(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】導電性ペースト、伸縮性導体およびそれを用いた電子部品、衣服型電子機器
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20220928BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20220928BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B1/24 A
H05K3/12 610B
(21)【出願番号】P 2019537656
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2018031003
(87)【国際公開番号】W WO2019039511
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2017161250
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 佑子
(72)【発明者】
【氏名】入江 達彦
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-260442(JP,A)
【文献】国際公開第2008/133073(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/174505(WO,A1)
【文献】特開2017-029691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 1/24
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性フィラー、ポリウレタンエラストマー、有機溶剤を含有してなる伸縮性導体形成用ペーストにおいて、前記ポリウレタンエラストマーのガラス転移温度(Tg)が-60℃~-10℃であり、下記式から算出したウレタン基濃度が3000~4500m当量/kgであることを特徴とする伸縮性導体形成用ペースト。
ウレタン基濃度(m当量/kg)=(W÷(X÷Y))÷Z×10
6
W:ポリウレタン樹脂を構成するイソシアネートの質量
X:イソシアネートの分子量
Y:イソシアネートの1分子当たりのイソシアネート数
Z:ポリウレタン樹脂を構成する原料のトータル質量
【請求項2】
前記導電性フィラーが銀粒子であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性導体形成用ペースト。
【請求項3】
前記伸縮性
導体形成用ペーストにおいて、溶剤を除いた全成分を100質量部とした場合に、前記導電性フィラーの合計が70~95質量部であり、ポリウレタンエラストマーが5~30質量部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の伸縮性導体形成用ペースト。
【請求項4】
導電性フィラーとしてカーボンブラック、黒鉛から選択された1種類以上の炭素材料を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の伸縮性導体形成用ペースト。
【請求項5】
少なくとも導電性フィラーとポリウレタンエラストマーを含有してなる伸縮性導体において、前記ポリウレタンエラストマーのガラス転移温度(Tg)が-60℃~-10℃であり、下記式から算出したウレタン基濃度が3000~4500m当量/kgであることを特徴とする伸縮性導体。
ウレタン基濃度(m当量/kg)=(W÷(X÷Y))÷Z×10
6
W:ポリウレタン樹脂を構成するイソシアネートの質量
X:イソシアネートの分子量
Y:イソシアネートの1分子当たりのイソシアネート数
Z:ポリウレタン樹脂を構成する原料のトータル質量
【請求項6】
前記導電性フィラーが銀粒子であることを特徴とする請求項5に記載の伸縮性導体。
【請求項7】
伸縮性
導体形成用ペーストにおいて、溶剤を除いた全成分を100質量部とした場合に、前記導電性フィラーの合計が70~95質量部であり、ポリウレタンエラストマーが5~30質量部であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の伸縮性導体。
【請求項8】
導電性フィラーとしてカーボンブラック、黒鉛から選択された1種類以上の炭素材料を含有することを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の伸縮性導体。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれかに記載の伸縮性
導体からなる電気配線を有する伸縮性電子部品。
【請求項10】
請求項5から請求項8のいずれかに記載の伸縮性
導体からなる電気配線を有する衣服型電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電フィラーとバインダー樹脂からなる導電性ペーストに関し、特に詳しくは伸縮特性を有する導電体を形成可能な導電性ペーストに関する。また本発明は上記導電性ペーストを用いて作製した伸縮性導体、電子部品、衣服型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、入出力、演算、通信機能を有する電子機器を身体に極近接、ないしは密着した状態で使用することを意図したウェアラブル電子機器が開発されている。ウェアラブル電子機器には腕時計、メガネ、イヤホンのようなアクセサリ型の外形を有する機器、衣服に電子機能を組み込んだテキスタイル集積型の衣服型電子機器が知られている。かかるテキスタイル集積型機器の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
