図8は、本実施形態に係る各電力供給装置のDC/DC変換器の動作例を示す流れ図である。また
図9A~
図9Fは、
図8に示した動作例における各動作に対応した、各電力供給装置の状態を示す説明図である。
図8の例では、まずは電力供給装置100の制御モードが電圧モードで、かつドループ制御を行わずに(ドループ率0%で)動作し、電力供給装置200、300、400の制御モードがいずれも電流モードで動作している。
図9Aには、電力供給装置100の制御モードが電圧モードで、かつドループ制御を行わずに(ドループ率0%で)動作し、電力供給装置200、300、400の制御モードがいずれも電流モードで動作していることが示されている。またこの例では、予め電力供給装置100、200の間での合意によりDC/DC変換器140からDC/DC変換器240へ、電力供給装置300、400の間での合意によりDC/DC変換器340からDC/DC変換器440へ、それぞれ電力融通が行われているとする。
【0067】
例えば、DC/DC変換器140からDC/DC変換器240へ電力を融通している場合、電力制御部153は所定の電力融通の終了条件を満たしたかどうかを判定する(ステップS101)。所定の電力融通の終了条件を満たしていれば、電力供給装置100は電力供給装置200へ電力融通の停止要求を送信する。電力供給装置200は、電力融通の停止要求の受信に基づき、制御モードを停止モードに移行させる(ステップS102)。
図9Bには、電力供給装置200の制御モードが停止モードに移行したことが示されている。
【0068】
その後、電力供給装置300からの制御権の要求に応じる形で、DC/DC変換器140からDC/DC変換器340へ直流バスライン600の制御権が渡されることになるが、まず電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行される(ステップS103)。
図9Cには、電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことが示されている。
【0069】
電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行すると、コントローラ150は、電力供給装置300へ、電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことを通知する。電力供給装置300は、電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことの通知を受けると、続いて電力供給装置300の制御モードを、同じくドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行させる(ステップS104)。
図9Dには、電力供給装置300の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことが示されている。
【0070】
電力供給装置300の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行すると、コントローラ350は、電力供給装置100へ、電力供給装置300の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことを通知する。電力供給装置100は、電力供給装置300の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことの通知を受けると、続いて電力供給装置100の制御モードをドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードから停止モードに移行させる(ステップS105)。
図9Eには、電力供給装置100の制御モードが停止モードに移行したことが示されている。電力供給装置100は、この際にドループ率を0%とする。
【0071】
電力供給装置100の制御モードが停止モードに移行すると、続いて電力供給装置300の制御モードがドループ制御を行わない(ドループ率0%の)電圧モードに移行される(ステップS106)。
図9Fには、電力供給装置300の制御モードがドループ制御を行わない(ドループ率0%の)電圧モードに移行したことが示されている。
【0072】
電力供給装置100、300がこのように動作することで、2つの電圧モードのDC/DC変換器140、340の並列動作を安定的に実施することが可能となる。
【0073】
図10は、ドループ制御を用いた電圧モードの並列動作を示す説明図である。また
図11は、ドループ制御について説明するための説明図であり、横軸に直流バスライン600を流れる電流、縦軸に直流バスライン600の電圧を現したグラフを示している。直流バスライン600の制御権の移行対象となるDC/DC変換器140、340のドループ率をαに設定することにより、DC/DC変換器140、340はドループ制御となり、DC/DC変換器140、340に電圧差があったとしても、DC/DC変換器140は電流I_A、DC/DC変換器340は電流I_Bにて受動的に電流バランスを取ることができる。従って、DC/DC変換器140、340から過電流が流れることはなくなる。
【0074】
図12は、DC/DC変換器のドループ率の設定例を示す説明図であり、横軸に直流バスライン600を流れる電流、縦軸に直流バスライン600の電圧を現したグラフを示している。各DC/DC変換器は、ドループ率、つまり流出または流入電流に対する出力電圧の傾きを設定することが可能であり、最大流入電流にて最大制御電圧、最大流出電流にて最小制御電圧となるように、DC/DC変換器のドループ率(傾き)を設定されうる。このようにドループ率(傾き)が設定されることにより、各DC/DC変換器の制御範囲内にて電圧モードの並列動作を実現することが可能となる。
【0075】
