(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】吸着式ヒートポンプ、冷熱生成方法
(51)【国際特許分類】
F25B 17/08 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
F25B17/08 A
(21)【出願番号】P 2020032742
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138620(JP,A)
【文献】特開2016-205787(JP,A)
【文献】国際公開第2012/017543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 17/00 ~ 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着質を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器に連結された容器に配置され、前記蒸発器によって蒸発した前記吸着質を吸着すると共に、圧縮されることで吸着等温線が変化する吸着材と、
前記容器に配置され、前記吸着質を吸着した前記吸着材を圧縮し、前記蒸発器で蒸発される前記吸着質を前記吸着材から脱着させる圧縮部と、
を備え、
前記吸着材は、前記容器の内部を流れる熱媒の流路を構成する板と前記圧縮部とに挟まれて圧縮される、
吸着式ヒートポンプ。
【請求項2】
前記圧縮部は、前記吸着材を圧縮し、前記容器の雰囲気圧力を上昇させることで、前記吸着質の少なくとも一部を液体として前記吸着材から脱着させる請求項1に記載の吸着式ヒートポンプ。
【請求項3】
前記吸着材は、ゼオライト鋳型炭素である請求項1又は2に記載の吸着式ヒートポンプ。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸着式ヒートポンプを用いて冷熱を生成する冷熱生成方法であって、
前記蒸発器で前記吸着質が蒸発して、冷熱を生成する冷熱生成工程と、
前記吸着材が蒸発した前記吸着質を吸着する吸着工程と、
前記圧縮部が前記吸着材を圧縮して、前記吸着材が前記吸着質を脱着する脱着工程と、
を備える冷熱生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着式ヒートポンプ、及び冷熱生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸着質を吸着した吸着材を加熱することで再生させる吸着式ヒートポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吸着式ヒートポンプでは、吸着質を吸着した吸着材を加熱することだけで再生させている。
【0005】
本発明の課題は、吸着質を吸着した吸着材を加熱することだけで再生させる場合と比して、吸着材を再生させるために必要な熱エネルギーを少なくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る吸着式ヒートポンプは、吸着質を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器に連結された容器に配置され、前記蒸発器によって蒸発した前記吸着質を吸着すると共に、圧縮されることで吸着等温線が変化する吸着材と、前記容器に配置され、前記吸着質を吸着した前記吸着材を圧縮し、前記蒸発器で蒸発される前記吸着質を前記吸着材から脱着させる圧縮部とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、蒸発器は、吸着質を蒸発させる。さらに、圧縮されることで吸着等温線が変化する吸着材は、蒸発器によって蒸発した吸着質を吸着する。また、圧縮部が、吸着質を吸着した吸着材を圧縮し、蒸発器で蒸発される吸着質を吸着材から脱着させる。このようにして、吸着材は再生する。
【0008】
これにより、吸着式ヒートポンプでは、吸着質を吸着した吸着材を加熱することだけで再生させる場合と比して、吸着材を再生させるために必要とする熱エネルギーを少なくすることができる。
【0009】
