(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】フォトレジスト用フェノール樹脂組成物及びフォトレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20220928BHJP
C08G 8/10 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G03F7/023 511
C08G8/10
(21)【出願番号】P 2019541054
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2018033712
(87)【国際公開番号】W WO2019050047
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2017174401
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 貞昭
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/10
G03F 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)とアリーレン骨格及びナフタレン骨格のうち少なくとも一つを構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)とを(A)と(B)との質量比が5~95:95~5となる量で含
み、キノンジアジド化合物を感光剤として用いるフォトレジスト用
のフェノール樹脂組成物であって、
前記アリーレン骨格は下記一般式(4)で示されるユニットであることを特徴とするフォトレジスト用フェノール樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、水素、又は炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、R
1の少なくとも一つは炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基である。pは、1以上3以下であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。qは、1以上3以下であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、p+q≦4である。nは、0以上の整数を表す。)
【化2】
(一般式(4)中、Xは、下記式(4-1)又は(4-2)で示される2価の基を表す。
【化3】
R
2は、水素、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数3~6の環状アルキル基、フェニル基、又はハロゲンを表す。aは、1又は2である。bは、1以上3以下であり、bが2以上の場合、R
2はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、a+b≦4である。なお、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(4)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のa、b及びR
2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。)
【請求項2】
ノボラック型フェノール樹脂(B)が、前記一般式(4)で示されるユニットを構造中に含む請求項1記載のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物。
【請求項3】
ノボラック型フェノール樹脂(B)が、下記一般式(10)で示されるユニットを構造中に含む請求項1記載のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物。
【化4】
(一般式(10)中、R
3は、水素、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数3~6の環状アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基、アセチル基、スルホン酸ナトリウム基、ニトロ基、又はアミノ基を表す。R
4は、水素、又はメチル基を表す。cは、1以上3以下であり、cが2以上の場合、R
3はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。なお、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(10)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のc、R
4及びR
3は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。)
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物と感光剤
としてのキノンジアジド化合物とを含むことを特徴とするフォトレジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物、及びフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を含むフォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路半導体の回路パターンの線幅は、集積度の高密度化とともに微細化の一途を辿っている。また、液晶表示素子などでも同様に線幅が細くなり、微細化する傾向となっている。ディスプレイパネルの大型化、低コスト化が進む中、大型基板上で簡便な工程で安定して配線形成することが可能な技術が必要とされている。
また、従来半導体分野で使用されているフォトリソグラフィー技術の中で、レジスト膜をパターニングしたのち、ウェットエッチング法や、ドライエッチング法により配線形成する工程が普及しているが、その技術を液晶表示素子の製造工程でも応用している流れがある。
それに伴い、フォトレジスト用樹脂材料に対する要求性能も高度化かつ多様化しており、高感度、高残膜率、高解像度などの高現像性と、さらにウェットエッチング耐性及びドライエッチング耐性といったエッチング耐性が優れている必要がある。
【0003】
フォトレジスト用途に最も広く用いられているフェノール樹脂としては、クレゾールノボラック型フェノール樹脂が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなクレゾールノボラック型フェノール樹脂は、前述した高度化かつ多様化が進む昨今の市場要求性能に対応できるものではなく、エッチング耐性も十分ではない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高感度、高残膜率、高解像度などの高現像性を有し、さらにエッチング耐性に優れるフォトレジスト用フェノール樹脂組成物及びフォトレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の一般式で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)とアリーレン骨格又はナフタレン骨格の特定の構造を樹脂骨格に含むノボラック型フェノール樹脂(B)とをポリマーブレンドして得られるフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を用いたフォトレジスト組成物が、高感度、高残膜率、高解像度などの現像性に優れ、且つエッチング耐性に優れることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の事項に関する。
1. 下記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)とアリーレン骨格及びナフタレン骨格のうち少なくとも一つを構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)とを(A)と(B)との質量比が5~95:95~5となる量で含むフォトレジスト用フェノール樹脂組成物に関する。
【0009】
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、水素、又は炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、R
1の少なくとも一つは炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基である。pは、1以上3以下であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。qは、1以上3以下であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、p+q≦4である。nは、0以上の整数を表す。)
【0010】
2. ノボラック型フェノール樹脂(B)が、下記一般式(4)で示されるユニットを構造中に含む前記1.記載のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物に関する。
【0011】
【化2】
(一般式(4)中、Xは、下記式(4-1)又は(4-2)で示される2価の基を表す。
【化3】
R
2は、水素、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数3~6の環状アルキル基、フェニル基、又はハロゲンを表す。aは、1又は2である。bは、1以上3以下であり、bが2以上の場合、R
2はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、a+b≦4である。なお、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(4)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のa、b及びR