電子機器には、電力供給用や信号伝送用の電気配線が必要である。特にテキスタイル集積型ウェアラブル電子機器や伸縮性基材を用いたデバイスには、伸縮する基材に合わせて電気配線にも伸縮性が求められる。通常、金属線や金属箔からなる電気配線には、本質的に実用的な伸縮性は無いため、金属線や金属箔を波形、あるいは繰り返し馬蹄形に配置して、擬似的に伸縮機能を持たせる手法が用いられている。
金属線の場合には、金属線を刺繍糸と見なして、衣服に縫い付けることにより配線形成が可能である。しかしながら、かかる手法が大量生産に向いていないことは自明である。
金属箔のエッチングにより配線を形成する手法は、プリント配線板の製法として一般的である。金属箔を伸縮性のある樹脂シートに貼り合わせ、プリント配線板と同様の手法で波形配線を形成して、擬似的に伸縮性配線とする手法が知られている。(非特許文献1参照)かかる手法は波形配線部の捻れ変形により擬似的に伸縮特性を持たせるものであるが、過度な変形を受けた場合には金属箔に永久塑性変形が生じ、配線の耐久性にも問題があった。
【0004】
伸縮性の導体配線を実現する手法として、特殊な導電ペーストを用いる方法が提案されている。銀粒子、カーボン粒子、カーボンナノチューブ等の導電性粒子と伸縮性を持つウレタン樹脂などのエラストマー、天然ゴム、合成ゴム、溶剤などを混練してペースト状とし、衣服に直接、ないし伸縮性のフィルム基材などと組み合わせて配線を印刷描画するものである。(非特許文献2参照)
導電粒子と伸縮性バインダー樹脂とからなる導電性組成物は、巨視的には伸縮可能な導体を実現することができる。かかるペーストから得られる導電性組成物は、微視的に見れば、外力を受けた際に樹脂バインダーが一部変形し、導電性粒子の電気的連鎖が途切れない範囲で導電性が維持されるものである。巨視的に観察される比抵抗は、金属線や金属箔に比較すると高い値であるが、組成物自体が伸縮性を持つために波形配線などの形状を採る必要が無く、配線幅と厚さには自由度が高いため実用的には金属線に比較して低抵抗な配線を実現可能である。
【0005】
特許文献1では、銀粒子とシリコ-ンゴムを組合せ、シリコーンゴム基板上の導電性膜をさらにシリコーンゴムで被覆することにより、伸長時の導電率低下を抑制する技術が開示されている。特許文献2には銀粒子とポリウレタンエマルジョンの組合せが開示されており、高導電率でかつ高伸長率の導電膜が得られるとされている。さらにカーボンナノチューブや銀粒子など、高アスペクト比の導電性粒子を組み合わせて特性改善を試みた例も多々提案されている。
【0006】
さらに特許文献3では、印刷法を用いて電気配線を衣服に直接的に形成する技術が開示されている。しかしながら繰返し耐久性に多大な影響を与えるバインダー成分については詳細な記述は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-70917号公報
【文献】特開2012-54192号公報
【文献】特許第3723565号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Jong-Hyun Ahn and Jung Ho Je,“Stretchable electronics:materials,architectures and integrations“J.Phys.D:Appl.Phys.45(2012)103001
【文献】Kyoung-Yong Chun,Youngseok Oh,Jonghyun Rho,Jong-Hyun Ahn,Young-Jin Kim,Hyoung Ryeol Choi and Seunghyun Baik,“Highly conductive,printable and stretchable composite films of carbon nanotubes and silver”Nature Nanotechnology,5,853(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
伸縮性導電ペーストを用いて回路を形成する場合、デバイスの小型化の観点から5mm以下の配線幅とすることが一般には求められる。しかしながら配線幅が細くなるほど、基材を伸長させたときに配線にかかる応力が大きくなるため、何度も基材を伸長させたときの抵抗上昇は大きくなる。すでに開示されている導電性ペースト組成では数回基材を伸長させただけで断線が生じるため、衣服型のウェアラブルデバイスの洗濯耐久性が悪いといった問題があった。本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、繰返し伸縮時の抵抗上昇の小さい配線を形成できる伸縮性導電ペーストを提供することにある。
【0010】
伸縮性導体組成物は、主として導電粒子と柔軟性樹脂から構成されるものである。このような伸縮性導体としては、ゴムなどのエラストマーを樹脂バインダーとして用い、カーボンブラックや金属粒子を配合した組成物が一般に知られている。このような伸縮性導体組成物は、導電粒子と架橋型エラストマーの前駆体に必要に応じて溶剤などを混合溶解分散して得られるペーストないしスラリーを介して形成される。ペーストとした場合にはスクリーン印刷などで配線パターンを形成することが容易となる。しかしながら、このようなエラストマーを樹脂バインダーに用いるだけでは、数回基材を伸長させただけで断線が生じていた。