本発明の第2態様に係る吸着式ヒートポンプは、第1態様に記載の吸着式ヒートポンプにおいて、前記圧縮部は、前記吸着材を圧縮し、前記容器の雰囲気圧力を上昇させることで、前記吸着質の少なくとも一部を液体として前記吸着材から脱着させることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、圧縮部は、吸着材を圧縮し、容器の雰囲気圧力を上昇させることで、吸着質の少なくとも一部を液体として吸着材から脱着させる。これにより、蒸発した吸着質を凝縮する工程に必要とする時間が短くなり、サイクルタイムを短くすることができる。
【0011】
本発明の第3態様に係る吸着式ヒートポンプは、第1又は第2態様に記載の反応装置において、前記吸着材は、ゼオライト鋳型炭素であることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、吸着材として、ゼオライト鋳型炭素(=ZTC)が用いられている。このため、吸着質を吸着したゼオライト鋳型炭素を圧縮することで、ゼオライト鋳型炭素から吸着質を脱着させることができる。
【0013】
本発明の第4態様に係る冷熱生成方法は、第1~第3態様の何れか1態様に記載の吸着式ヒートポンプを用いて冷熱を生成する冷熱生成方法であって、前記蒸発器で前記吸着質が蒸発して、冷熱を生成する冷熱生成工程と、前記吸着材が蒸発した前記吸着質を吸着する吸着工程と、前記圧縮部が前記吸着材を圧縮して、前記吸着材が前記吸着質を脱着する脱着工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、冷熱を生成する冷熱生成工程と、吸着材が吸着質を吸着する吸着工程と、吸着材が吸着質を脱着する脱着する脱着工程とを備えている。ここで、脱着工程では、圧縮部が吸着材を圧縮することで、吸着材が吸着質を脱着する。これにより、冷熱生成方法では、吸着質を吸着した吸着材を加熱することだけで再生させる場合と比して、吸着材を再生させるために必要な熱エネルギーを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸着質を吸着した吸着材を加熱することだけで再生させる場合と比して、吸着材を再生させるために必要な熱エネルギーを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプであって、開閉弁によって流路が閉鎖された状態を示した構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプであって、一方の開閉弁によって一方の流路が開放された状態を示した構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプであって、開閉弁によって流路が閉鎖され、吸着材が圧縮された状態を示した構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプであって、他方の開閉弁によって他方の流路が開放され、圧縮されていた吸着材が開放された状態を示した構成図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプに備えられた吸着材の吸着等温線をグラフで示した図面である。
【
図6】本発明の実施形態に係る本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプに備えられた制御部の制御系を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプ及び冷熱生成方法の一例について
図1~
図6を用いて説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示す。
【0018】
本実施形態に係る吸着式ヒートポンプ10(以下「ヒートポンプ10」)は、
図1に示されるように、吸着質の一例としての水の蒸発を行う蒸発器12と、吸着装置32とを備えている。さらに、ヒートポンプ10は、蒸発器12から吸着装置32への液体又は気体の流通を可能とする配管80と、吸着装置32から蒸発器12への液体又は気体の流通を可能とする配管90とを備えている。そして、蒸発器12及び吸着装置32は、内圧が大気圧と比して低い減圧系とされている。
【0019】
この吸着式ヒートポンプ10は、詳細は後述するが、冷熱生成工程において流体R1を冷却して冷熱を生成する装置である。
【0020】
(蒸発器12)
蒸発器12は、