2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。)
【0012】
3. ノボラック型フェノール樹脂(B)が、下記一般式(10)で示されるユニットを構造中に含む前記1.記載のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物に関する。
【0013】
【化4】
(一般式(10)中、R
3は、水素、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数3~6の環状アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基、アセチル基、スルホン酸ナトリウム基、ニトロ基、又はアミノ基を表す。R
4は、水素、又はメチル基を表す。cは、1以上3以下であり、cが2以上の場合、R
3はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。なお、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(10)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のc、R
4及びR
3は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。)
【0014】
4.前記1.乃至3.いずれか記載のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物と感光剤とを含むフォトレジスト組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高感度、高残膜率、高解像度などの高現像性を有し、さらにエッチング耐性に優れるフォトレジスト用フェノール樹脂組成物及びフォトレジスト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物は、下記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)と、アリーレン骨格及びナフタレン骨格のうち少なくとも一つを構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)とをポリマーブレンド(混合)して得られる。
【0017】
【化5】
(一般式(1)中、R
1は、水素、又は炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、R
1の少なくとも一つは炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基である。pは、1以上3以下であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。qは、1以上3以下であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、p+q≦4である。nは、0以上の整数を表す。)
【0018】
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物は、前記ノボラック型フェノール樹脂(A)と前記ノボラック型フェノール樹脂(B)とを共に含むことにより、フォトレジスト組成物としたときに、高感度、高残膜率、高解像度などの現像性と、ウェットエッチング耐性やドライエッチング耐性などのエッチング耐性とが共に優れたものとなる。
【0019】
〔ノボラック型フェノール樹脂(A)〕
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物において、ノボラック型フェノール樹脂(A)は、前記一般式(1)で示される。
【0020】
前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)において、R1は、フェノール性水酸基を有するベンゼン環に結合する置換基を表す。R1は、水素、又は炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、ノボラック型フェノール樹脂(A)の構造中に含まれる複数のR1は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、R1の少なくとも一つは炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基である。すなわち、ノボラック型フェノール樹脂(A)は、フェノール性水酸基を有するベンゼン環に置換基R1としてアルキル基が結合したアルキル置換フェノール骨格を必ず有する。R1は、好ましくは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、プロピル基、ビニル基、オクチル基である。フォトレジスト用フェノール樹脂組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性の観点からは、R1は、メチル基であることがより好ましい。
【0021】
前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)において、qは、前記置換基R1の数を表す。qは、1以上3以下の整数であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ここで、qにおける「それぞれ同一又は異なっていてもよい」とは、ノボラック型フェノール樹脂(A)の構造中に含まれる複数のqが、それぞれ同一又は異なっていてもよいことを示す。フォトレジスト用フェノール樹脂組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性のバランスの観点からは、qは、全て1であることが好ましい。
【0022】
前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)において、pは、フェノール性水酸基の数を表す。pは、1以上3以下の整数であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。ここで、pにおける「それぞれ同一又は異なっていてもよい」とは、ノボラック型フェノール樹脂(A)の構造中に含まれる複数のpが、それぞれ同一又は異なっていてもよいことを示す。ただし、前述の置換基R1の数qとの和p+qが4以下である。フォトレジスト用フェノール樹脂組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性のバランスの観点からは、pは、全て1であることが好ましい。フェノール性水酸基の数が多いと、アルカリに対する溶解速度が速くなりすぎてフォトレジスト組成物としたとき取り扱い性が悪い場合がある。
【0023】
前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)において、nは、繰り返し数を表し、0以上の整数である。
【0024】
前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)は、様々な分子量を有する高分子の集合体なので、nの値は、該集合体における平均値n’として表すことができる。
前記平均値n’は、ノボラック型フェノール樹脂(A)のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定される、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)が、1000~50000となるような値であることが好ましく、1500~30000となるような値であることがより好ましく、1500~25000となるような値であることがさらに好ましく、3000~15000となるような値であることが特に好ましく、5000~12000となるような値であることが最も好ましい。
【0025】
前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定されるポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)が、上述の範囲であることが、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物とするときの製造上のハンドリング性や、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性の観点からは好ましい。重量平均分子量が1000より小さい場合は、感度が高過ぎたり耐熱性に劣る場合があり、50000より大きい場合は、感度が低い場合がある。
【0026】
前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)の水酸基当量は、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性のバランスの観点からは、90g/eq以上140g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上135g/eq以下であることがさらに好ましく、100g/eq以上130g/eq以下であることがさらに好ましい。
【0027】
また、前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)において、より好ましい態様の一つは、一般式(1)の全てのp及びqが1(p=1、q=1)であり、全ての置換基Rがメチル基である、下記一般式(2)で示されるクレゾールノボラック樹脂である。
【0028】
【化6】
(一般式(2)中、nは、前記一般式(1)における定義と同じである。)
【0029】
ノボラック型フェノール樹脂(A)として、前記一般式(2)で示されるクレゾールノボラック樹脂を用いることにより、感度、残膜率、解像度、耐熱性をバランスよく備えたフォトレジスト組成物を得ることができるため好ましい。
【0030】
