(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】エレベーターのブレーキ装置劣化予測システム
(51)【国際特許分類】
F16D 66/00 20060101AFI20220928BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
B66B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2020551700
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2018039046
(87)【国際公開番号】W WO2020079839
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】阪田 恒次
(72)【発明者】
【氏名】志賀 諭
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-214797(JP,A)
【文献】特開2008-230742(JP,A)
【文献】特開2007-091381(JP,A)
【文献】特開2016-222387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 66/00
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかごを制動するブレーキ装置が動作するときに前記ブレーキ装置の動作についての動作データを取得する観測部と、
前記観測部が取得する前記動作データを
、前記ブレーキ装置の劣化を表す劣化指標値を予め設定される時間単位ごと
に含む時系列データである指標データに変換する変換部と、
前記指標データが表す劣化の時間に対する変化を表すモデルとして、
前記時間単位に対して長期的な
単調変化の傾向を表すトレンド成分および周期的な変化を表す周期的成分を含む劣化モデルを生成する生成部と、
前記劣化モデルに基づいて前記ブレーキ装置の劣化時期を
前記劣化指標値が予め設定された閾値に達する時期として予測する予測部と、
を備えるエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項2】
前記変換部は、前記動作データに含まれるデータの特徴量を抽出し、前記特徴量に基づいて前記動作データを前記指標データに変換する請求項1に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項3】
前記ブレーキ装置の動作環境についての環境データに基づいて前記動作データを分類する分類部
を備え、
前記生成部は、前記分類部による分類ごとに前記劣化モデルを生成する請求項1または請求項2に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項4】
前記生成部は、前記トレンド成分および前記周期的成分を表すモデルを同時に生成することで前記劣化モデルを生成する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項5】
前記生成部は、前記トレンド成分
を表すモデルおよび前記周期的成分を表すモデルを
それぞれ生成することで前記劣化モデルを生成する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項6】
前記予測部は、前記劣化時期を予測するときに、当該劣化時期の予測の信頼度を算出する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項7】
前記生成部は、前記ブレーキ装置の保守点検の後に、前記劣化モデルを更新する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項8】
前記予測部に予測される前記劣化時期が保守点検の時期を基準として予め設定された範囲内である場合に、前記劣化時期を報知する報知部
を備える請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項9】
前記予測部に予測される前記劣化時期が保守点検の時期を基準として予め設定された範囲内であり、かつ、当該劣化時期の予測の信頼度が予め設定された基準より高い場合に、前記劣化時期を報知する報知部
を備える請求項6に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【請求項10】
前記動作データから前記ブレーキ装置の動作の異常を判定する判定部
を備え、
前記変換部は、前記判定部によって異常が発生したと判定される頻度を
前記劣化指標値に含めて、前記動作データを前記指標データに変換する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエレベーターのブレーキ装置劣化予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのブレーキ装置劣化予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に劣化予測システムの例が記載されている。劣化予測システムは、測定されたデータの変化量に基づいて、劣化予測に有効なデータを抽出する。劣化予測システムは、抽出されたデータに基づいて、劣化の閾値を算出する。劣化予測システムは、測定されるデータが劣化の閾値に達する時期を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の劣化予測システムは、時間に対する一次式を用いて劣化の閾値に達する時期を予測する。一方、エレベーターのブレーキ装置は、季節による変化の影響を受け得る。このため、特許文献1の劣化予測システムをエレベーターのブレーキ装置に適用する場合に、ブレーキ装置の劣化時期を精度よく予測できない。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされた。本発明の目的は、ブレーキ装置の劣化時期を精度よく予測できる劣化予測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエレベーターのブレーキ装置劣化予測システムは、エレベーターのかごを制動するブレーキ装置が動作するときにブレーキ装置の動作についての動作データを取得する観測部と、観測部が取得する動作データを、ブレーキ装置の劣化を表す劣化指標値を予め設定される時間単位ごとに含む時系列データである指標データに変換する変換部と、指標データが表す劣化の時間に対する変化を表すモデルとして、時間単位に対して長期的な単調変化の傾向を表すトレンド成分および周期的な変化を表す周期的成分を含む劣化モデルを生成する生成部と、劣化モデルに基づいてブレーキ装置の劣化時期を劣化指標値が予め設定された閾値に達する時期として予測する予測部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブレーキ装置劣化予測システムは、観測部と、変換部と、生成部と、予測部と、を備える。観測部は、エレベーターのかごを制動するブレーキ装置が動作するときにブレーキ装置の動作についての動作データを取得する。変換部は、観測部が取得する動作データを予め設定される時間単位ごとのブレーキ装置の劣化を表す指標データに変換する。生成部は、指標データが表す劣化の時間に対する変化を表すモデルとして、長期的な変化の傾向を表すトレンド成分および周期的な変化を表す周期的成分を含む劣化モデルを生成する。予測部は、劣化モデルに基づいてブレーキ装置の劣化時期を予測する。これにより、ブレーキ装置の劣化時期を精度よく予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システムの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システムによる劣化予測の例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システムの動作の例を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システムの主要部のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システム1の構成図である。
【0011】
ブレーキ装置劣化予測システム1は、エレベーター2に適用される。
【0012】
エレベーター2は、建築物3に設けられる。建築物3は、複数の階を有する。エレベーター2において、昇降路4は、建築物3の各階を貫く。エレベーター2において、乗場5は、建築物3の各階に設けられる。各階の乗場5は、昇降路4に対向する。エレベーター2において、複数の乗場扉6の各々は、各階の乗場5に設けられる。エレベーター2は、巻上機7と、主ロープ8と、釣合オモリ9と、かご10と、ブレーキ装置11と、制御盤12と、監視装置13と、を備える。
【0013】
巻上機7は、例えば昇降路4の上部に設けられる。巻上機7は、モーターと、シーブと、を備える。巻上機7のモーターは、シーブを回転させる装置である。
【0014】
主ロープ8は、巻上機7のシーブの回転に追従して移動しうるように、巻上機7のシーブに巻きかけられる。主ロープ8の一端は、かご10に設けられる。主ロープ8の他端は、釣合オモリ9に設けられる。
【0015】
釣合オモリ9は、主ロープ8の移動に追従して昇降路4の内部を鉛直方向に走行しうるように設けられる。
【0016】
かご10は、主ロープ8の移動に追従して昇降路4の内部を鉛直方向に走行しうるように設けられる。かご10は、かご扉14を備える。かご扉14は、かご10が建築物3の各階のいずれかに停止しているときに開閉する装置である。かご扉14は、乗場扉6を連動して開閉させる装置である。
【0017】
ブレーキ装置11は、かご10が停止しているときにかご10を制動する装置である。ブレーキ装置11は、ブレーキドラム15と、ブレーキシュー16と、コイル17と、プランジャー18と、バネ19と、ブレーキ制御装置20と、を備える。ブレーキドラム15は、巻上機7のモーターと同期して回転しうるように、巻上機7のモーターの出力軸に設けられる。ブレーキシュー16は、ブレーキドラム15の外面に対向する。ブレーキシュー16は、摩擦力によりブレーキドラム15の回転を制動することによって、かご10を制動する機器である。バネ19は、弾性力によりブレーキシュー16をブレーキドラム15に押し付ける機器である。コイル17は、通電によって磁界を発生させる機器である。プランジャー18は、コイル17が発生させる磁界によってバネ19の弾性力に抗しながらブレーキシュー16をブレーキドラム15から離れるように変位させる機器である。ブレーキ制御装置20は、ブレーキ装置11の動作を制御する装置である。ブレーキ装置11の動作は、吸引および釈放を含む。ブレーキ制御装置20は、吸引指令および釈放指令を出力する素子を搭載する。吸引指令は、ブレーキ装置11がかご10を制動するときに出力される。釈放指令は、ブレーキ装置11がかご10を解放するときに出力される。ブレーキ装置11は、バネ19の弾性力をブレーキシュー16に伝達するブレーキアームを備えてもよい。
【0018】
制御盤12は、例えば昇降路4の上部に設けられる。制御盤12は、エレベーター2の動作を制御する装置である。エレベーター2の動作は、例えばかご10の走行を含む。制御盤12は、エレベーター2の動作を制御しうるように、巻上機7およびブレーキ装置11に接続される。
【0019】
監視装置13は、例えば建築物3に設けられる。監視装置13は、エレベーター2の動作を監視する装置である。監視装置13は、エレベーター2の動作についてのデータを通信しうるように、制御盤12に接続される。
【0020】
エレベーター2において、図示されない動作計測装置と、環境計測装置と、が設けられる。
【0021】
