(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】通信装置、制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/29 20150101AFI20220928BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20220928BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20220928BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20220928BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20220928BHJP
【FI】
H04B17/29 200
H04B7/08 420
H04W24/04
H04W16/28
H04W88/02 150
(21)【出願番号】P 2020567305
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2019002159
(87)【国際公開番号】W WO2020152812
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 淳悟
(72)【発明者】
【氏名】久保 康雄
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-54372(JP,A)
【文献】特開2007-288257(JP,A)
【文献】特開2002-9714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/29
H04B 7/08
H04W 24/04
H04W 16/28
H04W 88/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが無線の通信経路を介して他の通信装置と通信を行う複数の通信部と、
前記複数の通信部のそれぞれが、相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように、当該複数の通信部を支持する筐体と、
前記複数の通信部それぞれの動作を制御する通信制御部と、
を備え、
前記通信制御部は、
前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御し、
当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に関する処理の実行を制御する、
通信装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、
前記複数の通信部のうち第1の通信部が無線信号を受信している場合に、当該複数の通信部のうち当該第1の通信部とは異なる第2の通信部による無線信号の受信を抑制し、
前記第1の通信部による無線信号の受信結果に基づき当該第1の通信部の前記診断に係る処理の実行を制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記筐体の姿勢の変化を誘導する報知情報が所定の出力部を介して報知されるように制御する報知制御部を備え、
前記通信制御部は、前記報知情報が報知された後に、前記筐体の姿勢の変化に応じて、前記第1の通信部が無線信号を受信した場合に、前記第2の通信部による無線信号の受信を抑制する、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記報知制御部は、前記複数の通信部のうち、前記診断に関する処理の対象となっていない通信部が無線信号を受信可能となるように、前記筐体の姿勢の変化を誘導する前記報知情報が報知されるように制御する、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信部は、前記無線信号の受信に係る指向性ビームのパターンを制御可能に構成され、
前記通信制御部は、前記複数の通信部のうち対象となる通信部が、前記診断のために無線信号の受信に利用するビームのパターン数が他の通信部よりも多くなるように制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、基地局から送信されるダウンリンク信号の前記通信部による受信結果に基づき、当該通信部の前記診断に関する処理の実行を制御する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記基地局は、複数のビームパターンを選択的に切り替えて前記ダウンリンク信号を送信し、
前記通信制御部は、当該複数のビームパターンのうちのいずれかにより前記基地局から送信される前記ダウンリンク信号の受信結果に基づき、前記診断に関する処理の実行を制御する、請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信制御部は、前記基地局のカバレッジ内に位置する場合に、当該基地局から送信される前記ダウンリンク信号の受信結果を利用した前記診断に関する処理の実行を制御する、請求項6に記載の通信装置。
【請求項9】
前記通信制御部は、前記複数の通信部の少なくともいずれかから送信された無線信号の反射波の受信結果に基づき、当該複数の通信部のうち対象となる通信部の前記診断に関する処理の実行を制御する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信制御部は、前記複数の通信部のうちの少なくともいずれかの通信部による通信に関する履歴に応じて、前記診断の対象とする通信部を決定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信制御部は、前記複数の通信部のうちの少なくともいずれかの通信部が通信に使用される頻度に応じて、前記診断の対象とする通信部を決定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
前記通信制御部は、前記複数の通信部のうちの少なくともいずれかの通信部による通信に関するエラーの発生頻度に応じて、前記診断の対象とする通信部を決定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項13】
前記通信制御部は、所定の周波数帯の無線信号を受信可能な場合に、当該無線信号の受信結果を利用した前記診断に関する処理の実行を制御する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項14】
前記筐体は可動部を備え、
前記通信制御部は、前記可動部の状態に応じて、前記診断に関する処理の実行を制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項15】
相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように支持された複数の通信部それぞれの動作を制御する通信制御部を備え、
前記通信制御部は、
前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御し、
当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に係る処理の実行を制御する、
制御装置。
【請求項16】
コンピュータが、
相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように支持された複数の通信部それぞれの動作を制御することを含み、
前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御され、
当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に係る処理の実行が制御される、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置、制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LTE/LTE-Aに続く第5世代(5G)移動体通信システムについて各種検討が行われている。5Gでは、4G(LTE)よりもさらに高い周波数帯を使用した広帯域伝送により、10~20
Gbpsといった大容量通信を実現するための標準化が行われている。従来のセルラーシステムでは端末装置のモビリティに対応するためサービスエリアを面的に提供しているが、4Gで使用されている周波数帯よりもさらに高い周波数帯が使用されると従来のカバレッジを満たすことが困難となる場合がある。特に、6GHzより高い周波数帯ではカバレッジが狭いことに加え、非常に直進性が強いため、建物、人、乗り物などによる遮蔽により送受信装置が見通し外となり、十分な電波強度を得ることが困難となる場合がある。そのため、6GHz帯以下の帯域と組み合わせることでカバレッジを確保しつつ、6GHzより高い周波数帯のカバレッジ内では非常に高いスループットを実現することが想定されている。例えば、非特許文献1及び非特許文献2には、5Gにおいて、所謂ミリ波帯等のような、4Gで使用されている周波数帯よりもさらに高い周波数帯が使用されることが開示されている。
【0003】
上述の通り、6GHzより高い周波数帯を用いる場合には、伝搬損失が大きいだけでなく、人や乗り物など動く遮蔽物の存在により通信品質が大幅に劣化する可能性があり、安定した通信を実現することが困難となる場合がある。このような状況を想定し、例えば、端末装置に対して複数の通信部(例えば、アンテナモジュール)を備え、使用する通信部や適用するビームパターンを選択的に切り替えることで、データの送受信時における通信品質を確保する場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】3GPP TS38.101-2 V15.3.0 (2018-09),“NR; User Equipment(UE) radio transmission and reception; Part2: Range 2 Standalone(Release 15)”,平成30年10月,[平成30年12月26日検索]インターネット〈URL:http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/38_series/38.101-2/38101-2-f30.zip〉
【文献】3GPP TR38.901 V15.0.0 (2018-06),“Study on channel model for frequencies from 0.5 to 100 GHz(Release 15)”,平成30年6月,[平成30年12月26日検索]インターネット〈URL: http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/38_series/38.901/38901-f00.zip〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、複数の通信部のうち通信に利用する通信部が選択的に切り替えられるような状況下では、一部の通信部が故障等により動作が困難となったとしても、他の通信部が使用されることで通信が可能となる場合がある。また、6GHzより高い周波数帯を利用した通信を想定した場合に、一部の通信部に故障が発生して通信品質が劣化したとしても、当該通信品質の劣化が、当該故障によるものか、もしくは障害物等による無線信号の遮蔽に伴うものかを判別することが困難となる場合がある。