前記一般式(2)で示される好ましい態様の一つであるノボラック型フェノール樹脂(A)において、メチル基は、フェノール性水酸基に対して、オルト、メタ、又はパラ位の何れの置換位置にあってもよい。フォトレジスト組成物としたときに感度、残膜率、解像度、耐熱性をバランスよく備えるという観点からは、フェノール性水酸基に対してメタ位にメチル基が置換されたフェノール骨格と、パラ位にメチル基が結合したフェノール骨格とを共に有する構造であることが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂(A)は、フェノール性水酸基に対してメタ位にメチル基が置換されたフェノール骨格と、パラ位にメチル基が結合したフェノール骨格とからなる構造であることがより好ましい。メタ位:パラ位のモル比は、後述する原料仕込みの際のフェノール化合物(a1)のモル比を調節することにより、調整することができる。その際、前記一般式(2)が有するメタ位にメチル基が置換されたフェノール骨格と、パラ位にメチル基が結合したフェノール骨格とが、メタ位:パラ位の原料仕込みの際のモル比が20~80:80~20となる量であることが好ましく、30~70:70~30となる量であることがより好ましく、40~60:60~40となる量であることがさらに好ましく、40~50:60~50となる量であることが特に好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂(A)の構造中のフェノール骨格におけるメチル基の位置は、レジスト組成物のエッチング耐性やアルカリ溶解性に影響を及ぼす。パラ位にメチル基が結合したフェノール骨格を多くすることで、エッチング耐性の高いフォトレジスト組成物を得ることができる。パラ位の割合は、50%を超えることが好ましい。メタ位の割合が多い場合には、アルカリ溶解速度が速くなって残膜率が低下するという不都合が生じるおそれがある。メタ位の割合が50%までであれば、そのおそれはない。
【0031】
〔ノボラック型フェノール樹脂(A)の製造方法〕
前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)は、下記一般式(3)で示されるフェノール化合物(a1)とホルムアルデヒド(a2)とを、酸性触媒下で縮重合反応させることで得ることができる。
【0032】
<フェノール化合物(a1)>
ノボラック型フェノール樹脂(A)の製造において、使用されるフェノール化合物(a1)は、下記一般式(3)で示される。
【0033】
【化7】
(一般式(3)中、R
1、p及びqは、前記一般式(1)における定義と同じである。)
【0034】
一般式(3)で示されるフェノール化合物の例としては、特に限定はないが、p=1の化合物としては、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、ジブチルフェノールなどが挙げられる。
また、p=2の化合物としては、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノンなどが挙げられる。中でも、レゾルシンが好適である。
また、P=3の化合物としては、ヒドロキシキノール、フロログリシノール、ピロガロールなどが挙げられる。
これらのフェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、R1が炭素数1以上8以下の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基であるアルキル置換フェノール化合物を必須成分として含む。
特に、フォトレジスト組成物としたときに、感度、残膜率、解像度、耐熱性をバランスよく備える観点から、フェノール化合物(a1)として、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾールのクレゾール類を用いることが好ましく、m-クレゾール、p-クレゾールを用いることがより好ましく、m-クレゾールとp-クレゾールとを組み合わせて用いることがさらに好ましい。
m-クレゾールとp-クレゾールとを組み合わせて用いる場合に、m-クレゾール:p-クレゾールのモル比が20~80:80~20となる量であることが好ましく、30~70:70~30となる量であることがより好ましく、40~60:60~40となる量であることがさらに好ましく、40~50:60~50となる量であることが特に好ましい。
【0035】
<ホルムアルデヒド(a2)>
また、ホルムアルデヒド(a2)としては、特に制限はないが、ホルムアルデヒド水溶液を用いてもよく、また、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなど酸存在下で分解してホルムアルデヒドとなる重合物を用いてもよい。好ましくは、取り扱いの容易なホルムアルデヒド水溶液であり、市販の42%ホルムアルデヒド水溶液をそのまま好適に使用することができる。
【0036】
<フェノール化合物(a1)とホルムアルデヒド(a2)とのモル比(a2/a1)>
ノボラック型フェノール樹脂(A)の製造において、フェノール化合物(a1)とホルムアルデヒド(a2)とを反応させる際には、フェノール化合物(a1)1モルに対して、ホルムアルデヒド(a2)を、好ましくは0.2~1.0モル、より好ましくは0.5~0.9モルとする。
フェノール化合物(a1)とホルムアルデヒド(a2)とのモル比を上記範囲とすることで、本発明に使用されるノボラック型フェノール樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を好ましい範囲とすることができる。
【0037】
<酸触媒>
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)の製造における縮重合反応の反応条件は、通常のフェノール樹脂を調製する際に適用される従来公知の反応条件で構わない。すなわち、使用する酸触媒としては、フェノール成分とホルムアルデヒド成分とを反応させる能力のある酸であれば、特に限定されず、例えば、蓚酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などを単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、硫酸、蓚酸又はp-トルエンスルホン酸が特に好ましい。
【0038】
酸触媒の使用量は、フェノール成分(a1)に対して0.01~1質量%程度である。ノボラック型フェノール樹脂(A)をフォトレジスト用組成物に使用する場合、樹脂中に残存した酸触媒がフォトレジストの特性に影響を及ぼすことがあるため、極力少ない方が好ましい。好ましい使用量は、その種類によっても異なり、蓚酸の場合は0.3~1.0質量%、硫酸の場合は0.05~0.1質量%、p-トルエンスルホン酸の場合は0.1~0.5質量%程度使用するのがよい。
【0039】
<反応溶媒>
反応溶媒としては、原料のホルムアルデヒドに含まれる水が溶媒の役割を担うことができるが、水以外に、必要によって反応に影響を及ぼさない有機溶媒を使用することもできる。これらの有機溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンなどのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類などが挙げられる。
反応溶媒の使用量は、反応原料100質量部あたり、20~1000質量部が好ましい。
【0040】
<反応温度>
縮重合反応の反応温度は、特に限定されず、通常50~200℃、好ましくは70~180℃、より好ましくは80~170℃である。50℃よりも低いと反応が進みにくく、200℃を超えると反応の制御が難しくなり、目的とするノボラック型フェノール樹脂(A)を安定的に得ることが難しくなる。
【0041】
<反応時間、反応圧力>
縮重合反応の反応時間は、反応温度にもよるが、通常は0.1~20時間程度である。また、縮重合反応の反応圧力は、通常は常圧下で行われるが、加圧下或いは減圧下で行ってもよい。
【0042】
<後処理>
縮重合反応終了後の後処理としては、反応を完全に停止するために塩基を添加して酸触媒を中和し、続いて酸触媒を除去するために水を加えて水洗を行うことが好ましい。
【0043】
酸触媒の中和のための塩基としては、特に限定されることはなく、酸触媒を中和し、水に可溶となる塩を形成するものであれば使用可能である。金属水酸化物や金属炭酸塩などの無機塩基ならびにアミンや有機アミンなどの有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。有機塩基のアミンあるいは有機アミンの具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。好ましくは、有機アミンが使用される。使用量は、酸触媒の量にもよるが、酸触媒を中和し、反応系内のpHが4~8の範囲に入るような量で使用することが好ましい。
【0044】
水洗で用いる水の量と水洗の回数は特に限定されないが、経済的観点も含めて、酸触媒を実使用に影響ない程度の量まで除去するために、水洗回数としては1~5回程度が好ましい。また、水洗の温度は、特に限定されないが、触媒種除去の効率と作業性の観点から40~95℃で行うのが好ましい。水洗中、ノボラック型フェノール樹脂(A)と水洗水との分離が悪い場合は、混合液の粘度を低下させるために溶媒の添加や水洗の温度を上昇させることが効果的である。溶媒種は特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂(A)を溶解し、粘度を低下させるものであれば使用することができる。
【0045】
酸性触媒を除去した後は、通常は、反応系の温度を130~230℃に上げて、例えば20~50torrの減圧下、反応混合物中に残存している未反応原料、有機溶媒などの揮発分を留去することによって、目的のノボラック型フェノール樹脂(A)を好適に分離回収することができる。
【0046】
[ノボラック型フェノール樹脂(B)]