図13は、DC/DC変換器のドループ率の別の設定例を示す説明図であり、横軸に直流バスライン600を流れる電流、縦軸に直流バスライン600の電圧を現したグラフを示している。この例では、上述の流出・流入電流に加えて直流バスライン600に電流が流れた場合の電圧降下を考慮して、DC/DC変換器のドループ率(傾き)を設定している。電圧降下を考慮して、DC/DC変換器のドループ率(傾き)を設定することにより、直流バスライン600の電圧降下を考慮した上で、各DC/DC変換器の制御範囲内にて電圧モードの並列動作を実現することが可能となる。
【0076】
各電力供給装置がどの動作モードで動作しているかを遠隔で確認するための表示例を示す。
図14は、電力供給装置がどの動作モードで動作しているかを確認するための表示例を示す説明図である。
【0077】
表示U1は、
図9Aに示した状態に対応するものであり、電力供給装置100から電力供給装置200へ、また電力供給装置300から電力供給装置400へ、それぞれ電力融通が行われている様子を現したものである。
【0078】
表示U2は、
図9Cに示した状態に対応するものであり、電力供給装置100の制御モードが、ドループ制御を行わない電圧モードから、ドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行した様子を現したものである。また表示U3は、
図9Dに示した状態に対応するものであり、電力供給装置300の制御モードが、電流モードから、ドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行した様子を現したものである。
【0079】
表示U4は、
図9Eに示した状態に対応するものであり、電力供給装置100の制御モードが、ドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードから、停止モードに移行した様子を現したものである。そして表示U5は、
図9Fに示した状態に対応するものであり、電力供給装置300の制御モードが、ドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードから、ドループ制御を行わない電圧モードに移行した様子を現したものである。
【0080】
このような表示は、例えば通信回線500と直接に、またはインターネット等を通じて間接的に接続されている装置のディスプレイ等の表示装置上に表示させることが出来る。
【0081】
(第三の実施例)
第二の実施例では、電圧モードで動作していた電力供給装置は、他の電力供給装置へ直流バスライン600の制御権を渡した後に停止モードに移行していたが、電圧モードで動作していた電力供給装置は、他の電力供給装置へ直流バスライン600の制御権を渡した後に停止モードに移行せず、電流モードに移行しても良い。
【0082】
図15は、本実施形態に係る各電力供給装置のDC/DC変換器の動作例を示す流れ図である。また
図16A~
図16Fは、
図16に示した動作例における各動作に対応した、各DC/DC変換器の状態を示す説明図である。
図16の例では、まずは電力供給装置100の制御モードが電圧モードで、かつドループ制御をせずに(ドループ率0%で)動作し、電力供給装置200が電流モードで動作している。そして電力供給装置400の制御モードはいずれも停止モードであった。
図16Aには、電力供給装置100の制御モードが電圧モードで、かつドループ制御を行わずに(ドループ率0%で)動作し、電力供給装置200の制御モードが電流モードで動作し、電力供給装置300、400の制御モードが停止モードとなっていることが示されている。またこの例では、予め電力供給装置100、200の間での合意によりDC/DC変換器140からDC/DC変換器240へ電力が供給されているものとする。
【0083】
この状態で、電力供給装置300、400の間で所定のメッセージの授受により、DC/DC変換器340からDC/DC変換器440への電力融通が開始されたとする(ステップS111)。DC/DC変換器340からDC/DC変換器440への電力融通が開始されたことは、直流バスライン600の制御権を有している電力供給装置100に伝えられる。ここで、電力供給装置100は、DC/DC変換器340へ直流バスライン600の制御権を渡したい場合、制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行される(ステップS112)。
図16Bには、電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことが示されている。
【0084】
電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行すると、コントローラ150は、電力供給装置300へ、電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことを通知する。電力供給装置300は、電力供給装置100の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことの通知を受けると、続いて、同じくドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに制御モードを移行させる(ステップS113)。
図16Cには、電力供給装置300の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことが示されている。
【0085】
電力供給装置300の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行すると、コントローラ350は、電力供給装置100へ、電力供給装置300の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことを通知する。電力供給装置100は、電力供給装置300の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行したことの通知を受けると、続いてドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードから電流モードに制御モードを移行させる(ステップS114)。
