(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】通信装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/16 20090101AFI20220928BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20220928BHJP
H04W 36/38 20090101ALI20220928BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20220928BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20220928BHJP
【FI】
H04W36/16
H04W84/12
H04W36/38
H04W92/20 110
H04W16/28 110
(21)【出願番号】P 2019533939
(86)(22)【出願日】2018-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2018022156
(87)【国際公開番号】W WO2019026427
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2017150578
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】特許業務法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅井 廉
(72)【発明者】
【氏名】相尾 浩介
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 茂
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-520119(JP,A)
【文献】特開2015-088782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局として動作する通信装置であって、
前記通信装置のBSS内で端末の通信品質の指標を表す第1のパラメータが配下の端末全体の分布から外れた少数の端末が存在するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記少数の端末が存在すると判定したときに、周辺の基地局との間で前記少数の端末の接続変更に関する信号の送受信を制御する制御部と、
を具備する通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、配下の端末に対し、前記周辺の基地局への接続を要請する要請信号の送信を制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記少数の端末に対し、前記周辺の基地局への接続を要請する前記要請信号の送信を制御する、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記配下の端末が前記周辺の基地局へ接続を変更した後の通信に関する第2のパラメータを含む前記要請信号の送信を制御する、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記周辺の基地局に対し、配下の端末の受け入れの可否を問い合わせる問い合わせ信号の送信を制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記周辺の基地局に対し、前記少数の端末の受け入れの可否を問い合わせる前記問い合わせ信号の送信を制御する、
請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、接続を変更したい配下の端末の数と各端末の通信状況に関する情報を含む前記問い合わせ信号、又は、前記周辺の基地局に対して受け入れを要請する特定の端末に関する情報を含む前記問い合わせ信号の送信を制御する、
請求項5に記載の通信装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記配下の端末が前記周辺の基地局へ接続を変更した後の通信に関する第2のパラメータを含む前記問い合わせ信号の送信を制御する、
請求項5に記載の通信装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記周辺の基地局から、配下の端末を受け入れることを示す回答信号を受信したときに、前記配下の端末に対し、前記周辺の基地局への接続を要請する要請信号の送信を制御する、
請求項5に記載の通信装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記回答信号に付加されている、前記周辺の基地局のBSS内の通信状況に関する情報を含む前記要請信号の送信を制御する、
請求項9に記載の通信装置。
【請求項11】
前記制御部は、周辺の基地局の配下の端末を自局に接続したときに、前記端末又は前記周辺の基地局のいずれかから受信した前記信号に含まれる第2のパラメータに基づいて、自局の通信パラメータを設定する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
前記制御部は、周辺の基地局から、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を問い合わせる問い合わせ信号を受信したことに応じて、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を回答する回答信号の送信を制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記問い合わせ信号に付加された前記端末を接続した後の通信に関する第2のパラメータ、又は、自局におけるトラフィック負荷に関する情報に基づいて、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を判断する、
請求項12に記載の通信装置。
【請求項14】
前記制御部は、自局のBSS内の通信状況に関する情報を含んだ前記回答信号の送信を制御する
請求項12に記載の通信装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記周辺の基地局の配下の端末を受け入れるときには、前記端末との接続を試みる、
請求項12に記載の通信装置。
【請求項16】
基地局として動作するための通信方法であって、
前記基地局のBSS内で端末の通信品質の指標を表す第1のパラメータが配下の端末全体の分布から外れた少数の端末が存在するか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて前記少数の端末が存在すると判定したときに、周辺の基地局との間で前記少数の端末の接続変更に関する信号の送受信を制御する制御ステップと、
を有する通信方法。
【請求項17】
基地局の配下で端末として動作する通信装置であって、
信号を送受信する送受信部と、
接続先の基地局が配下の端末全体の分布から外れた少数の端末に対して送信した他の基地局への接続を要請する要請信号に基づいて、基地局との接続を制御する制御部と、
を具備
し、
前記制御部は、接続が確立した後の前記他の基地局への、前記要請信号に含まれる、前記他の基地局へ接続を変更した後の通信に関する第2のパラメータの送信を制御する、
通信装置。
【請求項18】
前記制御部は、接続が確立した後の前記他の基地局への、前記要請信号に含まれる、前記他の基地局へ接続を変更した後の元の接続先の基地局のBSS内での空間再利用通信又はマルチユーザ通信の実施予定に関する情報の送信を制御する、
請求項17に記載の通信装置。
【請求項19】
基地局の配下で端末として動作するための通信方法であって、
接続先の基地局が配下の端末全体の分布から外れた少数の端末に対して送信した他の基地局への接続を要請する要請信号を受信する受信ステップと、
前記要請信号に基づいて、基地局との接続を制御する制御ステップと、
を有し、
前記制御ステップでは、接続が確立した後の前記他の基地局への、前記要請信号に含まれる、前記他の基地局へ接続を変更した後の通信に関する第2のパラメータの送信を制御する、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、マルチユーザ通信や空間再利用技術により高速通信を実現する通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)では、Uplink Multi User(UL MU)通信や空間再利用技術(Spatial Reuse:SR)の1つであるDynamic Sensitivity Control(DSC)によってさらなる高速通信の実現が期待されている。ここで、UL MU通信は、基地局(AP)が空間的又は周波数的に信号を多重することによって複数の端末(STA)との間で通信を行う技術である。また、DSCは、保守的に設定されている無線LANのパケット検出の閾値を変化させることで、新しく通信機会を得る技術である。DSC動作に基づくSR通信では、他のBSS(Basic Service Set)から届いた信号の受信電力が所定の信号検出閾値以下であれば、バックオフを許可して、BSS内での送信機会を増やすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書で開示する技術の目的は、マルチユーザ通信や空間再利用技術により高速通信を実現する通信装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する技術の第1の側面は、基地局として動作する通信装置であって、
前記通信装置のBSS内での通信状況を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて、周辺の基地局との間で端末の接続変更に関する信号の送受信を制御する制御部と、
を具備する通信装置である。
【0006】
前記判定部は、配下の端末全体の空間再利用通信又はマルチユーザ通信の実施状況の分布から外れた少数の端末の存在を判定し、前記制御部は、前記少数の端末に対し、前記周辺の基地局への接続を要請する要請信号の送信を制御する。あるいは、前記制御部は、前記周辺の基地局に対し、前記少数の端末の受け入れの可否に関する問い合わせる前記問い合わせ信号の送信を制御する。
【0007】
また、前記制御部は、周辺の基地局の配下の端末を自局に接続したときに、前記端末又は前記周辺の基地局のいずれかから受信した前記周辺の基地局が当該局自身に設定する通信リソースに関する情報又は前記周辺の基地局が自局に許容する通信リソースに関する情報に基づいて、自局の通信パラメータを設定する。
【0008】
また、前記制御部は、周辺の基地局から、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を問い合わせる問い合わせ信号を受信したことに応じて、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を回答する回答信号の送信を制御する。
【0009】
また、本明細書で開示する技術の第2の側面は、基地局として動作するための通信方法であって、
前記基地局のBSS内での通信状況を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に応じて、周辺の基地局との間で端末の接続変更に関する信号の送受信を制御する制御ステップと、
を有する通信方法である。
【0010】
また、本明細書で開示する技術の第3の側面は、基地局の配下で端末として動作する通信装置であって、
信号を送受信する送受信部と、
接続先の基地局から受信した他の基地局への接続を要請する要請信号に基づいて、基地局との接続を制御する制御部と、
を具備する通信装置である。
【0011】
前記制御部は、接続が確立した後の前記他の基地局への、前記要請信号に記載されている、元の接続先の基地局が前記他の基地局へ接続を変更した後に当該基地局自身に設定する通信リソースに関する情報又は前記他の基地局に許容する通信リソースに関する情報の送信を制御する。
【0012】
また、本明細書で開示する技術の第4の側面は、基地局の配下で端末として動作するための通信方法であって、
接続先の基地局から受信した他の基地局への接続を要請する要請信号を受信する受信ステップと、
前記要請信号に基づいて、基地局との接続を制御する制御ステップと、
を有する通信方法である。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示する技術によれば、マルチユーザ通信や空間再利用技術により高速通信を実現する通信装置及び通信方法を提供することができる。
【0014】
なお、本明細書に記載された効果は、あくまでも例示であり、本発明の効果はこれに限定されるものではない。また、本発明が、上記の効果以外に、さらに付加的な効果を奏する場合もある。
【0015】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本明細書で開示する技術を適用することが可能な無線通信システムの構成例を示した図である。
【
図2】
図2は、本明細書で開示する技術を適用することが可能な通信装置200の機能的構成を示した図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る通信のシーケンス例を示した図である。
【
図4】
図4は、実施例1に係る通信の他のシーケンス例を示した図である。
【
図5】
図5は、APAPが配下の孤立STAに対して実施する処理手順を示したフローチャートである。
【
図6】
図6は、APが配下の孤立STAを他のAPへ接続するか否かを判定するための処理手順を示したフローチャートである。
【
図7】