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物において、ノボラック型フェノール樹脂(B)は、アリーレン骨格及びナフタレン骨格のうち少なくとも一つを構造中に含む。本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物は、ノボラック型フェノール樹脂(B)を含むことにより、フォトレジスト組成物としたときに、高感度、高残膜率、高解像度などの現像性と、ウェットエッチング耐性やドライエッチング耐性などのエッチング耐性とが共に優れたものとなる。
【0047】
〔アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)〕
ノボラック型フェノール樹脂(B)において、アリーレン骨格を構造中に含むとは、下記一般式(4)のユニット(構成単位)を少なくとも1つ構造中に含むことを示す。
【0048】
【化8】
(一般式(4)中、Xは、下記式(4-1)又は(4-2)で示される2価の基を表す。
【化9】
R
2は、水素、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数3~6の環状アルキル基、フェニル基、又はハロゲンを表す。aは、1又は2である。bは、1以上3以下であり、bが2以上の場合、R
2はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。ただし、a+b≦4である。なお、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(4)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のa、b及びR
2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。)
【0049】
前記一般式(4)で表されるユニットにおいて、R2は、フェノール性水酸基を有するベンゼン環に結合する置換基を表す。R2は、水素、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数3~6の環状アルキル基、フェニル基、又はハロゲンを表す。R2は、好ましくは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、プロピル基であり、より好ましくは、水素又はメチル基であり、さらに好ましくは水素であることが、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物とするときの製造上のハンドリング性や、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性のバランスの観点からは好ましい。
【0050】
前記一般式(4)で示されるユニットにおいて、bは、前記置換基R2の数を表す。bは、1以上3以下の整数であり、bが2以上の場合、R2はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。フォトレジスト用フェノール樹脂組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性のバランスの観点からは、bは1であることが好ましい。
【0051】
また、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(4)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のb及びR2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。
【0052】
前記一般式(4)で示されるユニットにおいて、aは、フェノール性水酸基の数を示す。aは、1又は2である。ただし、前述の置換基R2の数bとの和a+bは4以下である。フォトレジスト用フェノール樹脂組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性のバランスの観点からは、aは1であることが好ましい。
また、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(4)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のaは、それぞれ同一又は異なっていてもよい。すなわち、ノボラック型フェノール樹脂(B)は、構造中に1価フェノール(a=1)の骨格と2価フェノール(a=2)の骨格とを同一の構造内に含みうる。
【0053】
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定されるポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物とするときの製造上のハンドリング性やフォトレジスト組成物としたときの性能から、300~10000が好ましく、500~8000がより好ましく、500~5000がさらに好ましく、1000~1500が特に好ましく、1200~1400が極めて好ましい。重量平均分子量が300より小さい場合は、感度が高すぎたり耐熱性に劣る場合があり、10000より大きい場合は、感度が低い場合がある。
【0054】
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の水酸基当量は、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性のバランスの観点からは、140g/eq以上210g/eq以下であることが好ましく、150g/eq以上190g/eq以下であることがより好ましく、160g/eq以上180g/eq以下であることがさらに好ましい。
【0055】
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の好ましい態様の一つは、下記一般式(5)又は(6)で示されるノボラック型フェノール樹脂である。
【0056】
【化10】
(一般式(5)中、R
2、a及びbは、前記一般式(4)における定義と同じである。αは、0以上の整数を表す。)
【0057】
【化11】
(一般式(6)中、R
2、a及びbは、前記一般式(4)における定義と同じである。βは、0以上の整数を表す。)
【0058】
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)のより好ましい態様の一つは、上記一般式(5)又は(6)の全てのaが1(a=1)であり、全ての置換基R2が水素である繰り返し単位からなる、下記一般式(5’)又は(6’)で示されるノボラック型フェノール樹脂である。
【0059】
【化12】
(一般式(5’)中、αは、前記一般式(5)における定義と同じである。)
【0060】
【化13】
(一般式(6’)中、βは、前記一般式(6)における定義と同じである。)
【0061】
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)は、前記一般式(5)又は(5’)で示されるノボラック型フェノール樹脂であることが、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物とするときの製造上のハンドリング性や、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性のバランスの観点からは好ましい。
【0062】
〔アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造方法〕
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)は、下記一般式(7)で示されるフェノール化合物(b1)と下記一般式(8)又は(9)で示されるベンゼン環又はビフェニル環を含む化合物(b2)とを無触媒又は好ましくは酸触媒の存在下に、縮合反応させることによって好適に得ることができる。
【0063】
<フェノール化合物(b1)>
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、使用されるフェノール化合物(b1)は、下記一般式(7)で示される。
【0064】
【化14】
(一般式(7)中、R
2、a及びbは、前記一般式(4)における定義と同じである。)
【0065】
一般式(7)で示されるフェノール化合物の例としては、特に限定はないが、a=1の化合物としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、ブチルメチルフェノールなどの1価フェノール化合物が挙げられる。中でも、フェノールが好適である。
また、a=2の化合物としては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなどの2価フェノールなどを好適に挙げることができる。中でも、レゾルシンが好適である。
これらのフェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、フォトレジスト組成物としたときに感度、残膜率、解像度、耐熱性をバランスよく備える観点から、フェノールを単独で用いることが特に好ましい。
【0066】
<ベンゼン環又はビフェニル環を含む化合物(b2)>
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、使用されるベンゼン環又はビフェニル環を含む化合物(b2)は、前記一般式(7)で示されるフェノール化合物(b1)を架橋する成分であり、下記一般式(8)又は(9)で示される。
【0067】
【化15】
(一般式(8)又は(9)中、Xは、アルコキシ基又はハロゲンを表す。)
【0068】
前記一般式(8)又は(9)で示されるベンゼン環又はビフェニル環を含む化合物(b2)において、Xは、アルコキシ基又はハロゲンを表す。
アルコキシ基としては、特に制限はないが、炭素数1~6個の脂肪族アルコキシ基が好ましい。具体的には、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられるが、フェノール化合物との反応性及び入手のし易さから、メトキシ基が好ましい。
ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられるが、フェノール化合物との反応性及び入手のし易さから、塩素原子が好ましい。
【0069】