【0006】
そこで、本開示では、複数の通信部が無線通信に利用される状況下で、各通信部の動作の診断をより好適な態様で実現可能とする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、それぞれが無線の通信経路を介して他の通信装置と通信を行う複数の通信部と、前記複数の通信部のそれぞれが、相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように、当該複数の通信部を支持する筐体と、前記複数の通信部それぞれの動作を制御する通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御し、当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に関する処理の実行を制御する、通信装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように支持された複数の通信部それぞれの動作を制御する通信制御部を備え、前記通信制御部は、前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御し、当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に係る処理の実行を制御する、制御装置が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、コンピュータが、相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように支持された複数の通信部それぞれの動作を制御することを含み、
前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御され、当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に係る処理の実行が制御される、制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係るシステムの概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
【
図2】同実施形態に係る端末装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】ミリ波の利用を想定した通信装置の構成の一例について説明するための説明図である。
【
図4】同実施形態に係る端末装置に適用されるアンテナ装置の概略的な構成の一例を示した図である。
【
図5】同実施形態に係る端末装置に適用されるアンテナ装置の概略的な構成の他の一例を示した図である。
【
図6】複数の通信部を備える端末装置により形成される無線信号の送信または受信に係るビームパターンの一例について説明するための説明図である。
【
図7】同実施形態に係る通信装置における通信部の診断方法の一例について概要を説明するための説明図である。
【
図8】ビームフォーミング技術に基づき無線信号の指向性を制御することでビームが形成される場合の基地局の動作の一例について概要を説明するための説明図である。
【
図9】ビームフォーミング技術に基づき無線信号の指向性を制御することでビームが形成される場合の端末装置の動作の一例について概要を説明するための説明図である。
【
図10】比較例に係る通信装置による通信部の診断に係る動作の流れの一例について概要を説明するための説明図である。
【
図11】同実施形態に係る通信装置による通信部の診断に係る動作の流れの一例について概要を説明するための説明図である。
【
図12】変形例2に係る通信装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
【
図13】同実施形態に係るシステムを構成する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図14】同実施形態に係る通信装置の応用例について説明するための説明図である。
【
図15】同実施形態に係る通信装置の応用例について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.概略構成
1.1.システム構成の一例
1.2.端末装置の構成例
2.ミリ波の利用を想定した通信装置の構成例
3.技術的課題
4.技術的特長
4.1.概要
4.2.通信部の診断に係る制御の一例
4.3.変形例
5.ハードウェア構成
6.応用例
7.むすび
【0013】
<<1.概略構成>>
<1.1.システム構成の一例>
まず、
図1を参照して、本開示の一実施形態に係るシステム1の概略的な構成の一例について説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るシステム1の概略的な構成の一例について説明するための説明図である。
図1に示すように、システム1は、無線通信装置100と、端末装置200とを含む。ここでは、端末装置200は、ユーザとも呼ばれる。当該ユーザは、UEとも呼ばれ得る。無線通信装置100Cは、UE-Relayとも呼ばれる。ここでのUEは、LTE又はLTE-Aにおいて定義されているUEであってもよく、UE-Relayは、3GPPで議論されているProse UE to Network Relayであってもよく、より一般的に通信機器を意味してもよい。
【0014】
(1)無線通信装置100
無線通信装置100は、配下の装置に無線通信サービスを提供する装置である。例えば、無線通信装置100Aは、セルラーシステム(又は移動体通信システム)の基地局である。基地局100Aは、基地局100Aのセル10Aの内部に位置する装置(例えば、端末装置200A)との無線通信を行う。例えば、基地局100Aは、端末装置200Aへのダウンリンク信号を送信し、端末装置200Aからのアップリンク信号を受信する。
【0015】
基地局100Aは、他の基地局と例えばX2インタフェースにより論理的に接続されており、制御情報等の送受信が可能である。また、基地局100Aは、所謂コアネットワーク(図示を省略する)と例えばS1インタフェースにより論理的に接続されており、制御情報等の送受信が可能である。なお、これらの装置間の通信は、物理的には多様な装置により中継され得る。
【0016】
ここで、
図1に示した無線通信装置100Aは、マクロセル基地局であり、セル10Aはマクロセルである。一方で、無線通信装置100B及び100Cは、スモールセル10B及び10Cをそれぞれ運用するマスタデバイスである。一例として、マスタデバイス100Bは、固定的に設置されるスモールセル基地局である。スモールセル基地局100Bは、マクロセル基地局100Aとの間で無線バックホールリンクを、スモールセル10B内の1つ以上の端末装置(例えば、端末装置200B)との間でアクセスリンクをそれぞれ確立する。なお、無線通信装置100Bは、3GPPで定義されるリレーノードであってもよい。マスタデバイス100Cは、ダイナミックAP(アクセスポイント)である。ダイナミックAP100Cは、スモールセル10Cを動的に運用する移動デバイスである。ダイナミックAP100Cは、マクロセル基地局100Aとの間で無線バックホールリンクを、スモールセル10C内の1つ以上の端末装置(例えば、端末装置200C)との間でアクセスリンクをそれぞれ確立する。ダイナミックAP100Cは、例えば、基地局又は無線アクセスポイントとして動作可能なハードウェア又はソフトウェアが搭載された端末装置であってよい。この場合のスモールセル10Cは、動的に形成される局所的なネットワーク(Localized Network/Virtual Cell)である。
【0017】
セル10Aは、例えば、NR、LTE、LTE-A(LTE-Advanced)、LTE-ADVANCED PRO、GSM(登録商標)、UMTS、W-CDMA、CDMA200、WiMAX、WiMAX2又はIEEE802.16などの任意の無線通信方式に従って運用されてよい。
【0018】
なお、スモールセルは、マクロセルと重複して又は重複せずに配置される、マクロセルよりも小さい様々な種類のセル(例えば、フェムトセル、ナノセル、ピコセル及びマイクロセルなど)を含み得る概念である。ある例では、スモールセルは、専用の基地局によって運用される。別の例では、スモールセルは、マスタデバイスとなる端末がスモールセル基地局として一時的に動作することにより運用される。いわゆるリレーノードもまた、スモールセル基地局の一形態であると見なすことができる。リレーノードの親局として機能する無線通信装置は、ドナー基地局とも称される。ドナー基地局は、LTEにおけるDeNBを意味してもよく、より一般的にリレーノードの親局を意味してもよい。
【0019】
(2)端末装置200
端末装置200は、セルラーシステム(又は移動体通信システム)において通信可能である。端末装置200は、セルラーシステムの無線通信装置(例えば、基地局100A、マスタデバイス100B又は100C)との無線通信を行う。例えば、端末装置200Aは、基地局100Aからのダウンリンク信号を受信し、基地局100Aへのアップリンク信号を送信する。
【0020】
また、端末装置200としては、所謂UEのみに限らず、例えば、MTC端末、eMTC(Enhanced MTC)端末、及びNB-IoT端末等のような所謂ローコスト端末(Low cost UE)が適用されてもよい。
【0021】
(3)補足
以上、システム1の概略的な構成を示したが、本技術は
図1に示した例に限定されない。例えば、システム1の構成として、マスタデバイスを含まない構成、SCE(Small Cell Enhancement)、HetNet(Heterogeneous Network)、MTCネットワーク等が採用され得る。またシステム1の構成の、他の一例として、マスタデバイスがスモールセルに接続し、スモールセルの配下でセルを構築してもよい。
【0022】
以上、
図1を参照して、本開示の一実施形態に係るシステム1の概略的な構成の一例について説明した。
【0023】
<1.2.端末装置の構成例>
次に、
図2を参照して、本開示の実施形態に係る端末装置200の構成の一例を説明する。
図2は、本開示の実施形態に係る端末装置200の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、端末装置200は、アンテナ部2001と、無線通信部2003と、記憶部2007と、報知部2009と、検知部2011と、制御部2005とを含む。
【0024】
(1)アンテナ部2001
