(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】モータ及び電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2019541949
(86)(22)【出願日】2018-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2018029460
(87)【国際公開番号】W WO2019054090
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2017178252
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木津 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】高津 良輔
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】久田 貴広
(72)【発明者】
【氏名】小山 崇宣
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-187561(JP,U)
【文献】実開平06-066263(JP,U)
【文献】特開2013-115935(JP,A)
【文献】特開2016-214034(JP,A)
【文献】特開平09-140081(JP,A)
【文献】特開平09-266651(JP,A)
【文献】特開2014-088871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能であるロータと、
前記ロータと径方向に対向するステータと、
一以上の貫通孔を有し、前記ロータ及び前記ステータの少なくとも一部を覆う筐体と、
前記筐体の貫通孔内に保持されるブッシュと、
前記ステータに接続され、前記ブッシュに保持される導通部材と、
を備え、
前記ブッシュは、
第1端面と、第1方向に前記第1端面と対向する第2端面と、前記第1端面及び前記第2端面間の側面と、を有する本体部と、
前記本体部の内部を前記第1方向に貫通し、前記導通部材を通す挿入孔と、
前記側面から、前記第1方向に対して直交する方向に突出する第1突出部と、
前記第1方向において前記第1突出部と異なる位置において、前記側面から、前記第1方向に対して直交する方向に突出する第2突出部と、を有し、
前記第1方向から見た平面において、前記第1突出部と第2突出部の位置は異な
り、
前記筐体の貫通孔は、前記第1方向から見て長方形であり、
前記筐体は、前記貫通孔の長手方向両端から内側に向かって突出し、前記第2突出部と接触、又は、前記第1方向において前記第2突出部と対向する突部を有し、
前記突部は、前記第1方向に直交し、前記貫通孔の下側開口を形成する垂直面に直交する下面を有し、
前記垂直面の前記第1方向の長さは、前記第2突出部の前記第1方向の長さ以上である、
モータ。
【請求項2】
前記第1突出部は、前記第2突出部と異なる方向に突出する、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記本体部の側面は、前記第1方向に直交する第2方向において互いに対向する第1側面と、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において互いに対向する第2側面と、を有し、
前記第3方向は、前記本体部の長手方向であって、
前記第1突出部は、前記第1側面から前記第2方向に突出して前記第3方向に沿って延び、
前記第2突出部は、前記第2側面から前記第3方向に突出する
請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ブッシュは、複数の前記挿入孔を有し、
前記複数の挿入孔は、前記第3方向に並んで配置される、
請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記第1方向は前記モータの中心軸に沿った方向である、
請求項1から4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
前記ブッシュは弾性部材である、
