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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220928BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019561088
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2018046438
(87)【国際公開番号】W WO2019124331
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2017245505
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元一郎
(72)【発明者】
【氏名】山谷 修一
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144847(JP,A)
【文献】特開2016-218163(JP,A)
【文献】特開2006-248323(JP,A)
【文献】特開2010-230976(JP,A)
【文献】特開2013-106017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を出射する表示部と、前記表示部からの前記表示光を投射部材に反射させるミラーユニットと、を備えるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記ミラーユニットは、
前記表示光を反射する鏡面を含む凹面鏡と、
前記凹面鏡を保持する本体部、前記本体部の両側から回転軸に沿って延びる一対の回転軸部、及び前記本体部から前記回転軸に交わる方向に延びる被保持部を含む凹面鏡ホルダと、
前記被保持部を前記回転軸に直交する方向から挟み込む保持凹部を含み、前記回転軸に直交する方向に沿って前記保持凹部を移動させることにより前記凹面鏡ホルダを前記凹面鏡とともに前記回転軸を中心に回転させるミラー駆動ユニットと、
前記一対の回転軸部の何れかに挿通されるコイル部、及び前記コイル部から延び前記被保持部を前記保持凹部に接触させるように前記凹面鏡ホルダを付勢する付勢部を含むトーションスプリングと、
前記凹面鏡ホルダに設けられる前記凹面鏡に接触する接触部と、を備え、
前記接触部は、前記付勢部が前記凹面鏡ホルダに付勢することにより前記凹面鏡ホルダにおいて変位が発生する可能性がある変位発生領域を除く領域に設けられる、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記付勢部は、前記凹面鏡ホルダの側面に係止し、
前記変位発生領域は、前記凹面鏡ホルダの表面であって、前記付勢部が係止する位置よりも前記回転軸部から離れる領域に形成される、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記本体部は、前記変位発生領域における前記付勢部が係止する位置から遠い端部に形成され、前記回転軸部から離れるにつれて前記凹面鏡の裏面から遠ざかるように傾斜する傾斜面を備える、
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記接触部は、
前記凹面鏡に接着する接着面部と、
前記凹面鏡に形成される凹面鏡位置決め部に接触することにより前記凹面鏡ホルダに対する前記凹面鏡の位置が決まるホルダ位置決め部と、を備える、
請求項1から3の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記本体部は、前記回転軸に沿って長い長方形板状をなし、
3つの前記ホルダ位置決め部は、前記本体部の前記回転軸に直交する方向に延びる短手辺を底辺とし前記回転軸に沿って延びる長手辺を高さとした三角形の3つの頂点にそれぞれ位置するように配置される、
請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記3つのホルダ位置決め部のうち第1のホルダ位置決め部は、凸状の前記凹面鏡位置決め部が嵌まる円錐状の穴を有し、