図1に示されるように、真空脱気されて内部に水が貯留されている容器14と、容器14の内部に一部が配置されて流体R1が流れる流路18とを備えている。また、容器14の内部は、気相部14aと液相部14bとに分かれており、流路18は、少なくとも液相部14bを含む部分で、液相部14bの水と流体R1との熱交換が行われるように配置されている。また、本実施形態では、流体R1として、一例として、25〔℃〕の水が用いられる。
【0021】
この構成において、蒸発器12は、貯留した水を蒸発させて水蒸気を生成し、この水蒸気が吸着装置32に供給される。そして、水を蒸発させる際の気化熱により、流路18を流れる流体R1が冷却される。
【0022】
(吸着装置32)
吸着装置32は、
図1に示されるように、容器34と、容器34の内部に設けられている吸着モジュール50と、熱媒F1が流れる流路72を形成する流路形成材70とを備えている。
【0023】
〔容器34〕
容器34は、軸方向を上下方向とする円筒状で、天板34aと、側板34bと、底板34cとから形成されている。また、容器34の内部は、真空脱気されており、本実施形態では、内部の温度は、一例として、30〔℃〕とされている。さらに、容器34の側板34bには、蒸発器12で生成された水蒸気を流入させる流入口36aと、後述する吸着材52の脱着により生成された水、又は水蒸気を蒸発器12へ流出させる流出口36bとが形成されている。流入口36aは、側板34bの上方部分に形成されており、流出口36bは、側板34bにおいて流入口36aと装置幅方向で対向し、かつ、下方部分に形成されている。
【0024】
さらに、容器34の側板34bには、熱媒F1を流路72に流入させる流入口38aと、熱媒F1を流路72から流出させる流出口38bとが形成されている。流入口38aは、流入口36aの下方に配置され、流出口38bは、流出口36bの下方に配置されている。そして、流入口38aと流出口38bとは、上下方向において同様の位置に配置されている。
【0025】
さらに、容器34の天板34aには、後述する連結部64bが通る貫通孔40が形成されている。
【0026】
〔吸着モジュール50〕
吸着モジュール50は、吸着材52と、吸着材52を下方から支持している支持部材56と、吸着材52を圧縮する圧縮機構60とを備えている。
【0027】
-吸着材52-
吸着材52は、容器34の内部に配置され、上方から見て円状で、上下方向の厚さは一定とされている。吸着材52は、圧縮され、吸着材52に応力が加わることで吸着等温線が変化する部材である。
【0028】
図5に示すグラフには、吸着材52の吸着等温線が示されている。具体的には、
図5に示すグラフの横軸は、吸着材52が配置されている空間の相対湿度であり、縦軸は、吸着材52による吸着質(本実施形態では水)の吸着量である。また、実線L01は、応力が加えられた状態の吸着材52の吸着等温線であって、一点鎖線L02は、応力が加えられていない状態の吸着材52の吸着等温線である。このグラフから、吸着材52を圧縮して吸着材52に応力を加えることで、吸着材52によって吸着される吸着質の吸着量が減ることが分かる。なお、本実施形態では、一例として、吸着材52にゼオライト鋳型炭素(=ZTC)が用いられている。
【0029】
-支持部材56-
支持部材56は、
図1に示されるように、容器34の内部で上下方向において流入口36aの下方に配置され、上方が開放された平皿形状とされている。また、支持部材56は、底板56aと側板56bとを有し、側板56bは、容器34の側板34bに取り付けられている。さらに、側板56bは、側板34bに形成された流出口36bと対向した部分を有し、この部分には、側板56bを貫通する貫通口58が形成されている。
【0030】
この構成において、支持部材56の内部に吸着材52が配置されることで、支持部材56が吸着材52を支持している。
【0031】
-圧縮機構60-
圧縮機構60は、吸着材52の上方に配置され、油圧シリンダ62(以下単に「シリンダ62」)と、吸着材52と当接する当接部64とを備えている。そして、当接部64及びシリンダ62は、下方から上方へこの順番で配置されている。圧縮機構60は、圧縮部の一例である。
【0032】
当接部64は、円盤状の円盤部64aと、シリンダ62に連結される連結部64bとを有している。連結部64bは、上下方向に延びる円柱状で、容器34の天板34aに形成された貫通孔40を通っている。そして、連結部64bの上端に、シリンダ62が連結されている。
【0033】
シリンダ62は、容器34の外部で、容器34の上方に配置されている。そして、シリンダ62を稼働させることで、当接部64は、吸着材52と離間する離間位置(