また、ペーストを基材に印刷した後に乾燥硬化工程を経るが、バインダーを架橋することによって繰返し伸縮耐性を付与するタイプのものでは架橋反応促進のために比較的高い処理温度が必要である。一方でこのような柔軟性を有する材料の基材としては、当然ながら柔軟性を有する材料が好ましいが、そのような材料は一般に耐熱性が低いため、かかる架橋構造を硬化課程で形成するタイプの材料の場合には基剤の選択幅が狭くなる。
【0011】
他方、導電ペーストに架橋剤を配合しない場合には、架橋反応温度まで温度を上げる必要が無く、被印刷機材の材料選択幅が広くなるが、塗膜が架橋されず塗膜強度が不十分のため繰返し伸長時の抵抗上昇が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のウレタン基量をもつウレタンエラストマーを樹脂バインダーとしてペースト成分に配合することにより、線幅が細くても数千回伸縮可能な組成を見出し、以下の発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の構成である。
[1] 少なくとも導電性フィラー、ポリウレタンエラストマー、有機溶剤を含有してなる伸縮性導体形成用ペーストにおいて、前記ポリウレタンエラストマーのTgが-60℃~-10℃であり、下記式から算出したウレタン基濃度が3000~4500m当量/kgであることを特徴とする伸縮性導体形成用ペースト。
ウレタン基濃度(m当量/kg) = (W ÷ (X÷Y)) ÷ Z × 106
W:ポリウレタン樹脂を構成するイソシアネートの質量
X:イソシアネートの分子量
Y:イソシアネートの1分子当たりのイソシアネート数
Z:ポリウレタン樹脂を構成する原料のトータル質量
[2] 前記導電性フィラーが銀粒子であることを特徴とする[1]に記載の伸縮性導体形成用ペースト。
[3] 前記伸縮性導電体形成用ペーストにおいて、溶剤を除いた全成分を100質量部とした場合に、前記導電性フィラーの合計が70~95質量部であり、ウレタンエラストマーが5~30質量部であることを特徴とする[1]または[2]に記載の伸縮性導体形成用ペースト。
[4] 導電性フィラーとしてカーボンブラック、黒鉛から選択された1種類以上の炭素材料を含有することを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の伸縮性導体形成用ペースト。
[5] 少なくとも導電性フィラーとポリウレタンエラストマーを含有してなる伸縮性導体において、前記ポリウレタンエラストマーのTgが-60℃~-10℃であり、下記式から算出したウレタン基濃度が3000~4500m当量/kgであることを特徴とする伸縮性導体。
ウレタン基濃度(m当量/kg) = (W ÷ (X÷Y)) ÷ Z × 106
W:ポリウレタン樹脂を構成するイソシアネートの質量
X:イソシアネートの分子量
Y:イソシアネートの1分子当たりのイソシアネート数
Z:ポリウレタン樹脂を構成する原料のトータル質量
[6] 前記導電性性フィラーが銀粒子であることを特徴とする[5]に記載の伸縮性導体。
[7] 前記伸縮性導電体形成用ペーストにおいて、溶剤を除いた全成分を100質量部とした場合に、前記導電性フィラーの合計が70~95質量部であり、ポリウレタンエラストマーが5~30質量部であることを特徴とする[5]または[6]に記載の伸縮性導体。
[8] 導電性フィラーとしてカーボンブラック、黒鉛から選択された1種類以上の炭素材料を含有することを特徴とする[5]から[7]のいずれかに記載の伸縮性導体。
[9] 前記[5]から[8]のいずれかに記載の伸縮性導電体からなる電気配線を有する伸縮性電子部品。
[10] 前記[5]から[8]のいずれかに記載の伸縮性導電体からなる電気配線を有する衣服型電子機器。
【発明の効果】
【0014】
樹脂1000kgあたりのウレタン基当量が3000以下のウレタンエラストマーをバインダーとして用いた導電ペーストを印刷して作製した配線は、ペースト中に含まれる銀とウレタン基の相互作用が弱く、数100回の繰返し試験で導電性を損なうため、数1000回繰り返して使用することが想定されるウェアラブル用途には適していない。樹脂1000kgあたりのウレタン基量が3000以下のウレタンエラストマーを架橋させると樹脂と銀との相互作用が向上し、配線を繰り返して使用することが可能となるが、通常、樹脂を架橋する際には高温での乾燥が必要となり、伸縮性を有する基材は一般には耐熱性がないため架橋剤の使用が困難である。樹脂1000kgあたりのウレタン基当量が4500以上であると、樹脂と銀との相互作用が強くなり導電性粒子の分散性が低下し、作製した配線の構造が不均一になるため繰り返し試験時の導電性が悪くなる。
なお、本発明では便宜上、樹脂1000kgあたりのウレタン基当量をm当量/kgにて表す。m当量のmは1/1000を表すミリである。
【0015】
本発明では特定の範囲内のウレタン基当量をもつウレタンエラストマーをバインダーに用いるため、上記の問題を回避することができる。