請求項1から5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記第2突出部は、前記側面から外側に突出し、突出した先端から前記第1端面又は前記第2端面に向かって傾斜する突出傾斜面を有する、
請求項1から6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記筐体の貫通孔は、前記貫通孔の長方形の角部において、貫通孔の幅が広がる膨大部を有する。
請求項1から7のいずれかに記載のモータ。
【請求項9】
前記導通部材は、板状のバスバーであり、
前記ブッシュの挿入孔は、前記第1方向からみて長方形であり、前記バスバーを保持する挿入孔であり、
前記バスバーの幅方向は、前記挿入孔の長手方向に一致する、
請求項1から8のいずれかに記載のモータ。
【請求項10】
前記ブッシュの本体部は、前記第1端面もしくは前記第2端面から挿入孔に向かって傾斜する挿入孔傾斜面を有し、
前記挿入孔傾斜面は、前記挿入孔の内周面と前記第1端面との縁の全ての領域、又は、前記挿入孔の内周面と前記第2端面との縁の全ての領域に位置する、
請求項1から9のいずれかに記載のモータ。
【請求項11】
前記筐体の貫通孔は、前記第1方向から見て長方形であり、
前記筐体は、前記貫通孔の第1端面側開口に形成され、前記第1突出部と接触、または、前記第1方向において前記第1突出部と対向する凹部を有する、
請求項1から10のいずれかに記載のモータ。
【請求項12】
前記筐体は、ハウジング又はベアリングホルダである、
請求項1から11のいずれかに記載のモータ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載のモータを備える、電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングにコイル線を固定するため、絶縁ゴム製のブッシュを用いるモータが知られている。例えば、特許文献1において、ブッシュは、上端にフランジ、下端にリブを有する。ブッシュは、フランジとリブの間にモータの壁部の挿通孔の周縁部を嵌合させることによって、モータの壁部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のブッシュは、上端及び下端において、同じ方向に突出するフランジとリブを有する。このため、ブッシュの成形時に上下金型を抜く際、ブッシュにクラックが生じやすくなる等、ブッシュの成形が難しかった。一方、成形されたブッシュはモータの筐体にしっかりと固定できる形状であることが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、成形が簡単でありながら、筐体から抜けにくい形状を有するブッシュを備えるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な一実施形態のモータは、ロータと、ステータと、筐体と、ブッシュと、導通部材とを備える。ロータは、中心軸を中心として回転可能である。ステータは、ロータと径方向に対向する。筐体は、一以上の貫通孔を有し、ロータ及びステータの少なくとも一部を覆う。ブッシュは、筐体の貫通孔内に保持される。導通部材は、ステータに接続され、ブッシュに保持される。ブッシュは、本体部と、挿入孔と、第1突出部と、第2突出部とを有する。本体部は、第1端面と、第1方向に第1端面と対向する第2端面と、第1端面及び第2端面間の側面とを有する。挿入孔は、本体部の内部を第1方向に貫通し、導通部材を通す。第1突出部は、側面から、第1方向に対して直交する方向に突出する。第2突出部は、第1方向において第1突出部と異なる位置において、側面から、第1方向に対して直交する方向に突出する。第1方向から見た平面において、第1突出部と第2突出部の位置は異なる。
本願の例示的な一実施形態の電動パワーステアリング装置は、上述のモータを備える。
【発明の効果】
【0007】
本願の一実施形態に係るモータにおいて、導通部材を保持するブッシュは、クラックが生じにくく、成形が簡単になる。この結果、ブッシュは、筐体から抜けることを防止しつつ、製造コストを抑制することができる。また、本願の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置は、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータを示す断面図である。
【
図5】