アンテナ部2001は、無線通信部2003により出力される信号を電波として空間に放射する。また、アンテナ部2001は、空間の電波を信号に変換し、当該信号を無線通信部2003へ出力する。
【0025】
(2)無線通信部2003
無線通信部2003は、信号を送受信する。例えば、無線通信部2003は、基地局からのダウンリンク信号を受信し、基地局へのアップリンク信号を送信する。
【0026】
(3)記憶部2007
記憶部2007は、端末装置200の動作のためのプログラム及び様々なデータを一時的に又は恒久的に記憶する。
【0027】
(4)報知部2009
報知部2009は、ユーザに対して各種情報を報知する。報知部2009の構成については、報知情報の報知方法に応じて適宜変更されてもよく、当該報知部2009として複数種類のデバイスが適用されてもよい。具体的な一例として、報知部2009は、所謂ディスプレイ等の表示部として構成されていてもよい。この場合には、報知部2009は、画像(例えば、動画像や静止画像)等のような表示情報を表示することで、各種情報をユーザに報知する。また、他の一例として、報知部2009は、所謂スピーカ等のような音響出力部として構成されていてもよい。この場合には、報知部2009は、音声等のような音響を出力することで、各種情報をユーザに報知する。また、報知部2009は、アクチュエータ等の振動部を備え、当該振動部を振動させることで触覚や力覚を模擬し、当該触覚や力覚の提示により各種情報をユーザに報知してもよい。もちろん、これらはあくまで一例であり、必ずしも報知情報の種類及び方法や、当該報知情報の報知に係る報知部2009の構成を限定するものではない。
【0028】
(5)検知部2011
検知部2011は、端末装置200の各種状態を検知する。具体的な一例として、検知部2011は、加速度センサや角速度センサ等のような各種センサを含み、端末装置200の筐体の姿勢の変化や、端末装置200の位置の変化等を検知してもよい。
(6)制御部2005
制御部2005は、端末装置200の様々な機能を提供する。制御部2005は、通信制御部2013と、判定部2015と、報知制御部2017とを含む。なお、制御部2005は、これらの構成要素以外の他の構成要素をさらに含み得る。即ち、制御部2005は、これらの構成要素の動作以外の動作も行い得る。
【0029】
通信制御部2013は、無線通信部2003の動作を制御することで、他の装置(例えば、基地局100)との間の通信を制御する。具体的な一例として、通信制御部2013は、送信対象となるデータを所定の変調方式に基づき変調することで送信信号を生成し、無線通信部2003に当該送信信号を基地局100に向けて送信させてもよい。また、他の一例として、通信制御部2013は、基地局100からの信号の受信結果(即ち、受信信号)を無線通信部2003から取得し、当該受信信号に対して所定の復調処理を施すことで当該基地局100から送信されたデータを復調してもよい。
【0030】
判定部2015は、各種判定を行う。例えば、判定部2015は、検知部2011による各種状態の検知結果に応じて、所望の判定を行ってもよい。具体的な一例として、判定部2015は、検知部2011による端末装置200の姿勢(筐体の姿勢)の変化の検知結果に基づき、当該端末装置200が所望の姿勢となったか否かを判定してもよい。
【0031】
報知制御部2017は、報知部2009を介した情報の報知を制御する。具体的な一例として、報知制御部2017は、通信制御部2013による通信の制御結果に応じて、各種報知情報を報知部2009に報知させてもよい。また、他の一例として、報知制御部2017は、判定部2015による各種状態の判定結果に応じて、各種報知情報を報知部2009に報知させてもよい。
【0032】
なお、
図2に示す構成はあくまで一例であり、必ずしも本実施形態に係る端末装置200の機能構成を限定するものではない。具体的な一例として、端末装置200の各構成のうち一部が当該端末装置200の外部に設けられていてもよい。より具体的な一例として、無線通信部2003に相当する部分が外部装置として端末装置200に外付けされていてもよい。また、他の一例として、制御部2005に相当する構成がチップ等のような外部装置として構成されており、端末装置200に装着されることでその機能が実現されてもよい。このように、無線通信部2003と制御部2005とが互いに異なる装置に設けられていてもよく、この場合には、制御部2005を備える装置が「制御装置」の一例に相当する。また、端末装置200の各構成のうち、少なくとも一部の構成が、複数のデバイスが互いに連携して動作することで実現されてもよい。
【0033】
以上、
図2を参照して、本開示の実施形態に係る端末装置200の構成の一例を説明した。
【0034】
<<2.ミリ波の利用を想定した通信装置の構成例>>
LTE/LTE-A等の規格に基づく通信システムでは、700MHz~3.5GHz前後の極超短波と呼ばれる周波数の無線信号が通信に利用されている。これに対して、LTE/LTE-Aに続く第5世代(5G)移動体通信システムでは、28GHzや39GHzといったミリ波と呼ばれる周波数の無線信号(以下、単に「ミリ波」とも称する)を利用した通信の利用が検討されている。そこで、以下に、ミリ波を利用した通信の概要について説明したうえで、ミリ波の利用を想定した通信装置の構成例について説明する。
【0035】
LTE/LTE-Aのような極超短波を利用した通信では、所謂MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)と呼ばれる技術を採用することで、フェージング環境下においても、直接波に加えて反射波を信号の送受信に利用して通信性能をより向上させることが可能である。
【0036】
これに対して、ミリ波は、極超短波に比べて伝送される情報の量を増加させることが可能となる一方で、直進性が高く伝搬ロスや反射損失が増大する傾向にある。そのため、無線信号が送受信されるアンテナ間を直接結ぶ経路上に障害物が存在しない環境(所謂LOS:Line of Site)においては、反射波の影響をほとんど受けずに、主に直接波が通信特性に寄与することとなる。このような特性から、ミリ波を利用した通信においては、例えば、スマートフォン等のような通信端末が、基地局から直接送信される無線信号(即ち、ミリ波)を受信する(即ち、直接波を受信する)ことで、通信性能をより向上させることが可能となる。
【0037】
次いで、ミリ波の利用を想定した通信装置の構成例として、前述した端末装置200のような通信装置に対して、アンテナ素子をアレイ化した所謂アレイアンテナを適用した場合の構成の一例について説明する。例えば、
図3は、ミリ波の利用を想定した通信装置の構成の一例について説明するための説明図である。なお、以降の説明では、
図3に示す通信装置を、便宜上「通信装置211」と称する場合がある。
【0038】
通信装置211は、略長方形の形状を成す表面及び裏面を有する板状の筐体209を備えている。なお、本説明では、ディスプレイ等の表示部が設けられた側の面を筐体209の表面と称する。即ち、
図3において、参照符号201は、筐体209の外面のうち裏面を示している。また、参照符号203及び205は、筐体209の外面のうち裏面201の周囲に位置する一端面に相当し、より具体的には、当該裏面201の長手方向に延伸する端面を示している。また、参照符号202及び204は、筐体209の外面のうち裏面201の周囲に位置する一端面に相当し、より具体的には、当該裏面201の短手方向に延伸する端面を示している。なお、
図3において図示を省略しているが、裏面201の反対側に位置する表面を、便宜上「表面206」と称する場合がある。
【0039】
また、
図3において、参照符号2110a~2110fのそれぞれは、基地局との間で無線信号(例えば、ミリ波)を送受信するためのアンテナ装置を示している。なお、以降の説明では、アンテナ装置2110a~2110fを特に区別しない場合には、単に「アンテナ装置2110」と称する場合がある。また、アンテナ装置2110(即ち、アンテナ装置2110a~2110fのそれぞれ)が、「通信部」の一例に相当し得る。
【0040】
図3に示すように、通信装置211は、裏面201及び端面202~205のそれぞれについて、当該面の少なくとも一部の近傍に位置するように、筐体209の内部にアンテナ装置2110が保持(設置)されている。
【0041】
また、アンテナ装置2110は、複数のアンテナ素子2111を含んでいる。より具体的には、アンテナ装置2110は、複数のアンテナ素子2111をアレイ化することで、アレイアンテナとして構成されている。例えば、アンテナ素子2111aは、裏面201のうち端面204側の端部近傍に位置するように保持され、複数のアンテナ素子2111が、当該端部が延伸する方向(即ち、端面204の長手方向)に沿って配列されるように設けられている。また、アンテナ素子2111dは、端面205の一部の近傍に位置するように保持され、複数のアンテナ素子2111が、当該端面205の長手方向に沿って配列されるように設けられている。
【0042】
また、
図3に示す例では、アンテナ素子2111として所謂パッチアンテナ(平面アンテナ)が適用されている。そのため、ある面の近傍に位置するように保持されるアンテナ装置2110において、各アンテナ素子2111は、平面状のエレメントの法線方向が、当該面の法線方向と略一致するように保持されている。より具体的な一例として、アンテナ装置2110aに着目した場合には、当該アンテナ装置2110aに設けられたアンテナ素子2111は、平面状のエレメントの法線方向が、裏面201の法線方向と略一致するように保持される。これは、他のアンテナ装置2110b~2110fについても同様である。
【0043】
以上のような構成により、各アンテナ装置2110は、複数のアンテナ素子2111それぞれにより送信または受信される無線信号の位相や電力を制御することで、当該無線信号の指向性を制御する(即ち、ビームフォーミングを行う)ことが可能となる。
【0044】
なお、
図3に示す構成はあくまで一例であり、必ずしも本開示の一実施形態に係る端末装置の構成を限定するものではない。具体的な一例として、アンテナ素子2111として、パッチアンテナ以外の他のアンテナ素子が適用されてもよい。即ち、複数のアンテナ素子2111それぞれにより送信または受信される無線信号の指向性を制御することが可能であれば、アンテナ装置2110の構成や、当該アンテナ装置2110に含まれるアンテナ素子2111の構成は特に限定されない。
【0045】
ここで、
図4及び
図5を参照して、本開示の一実施形態に係る端末装置に適用される通信部の構成の一例について説明する。
図4及び
図5は、本実施形態に係る端末装置に適用されるアンテナ装置の概略的な構成の一例を示した図である。
【0046】
まず、
図4に示すアンテナ装置の構成について説明する。
図4に示すアンテナ装置は、デジタルベースバンド(Digital base band)回路やRF(Radio Frequency)回路に対して、アンテナアレイを構成する複数のアンテナ素子が接続される場合の一例を示している。RF回路は、アンテナ素子を介して無線信号の送受信を行う。そのため、RF回路は、例えば、ダウンコンバータ及びADC等のような無線信号の受信に係る構成や、アップコンバータ及びDAC等の無線信号の送信に係る構成等を含み得る。また、