当範囲内にウレタン基当量を収めることによって良好な印刷性を維持することができるため、細線印刷物を形成することができる。また、銀とバインダーとの相互作用が高いため架橋剤を使用せずとも高い繰返し伸縮特性を保持することができるため、伸縮性基材を使用することができ、基材の選択性を大きくすることができる。結果として、本発明の導電ペーストを用いることにより線幅5mm以下、好ましくは3mm以下の線幅の印刷が可能であり、さらに線間隔が1mm以下のパターンを印刷可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の金属系導電性粒子は、比抵抗が1×10-2Ωcm以下の金属系物質からなる、粒子径が0.5μm以上5μm以下の粒子である。比抵抗が1×10-2Ωcm以下の物質としては、金属、合金、ドーピングされた半導体などを例示することができる。本発明で好ましく用いられる導電性粒子は銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫などの金属、黄銅、青銅、白銅、半田などの合金粒子、銀被覆銅のようなハイブリッド粒、さらには金属メッキした高分子粒子、金属メッキしたガラス粒子、金属被覆したセラミック粒子などを用いることができる。
【0017】
本発明ではフレーク状銀粒子ないし不定形凝集銀粉を主体に用いることが好ましい。なお、ここに主体に用いるとは導電性粒子の90質量%以上用いることである。不定形凝集粉とは球状もしくは不定形状の1次粒子が3次元的に凝集したものである。不定形凝集粉およびフレーク状粉は球状粉などよりも比表面積が大きいことから低充填量でも導電性ネートワークを形成できるので好ましい。不定形凝集粉は単分散の形態ではないので、粒子同士が物理的に接触していることから導電性ネートワークを形成しやすいので、さらに好ましい。
【0018】
導電性粒子の粒子径は、動的光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が0.5~6μmであり、より好ましくは0.7~5.0μmである。平均粒子径が所定の範囲を超えると微細配線の形成が困難になり、スクリーン印刷などの場合は目詰まりが生じる。平均粒子径が0.5μm未満の場合、低充填では粒子間で接触できなくなり、導電性が悪化する場合がある。
【0019】
本発明では、DBP吸油量が100~550の範囲にあるカーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックには原料や製造方法の異なる多くの種類があり、それぞれに特徴を有している。DBP吸油量はカーボンブラックの液体吸収と保持性能を示すパラメータであり、ISO4656:2012に基づいて測定される。本発明において好ましいDBP吸油量は160以上530以下であり、さらに好ましくは210以上510以下であり、なおさらに好ましくは260以上500以下である。DBP吸油量がこの範囲に満たないと細線を印刷した際に線間が埋まりやすくなり、細線印刷性が低下する。またDBP吸油量がこの範囲を超えると、ペーストの粘度が上がりやすくなり、粘度調整に溶剤の配合量を増やす必要が生じるため、微細線を印刷した際に線間に溶剤がブリードしやすくなり、同様に細線印刷性が低下する。
カーボンブラックの配合量は金属系フィラーとカーボンブラックの総量に対して0.5質量%以上、2.0質量%以下であり、好ましくは0.7質量%以上1.6質量%以下である。
【0020】
本発明では平均粒子径が0.2μm以上10μm以下の非導電性粒子を含んでも良い。本発明における非導電性粒子としては主には金属酸化物の粒子であり、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、金属の硫酸塩、金属の炭酸塩、金属のチタン酸塩等を用いることができる。本発明ではかかる非導電性粒子の中で、硫酸バリウム粒子を用いることが好ましい。
【0021】
本発明におけるエラストマー(柔軟性樹脂)とは、好ましくは弾性率が1~1000MPaであり、好ましくはガラス転移温度が-60℃から-10℃の範囲内のウレタンエラストマーを用いることができる。
エラストマーの弾性率は、好ましくは3~600MPaであり、より好ましく10~500MPa、さらに好ましくは15~300MPa、さらにより好ましくは20~200MPa、特に好ましくは25~150MPaである。
【0022】
本発明のウレタン樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、またはポリカーボネート系ポリオール等から成るソフトセグメントとジイソシアネート等から成るハードセグメントを反応させることにより得られる。ソフトセグメント成分としては、分子設計の自由度からポリエステルポリオールがより好ましい。
【0023】
本発明におけるポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレントリオール、これらを合成するための環状エーテル等のモノマー材料を共重合させて得た共重合体等のポリアルキレングリコール、これらに側鎖を導入したり分岐構造を導入したりした誘導体、変性体、さらにはこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。その理由は、機械的特性が優れるためである。
【0024】
本発明におけるポリエステルポリオールとしては芳香族計ポリエステルポリオール、芳香族/脂肪族共重合ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂環族ポリエステルポリオールを用いることができる。本発明におけるポリエステルポリオールとしては、飽和型、不飽和型、いずれを用いてもかまわない。この中でも脂肪族ポリエステルポリオールが好ましい。
【0025】