動作計測装置は、ブレーキ装置11が動作するときに動作計測データを取得する装置である。動作計測データは、ブレーキ装置11の動作についての情報を表す多成分のデータである。動作計測装置の一部または全部は、例えばブレーキ装置11、巻上機7またはかご10に設けられる。動作計測装置は、例えば、センサー、スイッチなどを含む。動作計測装置は、例えば、電流計と、ブレーキスイッチと、エンコーダーと、を含む。
【0022】
電流計は、例えばコイル17に電力を供給する配線に設けられる。電流計は、コイル17に通電される電流を測定するセンサーである。ブレーキスイッチは、ブレーキ装置11に設けられる。ブレーキスイッチは、ブレーキ装置11の作動状態を検出するスイッチである。ブレーキ装置11の作動状態は、制動状態および解放状態を含む。ブレーキスイッチは、例えばブレーキ装置11の一部の機械的な変位を検出することによってブレーキ装置11の作動状態を検出する機構を備える。エンコーダーは、巻上機7のモーターに設けられる。エンコーダーは、巻上機7のモーターの回転角をパルス信号によって出力するセンサーである。
【0023】
動作計測データの各成分の情報は、制御盤12に出力される。あるいは、動作計測データの各成分の情報は、ブレーキ制御装置20を通じて制御盤12に出力される。制御盤12は、動作計測データを、信号データおよび算出データとともに動作データとして出力可能に記憶する。信号データは、制御信号の入力または出力の有無の情報を表す多成分のデータである。制御信号は、例えばブレーキ電圧指令、吸引指令、釈放指令、ブレーキ電圧指令およびブレーキ接点信号である。制御ソフトウェアの変数は、算出データの情報を含んでもよい。算出データは、動作計測データおよび信号データなどに基づいて算出される多成分のデータである。
【0024】
環境計測装置は、環境計測データを取得する装置である。環境計測データは、ブレーキ装置11の動作環境についての情報を表す多成分のデータである。環境計測装置の一部または全部は、例えばブレーキ装置11、巻上機7またはかご10に設けられる。環境計測装置は、例えば昇降路4に設けられる。複数の環境計測装置は、例えばはかりと、温度計と、を含む。
【0025】
はかりは、かご10に設けられる。はかりは、かご10に乗車している利用者などの重量を測定するセンサーである。温度計は、昇降路4に設けられる。温度計は、例えば気温を測定するセンサーである。温度計は、ブレーキ装置11に設けられてもよい。このとき、温度計は、例えばブレーキ装置11の温度を測定するセンサーである。
【0026】
環境計測データの各成分の情報は、制御盤12に出力される。あるいは、環境計測データの各成分の情報は、ブレーキ制御装置20を通じて制御盤12に出力される。制御盤12は、環境計測データを出力可能に記憶する。
【0027】
ブレーキ装置劣化予測システム1において、情報センター21は、例えば建築物3の外部に設けられる。情報センター21は、エレベーター2および他のエレベーターの情報を収集する拠点である。
【0028】
ブレーキ装置劣化予測システム1は、ブレーキ装置11の劣化時期を予測するシステムである。なお、ブレーキ装置劣化予測システム1は、ブレーキ装置11の異常を診断する機能を備えてもよい。
【0029】
ブレーキ装置劣化予測システム1は、データサーバー22と、保守支援装置23と、表示装置24と、を備える。
【0030】
データサーバー22は、例えば情報センター21に設けられる。データサーバー22は、エレベーター2の動作などの情報を通信しうるように、監視装置13に接続される。データサーバー22は、観測データ記憶部25と、属性データ記憶部26と、異常データ記憶部27と、を備える。
【0031】
観測データ記憶部25は、観測データベースを記憶する部分である。観測データベースは、複数の観測データを含む。観測データは、動作データおよび環境計測データを含む。
【0032】
属性データ記憶部26は、属性データベースを記憶する部分である。属性データベースは、複数の属性データを含む。属性データは、エレベーターの属性に基づくデータを含む。また、属性データは、ブレーキ装置の属性に基づくデータを含む。属性データは、例えばブレーキ装置の機種、かごの装置重量、エレベーターの種類およびエレベーターの設置地域などの情報を含む。エレベーターの種類は、例えば展望用エレベーターであるか否かなどの情報を含む。エレベーターの種類は、例えば昇降路の環境に関連する。エレベーターの種類は、例えばエレベーターの機種に関連する。エレベーターの設置地域は、例えば気候などを通じて昇降路の環境に関連する。エレベーターの設置地域は、例えば空気中の塩または硫黄などの濃度を通じて昇降路の環境に関連する。
【0033】
異常データ記憶部27は、異常履歴データベースを記憶する部分である。異常履歴データベースは、エレベーター2および他のエレベーターについて、ブレーキ装置11の異常を判定した複数のデータを含む。
【0034】
保守支援装置23は、例えば情報センター21に設けられる。保守支援装置23は、観測部28と、データ取得部29と、分類部30と、変換部31と、学習部32と、判定部33と、生成部34と、予測部35と、記憶部36と、報知部37と、を備える。
【0035】
観測部28は、ブレーキ装置11が動作するときに動作データを取得する部分である。観測部28は、動作データを含む観測データを取得しうるように監視装置13に接続される。
【0036】
データ取得部29は、実績データセットを生成する部分である。実績データセットは、生成される時点より過去に取得された環境データおよび動作データの複数の組を含む。環境データは、環境計測データおよび属性データを含む。データ取得部29は、観測データを取得しうるように、観測データ記憶部25に接続される。データ取得部29は、属性データを取得しうるように、属性データ記憶部26に接続される。
【0037】
分類部30は、環境データに基づいて動作データを分類する部分である。分類部30は、動作データを取得しうるように、観測部28に接続される。分類部30は、環境計測データおよび属性データを環境データとして取得しうるように、観測部28および属性データ記憶部26に接続される。分類部30は、実績データセットを取得しうるように、データ取得部29に接続される。