図5は、ベアリングホルダの一部の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のベアリングホルダの一部を下方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、ベアリングホルダ及びブッシュの部分断面図である。
【
図8】
図8は、ベアリングホルダ及びブッシュの部分断面図である。
【
図9B】
図9Bは、他の変形例にかかるブッシュの側面図である。
【
図10】
図10は、更に他の変形例に係るブッシュの斜視図である。
【
図11】
図11は、更に他の変形例に係るブッシュの斜視図である。
【
図12】
図12は、更に他の変形例に係るブッシュの斜視図である。
【
図13】
図13は、他の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
以下の説明において、モータの中心軸をCとする。中心軸Cが延びる方向を軸方向とする。また、軸方向に沿った一方を上側、他方を下側とする。ただし、本明細書における上下方向は、位置関係を特定するために用い、実際の方向や位置関係を限定しない。重力方向は必ずしも下方向ではない。また、本明細書では、モータの回転軸に直交する方向は「径方向」と呼ぶ。モータの回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と呼ぶ。
【0011】
また、本明細書において「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向に延びる状態と、軸方向に対して45度未満の範囲で傾いた方向に延びる状態とを含む。同様に、本明細書において「径方向に延びる」とは、厳密に径方向に延びる状態と、径方向に対して45度未満の範囲で傾いた方向に延びる状態とを含む。
【0012】
本明細書において「対向する」とは、必ずしも面同士が平行に向かい合っていなくてもよい。
【0013】
「直交する」とは、厳密に直交していることを必要とするものではなく、略直交すること、及び平行ではない、つまり交差する意味も含む。
【0014】
「挿入孔」は、周縁を完全に囲った形状に限定されず、周縁の一部が開いている溝状のものを含む。
【0015】
以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法及び比率は実際のものと必ずしも同じではない。
【0016】
(実施形態)
図1及び
図2に示すように、モータ1は、ハウジング20、ロータ30、上側ベアリング71、下側ベアリング72、ステータ40、バスバー60、ブッシュ10、及びベアリングホルダ50、を備える。
【0017】
ハウジング20は、中心軸Cを中心とする有底の円筒形状を有する。ハウジング20は、軸方向に延びる筒部21と、筒部21の下端に位置する底部23と、上側に開口する開口部24とを有する。ハウジング20には、下側から順に、ステータ40と、ベアリングホルダ50とが固定される。ハウジング20はまた、ロータ30を内部に収容する。
【0018】
なお、ハウジング20の形状は、円筒状に限られない。ハウジング20の形状は、内周面にステータ40とベアリングホルダ50を保持可能な範囲で変更することができる。また、ハウジング20の断面は、例えば多角形などであってもよい。また、ハウジング20は、有底ではなく、筒状であってもよい。
【0019】
ロータ30は、中心軸Cに沿って延びるシャフト31を有する。ロータ30は、シャフト31とともに中心軸C周りに回転する。
【0020】
上側ベアリング71及び下側ベアリング72は、シャフト31を、中心軸C周りに回転可能に支持する。上側ベアリング71は、後述するベアリングホルダ50に支持される。下側ベアリング72は、ハウジング20の底部23に保持される。
【0021】
ステータ40は、ロータ30の径方向外側にロータ30に対向して配置される。ステータ40は、ステータコア41と、インシュレータ42と、コイル線43と、を有する。インシュレータ42は、ステータコア41のティース(不図示)に取り付けられる。コイル線43は、導線により構成され、インシュレータ42を介在させてティースに巻かれる。ステータ40の外周面は、ハウジング20の内周面に固定される。
【0022】
ステータ40に巻かれたコイル線43からステータ40の上方に引き出された導線は、バスバー60に接続される。
【0023】