上記の脂肪族ポリエステルポリオールとしては、市販品を使用することもできる。市販品の具体例としては、例えば、ポリライトODX-688、ODX-2044、ODX-240、ODX-2376(DIC社製)、クラレポリオールP-2010、P-2050、P-1010(クラレ)、テスラック2461、2455、2469(日立化成製)等が挙げられる。
【0026】
本発明におけるポリカプロラクトンジオールとしては、例えば、γ-ブチルラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン類を開環付加反応させて得られるポリカプロラクトンジオール化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明に使用できるポリカーボネートジオール化合物の市販品として(株)クラレ製クラレポリオールCシリーズ、旭化成ケミカルズ(株)デュラノールシリーズなどが挙げられる。例えば、クラレポリオールC-1015N、クラレポリオールC-1065N、クラレポリオールC-2015N、クラレポリオールC2065N、クラレポリオールC-1050、クラレポリオールC-1090、クラレポリオールC-2050、クラレポリオールC-2090、DURANOL-T5650E、DURANOL-T5651、DURANOL-T5652などを挙げることができる。
【0028】
本発明におけるジイソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアナートが、或いは1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート(オルソ、メタ、パラ)の脂肪族、脂環族ジイソシアナートが挙げられる。これらの中で、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。また、必要に応じて上記イソシアネートの併用、三官能以上のポリイソシアネート化合物を併用しても良い。
【0029】
本発明のポリウレタン樹脂には、必要に応じて一般的に鎖延長剤と呼ばれるジオール化合物等を共重合して良い。
【0030】
鎖延長剤として用いられるジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール及び1,9-ノナンジオール等の脂肪族グリコールが挙げられる。又はトリメチロールプロパンやトリエタノールアミンの様な低分子量トリオール、ジエチルアミンや4,4’-ジアミノジフェニルメタン等のジアミン化合物、或いはトリメチロールプロパンを挙げることが出来る。これらの中でも特に1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
【0031】
本発明のポリウレタン樹脂のガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは-60℃以上-10℃以下、最も好ましくは-50℃以上-20℃以下である。ガラス転移温度が0℃を超えると、作製した導電塗膜の伸度が小さくなり、伸長時の抵抗上昇が悪くなる恐れがある。また、-60℃未満の場合、作製した導電塗膜がブロッキングを生じる恐れがある。また、還元粘度は0.2dl/g以上3.0dl/g以下であり、好ましくは0.3dl/g以上2.5dl/g以下、更に好ましくは0.4dl/g以上2.0dl/g以下である。0.2dl/g未満の場合、導電塗膜が脆くなり伸長時の抵抗上昇が悪くなる恐れがある。また3.0dl/gを超える場合、ポリウレタン樹脂組成物の溶液粘度が高くなり、ハンドリングが困難になる恐れがある。
【0032】
ポリウレタン樹脂を製造するときには、触媒としてオクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウリレート、トリエチルアミン、ビスマス金属等を用いてもよい。
【0033】
本発明の伸縮性導体形成用ペーストにおいて、溶剤を除いた全成分を100質量部とした場合に、金属系導電性フィラーとカーボンブラックの合計が70~95質量部であり、ウレタンエラストマーが5~30質量部である。好ましくは金属系導電性フィラーとカーボンブラックの合計が75~90質量部であり、ウレタンエラストマーが10~25質量部である。
【0034】
本発明の伸縮性導体形成用のペーストは、溶剤を含有する。本発明で用いられる溶剤は、沸点が200℃以上、20℃における飽和蒸気圧が20Pa以下の有機溶剤である。有機溶剤の沸点が低すぎると、ペースト製造工程やペースト使用に際に溶剤が揮発し、導電性ペーストを構成する成分比が変化しやすい懸念がある。一方で、有機溶剤の沸点が高すぎると、乾燥硬化塗膜中の残溶剤量が多くなり、塗膜の信頼性低下を引き起こす懸念がある。また乾燥硬化に長時間を有するため、乾燥過程でのエッジダレが大きくなり、配線間を狭く保つことが困難になる。
【0035】