図7は、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させる際に実施する動作Aの処理手順を示したフローチャートである。
【
図8】
図8は、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させないときに実施する動作Bの処理手順を示したフローチャートである。
【
図9】
図9は、APが配下の孤立STAに対して他のAPへの接続要請時に送信する信号のフレーム構成を示した図である。
【
図10】
図10は、孤立STAが他のAPへの接続を要請する信号を受信したときに実施する処理手順を示したフローチャートである。
【
図11】
図11は、孤立STAが新しい接続先のAPに対して送信する信号のフレーム構成を示した図である。
【
図12】
図12は、APが周辺APに対して孤立STAを受け入れ可能であることを報知する信号のフレーム構成を示した図である。
【
図13】
図13は、実施例1に係る通信のシーケンスの変形例を示した図である。
【
図14】
図14は、実施例1に係る通信のシーケンスの他の変形例を示した図である。
【
図15】
図15は、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させる際に実施する動作Aの処理手順を示したフローチャートである。
【
図16】
図16は、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させないときに実施する動作Bの処理手順を示したフローチャートである。
【
図17】
図17は、APが配下の孤立STAに対して他のAPへの接続要請時に送信する信号のフレーム構成を示した図である。
【
図18】
図18は、孤立STAが他のAPへの接続を要請する信号を受信したときに実施する処理手順を示したフローチャートである。
【
図19】
図19は、孤立STAが新しい接続先のAPに対して送信する信号のフレーム構成を示した図である。
【
図20】
図20は、実施例1を適用した無線通信システムにおける動作例を示した図である。
【
図21】
図21は、実施例2に係る通信のシーケンス例を示した図である。
【
図22】
図22は、実施例2に係る他の通信のシーケンス例を示した図である。
【
図23】
図23は、実施例2において、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させる際に実施する動作Aの処理手順を示したフローチャートである。
【
図24】
図24は、実施例2において、APが配下の孤立STAの接続先を変更しないときに実施する動作Bの処理手順を示したフローチャートである。
【
図25】
図25は、APが他のAPに対して孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号のフレーム構成を示した図である。
【
図26】
図26は、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号の処理手順を示したフローチャートである。
【
図27】
図27は、孤立STA受け入れの問合せに対する回答信号のフレーム構成を示した図である。
【
図28】
図28は、APが配下の孤立STAに対して新しい接続先のAPへの接続を要請する信号のフレーム構成を示した図である。
【
図29】
図29は、実施例2に係る通信のシーケンスの変形例を示した図である。
【
図30】
図30は、実施例2に係る通信のシーケンスの他の変形例を示した図である。
【
図31】
図31は、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させる際に実施する動作Aの処理手順を示したフローチャートである。
【
図32】
図32は、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させないときに実施する動作Bの処理手順を示したフローチャートである。
【
図33】
図33は、APが他のAPに対して孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号のフレーム構成を示した図である。
【
図34】
図34は、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号の処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
BSS内に通信品質が低いSTAやUL MU通信やDSC動作に基づくSR通信を実施できないSTAが少数存在すると、SR通信やUL MU通信での改善効果が十分に得られなくなる、という問題がある。
【0019】
まずは、UL MU通信における問題について説明する。UL MU通信において、各STAから送信される信号の受信電力はある程度同じ電力になっていなければならない。このため、伝搬ロスなどが原因で受信電力が小さい少数のSTA(以下、「弱リンクSTA」とも言う)が存在する場合に、UL MU通信を行うSTAとして弱リンクSTAを選択してしまうと、他のUL MU通信を行うSTAは弱リンクSTAに合わせて低い送信電力で送信しなければならない。その結果、信号対雑音電力比が低下し、APがパケットを正しく受信できない可能性が増加してしまう。弱リンクSTAをMU通信するSTAとして選択しなければ、弱リンクSTAのスループット確保のために弱リンクSTAがSingle User(SU)通信を行う機会を別に確保する必要が生じる。弱リンクSTAは通信品質が悪いので、データレートが低いMCS(符号化・変調方式)で通信が行われることになる。このため、弱リンクSTAのSU通信のために長い時間周波数リソースが占有されるので、MU通信を行う時間が相対的に減少してしまう。設定されたパラメータや実装上の理由が原因でUL MU通信をほとんど実施しない又は実施できないSTAが存在する場合も、同様にSU通信を行う機会を確保する必要があるため、MU通信を行う時間が相対的に減少してしまう。
【0020】
一方、SR通信において、弱リンクSTAが存在する場合、無線LANパケットの信号検出閾値を上げると、弱リンクSTAが送信したパケットを検出できなくなるので、SR通信に大きな制約となる。その結果、SR通信による通信機会の増加の効果が得られなくなってしまう。また、SR通信を実施するSTAとSR通信をほとんど実施しない又は実施できないSTAが同じBSS内に存在する場合、通信機会の不公平が発生する。例えば、他のBSSからSR通信を実施するSTAとSR通信をほとんど実施しない又は実施できないSTAの2台に対して信号検出閾値より大きい干渉信号が到来してきた場合、SR通信をほとんど実施しない又は実施できないSTAはBUSY状態になるが、SR通信を実施するSTAは信号検出閾値を上げることにより通信を行える可能性がある。その結果、SR通信を行えるSTAばかりが通信を行うことになり、通信機会がますます不公平になってしまう。
【0021】
加えて、STAは自身がBSS内のSR通信やMU通信動作の制約になっているかどうかを把握することはできない。このため、BSS全体で見たときに、STAは接続可能な他のBSSに接続した方がBSSのスループット及び自身のスループットを向上できる場合であっても、STA自身がそれを判断できない。
【0022】
例えば、APがワイヤレス送受信ユニットの際に関連付けを開始できる無線通信方法について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。この無線通信方法によれば、APは、自身のトラヒック負荷に基づいて、配下のSTAに対してバックホールで接続している他のAPへの接続をリクエストする信号を送信する。STAは、このリクエストに応じて、該当する他のAPに対してアソシエーションを行う。この無線通信方法では、トラフィック負荷を判断基準としてSTAへのアソシエーションのリクエストを送信する。言い換えれば、SR送信やUL MU通信の効率を基準としてSTAをどのようにアソシエーションするべきかを判断するものではない。また、この無線通信方法は、AP間がバックホールを用いて接続されていることを前提としている。無線LANネットワークでは、基本的に、AP間がバックホールで接続されることを前提としない。すなわち、Enterprise WLANといった極めて限定された無線環境でしかこの無線通信方法を適用することができない。
【0023】
移動体通信ネットワークにおいて、移動体通信基地局(BS)は移動体通信端末(MT)の受信電力に基づいて他のBSにハンドオフするか否かを決定する。移動体通信ネットワークでは、BS間がバックホールで接続され、共通の集中制御局で管理される。これに対し、無線LANネットワークでは、各APは自律分散的に動作しており、単純に受信電力を判断基準としてSTAの接続先を制御すると、あるAPのトラフィック負荷が増大するといった不利益を一方的に被ってしまう事態に陥るおそれがあり、動作として問題となる。
【0024】
そこで、本明細書では、APが配下のSTAのSR通信やUL MU通信の実施状況の分布に基づいて、STAの接続先を最適化する技術について提案する。APは、配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況の分布を調査すし、その結果に基づいて動作選択を行う。
【0025】
具体的には、APは、配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた少数のSTA(以下、「孤立STA」とも言う)が存在することが判明した場合、APは、このような孤立STAに対して、そのSTA自身が接続可能なAPに関する情報のレポートを送信するように要請する。孤立STAは、多くの場合、同じBSS内の他のSTAよりも伝搬ロスなどが原因で受信電力が小さい弱リンクSTAである。そして、孤立STAが接続可能な他のAPが存在し、他の接続可能APに孤立STAを接続させることを決定した場合には、APは、孤立STAに対して当該他の接続可能APへの接続の要請を行い、及び、孤立STAが当該他の接続可能APに接続した際に送信機会を得易くなるようなパラメータを再設定することを促す情報を含む信号を送信する。その後、孤立STAは、新たに接続したAPに対して、前の接続先のAPから通知されたパラメータを再設定するよう促す情報を含む信号を送信する。
【0026】
一方、孤立STAが接続可能なAPが存在しない場合には、APは、周辺の協調動作可能なAPに対して、孤立STAを受け入れ可能であることを報知する。この動作によって、AP同士で互いの配下の孤立STAを効果的に引き受け合うことができる。また、APは、自身の配下の孤立STAを他のBSSに引き受けてもらうことができない場合であっても、逆に他のBSSに接続している孤立STAを引き受けることによって、その報酬として設定パラメータの優遇(例えば、に優位なContention Windowサイズ、AIFS、信号検出値を設定することが許容される)といった措置を受けることができる。
【0027】
上記のAP同士の動作によってネットワーク全体のスループットを向上することができる。また、孤立STA側にとっては、他のAPに接続することによって、通信品質が低い状態やUL MU通信やSR通信ができない状態から脱して、自身のスループットを向上することができる場合もある。また、上記のAP同士の動作を、バックホールで接続されていないBSS間で実現することができる。
【0028】
図1には、本明細書で開示する技術を適用することが可能な無線通信システムの構成例を模式的に示している。図示のシステムは、複数の無線装置STA
1、STA
2、…、STA
K-1、STA
K、…、STA
N-1、STA
Nで構成される。このうち、STA
0、STA
1、…、STA
K-1は基地局(AP)であり、STA
K、…、STA
N-1、STA
Nは子機若しくは端末(STA)である。なお、本明細書で開示する技術を実現する上で、特定の基地局数並びに特定の端末数に限定されない。
【0029】
図2には、本明細書で開示する技術を適用することが可能な通信装置200の機能的構成を模式的に示している。図示の通信装置200は、例えば
図1に示した無線通信システムにおいて、AP又はSTAのいずれとしても動作することができる。
【0030】
通信装置200は、データ処理部201と、制御部202と、通信部203と、電源部204を備えててる。また、通信部203はさらに、変復調部211と、信号処理部212と、チャネル推定部213と、無線インターフェース(IF)部214と、アンプ部215と、アンテナ216から構成される。なお、無線インターフェース部214、アンプ部215及びアンテナ216は、これらを1組とし、1つ以上の組が構成要素となってもよい。また、アンプ部215は無線インターフェース部214にその機能が内包される場合もある。また、アンテナ216は、通信装置200の構成要素として装備される以外に、通信装置200の本体に外付け接続される場合もある。
【0031】
データ処理部201は、プロトコル上位層(図示しない)よりデータが入力される送信時において、そのデータから無線送信のためのパケットを生成し、メディア・アクセス制御(Media Access Control:MAC)のためのヘッダの付加や誤り検出符号の付加などの処理を実施し、処理後のデータを通信部203内の変復調部211へ提供する。逆に変復調部211からの入力がある受信時において、データ処理部201は、MACヘッダの解析、パケット誤りの検出及びリオーダー処理などを実施し、処理後のデータを自身のプロトコル上位層へ提供する。
【0032】
制御部202は、通信装置200内の各部間の情報の受け渡しを制御する。また、制御部202は、変調部211及び信号処理部212におけるパラメータ設定、データ処理部201におけるパケットのスケジューリングを行う。また、制御部202は、無線インターフェース部214及びアンプ部215のパラメータ設定及び送信電力制御を行う。
【0033】