前記3つのホルダ位置決め部のうち第2のホルダ位置決め部は、凸状の前記凹面鏡位置決め部が嵌まり、前記第1のホルダ位置決め部と前記第2のホルダ位置決め部を結ぶ仮想的な接続線に沿って延びるV字状の穴を有し、
前記3つのホルダ位置決め部のうち第3のホルダ位置決め部は、凸状の前記凹面鏡位置決め部が当接する平面を有する、
請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、像を表す表示光を出射する表示部と、この表示部からの表示光を投射部材に反射させる凹面鏡と、を備えるヘッドアップディスプレイ装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されるように、凹面鏡は、凹面鏡本体と、この凹面鏡本体を支持する保持プレートと、を備える。そして、第1のバネの一端が保持プレートに係止され、第1のバネの他端がケースに係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-131651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、第1のバネから保持プレートに加わる外力により凹面鏡の鏡面に歪みが生じるおそれがある。特に、凹面鏡においては、表示光を拡大するため、鏡面の僅かな歪みであっても、ヘッドアップディスプレイ装置により表示される虚像に与える影響は少なくないため、特に鏡面の歪みを抑制することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、鏡面の歪みを抑制することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
表示光を出射する表示部と、前記表示部からの前記表示光を投射部材に反射させるミラーユニットと、を備えるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記ミラーユニットは、
前記表示光を反射する鏡面を含む凹面鏡と、
前記凹面鏡を保持する本体部、前記本体部の両側から回転軸に沿って延びる一対の回転軸部、及び前記本体部から前記回転軸に交わる方向に延びる被保持部を含む凹面鏡ホルダと、
前記被保持部を前記回転軸に直交する方向から挟み込む保持凹部を含み、前記回転軸に直交する方向に沿って前記保持凹部を移動させることにより前記凹面鏡ホルダを前記凹面鏡とともに前記回転軸を中心に回転させるミラー駆動ユニットと、
前記一対の回転軸部の何れかに挿通されるコイル部、及び前記コイル部から延び前記被保持部を前記保持凹部に接触させるように前記凹面鏡ホルダを付勢する付勢部を含むトーションスプリングと、
前記凹面鏡ホルダに設けられる前記凹面鏡に接触する接触部と、を備え、
前記接触部は、前記付勢部が前記凹面鏡ホルダに付勢することにより前記凹面鏡ホルダにおいて変位が発生する可能性がある変位発生領域を除く領域に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘッドアップディスプレイ装置において、鏡面の歪みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が搭載された車両の模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係るミラーユニットの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るミラーユニットの左側面図である。
図5図4のミラー駆動ユニット部分の拡大図である。
図6】本発明の一実施形態に係る凹面鏡の背面側の斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る凹面鏡ホルダの正面側の斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るミラーユニットの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200のダッシュボード内に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200の投射部材の一例であるフロントガラス201に向けて像を表す表示光Lを出射する。表示光Lはフロントガラス201で反射して視認者1(主に車両200の運転者)に到達する。これにより、虚像Vが視認者1により視認可能に表示される。