前記一般式(8)で示されるベンゼン環を含む化合物としては、1,4-ジ(メトキシメチル)ベンゼン、1,3-ジ(メトキシメチル)ベンゼン、1,2-ジ(メトキシメチル)ベンゼン、1,4-ジ(クロロメチル)ベンゼン、1,3-ジ(クロロメチル)ベンゼン、1,2-ジ(クロロメチル)ベンゼンなどを好適に挙げることができる。中でも、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性の観点からは、1,4-ジ(メトキシメチル)ベンゼン又は1,4-ジ(クロロメチル)ベンゼンが好ましい。
【0070】
前記一般式(9)で示されるビフェニル環を含む化合物としては、4,4’-ジ(メトキシメチル)ビフェニル、2,4’-ジ(メトキシメチル)ビフェニル、2,2’-ジ(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’-ジ(クロロメチル)ビフェニル、2,4’-ジ(クロロメチル)ビフェニル、2,2’-ジ(クロロメチル)ビフェニルなどを好適に挙げることができる。中でも、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性の観点からは、4,4’-ジ(メトキシメチル)ビフェニル又は4,4’-ジ(クロロメチル)ビフェニルが好ましい。
【0071】
これらの前記一般式(8)又は(9)で示されるベンゼン環又はビフェニル環を含む化合物(b2)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
また、前記一般式(9)で示されるフェノール化合物(b1)を架橋する成分として、ベンゼン環又はビフェニル環を含む化合物(b2)と併せて、本発明の効果を妨げない範囲内でホルムアルデヒドを共に用いることができる。
【0073】
<フェノール化合物(b1)とビフェニル環又はベンゼン環を含む化合物(b2)とのモル比(b2/b1)>
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、フェノール化合物(b1)とベンゼン環又はビフェニル環を含む化合物(b2)とを反応させる際には、フェノール化合物(b1)1モルに対して、ベンゼン環又はビフェニル環を含む化合物(b2)を、好ましくは0.1~1.0モル、より好ましくは0.3~0.6モルとする。
フェノール成分(b1)とビフェニル環又はベンゼン環を含む化合物(b2)とのモル比を上記範囲とすることで、本発明に使用されるアリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)を好ましい範囲とすることができる。
【0074】
アリーレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、<酸触媒>、<反応溶媒>、<反応温度>、<反応時間、反応圧力>及び<後処理>などの諸条件については、従来公知の条件により製造することができる。例えば、前述のノボラック型フェノール樹脂(A)の製造方法におけるものと同等の条件により製造することができる。
【0075】
〔ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)〕
ノボラック型フェノール樹脂(B)において、ナフタレン骨格を構造中に含むとは、下記一般式(10)のユニットを少なくとも1つ構造中に含むことを示す。
【0076】
【化16】
(一般式(10)中、R
3は、水素、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数3~6の環状アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基、アセチル基、スルホン酸ナトリウム基、ニトロ基、又はアミノ基を表す。R
4は、水素、又はメチル基を表す。cは、1以上3以下であり、cが2以上の場合、R
3はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。なお、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(10)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のc、R
4及びR
3は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。)
【0077】
なお、前記一般式(10)において、ナフタレン骨格に結合する水酸基、置換基R3及びメチレン基などの結合手が、ナフタレン環を構成する2つのベンゼン環を連通するように記載されているのは、水酸基、置換基R3及びメチレン基などがナフタレン環の置換可能な位置のどこに結合していてもよいことを示す。
【0078】
前記一般式(10)で示されるユニットにおいて、R3は、フェノール性水酸基を有するナフタレン環に結合する置換基を表す。R3は、水素、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数3~6の環状アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基、アセチル基、スルホン酸ナトリウム基、ニトロ基、又はアミノ基を表す。R3は、好ましくは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、又はプロピル基であり、より好ましくは、水素又はメチル基であり、さらに好ましくは、水素であることが、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物とするときの製造上のハンドリング性や、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性のバランスの観点からは好ましい。
【0079】
前記一般式(10)で示されるユニットにおいて、cは、前記置換基R3の数を表す。cは、1以上3以下の整数であり、cが2以上の場合、R3はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。フォトレジスト用フェノール樹脂組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性のバランスの観点からは、cは1であることが好ましい。
【0080】
また、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(10)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のc及びR3は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。
【0081】
前記一般式(10)で示されるユニットにおいて、R4は、フェノール性水酸基を有するベンゼン環に結合する置換基を表す。R4は、水素、又はメチル基を表す。ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に一般式(10)で示されるユニットが複数含まれる場合、ノボラック型フェノール樹脂(B)の構造中に含まれる複数のR4は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。フォトレジスト用フェノール樹脂組成物とするときの製造上のハンドリング性や、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性の観点からは、R4は、メチル基であることが好ましい。また、R4がメチル基の場合にその結合位置は、ベンゼン環に結合するフェノール性水酸基に対してパラ位であることが好ましい。
【0082】
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)のより好ましい態様の一つは、下記一般式(11)で示されるノボラック型フェノール樹脂である。
【0083】
【化17】
(一般式(11)中、R
3、R
4及びcは、前記一般式(10)における定義と同じである。γは、0以上の整数を表す。)
【0084】
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)のより好ましい態様の一つは、一般式(11)の全ての置換基R3が水素であり、全ての置換基R4がメチル基であり、ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基に対しパラ位に結合した繰り返し単位からなる、下記一般式(11’)で示されるノボラック型フェノール樹脂である。
【0085】
【化18】
(一般式(11’)中、γは、前記一般式(11)における定義と同じである。)
【0086】
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定されるポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物とするときの製造上のハンドリング性やフォトレジスト組成物としたときの性能から、300~10000が好ましく、500~8000がより好ましく、500~5000がさらに好ましく、500~3000がよりさらに好ましく、500~1000が特に好ましい。重量平均分子量が300より小さい場合は、感度が高すぎたり耐熱性に劣る場合があり、10000より大きい場合は感度が低い場合がある。
【0087】
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の水酸基当量は、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性のバランスの観点からは、130g/eq以上160g/eq以下であることが好ましく、140g/eq以上150g/eq以下であることがさらに好ましい。
【0088】
〔ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造方法〕
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)は、下記一般式(12)で示されるナフトール化合物(c1)と下記一般式(13)で示されるフェノール化合物(c2)とホルムアルデヒド(c3)とを好ましくは酸触媒の存在下に、縮合反応させることによって好適に得ることができる。