本発明における有機溶剤としては、ベンジルアルコール(蒸気圧:3Pa、沸点:205℃)、、ターピオネール(蒸気圧:3.1Pa、沸点:219℃)、ジエチレングリコール(蒸気圧:0.11Pa、沸点:245℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(蒸気圧:5.6Pa、沸点217℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(蒸気圧:5.3Pa、沸点:247℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(蒸気圧:0.01mmHg以下、沸点:255℃)、トリエチレングリコール(蒸気圧:0.11Pa、沸点:276℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(蒸気圧:0.1Pa以下、沸点:249℃)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(蒸気圧:0.3Pa、沸点:256℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(蒸気圧:1Pa、沸点:271℃)、テトラエチレングリコール(蒸気圧:1Pa、沸点:327℃)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(蒸気圧:0.01Pa以下、沸点:304℃)、トリプロピレングリコール(蒸気圧:0.01Pa以下、沸点:267℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(蒸気圧:3Pa、沸点:243℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(蒸気圧:3Pa、沸点:230℃)を用いることができる。
本発明における溶剤は必要に応じてそれらの2種以上が含まれてもよい。このような有機溶剤は、伸縮性導体組成物形成用のペーストが印刷などに適した粘度となるように適宜含有される。
本発明における有機溶剤の配合量は導電粒子、非導電粒子、非架橋型のエラストマーの合計質量を100質量部とした場合に、5~40質量部であり、好ましくは10~30質量部である。
【0036】
本発明の伸縮性導体形成用ペーストは、材料である導電性粒子、好ましく配合される非導電性粒子、ウレタンエラストマー、溶剤をディゾルバー、三本ロールミル、自公転型混合機、アトライター、ボールミル、サンドミルなどの分散機により混合分散することにより得ることができる。
【0037】
本発明の伸縮性導体形成用ペーストには、発明の内容を損なわない範囲で、印刷適性の付与、色調の調整、レベリング、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの公知の有機、無機の添加剤を配合することができる。
【0038】
本発明では、以上述べてきた伸縮性導体形成用ペーストを用いて電気配線パターンを直接布帛に印刷することにより伸縮性導体組成物からなる電気配線を形成することができる。印刷手法としては、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、ペーストジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ステンシル法、などを用いることができるが、本発明ではスクリーン印刷法、ステンシル法を用いることが好ましい。またディスペンサ等を用いて配線を直接描画する手法も広義の印刷と解釈して良い。
【0039】
本発明では、このようにして得られた伸縮性導体ペーストを用いて、好ましくは、線幅3mm未満、線間500μm以下の電気配線を印刷法にて形成した後に、大気圧下にて、75℃~120℃の範囲の温度で乾燥することにより、伸縮性電気配線を得ることができる。
【0040】
印刷に用いる基材は伸縮性のある基材ないし屈曲性の高い素材となる。本発明の伸縮性導体形成用ペーストは、ゴム、ないしウレタンなどの柔軟シート上に、また衣服や繊維製品の原反となる、織物、編物、不織布、合成皮革などの布帛上に伸縮性電気配線を形成するための好適に用いられる。また、あらかじめ布帛上にポリウレタン樹脂、ゴムなどの柔軟性のある樹脂材料を下地として全体に、あるいは部分的に塗布した後に伸縮性導体形成用ペーストを印刷することもできる。また布帛を水溶性の樹脂などで仮に固めてハンドリングしやすくして印刷しても良い。またさらに硬質な板材に仮固定して印刷しても良い。
【0041】
本発明における伸縮性導体組成物からなる伸縮性電気配線は20%伸張を100回繰り返しても導通を維持し、好ましくは500回繰り返しても導通を維持し、さらに好ましくは1000回繰り返しても導通を維持する。
本発明の、該電気配線の非伸張時の線幅は、3mm未満であり、1mm以下がさらに好ましい。
本発明の、該電気配線の非伸張時の線間幅は、50μm以上1mm以下であり、さらに好ましくは80μm以上750μm以下である。線間隔がこの範囲を超えると電子回路の実装密度が低下するだけでなく、配線面の凹凸が触感的に目立つようになり、衣服として着用した際に違和感が増してしまう。一方で、この範囲未満の線間隔を形成しようとすると印刷版の洗浄頻度があがり、収率が低下し、生産性に支障が出る。
【0042】
本発明の、電気配線の幅/厚さの比(アスペクト比)は、5~200の範囲であり、好ましくは7~150であり、さらに好ましくは10~100の範囲である。アスペクト比がこの範囲を超えると、配線断面積が小さくなり、必要な電流容量の確保が難しくなる。一方でアスペクト比がこの範囲より小さい配線を形成するためには、リフトオフ法などの材料効率が低い手法を採用せざるを得なくなり、生産性が低下する。
本発明における伸縮性導体ペーストから形成される伸縮性導体の厚さは好ましくは2~60μmであり、さらに好ましくは3~40μmであり、なおさらに好ましくは5~25μmである。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細かつ具体的に説明する。なお実施例中の評価結果などは以下の方法にて測定した。
【0044】
<還元粘度、ガラス転移温度、力学物性測定用サンプル作製方法>
