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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】デジタルラジオグラフィー装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020514880
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2018016240
(87)【国際公開番号】W WO2019202722
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【弁理士】
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中矢 知宏
(72)【発明者】
【氏名】西野 和義
(72)【発明者】
【氏名】能登原 大介
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-020813(JP,A)
【文献】特開平10-201750(JP,A)
【文献】特開2011-067333(JP,A)
【文献】特開2006-218142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対してX線を照射するX線照射部と、
前記X線照射部から照射され前記被検体を通過したX線を検出する検出部と、
前記X線照射部に設定される複数の種別のX線条件パラメータ及び前記X線照射部と前記検出部との位置関係を示す位置パラメータで構成される所定の撮影条件で、少なくともX線照射部の制御を行う制御部と、
前記被検体の体厚情報を入力する入力部と、を備えたX線撮影装置であって、
前記制御部は、第1の撮影条件における前記複数の種別のX線条件パラメータおよび前記位置パラメータと、入力された前記体厚情報に対応する複数の選択肢の各々における前記複数の種別のX線条件パラメータおよび前記位置パラメータとの対比に基づき、前記第1の撮影条件から変更すべき前記複数の種別のX線条件パラメータおよび前記位置パラメータの少なくとも一方の種別の算出を行い、算出した種別の名称を複数の選択肢として表示する表示部と、
前記表示部に表示された複数の選択肢の一を選択可能に構成する選択部と、を備え、
前記制御部は、選択された選択肢に対応する前記複数の種別のX線条件パラメータおよび前記位置パラメータの少なくとも一方の種別についてのパラメータが前記第1の撮影条件から変更された第2の撮影条件を決定し、前記第2の撮影条件に基づいて制御を行うことを特徴とし、
前記複数の選択肢の各々についての前記複数の種別のX線条件パラメータおよび前記位置パラメータで定まるX線量が互いに略同一である、X線撮影装置。
【請求項2】
前記第1の撮影条件は、前記体厚情報が入力される際に設定されている前記X線条件パラメータおよび前記位置パラメータによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記第1の撮影条件は、標準体厚を有する被検体の撮影を想定して設定された、前記X線条件パラメータおよび前記位置パラメータによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記第2の撮影条件における選択された選択肢に対応する前記複数の種別のX線条件パラメータおよび前記位置パラメータの少なくとも一方の種別についてのパラメータを、当該種別の名称と併せて表示することを特徴とする、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記X線条件パラメータは、前記X線照射部に入力する電流、前記X線照射部に入力する電圧、前記X線照射部がX線を照射する時間、および、使用する金属フィルタの種類を含むことを特徴とする、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記入力部は、手動で入力されることを特徴とする、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記入力部は、外部装置から自動で入力されることを特徴とする、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記検出部が出力する検出信号に基づいてX線画像を形成する画像処理部を含み、