図16Dには、電力供給装置100の制御モードが電流モードに移行したことが示されている。
【0086】
電力供給装置100の制御モードが電流モードに移行すると、コントローラ150は、電力供給装置300へ、電力供給装置100の制御モードが電流モードに移行したことを通知する。電力供給装置300は、電力供給装置100の制御モードが電流モードに移行したことの通知を受けると、続いて、ドループ制御を行わない(ドループ率0%の)電圧モードに制御モードを移行させる(ステップS115)。
図16Eには、電力供給装置300の制御モードがドループ制御を行わない(ドループ率0%の)電圧モードに移行したことが示されている。
【0087】
電力供給装置300の制御モードがドループ制御を行わない(ドループ率0%の)電圧モードに移行すると、コントローラ350は、電力供給装置400へ、電力融通の準備が出来たことを通知する。電力供給装置400は、電力融通の準備が出来たことの通知をコントローラ350から受けると、電力供給装置400の制御モードを電流モードに移行させる(ステップS116)。
図16Fには、電力供給装置400の制御モードが電流モードに移行したことが示されている。
【0088】
このようなケースが有効なのは、例えば、電力供給システム1に大きな電力容量を持つDC/DC変換器が存在する場合である。この大きな電力容量を持つDC/DC変換器を電圧モードとすることにより、DCグリッドの電流アンバランスの吸収力が高まり、障害発生時などの安定性を高めることが可能となる。このようなケースにおいても、
図15に示すようにドループ制御を用いた制御モードの遷移を実施することで、安定的に直流バスライン600の電圧制御権を移動することが可能となる。
【0089】
ここまでの説明を整理するために、電力供給装置の制御モードの状態について状態遷移図で説明する。
図17は、電力供給装置の制御モードの状態遷移図を示す説明図である。
図17に示したのは、
図9に示したように、他の電力供給装置へ直流バスライン600の電圧制御権を移動させた後、自身の制御モードを停止モードに移行する場合の状態遷移図である。
【0090】
電力融通を行っていない状態では、電力供給装置の制御モードは、停止モードであり、ドループ率は0%である(この状態を「停止状態」と呼ぶ)。他の電力供給装置へ電力を融通する場合には、他に直流バスライン600の制御権を持っている電力供給装置があれば制御モードを電流モード(ドループ率0%)(この状態を「電流制御状態」と呼ぶ)に移行し、他に直流バスライン600の制御権を持っている電力供給装置が無ければ、ドループ制御を行わない電圧モード(ドループ率0%)(この状態を「電圧リファレンス制御状態」と呼ぶ」)に制御モードを移行する。
【0091】
電圧リファレンス制御状態になった電力供給装置は、電力融通が完了し、他の電力供給装置へ直流バスライン600の制御権を渡す場合は、ドループ率α%でドループ制御を行う電圧モード(この状態を「トランジション状態」と呼ぶ)に一度移行した後に、停止状態に移行する。
【0092】
なお、電力融通が完了し、他の電力供給装置へ直流バスライン600の制御権を渡す必要が無い場合は、電力供給装置はトランジション状態を経由せず、停止状態に直接移行してもよい。
【0093】
電流制御状態の電力供給装置は、他の電力供給装置から直流バスライン600の制御権を受け取る場合、トランジション状態に一度移行した後に、電圧リファレンス制御状態に移行する。
【0094】
図18は、別の実施例における、電力供給装置の状態遷移図を示す説明図である。
図18に示したのは、
図15に示したように、他の電力供給装置へ直流バスライン600の制御権を移動させた後、自身の制御モードを停止モードまたは電流モードのどちらかに移行しうる場合の状態遷移図である。
【0095】
電圧リファレンス制御状態にある電力供給装置は、電力融通を行っている最中であっても、他の電力供給装置へ直流バスライン600の制御権を渡す場合は、トランジション状態に一度移行した後に、電流制御状態に移行する。電力融通が完了し、他の電力供給装置へ直流バスライン600の制御権を渡す場合は、電圧リファレンス制御状態からトランジション状態に一度移行した後に、停止状態に移行する。この場合であっても、電力融通が完了し、他の電力供給装置へ直流バスライン600の制御権を渡す必要が無い場合は、電力供給装置はトランジション状態を経由せず、電圧リファレンス制御状態から停止状態に直接移行してもよい。
【0096】
続いて、各電力供給装置の動作例を説明する。
図19は、本開示の実施の形態に係る電力供給装置(例えば電力供給装置100)の動作例を示す流れ図である。
図19に示したのは、直流バスライン600の制御権を電力供給装置間で移動させる場合の、電力供給装置の制御モードの制御の一例である。以下に示す一連の動作は、特に断りがなければ、コントローラ150が、特に電力制御部153が実行するものとする。
【0097】
電力供給装置は、制御モードの制御を行う際には、まず直流バスライン600を通じた電力融通に参加しているかどうかを判断する(ステップS121)。直流バスライン600を通じた電力融通に参加していなければ(ステップS121、No)、電力供給装置は、そのまま処理を終了する。一方、直流バスライン600を通じた電力融通に参加していれば(ステップS121、Yes)、電力供給装置は、当該電力供給装置が電圧モードかどうか判断する(ステップS122)。
【0098】