図2参照)と、吸着材52を押圧して圧縮する圧縮位置(
図3参照)とに移動するようになっている。
【0034】
-流路形成材70-
流路形成材70は、支持部材56の底板56aの下方に配置され、上方から見て円状とされている。さらに、流路形成材70の端面は、容器34の側板34bに取り付けられている。そして、流路形成材70と底板56aとの間の部分に、熱媒F1が流れる流路72が形成されている。
【0035】
この構成において、熱媒F1が流入口38aから流路72に流入し、流路72を流れた熱媒F1が流出口38bから流出する。本実施形態では、熱媒F1には、一例として、30〔℃〕の水が用いられている。そして、流路72に流入される熱媒F1の温度は、容器34の内部の圧力における吸着材52の平衡温度より低くされている。
【0036】
また、熱媒F1として30〔℃〕の水が用いられることで、前述したように、容器34の内部が30〔℃〕とされている。
【0037】
〔配管80、配管90〕
配管80は、前述したように、蒸発器12から吸着装置32への液体又は気体の流通を可能とするように配置されている。具体的には、配管80の一端は、蒸発器12の容器14における気相部14aの開口に接続され、配管80他端は、容器34の流入口36aに接続されている。さらに、配管80には、配管80の流路を開閉する開閉弁82が設けられている。配管80は、第一配管の一例である。開閉弁82は、第一開閉弁の一例である。
【0038】
配管90は、前述したように、吸着装置32から蒸発器12への液体又は気体の流通を可能とするように配置されている。具体的には、配管90の一端は、蒸発器12の容器14における気相部14aの開口に接続され、配管90他端は、容器34における流出口36bに接続されている。さらに、配管90には、配管90の流路を開閉する開閉弁92が設けられている。配管90は、第二配管の一例である。開閉弁92は、第二開閉弁の一例である。
【0039】
〔制御部30〕
図6に示す制御部30は、CPU、メモリ、開閉弁82、92を切り替えるドライバ、及びシリンダ62を稼働させるドライバを含んで構成されている。制御部30は、予め記録されたプログラムに基づいて開閉弁82、92、シリンダ62を制御することで、ヒートポンプ10を稼働させる。なお、制御部30による具体的な制御については、後述する作用と共に説明する。
【0040】
(作用)
次に、ヒートポンプ10を用いて冷熱を生成する冷熱生成方法について説明する。ヒートポンプ10を稼働させる際には、容器34の内部は、真空脱気され、吸着材52は、水蒸気を脱着した状態となっている。また、
図1に示されるように、圧縮機構60の当接部64は、離間位置に配置され、開閉弁82、92は、流路を閉鎖している。
【0041】
さらに、熱媒F1が流入口38aから流路72に流入し、流路72を流れた熱媒F1が流出口38bから流出している。ここで、前述したように、流路72に流入する際の熱媒F1の温度は、容器34の内部の圧力における吸着材52の平衡温度より低くされている。
【0042】
また、蒸発器12の流路18に、流体R1が流れている。本実施形態では、一例として、25〔℃〕の水である流体R1が、流路18を流れている。そして、蒸発器12は、液相部14bの水を、流体R1との熱交換により蒸発させる。水を蒸発させる際の気化熱により、蒸発器12の流路18を流れる流体R1が冷却される。本実形態では、一例として、流体R1は、25〔℃〕から20〔℃〕に冷却される。このようにして冷熱が生成される(冷熱生成工程)。
【0043】
さらに、制御部30は、
図2に示されるように、開閉弁82を稼働させて配管80の流路を開放する。これにより、蒸発器12で生成された水蒸気は、配管80の流路を流れて、容器34の流入口36aから容器34の内部に流入する。そして、吸着材52は、容器34の内部に流入した水蒸気を吸着する(吸着工程)。
【0044】
吸着材52が水蒸気を吸着すると、制御部30は、
図3に示されるように、開閉弁82を稼働させて配管80の流路を閉鎖し、さらに、シリンダ62を稼働させて離間位置に配置されていた当接部64を圧縮位置へ移動させる。
【0045】
離間位置に配置されていた当接部64が圧縮位置へ移動することで、吸着材52が圧縮機構60によって圧縮され、吸着材52に応力が加わる。これにより、吸着材52の水(=吸着質)に対する吸着特性が変化し、吸着材52は、吸着していた水蒸気を水として脱着する。これにより、吸着材52は、水蒸気を脱着した状態となる。