特に、通信装置200がAPとして動作して本明細書で開示する技術を実施する際において、制御部202は、配下の無線端末のSR通信やUL MU通信の実施状況の分布を調査し、他の基地局へ接続を変更した方がよい無線端末(例えば、BSS内の孤立STA)を特定する処理を実現するように各部を制御する。また、制御部202は、孤立STAに対して他のAPへの接続を要請する情報及び前記該当基地局に接続した際に送信する通信機会を得易くなるようにパラメータを再設定するように促す情報を含む信号を送信するように制御する。あるいは、制御部202は、自身に他APの配下のSTAが接続され易くするような信号(例えば、報酬となるような通信パラメータの情報を含んだ信号)を周辺のAPに対して送信するように制御する。
【0034】
変復調部211は、信号の送信時において、データ処理部201からの入力データに対し、制御部202によって設定されたコーディング及び変調方式に基づいて、エンコード、インターリーブ及び変調を行い、データシンボルストリームを生成して、信号処理部212へ提供する。また、変復調部211は、信号の受信時において、信号処理部212からの入力に対して送信時と反対の処理を行い、データ処理部201若しくは制御部202へ受信データを提供する。
【0035】
信号処理部212は、信号の送信時には、必要に応じて変復調部211からの入力に対して空間分離に供される信号処理を行い、得られた1つ以上の送信シンボルストリームをそれぞれの無線インターフェース部214へ提供する。また、信号処理部212は、信号の受信時には、それぞれの無線インターフェース部214から入力された受信シンボルストリームに対して信号処理を行い、必要に応じてストリームの空間分解を行って変復調部211へ提供する。
【0036】
チャネル推定部213は、それぞれの無線インターフェース部214からの入力信号のうち、プリアンブル部分及びトレーニング信号部分から伝搬路の複素チャネル利得情報を算出する。算出された複素チャネル利得情報は、制御部202を介して変復調部211での復調処理及び信号処理部での空間処理に利用される。
【0037】
無線インターフェース部214は、信号の送信時には、信号処理部からの入力をアナログ信号へ変換し、フィルタリング、及び搬送波周波数へのアップコンバートを実施し、アンテナ216又はアンプ部215へ送出する。また、無線インターフェース部214は、信号の受信時には、アンテナ216又はアンプ部215からの入力に対して反対の処理を実施し、信号処理部212及びチャネル推定部213へデータを提供する。
【0038】
アンプ部215は、信号の送信時には、無線インターフェース部214から入力されたアナログ信号を所定の電力まで増幅し、アンテナ216へと送出する。また、アンプ部215は、信号の受信時には、アンテナ216から入力された信号を所定の電力まで低雑音増幅し、無線インターフェース部214に出力する。このアンプ部215は、送信時の機能と受信時の機能の少なくともどちらか一方が無線インターフェース部214に内包される場合がある。
【0039】
電源部204は、バッテリー電源又は固定電源で構成され、通信装置200内の各部に電力を供給する。
【0040】
本明細書で開示する技術は、APが配下のSTAのSR通信やUL MU通信の実施状況の分布に基づいてSTAの接続先を最適化するものである。以下では、本明細書で開示する技術の2つの実施例を紹介する。
【0041】
実施例1では、APは、配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査する。調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた少数の孤立STAが存在することが判明した場合には、APは、以下の2つの動作(a)又は(b)のうちいずれか一方を選択し、実行する。
【0042】
(a)APは、孤立STAに対して指定した他のAPへの接続の要請を行うとともに、孤立STAがその指定したAPに接続した際に送信する通信機会を得易くなるようにパラメータを再設定することを促す情報を含む要請信号を送信する。
(b)APは、周辺のAPに接続している孤立STAを収容可能な場合には、周辺のAPに対して孤立STAを受け入れ可能であることを通知する。
【0043】
孤立STAは、接続中のAPから指定された他のAPへの接続を行う。そして、孤立STAは、指定されたAPに接続した際に、その新たに接続したAPに対して、前に接続していたAPから送られたパラメータを再設定するよう促す情報を含む信号を送信する。
【0044】
また、孤立STAが新たに接続したAPは、孤立STAから受信した信号に含まれるパラメータ情報に従って、自身の送信パラメータを変更する。
【0045】
また、実施例2では、APは、配下に条件に合致する孤立STAが存在する場合には、以下の2つの動作(c)又は(d)のうちいずれか一方を選択し、実行する。
【0046】
(c)APは、配下の孤立STAが接続可能なAPに対して、孤立STAを接続してよいかどうかを問い合わせる問い合わせ信号を送信する。そして、当該接続可能なAPから許可が出た場合には、APは孤立STAに対して、当該接続可能なAPに接続するように要請する情報、及び、当該接続可能なAPに接続した際に送信する通信機会を得易くなるようにパラメータを再設定するよう促す情報を含む要請信号を送信する。孤立STAは、当該接続可能なAPに接続すると、その新しい接続先のAPに対して、前に接続していたAPから送られたパラメータを再設定するよう促す情報を含む信号を送信する。
(d)APは、周辺のAPに接続している孤立STAを収容可能な場合には、周辺のAPに対して孤立STAを受け入れ可能であることを通知する。
【0047】
APは、他のAPからSTAを接続してよいかを確認する信号を受信した際に、接続の可否を示す信号を返信する。
【0048】
孤立STAは、接続先のAPから受信した要請信号で指定された他のAPへの接続を行う。
【実施例1】
【0049】
図3には、実施例1における、APと、その配下の孤立STAと、孤立STAの新しい接続先AP間で実施される通信シーケンス例を示している。図示の通信シーケンスは、孤立STAが他のAP(
図3中の接続先AP)に接続可能であることを想定している。
【0050】
APは、配下のSTAに対して、通信品質に関する情報、及びSR通信やUL MU通信に実施状況に関する情報の送信を要請する(SEQ301)。これに対し、STAは、要請された情報をAPに返信する(SEQ302)。
図3では省略したが、APは、配下の他のSTAに対しても同様の情報の送信を要請し、各STAは要請された情報をAPに返信するものとする。そして、APが配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた孤立STAが存在することが判明する。
【0051】
APは、孤立STAに対して、接続可能な他のAPに関する情報の送信を要請する(SEQ303)。これに対し、孤立STAは、接続可能な他のAPに関する情報をAPに返信する(SEQ304)。ここで、孤立STAが返信する接続可能なAPに関する情報は、接続可能なAPのSSID(Service Set Identifier)などの識別情報の他、受信電力の大きさ、信号対雑音電力比、SR通信又はUL MU通信の実施状況などを含んでもよい。そして、APは、孤立STAから返信された情報などに基づいて、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。
【0052】
次いで、APは、配下の孤立STAに対して、指定した他のAPへの接続を要請するとともに、当該他のAPに対して設定したパラメータ情報を含む要請信号を送信する(SEQ305)。このパラメータ情報は、当該他のAPが孤立STAを受け入れる報酬として設定されたものである。APは、例えば配下の孤立STAを引き受けてもらいたい程度に応じて、当該他のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報の値を決定する。
【0053】
孤立STAは、要請信号で指定された新しい接続先のAPに対して接続を要求する(SEQ311)。孤立STAから接続要求を受信した他のAPは、自身のトラフィック負荷の情報などに基づいて、孤立STAを受け入れるか否かを判断する。そして、孤立STAは、そのAPから接続可能である旨の返信を受信すると(SEQ312)、新たな接続先となるそのAPに対して、前に接続していたAPから送られたパラメータ情報を含む信号を送信する(SEQ313)。これに対し、孤立STAが新たに接続したAPは、孤立STAから受信した信号に含まれるパラメータ情報に従って、自身の送信パラメータを変更する。孤立STAから受信したパラメータ情報は、孤立STAを受け入れる報酬として設定されたものである。新しい接続先のAPは、孤立STAを受け入れる見返りとして、このパラメータ情報に設定することが許容され、より通信機会を得易くなることが期待される。
【0054】
なお、判定の対象となる孤立STAが複数存在する場合には、上記と同様のシーケンスを個々の孤立STAに対してそれぞれ行う。
【0055】
図4には、実施例1における、APと、その配下の孤立STAと、接続先AP間で実施される他の通信シーケンス例を示している。図示の通信シーケンスは、孤立STAが他のAP(
図4中の接続先AP)に接続不可能であるとともに、他のAPの孤立STAを受け入れ可能であることを想定している。
【0056】
APは、配下のSTAに対して、通信品質に関する情報、及びSR通信やUL MU通信に実施状況に関する情報の送信を要請する(SEQ401)。これに対し、STAは、要請された情報をAPに返信する(SEQ402)。
図4では省略したが、APは、配下の他のSTAに対しても同様の情報の送信を要請し、各STAは要請された情報をAPに返信するものとする。そして、APが配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた孤立STAが存在することが判明する。
【0057】
APは、孤立STAに対して、接続可能な他のAPに関する情報の送信を要請する(SEQ403)。これに対し、孤立STAは、接続可能な他のAPに関する情報をAPに返信する(SEQ404)。孤立STAが返信する接続可能なAPに関する情報は、接続可能なAPのSSIDなどの識別情報の他、受信電力の大きさ、信号対雑音電力比、SR通信又はUL MU通信の実施状況などを含んでもよい(同上)。そして、APは、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。
【0058】
APは、配下の孤立STAが他のAPに接続不可能であると判断した場合には、孤立STAの他のAPへの引き渡しを諦める。また、APは、他のAPに接続している孤立STAを収容可能な場合には、周辺のAPに対して孤立STAを受け入れ可能であることを通知する(SEQ411)。APは、配下の孤立STAを周辺のAPに引き受けてもらうことができない場合であっても、他のBSSの孤立STAを引き受けることによって、周辺のAPから報酬として設定パラメータ(例えば、Contention Windowサイズ、AIFS、信号検出値など)の優遇措置を受けることが期待される。
【0059】
なお、判定の対象となる孤立STAが複数存在する場合には、上記と同様のシーケンスを個々の孤立STAに対してそれぞれ行う。
【0060】
APは、定期的に、SR通信及びUL MU通信の実施状況に関する情報を、配下の各STAから収集する。SR通信及びUL MU通信の実施状況に関する情報は、一定期間内にSR送信及びMU通信を行った回数、SR送信及びMU通信の成功確率、SR送信及びMU通信のcapability、SR送信及びMU通信の機能がactivateされているかを示す情報、現在の送信電力、SINR(Signal-to-Interference plus Noise power Ratio)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)の情報のいずれか又は複数を組み合わせたものである。
【0061】
APはこれらの情報を配下のSTAからの通信品質レポート用の信号を介して収集してもよいし、AP自身が配下のSTAから伝送された信号を用いて測定してもよい。APはこれらの情報を配下の各STAのパラメータ情報として保有する。APが保有するパラメータの一例を、以下の表1に示す。
【0062】
【0063】
そして、APは、上記の保有パラメータに基づいて、配下のSTAの中に孤立STAが存在するか否かを判定する。ここで言う孤立STAとは、SR通信又はUL MU通信の実施状況に関するパラメータ情報をSTA毎で比較したときに、パラメータの値が離れているSTAのことである。APは、SR通信又はUL MU通信の実施状況のパラメータ値の分布を見て、自身の動作を決定するために必要な複数のパラメータ情報の組み合わせを決定する。
【0064】
APは、例えば、自身が保有するSR通信及びUL MU通信の実施状況に関するパラメータ情報の分布を参照して、分布から外れているパラメータ情報を持つSTAを、孤立STAとして判定する。ここで、APは、保有するパラメータ情報のうち1種類でも複数の種類について参照してもよい。移動体通信ネットワークでは、単純に通信品質を判断基準としてハンドオーバーするか否かを決定する。これに対し、本実施例では、ネットワーク全体でSR通信やUL MU通信を行うことによって効果を得るためにはどうすればよいかという観点から、接続先を変更するSTAが選択される。
【0065】
図5には、APが配下の孤立STAに対して実施する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0066】
APは、配下のSTAの中に孤立STAが存在するか否かを判定する(ステップS501)。この判定は、APが保有するタイマーを用いて一定期間毎に行うようにしてもよいし、APがMUやSR通信を開始する際に行うようにしてもよい。上述したように、SR通信又はUL MU通信の実施状況に関するパラメータ情報をSTA毎で比較し、パラメータの値が離れているSTAを孤立STAと判定する。