図4に示す例では、複数のアンテナ素子のそれぞれは、フェーズシフタを介してRF回路に接続されている。このような構成に基づき、各アンテナ素子を介して送受信される無線信号の位相が制御されることで、無線信号の指向性を制御することが可能となる。また、デジタルベースバンド回路は、送信対象となるデータを無線信号として送信するための変調処理や、無線信号の受信結果からのデータの復調処理等を行う。
図4に示す例では、デジタルベースバンド回路やRF回路に接続されたアンテナアレイを構成する一連のアンテナ素子が、本開示に係る「通信部」の一例に相当し得る。また、デジタルベースバンド回路、RF回路、及び一連のアンテナ素子を含むアンテナ装置が複数設けられている状況下では、各アンテナ装置が、本開示に係る「通信部」の一例に相当してもよい。
【0047】
次いで、
図5に示すアンテナ装置の構成について説明する。
図5に示すアンテナ装置は、アンテナ素子ごとにデジタルベースバンド回路やRF回路が設けられて、1つのユニットを構成している。このような構成の基で、1以上のアンテナ素子を含むようにグルーピングし、当該グループごとに各アンテナ素子を介して送受信される無線信号の位相が制御されることで、無線信号の指向性が制御される。即ち、
図5に示す例では、グループごとの一連のアンテナ素子(換言すると、グループに含まれる1以上のアンテナ素子)のそれぞれが、本開示に係る「通信部」の一例に相当し得る。また、グループごとの一連のアンテナ素子と、当該アンテナ素子に接続されたデジタルベースバンド回路やRF回路と、を含む構成(即ち、グルーピングされた一連のアンテナ装置)が、本開示に係る「通信部」の一例に相当してもよい。
【0048】
<<3.技術的課題>>
続いて、本開示の一実施形態に係る通信装置の技術的課題について説明する。
【0049】
前述の通り、5Gでは、4G(LTE)よりもさらに高い周波数帯を使用した広帯域伝送により、10~20
Gbpsといった大容量通信を実現するための標準化が行われている。従来のセルラーシステムでは端末装置のモビリティに対応するためサービスエリアを面的に提供しているが、4Gで使用されている周波数帯よりもさらに高い周波数帯が使用されると従来のカバレッジを満たすことが困難となる場合がある。特に、6GHzより高い周波数帯ではカバレッジが狭いことに加え、非常に直進性が強いため、建物、人、乗り物などによる遮蔽により送受信装置が見通し外となり、十分な電波強度が得られない場合がある。そのため、6GHz帯以下の帯域と組み合わせることでカバレッジを確保しつつ、6GHzより高い周波数帯のカバレッジ内では非常に高いスループットを実現することが想定されている。
【0050】
6GHzより高い周波数帯を用いる場合には、伝搬損失が大きいだけでなく、人や乗り物など動く遮蔽物の存在により通信品質が大幅に劣化する可能性があり、安定した通信を実現することが困難となる場合がある。このような状況を想定し、例えば、
図3に示すように、端末装置に対して複数の通信部(例えば、アンテナモジュール)を備えられ、使用する通信部や適用するビームパターンを選択的に切り替えることで、データの送受信時における受信品質を確保する場合がある。
【0051】
例えば、
図6は、複数の通信部を備える端末装置により形成される無線信号の送信または受信に係るビームパターンの一例について説明するための説明図である。
図6に示す例では、端末装置200は、複数の通信部220a~220dを備えている。通信部220a~220dのそれぞれは、相対的に互いに異なる方向に向けてビームが形成されるように、端末装置200の筐体に支持されている。具体的には、
図6に示す例では、端末装置200の筐体の上下、左右、及び表裏それぞれの方向に対してビームが形成される。
【0052】
より具体的な一例として、
図6の左図に示すように、端末装置200の上面方向(+y方向)から到来する無線信号を受信するために、通信部220aにより当該方向に向けてビーム#0(Rx beam #0)が形成されている。同様に、通信部220b、220c、及び220dのそれぞれにより、端末装置200の左面方向(-x方向)、下面方向(-y方向)、及び右面方向(+x方向)のそれぞれから到来する無線信号を受信するためのビーム#1~#3(Rx beam #1、#2、及び#3)が形成されている。また、
図6の右図に示すように、通信部220a~220dのいずれかにより、端末装置200の表面方向(+z方向)及び裏面方向(-z方向)のそれぞれから無線信号を受信するためのビーム(Rx beam #4及び#5)が形成されている。
【0053】
一方で、複数の通信部のうち通信に利用する通信部が選択的に切り替えられるような状況下では、一部の通信部が故障等により動作が困難となったとしても、他の通信部が使用されることで通信が可能となる場合がある。例えば、
図6に示す例において、通信部220bが故障により動作が困難となった場合に、ビーム#1を形成することが困難となり、結果として、端末装置200の左面方向(-y方向)から到来する無線信号を受信することが困難となる。
【0054】
特に、6GHzより高い周波数帯の無線信号は、端末装置の筐体自体を透過する際にも減衰が生じ得る。そのため、このような無線信号を通信に利用する通信部(アンテナモジュール)は、当該減衰に伴う受信電力の低下を考慮し、例えば、
図3に示す例のように、筐体のエッジ近傍に配置されることが考えられる。一方で、筐体のエッジ近傍に通信部が配置されることで、例えば、端末装置の落下等に伴う衝撃を受けて通信部の故障が生じる可能性も懸念される。即ち、
図3に示すように、端末装置が複数の通信部を備える構成とする場合には、当該複数の通信部のうち、一部の通信部が故障等により機能することが困難となる状況が想定され得る。これに対して、6GHzより高い周波数帯を利用した通信を想定した場合に、一部の通信部に故障が発生して通信品質が劣化したとしても、当該通信品質の劣化が、当該故障によるもの(即ち、機能不全に伴う通信品質の劣化)か、もしくは障害物等による無線信号の遮蔽に伴うもの(即ち、周囲の状況に応じた一時的な通信品質の劣化)かを判別することが困難となる場合がある。
【0055】
以上のような状況を鑑み、本開示では、複数の通信部が無線通信に利用される状況下で、各通信部の動作の診断をより好適な態様で実現可能とする技術を提案する。具体的には、本開示では、一部の通信部に故障が生じた場合においても、当該通信部の故障をより好適な態様で検出可能とする技術の一例について提案する。
【0056】
<<4.技術的特長>>
続いて、本開示の一実施形態に係る通信装置の技術的特徴について説明する。
【0057】
<4.1.概要>
まず、本実施形態に係る技術の概要として、複数の通信部のうち一部が故障等により機能することが困難となった場合に、当該通信部が故障していることを検出可能とする診断の流れについて説明する。例えば、
図7は、本開示の一実施形態に係る通信装置における通信部の診断方法の一例について概要を説明するための説明図である。
【0058】
図7に示す例では、基地局100から送信される無線信号(ダウンリンク信号)を端末装置200が備える通信部220a~220dのそれぞれで個別に受信し、受信結果に応じて各通信部220が正常に動作しているかを個別に診断する。具体的には、端末装置200は、通信部220a~220dのうち対象とする通信部220による基地局100からのダウンリンク信号の受信がより優先されるように制御し、当該受信結果に応じて当該通信部220の診断に係る各種処理を実行する。
【0059】
なお、
図7に示す例では、基地局100からのダウンリンク信号としてミリ波帯の無線信号が使用される場合を想定している。具体的には、基地局100は、ビームフォーミング技術に基づき無線信号の指向性を制御することでビームを形成し、ビームパターンを順次切り替えることで端末装置200との通信を空間的に多重化する。即ち、端末装置200は、順次切り替えられる当該ビームパターンのうちのいずれかにより基地局100から送信されるダウンリンク信号(無線信号)を各通信部220で受信することで、当該通信部220の診断に関する各種処理を実行する。なお、
図6に示す例では、端末装置200は、上下、左右、及び前後の6方向に無線信号の受信に係るビームを形成していたが、以降では説明を簡単にするために、上下及び左右の4方向に限定して説明する。
【0060】
具体的には、まず
図7の上段の図に示すように、複数の通信部220のうち一部の通信部220が基地局100から送信されるダウンリンク信号(DL Tx beam)を受信可能な状態で、当該通信部220の受信がより優先されるように制御される。例えば、
図7の上段の図では、通信部220bが診断の対象として選択されている。そのため、基地局100からのダウンリンク信号を通信部220bが受信している状態で、他の通信部220(即ち、通信部220a、220c、及び220d)による無線信号の受信に係る動作が抑制(ひいては無効化)されている。なお、この場合には、診断対象として選択されている通信部220bが「第1の通信部」の一例に相当し、通信部220b以外の他の通信部220(即ち、無線信号の受信に係る動作が抑制されている通信部220)が「第2の通信部」の一例に相当する。
【0061】
なお、
図7の上段の図に示す状態となれば、その方法や制御内容は特に限定されない。具体的な一例として、通信部220bが診断対象として決定された後、当該通信部220bが基地局100からのダウンリンク信号を受信可能となるような操作がなされるようにユーザの誘導が行われたうえで、他の通信部220bの動作が抑制されてもよい。ユーザの誘導方法としては、例えば、通信部220bが基地局100から送信されたダウンリンク信号の到来方向を向くように、端末装置200の姿勢を変化させる操作(例えば、筐体を回転させる操作)をユーザに促す方法が挙げられる。このとき、所定の報知方法により、ユーザに対して診断対象とする通信部220bが報知されてもよい。また、ユーザに対して上記操作を促す処理と、診断対象とする通信部220b以外の他の通信部220の動作の抑制に係る処理と、のそれぞれが実行される順番は特に限定されない。
【0062】
また、他の一例として、診断に係る処理の開始時に、基地局100からのダウンリンク信号を受信可能な状態にある通信部220(例えば、通信部220b)が診断対象として決定され、当該通信部220以外の他の通信部220の動作が抑制されてもよい。この場合には、所定の報知方法により、ユーザに対して診断対象とする通信部220bが報知されてもよい。また、ユーザに対する診断対象とする通信部220bの報知に係る処理と、診断対象とする通信部220b以外の他の通信部220の動作の抑制に係る処理と、のそれぞれが実行される順番は特に限定されない。
【0063】