【0046】
具体的には、本実施形態においては、吸着材52が水蒸気を脱着する際に吸着材52に応力を加えることで、吸着材52から気体が排出され、雰囲気圧力が上昇する。雰囲気圧力が上昇することで、水蒸気を吸着した吸着材52から液体としての水が脱着される。これにより、吸着材52は、水を脱着した状態となる。換言すれば、吸着材52は、再生する。
【0047】
吸着材52が水を脱着すると、制御部30は、
図4に示されるように、開閉弁92を稼働させて配管90の流路を開放し、さらに、シリンダ62を稼働させて圧縮位置に配置されていた当接部64を離間位置へ移動させる。
【0048】
当接部64が離間位置へ移動することで、圧縮されることで吸着材52に加えられていた応力が無くなり、吸着材52の水に対する吸着特性が変化する。
【0049】
また、配管90の流路を開放することで、吸着材52から脱着した水は、容器34の内部空間と容器14の内部空間との圧力差によって、貫通口58を通って、配管90を流れて容器14へ流入する。吸着材52から脱着した水の全てが容器14へ流入すると、制御部30は、
図1に示されるように、開閉弁92を稼働させて配管90の流路を閉鎖する。
【0050】
以上の工程を繰り返すことで、冷熱が連続的に生成される。
【0051】
(まとめ)
以上説明したように、ヒートポンプ10では、圧縮機構60が水蒸気を吸着した吸着材52を圧縮することで、水蒸気を吸着した吸着材52に応力を加え、水蒸気を水として吸着材52から脱着させる。このようにして、吸着材52は再生する。さらに、吸着材52から脱着した水は、配管90を流れて蒸発器12の容器14に流入する。
【0052】
このため、ヒートポンプで10では、水蒸気を吸着した吸着材52を加熱することだけで再生させる場合と比して、吸着材52を再生させるために必要な熱エネルギーを少なくすることができる。
【0053】
また、ヒートポンプ10では、吸着材を再生させるための熱媒体が不要となり、吸着材52を再生させるための熱媒体を排出する必要がない。このため、吸着材を再生させるために熱媒体を必要とする構成と比して、ヒートポンプ10から排出される熱量を減らすことができる。
【0054】
また、ヒートポンプ10では、圧縮機構60が吸着材52を圧縮し、吸着材52は、吸着していた水蒸気を水として脱着する。このため、水蒸気を凝縮する工程が不要となり、サイクルタイムを短くすることができる。
【0055】
また、ヒートポンプ10では、水蒸気を凝縮する凝縮器が不要となるため、装置を小型化することができる。
【0056】
また、ヒートポンプ10では、吸着材52として、ゼオライト鋳型炭素(=ZTC)が用いられている。このため、水を吸着したゼオライト鋳型炭素を圧縮することで、ゼオライト鋳型炭素から水を脱着させることができる。
【0057】
また、冷熱生成方法では、冷熱を生成する冷熱生成工程と、水蒸気を吸着材52が吸着する吸着工程と、吸着材52が水蒸気を水として脱着する脱着工程とを備えている。ここで、脱着工程では、圧縮機構60が吸着材52を圧縮することで、吸着材52が水蒸気を水として脱着する。このため、水蒸気を吸着した吸着材52を加熱することだけで再生させる場合と比して、吸着材52を再生させるために必要な熱エネルギーを少なくすることができる。
【0058】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、吸着質として、水を用いたが、アンモニアやエタノール等を吸着質として用いてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、吸着材52は、吸着していた水蒸気を水として脱着したが、水蒸気として脱着してもよい。この場合には、水として脱着することで奏する作用は奏しない。
【0060】
また、上記実施形態では、吸着材52は、吸着していた水蒸気を水として脱着したが、少なくとも一部を水として脱着してもよい。この場合には、水として脱着することで奏する作用は奏しない。しかし、全てを水蒸気として脱着させる場合と比して、水蒸気を凝縮する工程に必要とする時間が短くなる。これにより、サイクルタイムを短くすることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 ヒートポンプ
12 蒸発器
34 容器
52 吸着材
60 圧縮機構(圧縮部の一例)
80 配管(第一配管の一例)
90 配管(第二配管の一例)