【0067】
そして、APは、配下のSTAの中に孤立STAが存在すると判定した場合には(ステップS501のYes)、その孤立STAに対して、接続可能なAPに関する情報の送信を要請する信号を送信する(ステップS502)。
【0068】
ここで、接続可能なAPに関する情報の送信を要請する要請信号の宛先は、個別の孤立STA宛てでもよいし、複数の孤立STA宛ての信号でもよい。また、孤立STAは、APからの要請に対する返信には、接続可能なAPに関する情報として、接続可能なAPのSSIDなどの識別情報の他、受信電力の大きさ、信号対雑音電力比、SR通信又はUL MU通信の実施状況などを含んでもよい(同上)。
【0069】
そして、APは、配下の孤立STAから接続可能なAPに関する情報を受信すると、孤立STAを他のAPへ接続するか否かを判定する。
【0070】
図6には、APが、配下の孤立STAを他のAPへ接続するか否かを判定するための処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0071】
APは、配下の孤立STAから接続可能な他のAPに関する情報を受信すると(ステップS601)、その孤立STAが接続可能なAPが存在し、且つ、孤立STAをその接続可能なAPへ接続すべきか否かを判定する(ステップS602)。
【0072】
ステップS602では、APは、配下の孤立STAが接続可能な他のAPが存在する場合には、その孤立STAから受信した接続可能なAPに関する情報と、他の孤立STAが接続可能なAPが存在するかどうか、接続可能なAPにおけるSR通信又はUL MU通信の実施状況に関する情報、配下のSTA全体に対する孤立STAの数のうちいずれか1つ、又は組み合わせに基づいて、STAを接続可能な他のAPに接続するか否かを判定する。
【0073】
APは、配下の孤立STAを接続可能な他のAPへ接続すると判定した場合には(ステップS602のYes)、その接続可能なAPに孤立STAの接続を受け入れてもらった報酬として設定するパラメータ情報を生成する(ステップS603)。
【0074】
この当該接続可能なAPに対して報酬として設定するパラメータ情報は、例えば、CW(Contention Windows)サイズ、AIFS(Arbitration Inter Frame Space)、TXOP(Transmission Opportunity)、信号検出閾値のいずれか1つ又はこれらの組み合わせである。APは、配下の孤立STAを他のAPに引き受けてもらいたい程度に応じて、他のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報の値に決定するようにしてもよい。例えば、自BSS内での孤立STAの通信品質が著しく低く、この孤立STAが離脱することによって自BSS内のSR通信やUL MU通信をより効率的に実施できることが見込まれる場合には、孤立STAを引き受けてもらいたいAPに対してより優位なパラメータ情報を設定するようにしてもよい。
【0075】
また、孤立STAが接続可能なAPが複数存在する場合には、APは、接続可能な複数のAP内で優先順位付けを行い、孤立STAの接続可能なAPに関する優先順位を保持しておく(ステップS604)。
【0076】
すべてのAPは、周辺APに対してSTAを受け入れ可能であると報知しているAP(以下、「受け入れAP」ともいう)のリストを保有している。受け入れAPの具体的な定義については後述に譲る。例えば、APは、自身の受け入れAPリストを参照し、配下の孤立STAが接続可能なAPの中に受け入れAPが存在するか否かを確認する。ここで、孤立STAが接続可能なAPの中に受け入れAPが存在する場合には、ステップS604では、その受け入れAPの優先順位を高く設定する。受け入れAP同士、受け入れAPではないAP同士の優先順位は、各々のSR通信やUL MU通信の実施状況の情報を比較した結果に基づいて決定する。
【0077】
そして、ステップS604の優先順位付けが完了したら、APは、動作Aに移行する。一方、配下の孤立STAに接続可能な他のAPが存在しない場合や、配下の孤立STAを接続可能な他のAPに接続しないと判定した場合には(ステップS602のNo)、APは動作Bへ移行する。
【0078】
図7には、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させる際に実施する、上記の「動作A」の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0079】
動作Aでは、APは、配下の孤立STAに対して、接続可能な他のAPへの接続を要請するとともに、当該他のAPに対するパラメータ設定の情報を含む要請信号を送信する(ステップS701)。例えば、APは、当該他のAPが自己の孤立STAを引き受けることに対する報酬として設定したパラメータ情報を含んだ要請信号を送信する。
【0080】
図9には、
図7に示したフローチャート中のステップS701、並びに
図3に示した通信シーケンス中のSEQ305で、APが配下の孤立STAに送信する、他のAPへの接続を要請する要請信号のフレーム構成を示している。孤立STAが接続可能なAPが複数存在する場合には、APは、優先順位が最も高いAPに対してのみこの要請信号を送信してもよいし、孤立STAに接続可能なAPをすべて通知し、優先順位の順に従って接続を要請する要請信号を送信するようにしてもよい。
【0081】
図9に示すフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、配下の孤立STAに対して接続を要請する他のAPを示す情報(すなわち、接続先のAPを示す情報)と、当該接続先のAPに対して設定したパラメータ情報(すなわち、接続先のAPに対するパラメータ情報)が格納される。
【0082】
接続先のAPを示す情報は、接続先のAPのSSIDとBSS colorのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい(SSIDは、無線LANにおけるAPの識別名である。BSS Colorは、IEEE802.11ahで導入された、BSS毎に持つ異なるカラー情報である)。
【0083】
また、接続先のAPに対するパラメータ情報は、
図6に示したフローチャートのステップS603において、APが、他のAPへ接続を変更すると判定した孤立STAに対して生成したパラメータ情報である。APは、当該他のAPが自己の孤立STAを引き受けることに対する報酬として設定したパラメータ情報を生成する。例えば、APは、配下の孤立STAを他のAPに引き受けてもらいたい程度に応じて、当該他のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報の値を決定する。
【0084】
図10には、孤立STAが他のAPへの接続を要請する要請信号を受信したときに実施する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0085】
孤立STAは、現在接続しているAPから、接続可能な他のAPへの接続を要請する要請信号(
図9を参照のこと)を受信すると(ステップS1001)、受信した要請信号に新しい接続先として示されている他のAPへの接続手続きを実行する(ステップS1002)。
【0086】
そして、孤立STAは、接続を要請された他のAPへの接続が確立すると、ステップS1001で受信した要請信号内に記載されているパラメータ情報を含む信号を、当該新しい接続先のAPに送信する(ステップS1003)。
【0087】
図11には、
図10に示したフローチャート中のステップS1003、並びに
図3に示した通信シーケンス中のSEQ313で、孤立STAが新しい接続先のAPに対して送信する信号のフレーム構成を示している。図示のフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、当該(新しい接続先の)APに対するパラメータ設定の情報が含まれる。
【0088】
このパラメータ情報は、
図6に示したフローチャートのステップS603において、元の接続先のAPが、他のAPへ接続を変更すると判定した際に生成したパラメータ情報である。元の接続先のAPは、当該他のAPが孤立STAを引き受けることに対する報酬として設定したパラメータ情報を生成する。例えば、元の接続先のAPは、配下の孤立STAを他のAPに引き受けてもらいたい程度に応じて、当該他のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報の値を決定する(前述)。新しい接続先のAPは、新たに接続したSTAから受信した信号内に記載されているパラメータ情報に基づいて、自身のパラメータを更新するようにしてもよい。
【0089】
また、
図8には、配下の孤立STAを接続可能な他のAPが存在しない又は他のAPに接続させないときにAPが実施する、上記の「動作B」の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0090】
動作Bでは、APは、現在、他のBSSの孤立STAを自身が受け入れられるかどうかを判定する(ステップS801)。そして、他のBSSの孤立STAを受け入れ可能である場合には(ステップS801のYes)、APは、周辺のAPに対して、孤立STAを受け入れ可能であることを示す信号を報知する。一方、他のBSSの孤立STAを受け入れ可能でない場合には(ステップS801のNo)、APは、何もせずに本処理を終了する。
【0091】
図12には、
図8に示したフローチャート中のステップS802、並びに
図4に示した通信シーケンス中のSEQ411で、APが周辺APに対して孤立STAを受け入れ可能であることを報知する信号のフレーム構成を示している。図示のフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、当該フレームの送信元であるAP自身に関する情報が含まれる。
【0092】
AP自身に関する情報は、SR情報又はUL MU通信の実施状況、干渉に関する情報、当該APのトラフィック負荷のいずれか、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。周辺のAPは、受信した情報に基づいて、送信元のAPが自分のBSS内の孤立STAを受け入れ可能かどうかを判断することができる。
【0093】
他のBSS内の孤立STAを積極的に受け入れようとするAPのことを、本明細書では「受け入れAP」と定義する。各APは、周辺のAPから
図12に示したような信号を受信すると、信号送信元のAPを自身の受け入れAPリストに加える。受け入れAPリストには、受信した信号に記載されているAPに関する情報を記載してもよい。
【0094】
本実施例の効果は以下の通りである。APは、配下の孤立STAに対して他のAPへの接続を要請する際に動作A(
図7を参照のこと)を実施する場合、孤立STAを他のBSSに引き受けてもらうことによって、自BSS内では効果的にSR通信やUL MU通信を行うことができるようになる。その結果、自己のBSS内では、空間再利用によってスループットが向上する。
【0095】
また、APが配下の孤立STAを他のAPへの接続を要請しない場合に動作B(
図8を参照のこと)を実施する場合、APは、他のBSSから孤立STAを受け入れることによって、報酬として自身が有利になるようなパラメータ(CWサイズ、AIFS、TXOP、信号検出閾値など)を設定することが可能になる。これによってスループットや通信機会が向上できる。
【0096】
加えて、他のBSSに移動するSTAの観点から見ても、他のBSSに接続することによってSR通信やUL MU通信が実施できない状況を脱することによって通信機会を得易くなる。
【0097】
本来、各BSSは自律分散的に動作しており、他のBSSのSTAを受け入れるという動作は、自BSSにとっては不利益にしかならない。これに対し、本実施例では、孤立STAを受け入れてくれたAPに対して報酬となるパラメータを設定するという行動を導入することによって、バックホールで接続されていないAP間での協調動作を実現している。
【0098】
図13には、実施例1における、APと、その配下の孤立STAと、孤立STAの新しい接続先AP間で実施される通信シーケンスの変形例を示している。図示の通信シーケンスは、孤立STAが他のAP(
図3中の接続先AP)に接続可能であることを想定している。
【0099】
APは、配下のSTAに対して、通信品質に関する情報、及びSR通信やUL MU通信に実施状況に関する情報の送信を要請する(SEQ1301)。これに対し、STAは、要請された情報をAPに返信する(SEQ1302)。そして、APが配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた孤立STAが存在することが判明する。APが孤立STAの存在を判定する処理は上記と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0100】
APは、孤立STAに対して、接続可能な他のAPに関する情報の送信を要請する(SEQ1303)。これに対し、孤立STAは、接続可能な他のAPに関する情報をAPに返信する(SEQ1304)。孤立STAが返信する接続可能なAPに関する情報は、接続可能なAPのSSID(Service Set Identifier)などの識別情報の他、受信電力の大きさ、信号対雑音電力比、SR通信又はUL MU通信の実施状況などを含んでもよい。そして、APは、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。APが配下の孤立STAを他のAPへ接続するかどうかを判定する処理は上記と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0101】