前記体厚情報とは、X線撮影画像であることを特徴とする、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数の種別のX線条件パラメータの各々のパラメータおよび前記位置パラメータのパラメータを記憶する記憶テーブルを有しており、選択された選択肢に対応する前記複数の種別のX線条件パラメータおよび前記位置パラメータの少なくとも一方の種別についてのパラメータを前記記憶テーブルから読み出すことで、第2の撮影条件を決定することを特徴とする、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項10】
DEXA(dual-energy X-ray absorptiometry)法による骨密度測定を行うことを特徴とする、請求項1に記載のX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に対してX線を照射するX線照射部と、前記X線照射部から照射され前記被検体を通過したX線を検出する検出部と、複数のパラメータで構成される所定の撮影条件でX線照射部の制御を行う制御部と、を備えたX線撮影装置に関し、特に、体厚に応じた撮影条件を設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線撮影装置100は、被検体Mに対してX線を照射するX線照射部110と、被検体180を通過したX線を検出する検出部120と、検出器120が出力する検出信号に基づいてX線画像を形成する画像処理部133と、撮影条件が入力される入力部130と、入力部130に入力された撮影条件に基づいてX線管制御部111と装置駆動制御部112を制御する制御部170とを備えている。X線管制御部111はX線照射部110に制御信号を送ることで、被検体に照射するX線の強度(照射時間、X線管電流)と特性(X線管電圧)を制御する。装置駆動制御部112はX線照射部110と検出部120を駆動することで、X線照射部110と被検体Mの距離(SID)を制御する。
【0003】
従来、被検体を通過したX線により被検体のX線画像を撮影する際、被検体の厚み(体厚)が大きいほど被検体内部におけるX線の散乱の発生、X線透過率の低下などの影響が大きくなり、取得されるX線画像の画質が変動するという問題がある。特に二重エネルギーX線吸収法(以下、DEXA法)と呼ばれる骨密度測定では、被検体の体厚が大きく線量不足となった場合、ノイズ量の増加により測定の安定性が低下する。
【0004】
上記問題に対応するために、ユーザーは撮影を行う前に、線量不足になりそうかどうかの判断をする必要がある。従来、ユーザーは被検体Mの体厚BTが標準よりも大きいと判断した場合、入力部130にて適切な撮影条件の設定を行うことでSIDやX線照射部110の設定値の変更を行っていた。この設定値の変更はユーザーの経験によるので、変更が可能なパラメータの種別は複数存在しているものの、ユーザーは慣習的に特定の種別のパラメータのみを変更することが多い。ユーザーが特定のパラメータ以外のパラメータを変更することを思いつくのは容易ではない。
【0005】
また、X線画像からの見積もりや超音波距離計測など種々の方法によって被検体の体厚を推定し、推定した体厚に応じて撮影条件を自動的に変更する技術が提案されている(例えば特許文献1)。この場合、ユーザーによって慣習的に変更される特定のパラメータ以外のパラメータを変更することが可能となる。しかしながら、上述の通り、被検体の体厚によらず所望の画質を得るために変更可能なパラメータの種別は複数あり、どのパラメータを変更することが装置の仕様、被検体の状況、測定環境等にとって最良であるかを検討したうえで撮影条件を決定することが望ましい。
【0006】
例えば、管電流を増加するとX線の発生器や管球への負荷が大きくなるため、被検体の体厚が大きくても、撮影の種類とX線撮影装置の仕様によっては、管電流の増加を避けたい場合がある。その場合、SIDや曝射時間の変更による対応を行うことが考えられる。
【0007】
一方、被検体の体動によるぼけや撮影時間の観点から、撮影の種類や被検体によっては、曝射時間の増加を避けたい場合がある。その場合、線量不足になりそうな際は、SIDを小さくすること、または、管電流を増加することが最適だと考えられる。
【0008】
また、撮影を行う病室が狭く、SIDの変更が難しい場合がある。このような場合には、管電流や曝射時間を小さくすることでSIDの可変範囲の狭さをカバーする必要がある。
【0009】