【0038】
変換部31は、動作データを状態データおよび指標データに変換する部分である。
【0039】
状態データは、多成分のデータである。状態データの各成分は、ブレーキ装置11の各故障現象に対応する。ブレーキ装置11の各故障現象は、例えば、リレースイッチの接点の固着、バネ19の劣化、ブレーキシュー16の位置のずれ、ブレーキ装置11の制動能力の低下、およびブレーキ制御装置20の電子回路の異常を含む。
【0040】
指標データは、ブレーキ装置11の劣化を表すデータである。指標データは、例えば予め設定される時間単位ごとの劣化指標値を表す時系列データである。劣化指標値は、ブレーキ装置11の劣化を表す指標となる値である。劣化指標値は、多成分の値であってもよい。ブレーキ装置11の劣化は、例えばブレーキシュー16の磨耗である。ブレーキ装置11の劣化は、例えばブレーキ装置11の制動能力を低下させる。ブレーキ装置11の制動能力の低下は、例えばブレーキ装置11におけるスリップの発生の要因となる。時系列データの時間単位は、例えば1日である。変換部31は、環境データに基づいて分類された動作データを取得しうるように、分類部30に接続される。
【0041】
学習部32は、状態データを用いてブレーキ装置11の異常の診断モデルを学習する部分である。学習部32による学習の手法は、機械学習の手法である。学習部32は、状態データを取得しうるように、変換部31に接続される。学習部32による学習は、例えば情報センター21のオペレーターによる学習を開始する操作によって行われる。
【0042】
判定部33は、学習部32による学習の後に観測部28が取得した動作データを変換部31が変換して得られる状態データから、学習部32が学習した診断モデルに基づいてブレーキ装置11の異常を判定する部分である。判定部33は、状態データを取得しうるように、変換部31に接続される。判定部33は、診断モデルを取得しうるように、学習部32に接続される。判定部33による判定は、例えば判定部33が起動しているときに状態データを取得する都度行われる。判定部33の起動は、例えば情報センター21のオペレーターによる起動の操作によって行われる。判定部33は、判定結果を出力しうるように、監視装置13に接続される。
【0043】
生成部34は、指標データが表す劣化の時間に対する変化を表す劣化モデルを生成する部分である。劣化モデルは、劣化指標値の将来にわたる変化を予測するモデルである。劣化モデルは、トレンド成分、周期的成分および短期変動成分を含む。トレンド成分は、増加または減少の単調な変化の長期的な傾向を表す成分である。周期的成分は、周期的な変化の傾向を表す成分である。短期変動成分は、短期的な変動を表す成分である。生成部34は、指標データを取得しうるように、変換部31に接続される。
【0044】
予測部35は、生成部34が生成した劣化モデルに基づいて、ブレーキ装置11の劣化時期を予測する部分である。ブレーキ装置11の劣化時期は、劣化指標値が予め設定された閾値に達する時期である。予測部35は、劣化モデルを読み込みうるように、生成部34に接続される。
【0045】
記憶部36は、判定結果データを記憶する部分である。判定結果データは、判定部33による判定の結果を表すデータである。記憶部36は、判定結果データを取得しうるように、判定部33に接続される。記憶部36は、予測結果データを記憶する部分である。予測結果データは、予測部35による予測の結果を表すデータである。記憶部36は、予測結果データを取得しうるように、予測部35に接続される。
【0046】
報知部37は、判定部33によるブレーキ装置11の異常の判定の結果を報知する部分である。報知部37は、判定結果データを取得しうるように、判定部33に接続される。報知部37は、予測部35によるブレーキ装置11の劣化時期の予測の結果を報知する部分である。報知部37は、予測結果データを取得しうるように、予測部35に接続される。報知部37は、判定結果データまたは予測結果データから報知データを生成する。報知データは、報知する内容を表すデータである。
【0047】
表示装置24は、取得したデータが表す内容を表示する装置である。表示装置24は、例えばディスプレイである。表示装置24は、例えば情報センター21に設けられる。表示装置24は、報知データを取得しうるように、報知部37に接続される。
【0048】
続いて、
図2を用いて、ブレーキ装置劣化予測システム1の機能を説明する。
図2は、実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システムによる劣化予測の例を示す図である。
【0049】
グラフAにおいて、指標データの例が示される。グラフAの横軸は、時間を表す。グラフAの縦軸は、劣化指標値を表す。グラフAにおいて、実線は変換部31により動作データから変換される指標データを表す。指標データが表すブレーキ装置11の劣化の時間に対する変化は、トレンド成分、周期的成分および短期変動成分を含む。グラフAにおいて、トレンド成分は単調増加の長期的な傾向を表す成分である。周期的成分は、周期的な変化の傾向を表す成分である。短期変動成分は、短期的な変動を表す成分である。グラフAにおいて、破線は予測部35による劣化指標値の予測の結果を表す。
【0050】
動作データは、例えば次のように取得される。
【0051】
制御盤12は、かご10が停止しているときに、ブレーキ装置11を動作させる信号をブレーキ制御装置20に出力する。
【0052】
ブレーキ制御装置20は、制御盤12から入力された制御信号にしたがって、ブレーキ装置11を動作させる。ブレーキ装置11が動作するときに、動作計測装置は、動作計測データを取得する。動作計測装置は、動作計測データをブレーキ制御装置20または制御盤12に出力する。ブレーキ装置11が動作するときに、環境計測装置は、環境計測データを取得する。環境計測装置は、環境計測データをブレーキ制御装置20または制御盤12に出力する。ブレーキ制御装置20は、入力された動作計測データおよび環境計測データを制御盤12に出力する。
【0053】