次いで、APは、配下の孤立STAに対して、指定した他のAPへの接続を要請するとともに、再設定した自己のパラメータ情報を含む信号を送信する(SEQ1305)。APは、配下の孤立STAを他のAPが引き受けてくれたことに対する報酬として、当該他のAPが有利になる(若しくは、通信機会を得易くなる)ように、自己のパラメータ情報を再設定するようにしてもよい。
【0102】
孤立STAは、指定された他のAPに対して接続を要求する(SEQ1311)。そして、孤立STAは、そのAPから接続可能である旨の返信を受信すると(SEQ1312)、新たな接続先となるそのAPに対して、前に接続していたAPから送られたパラメータ情報を含む信号を送信する(SEQ1313)。ここで新たな接続先のAPが受信するパラメータ情報は、元の接続先のAPが孤立STAを引き取ってもらう見返りとして設定した自己のパラメータ情報である。したがって、新たな接続先のAPは、受信したパラメータ情報が許容する範囲内でパラメータ情報を再設定することで、より通信機会を得易くなることが期待される。
【0103】
なお、判定の対象となる孤立STAが複数存在する場合には、上記と同様のシーケンスを個々の孤立STAに対してそれぞれ行う。
【0104】
図14には、実施例1における、APと、その配下の孤立STAと、接続先AP間で実施される通信シーケンスの他の変形例を示している。図示の通信シーケンスは、孤立STAが他のAP(
図14中の接続先AP)に接続不可能であるとともに、他のAPの孤立STAを受け入れ可能であることを想定している。
【0105】
APは、配下のSTAに対して、通信品質に関する情報、及びSR通信やUL MU通信に実施状況に関する情報の送信を要請する(SEQ1401)。これに対し、STAは、要請された情報をAPに返信する(SEQ1402)。そして、APが配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた孤立STAが存在することが判明する。APが孤立STAの存在を判定する処理は上記と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0106】
APは、孤立STAに対して、接続可能な他のAPに関する情報の送信を要請する(SEQ1403)。これに対し、孤立STAは、接続可能な他のAPに関する情報をAPに返信する(SEQ1404)。APは、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。APが配下の孤立STAを他のAPへ接続するかどうかを判定する処理は上記と同様であるため、詳細な説明は省略する。そして、APは、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。
【0107】
APは、配下の孤立STAが他のAPに接続不可能であると判断した場合には、孤立STAの他のAPへの引き渡しを諦める。また、APは、他のAPに接続している孤立STAを収容可能な場合には、周辺のAPに対して孤立STAを受け入れ可能であることを通知する(SEQ1411)。APは、配下の孤立STAを周辺のAPに引き受けてもらうことができない場合であっても、他のBSSの孤立STAを引き受けることによって、周辺のAPから報酬として設定パラメータ(例えば、Contention Windowサイズ、AIFS、信号検出値など)の優遇措置を受けることが期待される。
【0108】
なお、判定の対象となる孤立STAが複数存在する場合には、上記と同様のシーケンスを個々の孤立STAに対してそれぞれ行う。
【0109】
APは、基本的には、
図5及び
図6に示した処理手順に従って、配下の孤立STAを他のAPへ接続するか否かを判定する。但し、ステップS603に相当する処理として、接続先のAPに設定するパラメータ情報の代わりに、AP自身に設定するパラメータ情報を生成する。例えば、APは、配下の孤立STAを引き受けてもらうことに対する報酬として、接続先のAPが有利になるパラメータ情報を再設定できるように、AP自身の(通信機会を抑制した)パラメータ情報を生成する。そして、APは、配下の孤立STAを他のAPに接続すると判定したときには動作Aを実行し、他のAPに接続しないと判定したときには動作Bを実行する。
【0110】
図15には、
図13に示した通信シーケンスの変形例により、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させる際に実施する「動作A」の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0111】
APは、配下の孤立STAに対して、接続可能な他のAPへの接続を要請するとともに、当該他のAPへ接続変更された際に再設定する自己のパラメータ情報を含む要請信号を送信する(ステップS1501)。このパラメータ情報は、APが配下の孤立STAを引き受けてくれたことに対する報酬として、当該他のAPが有利になるような(若しくは、通信機会を得易くなるような)値からなる。
【0112】
そして、APは、配下の孤立STAが当該他へAPに接続されると、自己のパラメータ情報を、ステップS1501で送信した値に再設定する(ステップS1502)。これによって、孤立STAを受け入れた当該他のAPは、通信機会を得易くなることが期待される。
【0113】
図17には、
図15に示したフローチャート中のステップS1501、並びに
図13に示した通信シーケンス中のSEQ1305で、APが配下の孤立STAに送信する要請信号のフレーム構成を示している。図示のフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、配下の孤立STAに対して接続を要請する他のAPを示す情報と、送信元のAP自身に対して設定する予定のパラメータ情報、送信元のAPの自BSS内でのSR通信やUL MU通信のスケジュール情報が含まれる。
【0114】
接続先のAPを示す情報は、接続先のAPのSSIDとBSS colorのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。また、送信元のAP自身に対して設定するパラメータ情報は、配下の孤立STAが接続先のAPへの接続に変更した後にAP自身に設定する、CWサイズ、AIFS、TXOP、信号検出閾値のいずれか、又はこれらの組み合わせである。
【0115】
送信元のAP自身に対して設定するパラメータ情報、並びに送信元のAPの自BSS内でのSR通信やUL MU通信のスケジュール情報は、
図6に示したフローチャートのステップS603に相当する処理として、APが設定した自身のパラメータ情報及びスケジュール情報である。APは、配下の孤立STAを接続させる他のAPを決定すると、孤立STAを引き受けてくれることの報酬として、当該他のAPが有利になる(若しくは、通信機会を得易くなる)ように、自己の(通信機会を抑制した)パラメータ情報を再設定し、さらには、当該他のAPが通信機会を得易くなるように自BSS内でSR通信やUL MU通信を行う予定を組む。
【0116】
図18には、孤立STAが、現在接続しているAPから、他のAPへの接続を要請する要請信号を受信したときに実施する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0117】
孤立STAは、接続しているAPから、接続可能な他のAPへの接続を要請する信号を受信すると(ステップS1801)、当該他のAPへの接続手続きを行う(ステップS1802)。
【0118】
そして、孤立STAは、接続を要請された他のAPへの接続が確立すると、接続を要請する信号内に記載されている、元の接続先のAPのパラメータ情報やスケジュール情報を含む信号を、当該他のAPに対して送信する(ステップS1803)。
【0119】
図19には、
図18に示したフローチャート中のステップS1803、並びに
図13に示した通信シーケンス中のSEQ1313で、孤立STAが新しい接続先のAPに対して送信する信号のフレーム構成を示している。図示のフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、元の接続先のAPのパラメータ情報と、元の接続先のAPのSR通信やUL MU通信のスケジュール情報が含まれる。
【0120】
元の接続先のAPのパラメータ情報は、CWサイズ、AIFS、TXOP、信号検出閾値のいずれか、又はこれらの組み合わせである。元の接続先のAPのパラメータ情報及びスケジュール情報は、
図6に示したフローチャートのステップS603に相当する処理として、APが設定した自身のパラメータ情報及びスケジュール情報である。元の接続先のAPは、孤立STAを引き受けてもらうことの報酬として、新しい接続先(すなわち、
図19に示す信号の宛先)のAPが有利になる(若しくは、通信機会を得易くなる)ように、自己の(通信機会を抑制した)パラメータ情報を再設定し、さらには、当該新しい接続先のAPが通信機会を得易くなるように自BSS内でSR通信やUL MU通信を行う予定を組む。したがって、新しい接続先のAPは、孤立STAを引き受けた見返りとして、元の接続先のAP自身に設定したパラメータ情報やスケジュール情報が許容する範囲内で、自分が有利になる(若しくは、通信機会を得易くなる)ように、自己の(通信機会を抑制した)パラメータ情報を再設定し、さらには通信機会を得易くなるように自BSS内でSR通信やUL MU通信のスケジュールを設定することができる。
【0121】
また、
図16には、
図14に示した通信シーケンスの変形例により、APが配下の孤立STAを接続可能な他のAPが存在しない又は他のAPに接続させないときにAPが実施する「動作B」の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0122】
動作Bにおける、
図16に示す処理手順は、基本的には
図8に示した処理手順と同様である。APは、現在、他のBSSの孤立STAを自身が受け入れられるかどうかを判定する(ステップS1601)。そして、他のBSSの孤立STAを受け入れ可能である場合には(ステップS1601のYes)、APは、周辺のAPに対して、孤立STAを受け入れ可能であることを示す信号を報知する(ステップS1602)。この信号のフレーム構成は、例えば
図12に示した通りである。一方、他のBSSの孤立STAを受け入れ可能でない場合には(ステップS1601のNo)、APは、何もせずに本処理を終了する。
【0123】
APが、配下の孤立STAに対して他のAPへの接続を要請する際に動作A(
図15を参照のこと)を実施する場合には、孤立STAを他のBSSに引き受けてもらうことによって、自BSS内で効果的にSR通信やUL MU通信を行うことができるようになる。その結果、自己のBSS内では、空間再利用によってスループットが向上する。
【0124】
また、APが配下の孤立STAを他のAPへの接続を要請しない場合に動作B(
図16を参照のこと)を実施する場合には、APは、他のBSSから孤立STAを受け入れることによって、報酬として自身が有利になるようなパラメータ(CWサイズ、AIFS、TXOP、信号検出閾値など)を設定することが可能になる。これによってスループットや通信機会が向上できる。
【0125】
加えて、他のBSSに移動するSTAの観点から見ても、他のBSSに接続することによってSR通信やUL MU通信が実施できない状況を脱することによって通信機会を得易くなる。また、BSS内での各STAの通信機会の不公平性も解消される。
【0126】
本来、各BSSは自律分散的に動作しており、他のBSSのSTAを受け入れるという動作は、自BSSにとっては不利益にしかならない。これに対し、本実施例では、孤立STAを受け入れてくれたAPに対して報酬となるパラメータを設定するという行動を導入することによって、バックホールで接続されていないAP間での協調動作を実現している。
【0127】
図20には、本実施例を適用した無線通信システムにおける動作例を示している。図示の無線通信システムは、基地局AP1が運営するBSSと、基地局AP2が運営するBSSで構成される。
図20の左側に示す初期状態では、AP1には、端末STA1~STA6が接続され、AP2には、端末STA7~9が接続されている。
【0128】
AP1の配下のSTAのうち、STA3が孤立STAとなっている。STA3はAP2とも接続可能であることから、AP1は、STA3にAP3への接続を要請する。また、AP1は、AP2がSTA3を引き受けることに対する報酬として、AP2が有利になる(若しくは、通信機会を得易くなる)ように自己のパラメータ情報を再設定し、さらには、AP2が通信機会を得易くなるように自BSS内でSR通信やUL MU通信を行う予定を組む。
【0129】
図20の右側に示すように、AP1は、配下で孤立しているSTA3を周辺のAP2に引き受けてもらうことによって、自BSS内で効果的にSR通信やUL MU通信を行うことができるようになる。その結果、自己のBSS内では、空間再利用によってスループットが向上する。
【0130】
一方、AP2にとって、AP1のBSSからSTA3を受け入れるという動作は、本来、自BSSにとっては不利益にしかならない。しかしながら、AP1は、孤立したSTA3を受け入れてくれたAP2に対する報酬として、AP2が有利になる(若しくは、通信機会を得易くなる)ようにパラメータを設定するので、AP2側のBSSでも利益を得ることができる。
【実施例2】
【0131】
図21には、実施例2における、APと、その配下の孤立STAと、孤立STAの新しい接続先AP間で実施される通信シーケンス例を示している。図示の通信シーケンスは、孤立STAが他のAP(
図21中の接続先AP)に接続可能であることを想定している。
【0132】
APは、配下のSTAに対して、通信品質に関する情報、及びSR通信やUL MU通信に実施状況に関する情報の送信を要請する(SEQ2101)。これに対し、STAは、要請された情報をAPに返信する(SEQ2102)。そして、APが配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた孤立STAが存在することが判明する。