バスバー60は、板状の導通部材である。バスバー60は、コイル線43と、外部接続端子や制御基板とを電気的に接続する。バスバー60は、後述するブッシュ10に保持される。
【0024】
なお、本実施形態においては、ブッシュ10に保持される導通部材の例としてバスバー60を挙げているが、これに限定されない。コイル線43から引き出されたコイル引出線やハウジング20内に収容される制御基板から延びる導線等であってもよい。
【0025】
図3及び
図4に示すように、ブッシュ10は、本体部11と、挿入孔12と、フランジ13と、リブ14と、を有する。
【0026】
本実施形態において、本体部11は、略直方体である。本体部11は、第1端面11aと、第2端面11bと、一対の第1側面11cと、一対の第2側面11dとを有する。第2端面11bは、第1方向D1に第1端面11aと対向する。一対の第1側面11cは、第1方向D1に直交する第2方向D2において互いに対向する。一対の第2側面11dは、第1方向D1及び第2方向D2に直交する第3方向D3において互いに対向する。
【0027】
本実施形態において、第1方向D1は、モータ1の軸方向に一致する。第2方向D2は、本体部11の短辺方向に相当し、モータ1の径方向に沿っている。第3方向D3は、本体部11の長手方向に相当し、モータ1の周方向に沿っている。また、モータ1において、ブッシュ10の第1端面11aは上側に位置し、第2端面11bは下側に位置する。
【0028】
本実施形態において、挿入孔12は、3つ設けられる。挿入孔12は、第3方向D3に並んで配置される。すなわち、挿入孔12は、ブッシュ10の長手方向に沿って配置されている。各挿入孔12は、第1方向D1から見て長方形である。挿入孔12は、本体部11の内部を第1方向D1に貫通する。本実施形態において、挿入孔12は、バスバー60を通す。バスバー60の幅方向は、各挿入孔12の長手方向に一致する。なお、バスバー60の幅方向は、バスバー60の長方形横断面の長手方向である。挿入孔12の長手方向は、第1方向D1から見たとき長方形である挿入孔12の長手方向である。すなわち、導通部材は、板状のバスバーである。ブッシュの挿入孔は、第1方向からみて長方形であり、バスバーを保持する挿入孔である。バスバーの幅方向は、挿入孔の長手方向に一致する。
【0029】
フランジ13は、第1突出部の一例であり、
図3に示すように、第3方向D3に沿って延びる。フランジ13は、第1側面11cから第2方向D2に沿ってそれぞれ外側に突出する。フランジ13は、
図4に示すように、第1方向D1に沿った垂直面13aと、垂直面13aに略直交する下面13bを有する。
【0030】
リブ14は、第2突出部の一例であり、
図3に示すように、第2側面11dから第3方向D3に外側に突出する。つまり、リブはフランジとは異なる方向に突出する。リブ14は、第1方向D1から見てフランジ13とは異なる位置から突出する。リブ14は、
図3及び
図4に示すように、第2側面11dに対し略直交して突出する上面14aと、上面14aの先端から第2端面11bに向かって傾斜する突出傾斜面14bを有する。すなわち、第2突出部は、側面から外側に突出し、突出した先端から第1端面又は第2端面に向かって傾斜する突出傾斜面を有する。
【0031】
ブッシュ10はさらに、
図3及び
図4に示すように、挿入孔傾斜面12a、12bを有する。挿入孔傾斜面12aは、第1端面11aから挿入孔12の中心に向かって傾斜する。挿入孔傾斜面12bは、第2端面11bから挿入孔12の中心に向かって傾斜する。挿入孔傾斜面12aは、挿入孔12の内周面と第1端面11aとの縁の全ての領域に位置する。挿入孔傾斜面12bは、挿入孔12の内周面と第2端面11bとの縁の全ての領域に位置する。挿入孔12の開口周囲に挿入孔傾斜面12a及び挿入孔傾斜面12bが設けられていることにより、ブッシュ10の成形時にブッシュ10を金型から抜きやすくなる。また、第2端面11b側に挿入孔傾斜面12bが形成されることにより、第2端面11b側からブッシュ10の挿入孔12にバスバー60を通しやすくなる。すなわち、ブッシュの本体部は、第1端面もしくは第2端面から挿入孔に向かって傾斜する挿入孔傾斜面を有する。挿入孔傾斜面は、挿入孔の内周面と第1端面との縁の全ての領域、又は、挿入孔の内周面と第2端面との縁の全ての領域に位置する。
【0032】