そして、端末装置200は、通信部220bによる基地局100からのダウンリンク信号の受信結果に基づき、当該通信部220bの動作の診断に係る各種処理を実行する。具体的な一例として、端末装置200は、SSB(Synchronization signal/PBCH block)やCSI-RS(Channel-state information reference signal)等の参照信号を利用してダウンリンク信号の受信強度を測定し、当該測定結果に応じて通信部220bが正常に動作しているか否かを判定してもよい。この場合には、端末装置200は、例えば、当該受信強度が閾値以上の場合には通信部220bが正常に動作しているものと判断し、当該受信強度が閾値未満の場合には当該通信部220bに異常が発生しているものと判断してもよい。また、この場合には、例えば、TCI state(Transmission Configuration Indicator state)やSRS-SpatialRlationInfo等により指定されたSSBやCSI-RSにより上記測定が行われてもよい。また、測定期間は、例えば、ssb-periodicityServingCell(SSBのセットの送信間隔)や、periodic/semi-persistent CSI-RSの送信周期等に応じて決定されてもよい。また、測定期間については、サブキャリア間隔や使用される周波数帯域に応じて決定されてもよい。具体的な一例として、サブキャリア間隔がより広いほどアンテナ素子あたりの測定期間がより短くなるように制御されてもよい。また、使用される周波数帯がより高いほど、アンテナ素子あたりの測定期間がより短くなるように制御されてもよい。以上により、診断の対象となる通信部220bが正常に動作しているか否かを判定することが可能となる。
【0064】
通信部220bの診断に係る処理が終了すると、端末装置200は、診断対象となり得る他の通信部220(例えば、診断が行われていない通信部220)が存在するか否かを判定する。このとき、診断対象となり得る通信部220が存在しない場合には、端末装置200は、一連の通信部220の診断に係る処理の実行を終了する。これに対して、診断対象となり得る通信部220が存在する場合には、端末装置200は、診断対象となり得る通信部220の中から、次の診断対象とする通信部220を決定する。例えば、
図7の中段の図では、端末装置200は、診断が行われていない通信部220a、220c、及び220dの中から、通信部220aを次の診断対象として決定している。
【0065】
端末装置200は、通信部220aを次の診断対象として決定すると、当該通信部220aの動作の抑制を解除し(換言すると、通信部220aを有効化し)、当該通信部220aが基地局100からのダウンリンク信号を受信可能な状態となるようにユーザを誘導する。当該誘導の方法の一例として、端末装置200は、通信部220aが基地局100からのダウンリンク信号の到来方向を向くように、端末装置200の姿勢を変化させる操作を促す報知情報V101を、報知部(例えば、ディスプレイ等の出力部)を介してユーザに報知してもよい。具体的な一例として、
図7に示す例では、報知情報V101として、端末装置200の筐体の回転方向を示す表示情報や、当該回転後の端末装置200の筐体の姿勢を示す表示情報が、ディスプレイを介して提示されている。また、このとき、所定の報知方法により、ユーザに対して次の診断対象となる通信部220aが報知されてもよい。もちろん、
図7に示す報知情報V101はあくまで一例であり、端末装置200の筐体が所望の姿勢となるような操作が行われるようにユーザを誘導することが可能であれば、その方法は特に限定されない。また、通信部220aが基地局100からのダウンリンク信号を受信可能な状態となるようにユーザを誘導する処理と、当該通信部220aの動作の抑制を解除する処理と、のそれぞれが実行される順番は特に限定されない。
【0066】
次いで、
図7の下段の図に示すように、報知情報V101による誘導を受けたユーザによる操作に伴い、端末装置200の姿勢の変化に伴い、次の診断対象となる通信部220aが、基地局100からのダウンリンク信号を受信可能な状態となったものとする。このとき、端末装置200は、従前に診断対象であった通信部220bの動作を抑制する(ひいては、通信部220bの動作を無効化する)。そして、端末装置200は、通信部220aによる基地局100からのダウンリンク信号の受信結果に基づき、当該通信部220aの動作の診断に係る各種処理を実行する。
【0067】
以上のようにして、端末装置200は、診断対象となる通信部220を順次切り替えながら当該通信部220の診断に係る各種処理を実行することで、複数の通信部220それぞれが正常に動作しているか否かを個別に判定する。このとき、
図7に示したように複数の通信部220の診断に利用される基地局100からの無線信号は共通のため、一部の通信部220に故障等が生じている場合には、当該一部の通信部220のみ診断結果が異常となる。即ち、以上のような制御により、複数の通信部220のうち一部の通信部220が故障等により機能することが困難となった場合においても、当該一部の通信部220を検出することが可能となる。
【0068】
以上、本実施形態に係る技術の概要として、
図7を参照して、複数の通信部のうち一部が故障等により機能することが困難となった場合に、当該通信部を検出可能とする診断の流れについて説明した。
【0069】
<4.2.通信部の診断に係る制御の一例>
続いて、本開示の一実施形態に係るシステムにおける、端末装置200による通信部220の診断に係る制御の一例について、特に、端末装置200が診断対象となる通信部220による無線信号の受信を優先する制御に着目してより詳細に説明する。
【0070】
まず、前提として、ビームフォーミング技術に基づき無線信号の指向性を制御することでビームが形成される場合の基地局100及び端末装置200の動作について概要を説明する。
【0071】
例えば、
図8は、ビームフォーミング技術に基づき無線信号の指向性を制御することでビームが形成される場合の基地局100の動作の一例について概要を説明するための説明図である。具体的な一例として、120kHz subcarrier spacingが適用される場合におけるSS/PBCH block(SSB)は、1slot(14 OFDM symbols)=0.125msとなる。また、SSBのセットは、5ms以下で送信される。例えば、
図8に示す例では、伝送時間間隔(TTI:Transmission TimeInterval)を0.25ms(即ち、2スロット分の期間)とし、当該TTI内においてSSBのセットを送信している。このような前提の基で、基地局100(gNB)は、
図8に示すように、SSBのセット内において複数のビームパターン(例えば、方向が互いに異なる複数のビームパターン)を選択的に順次切り替えながらSSBの送信を行う。
【0072】
また、
図9は、ビームフォーミング技術に基づき無線信号の指向性を制御することでビームが形成される場合の端末装置200の動作の一例について概要を説明するための説明図である。具体的には、端末装置200が備える複数の通信部220のうち少なくとも一部の通信部220は、形成可能な複数のビームパターンの候補の中から、無線信号(例えば、ダウンリンク信号)の受信に使用するビームパターンを決定する。
図9に示す例では、説明をより簡単にするために、通信部220a~220dのそれぞれが対応する方向に対して3つのビームパターンを形成可能に構成されている場合について示している。即ち、
図9に示す例では、端末装置200の上下、左右、及び前後の6方向それぞれに対して3つのビームパターンを形成可能となる。もちろん、各通信部220は、3つよりも多くのビームパターンを形成可能に構成されていてもよい。このような構成の基で、端末装置200は、例えば、無線信号の受信電力が最も高い、通信部220と、当該通信部220が形成するビームパターンと、の組み合わせを、無線信号の受信に使用する通信部220及びビームパターンの組み合わせとして決定する。なお、
図9に示す例では、端末装置200が上下、左右、及び前後の6方向にビームパターン(例えば、無線信号の受信に係るビーム)を形成する場合について示しているが、前述したように、以降では説明を簡単にするために、上下及び左右の4方向に限定して各種説明を行う。
【0073】
次いで、本開示の一実施形態に係るシステムの特徴をよりわかりやすくするために、比較例として、
図9に示す端末装置200による各通信部220の診断に係る動作の流れの一例について説明する。例えば、
図10は、比較例に係る通信装置(端末装置200)による通信部の診断に係る動作の流れの一例について概要を説明するための説明図である。
図10において、受信期間TR1~TR6のそれぞれは、基地局100からのダウンリンク信号の受信に係る単位期間を模式的に示しており、例えば、
図8を参照して説明したSSBのセットが送信される期間(例えば、2スロット分の期間)に相当する。
【0074】
図10に示すように、比較例に係る端末装置200は、受信期間ごとに無線信号の受信に使用する通信部220とビームパターンとの組み合わせを順次切り替えながら、当該通信部220の診断に係る処理を実行する。
【0075】
具体的には、
図10に示す例では、端末装置200は、受信期間TR1、TR2、TR3、及びTR4において、通信部220b、220a、220d、及び220cの順で診断対象とする通信部220を順次切り替えている。また、このとき端末装置200は、各通信部220において当該通信部220が形成可能な複数のビームパターンのうちいずれかを使用し、基地局100からのダウンリンク信号の受信を試みることで、当該通信部220の診断に係る処理を実行する。具体的には、受信期間TR1、TR2、TR3、及びTR4において、Rx beam #11、#01、#31、及び#21で示したビームパターンが、無線信号の受信に使用されるビームパターンとしてそれぞれ選択されている。
【0076】
また、受信期間TR5以降については、各通信部220の診断が再度実行される。このとき、従前の診断(即ち、受信期間TR1~TR4で実行された診断)において、無線信号の受信に使用されたビームパターンとは異なるビームパターン(即ち、まだ診断に使用されていないビームパターン)が選択されてもよい。具体的な一例として、受信期間TR5では、通信部220bが再度診断対象として選択される。このとき、無線信号の受信に使用されるビームパターンとして、従前の診断(即ち、受信期間TR1における診断)で使用されたRx beam #11とは異なるビームパターン、即ち、Rx beam #12で示されたビームパターンが選択されている。同様に、受信期間TR6では、通信部220aが再度診断対象として選択される。このとき、無線信号の受信に使用されるビームパターンとして、従前の診断(即ち、受信期間TR2における診断)で使用されたRx beam #01とは異なるビームパターン、即ち、Rx beam #02で示されたビームパターンが選択されている。
【0077】
このように、比較例に係る端末装置200は、通信部220a~220d間に対して優先度を設定せずに、各通信部220の診断を順次行う。
【0078】
続いて、
図11を参照して、本開示の一実施形態に係る端末装置200による各通信部220の診断に係る動作の流れの一例について説明する。
図11は、本実施形態に係る通信装置(端末装置200)による通信部の診断に係る動作の流れの一例について概要を説明するための説明図である。