【0133】
APは、孤立STAに対して、接続可能な他のAPに関する情報の送信を要請する(SEQ2103)。これに対し、孤立STAは、接続可能な他のAPに関する情報をAPに返信する(SEQ2104)。孤立STAが返信する接続可能なAPに関する情報は、接続可能なAPのSSIDなどの識別情報の他、受信電力の大きさ、信号対雑音電力比、SR通信又はUL MU通信の実施状況などを含んでもよい(同上)。
【0134】
APは、孤立STAから返信された情報などに基づいて、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。そして、APは、孤立STAの新たな接続先に決定した他のAPに対して、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる問い合わせ信号を送信する(SEQ2105)。この問い合わせ信号には、配下の孤立STAに関する情報や、当該他のAPに対して設定したパラメータ情報を含める。パラメータ情報は、当該他のAPが孤立STAを受け入れる報酬として設定されたものである。APは、例えば配下の孤立STAを引き受けてもらいたい程度に応じて、より通信機会を得易くなるパラメータ情報の値を決定する。
【0135】
問い合わせを受信した他のAPは、問い合わせ信号に含まれる孤立STAに関する情報やパラメータ情報、当該他のAP自身が保有するトラフィック負荷の情報などに基づいて、孤立STAを受け入れるか否かを判断する。そして、当該他のAPは、孤立STAを受け入れるか否かを示す回答信号を返信する(SEQ2106)。
図21は、問い合わせ信号を受信した他のAPが孤立STAを受け入れ可能であることを示す回答信号を返信する場合の通信シーケンス例を示している。
【0136】
APは、受信した回答信号に基づいて、問い合わせ信号を送信したAPが孤立STAを受け入れ可能であることを確認すると、配下の孤立STAに対して、新しい接続先のAPへの接続を要請するとともに、新しい接続先のAPのBSS内でのSR通信やUL MU通信の実施状況に関する情報を含む要請信号を送信する(SEQ2107)。
【0137】
孤立STAは、要請信号で指定された新しい接続先のAPに対して接続を要求する(SEQ2111)。そして、孤立STAは、そのAPから接続可能である旨の返信を受信すると(SEQ2112)、新しい接続先のAPへの接続が完了する。新しい接続先のAPが孤立STAを受け入れ可能であることを既に確認図目であるので、孤立STAの接続変更は円滑に進められることが予想される。
【0138】
なお、判定の対象となる孤立STAが複数存在する場合には、上記と同様のシーケンスを個々の孤立STAに対してそれぞれ行う。
【0139】
図22には、実施例2における、APと、その配下の孤立STAと、接続先AP間で実施される他の通信シーケンス例を示している。図示の通信シーケンスは、孤立STAが他のAP(
図22中の接続先AP)に接続不可能であるとともに、他のAPの孤立STAを受け入れ可能であることを想定している。
【0140】
APは、配下のSTAに対して、通信品質に関する情報、及びSR通信やUL MU通信に実施状況に関する情報の送信を要請する(SEQ2201)。これに対し、STAは、要請された情報をAPに返信する(SEQ2202)。そして、APが配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた孤立STAが存在することが判明する。
【0141】
APは、孤立STAに対して、接続可能な他のAPに関する情報の送信を要請する(SEQ2203)。これに対し、孤立STAは、接続可能な他のAPに関する情報をAPに返信する(SEQ2204)。孤立STAが返信する接続可能なAPに関する情報は、接続可能なAPのSSIDなどの識別情報の他、受信電力の大きさ、信号対雑音電力比、SR通信又はUL MU通信の実施状況などを含んでもよい(同上)。そして、APは、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。
【0142】
APは、配下の孤立STAが他のAPに接続不可能であると判断した場合には、孤立STAの他のAPへの引き渡しを諦める。また、APは、他のAPに接続している孤立STAを収容可能な場合には、周辺のAPに対して孤立STAを受け入れ可能であることを通知する(SEQ2211)。APは、配下の孤立STAを周辺のAPに引き受けてもらうことができない場合であっても、他のBSSの孤立STAを引き受けることによって、周辺のAPから報酬として設定パラメータ(例えば、Contention Windowサイズ、AIFS、信号検出値など)の優遇措置を受けることが期待される。
【0143】
なお、判定の対象となる孤立STAが複数存在する場合には、上記と同様のシーケンスを個々の孤立STAに対してそれぞれ行う。
【0144】
APは、基本的には、
図5及び
図6に示した処理手順に従って、配下の孤立STAを他のAPへ接続するか否かを判定するので、ここでは詳細な説明を省略する。そして、実施例2においても、APは、配下の孤立STAを他のAPに接続すると判定したときには動作Aを実行し、他のAPに接続しないと判定したときには動作Bを実行する。
【0145】
図23には、実施例2において、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させる際に実施する「動作A」の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0146】
APは、孤立STAの新たな接続先に決定した他のAPに対して、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる問い合わせ信号を送信する(ステップS2301)。
【0147】
そして、孤立STAの新しい接続先のAPから孤立STAの接続が許可された場合には(ステップS2302のYes)、APは、配下の孤立STAに対して、新しい接続先のAPへの接続を要請するとともに、新しい接続先のAPのBSS内でのSR通信やUL MU通信の実施状況に関する情報を含む信号を送信する(ステップS2303)。孤立STAを接続可能なAPが複数存在する場合には、APは、優先順位の高い順に、孤立STAに対して上記の要請信号を送信する。
【0148】
一方、新しい接続先のAPが孤立STAの受け入れを許可しない場合には(ステップS2302のNo)、APは、孤立STAを接続可能なAPがさらに他に存在するかどうかをチェックする(ステップS2304)。
【0149】
孤立STAを接続可能なAPがさらに他に存在する場合には(ステップS2304のYes)、ステップS2301に戻り、当該他のAPに対して上記と同様の問い合わせ信号の送信を繰り返し実施する。また、孤立STAを受け入れ可能なAPがもはや他に存在しない場合には(ステップS2304のNo)、APは、配下の孤立STAの接続先の変更を諦め、動作Bを実施する。
【0150】
また、
図24には、実施例2において、APが配下の孤立STAの接続先を変更しないときに実施する「動作B」の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0151】
APは、現在、他のBSSの孤立STAを自身が受け入れられるかどうかを判定する(ステップS2401)。そして、他のBSSの孤立STAを受け入れ可能である場合には(ステップS2401のYes)、APは、周辺のAPに対して、孤立STAを受け入れ可能であることを示す信号を報知する(ステップS2402)。一方、他のBSSの孤立STAを受け入れ可能でない場合には(ステップS2401のNo)、APは、何もせずに本処理を終了する。
【0152】
図25には、
図23に示したフローチャート中のステップS2301、並びに
図21に示した通信シーケンス中のSEQ2105で、APが他のAPに対して孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号のフレーム構成を示している。図示のフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせるための情報が含まれる。
【0153】
孤立STA数は、問い合わせ元のAPの配下で孤立STAと判定されたSTAの台数を表すパラメータである。当該信号を受信した他のAPは、このパラメータを参照することによって、問い合わせ元のAPがSR通信やUL MU通信を実施できる見込みがあるか否かを判断することができる。
【0154】
そして、孤立STA数に続いて、個々の孤立STAに関するステータス情報が続く。孤立STAに関するステータス情報は、当該孤立STAのAID(Associate ID)、Partial AID、当該孤立STAの現在のRSSIやSINR、当該孤立STAの他の接続可能APの数、当該孤立STAが所属するBSSのSR通信又はMU通信動作の実施状況、孤立STAと判定されている理由のいずれか、又はこれらの組み合わせからなる。
【0155】
孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる1つの信号で、同時に複数の孤立STAについて受け入れ可能か否かを問い合わせるようにしてもよい。この場合、
図25に示すように、問い合わせする孤立STA数分だけ、孤立STAに関するステータス情報が付加される。
【0156】
問い合わせ先のAPに対するパラメータ情報は、実施例1と同様に、
図6に示したフローチャートのステップS603において、APが、他のAPへ接続を変更すると判定した孤立STAに対して生成したパラメータ情報(CWサイズ、AIFS、TXOP、信号検出閾値など)である。APは、当該問い合わせ先のAPが自己の孤立STAを引き受けることに対する報酬として設定したパラメータ情報を生成する。例えば、APは、配下の孤立STAを他のAPに引き受けてもらいたい程度に応じて、当該問い合わせ先のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報の値を決定する。また、問い合わせ先のAPは、孤立STAを受け入れる場合には、ここに記されたパラメータ情報に基づいて、自身のパラメータを設定又は更新する。
【0157】
図26には、APが、他のAPから受信した、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる問い合わせ信号を処理するための手順をフローチャートの形式で示している。
【0158】
APは、周辺のAPから孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号を受信すると(ステップS2601)、孤立STAを受け入れるか否かを判断する(ステップS2602)。APは、例えば、受信した問い合わせ信号に記載されている孤立STA数、SR通信やUL MU通信の実施状況及び孤立STAとして判定されている理由といった孤立STAのステータス情報、さらには当該AP自身が保有するトラフィック負荷の情報などに基づいて、孤立STAを受け入れるか否かを判断する。
【0159】
APは、問い合わせされた孤立STAを受け入れる場合には(ステップS2602のYes)、問い合わせ元のAPに対して、孤立STAを受け入れる旨を示す回答信号を返信し(ステップS2603)、同問い合わせ信号に記されたパラメータ情報に基づいて、自身のパラメータを設定又は更新する(ステップS2604)。
【0160】
一方、APは、問い合わせされた孤立STAを受け入れない場合には(ステップS2602のNo)、問い合わせ元のAPに対して、孤立STAを受け入れない旨を示す回答信号を返信して(ステップS2605)、本処理を終了する。
【0161】
図27には、APが、孤立STAの受け入れの問い合わせ信号に対して、
図26に示したフローチャート中のステップS2603又はS2605、並びに
図21に示した通信シーケンス中のSEQ2106で、APが周辺APからの問合せに対して回答する回答信号のフレーム構成を示している。図示のフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、孤立STA受け入れの問い合わせに対する回答(すなわち、孤立STAを受け入れるか)を示すための情報と、当該APが所属するBSSの状態を示す情報が含まれる。
【0162】
孤立STAを受け入れるかを示す情報は、受け入れるか否かを表す1ビットのフラグである。当該APが所属するBSSの状態を示す情報には、自己のBSS内におけるSR通信やUL MU通信の実施状況の情報、トラフィック負荷の情報、孤立STAと判定したSTAの数などを含む。APは、周辺のAPから孤立STAを受け入れる場合には、自己のBSSの状態を示す情報を回答信号内に付加する。
【0163】
孤立STAは、受け入れを許可したAPのBSS内に所属する際に、回答信号に付加されたBSSの状態を示す情報に基づいて、信号検出値や最大送信電力、通信モードといった自身のパラメータを変更することができる。これによって、孤立STAは、速やかに、新たな接続先のBSSで通信を行うのに適切な状態になることができる。
【0164】
問い合わせ元のAPは、問い合わせ先のAPから孤立STAを受け入れないことを示す回答信号を受信したときには、同信号内に付加されたBSSの状態を示す情報に基づいて、自身の受け入れAPリストを更新したり、孤立STAの接続可能なAPに関する優先順位を更新したりすることができる。これによって、APはより効率的に孤立STAの接続先を変更できるようになる。
【0165】
また、問い合わせ元のAPは、問い合わせ先のAPから孤立STAを受け入れることを示す回答信号を受信した場合には、配下の孤立STAに対して、新しい接続先のAPへの接続を要請するとともに、新しい接続先のAPのBSS内でのSR通信やUL MU通信の実施状況に関する情報を含む信号を送信する(