制御盤12は、動作計測データおよび制御信号などの情報に基づいて、算出データを算出する。算出データは、例えばエンコーダーのパルス信号のカウントから算出されるかご10の位置のデータを含む。算出データは、例えばブレーキ吸引指令信号を出力してからブレーキスイッチがブレーキ装置11の実際の動作を検出するまでの時間差のデータを含む。算出データは、例えばブレーキ装置11が制動の動作を継続している時間のデータを含む。算出データは、例えばブレーキ装置11の動作の頻度のデータを含む。制御盤12は、動作計測データ、信号データおよび算出データを動作データとして観測部28に監視装置13を通じて出力する。制御盤12は、環境計測データを観測部28に監視装置13を通じて出力する。
【0054】
観測部28は、制御盤12から監視装置13を通じて動作データおよび環境計測データを取得する。観測部28は、動作データおよび環境計測データを観測データとして観測データ記憶部25に出力する。
【0055】
観測データ記憶部25は、取得した観測データを観測データベースに格納する。観測データは、例えばフラグデータと、数値データと、波形データと、を含む。動作データは、例えばフラグデータと、数値データと、波形データと、を要素として含む。
【0056】
フラグデータは、例えば、スイッチが動作したか否か、センサーが動作したか否か、および制御信号の有無などの情報を含む。フラグデータは、真偽値、整数値または文字列などにより表現される。
【0057】
数値データは、例えば、センサーが計測した物理量の値などの情報を含む。数値データは、例えばコイル17に通電される電流、ブレーキ装置11が制動している継続時間、かご10の位置、気温、ブレーキ装置11の温度、ブレーキ装置11の動作の頻度、気温、およびかご10に乗車している利用者の重量を含む。数値データは、整数値または実数値などにより表現される。
【0058】
波形データは、例えば、センサーが計測した物理量の時間変化などの情報を含む。波形データは、例えば、コイル17に通電される電流のパターン変化、かご10の位置の時間変化、およびブレーキ温度の時間変化を含む。波形データは、予め定められた時間間隔毎の複数の数値を含むリストなどにより表現される。
【0059】
ブレーキ装置劣化予測システム1は、例えば情報センター21のオペレーターによる操作によって劣化予測を開始する。
【0060】
ブレーキ装置劣化予測システム1が劣化予測を開始するときに、データ取得部29は、実績データセットを生成する。データ取得部29は、現在を起点として予め設定された過去の期間の間に取得された複数の観測データを観測データ記憶部25から取得する。データ取得部29は、現在を起点として予め設定された過去の期間の間に取得された複数の属性データを属性データ記憶部26から取得する。データ取得部29は、取得した複数の観測データおよび複数の属性データを、複数の動作データおよび環境データとしてブレーキ装置11の動作の時刻に対応付ける。データ取得部29は、対応付けに基づいて実績データセットを生成する。データ取得部29は、分類部30に実績データセットを出力する。
【0061】
分類部30は、実績データセットに含まれる環境データに基づいて、当該環境データに対応する動作データを分類する。例えば環境データが分類用のラベリングデータを含む場合に、分類部30は、ラベリングデータの値が互いに等しい環境データに対応する動作データを同一のクラスターに分類する。あるいは、分類部30は、例えば教師なし学習の手法によって同一のクラスターに分類された環境データに対応する動作データを同一のクラスターに分類する。このとき、分類部30は、教師なし学習の手法として例えば非階層的な分類手法であるk平均法を用いる。あるいは、分類部30は、階層的な分類手法を用いてもよい。分類部30は、分類された動作データを変換部31に出力する。
【0062】
変換部31は、分類部30による分類ごとに、特徴量抽出工程と、標準化工程と、異常度算出工程と、予備工程と、の各工程を経て動作データを指標データに変換する。
【0063】
特徴量抽出工程において、変換部31は、分類された複数の動作データを複数の特徴データに変換する。変換部31は、動作データの成分ごとに1つ以上の特徴量を抽出する。動作データの要素が真偽値で表されるとき、変換部31は、真値または偽値から例えば+1または-1の数値を特徴量として抽出する。動作データの成分が数値で表されるとき、変換部31は、例えばその数値をそのまま特徴量として抽出する。例えば波形データなどにおいて動作データの成分が数値のリストで表されるとき、変換部31は、例えばリストに含まれる数値の平均値および標準偏差などを1つ以上の特徴量として抽出する。あるいは、動作データの成分が数値のリストで表されるとき、変換部31は、例えばリストに含まれる複数の数値をそのまま複数の特徴量として抽出する。変換部31は、ここに例示していない方法によって動作データの成分から特徴量を抽出してもよい。変換部31は、動作データの成分ごとに抽出された1つ以上の特徴量を成分として含む多成分の特徴データを生成する。
【0064】
標準化工程において、変換部31は、複数の特徴データを複数の標準化データに変換する。標準化データは、多成分のデータである。変換部31は、特徴データの各成分を標準化データの各成分に変換する。標準化データの成分は、例えばもとの動作データが含まれる分類についての平均が0になるようにそれぞれ標準化される。標準化データの成分は、例えばもとの動作データが含まれる分類についての標準偏差が1になるようにそれぞれ標準化される。
【0065】
異常度算出工程において、変換部31は、複数の標準化データを複数の異常度データに変換する。異常度データは、多成分のデータである。異常度データの各成分は、通常の状態からの違いを表す指標である。異常度データの各成分は、例えば、特徴データの各成分から算出される。変換部31は、例えば、特徴データの各成分について、平均値からの二乗偏差を分散で割ることによって異常度データの各成分を算出する。変換部31は、他の機械学習などの手法によって標準化データを異常度データに変換してもよい。