ブッシュ10は、ゴムやウレタン樹脂等のエラストマー、或いはプラスチック等からなる弾性部材により形成される。ブッシュ10が弾性変形することにより、モータ1への取り付けが容易になる。ブッシュ10は、絶縁性材料により形成される。ベアリングホルダ50が金属製である場合、ブッシュ10は、ベアリングホルダ50に対してバスバー60を確実に絶縁させることができる。
【0033】
挿入孔12は、
図9Aの断面図において示すように、第1端面11aから第2端面11bにかけて拡がるテーパ形状であってもよい。これにより、第2端面11b側から挿入されるバスバー60の挿入が容易になる。
【0034】
リブ14は、
図9Bに示すように、第2側面11dから突出した上面が第1端面11aに向かって傾斜する突出傾斜面14cに形成されていてもよい。
【0035】
ベアリングホルダ50は、筐体の一例であり、
図1及び
図2に示すように、ステータ40の上側に配置される。ベアリングホルダ50は、上側から見て略円板形状であり、中心軸Cの周囲に開口部55を有する。開口部55は、シャフト31が貫通する孔である。ベアリングホルダ50は、上側ベアリング71を支持する。
【0036】
ベアリングホルダ50は、ヒートシンクを兼ねる板部材であってもよい。また、ベアリングホルダ50は、ハウジング20の内周面に固定できる形状であれば、略四角形状等であってもよい。なお、ベアリングホルダはハウジングの内周面に固定されていなくてもよい。
【0037】
図5及び
図6に示すように、ベアリングホルダ50は、モータ1の周方向に沿って延びる貫通孔51を有する。貫通孔51は、モータ1の軸方向に延び、上面50aと下面50bに開口する孔である。ベアリングホルダ50は、貫通孔51の周囲において上述したブッシュ10を保持する形状を有する。貫通孔51は、軸方向から見て長方形である。
【0038】
ベアリングホルダ50は、貫通孔51の周囲において突部53を有する。突部53は、貫通孔51の長手方向両端から内側に向かって突出する。突部53は、
図8に示すように、軸方向に対し略直交する下面53aを有する。下面53aは、貫通孔51の下側開口を形成する垂直面53bに直交する。垂直面53bの軸方向の長さは、リブ14の上面14aから第2端面11bまでの長さと等しい。或いは、垂直面53bの軸方向の長さは、リブ14の上面14aから第2端面11bまでの長さよりも少し長い。
【0039】
ブッシュ10がベアリングホルダ50の貫通孔51に挿入されるとき、ブッシュ10は弾性部材であるため、リブ14は突部53に接触して変形しながら貫通孔51を通過する。そして、リブ14が突部53の下方まで到達すると、リブ14は弾性回復し、
図8に示すように、リブ14の上面14aと突部53の下面53aとが対向する。なお、上面14aは下面53aと接触しなくてもよく、対向するだけでもよい。すなわち、筐体の貫通孔は、第1方向から見て長方形である。筐体は、貫通孔の長手方向両端から内側に向かって突出し、第2突出部と接触、又は、第1方向において第2突出部と対向する突部を有する。
【0040】
突部53を設けることにより、ブッシュ10は、ベアリングホルダ50の下面50bよりも突出しない。よって、モータ全体の軸方向の長さを短くすることができる。また、ブッシュ10の下端部がモータ1の内部に突出することがないため、モータ1の内部の空間を広く活用することができる。
【0041】
ベアリングホルダ50は、貫通孔51の周囲において、上面50a側開口に形成された凹部54を有する。凹部54は、軸方向の垂直面54aと、垂直面54aに略直交する底面54bとを有する段部である。垂直面54aの軸方向の長さ、つまり凹部54の深さは、ブッシュ10のフランジ13の厚みと等しい。或いは、凹部54の深さは、ブッシュ10のフランジ13の厚みよりも少し深い。
【0042】
本実施形態において、凹部54は、フランジ13に対向する部分のみでなく、リブ14に対向する部分も含む。なお、凹部54は、フランジ13に対向する部分のみ段部が形成されていればよく、リブ14に対向する段部は形成されていなくてもよい。すなわち、筐体の貫通孔は、第1方向から見て長方形である。筐体は、貫通孔の第1端面側開口に形成され、第1突出部と接触、または、第1方向において第1突出部と対向する凹部を有する。
【0043】