図23に示したフローチャート中のステップS2303に相当する処理である)。
【0166】
図28には、
図23に示したフローチャート中のステップS2303、並びに
図21に示した通信シーケンス中のSEQ2107で、APが配下の孤立STAに対して新しい接続先のAPへの接続を要請する要請信号のフレーム構成を示している。図示のフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、新しい接続先のAPに関する情報と、新しい接続先のAPのBSSにおけるSR通信やUL MU通信の実施状況の情報が含まれる。
【0167】
新しい接続先のAPに関する情報は、新しい接続先のAPのSSIDとBSS colorのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。また、新しい接続先のAPのBSSにおけるSR通信やUL MU通信の実施状況の情報として、回答信号に含まれる、APが所属するBSSの状態を示す情報に基づく情報が記載される。新しい接続先のAPのBSSにおけるSR通信やUL MU通信の実施状況の情報を通知することによって、孤立STAは、速やかに、新たな接続先のBSSで通信を行うのに適切な状態になることができる。
【0168】
孤立STAを接続可能なAPが複数存在する場合には、元の接続先のAPは、優先順位の高い順に、孤立STAに対して上記の要請信号を送信する。他方、孤立STAを接続可能なAPが存在しない場合には(
図23に示したフローチャート中のステップS2304においてNoの場合)、APは、動作Bへ移行する。
【0169】
APが、配下の孤立STAに対して他のAPへの接続を要請する際に動作Aを実施する場合、孤立STAを他のBSSに引き受けてもらうことによって、効果的にSR通信やUL MU通信を行うことができるようになる。その結果、自己のBSS内では、空間再利用によってスループットが向上する。
【0170】
また、APが配下の孤立STAを他のAPへの接続を要請しない場合に動作Bを実施する場合、APは、他のBSSから孤立STAを受け入れることによって、報酬として自身が有利になるようなパラメータ(CWサイズ、AIFS、TXOP、信号検出閾値など)を設定することが可能になる。これによってスループットや通信機会が向上できる。
【0171】
加えて、他のBSSに移動するSTAの観点から見ても、他のBSSに接続することによってSR通信やUL MU通信が実施できない状況を脱することによって通信機会を得易くなる。また、BSS内での各STAの通信機会の不公平性も解消される。
【0172】
本来、各BSSは自律分散的に動作しており、他のBSSのSTAを受け入れるという動作は、自BSSにとっては不利益にしかならない。これに対し、本実施例では、孤立STAを受け入れてくれたAPに対して報酬となるパラメータを設定するという行動を導入することによって、バックホールで接続されていないAP間での協調動作を実現している。
【0173】
図29には、実施例2における、APと、その配下の孤立STAと、孤立STAの新しい接続先AP間で実施される通信シーケンスの変形例を示している。図示の通信シーケンスは、孤立STAが他のAP(
図29中の接続先AP)に接続可能であることを想定している。
【0174】
APは、配下のSTAに対して、通信品質に関する情報、及びSR通信やUL MU通信に実施状況に関する情報の送信を要請する(SEQ2901)。これに対し、STAは、要請された情報をAPに返信する(SEQ2902)。そして、APが配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた孤立STAが存在することが判明する。
【0175】
APは、孤立STAに対して、接続可能な他のAPに関する情報の送信を要請する(SEQ2903)。これに対し、孤立STAは、接続可能な他のAPに関する情報をAPに返信する(SEQ2904)。孤立STAが返信する接続可能なAPに関する情報は、接続可能なAPのSSIDなどの識別情報の他、受信電力の大きさ、信号対雑音電力比、SR通信又はUL MU通信の実施状況などを含んでもよい(同上)。
【0176】
APは、孤立STAから返信された情報などに基づいて、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。そして、APは、孤立STAの新たな接続先に決定した他のAPに対して、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号を送信する(SEQ2905)。問い合わせを受信した他のAPは、孤立STAを受け入れ可能である場合には、その旨を示す回答信号を返信する(SEQ2906)。
【0177】
この問い合わせ信号には、問い合わせ先のAPに対するパラメータ情報と孤立STAに関する情報を含める。問い合わせ先のAPに対するパラメータ情報は、問い合わせ先のAPが孤立STAを受け入れる報酬として設定されたものである。APは、例えば配下の孤立STAを引き受けてもらいたい程度に応じて、問い合わせ先のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報の値を決定する。また、孤立STAに関する情報は、当該孤立STAのAID、Partial AID、当該孤立STAの現在のRSSIやSINR、当該孤立STAの他の接続可能APの数、当該孤立STAが所属するBSSのSR通信又はMU通信動作の実施状況、孤立STAと判定されている理由のいずれか、又はこれらの組み合わせからなる。
【0178】
あるいは、問い合わせ信号には、当該信号の送信元のAP自身が設定するパラメータ情報と、当該AP自身のBSS内でSR通信やUL MU通信を行うスケジュール情報と、孤立STAに関する情報を含める。送信元のAP自身が設定するパラメータ情報や当該AP自身のBSS内でSR通信やUL MU通信を行うスケジュール情報は、問い合わせ先のAPに孤立STAを受け入れてもらう報酬として設定されたものである。APは、例えば配下の孤立STAを引き受けてもらいたい程度に応じて、問い合わせ先のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報やスケジュール情報の値を決定する。
【0179】
また、孤立STAを受け入れ可能なAPは、新たな接続先として、孤立STAに対して自分への接続を要請する信号を送信する(SEQ2911)。
【0180】
なお、判定の対象となる孤立STAが複数存在する場合には、上記と同様のシーケンスを個々の孤立STAに対してそれぞれ行う。
【0181】
図30には、実施例2における、APと、その配下の孤立STAと、接続先AP間で実施される通信シーケンスの他の変形例を示している。図示の通信シーケンスは、孤立STAが他のAP(
図30中の接続先AP)に接続不可能であるとともに、他のAPの孤立STAを受け入れ可能であることを想定している。
【0182】
APは、配下のSTAに対して、通信品質に関する情報、及びSR通信やUL MU通信に実施状況に関する情報の送信を要請する(SEQ3001)。これに対し、STAは、要請された情報をAPに返信する(SEQ3002)。そして、APが配下の各STAのSR通信やUL MU通信の実施状況を調査した結果、配下のSTA全体の分布から外れた孤立STAが存在することが判明する。
【0183】
APは、孤立STAに対して、接続可能な他のAPに関する情報の送信を要請する(SEQ3003)。これに対し、孤立STAは、接続可能な他のAPに関する情報をAPに返信する(SEQ3004)。孤立STAが返信する接続可能なAPに関する情報は、接続可能なAPのSSIDなどの識別情報の他、受信電力の大きさ、信号対雑音電力比、SR通信又はUL MU通信の実施状況などを含んでもよい(同上)。そして、APは、孤立STAを他のAPへの接続に変更するかどうかを決定する。
【0184】
APは、配下の孤立STAが他のAPに接続不可能であると判断した場合には、孤立STAの他のAPへの引き渡しを諦める。また、APは、他のAPに接続している孤立STAを収容可能な場合には、周辺のAPに対して孤立STAを受け入れ可能であることを通知する(SEQ3011)。APは、配下の孤立STAを周辺のAPに引き受けてもらうことができない場合であっても、他のBSSの孤立STAを引き受けることによって、周辺のAPから報酬として設定パラメータ(例えば、Contention Windowサイズ、AIFS、信号検出値など)の優遇措置を受けることが期待される。
【0185】
なお、判定の対象となる孤立STAが複数存在する場合には、上記と同様のシーケンスを個々の孤立STAに対してそれぞれ行う。
【0186】
APは、基本的には、
図5及び
図6に示した処理手順に従って、配下の孤立STAを他のAPへ接続するか否かを判定するので、ここでは詳細な説明を省略する。そして、実施例2の変形例においても、APは、配下の孤立STAを他のAPに接続すると判定したときには動作Aを実行し、他のAPに接続しないと判定したときには動作Bを実行する。
【0187】
図31には、実施例2の変形例において、APが配下の孤立STAを他のAPに接続させる際に実施する「動作A」の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0188】
APは、孤立STAの新たな接続先に決定した他のAPに対して、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号を送信する(ステップS3101)。
【0189】
ここで、孤立STAの新しい接続先のAPから孤立STAの接続が許可された場合には(ステップS3102のYes)、APは本処理を終了する。以降は、新しい接続先のAPから孤立STAに対して接続が要請され、新たな接続が実施されることになる。
【0190】
一方、新しい接続先のAPが孤立STAの受け入れを許可しない場合には(ステップS3102のNo)、APは、孤立STAを接続可能なAPがさらに他に存在するかどうかをチェックする(ステップS3103)。
【0191】
孤立STAを接続可能なAPがさらに他に存在する場合には(ステップS3103のYes)、ステップS3101に戻り、当該他のAPに対して上記と同様の問い合わせを繰り返し実施する。また、孤立STAを受け入れ可能なAPがもはや他に存在しない場合には(ステップS3103のNo)、APは、配下の孤立STAの接続先の変更を諦め、動作Bを実施する。
【0192】
また、
図32には、実施例2の変形例において、APが配下の孤立STAを接続可能な他のAPが存在しない又は他のAPに接続させないときにAPが実施する「動作B」の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0193】
APは、現在、他のBSSの孤立STAを自身が受け入れられるかどうかを判定する(ステップS3201)。そして、他のBSSの孤立STAを受け入れ可能である場合には(ステップS3201のYes)、APは、周辺のAPに対して、孤立STAを受け入れ可能であることを示す信号を報知する(ステップS3202)。一方、他のBSSの孤立STAを受け入れ可能でない場合には(ステップS3201のNo)、APは、何もせずに本処理を終了する。
【0194】
図33には、
図32に示したフローチャート中のステップS3201、並びに
図29に示した通信シーケンス中のSEQ2905で、APが他のAPに対して孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号のフレーム構成を示している。図示のフレームは、MACヘッダと、フレーム本体(Frame Body)を含み、最後にフレーム・チェック・シーケンス(FCS)が付加される。フレーム本体は、情報要素の種別を示すElement IDと、フレーム本体の長さ(データ・サイズ)を示すLengthと、情報要素の拡張部であるElement ID Extensionと、情報部(Information)からなる。そして、フレーム本体の情報部(Information)には、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせるための情報が含まれる。
【0195】
問い合わせ先のAPに対するパラメータ情報は、実施例1と同様に、
図6に示したるフローチャート中のステップS603で、問い合わせ先のAPに対して報酬として設定されるパラメータ情報(CWサイズ、AIFS、TXOP、信号検出閾値など)である。APは、当該問い合わせ先のAPが自己の孤立STAを引き受けることに対する報酬として設定したパラメータ情報を生成する。例えば、APは、配下の孤立STAを他のAPに引き受けてもらいたい程度に応じて、当該問い合わせ先のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報の値を決定する。また、問い合わせ先のAPは、孤立STAを受け入れる場合には、ここに記されたパラメータ情報に基づいて、自身のパラメータを設定又は更新する。
【0196】
また、問い合わせ先APに対するパラメータ情報の代わりに、送信元APにおいて設定する予定の自身のパラメータ情報や、送信元のAPの自BSS内でのSR通信やUL MU通信のスケジュール情報を同信号内に記載するようにしてもよい。送信元のAP自身が設定するパラメータ情報や当該AP自身のBSS内でSR通信やUL MU通信を行うスケジュール情報は、問い合わせ先のAPに孤立STAを受け入れてもらう報酬として設定されたものである。APは、例えば配下の孤立STAを引き受けてもらいたい程度に応じて、問い合わせ先のAPがより通信機会を得易くなるパラメータ情報やスケジュール情報の値を決定する。また、問い合わせ先のAPは、孤立STAを受け入れる場合には、ここに記されたパラメータ情報に基づいて、自身のパラメータを設定又は更新する。
【0197】