このように、被曝線量が同じであっても、最良の撮影条件はX線撮影装置の仕様、撮影の種類、被検体の状況、測定環境等によって異なる。すなわち、機械によって自動的に変更されたパラメータが、常に最適な撮影条件を構成するとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-136300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した問題を解決し、ユーザーが慣習的には思いつかないパラメータの変更を考慮することができるX線撮影装置を提供することを目的とする。また、装置の仕様、被検体の状況、測定環境等を考慮して、より最適な条件で撮影を行うことができるX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明におけるX線撮影装置は、被検体に対してX線を照射するX線照射部と、X線照射部から照射され被検体を通過したX線を検出する検出部と、X線照射部に設定される複数の種別のX線条件パラメータ及びX線照射部と検出部との位置関係を示す位置パラメータで構成される所定の撮影条件で、少なくともX線照射部の制御を行う制御部と、被検体の体厚情報を入力する入力部と、を備えたX線撮影装置であって、体厚情報の入力に伴って第1の撮影条件から変更すべきパラメータの種別の選択肢を複数表示する表示部と、表示部に表示された複数のパラメータの種別の一を選択可能に構成する選択部と、を備え、制御部は、入力部に入力された体厚情報と、選択されたパラメータの種別とに基づいて、第2の撮影条件を決定し、第2の撮影条件に基づいて制御を行うことを特徴とする。
【0013】
このように構成すれば、従来、ユーザーが慣習的には思いつかなかったパラメータの変更を考慮することができる。また、装置の仕様、被検体の状況、測定環境等を考慮して、より最適な条件で撮影を行うことができる。したがって、ユーザーの負担を軽減するとともに、再撮影による被検体の無駄被ばくを減らすことができる。
【0014】
本発明のX線撮影装置における第1の撮影条件は、体厚情報が入力される際に設定されているX線条件パラメータおよび位置パラメータによって構成されてもよい。
【0015】
本発明のX線撮影装置における第1の撮影条件は、標準体厚を有する被検体の撮影を想定して設定された、X線条件パラメータおよび位置パラメータによって構成されてもよい。
【0016】
また、本発明のX線撮影装置における表示部は、パラメータの変更度合いを表す推定値を、パラメータの種別に併せて表示してもよい。このように構成すれば、ユーザーはより容易に撮影条件を決定することができる。
【0017】
また、本発明のX線撮影装置において、パラメータは、X線照射部に入力する電流、X線照射部に入力する電圧、X線照射部がX線を照射する時間、および、使用する金属フィルタの種類を含んでもよい。
【0018】
また、本発明のX線撮影装置における入力部は、手動で入力される構成でもよい。このように構成すれば、外部装置から自動で入力される場合に比べて、装置の構成を単純化することができる。
【0019】
また、本発明のX線撮影装置における入力部は、外部装置から自動で入力される構成でもよい。このように構成すれば、ユーザーが手動で入力する場合に比べて、撮影準備作業が簡便になる。また、ユーザーによる体厚情報の入力ミスがなくなるため、より正確に撮影条件を提示することができる。
【0020】
また、本発明のX線撮影装置において、体厚に関する情報とは、X線撮影画像であってもよい。このように構成すれば、X線撮影装置に追加の構成を付加することなく、体厚情報を自動で取得することができる。
【0021】
また、本発明のX線撮影装置における制御部は、記憶テーブルを有していてもよく、記憶テーブルの情報に基づいて第2の撮影条件を決定してもよい。
【0022】
また、本発明のX線撮影装置において、DEXA(dual-energy X-ray absorptiometry)法による骨密度測定を行ってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のX線撮影装置によれば、従来、ユーザーが慣習的には思いつかなかったパラメータの変更を考慮することができる。また、装置の仕様、被検体の状況、測定環境等を考慮して、より最適な条件で撮影を行うことができる。したがって、ユーザーの負担を軽減するとともに、再撮影による被検体の無駄被ばくを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する概略図である。