東洋紡績株式会社製ポリプロピレンフイルム(パイレンOT;50μm厚)上に300μmギャップ、幅130mmのアプリケーターを用いてポリウレタン樹脂組成物を塗布した(塗布面は130mm×200mm)。上記塗布物を厚紙に固定して熱風乾燥機(ヤマト科学株式会社製DH42)を用いて120℃30分乾燥後、冷却した。その後、ポリプロピレンフイルムから剥離して評価用サンプルを得た。
【0045】
<還元粘度>
前記の還元粘度サンプル作成方法に基づき作成したものを0.1g精秤して25mlのメスフラスコに入れる。フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)混合溶剤を20ml程度入れ加熱して樹脂を溶解する。完全に溶解した後、30℃で25mlの線までフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)混合溶剤を追加する。均一に混合してウーベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
【0046】
<ガラス転移温度(Tg)>
試料樹脂5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量分析計(DSC)DSC-7020を用いて、100℃まで、
昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部に
おける最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
<力学物性>
力学物性測定用サンプル作成方法に基づいて作成したサンプルからサンプルサイズ10mm×50mmのものを切り出し、引張り試験機(オリエンテック製RTA-100)のサンプル固定チャックに上下20mmずつ挟み固定し、チャック間距離10mm、引張り速度20mm/分、温度25℃60RH%の条件で測定し、S-S曲線より、弾性率、伸度を5回測定して平均した。
【0047】
<ウレタン基濃度>
ウレタン基濃度は以下の式により算出する
ウレタン基濃度(m当量/kg) = (W ÷ (X÷Y)) ÷ Z × 106
W:ポリウレタン樹脂を構成するイソシアネートの質量
X:イソシアネートの分子量
Y:イソシアネートの1分子当たりのイソシアネート数
Z:ポリウレタン樹脂を構成する原料のトータル質量
【0048】
<繰返し伸縮測定用サンプルの作製>
厚さ100μmの伸縮性のウレタンシート上にスクリーン印刷機にて導電性ペーストを塗布し、120℃で30分間乾燥し、線幅1mm、膜厚約20μmの導電性被膜を有する印刷物を作製した。
【0049】
<初期抵抗値ならびに伸縮時の抵抗値評価>
初期抵抗値は自然状態(伸長率0%)の配線物の抵抗を測定し、算出した。抵抗値はSANWA製 PC720Mを用いて測定した。伸縮時の抵抗値についても同様に算出した。
【0050】
<繰返し伸縮性の評価>
繰返し耐久試験機(レスカ社製、TIQ-100)を用い、試料膜を元の長さの20%伸長した状態及び元の長さに戻した状態とすることを繰り返す伸長率20%での繰返伸縮を繰返し行い、導通しなくなるまでの回数(限界回数)を測定した。なお、伸長速度及び元の長さに戻す速度は、ともに10mm/秒とした。
【0051】
<樹脂製造例1>
ポリウレタン樹脂組成物(A)の合成
1Lの4つ口フラスコにODX-2044(DIC製ポリエステルジオール)100部、鎖延長剤として1、6-ヘキサンジオール(宇部興産製)30部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート98部に入れ、マントルヒーターにセットした。攪拌シールをつけた攪拌棒、還流冷却器、温度検出器、玉栓をフラスコにセットして50℃で30分攪拌して溶解した。T-100(東ソー製、イソシアネート)を53部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部を添加した。反応熱による温度上昇が落ち着いたところで90℃に昇温して4時間反応することによりポリウレタン樹脂組成物(A)を得た。得られた樹脂の特性を表1に示した。
【0052】
<樹脂製造例2>
ポリウレタン樹脂組成物(B)の合成
1Lの4つ口フラスコにODX-2044(DIC製ポリエステルジオール)100部、鎖延長剤として1、6-ヘキサンジオール(宇部興産製)33部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103部に入れ、マントルヒーターにセットした。攪拌シールをつけた攪拌棒、還流冷却器、温度検出器、玉栓をフラスコにセットして50℃で30分攪拌して溶解した。T-100(東ソー製、イソシアネート)を58部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部を添加した。反応熱による温度上昇が落ち着いたところで90℃に昇温して4時間反応することによりポリウレタン樹脂組成物(B)を得た。得られた樹脂の特性を表1に示した。
【0053】
<樹脂製造例3>
ポリウレタン樹脂組成物(C)の合成
1Lの4つ口フラスコにODX-2044(DIC製ポリエステルジオール)100部、鎖延長剤として1、6-ヘキサンジオール(宇部興産製)24部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート91部に入れ、マントルヒーターにセットした。攪拌シールをつけた攪拌棒、還流冷却器、温度検出器、玉栓をフラスコにセットして50℃で30分攪拌して溶解した。T-100(東ソー製、イソシアネート)を45部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部を添加した。反応熱による温度上昇が落ち着いたところで90℃に昇温して4時間反応することによりポリウレタン樹脂組成物(C)を得た。得られた樹脂の特性を表1に示した。