【0089】
<ナフトール化合物(c1)>
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、使用されるナフトール化合物(c1)は、下記一般式(12)で示される。
【0090】
【化19】
(一般式(12)中、R
3及びcは、前記一般式(10)における定義と同じである。)
【0091】
一般式(12)で示されるナフトール化合物の例としては、特に限定はないが、α-ナフトール、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-メトキシ-1-ナフトール、2-アセチル-1-ナフトール、1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、4-ニトロ-1-ナフトール、4-クロロ-1-ナフトール、6-アミノ-1-ナフトール、β-ナフトールなどを好適に挙げることができる。中でも、入手のし易さやフォトレジスト組成物としたときの性能の観点からは、α-ナフトールが好ましい。
【0092】
<フェノール化合物(c2)>
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、使用されるフェノール化合物(c2)は、下記一般式(13)で示される。
【0093】
【化20】
(一般式(13)中、R
4は、前記一般式(10)における定義と同じである。)
【0094】
一般式(13)で示されるフェノール化合物の例としては、特に限定はないが、フェノール、о-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾールなどを好適に挙げることができる。中でも、入手のし易さやフォトレジスト組成物としたときの性能の観点からは、フェノール、パラクレゾールが好ましい。
【0095】
<ホルムアルデヒド(c3)>
また、ホルムアルデヒド(c3)としては、特に制限はないが、ホルムアルデヒド水溶液を用いてもよく、また、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなど酸存在下で分解してホルムアルデヒドとなる重合物を用いてもよい。好ましくは、取り扱いの容易なホルムアルデヒド水溶液であり、市販の42%ホルムアルデヒド水溶液をそのまま好適に使用することができる。
【0096】
<ナフトール化合物(c1)とフェノール化合物(c2)とからなるフェノール類成分とホルムアルデヒド(c3)とのモル比[c3/(c1+c2)]>
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、ナフトール化合物(c1)、フェノール化合物(c2)とホルムアルデヒド(c3)とを反応させる際には、ナフトール化合物(c1)とフェノール化合物(c2)とからなるフェノール類成分(c1+c2)1モルに対して、ホルムアルデヒド(c3)を、好ましくは0.1~1.0モル、より好ましくは0.3~0.6モルとする。
フェノール類成分(c1+c2)とホルムアルデヒド(c3)とのモル比を上記範囲とすることで、本発明に使用されるナフトール骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)を好ましい範囲とすることができる。
【0097】
<ナフトール化合物(c1)とフェノール化合物(c2)とのモル比(c2/c1)>
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、ナフトール化合物(c1)とフェノール化合物(c2)とのモル比は、ナフトール化合物(c1)1モルに対して、フェノール化合物(c2)を、好ましくは0.1~1.0モル、より好ましくは0.3~0.6モルとする。
ナフトール化合物(c1)とフェノール化合物(c2)とのモル比を上記範囲とすることが、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度、耐熱性、エッチング耐性のバランスの観点からは好ましい。
【0098】
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、<酸触媒>、<反応溶媒>、<反応温度>、<反応時間、反応圧力>及び<後処理>などの諸条件については、従来公知の条件により製造することができる。例えば、前述のノボラック型フェノール樹脂(A)の製造方法におけるものと同等の条件により製造することができる。
【0099】
ナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)の製造において、その他の製造方法としては、例えばフェノール化合物(c2)とホルムアルデヒド(c3)とを塩基性触媒下で反応させてフェノール成分のジメチロール体を得て、次いで得られたフェノール成分のジメチロール体とナフタレン骨格を含む化合物であるナフトール化合物(c1)とを酸触媒下で反応させる、2段階の反応(ステップワイズ法)によりノボラック型フェノール樹脂(B)を得ることができる。
具体的には、フェノール化合物(c2)としてパラクレゾールとホルムアルデヒド(c3)とを水溶中、水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒下、反応温度40~50℃で3~6時間反応させて、パラクレゾールのフェノール性水酸基に対する2つのオルト位にメチロール基を有するジメチロール体を得て、次いで得られたパラクレゾールのジメチロール体とナフトール化合物(c1)としてα-ナフトールとを無溶媒又は水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶媒中、蓚酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸又はリン酸などの酸触媒下、反応温度40~85℃で2~15時間反応させる。後処理として水洗し、その後、減圧下、200℃以下で減圧蒸留することにより、未反応原料を除去して、ノボラック型フェノール樹脂(B)を得ることができる。
【0100】
〔フォトレジスト用フェノール樹脂組成物〕
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物は、前記一般式(1)で示されるノボラック型フェノール樹脂(A)と、アリーレン骨格及びナフタレン骨格のうち少なくとも一つを構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(B)とをポリマーブレンド(混合)して得られる。
【0101】
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物は、ノボラック型フェノール樹脂(A)とノボラック型フェノール樹脂(B)とのポリマーブレンドにより得られるが、その比率は、ノボラック型フェノール樹脂(A)とノボラック型フェノール樹脂(B)との合計の質量を100としたとき、ノボラック型フェノール樹脂(A)とノボラック型フェノール樹脂(B)との質量比が5~95:95~5であり、好ましくは、10~90:90~10、より好ましくは30~90:70~10、さらに好ましくは50~90:50~10、特に好ましくは60~80:40~20である。
ノボラック型フェノール樹脂(B)が、前記式(5)又は(5’)の構造を有する場合には、ノボラック型フェノール樹脂(A)とノボラック型フェノール樹脂(B)との質量比が60~80:40~20であることが特に好ましく、60~70:40~30であることが最も好ましい。
また、ノボラック型フェノール樹脂(B)が、前記式(6)又は(6’)の構造を有する場合には、ノボラック型フェノール樹脂(A)とノボラック型フェノール樹脂(B)との質量比が60~90:40~10であることが特に好ましく、60~80:40~20であることが最も好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂(B)が占める割合が、5質量%未満であると、フォトレジスト組成物としたときのエッチング耐性や密着性の効果が小さくなり、一方、95質量%を越えると、フォトレジスト組成物としたときの感度が高すぎたり耐熱性に劣る場合があり、取り扱い上好ましくない。
【0102】
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定されるポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は、フォトレジスト組成物としたときの性能から、300~10000が好ましく、2000~8000がより好ましく、3000~7000がさらに好ましく、4500~6500が特に好ましい。重量平均分子量が300より小さい場合は、感度が高すぎたり耐熱性に劣る場合があり、10000より大きい場合は、感度が低い場合がある。
【0103】
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物のアルカリ溶解速度(DR)は、フォトレジスト組成物としたときの感度、残膜率、解像度の観点からは、好ましくは50~2000オングストローム/秒であり、より好ましくは100~1500オングストローム/秒である。アルカリ溶解速度が速すぎても、遅すぎてもフォトレジスト組成物としたとき取り扱い性が悪くなる傾向にある。なお、本明細書におけるアルカリ溶解速度は、後述する実施例において記載した方法で測定したアルカリ溶解速度である。
【0104】
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物の軟化点(SP)は、耐熱性とハンドリングの観点からは、110~200℃であることが好ましく、130~180℃であることがより好ましい。
【0105】
〔フォトレジスト用フェノール樹脂組成物の製造方法〕
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物の製造方法において、ポリマーブレンド(混合)の方法としては、ノボラック型フェノール樹脂(A)とノボラック型フェノール樹脂(B)とを均一に混合できる方法であれば特に限定されない。例えば、ノボラック型フェノール樹脂(A)とノボラック型フェノール樹脂(B)とを溶融混合して得ることができる。