図7に示すように、ブッシュ10がベアリングホルダ50の貫通孔51に挿入されると、フランジ13の下面13bと凹部54の底面54bとが接触する。なお、下面13bと底面54bとは、接触しなくてもよく、対向するだけもよい。このように凹部54を設けることにより、ブッシュ10は、ベアリングホルダ50の上面50aよりも突出しない。よって、モータ全体の軸方向の長さを短くすることができる。また、ブッシュ10の軸方向の上端部が外部に突出しないため、モータ1の上部を制御空間として広く利用することができる。
【0044】
なお、凹部54は、段部に代えて、斜面や曲面により形成されていてもよい。この場合、フランジ13の対向する部分も斜面や曲面に形成される。つまり、凹部54はフランジ13の少なくとも一部を収容する形状であればよい。
【0045】
貫通孔51は、
図5及び
図6に示すように、長方形の角部において、貫通孔51の幅が広がる膨大部52を有する。膨大部52は、貫通孔51の長手方向両側に弧状に広がった楕円形状を有する。すなわち、筐体の貫通孔は、第1方向から見て長方形であり、筐体の貫通孔は、貫通孔の長方形の角部において、貫通孔の幅が広がる膨大部を有する。この膨大部52が形成されていることにより、ブッシュ10は、貫通孔51に挿入されるとき、弾性変形して貫通孔51に挿入しやすくなる。
【0046】
なお、貫通孔51は、図示例では一つのみ形成されているが、これに限定されず、複数設けられていてもよい。この場合、複数の貫通孔51は、モータ1の周方向に沿って配置される。また、上側から見た貫通孔51の形状は、図示した形状に限定されず、後述するブッシュ10の形状に応じて、湾曲形状、円形、楕円形、台形、逆台形、その他多角形等の様々な形状をとることができる。
【0047】
上記実施形態に係るモータ1において、ベアリングホルダ50に保持されるブッシュ10は、第1方向D1から見た平面において、位置が異なるフランジ13とリブ14とを有する。すなわち、第1方向D1から見て、第1突出部と第2突出部は重ならない。また、言い換えると、第1方向D1における正射影において、第1突出部と第2突出部の位置は異なる。モータ1のブッシュ10は、フランジ13とリブ14が軸方向に重ならないため、製造時に、第一方向D1から見てブッシュ10の両側から金型を抜くことができる。具体的には、フランジ13を形成する治具は、第一方向D1の一方側から挿入され、リブ14を形成する治具は第一方向D1の他方側から挿入される。このように、フランジ13とリブ14を挿入する治具が、第一方向D1において異なる方向から抜くことができる。このため、ブッシュ10には、クラックが生じにくい。よって、ブッシュ10は、ベアリングホルダ50から抜けることを防止しつつ、製造コストを抑制することができる。
【0048】
また、ブッシュ10は、本体部11の長手方向がモータ1の周方向に沿うように配置され、本体部11の短辺方向がモータ1の径方向に沿うように配置される。このため、ブッシュ10に対して径方向内側の空間を広く確保することができる。よって、モータ1の径方向内側において、制御基板に実装するパワー素子が配される領域を広くとることができる。特に、ベアリングホルダ50をヒートシンクとして利用する場合、ヒートシンクの体積を大きくでき、空間を有効に利用することができる。また、制御基板のパワー素子をヒートシンクに近づけることができるため、放熱効果をより高めることができる。
【0049】
更に、ブッシュ10は、モータ1の周方向に沿って突出するリブ14を設けることにより、リブ14の弾性により、モータ1の周方向における位置調整がしやすくなる。このため、モータ1の周方向、つまりブッシュ10に挿入されるバスバー60の幅方向における位置調整がしやすくなる。ブッシュ10に挿入されたバスバー60は、リブ14の弾性により、モータ1の周方向、つまりバスバー60の幅方向の位置が調整可能となる。よって、モータ1の組み立てを容易にすることができる。
【0050】
また、ブッシュ10においては、バスバー60の位置を矯正しやすい方向と、リブ14の突出方向でありリブ14が変形しやすい方向とは異なる。具体的には、バスバー60はその厚み方向、つまりモータ1の径方向において位置が矯正しやすい。バスバー60の位置を矯正しやすい方向に応力がかかったとしても、ブッシュ10はリブ14により支持されている。このため、バスバー60にかかる応力により、リブ14は変形しにくい。よって、ブッシュ10がベアリングホルダ50から抜けることを抑えることができる。
【0051】
(変形例)