【0011】
(ヘッドアップディスプレイ装置の構成)
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示部10と、折り返しミラー部材20と、ミラーユニット30と、筐体60と、制御部70と、を備える。
【0012】
筐体60は、非透光性樹脂材料又は金属材料で形成されるとともに、中空の略直方体をなす。筐体60には、フロントガラス201に対向する位置に開口部61が形成されている。筐体60は、開口部61を塞ぐ湾曲板状の窓部50を備える。この窓部50は、表示光Lが通過するアクリルなどの透光性樹脂材料からなる。筐体60内には、ヘッドアップディスプレイ装置100の各構成が収納されている。
【0013】
表示部10は、制御部70による制御のもと、像を表す表示光Lを出射する。表示部10は、何れも図示しない光源及び液晶表示パネルを備える。
【0014】
折り返しミラー部材20は、表示部10が出射した表示光Lをミラーユニット30に向けて反射させる。折り返しミラー部材20は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂からなる基材にアルミニウムが積層されてなる。
【0015】
ミラーユニット30は、表示部10から出射され、折り返しミラー部材20で反射した表示光Lをフロントガラス201に向けて拡大させつつ反射させる。ミラーユニット30は、図2の紙面垂直方向に延びる回転軸Axを中心に回転可能に構成されている。
【0016】
(ミラーユニットの構成)
図3及び図4に示すように、ミラーユニット30は、表示光Lを反射させる凹面鏡31と、凹面鏡31を保持する凹面鏡ホルダ35と、凹面鏡ホルダ35を凹面鏡31とともに回転させるミラー駆動ユニット40と、凹面鏡ホルダ35を付勢するトーションスプリング45と、凹面鏡ホルダ35を回転可能に支持する軸ホルダ38a,38bと、を備える。なお、以下の説明では、ミラーユニット30を正面から見たときの方向に基づき、左右、上下、表裏が規定されている。図3図8においては、左はLfと略記され、右はRtと略記され、上はUpと略記され、下はDnと略記され、表はFrと略記され、裏はBkと略記される。また、左右方向はX方向と一致し、上下方向はY方向と一致し、表裏方向はZ方向に一致する。
【0017】
凹面鏡31は、X方向に長い略長方形の板状に形成され、X方向に沿って湾曲している。具体的には、凹面鏡31は、所定の曲率を有する凹状の曲面を含む合成樹脂製の基材と、その基材の曲面上に蒸着されるアルミニウム等の金属製の鏡面31aとを備える。凹面鏡31の基材は、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂等の合成樹脂又はガラスにて形成される。
【0018】
図6に示すように、凹面鏡31は、凹面鏡ホルダ35に対向する裏面31bと、裏面31bに凸状に形成される第1~第3の位置決め凸部32a~32cと、を備える。各位置決め凸部32a~32cは、裏側に突出した先端が球状の円柱状で形成されている。
【0019】
第1の位置決め凸部32aは、凹面鏡31の裏面31bにおける左側縁部であって、Y方向における中央に位置する。第2の位置決め凸部32bは、凹面鏡31の裏面31bにおける右上側の角部に位置する。第3の位置決め凸部32cは、凹面鏡31の裏面31bにおける右下側の角部に位置する。
【0020】
凹面鏡31の裏面31bには、図7を参照して後述する凹面鏡ホルダ35の接着面部37a~37hに対向する複数の接着凸部31cが形成されている。各接着凸部31cは、円形の範囲内においてX方向に沿って平行に延びる複数の凸部を備える。これにより、図8に示すように、各接着凸部31cが接着剤46に接する面積を増やすことができ、ひいては、より確実に凹面鏡31を凹面鏡ホルダ35に接着できる。
【0021】