【0066】
予備工程において、変換部31は、複数の異常度データを指標データに変換する。変換部31は、予備的な処理として教師なし学習の手法を異常度データに適用する。教師なし学習の手法は、例えばPCA(Principal Component Analysis)による次元削減の手法である。変換部31は、予備的な処理が適用された複数の異常度データを、もとの動作データが取得された時刻に基づいて、予め設定された時間単位ごとに仕分ける。変換部31は、当該時間単位ごとに仕分けられた異常度データの値の平均値、最大値または累積値を、当該時間単位における劣化指標値とする。異常度データが多成分のデータであるとき、劣化指標値は、多成分の値であってもよい。変換部31は、劣化指標値の時系列データを指標データとして、分類部30による分類ごとに生成部34に出力する。
【0067】
生成部34は、取得した指標データについて分類部30による分類ごとに劣化モデルを生成する。生成部34は、分類部30による分類ごとの劣化モデルについて、トレンド成分および周期的成分を個別に生成する。生成部34は、トレンド成分および周期的成分を例えば回帰モデルによって個別に生成する。回帰モデルにおける回帰曲線は、例えば累積ワイブル分布関数、累積対数正規分布関数である。回帰モデルにおける回帰曲線は、例えば周期的な傾向を持つ曲線である。
【0068】
生成部34は、劣化モデルの生成が成功したかを判定する。生成部34は、例えば劣化モデルの残差に基づいて劣化モデルの生成の成否を判定する。あるいは、生成部34は、例えば劣化モデルをテスト用のデータに適用した場合の誤差に基づいて劣化モデルの生成の成否を判定する。例えば、生成部34が指標データの一部を劣化モデルの生成に用いた場合に、テスト用のデータは、指標データの残りの部分である。
【0069】
生成部34は、劣化モデルの生成が失敗したと判定する場合に、異なる手法によって再度劣化モデルを生成してもよい。例えば、生成部34は、異なる回帰曲線を用いてトレンド成分または周期的成分を生成してもよい。
【0070】
予測部35は、生成が成功したと判定された劣化モデルを読み込む。予測部35は、読み込んだ劣化モデルに基づいて劣化指標値の将来における値を予測する。予測部35は、劣化指標値の予測に基づいて、現在を起点として予め設定された将来の時期において、劣化指標値が閾値に達するかを判定する。閾値は、例えば劣化指標値に対して予め設定された値である。あるいは、閾値は、外れ値を判定する値として指標データから算出される値である。このとき、閾値は、例えば平均値に標準偏差の定数倍を加えた値である。あるいは、閾値は、過去に異常が発生したときの劣化指標値の値である。このとき、閾値は、例えば異常データ記憶部27が記憶している異常履歴データベースのデータに基づいて定められる。
【0071】
将来の時期において劣化指標値が閾値に達すると判定するとき、予測部35は、劣化指標値が閾値に達する劣化時期を予測する。
【0072】
予測部35は、劣化時期の予測の信頼度を算出する。劣化指標値の予測の信頼度は、例えば残差の標準偏差に基づいて算出される。
【0073】
予測部35は、予測結果データを記憶部36に出力する。予測結果データは、劣化予測時期および信頼度を含む。
【0074】
記憶部36は、判定結果を記憶する。
【0075】
予測部35は、判定結果データを報知部37に出力する。
【0076】
予測部35に予測される劣化時期が保守点検の時期を基準として予め設定された報知期間の範囲内である場合に、報知部37は、劣化時期を含む報知データを生成する。報知期間は、例えば保守点検が予定されている時期より前の期間である。あるいは、予測部35に予測される劣化時期が報知期間の範囲内であり、かつ、劣化時期の予測の信頼度が予め定められた基準より高い場合に、報知部37は、劣化時期を含む報知データを生成する。報知部37は、報知データを表示装置24に出力することによって、表示装置24を通じて報知データの内容を報知する。
【0077】
表示装置24は、報知データの内容を表示する。表示装置24は、例えば「劣化指標値が100%に達する時期は、3ヶ月後です。予測の信頼度は80%です。予定されている保守点検の時期は、6ヶ月後です。」などと表示する。あるいは、表示装置24は、例えば「現在の劣化指標値は50%です。過去の類似する100ケースのうち、40ケースについて保守点検がされています。来月の劣化指標値の予測値は70%です。過去の類似する100ケースのうち、80ケースについて保守点検がされています。」などと表示する。
【0078】
続いて、
図3を用いて、ブレーキ装置劣化予測システム1の劣化予測についての動作の例を説明する。
図3は、実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システムの動作の例を示すフローチャートである。
【0079】
ステップS1において、分類部30は、データ取得部29から実績データセットを取得する。分類部30は、実績データセットに含まれる環境データに基づいて、当該環境データに対応する動作データを分類する。その後、ブレーキ装置劣化予測システム1の動作は、ステップS2に進む。
【0080】
ステップS2において、変換部31は、分類部30による分類ごとに動作データを指標データに変換する。その後、ブレーキ装置劣化予測システム1の動作は、ステップS3に進む。
【0081】
ステップS3において、生成部34は、指標データについて分類部30による分類ごとに劣化モデルを生成する。その後、ブレーキ装置劣化予測システム1の動作は、ステップS4に進む。
【0082】
ステップS4において、予測部35は、劣化モデルを読み込む。予測部35は、読み込んだ劣化モデルに基づいて劣化指標値の将来における値を予測する。その後、ブレーキ装置劣化予測システム1の動作は、ステップS5に進む。
【0083】
ステップS5において、予測部35は、劣化指標値の予測に基づいて、将来において劣化指標値が閾値に達するかを判定する。判定結果がYesの場合に、ブレーキ装置劣化予測システム1の動作は、ステップS6に進む。判定結果がNoの場合に、ブレーキ装置劣化予測システム1の動作は、ステップS7に進む。