(1)ブッシュは、筐体の一例であるハウジング20の筒部21に取り付けてもよい。この場合、上記第1方向D1は、モータ1の径方向に一致し、ハウジング20の筒部21は、径方向に開いた貫通孔を有する。ブッシュに挿入された導通部材は、筒部21の径方向外側に引き出される。
【0052】
ブッシュ10は、ベアリングホルダ50やハウジング20の他にも取り付け可能である。ベアリングホルダ以外の仕切壁等、ロータ30及びステータ40の少なくとも一部を覆う筐体に対して、取り付けることができる。
【0053】
(2) ブッシュ10の形状は、例えば、次のような形状であってもよい。
【0054】
図10は、変形例に係るブッシュ210を示す。ブッシュ210は、本体部211が第1方向D1から見た形状が湾曲している点で、上記ブッシュ10と異なる。この場合、ブッシュ210の形状に合わせてベアリングホルダ50の貫通孔もモータ1の周方向に沿って湾曲して形成されることが好ましい。ブッシュ210及び貫通孔がモータ1の周方向に沿って湾曲していることにより、ブッシュ210に対して径方向内側の空間をより広く確保することができる。よって、モータ1の径方向内側において、制御基板に実装するパワー素子が配される領域を広くとることができる。特に、ベアリングホルダ50をヒートシンクとして利用する場合、ヒートシンクの体積を大きくする等、空間を有効に利用することができる。
【0055】
図11は、他の変形例に係るブッシュ310を示す。ブッシュ310は、本体部311が略円柱状である点で、上記ブッシュ10と異なる。本体部311は、第1端面311aと、第1端面311aと第1方向D1において対向する第2端面311bと、第1端面311aと第2端面311b間の側面311eと、挿入孔312とを有する。挿入孔312は、上記実施形態と同様に断面が長方形であってもよいが、図示例のようにコイル引出線を挿入可能なように断面が円形であってもよい。
【0056】
(3)
図12は、他の変形例に係るブッシュ410を示す。ブッシュ410は、本体部411が第2方向D2から見た形状が台形である点で、上記ブッシュ10と異なる。他の変形例におけるブッシュ410の第二端面411bは、第一端面411aよりも小さい。これにより、貫通孔51にブッシュ410を挿入しやすくすることができる。なお、ブッシュ410においても、
図9Aに示した例と同様に、挿入孔12は、第1端面411aから第2端面411bにかけて拡がるテーパ形状であってもよい。これにより、第2端面411b側から挿入されるバスバー60の挿入が容易になる。
【0057】
ブッシュ10は、その他の形状であってもよい。例えば、ブッシュ10の本体部11は、第1方向D1から見た断面が楕円形、台形、逆台形、その他多角形等であってもよい。
【0058】
第1突出部及び第2突出部は、フランジ13及びリブ14の形状に限定されない。第1突出部及び第2突出部は、第1方向D1から見て異なる位置から突出していればよい。また、第1突出部及び第2突出部は、同じ方向に突出していてもよい。
【0059】
(その他実施形態)
図13を参照して、モータ1を電動パワーステアリング装置2に搭載した例について説明する。
【0060】
電動パワーステアリング装置2は、自動車の車輪の操舵機構に搭載される。電動パワーステアリング装置2は、モータ1の動力により操舵力を直接的に軽減するコラム式の電動パワーステアリング装置である。電動パワーステアリング装置2は、モータ1と、操舵軸914と、車軸913と、を備える。
【0061】
操舵軸914は、ステアリング911からの入力を、車輪912を有する車軸913に伝える。モータ1の動力は、ボールねじを介して、車軸913に伝えられる。コラム式の電動パワーステアリング装置2に採用されるモータ1は、エンジンルーム(図示せず)の内部に設けられる。なお、
図13に示す電動パワーステアリング装置2は、コラム式であるが、ラック式であってもよい。
【0062】
電動パワーステアリング装置2は、モータ1を備える。このため、上記実施形態と同様の効果を奏する電動パワーステアリング装置2が得られる。
【0063】
なお、ここでは、モータ1の使用方法の一例として電動パワーステアリング装置2を挙げたが、モータ1の使用方法は限定されず、ポンプ、コンプレッサなど広範囲に使用可能である。
【0064】
上述した実施形態及び変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。