図2】実施例1に係るX線撮影装置における制御部の動作を説明するフローチャートである。
図3】実施例1に係るX線撮影装置における表示部と選択部の態様を説明する図である。
図4】実施例1に係るX線撮影装置における制御部の動作を説明するフローチャートである。
図5】実施例1に係るX線撮影装置における記憶テーブルを示す図である。
図6】実施例2に係るX線撮影装置の構成を説明する概略図である。
図7】実施例3に係るX線撮影装置の構成を説明する概略図である。
図8】従来技術を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
【0026】
<全体構成の説明>
実施例1に係るX線撮影装置1は、図1に示すようにX線管10と検出器20と天板80とを備えている。天板は水平姿勢をとる被検体Mを載置させる。X線管10は被検体Mに対してX線を照射する。X線管10と検出器20は、天板を挟んで対向配置されている。検出器20はX線管10から被検体Mに向けて照射されて透過したX線を検出して電気信号に変換させ、X線検出信号として出力させる。実施例では、検出器20として、フラットパネルディテクタを用いることとする。
【0027】
X線管制御部11はX線管10に接続されており、制御部70の出力に基づいて、X線管10の管電圧、管電流、パルス幅などを制御する。これらの制御を行うことにより、X線管制御部11は、X線管10から照射させるX線量、およびX線を照射させるタイミングなどを制御することができる。
【0028】
装置駆動制御部12は、制御部70の出力に基づいて、X線管のZ軸方向の位置を変更させる。すなわち、X線管10と被検体Mとの距離(SID)、および検出器20との距離を変更できる。
【0029】
X線撮影装置1はさらにタッチパネルディスプレイTDと制御部70を備えている。タッチパネルディスプレイTDは、入力部30と、表示部50と、選択部60を有している。入力部30は、ユーザーによって被検体Mの体厚情報を入力される。実施例1では、被検体Mの体厚情報は実測した被検体Mの体厚とする。表示部50は、制御部70の出力に基づいて、選択肢として、変更すべきパラメータを複数種別表示する。選択部60は、ユーザーによって複数の選択肢のうち1つを選択される。
【0030】
制御部70は、入力部30からの出力に基づいて、変更すべきパラメータの種別を算出し、その結果を表示部50に出力する。その後、選択部60からの出力に基づいて、X線管制御部11および装置駆動制御部12に制御信号を出力する。
【0031】
制御部70は記憶テーブル41を有している。記憶テーブル41は、X線制御部11および装置駆動制御部12の制御に参照される各種パラメータの数値を、体厚情報と紐づけて記憶している。これらの数値は予め実験やシミュレーション等により求められていることが望ましい。
【0032】
<動作の説明>
次に図2図3図4および図5を参照してDEXA法による骨密度測定を行う際のX線撮影装置1の撮影条件の検討動作について説明する。
【0033】
ステップS0
X線撮影装置1は、DEXA法による骨密度測定が行われる際の標準撮影条件に設定されているものとする。標準撮影条件とは標準体厚に対応する撮影条件であり、撮影条件の各パラメータは、装置の仕様を考慮して最適と思われる値に設定されている。標準体厚とは、標準的な体型を有する成人被験者の体厚の基準値である。本実施形態における標準撮影条件の各パラメータの設定値は、図5の54に示される。
本実施形態における標準撮影条件は、本発明における第1の撮影条件の一例である。
【0034】
ユーザーは被検体Mの体厚を計測し、その結果を入力部30に入力する。体厚の計測方法は限定されないが、例えば巻尺等を用いて測定することが考えられる。入力部30に入力された体厚の情報は、制御部70へ出力される。制御部70に体厚の情報が入力されることによってステップS0の工程は終了する。ここでは、入力部30に入力した被検体の体厚が26cmであった場合について説明する。
【0035】
ステップS1(撮影条件変更要否の判断)
制御部70は入力された体厚と標準体厚とを比較する。標準体厚は、予め設定されていることが望ましい。ここでは、標準体厚が15から25 cmと記憶されている場合について説明する。
入力された体厚が標準体厚の範囲内である場合は、制御部による処理を終了して、撮影を開始する。このとき、撮影条件を変更する必要がないことがユーザーに分かるように表示部に表示してもよい。このとき、標準体厚の範囲内であっても、ステップS2の工程に移るようにしてもよい。