図7に示すように、凹面鏡ホルダ35は、合成樹脂により形成され、凹面鏡31をその裏面31bから保持しつつ、X方向に延びる回転軸Axに沿って回転可能に支持される。詳しくは、凹面鏡ホルダ35は、本体部34と、一対の回転軸部39a,39bと、被保持部38と、を備える。
【0022】
本体部34は、凹面鏡31の裏面31bに沿う長方形板状をなす。本体部34は、図6を参照して上述した凹面鏡31の第1~第3の位置決め凸部32a~32cが嵌合する第1~第3の位置決め凹部36a~36cと、凹面鏡31の裏面31bが接着剤を介して接する接着面部37a~37hと、本体部34の強度を向上させる複数本のリブ34a~34iと、トーションスプリング45により付勢される被付勢部33と、を備える。
【0023】
第1~第3の位置決め凹部36a~36cは、凹面鏡ホルダ35の表面35fに凹状に形成される。表面35fは、凹面鏡ホルダ35における凹面鏡31の裏面31bに対向する面である。第1~第3の位置決め凹部36a~36cは、凹面鏡ホルダ35の本体部34のY方向に延びる短手辺を底辺としX方向に延びる長手辺を高さとした仮想的な三角形Trの3つの頂点にそれぞれ位置するように配置される。本例では、この三角形Trは二等辺三角形をなし、この二等辺三角形のうち2つの底角は本体部34の右側の2つの角部に位置し、頂角は本体部34の左縁のY方向の中央に位置する。本例では、第1の位置決め凹部36aは上記頂角に対応する頂点に位置し、第2の位置決め凹部36bは上記2つの角部のうち上側の角部に対応する頂点に位置し、第3の位置決め凹部36cは上記2つの角部のうち下側の角部に対応する頂点に位置する。
【0024】
第1の位置決め凹部36aは、図6を参照して上述した凹面鏡31の第1の位置決め凸部32aに対応して、表面35fにおける左側縁部であって、Y方向における中央に位置する。第1の位置決め凹部36aは円錐状の穴により形成される。第1の位置決め凸部32aの先端部が第1の位置決め凹部36aに嵌まる。これにより、凹面鏡31は、第1の位置決め凸部32aが第1の位置決め凹部36aに当接する第1の当接位置P1(図3参照)においてX方向、Y方向及びZ方向から凹面鏡ホルダ35に対して固定される。
【0025】
第2の位置決め凹部36bは、凹面鏡31の第2の位置決め凸部32bに対応して、表面35fにおける右上の角部に位置する。第2の位置決め凹部36bは、第1の位置決め凹部36aと第2の位置決め凹部36bを結ぶ仮想的な接続線Aに沿って延びるV字状の穴により形成されている。第2の位置決め凸部32bの先端部は第2の位置決め凹部36bに嵌まる。これにより、凹面鏡31は、第2の位置決め凸部32bが第2の位置決め凹部36bに当接する第2の当接位置P2(図3参照)においてY方向及びZ方向から凹面鏡ホルダ35に対して固定される。第2の位置決め凹部36bが接続線Aに沿って延びることにより、凹面鏡ホルダ35の形状誤差(特にX方向の形状誤差)に関わらず、第2の位置決め凸部32bが第2の位置決め凹部36b内に位置する。
【0026】
第3の位置決め凹部36cは、凹面鏡31の第3の位置決め凸部32cに対応して、表面35fにおける右下の角部に位置する。第3の位置決め凹部36cは、XY面に沿って延出する平面である底面36c1を備える。底面36c1の面積は、凹面鏡ホルダ35のX方向及びY方向の形状誤差に関わらず、底面36c1上に第3の位置決め凸部32cが位置するように設定される。第3の位置決め凸部32cの先端部が第3の位置決め凹部36cの底面36c1に当接する。これにより、凹面鏡31は、第3の位置決め凸部32cが第3の位置決め凹部36cの底面36c1に当接する第3の当接位置P3(図3参照)においてZ方向から凹面鏡ホルダ35に対して固定される。第1~第3の当接位置P1,P2,P3での位置決めにより、凹面鏡31は、X方向、Y方向及びZ方向において、凹面鏡ホルダ35に対して固定される。
【0027】