【0084】
ステップS6において、予測部35は、劣化時期を予測する。その後、ブレーキ装置劣化予測システム1の動作は、ステップS7に進む。
【0085】
ステップS7において、予測部35は、予測の結果を報知部37および記憶部36に出力する。その後、ブレーキ装置劣化予測システム1の動作は、終了する。
【0086】
以上に説明したように、実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システム1は、観測部28と、変換部31と、生成部34と、予測部35と、を備える。観測部28は、エレベーター2のかご10を制動するブレーキ装置11が動作するときにブレーキ装置11の動作についての動作データを取得する。変換部31は、観測部28が取得する動作データを予め設定される時間単位ごとのブレーキ装置11の劣化を表す指標データに変換する。生成部34は、指標データが表す劣化の時間に対する変化を表すモデルとして、長期的な変化の傾向を表すトレンド成分および周期的な変化を表す周期的成分を含む劣化モデルを生成する。予測部35は、劣化モデルに基づいてブレーキ装置11の劣化時期を予測する。
【0087】
予測部35は、周期的な変化を表す周期的成分によって、季節による変化などの影響を劣化モデルに取り込む。予測部35は、長期的な変化の傾向を表すトレンド成分によって、部品の消耗などの影響を劣化モデルに取り込む。これにより、ブレーキ装置11の劣化時期を精度よく予測できる。
【0088】
また、変換部31は、動作データに含まれるデータの特徴量を抽出する。変換部31は、特徴量に基づいて動作データを指標データに変換する。
【0089】
変換部31は、劣化予測において意味のある特徴量を抽出する。生成部34は、特徴量に基づいて変換された指標データに基づいて劣化モデルを生成する。これにより、精度の高い劣化モデルを生成することができる。
【0090】
また、ブレーキ装置劣化予測システム1は、分類部30を備える。分類部30は、ブレーキ装置11の動作環境についての環境データに基づいて動作データを分類する。生成部34は、分類部30による分類ごとに劣化モデルを生成する。
【0091】
変換部31は、意味のある分類に仕分けされたデータを用いて指標データへの変換処理を行うことができる。これにより、生成部34は、精度の高い劣化モデルを生成することができる。
【0092】
また、生成部34は、トレンド成分および周期的成分を表すモデルを成分ごとに生成することで劣化モデルを生成する。
【0093】
生成部34は、トレンド成分および周期的成分について、それぞれ独立に有効なモデルを利用して劣化モデルを生成できる。このため、劣化モデルの自由度が高くなる。また、生成部34は、トレンド成分および周期的成分について、指標データの対応する成分に個別に適合させることができる。このため、生成部34は、より堅牢に劣化モデルを生成できる。
【0094】
また、予測部35は、劣化時期を予測するときに、当該劣化時期の予測の信頼度を算出する。
【0095】
ブレーキ装置11の保守点検の計画は、劣化時期の予測に基づいて修正されてもよい。このとき、信頼度の高い劣化時期の予測が優先的に考慮されることで、保守点検の計画の確実性が高くなる。
【0096】
また、ブレーキ装置劣化予測システム1は、報知部37を備える。報知部37は、予測部35に予測される劣化時期が保守点検の時期を基準として予め設定された範囲内である場合に、劣化時期を報知する。
【0097】
劣化時期が保守点検の時期より前である場合に、ブレーキ装置11の保守点検を早める必要がある可能性がある。このような場合に、例えば情報センター21のオペレーターは、速やかに劣化時期の予測の結果を知ることができる。このため、保守点検の計画の修正がしやすくなる。
【0098】
また、報知部37は、予測部35に予測される劣化時期が保守点検の時期を基準として予め設定された範囲内であり、かつ、当該劣化時期の予測の信頼度が予め設定された基準より高い場合に、劣化時期を報知する。
【0099】
これにより、例えば情報センター21のオペレーターは、信頼度の高い劣化時期の予測に基づいて保守点検の計画を修正できる。
【0100】
なお、生成部34は、ブレーキ装置11の保守点検の後に、劣化モデルを更新してもよい。
【0101】
ブレーキ装置11の劣化の状態は、保守点検における例えば部品の交換などによって不連続に変化しうる。このため、保守点検の後において、劣化モデルの信頼度が低下することがある。このような場合に、生成部34は、劣化モデルを更新することで、劣化時期の予測の信頼度の低下を抑制できる。
【0102】
また、生成部34は、トレンド成分および周期的成分を表すモデルを同時に生成することで劣化モデルを生成してもよい。
【0103】
生成部34は、劣化モデルを例えばSARIMA(Seasonal AutoRegressive Integrated Moving Average)モデルにより生成する。あるいは、生成部34は、劣化モデルを例えば状態空間モデルにより生成する。このとき、劣化モデルは、例えば差分によってトレンド成分を含む。また、劣化モデルは、例えば季節差分によって周期的成分を含む。これにより、生成部34は、トレンド成分および周期的成分の相互の影響を考慮して劣化モデルを生成できる。
【0104】
また、ブレーキ装置劣化予測システム1は、動作データからブレーキ装置11の動作の異常を判定する判定部33を備える。ブレーキ装置11の劣化予測において、変換部31は、判定部33によって異常が発生したと判定される頻度をブレーキ装置11の劣化を表す指標の値に含めて、動作データを指標データに変換してもよい。
【0105】
ブレーキ装置11において異常が頻繁に発生する場合に、ブレーキ装置11の劣化が進んでいると推定しうる。生成部34は、異常発生の頻度を考慮した劣化モデルを生成できる。変換部31は、報知部37によって報知されない軽度の異常の頻度を劣化指標値として指標データに含めてもよい。
【0106】