図11において、受信期間TR1~TR6のそれぞれは、
図10に示す例と同様に、基地局100からのダウンリンク信号の受信に係る単位期間を模式的に示しており、例えば、
図8を参照して説明したSSBのセットが送信される期間に相当する。
【0079】
図11に示す例は、端末装置200が備える複数の通信部220のうち、対象として選択された通信部220による無線信号の受信がより優先して実行されるように制御が行われる点で、
図10を参照して説明した例と異なる。具体的には、
図11に示す例では、通信部220a~220dのうち、通信部220bが対象として選択されている。そのため、通信部220bによる無線信号の受信が、他の通信部220による無線信号の受信よりも優先されるように制御が行われている。
【0080】
具体的には、
図11に示す例では、受信期間TR1~TR3において、通信部220bを対象として、当該通信部220bが形成可能なビームパターンそれぞれを使用した無線信号の受信が行われている。即ち、受信期間TR1、TR2、及びTR3において、Rx beam #11、#12、及び#13で示したビームパターンが順次選択されている。
図11に示す例を
図10に示す例と比較するとわかるように、本実施形態に係る端末装置200は、対象となる通信部220bが無線信号を受信する頻度が他の通信部220(即ち、通信部220a、220c、及び220d)に比べてより高くなるように制御する。このような制御により、対象となる通信部220bに関する測定が実行される頻度がより高くなるため、当該通信部220bの診断に係る精度をより向上させることが可能となる。
【0081】
また、
図11に示す例では、受信期間TR4以降においても通信部220bが対象として選択されている。これにより、当該通信部220bの診断に係る精度をさらに向上させることが可能となる。
【0082】
一方で、対象となる通信部220(例えば、通信部220b)に関する測定が実行される頻度が他の通信部220に比べてより高くなれば、当該他の通信部220に関する測定が行われてもよい。具体的な一例として、受信期間TR4、TR5、及びTR6において、通信部220a、220c、及び220dに関する測定が行われてもよい。この場合には、通信部220a、220c、及び220dのそれぞれについては、形成可能なビームパターンのうち一部(例えば、1つのビームパターン)についてのみ測定が実行されてもよい。換言すると、対象となる通信部220が、他の通信部220に比べて、測定に利用されるビームの数がより多くなるように制御されてもよい。
【0083】
また、
図7を参照して説明した例のように、対象として選択された一部の通信部220について測定が行われている際に、他の通信部220による無線信号の受信が抑制(ひいては、無効化)されていてもよい。
【0084】
なお、
図11に示す例では、受信期間TR1~TR6それぞれの長さが略等しい場合について説明したが、必ずしも本実施形態に係る端末装置200による通信部220の診断に係る動作を限定するものではない。即ち、受信期間の長さが必ずしも一定ではない場合においても、対象となる通信部220に関する測定が実行される頻度が他の通信部220に関する測定が実行される頻度よりも高くなるように制御されれば、本開示に係る技術の範囲内に含まれ得る。
【0085】
以上、
図8~
図11を参照して、本開示の一実施形態に係るシステムにおける、端末装置200による通信部220の診断に係る制御の一例について、特に、端末装置200が診断対象となる通信部220による無線信号の受信を優先する制御に着目してより詳細に説明した。
【0086】
<4.3.変形例>
続いて、本開示の一実施形態に係る技術の変形例について説明する。
【0087】
(変形例1:移動体への適用例)
まず、変形例1として、端末装置200が、ドローン、自動走行車、自律移動型のロボット等のように自らが移動可能に構成された所謂移動体として構成されている場合における、通信部220の診断に係る制御の一例について説明する。
【0088】
端末装置200が移動体として構成されている場合には、当該端末装置200自体の移動等の動作により、当該端末装置200の位置や姿勢を変化させることが可能となる。そのため、本変形例に係る端末装置200は、例えば、対象となる通信部220の診断が可能な状態となるように、自身の位置や姿勢の制御を行ってもよい。
【0089】
具体的な一例として、端末装置200は、通信部220の診断に際し、ミリ波のカバレッジ内に移動してもよい。なお、ミリ波のカバレッジに関する情報については、例えば、以前に実行されたミリ波を利用した通信の結果に基づき認識することが可能である。また、端末装置200は、ミリ波を利用した通信とは異なる他の通信(例えば、LTE、NR Sub6、WiFi(登録商標)等、ミリ波よりも低い周波数帯を利用した通信)を利用して、ミリ波のカバレッジに関する情報を他の装置(例えば、基地局やアクセスポイント等)から取得してもよい。
【0090】
より具体的な一例として、端末装置200がドローンとして構成されている場合には、当該ドローン(端末装置200)が飛行する高度に応じて各通信部の受信感度が変化する場合もある。このような場合には、当該端末装置200は、対象となる通信部が無線信号(例えば、ミリ波)を受信可能となるように、飛行する高度を調整してもよい。
【0091】
なお、端末装置200が各通信部220の診断を実行する契機については特に限定されず、想定されるユースケースに応じて適宜設定することが可能である。具体的な一例として、端末装置200は、ユーザからの通信部220の診断に係る指示を受けた場合に、少なくともと一部の通信部220の診断に係る処理を実行してもよい。この場合には、端末装置200は、ユーザからの上記指示を受けて、ミリ波のカバレッジ内に移動し、対象となる通信部220の診断を開始してもよい。また、このとき、端末装置200は、対象となる通信部220が基地局100からのダウンリンク信号を受信可能となるように、自身の姿勢を制御してもよい。
【0092】
また、端末装置200は、自身の状態に応じて少なくとも一部の通信部220の診断に係る処理を自律的に実行してもよい。具体的な一例として、端末装置200は、複数の通信部220それぞれの使用状態を監視し、当該監視の結果に応じて少なくとも一部の通信部220の診断に係る処理を実行してもよい。より具体的には、端末装置200は、複数の通信部220それぞれの未使用期間を監視してもよい。そして、端末装置200は、少なくとも一部の通信部220の未使用期間が閾値を超えた場合に、当該通信部220の診断に係る処理を実行してもよい。なお、この場合には、端末装置200は、ミリ波のカバレッジ内に移動し、対象となる通信部220の診断を開始してもよい。また、このとき、端末装置200は、対象となる通信部220が基地局100からのダウンリンク信号を受信可能となるように、自身の姿勢を制御してもよい。
【0093】
また、端末装置200は、少なくとも一部の通信部220の診断が可能な状態であることを検知した場合に、当該通信部220の診断に係る処理を実行してもよい。具体的な一例として、端末装置200は、ミリ波のカバレッジ内に移動した場合に、基地局100とミリ波を利用した通信が可能な通信部220を対象として診断に係る処理を実行してもよい。この場合には、端末装置200は、上記診断に係る処理を自律的に実行してもよい。また、他の一例として、端末装置200は、ユーザによる事前の指示に基づき通信部220の診断がスケジュールされている場合に、上記診断に係る処理を実行してもよい。
【0094】
以上、変形例1として、端末装置200が、ドローン、自動走行車、自律移動型のロボット等のように自らが移動可能に構成された所謂移動体として構成されている場合における、通信部220の診断に係る制御の一例について説明した。
【0095】
(変形例2:可動部を有する通信装置への適用例)
続いて、変形例2として、端末装置200が筐体の一部に可動部を有する場合における、通信部220の診断に係る制御の一例について説明する。
【0096】
例えば、
図12は、変形例2に係る通信装置の概略的な構成の一例について説明するための説明図であり、筐体の一部に可動部を有する端末装置の構成の一例について概要を示している。なお、以降の説明では、
図12に示す端末装置を、前述した実施形態や他の変形例に係る端末装置と区別するために、「端末装置250」と称する場合がある。これに対して、本変形例に係る端末装置と、前述した実施形態や他の変形例に係る端末装置と、を特に区別しない場合には、単に「端末装置200」と称する場合がある。
【0097】
図12に示す端末装置250は、所謂「foldable smart phone」として構成されている。具体的には、端末装置250は、筐体251及び253と、可動部255と、通信部260a~260eとを含む。
【0098】
筐体251及び253のそれぞれは、略長方形の形状を成す表面及び裏面を有する板状に形成されている。筐体251及び253は、一方に対して他方が回動可能となるように、一方の端部と他方の端部とが可動部255を介して接続されている。可動部255は、所謂ヒンジ等のような一方に対して他方を回動可能に支持する部材として構成され得る。このような構成により、端末装置250は、筐体251及び253の一方に対して他方を回動させることで、開閉可能に構成されている。
【0099】
通信部260a~260eのそれぞれは、
図7に示す端末装置200における通信部220(即ち、通信部220a~220d等)に相当する。
図12に示す例では、通信部260b~260dのそれぞれは、筐体251を基点として相対的に互いに異なる方向に向けてビームが形成されるように、当該筐体251に支持されている。また、通信部260a及び260eのそれぞれは、筐体253を基点として相対的に互いに異なる方向に向けてビームが形成されるように、当該筐体253に支持されている。
【0100】
以上のような構成により、
図12に示す端末装置250は、可動部255の状態(即ち、開閉状態)に応じて、通信部260a~260eのうち少なくとも一部の通信部260の位置や姿勢が変化し得る。具体的な一例として、筐体251の姿勢を固定したうえで、当該筐体251に対して筐体253を回動させた場合には、当該筐体253に支持された通信部260eの位置や姿勢が当該回動の状態(即ち、可動部255の状態)に応じて変化する。即ち、通信部260eが形成するビームの方向が、可動部255の状態に応じて変化することとなる。そのため、端末装置250全体の姿勢が固定された状況下においても、可動部255の状態(即ち、開閉状態)に応じて通信部260eの位置や姿勢が変化し得るため、当該通信部260eの診断に際し、当該通信部260eの位置や姿勢の変化を考慮する必要が生じ得る。
【0101】
以上のような状況を鑑み、変形例2に係る端末装置250は、可動部255の状態に応じて、少なくとも一部の通信部260の診断に係る処理の実行を制御する。
【0102】