図7に示すように、接着面部37a~37hは、それぞれ円板状に形成され、凹面鏡ホルダ35の表面35fにおける変位発生領域35aを除く領域に配置される。変位発生領域35aは、凹面鏡ホルダ35の表面35fにおける第1の位置決め凹部36aの上方に、言い換えると、表面35fの左上方に、X方向に長い長方形をなす。変位発生領域35aは、後述するトーションスプリング45の付勢部45bが凹面鏡ホルダ35に付勢することにより変位が発生する可能性がある領域であり、実験又はシミュレーションにより設定される。図8に示すように、本体部34は、変位発生領域35aにおいて、凹面鏡ホルダ35の変位により凹面鏡31に接触しないように、凹面鏡31の裏面31bに対して離間している。本体部34の表面35fには、変位発生領域35aにおいて、上方に向かうにつれて凹面鏡31の裏面31bから遠ざかるように傾斜する傾斜面35gが形成されている。傾斜面35gにより、本体部34の表面35fが凹面鏡31の裏面31bに接触することが抑制される。
【0028】
図7に示すように、接着面部37a,37c,37fは、変位発生領域35aを除く凹面鏡ホルダ35の本体部34の上縁に沿って配列されている。接着面部37b,37d,37g,37hは、凹面鏡ホルダ35の本体部34の下縁に沿って配列されている。接着面部37eは、本体部34の表面35fの略中央に位置する。
各接着面部37a~37hの表面には、凹凸溝部37jが形成されている。各接着面部37a~37hの凹凸溝部37jには硬化前の接着剤が溜められる。この状態で、各接着面部37a~37hを図6を参照しつつ上述した凹面鏡31の接着凸部31cに接触させる。これにより、図8に示すように、凹面鏡ホルダ35は硬化した接着剤46を介して凹面鏡31の裏面31bに接着される。例えば、接着剤46は、熱可逆性樹脂成分の接着剤である。
【0029】
図7に示すように、複数本のリブ34a~34iは、凹面鏡ホルダ35の表面35fにおける変位発生領域35aを除く領域に設けられている。リブ34aは、接着面部37a,37c,37fを結ぶように回転軸Axに沿う方向に延びる。リブ34bは、接着面部37b,37d,37g,37hを結ぶように回転軸Axに沿う方向に延びる。複数のリブ34cは、互いに平行をなし、上方に向かうにつれて左方へ傾斜するように延びる。複数のリブ34dは、互いに平行をなし、上方に向かうにつれて右方へ傾斜するように延びる。一対のリブ34eは、一対の回転軸部39a,39b間を結ぶように平行に延びる。
なお、凹面鏡ホルダ35の裏面には、表面35fと同様の図示しないリブが形成されている。凹面鏡ホルダ35の裏面のリブは変位発生領域35aにも形成されている。
接着面部37a~37h及び第1~第3の位置決め凹部36a~36cは接触部の一例である。
【0030】
図7に示すように、被付勢部33は、回転軸Axに直交する方向に延びる長方形板状をなし、本体部34の左側面であって、Y方向の中央に位置する。図8に示すように、被付勢部33には、後述する回転軸部39aよりも上方に位置し、被付勢部33の厚さ方向(X方向)に貫通する係止孔33aが形成されている。
【0031】
図7に示すように、一対の回転軸部39a,39bは、本体部34の両側から回転軸Axに沿って延びる円柱状をなす。回転軸部39aは、本体部34の左側側面、正確には被付勢部33の左面に設けられる。回転軸部39bは、本体部34の右側側面に設けられる。
【0032】
被保持部38は、本体部34から回転軸Axに直交する方向に延びる長方形板状をなす。被保持部38は、その厚さ方向がZ方向に一致する向きをなし、本体部34の下側側面であって、X方向の中央に位置する。
【0033】
トーションスプリング45は、金属線が巻かれて形成される。トーションスプリング45は、コイル部45aと、コイル部45aの一端から延びる付勢部45bと、コイル部45aの他端から延びる係止部45cと、を備える。
コイル部45a内には、回転軸部39aが挿通される。コイル部45aは、回転軸Axに沿う直線方向及び回転軸Axを中心した回転方向に弾性変形する。コイル部45aは、この直線方向に弾性変形することにより、凹面鏡ホルダ35を後述する軸ホルダ38bに向けて弾性的に押す。これにより、凹面鏡ホルダ35における回転軸Axに沿う直線方向の位置が決まる。
トーションスプリング45の係止部45cは、後述する軸ホルダ38aに係止することにより、回転軸Axを中心にねじれるようにコイル部45aを弾性変形させる。
付勢部45bは、コイル部45aから回転軸Axに直交する方向に直線的に延びる。付勢部45bの先端部は、回転軸Axに沿う方向に直角に曲げられ、被付勢部33の係止孔33a内に挿入されている。トーションスプリング45は、付勢部45bを介して凹面鏡ホルダ35を図7に矢印で示す付勢回転方向Rに向けて付勢する。