DC/DC変換器が電圧モードであれば(ステップS122、Yes)、電力供給装置は、他の電力供給装置に直流バスライン600の電圧制御権を移動するかどうか判断する(ステップS123)。他の電力供給装置に直流バスライン600の電圧制御権を移動しない場合は(ステップS123、No)、電力供給装置はそのまま処理を終了する。一方、他の電力供給装置に直流バスライン600の電圧制御権を移動する場合は(ステップS123、Yes)、電力供給装置は、ドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに電力供給装置の制御モードを移行させて(ステップS124)、直流バスライン600の電圧制御権の移動先の電力供給装置の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードになるまで待機する(ステップS125)。
【0099】
そして直流バスライン600の電圧制御権の移動先の電力供給装置の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードになると(ステップS125、Yes)、電力供給装置は直流バスライン600を通じた電力融通を継続するかどうか判断する(ステップS126)。直流バスライン600を通じた電力融通を継続する場合は(ステップS126、Yes)、電力供給装置は制御モードを電流モードに移行させる(ステップS127)。直流バスライン600を通じた電力融通を継続する場合は(ステップS126、No)、電力供給装置は制御モードを停止モードに移行させる(ステップS128)。
【0100】
上記ステップS122の判断において電力供給装置の制御モードが電圧モードでなければ(ステップS122、No)、電力供給装置は、他の電力供給装置から直流バスライン600の電圧制御権を移動するかどうか判断する(ステップS129)。他の電力供給装置から直流バスライン600の電圧制御権を移動しない場合は(ステップS129、No)、電力供給装置はそのまま処理を終了する。一方、他の電力供給装置から直流バスライン600の電圧制御権を移動する場合は(ステップS129、Yes)、電力供給装置は、直流バスライン600の電圧制御権の移動元の電力供給装置の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードになるまで待機する(ステップS130)。
【0101】
そして直流バスライン600の電圧制御権の移動元の電力供給装置の制御モードがドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードになると(ステップS130、Yes)、電力供給装置は制御モードをドループ率α%でドループ制御を行う電圧モードに移行させる(ステップS131)。続いて電力供給装置は、直流バスライン600の電圧制御権の移動元の電力供給装置の制御モードが電流モード、または停止モードになるまで待機し(ステップS132)、直流バスライン600の電圧制御権の移動元の電力供給装置の制御モードが電流モード、または停止モードになると(ステップS132、Yes)、ドループ制御を行わない電圧モードに制御モードを移行させる(ステップS133)。
【0102】
本開示の実施の形態に係る電力供給装置は、上述した一連の動作を実行することで、直流バスライン600に接続されている電力供給装置間で安定した直流バスライン600の電圧制御権の移動を可能とする。
【0103】
なお、上述の説明では、直流バスライン600の電圧制御権の移動元と移動先とで、電圧制御権の移動の際に同じドループ率を設定していたが、本開示は係る例に限定されない。電圧制御権の移動元と移動先とで、電圧制御権の移動の際に異なるドループ率を設定されてもよい。
【0104】
<2.まとめ>
以上説明したように本開示の実施の形態によれば、直流バスラインの電圧制御権をある電力供給装置から別の電力供給装置へ移動させる場合にのみ、所定の値を持つドループ率を設定することで、安定して電圧制御権を移動させる電力供給装置が提供される。
【0105】
本明細書の各装置が実行する処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、各装置が実行する処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0106】
また、各装置に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した各装置の構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供されることが可能である。また、機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアで構成することで、一連の処理をハードウェアで実現することもできる。
【0107】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0108】
例えば、通信回線500は、有線であっても無線であっても良い。例えば、通信回線500は、いわゆるメッシュネットワークで構成されていても良い。また本実施形態では、通信回線500と、直流バスライン600とが別である場合を示したが、本開示は係る例に限定されるものではない。例えば直流バスライン600に電力の送電及び受電に関する情報を重畳させてもよい。直流バスライン600に電力の送電及び受電に関する情報を重畳させることで、電力供給システムから通信回線500を省略させることが出来る。
【0109】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0110】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器と、
他の電力制御装置との間で通信する通信部と、
前記他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御モードとドループ率とを少なくとも制御し、
前記制御モードは、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含み、