【0054】
<樹脂製造例4>
ポリウレタン樹脂組成物(D)の合成
1Lの4つ口フラスコにODX-2044(DIC製ポリエステルジオール)100部、鎖延長剤として1、6-ヘキサンジオール(宇部興産製)40部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート112部に入れ、マントルヒーターにセットした。攪拌シールをつけた攪拌棒、還流冷却器、温度検出器、玉栓をフラスコにセットして50℃で30分攪拌して溶解した。T-100(東ソー製、イソシアネート)を68部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部を添加した。反応熱による温度上昇が落ち着いたところで90℃に昇温して4時間反応することによりポリウレタン樹脂組成物(D)を得た。得られた樹脂の特性を表1に示した。
【0055】
<樹脂製造例5>
ポリウレタン樹脂組成物(E)の合成
1Lの4つ口フラスコにODX-2044(DIC製ポリエステルジオール)100部、鎖延長剤として1、6-ヘキサンジオール(宇部興産製)20部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート85部に入れ、マントルヒーターにセットした。攪拌シールをつけた攪拌棒、還流冷却器、温度検出器、玉栓をフラスコにセットして50℃で30分攪拌して溶解した。T-100(東ソー製、イソシアネート)を38部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部を添加した。反応熱による温度上昇が落ち着いたところで90℃に昇温して4時間反応することによりポリウレタン樹脂組成物(E)を得た。得られた樹脂の特性を表1に示した。
【0056】
<樹脂製造例6>
ポリウレタン樹脂組成物(E)の合成
1Lの4つ口フラスコにODX-2376(DIC製ポリエステルジオール)100部、鎖延長剤として1、6-ヘキサンジオール(宇部興産製)73部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート160部に入れ、マントルヒーターにセットした。攪拌シールをつけた攪拌棒、還流冷却器、温度検出器、玉栓をフラスコにセットして50℃で30分攪拌して溶解した。T-100(東ソー製、イソシアネート)を125部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部を添加した。反応熱による温度上昇が落ち着いたところで90℃に昇温して4時間反応することによりポリウレタン樹脂組成物(F)を得た。得られた樹脂の特性を表1に示した。
【0057】
【0058】
<導電性ペーストの作製と評価>
まず、所定の溶剤量の半分量の溶剤にバインダー樹脂を溶解し、得られた溶液に金属系粒子、処理剤、残りの溶剤を添加して予備混合の後、三本ロールミルにて分散することによりペースト化し、表2、表3、に示す実施例1~9、比較例1~5の導電ペーストを得た。得られた導電ペーストの評価結果を表2、表3に示す
なお表中の
金属系粒子Ag01は、三井金属鉱業社製のSPH02J(導電性粒子、銀粉末、平均粒子径:1μm)である。
金属系粒子Ag02は、福田金属箔粉社製の銀粒子AgC-A(導電性粒子、銀粉末、平均粒子径3.5μm)である。
炭素系粒子CB01は、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC600JD(DBP吸油量495)である
溶剤:ECAは、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートである。
添加剤:硫酸バリウムは堺化学工業株式会社製B-34(粒径0.3μm)である。
添加剤:レべリング剤は、 共栄社化学株式会社製MKコンクである。
【0059】
【0060】
【産業上の利用分野】
【0061】
以上、示してきたように、本発明における伸縮性導体形成用ペーストは、微細線の印刷が可能であり、伸縮性を有しさらに狭い配線間隔、配線幅の伸縮性導体からなる電気配線を備えることにより、配線部の繰り返し曲げ性、繰り返し捻り性、繰り返し伸張性に優れ、さらに着用時の違和感も少ない。
本発明の衣服型電子機器の手法は、人体の持つ情報、すなわち筋電位、心電位などの生体電位、体温、脈拍、血圧などの生体情報を衣服に設けたセンサなど検知するためのウェアラブル装置や、あるいは、電気的な温熱装置を組み込んだ衣服、衣服圧を測定するためのセンサを組み込んだウェアラブル装置、衣服圧を利用して身体サイズを計測するウェア、足裏の圧力を測定するための靴下型装置、フレキシブルな太陽電池モジュールをテキスタイルに集積した衣服、テント、バッグなどの配線部、関節部を有する低周波治療器、温熱療養機などの配線部、屈曲度のセンシング部などに応用可能である。かかるウェアラブル装置は、人体を対象にするのみならず、ペットや家畜などの動物、あるいは伸縮部、屈曲部などを有する機械装置にも応用可能であり、ロボット義手、ロボット義足など機械装置と人体と接続して用いるシステムの電気配線としても利用できる。また体内に埋設して使用するインプラントデバイスの配線材料としても有用である。