【0034】
図3及び図7に示すように、軸ホルダ38aは、回転軸部39a及びトーションスプリング45を収容しつつ、回転軸部39aを回転可能に支持する。軸ホルダ38bは、回転軸部39bを収容しつつ、回転軸部39bを回転可能に支持する。軸ホルダ38a,38bは筐体60に固定される。
【0035】
図5に示すように、ミラー駆動ユニット40は、モータ41と、変換機構42と、を備える。
モータ41は、筐体60内に固定されるとともに、制御部70の制御のもと駆動する。変換機構42は、モータ41の回転運動を直線運動に変換する機構である。詳しくは、変換機構42は、外周にねじが切られたねじ軸42aと、ねじ軸42aの外周に一部が螺合された可動部42bとを備える。可動部42bは、モータ41の駆動に伴いねじ軸42aが軸回転することで、ねじ軸42aに沿って移動する。また、可動部42bは、ミラーユニット30の被保持部38をその厚さ方向から保持する保持凹部42cを備える。保持凹部42cは、その内部において裏側に位置する接触面42c1を備える。保持凹部42cの接触面42c1には、トーションスプリング45により凹面鏡ホルダ35が付勢回転方向Rに付勢されることにより被保持部38が接触する。
【0036】
(ミラーユニットの変位)
図8に示すように、トーションスプリング45は、付勢部45bを介して、付勢部45bが係止孔33aに係止する位置である係止位置Fpに付勢回転方向Rへの力を加える。これにより、凹面鏡ホルダ35は、係止位置Fpよりも上方に形成される変位発生領域35aにおいて変形する。凹面鏡ホルダ35の変位量は、係止位置Fpから上方に離れるにつれて大きくなる。凹面鏡ホルダ35は、変位発生領域35aにおいては、凹面鏡31に接触しない。このため、凹面鏡ホルダ35の変位により凹面鏡31が歪むことが抑制される。
【0037】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0038】
(1)ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示光Lを出射する表示部10と、表示部10からの表示光Lを投射部材の一例であるフロントガラス201に反射させるミラーユニット30と、を備える。ミラーユニット30は、表示光Lを反射する鏡面31aを含む凹面鏡31と、凹面鏡31を保持する本体部34、本体部34の両側から回転軸Axに沿って延びる一対の回転軸部39a,39b、及び本体部34から回転軸Axに交わる方向に延びる被保持部38を含む凹面鏡ホルダ35と、被保持部38を回転軸Axに直交する方向から挟み込む保持凹部42cを含み回転軸Axに直交する方向に沿って保持凹部42cを移動させることによりミラーユニット30を回転軸Axを中心に回転させるミラー駆動ユニット40と、回転軸部39aに挿通されるコイル部45a、及びコイル部45aから延び被保持部38を保持凹部42cに接触させるように凹面鏡ホルダ35を付勢する付勢部45bを含むトーションスプリング45と、凹面鏡ホルダ35に設けられる凹面鏡31に接触する接触部の一例である位置決め凹部36a~36c及び接着面部37a~37hと、を備える。位置決め凹部36a~36c及び接着面部37a~37hは、付勢部45bが凹面鏡ホルダ35に付勢することにより凹面鏡ホルダ35において変位が発生する可能性がある変位発生領域35aを除く領域に設けられる。
この構成によれば、凹面鏡ホルダ35の変位が位置決め凹部36a~36c及び接着面部37a~37hを介して凹面鏡31に伝わることが抑制される。よって、凹面鏡31の鏡面31aの歪みを抑制することができる。よって、ヘッドアップディスプレイ装置100において表示される虚像Vの表示品位を向上させることができる。
【0039】
(2)付勢部45bは、凹面鏡ホルダ35の側面に係止する。変位発生領域35aは、凹面鏡ホルダ35の表面35fにおける付勢部45bが係止する係止位置Fpよりも回転軸部39aから離れる領域に形成される。
この構成によれば、凹面鏡31の鏡面31aの歪みを抑制することができる。
【0040】