入力された体厚が標準体厚より小さい場合、および大きい場合はステップS2の工程に移る。標準体厚よりも被検体の体厚が大きいため、ステップS2の工程に移る。
【0036】
ステップS2(変更可能なパラメータと推定値の算出)
次に、制御部70は撮影の種類と被検体の体厚と記憶テーブル41を参照して、変更すべきパラメータの種別を算出する。さらに、制御部70は記憶テーブル41を参照して、推定値を算出する。図5は、記憶テーブル41に記憶されている、パラメータの種別と体厚に紐づけられた推定値である。記憶テーブル41には、撮影の種類に応じて変更可能なパラメータが記憶されている。記憶テーブル41には、変更するパラメータの種別と体厚に応じて、推定値が記憶されている。同じ体厚における各選択肢は、すべて、被検体を透過して検出器に入射するX線量が略同じになるように記憶されている。
撮影の種類がDEXA法による骨密度測定であって、被検体の体厚が26 cmである場合、制御部70は、変更可能なパラメータの種別が管電流とSIDであることを記憶テーブル41から読み出す。次に、管電流を変更する場合、SIDを変更する場合、管電流とSIDの両方を変更する場合のそれぞれの推定値を記憶テーブル41から読み出す。読み出した変更可能なパラメータの種別と推定値の情報を表示部50へ出力する。
【0037】
DEXA法による骨密度測定において変更可能なパラメータは、管電流と曝射時間とSIDの3種類である。本実施形態では、撮影全体にかかる時間をできるだけ短くするために、また被検体が動くことによるX線画像のボケを抑制するために、曝射時間をできるだけ小さくする構成とした。
【0038】
ステップS3(撮影条件の表示)
表示部50は、変更すべきパラメータの種別(管電流52a、SID52b、管電流とSID52c)をユーザーに認識できるように表示する。図3は、表示部50に変更すべきパラメータの種別がそれぞれ選択肢51a、51b、51cとして表示される様子を示している。また、それぞれのパラメータの種別ごとに推定値53a、53b、53cが表示される。
【0039】
ステップS4(ユーザーによる撮影条件の選択)
ユーザーは、選択部60を用いて、複数の選択肢51a、51b、51cから変更するのに最適なパラメータを選択する。ここでは、管電流を増加させる選択肢51aを選択した場合について説明する。本実施形態において管電流を250 mAに変更した撮影条件は、本発明における第2の撮影条件の一例である。
【0040】
ステップS5(ユーザーが選択した情報の取得)
ステップS4の工程が終了すると、制御部70はユーザーが選択した選択肢から、変更すべきパラメータの情報を取得する。この場合は、ユーザーが選択肢51aを選択したので、制御部70は「管電流を250mAに変更する」という情報を取得する。
【0041】
ステップS6(撮影条件の変更)
制御部70はステップS5で得た情報に基づいて、X線管制御部11および装置駆動制御部12に適宜制御信号を出力する。この場合は、X線管制御部11に対して制御信号を出力し、管電流を125 mAから250 mAに変更する。
【0042】
ここでは管電流を増加させる場合について記載したが、他のパラメータを変更する場合においても同様に制御を行う。例えば、SIDを変更する場合には、制御部70はステップS5で得た情報に基づいて、装置駆動制御部12に対して制御信号を出力する。装置駆動制御部12は自動でX線管10のZ軸方向の位置を変更する構成としてもよい。また、ユーザーが図示しない動作スイッチを押下することにより、X線管10のZ軸方向の位置を変更する構成としてもよい。この場合、ユーザーはステップS4で選択肢を選択した後、動作スイッチを押下する。押下している間、X線管10のZ軸方向の位置が変更され、SIDが推定値となった時点でストップする。ユーザーが動作スイッチを離すとステップS8に移行する。また、ユーザーが推定値を確認した後、手動でX線管10のZ軸方向の位置を変更する構成としてもよい。
【0043】
ステップS7
処理がすべて終了したことが、ユーザーに分かるように表示部50に表示を行う。表示を行うことによって、X線撮影装置1の撮影条件の検討動作に係る工程はすべて終了する。
【0044】
<実施例1の構成による効果>
以上のように、実施例1の構成によれば、従来、ユーザーが慣習的には思いつかなかったパラメータの変更を考慮することができる。また、装置の仕様、被検体の状況、測定環境等を考慮して、より最適な条件で撮影を行うことができる。したがって、ユーザーの負担を軽減するとともに、再撮影による被検体の無駄被ばくを減らすことができる。