具体的な一例として、端末装置250は、可動部255が所定の状態(例えば、端末装置250が開いた状態)にある場合に、各通信部260の診断に係る処理を実行してもよい。この場合には、端末装置250は、可動部255が所定の状態にない場合には、報知部を介して所定の報知情報をユーザに報知することで、当該状態となるようにユーザを誘導してもよい。具体的な一例として、端末装置250は、閉じた状態にある場合には、開いた状態に遷移させる操作がなされるようにユーザを誘導し、当該開いた状態への遷移の検知結果に応じて通信部260の診断に係る処理を開始してもよい。
【0103】
なお、可動部255の状態の検知方法については特に限定されない。具体的な一例として、磁気センサ、光センサ、接触センサ等の各種センサを利用することで端末装置250の開閉状態(換言すると、可動部255の状態)を検知することが可能である。また、他の一例として、エンコーダ等を利用することで、可動部255の状態が検知されてもよい。
【0104】
また、他の一例として、端末装置250は、可動部255の状態に応じて各通信部260の位置や姿勢を認識し、当該認識の結果に応じて各通信部260の診断に係る処理を実行してもよい。具体的には、可動部255の状態に応じて、筐体251及び253のうち一方に対する他方の相対的な姿勢を認識することが可能である。また、加速度センサや角速度センサ等の検知結果を利用することで、端末装置250全体の位置や姿勢の変化を検知することが可能である。そして、これらの情報を組み合わせることで、各通信部260の位置や姿勢を認識することが可能となり、ひいては、各通信部260により形成されるビームの方向を認識することが可能となる。即ち、端末装置250は、当該認識の結果に基づき、対象となる通信部260が基地局100からのダウンリンク信号を受信可能となるようにユーザを誘導し、当該誘導に応じて当該通信部260がダウンリンク信号を受信可能となった場合(例えば、所定の姿勢となった場合)に、当該通信部260の診断に係る処理を実行してもよい。
【0105】
なお、
図12に示す構成はあくまで一例であり、必ずしも本変形例に係る端末装置250の構成を限定するものではない。即ち、可動部を備え、当該可動部の状態に応じて少なくとも一部の通信部260の位置や姿勢(換言すると、当該通信部260が形成するビームパターン)が変化し得る場合には、本変形例に係る技術を適用することが可能である。一方で、可動部の状態に関わらず各通信部260の位置や姿勢が変化しない場合には、前述した実施形態と同様の制御に基づき各通信部260の診断を実行することが可能である。
【0106】
以上、変形例2として、
図12を参照して、端末装置200が筐体の一部に可動部を有する場合における、通信部220の診断に係る制御の一例について説明した。
【0107】
(変形例3:端末装置からの無線信号の反射波を利用した診断方法)
続いて、変形例3として、端末装置自身が無線信号を送信し、当該無線信号の反射波を通信部の診断に利用する場合の一例について説明する。
【0108】
前述した実施形態では、端末装置200は、基地局100から送信されるダウンリンク信号の受信結果に基づき各通信部220の診断に係る処理を実行していた。これに対して、本変形例に係る端末装置200は、少なくとも一部の通信部220から無線信号を送信し、実空間内の物体等による反射に伴う当該無線信号の反射波を対象となる通信部220で受信し、当該受信結果に基づき当該通信部220の診断に係る処理を実行する。このような構成により、基地局100からのミリ波を利用したダウンリンク信号を受信することが困難な状況下においても、各通信部220の診断に係る処理を実行することが可能となる。
【0109】
なお、端末装置200から送信される無線信号を反射させる反射物については、当該無線信号を反射することが可能なものであれば特に限定されず、特に、金属等のように電波を反射しやすいものであればなお良い。具体的な一例として、ユーザの手等が反射物として利用されてもよい。また、他の一例として、建物の壁面等が反射物として利用されてもよい。
【0110】
また、無線信号を送信する通信部220と、当該無線信号受信する通信部220と、の関係についても特に限定はされない。即ち、診断対象となる通信部220が、無線信号の送信と、当該無線信号の受信と、を行う構成としてもよい。また、他の一例として、診断対象と異なる通信部220が無線信号の送信を行い、診断対象となる通信部220が当該無線信号の受信を行う構成としてもよい。
【0111】
また、端末装置200は、通信部220の診断の開始に際し、診断対象となる通信部220の位置や姿勢に応じて、報知情報の報知によりユーザに対して反射物の設置を促してもよいし、当該反射物の設置位置をユーザに指示してもよい。具体的な一例として、
図7を参照して説明した例のように、診断対象となる通信部220の選択結果に応じて、報知情報が報知されることで、ユーザに対して端末装置200の姿勢の変化の誘導がなされるとともに、上記反射物の設置の誘導がなされてもよい。もちろん、この場合においても、ユーザへの診断対象となる通信部220の通知、他の通信部220による無線信号の受信に係る動作の抑制、端末装置200の姿勢の変化の誘導、及び反射物の設置に関する誘導それぞれの処理が実行される順序は特に限定されない。また、この場合には、反射物として利用する物体に応じて、報知情報の内容が適宜変更されてもよい。具体的な一例として、通信部220の診断に係る設定として、反射物としてユーザの手を利用する設定と、反射物として建物の壁面等を利用する設定と、のいずれが適用されているかに応じて、報知情報の内容が変更されてもよい。
【0112】
以上、変形例3として、端末装置自身が無線信号を送信し、当該無線信号の反射波を通信部の診断に利用する場合の一例について説明した。
【0113】
(変形例4:診断対象とする通信部の決定方法の一例)
続いて、変形例4として、端末装置200自身が複数の通信部220の中から診断対象とする通信部220を決定する場合における、当該診断対象とする通信部220の決定方法の一例について説明する。
【0114】
例えば、端末装置200は、複数の通信部220それぞれの通信履歴に応じて、診断対象とする通信部220を決定してもよい。具体的な一例として、使用履歴が新しい通信部220については、前回通信が行われたタイミングからの経過期間が短く、その期間中に故障が発生している可能性がより低いため、正常に動作している可能性が高い。一方で、使用履歴が古くなるほど、前回通信が行われたタイミングからの経過期間が長くなり、その期間中に故障が発生している可能性がより高くなる。このような状況を鑑み、例えば、端末装置200は、使用履歴がより古い通信部220を優先して診断対象として選択してもよい。
【0115】
また、他の一例として、端末装置200は、複数の通信部220それぞれにおける無線通信に係る所定のエラーの発生頻度や、当該エラーに伴う処理の発生頻度等に応じて、診断対象とする通信部220を決定してもよい。例えば、Beam failure recoveryが頻発している通信部220は、他の通信部220に比べて故障が発生している可能性が高くなる。このような状況を鑑み、端末装置200は、Beam failure recoveryの発生頻度がより高い通信部220を優先して診断対象として選択してもよい。
【0116】
もちろん、上記はあくまで一例であり、必ずしも本変形例に係る端末装置200による診断対象とする通信部220の決定方法を限定するものではない。即ち、端末装置200が、複数の通信部220の中から、故障が発生している可能性がより高い通信部220を特定することが可能であれば、その方法は特に限定されない。
【0117】
以上、変形例4として、端末装置200自身が複数の通信部220の中から診断対象とする通信部220を決定する場合における、当該診断対象とする通信部220の決定方法の一例について説明した。
【0118】
<<5.ハードウェア構成>>
続いて、
図13を参照しながら、本実施形態に係るシステムを構成する情報処理装置(例えば、
図2に示す端末装置200)のハードウェア構成の一例について説明する。
図13は、本開示の一実施形態に係るシステムを構成する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0119】
本実施形態に係る撮像システムを構成する情報処理装置900は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、情報処理装置900は、更に、ホストバス907と、ブリッジ909と、外部バス911と、インタフェース913と、入力装置915と、出力装置917と、ストレージ装置919と、ドライブ921と、接続ポート923と、通信装置925とを備える。
【0120】
CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置919又はリムーバブル記録媒体927に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。なお、
図2を参照して前述した制御部2005の各構成(即ち、通信制御部2013、判定部2015、及び報知制御部2017)は、例えば、CPU901により実現され得る。
【0121】
ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。また、外部バス911には、インタフェース913を介して、入力装置915、出力装置917、ストレージ装置919、ドライブ921、接続ポート923及び通信装置925が接続される。
【0122】
入力装置915は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ、レバー及びペダル等、ユーザが操作する操作手段である。また、入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、情報処理装置900の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器929であってもよい。さらに、入力装置915は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。情報処理装置900のユーザは、この入力装置915を操作することにより、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0123】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプ等の表示装置や、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンタ装置等がある。出力装置917は、例えば、情報処理装置900が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、情報処理装置900が行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。なお、
図2を参照して前述した報知部2009は、例えば、出力装置917により実現され得る。
【0124】
ストレージ装置919は、情報処理装置900の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置919は、CPU901が実行するプログラムや各種データ等を格納する。なお、