(3)本体部34は、変位発生領域35aにおける係止位置Fpから遠い端部に形成され、回転軸部39aから離れるにつれて凹面鏡31の裏面31bから遠ざかるように傾斜する傾斜面35gを備える。
この構成によれば、上述のように、付勢部45bからの付勢力に伴い本体部34の上方に向かうにつれて本体部34の変位量が大きくなる。このため、本体部34に、上方に向かうにつれて凹面鏡31の裏面31bから遠ざかるように傾斜面35gを形成することにより、より確実に、本体部34の表面35fが凹面鏡31の裏面31bに接触することが抑制される。
【0041】
(4)凹面鏡ホルダ35は、上記接触部として、凹面鏡31に接着する接着面部37a~37hと、凹面鏡31に形成される凹面鏡位置決め部の一例である位置決め凸部32a~32cに接触することにより凹面鏡ホルダ35に対する凹面鏡31の位置が決まるホルダ位置決め部の一例である位置決め凹部36a~36cと、を備える。
この構成によれば、接着面部37a~37h及び位置決め凹部36a~36cは、変位発生領域35a以外の領域に設けられる。よって、凹面鏡31を凹面鏡ホルダ35に位置精度高く固定しつつ、凹面鏡31の鏡面31aの歪みを抑制することができる。
【0042】
(5)本体部34は、回転軸Axに沿って長い長方形板状をなす。第1~第3の位置決め凹部36a~36cは、本体部34の回転軸Axに直交するY方向に延びる短手辺を底辺とし回転軸Axに沿ってX方向に延びる長手辺を高さとした三角形Trの3つの頂点にそれぞれ位置するように配置される。
この構成によれば、凹面鏡ホルダ35は、凹面鏡31を3つの位置、すなわち、図3に示す第1の当接位置P1、第2の当接位置P2及び第3の当接位置P3にて安定的に保持することができる。これにより、変位発生領域35aにおける本体部34と凹面鏡31の裏面31bの隙間をより確実に確保することができる。
【0043】
(6)第1の位置決め凹部36aは、凸状の第1の位置決め凸部32aが嵌まる円錐状の穴を有し、第2の位置決め凹部36bは、凸状の第2の位置決め凸部32bが嵌まり、第1の位置決め凹部36aと第2の位置決め凹部36bを結ぶ仮想的な接続線Aに沿って延びるV字状の穴を有し、第3の位置決め凹部36cは、凸状の第3の位置決め凸部32cが当接する平面である底面36c1を有する。
この構成によれば、第3の位置決め凹部36cは、第3の位置決め凸部32cをXY方向に位置決めせずに、Z方向にのみ位置決めする。また、第2の位置決め凹部36bは、第2の位置決め凸部32bを接続線Aに沿う方向すなわち略Y方向に位置決めせずに、接続線Aに直交する方向すなわち略X方向、及びZ方向に位置決めする。このように、第2の位置決め凹部36b及び第3の位置決め凹部36cにおいて、位置決めしない方向、すなわち拘束しない方向を設定することにより、凹面鏡31を凹面鏡ホルダ35に少ない拘束で、かつ安定的に保持することができる。これにより、凹面鏡31の鏡面31aに歪みが発生することを抑制できる。
【0044】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0045】
上記実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置100の構成は適宜変更可能である。例えば、折り返しミラー部材20を省略して、表示部10からの表示光Lを直接にミラーユニット30に照射してもよい。
【0046】
また、凹面鏡ホルダ35の第1~第3の位置決め凹部36a~36cの位置は適宜入れ替えてもよい。さらに、位置決め凹部36a~36c及び位置決め凸部32a~32cの数を増やしてもよいし、数を減らしてもよい。
【0047】
上記実施形態では、凹面鏡ホルダ35には第1~第3の位置決め凹部36a~36cが形成され、凹面鏡31には第1~第3の位置決め凸部32a~32cが形成されていた。しかし、反対に、凹面鏡ホルダ35に第1~第3の位置決め凸部32a~32cが形成され、凹面鏡31に第1~第3の位置決め凹部36a~36cが形成されてもよい。
【0048】
凹面鏡ホルダ35の第1~第3の位置決め凹部36a~36cの形状を適宜変更してもよい。例えば、全ての位置決め凹部を、第1の位置決め凹部36aと同様の形状としてもよい。
【0049】