前記制御部は、前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる場合に、前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定する制御を行う、電力制御装置。
(2)
前記制御部は、前記制御モードが前記第1のモードである場合に、他の電力制御装置から前記直流バスラインの制御権の移動要求を前記通信部が受信すると、前記制御モードを前記第1のモードにしたまま前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定する、前記(1)に記載の電力制御装置。
(3)
前記制御部は、前記ドループ率の前記所定の値を、前記他の電力制御装置と同じ値に設定する、前記(2)に記載の電力制御装置。
(4)
前記制御部は、前記ドループ率の前記所定の値を、前記他の電力制御装置と異なる値に設定する、前記(2)に記載の電力制御装置。
(5)
前記制御部は、前記他の電力制御装置の前記制御モードが前記第1のモードになったことを確認すると前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードに切り替え、前記ドループ率を0%に切り替える、前記(2)~(4)のいずれかに記載の電力制御装置。
(6)
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器と、
他の電力制御装置との間で通信する通信部と、
前記他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御モードとドループ率とを少なくとも制御し、
前記制御モードは、前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含み、
前記制御部は、前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合に、前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定する制御を行う、電力制御装置。
(7)
前記制御部は、前記直流バスラインの制御権を得ている他の電力制御装置へ、前記直流バスラインの制御権の移動要求を前記通信部が送信し、前記他の電力制御装置が前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定したことを確認すると、前記制御モードを前記第1のモードに変更すると共に前記ドループ率を0以外の所定の値に設定する、前記(6)に記載の電力制御装置。
(8)
前記制御部は、前記ドループ率の前記所定の値を、前記他の電力制御装置と同じ値に設定する、前記(7)に記載の電力制御装置。
(9)
前記制御部は、前記ドループ率の前記所定の値を、前記他の電力制御装置と異なる値に設定する、前記(7)に記載の電力制御装置。
(10)
前記制御部は、前記他の電力制御装置の前記制御モードが前記第2のモードまたは前記第3のモードになったことを確認すると前記制御モードを前記第1のモードに切り替え、前記ドループ率を0%に切り替える、前記(7)~(9)のいずれかに記載の電力制御装置。
(11)
プロセッサが、
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、
前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、
前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、
を含み、
前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる際に、前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、電力制御方法。
(12)
プロセッサが、
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、
前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、
前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、
を含み、
前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合、前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、電力制御方法。
(13)
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、
前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、
前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、
をコンピュータに実行させ、
前記制御モードを前記第1のモードから前記第2のモードまたは前記第3のモードに移行させる際に、前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、コンピュータプログラム。
(14)
直流バスラインに接続されるDC/DC変換器を通じて他の電力制御装置との間の前記直流バスラインを介した電力授受を制御することと、
前記直流バスラインの電圧を制御する第1のモード、前記直流バスラインに流れる電流を制御する第2のモード、及び電力授受を停止している第3のモードを含む制御モードを制御することと、
前記DC/DC変換器のドループ率を制御することと、
をコンピュータに実行させ、
前記制御モードを前記第2のモードまたは前記第3のモードから前記第1のモードに移行させる場合、前記ドループ率を0%以外の所定の値に設定した後に、前記ドループ率を0%に切り替える、コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0111】
1 電力供給システム
100、200、300、400 電力供給装置