具体的には、一つの製造方法として、あらかじめ合成釜でノボラック型フェノール樹脂(A)を合成して、その中にノボラック型フェノール樹脂(B)を添加して溶融混合した後に後処理を行って、本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を製造することが可能である。場合によっては、あらかじめ合成釜でノボラック型フェノール樹脂(B)を合成して、その中にノボラック型フェノール樹脂(A)を添加して溶融混合した後に処理することで本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を得ることもできる。
また、フォトレジスト組成物を製造する際に、上記各々のノボラック型フェノール樹脂及び後述するその他の添加剤を適当な溶剤に溶解してフォトレジスト組成物として得ることもできる。
【0106】
〔フォトレジスト組成物〕
本発明のフォトレジスト組成物は、本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物とさらに感光剤(E)とを含有する。
【0107】
感光剤(E)としては、ノボラック型フェノール樹脂を含むフォトレジストの感光剤として公知のものを使用できる。感光剤(E)としては、キノンジアジド基を有するキノンジアジド化合物が好ましく、特に、1,2-キノンジアジド化合物又はその誘導体が好ましい。
【0108】
キノンジアジド化合物を用いることで、露光した部分は溶解促進効果によりアルカリ溶解速度が大きくなり、逆に露光しない部分は溶解抑制効果によりアルカリ溶解速度が小さくなり、この露光部と未露光部の溶解速度の差によって、コントラストの高い、シャープなレジストパターンを得ることができる。
【0109】
キノンジアジド化合物としては、従来、キノンジアジド-ノボラック系レジストで用いられている公知の化合物を用いることができる。このようなキノンジアジド基を含む化合物としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドなどと、これらの酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する化合物とを反応させることによって得られた化合物が好ましい。ここで、酸クロライドと縮合反応可能な官能基としては、水酸基、アミノ基などが挙げられるが、特に水酸基が好適である。酸クロライドと縮合反応可能な水酸基を有する化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノンなどのヒドロキシベンゾフェノン類、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパンなどのヒドロキシフェニルアルカン類、4,4’,3”,4”-テトラヒドロキシ-3,5,3’,5’-テトラメチルトリフェニルメタン、4,4’,2”,3”,4”-ペンタヒドロキシ-3,5,3’,5’-テトラメチルトリフェニルメタンなどのヒドロキシトリフェニルメタン類などを挙げることができる。これらの化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
また、酸クロライドであるナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドの具体例としては、例えば、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルフォニルクロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルフォニルクロライドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0111】
感光剤(E)の配合量は、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、より好ましくは10~40質量部である。感光剤(B)の配合量が5質量部よりも少ないと、感光性樹脂組成物として十分な感度が得られない場合があり、また、50質量部よりも多いと、成分の析出の問題が起こる場合がある。
【0112】
本発明のフォトレジスト組成物は、上記の感光剤(E)の他に、フォトレジスト組成物の慣用成分である、酸化防止剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤、溶解阻害剤などを適宜添加することができる。
【0113】
本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物及びそれを使用した本発明のフォトレジスト組成物は、高集積半導体を製造する際のリソグラフィーや液晶用の薄膜フィルムトランジスター(TFT)材料に好適に使用できる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0115】
[1]ノボラック型フェノール樹脂(A)、ノボラック型フェノール樹脂(B)
ノボラック型フェノール樹脂の分析方法や評価方法は、次の通りである。
【0116】
(1)重量平均分子量(Mw)
以下の条件でGPC測定を行い、ポリスチレン換算による重量平均分子量を求めた。
型式:Waters e2695 Waters(株)製
カラム:Shodex製 LF-804 1本
測定条件:カラム圧力 2.7MPa
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
フローレート:1mL/min
温度:40℃
検出器:UV-Visible Detector 2489
WAVE LENGTH:254nm
インジェクション量:100μmL
試料濃度:5mg/mL
【0117】
(2)アルカリ溶解速度(DR)
ノボラック型フェノール樹脂3gをPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)9gに溶解し、樹脂溶液を調合した。これらを0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過した。これを4インチシリコンウェハー上に約1.5μmの厚みになるようにスピンコーターで塗布し、110℃で60秒間ホットプレート上で乾燥させた。次いで現像液(1.60%テトラメチルアンモニウムヒドロオキシド水溶液)を用い、完全に膜が消失するまでの時間を計測した。初期膜厚を溶解するまでの時間で割った値を溶解速度とした。
【0118】
(3)軟化点(SP)
JIS K6910に基づく環球法軟化点測定によって行った。
【0119】
(4)水酸基当量
JIS K0070に準じた水酸基当量測定によって行った。
【0120】
[ノボラック型フェノール樹脂(A)]
〔合成例A1〕ノボラック型フェノール樹脂(A1)
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにm-クレゾール75.8g(0.70モル)、p-クレゾール113.8g(1.05モル)、42%ホルマリン77.71g(1.09モル)、及び蓚酸0.7gを入れ、100℃で5時間反応させた後180℃まで昇温して脱水した。その後、30torrで2時間減圧蒸留を行って未反応原料などを除去し、メタ-パラクレゾールノボラック型フェノール樹脂(A1)142gを得た。
得られたメタ-パラクレゾールノボラック型フェノール樹脂(A1)の重量平均分子量は5900であり、アルカリ溶解速度は330オングストローム/秒、軟化点は142℃、水酸基当量は128g/eqであった。
【0121】
〔合成例A2〕ノボラック型フェノール樹脂(A2)
42%ホルマリンを75.25g(1.05モル)に変更した以外は、合成例A1と同様に操作して、メタ-パラクレゾールノボラック型フェノール樹脂(A2)を得た。(A2)の重量平均分子量は5000であり、アルカリ溶解速度は480オングストローム/秒、軟化点は140℃、水酸基当量は127g/eqであった。
【0122】
〔合成例A3〕ノボラック型フェノール樹脂(A3)
42%ホルマリンを83.97g(1.18モル)に変更した以外は、合成例A1と同様に操作して、メタ-パラクレゾールノボラック型フェノール樹脂(A3)を得た。(A3)の重量平均分子量は12000であり、アルカリ溶解速度は100オングストローム/秒、軟化点は158℃、水酸基当量は125g/eqであった。
【0123】
〔合成例A4〕ノボラック型フェノール樹脂(A4)
合成例A1で得られたメタ-パラクレゾールノボラック型フェノール樹脂A1を水蒸気蒸留によりダイマー成分(n=0)を低減させた。
得られたメタ-パラクレゾールノボラック型フェノール樹脂(A4)の重量平均分子量は6300であり、アルカリ溶解速度は310オングストローム/秒、軟化点は155℃、水酸基当量は130g/eqであった。
【0124】
〔合成例A5〕ノボラック型フェノール樹脂(A5)
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにm-クレゾール80.0g(0.74モル)、p-クレゾール80.0g(0.74モル)、42%ホルマリン70.9g(0.99モル)、及び蓚酸0.6gを入れ、100℃で5時間反応させた後180℃まで昇温して脱水した。その後、30torrで2時間減圧蒸留を行って未反応原料などを除去し、ノボラック型フェノール樹脂(A5)144gを得た。
得られたメタ-パラクレゾールノボラック型フェノール樹脂(A5)の重量平均分子量は12000であり、アルカリ溶解速度は170オングストローム/秒、軟化点は162℃、水酸基当量は123g/eqであった。
【0125】
〔合成例A6〕ノボラック型フェノール樹脂(A6)
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにm-クレゾール94.7g(0.88モル)、p-クレゾール142.1g(1.32モル)、о-クレゾール26.32g(0.24モル)、42%ホルマリン116.6g(1.63モル)、及び蓚酸0.92gを入れ、100℃で10時間反応させた後180℃まで昇温して脱水した。その後、30torrで2時間減圧蒸留を行って未反応原料などを除去し、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(A6)172gを得た。