変換部31は、動作データから指標データへの変換において、各工程の順序を入れ替えてもよい。変換部31は、動作データから指標データへの変換において、1つ以上の工程を省いてもよい。変換部31は、動作データから指標データへの変換において、時間単位を1月としてもよい。これにより、季節変化による影響がより明確に表される。
【0107】
変換部31は、異常度算出工程において、標準化データの複数の成分から1つの異常度成分を算出してもよい。これにより、ブレーキ装置劣化予測システム1は、標準化データの複数の成分の間の関係に生じた異常を検出できる。
【0108】
また、生成部34は、分類部30による1つの分類に対して複数の劣化モデルを生成してもよい。予測部35は、複数の劣化モデルからそれぞれ劣化時期を予測してもよい。予測部35は、予測した劣化時期から最も信頼度の高い劣化時期を予測の結果として出力してもよい。
【0109】
報知部37は、保守員が所持する保守端末に報知データを出力することで、報知データの内容を保守員に報知してもよい。報知部37は、複数の出力先に同時に報知データを出力することによって報知してもよい。
【0110】
データサーバー22が情報センター21に設けられることにより、ブレーキ装置劣化予測システム1は、エレベーター2および他のエレベーターの情報を利用できる。これにより、ブレーキ装置劣化予測システム1の劣化予測の精度が高められる。
【0111】
分類部30が情報センター21に設けられることにより、動作データの分類のアルゴリズムの更新などの保守が容易になる。変換部31が情報センター21に設けられることにより、動作データの変換のアルゴリズムの更新などの保守が容易になる。生成部34が情報センター21に設けられることにより、劣化モデルの生成のアルゴリズムの更新などの保守が容易になる。予測部35が情報センター21に設けられることにより、劣化時期の予測のアルゴリズムの更新などの保守が容易になる。
【0112】
保守支援装置23は、建築物3に設けられてもよい。このとき、保守支援装置23は、例えば制御盤12と直接通信する。保守支援装置23は、例えば監視装置13を通じてデータサーバー22と通信する。データサーバー22は、建築物3に設けられてもよい。
【0113】
ブレーキ装置劣化予測システム1の一部または全部の機能は、建築物3に設けられる装置において実現されてもよい。
【0114】
実施の形態1におけるシステム、装置、機器、部分などの間の電気的な接続は、直接的または間接的な接続のいずれであってもよい。実施の形態1におけるシステム、装置、機器、部分などの間のデータなどの通信は、直接的または間接的な通信のいずれであってもよい。
【0115】
続いて、
図4を用いてブレーキ装置劣化予測システム1のハードウェア構成の例について説明する。
図4は、実施の形態1に係るブレーキ装置劣化予測システムの主要部のハードウェア構成を示す図である。
【0116】
ブレーキ装置劣化予測システム1の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ1bと少なくとも1つのメモリ1cとを備える。処理回路は、プロセッサ1bおよびメモリ1cと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用のハードウェア1aを備えてもよい。
【0117】
処理回路がプロセッサ1bとメモリ1cとを備える場合、ブレーキ装置劣化予測システム1の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ1cに格納される。プロセッサ1bは、メモリ1cに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、ブレーキ装置劣化予測システム1の各機能を実現する。
【0118】
プロセッサ1bは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ1cは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等により構成される。
【0119】
処理回路が専用のハードウェア1aを備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0120】
ブレーキ装置劣化予測システム1の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、ブレーキ装置劣化予測システム1の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。ブレーキ装置劣化予測システム1の各機能について、一部を専用のハードウェア1aで実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、ハードウェア1a、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせでブレーキ装置劣化予測システム1の各機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係るブレーキ装置劣化予測システムは、エレベーターに適用できる。
【符号の説明】
【0122】
1 ブレーキ装置劣化予測システム、 2 エレベーター、 3 建築物、 4 昇降路、 5 乗場、 6 乗場扉、 7 巻上機、 8 主ロープ、 9 釣合オモリ、 10 かご、 11 ブレーキ装置、 12 制御盤、 13 監視装置、 14 かご扉、 15 ブレーキドラム、 16 ブレーキシュー、 17 コイル、 18 プランジャー、 19 バネ、 20 ブレーキ制御装置、 21 情報センター、 22 データサーバー、 23 保守支援装置、 24 表示装置、 25 観測データ記憶部、 26 属性データ記憶部、 27 異常データ記憶部、 28 観測部、 29 データ取得部、 30 分類部、 31 変換部、 32 学習部、 33 判定部、 34 生成部、 35 予測部、 36 記憶部、 37 報知部、 1a ハードウェア、 1b プロセッサ、 1c メモリ