【0045】
次に、図6を参照して本発明の実施例2を説明する。なお、実施例2に係るX線撮影装置の動作の工程のフローチャートは、図2および図4で示した実施例1に係るX線撮影装置と同様である。そのため各々の構成、および動作の工程については同符号を付して詳細な説明を省略し、実施例2について特徴的な被検体Mの体厚取得方法について説明する。
【0046】
<実施例2における体厚の取得>
実施例2に係るX線撮影装置において、体厚算出部32は距離算出部27から遂次送信されるX線管10から被検体Mの体表までの距離H1の情報に基づいて、被検体の体厚を算出する。具体的には、装置駆動制御部12から天板とX線管10の距離H2を取得し、H2-H1の計算を行うことで体厚を算出する。
【0047】
したがって、実施例2に係るX線撮影装置ではステップS0において、被検体Mを天板に載置し、距離算出部31と体厚算出部32によって体厚を自動的に測定、算出する。算出した体厚は、制御部70へ出力されステップS0の工程は終了する。実施例では、距離検出器31として、超音波計やレーザーを用いることが考えられる。
【0048】
<実施例2の構成による効果>
実施例2に係るX線撮影装置では、距離算出部31と体厚算出部32によって体厚が自動的に測定、算出される。このような構成を有することにより、より正確に被検体Mの体厚を取得することができる。体厚取得に係るユーザーの作業負担が軽減される。被検体Mの体厚計測時の体勢とX線画像撮影時の体勢が同じであるため、よりスムーズに撮影に移行することができる。
【0049】
<変形例>
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0050】
(1)上述した実施例1において、ユーザーは被検体Mの体厚を、巻尺等を用いて測定する構成としたが、これに限られない。例えば、身長と体重から体厚が求められることがわかっている(例えば、非特許文献1)ので、ユーザーは被検体Mの身長と体重を入力する構成としてもよい。
【0051】
非特許文献1:「体重と身長から体厚を求める方法」、日本放射線技術学会雑誌、第65卷第1号、50-56頁
【0052】
(2)上述した実施例2において、距離算出部27から体厚算出部32に信号出力する構成としたが、これに限られない。例えば、図7に示すように、画像処理部33から体厚算出部32に信号出力する構成にしてもよい。すなわち、被検体Mに対してテスト撮影を行い、テスト撮影によって得られたX線撮影画像から体厚を算出する。この場合、検出器20が出力する検出信号が画像処理部33に入力されるように構成し、画像処理部33は入力信号に基づいてX線画像を形成する。X線画像は体厚算出部32に入力され、体厚算出部32はX線画像から被検体Mの体厚を推定する。例えば、事前にファントムを用いた撮影を行い、ファントムの厚さ(体厚)に対する画素値の記憶テーブルを有する構成とする。テスト撮影によって得られたX線撮影画像の平均画素値と記憶テーブルから体厚を推定する。
【0053】
(3)上述した変形例(2)において、テスト撮影をおこないX線画像から体厚を推定する構成としたが、これに限られない。すなわち、テスト透視を行い、電流値から体厚を推定するように構成してもよい。この場合、所定の画素値に対して、体厚と電流値の組み合わせを記憶した記憶テーブルを有することが望ましい。
【0054】
(4)上述した各実施例において、DEXA法による骨密度測定が行われる場合を推定したが、これに限られない。すなわち、本発明内容は一般撮影に適応することができる。
【0055】
(5)変更するパラメータを管電流とSID、あるいはその両方のみとしたが、これに限られない。すなわち、各種パラメータの値を、現在設定されている値よりも、標準体厚の被検体を撮影した際に得られるX線画像の画質に近づくように変更する限りにおいて、パラメータの種類や数値を適宜設定することができる。パラメータ種別の例として、使用する金属フィルタ21の種類、X線の曝射時間、X線の電圧などがある。
【符号の説明】
【0056】
1 X線撮影装置
10 X線照射部
11 X線管制御部
12 装置駆動制御部
20 検出部
30 入力部
31 距離検出器
32 体厚算出部
33 画像処理部
41 記憶テーブル
50 表示部
60 選択部
70 制御部
80 天板
51 撮影条件
52 パラメータ
53 推定値
54 標準撮影条件
21 金属フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8