得られたノボラック型クレゾール樹脂(A6)の重量平均分子量は6200であり、アルカリ溶解速度は313オングストローム/秒、軟化点は141℃であった。
【0126】
〔合成例A7〕ノボラック型フェノール樹脂(A7)
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコにm-クレゾール31.6g(0.29モル)、p-クレゾール126.5g(1.17モル)、レゾルシン17.9g(0.16モル)、42%ホルマリン69.74g(0.98モル)、及び蓚酸1.8gを入れ、100℃で5時間反応させた後180℃まで昇温して脱水した。その後、30torrで2時間減圧蒸留を行って未反応原料などを除去し、ノボラック型フェノール樹脂(A7)141gを得た。
得られたノボラック型クレゾール樹脂(A7)の重量平均分子量は9000であり、アルカリ溶解速度は668オングストローム/秒、軟化点は153℃であった。
【0127】
[ノボラック型フェノール樹脂(B)]
ノボラック型フェノール樹脂(B1)
下記一般式(14)で示される、アリーレン骨格としてベンゼン環を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(重量平均分子量:1200、アルカリ溶解速度:4861オングストローム/秒、軟化点:65℃、水酸基当量:175g/eq)である。
【0128】
【化21】
(一般式(14)中、αは、0以上の整数を表す。)
【0129】
ノボラック型フェノール樹脂(B2)
前記一般式(14)で示される、アリーレン骨格としてベンゼン環を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(重量平均分子量:4500、アルカリ溶解速度:63オングストローム/秒、軟化点:86℃、水酸基当量:178g/eq)である。
【0130】
ノボラック型フェノール樹脂(B3)
下記一般式(15)で示される、アリーレン骨格としてビフェニル環を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(重量平均分子量:1070、アルカリ溶解速度:828オングストローム/秒、軟化点:66℃、水酸基当量:203g/eq)である。
【0131】
【化22】
(一般式(15)中、βは、0以上の整数を表す。)
【0132】
ノボラック型フェノール樹脂(B4)
前記一般式(15)で示される、アリーレン骨格としてビフェニル環を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(重量平均分子量:1400、アルカリ溶解速度:95オングストローム/秒、軟化点:73℃、水酸基当量:206g/eq)である。
【0133】
ノボラック型フェノール樹脂(B5)
下記一般式(16)で示される、アリーレン骨格としてナフタレン骨格を構造中に含むノボラック型フェノール樹脂(重量平均分子量:730、アルカリ溶解速度:5768オングストローム/秒、軟化点:114、水酸基当量:143g/eq)である。
【0134】
【化23】
(一般式(16)中、γは、0以上の整数を表す。)
【0135】
表1に、ノボラック型フェノール樹脂(A)及びノボラック型フェノール樹脂(B)についてまとめたものを示す。
【0136】
【0137】
[2]フォトレジスト用フェノール樹脂組成物、フォトレジスト組成物
次に、本発明のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物及びそれを用いたフォトレジスト組成物の実施例を示す。
なお、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物及びフォトレジスト組成物の分析方法や評価方法は次の通りである。
【0138】
<フォトレジスト用フェノール樹脂組成物>
(1)重量平均分子量(Mw)、(2)アルカリ溶解速度(DR)、及び(3)軟化点(SP)について、前記ノボラック型フェノール樹脂の分析方法や評価方法と同じ方法により行った。
【0139】
<フォトレジスト組成物>
(1)感度、残膜率、解像度
フォトレジスト組成物を4インチシリコンウェハー上にスピンコーターで塗布し、110℃、60秒間ホットプレート上で乾燥させて、厚みが15000Åの塗膜を形成した。その後、縮小投影露光装置を用い、露光時間を段階的に変えて最適な露光量を確認したうえで、最適な露光量になるように露光した。次いで現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、60秒間現像し、リンス、乾燥を行った。
【0140】
感度
感度は、走査型電子顕微鏡により、得たれたパターンのパターン形状を観察することにより、以下の基準で評価を行った。
AA:3mJ/cm2未満で画像が形成できる。
A:5mJ/cm2未満で画像が形成できる。
B:5~60mJ/cm2で画像が形成できる。
【0141】
残膜率
未露光部の残膜厚から残膜率を求めた。残膜率とは、現像後の感光性樹脂の膜厚と現像前の感光性樹脂の膜厚の比であり、下記式により表される値である。
残膜率(%)=(現像後の感光性樹脂の膜厚/現像前の感光性樹脂の膜厚)×100
【0142】
解像度
解像度は、テストチャートマスクを用い、下記基準で評価した。
◎:1.5μライン&スペースが解像できる。
○:2.0μライン&スペースが解像できる。
×:2.0μライン&スペースが解像できない。
【0143】
(2)耐ドライエッチング性
ポジ型パターンの得られたレジスト膜に対して、エッチングガスとしてCF4を用い、0.7sccm、80Wのエッチング条件で、エッチング装置を用いて、ドライエッチングを行い、エッチング前後の膜厚を測定してレジストパターンのエッチングレートを求めた。結果をフォトレジスト用フェノール樹脂組成物として、ノボラック型フェノール樹脂(A)のみを用いた場合のエッチングレートと比較した。
フォトレジスト用ノボラック型フェノール樹脂組成物のエッチングレートとフォトレジスト用ノボラック型フェノール樹脂組成物に使用したノボラック型フェノール樹脂(A)のみの場合のエッチングレートとの比([フォトレジスト用ノボラック型フェノール樹脂
のエッチングレート]/[ノボラック型フェノール樹脂(A)のみの場合のエッチングレート])を、下記基準で評価した。
◎:0.75未満の場合
○:0.75以上~0.90以下の場合
×:0.90を超える場合
【0144】
〔実施例1〕
合成例A2で得られたノボラック型フェノール樹脂(A2)と合成例B1で得られたノボラック型フェノール樹脂(B1)とを溶融混合してフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を調製した。具体的には、温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量500mLのガラス製フラスコに、ノボラック型フェノール樹脂(A2)70gとノボラック型フェノール樹脂(B1)30gとを下記表2に示す配合で混合し、185℃の温度条件下で溶融混合してフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を調製した。
得られたフォトレジスト用フェノール樹脂組成物の重量平均分子量は3300であり、アルカリ溶解速度は1210オングストローム/秒であり、軟化点は139℃であった。
このフォトレジスト用フェノール樹脂組成物について特性の評価を行った結果を表2に示した。
【0145】
次に、得られたフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を用いてフォトレジスト組成物を調製した。具体的には、フォトレジスト用フェノール樹脂組成物20gと、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルフォニルクロライド5gとを、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)75gに溶解し、これを0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過して、フォトレジスト組成物を得た。
このフォトレジスト組成物について特性の評価を行った結果を表2に示した。
【0146】
〔実施例2~10、比較例1~12〕
合成例で得られたノボラック型フェノール樹脂(A1)~(A7)とノボラック型フェノール樹脂(B1)~(B5)とを下記表2に示す配合により、実施例1と同様の方法により溶融混合してフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を得た。
得られたフォトレジスト用フェノール樹脂組成物について特性の評価を行った結果を表2に示した。
次に、得られたフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を用いて実施例1と同様の方法によりフォトレジスト組成物を得た。
得られたフォトレジスト組成物について特性の評価を行った結果を表2に示した。
【0147】
【0148】
表2に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたフォトレジスト組成物は、高感度、高残膜率、高解像度などの高現像性を有し、さらにエッチング耐性に優れることがわかる。
例えば、実施例2と比較例3との比較から、実施例2のフォトレジスト用フェノール樹脂組成物を用いたレジスト組成物は、比較例3のノボラック型フェノール樹脂A3を単独で用いた場合と比較して、耐ドライエッチング性が向上していることがわかる。
また、実施例2と比較例8との比較から、実施例2のレジスト組成物は、比較例8のものと比較して残膜率が向上していることがわかる。
また、実施例2と比較例3及び比較例8との比較から、実施例2のレジスト組成物の解像度は、比較例3の解像度が○で比較例8の解像度が×にもかかわらず、実施例2の解像度が◎と向上していることがわかる。