また、第1の位置決め凹部36aは円錐状で形成されていたが、円柱状で形成されてもよい。また、第2の位置決め凹部36bもV字状でなく、例えばU字状、凹字状に形成されてもよい。
【0050】
上記実施形態では、第1~第3の位置決め凸部32a~32cは先端が球状の円柱状に形成されていたが、これに限定されず、例えば、円柱状又は半球状に形成されてもよい。
【0051】
上記実施形態では、凹面鏡ホルダ35には、接着面部37a~37eが設けられていたが、接着面部の数及び配置態様はこれに限定されず、適宜変更可能である。また、接着面部37a~37eのうち少なくとも何れかを省略してもよい。
【0052】
上記実施形態では、接着剤46として、例えば、熱可逆性樹脂成分の固形接着剤が採用されていたが、接着剤として両面粘着テープを採用してもよい。
【0053】
上記実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置100は車両200に搭載されていたが、車両200以外の飛行機、船等の乗り物に搭載されてもよい。また、投射部材はフロントガラスに限られず、専用のコンバイナであってもよい。
【0054】
上記実施形態では、変位発生領域35aは、凹面鏡ホルダ35の表面35fの左上方に、X方向に長い長方形をなしていたが、変位発生領域35aの形状は適宜変更可能である。例えば、図7の一点鎖線で示すように、変位発生領域35Aは三角形をなしていていてもよい。詳しくは、変位発生領域35Aは、X方向が高さ方向となる直角三角形をなし、左側に底辺が位置し、右側に頂点が位置する。そして、変位発生領域35Aは、その直角をなす第1の辺が本体部34の上縁に沿い、第2の辺が本体部34の左縁に沿う向きに設定される。この場合、変位発生領域35A外であって、かつ変位発生領域35a内にも接着面部を設けてもよい。
【0055】
上記実施形態には、一例として、下記の付記1に記載の技術的思想が開示されている。なお、付記1は、本発明を何ら限定的に解釈するものではない。
【0056】
(付記1)
表示部からの表示光を投射部材に反射させるミラーユニットであって、
前記表示光を反射する鏡面を含む凹面鏡と、
前記凹面鏡を保持する本体部、前記本体部の両側から回転軸に沿って延びる一対の回転軸部、及び前記本体部から前記回転軸に交わる方向に延びる被保持部を含む凹面鏡ホルダと、
前記被保持部を前記回転軸に直交する方向から挟み込む保持凹部を含み、前記回転軸に直交する方向に沿って前記保持凹部を移動させることにより前記凹面鏡ホルダを前記凹面鏡とともに前記回転軸を中心に回転させるミラー駆動ユニットと、
前記一対の回転軸部の何れかに挿通されるコイル部、及び前記コイル部から延び前記被保持部を前記保持凹部に接触させるように前記凹面鏡ホルダを付勢する付勢部を含むトーションスプリングと、
前記凹面鏡ホルダに設けられる前記凹面鏡に接触する接触部と、を備え、
前記接触部は、前記付勢部が前記凹面鏡ホルダに付勢することにより前記凹面鏡ホルダにおいて変位が発生する可能性がある変位発生領域を除く領域に設けられる、
ミラーユニット。
【符号の説明】
【0057】
1 視認者
10 表示部
20 折り返しミラー部材
30 ミラーユニット
31 凹面鏡
31a 鏡面
31b 裏面
32a 第1の位置決め凸部
32b 第2の位置決め凸部
32c 第3の位置決め凸部
33 被付勢部
33a 係止孔
34 本体部
34a~34i リブ
35 凹面鏡ホルダ
35a 変位発生領域
35f 表面
36a 第1の位置決め凹部
36b 第2の位置決め凹部
36c 第3の位置決め凹部
36c1 底面
36c2 側面
37a~37h 接着面部
37j 凹凸溝部
37a~37e 第1~第5の接着面部
38 被保持部
38a,38b 軸ホルダ
39a,39b 回転軸部
40 ミラー駆動ユニット
41 モータ
42 変換機構
42a ねじ軸
42b 可動部
42c 保持凹部
42c1 接触面
45 トーションスプリング
45a コイル部
45b 付勢部
45c 係止部
60 筐体
70 制御部
100 ヘッドアップディスプレイ装置
200 車両
201 フロントガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8