孤立STAに関するステータス情報は、AID、Partial AID、該当する孤立STAの現在のRSSIやSINR、該当する孤立STAの他の接続可能APの数、該当する孤立STAが所属するBSSのSR通信又はMU通信動作の実施状況、孤立STAと判定されている理由のいずれか、又はこれらの組み合わせからなる。
【0198】
図34には、APが、他のAPから受信した、孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号を処理するための手順をフローチャートの形式で示している。
【0199】
APは、他のAPから孤立STAを受け入れ可能か否かを問い合わせる信号を受信すると(ステップS3401)、孤立STAを受け入れるか否かを判断する(ステップS3402)。APは、例えば、接続先APに対するパラメータ情報(あるいは、送信元APにおいて設定する予定の自身のパラメータ情報や、送信元のAPの自BSS内でのSR通信やUL MU通信のスケジュール情報)、孤立STAに関するステータス情報などに基づいて、孤立STAを受け入れるか否かを判断する。
【0200】
APは、問い合わせされた孤立STAを受け入れる場合には(ステップS3402のYes)、問い合わせ元のAPに対して、孤立STAを受け入れる旨を示す回答信号を返信し(ステップS3403)、続いて、孤立STAに対して自分への接続を要請する信号を送信する(ステップS3404)。その後、APは、孤立STAの受け入れを問い合わせる信号に記されたパラメータ情報に基づいて、自身のパラメータを設定又は更新する。
【0201】
一方、APは、問い合わせされた孤立STAを受け入れない場合には(ステップS3402のNo)、問い合わせ元のAPに対して、孤立STAを受け入れない旨を示す回答信号を返信して(ステップS3405)、本処理を終了する。
【0202】
上記のステップS3404において、新たな接続先のAPから接続を要請する信号を受信した孤立STAは、例えば
図10に示したと同様の処理手順に従って、新たな接続先のAPへの接続変更を行う。
【0203】
図29及び
図30に示した変形例は、
図21及び
図22に示した実施例2と比較して、孤立STAがパラメータ設定に関するシグナリングを行なう必要がなくなるという効果が挙げられる。また、孤立STAが本明細書で開示する技術を適用しないレガシー端末である場合にも、元の接続先のAPがその孤立STAに対してDisassociationの信号を送信した直後に、新しい接続先のAPがその孤立STAに対してAssociationの信号を送信することによっても、孤立STAの接続変更を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0204】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本明細書で開示する技術について詳細に説明してきた。しかしながら、本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0205】
本明細書で開示する技術は、複数のBSSが存在し且つAP同士がバックホールなどで接続されない無線ネットワーク環境に好適に適用することができる。とりわけ、各BSSにおいてSR通信やMU通信などの技術を利用している場合には、本明細書で開示する技術を適用して、リンクが弱く孤立しているSTAをBSS間で効率的に受け渡すことで、高速通信の実現が期待される。
【0206】
本明細書で開示する技術は、例えばIEEE802.11axに従う無線通信システムに適用することができるが、もちろん、その他のさまざまな通信規格に従うシステムに対しても同様に適用することができる。
【0207】
要するに、例示という形態により本明細書で開示する技術について説明してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本明細書で開示する技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【0208】
なお、本明細書の開示の技術は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)基地局として動作する通信装置であって、
前記通信装置のBSS内での通信状況を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて、周辺の基地局との間で端末の接続変更に関する信号の送受信を制御する制御部と、
を具備する通信装置。
(2)前記制御部は、配下の端末に対し、前記周辺の基地局への接続を要請する要請信号の送信を制御する、
上記(1)に記載の通信装置。
(3)前記判定部は、端末の通信品質の指標を表す第1のパラメータが配下の端末全体の分布から外れた少数の端末の存在を判定し、
前記制御部は、前記少数の端末に対し、前記周辺の基地局への接続を要請する前記要請信号の送信を制御する、
上記(2)に記載の通信装置。
(3-1)前記判定部は、前記第1のパラメータとして、配下の端末の空間再利用通信又はマルチユーザ通信の実施状況を判定する、
上記(3)に記載の通信装置。
(4)前記制御部は、前記配下の端末が前記周辺の基地局へ接続を変更した後の通信に関する第2のパラメータを含む前記要請信号の送信を制御する、
上記(2)又は(3)のいずれかに記載の通信装置。
(4-1)前記制御部は、前記第2のパラメータとして、前記配下の端末が前記周辺の基地局へ接続を変更した後に自局に設定する通信リソースに関する情報、又は、前記周辺の基地局に許容する通信リソースに関する情報を前記要請信号に含める、
上記(4)に記載の通信装置。
(4-2)前記第2のパラメータとしての通信リソースに関する情報は、自局又は前記周辺の基地局における、Contention Windowsサイズ、AIFS、信号検出閾値のいずれか又はこれらの組み合わせからなる、
上記(4-1)に記載の通信装置。
(4-3)前記要請信号に記載される前記の自局に設定する通信リソースに関する情報は、前記通信装置のBSS内での空間再利用通信又はマルチユーザ通信の実施予定に関する情報を含む、
上記(4-1)又は(4-2)のいずれかに記載の通信装置。
(4-4)前記制御部は、前記第1のパラメータの情報に基づいて前記第2のパラメータを決定する、
上記(4)乃至(4-3)のいずれかに記載の通信装置。
(5)前記制御部は、前記周辺の基地局に対し、配下の端末の受け入れの可否を問い合わせる問い合わせ信号の送信を制御する、
上記(1)に記載の通信装置。
(6)前記判定部は、端末の通信品質の指標を表す第1のパラメータが配下の端末全体の分布から外れた少数の端末の存在を判定し、
前記制御部は、前記周辺の基地局に対し、前記少数の端末の受け入れの可否を問い合わせる前記問い合わせ信号の送信を制御する、
上記(5)に記載の通信装置。
(6-1)前記判定部は、前記第1のパラメータとして、配下の端末の空間再利用通信又はマルチユーザ通信の実施状況を判定する、
上記(6)に記載の通信装置。
(7)前記制御部は、接続を変更したい配下の端末の数と各端末の通信状況に関する情報を含む前記問い合わせ信号、又は、前記周辺の基地局に対して受け入れを要請する特定の端末に関する情報を含む前記問い合わせ信号の送信を制御する、
上記(5)又は(6)のいずれかに記載の通信装置。
(8)前記制御部は、前記配下の端末が前記周辺の基地局へ接続を変更した後の通信に関する第2のパラメータを含む前記問い合わせ信号の送信を制御する、
上記(5)乃至(7)のいずれかに記載の通信装置。
(8-1)前記制御部は、前記第2のパラメータとして、前記配下の端末が前記周辺の基地局へ接続を変更した後に自局に設定する通信リソースに関する情報、又は、前記周辺の基地局に許容する通信リソースに関する情報を前記問い合わせ信号に含める、
上記(8)に記載の通信装置。
(8-2)前記第2のパラメータとしての前記通信リソースに関する情報は、自局又は前記周辺の基地局における、Contention Windowsサイズ、AIFS、信号検出閾値のいずれか又はこれらの組み合わせからなる、
上記(8-1)に記載の通信装置。
(8-3)前記問い合わせ信号に記載される前記の自局に設定する通信リソースに関する情報は、前記通信装置のBSS内での空間再利用通信又はマルチユーザ通信の実施予定に関する情報を含む、
上記(8-1)又は(8-2)のいずれかに記載の通信装置。
(8-4)前記制御部は、前記第1のパラメータの情報に基づいて前記第2のパラメータを決定する、
上記(8)乃至(8-3)のいずれかに記載の通信装置。
(9)前記制御部は、前記周辺の基地局から、配下の端末を受け入れることを示す回答信号を受信したときに、前記配下の端末に対し、前記周辺の基地局への接続を要請する要請信号の送信を制御する、
上記(5)乃至(8)のいずれかに記載の通信装置。
(10)前記制御部は、前記回答信号に付加されている、前記周辺の基地局のBSS内の通信状況に関する情報を含む前記要請信号の送信を制御する、
上記(9)に記載の通信装置。
(11)前記制御部は、周辺の基地局の配下の端末を自局に接続したときに、前記端末又は前記周辺の基地局のいずれかから受信した前記信号に含まれる第2のパラメータに基づいて、自局の通信パラメータを設定する、
上記(1)に記載の通信装置。
(11-1)前記制御部は、前記第2のパラメータとして含まれる、周辺の基地局の配下の端末を自局に接続したときに、前記端末又は前記周辺の基地局のいずれかから受信した前記周辺の基地局が当該局自身に設定する通信リソースに関する情報又は前記周辺の基地局が自局に許容する通信リソースに関する情報に基づいて、自局の通信パラメータを設定する、
上記(11)に記載の通信装置。
(11-2)前記制御部は、自局の前記通信パラメータとして、Contention Windowsサイズ、AIFS、信号検出閾値のいずれか又はこれらの組み合わせ、若しくは、前記通信装置のBSS内での空間再利用通信又はマルチユーザ通信の実施スケジュールを設定する、
上記(11)又は(11-1)のいずれかに記載の通信装置。
(12)前記制御部は、周辺の基地局から、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を問い合わせる問い合わせ信号を受信したことに応じて、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を回答する回答信号の送信を制御する、
上記(1)に記載の通信装置。
(13)前記制御部は、前記問い合わせ信号に付加された前記端末を接続した後の通信に関する第2のパラメータ、又は、自局におけるトラフィック負荷に関する情報に基づいて、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を判断する、
上記(12)に記載の通信装置。
(13-1)前記制御部は、前記第2のパラメータとして、自局への受け入れを問い合わせされた前記端末を接続した後に自局に許容される通信リソースに関する情報、又は、前記周辺の基地局が当該局自身に設定する通信リソースに関する情報に基づいて、前記周辺の基地局の配下の端末の受け入れの可否を判断する、
上記(13)に記載の通信装置。
(14)前記制御部は、自局のBSS内の通信状況に関する情報を含んだ前記回答信号の送信を制御する
上記(12)又は(13)のいずれかに記載の通信装置。
(15)前記制御部は、前記周辺の基地局の配下の端末を受け入れるときには、前記端末との接続を試みる、
上記(12)又は(13)のいずれかに記載の通信装置。
(16)基地局として動作するための通信方法であって、
前記基地局のBSS内での通信状況を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に応じて、周辺の基地局との間で端末の接続変更に関する信号の送受信を制御する制御ステップと、
を有する通信方法。
(17)基地局の配下で端末として動作する通信装置であって、
信号を送受信する送受信部と、
接続先の基地局から受信した他の基地局への接続を要請する要請信号に基づいて、基地局との接続を制御する制御部と、
を具備する通信装置。
(18)前記制御部は、接続が確立した後の前記他の基地局への、前記要請信号に含まれる、前記他の基地局へ接続を変更した後の通信に関する第2のパラメータの送信を制御する、
上記(17)に記載の通信装置。
(18-1)前記制御部は、前記第2のパラメータとして、元の接続先の基地局が前記他の基地局へ接続を変更した後に当該基地局自身に設定する通信リソースに関する情報、又は、前記他の基地局に許容する通信リソースに関する情報の、接続が確立した後の前記他の基地局への送信を制御する、
上記(18)に記載の通信装置。
(18-2)前記第2のパラメータとしての前記通信リソースに関する情報は、元の接続先の又は前記他の基地局における、Contention Windowsサイズ、AIFS、信号検出閾値のいずれか又はこれらの組み合わせからなる、
上記(18-1)に記載の通信装置。
(18-3)前記制御部は、前記他の基地局へ接続を変更した後に、前記要請信号に記載されている前記他の基地局のBSSでの通信の実施状況に関する情報に基づいて、前記他の基地局のBSS内における自局の通信パラメータを設定する、
上記(17)又は(18)のいずれかに記載の通信装置。
(19)前記制御部は、接続が確立した後の前記他の基地局への、前記要請信号に含まれる、前記他の基地局へ接続を変更した後の前記元の接続先の基地局のBSS内での空間再利用通信又はマルチユーザ通信の実施予定に関する情報の送信を制御する、
上記(17)又は(18)のいずれかに記載の通信装置。
(20)基地局の配下で端末として動作するための通信方法であって、
接続先の基地局から受信した他の基地局への接続を要請する要請信号を受信する受信ステップと、
前記要請信号に基づいて、基地局との接続を制御する制御ステップと、
を有する通信方法。
【符号の説明】
【0209】
200…通信装置、201…データ処理部、202…制御部
203…通信部、204…電源部
211…変復調部、212…空間信号処理部
213…チャネル推定部、214…無線インターフェース部
215…アンプ部、216…アンテナ