図2を参照して前述した記憶部2007は、例えば、ストレージ装置919により実現され得る。
【0125】
ドライブ921は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体927は、例えば、DVDメディア、HD-DVDメディア又はBlu-ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体927は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CF:CompactFlash)、フラッシュメモリ又はSDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体927は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
【0126】
接続ポート923は、情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート923の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート等がある。接続ポート923の別の例として、RS-232Cポート、光オーディオ端子、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート923に外部接続機器929を接続することで、情報処理装置900は、外部接続機器929から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器929に各種のデータを提供したりする。
【0127】
通信装置925は、例えば、通信網(ネットワーク)931に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置925は、例えば、有線若しくは無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置925は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ又は各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置925は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置925に接続される通信網931は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。なお、
図2を参照して前述した無線通信部2003は、例えば、通信装置925により実現され得る。
【0128】
以上、本開示の実施形態に係る撮像システムを構成する情報処理装置900の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。なお、
図13では図示しないが、本実施形態に係る撮像システムを構成する情報処理装置900に対応する各種の構成を当然備える。
【0129】
なお、上述のような本実施形態に係る撮像システムを構成する情報処理装置900の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。また、当該コンピュータプログラムを実行させるコンピュータの数は特に限定されない。例えば、当該コンピュータプログラムを、複数のコンピュータ(例えば、複数のサーバ等)が互いに連携して実行してもよい。なお、単数のコンピュータ、または、複数のコンピュータが連携するものを、「コンピュータシステム」とも称する。
【0130】
<<6.応用例>>
続いて、本開示の一実施形態に通信装置の応用例として、スマートフォンのような通信端末以外の装置の一例について説明する。
【0131】
近年では、IoT(Internet of Things)と呼ばれる、多様なモノをネットワークにつなげる技術が注目されており、スマートフォンやタブレット端末以外の装置についても、通信に利用可能となる場合が想定される。そのため、例えば、移動可能に構成された各種装置に対して、本開示に係る技術を応用することで、当該装置についても、ミリ波を利用した通信が可能となる。
【0132】
例えば、
図14は、本実施形態に係る通信装置の応用例について説明するための説明図であり、本開示に係る技術をカメラデバイスに応用した場合の一例を示している。具体的には、
図14に示す例では、カメラデバイス300の筐体の外面のうち、互いに異なる方向を向いた面301及び302それぞれの近傍に位置するように、本開示の一実施形態に係るアンテナ装置が保持されている。例えば、参照符号311は、本開示の一実施形態に係るアンテナ装置を模式的に示している。このような構成により、
図14に示すカメラデバイス300は、例えば、面301及び302それぞれについて、当該面の法線方向と略一致する方向に伝搬する無線信号を送信または受信することが可能となる。なお、
図14に示した面301及び302のみに限らず、他の面にもアンテナ装置311が設けられていてもよいことは言うまでもない。このような構成の基で、上述した技術に基づき、各アンテナ装置311(即ち、通信部)の診断に係る処理が実行されてもよい。
【0133】
また、本開示に係る技術は、前述したように、ドローンと呼ばれる無人航空機等にも応用することが可能である。例えば、
図15は、本実施形態に係る通信装置の応用例について説明するための説明図であり、本開示に係る技術を、ドローンの下部に設置されるカメラデバイスに応用した場合の一例を示している。具体的には、高所を飛行するドローンの場合には、主に、下方側において各方向から到来する無線信号(ミリ波)を送信または受信できることが望ましい。そのため、例えば、
図15に示す例では、ドローンの下部に設置されるカメラデバイス400の筐体の外面401のうち、互いに異なる方向を向いた各部の近傍に位置するように、本開示の一実施形態に係るアンテナ装置が保持されている。例えば、参照符号411は、本開示の一実施形態に係るアンテナ装置を模式的に示している。また、
図15では図示を省略しているが、カメラデバイス400のみに限らず、例えば、ドローン自体の筐体の各部にアンテナ装置411が設けられていてもよい。この場合においても、特に、当該筐体の下方側にアンテナ装置411が設けられているとよい。このような構成の基で、上述した技術に基づき、各アンテナ装置411(即ち、通信部)の診断に係る処理が実行されてもよい。
【0134】
なお、
図15に示すように、対象となる装置の筐体の外面のうち少なくとも一部が湾曲する面(即ち、曲面)として構成されている場合においては、当該湾曲する面中における各部分領域のうち、法線方向が互いに交差するか、または、当該法線方向が互いにねじれの位置にある複数の部分領域それぞれの近傍に、アンテナ装置411が保持されるとよい。このような構成により、
図15に示すカメラデバイス400は、各部分領域の法線方向と略一致する方向に伝搬する無線信号を送信または受信することが可能となる。
【0135】
なお、
図14及び
図15を参照して説明した例はあくまで一例であり、ミリ波を利用した通信を行う装置であれば、本開示に係る技術の応用先は特に限定されない。
【0136】
以上、本開示の一実施形態に係るアンテナ装置を適用した通信装置の応用例として、
図14及び
図15を参照して、スマートフォンのような通信端末以外の装置に対して、本開示に係る技術を応用する場合の一例について説明した。
【0137】
<<7.むすび>>
以上説明したように、本開示の一実施形態に係るシステムにおいて、通信装置(端末装置200)は、複数の通信部と、筐体と、通信制御部と、を備える。上記複数の通信部は、それぞれが無線の通信経路を介して他の通信装置と通信を行う。上記筐体は、上記複数の通信部のそれぞれが、相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように、当該複数の通信部を支持する。上記通信制御部は、複数の通信部それぞれの動作を制御する。また、上記通信制御部は、上記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御し、当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に関する処理の実行を制御する。
【0138】
以上のような構成により、上記複数の通信部のうち一部の通信部に故障が生じた場合に、当該通信部の故障をより好適な態様で検出することが可能となる。即ち、本開示の一実施形態に係る通信装置に依れば、複数の通信部が無線通信に利用される状況下で、各通信部の動作の診断をより好適な態様で実現することが可能となる。
【0139】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0140】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0141】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
それぞれが無線の通信経路を介して他の通信装置と通信を行う複数の通信部と、
前記複数の通信部のそれぞれが、相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように、当該複数の通信部を支持する筐体と、
前記複数の通信部それぞれの動作を制御する通信制御部と、
を備え、
前記通信制御部は、
前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御し、
当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に関する処理の実行を制御する、
通信装置。
(2)
前記通信制御部は、
前記複数の通信部のうち第1の通信部が無線信号を受信している場合に、当該複数の通信部のうち当該第1の通信部とは異なる第2の通信部による無線信号の受信を抑制し、
前記第1の通信部による無線信号の受信結果に基づき当該第1の通信部の前記診断に係る処理の実行を制御する、
前記(1)に記載の通信装置。
(3)
前記筐体の姿勢の変化を誘導する報知情報が所定の出力部を介して報知されるように制御する報知制御部を備え、
前記通信制御部は、前記報知情報が報知された後に、前記筐体の姿勢の変化に応じて、前記第1の通信部が無線信号を受信した場合に、前記第2の通信部による無線信号の受信を抑制する、
前記(2)に記載の通信装置。
(4)
前記報知制御部は、前記複数の通信部のうち、前記診断に関する処理の対象となっていない通信部が無線信号を受信可能となるように、前記筐体の姿勢の変化を誘導する前記報知情報が報知されるように制御する、前記(3)に記載の通信装置。
(5)
前記通信部は、前記無線信号の受信に係る指向性ビームのパターンを制御可能に構成され、
前記通信制御部は、前記複数の通信部のうち対象となる通信部が、前記診断のために無線信号の受信に利用するビームのパターン数が他の通信部よりも多くなるように制御する、
前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の通信装置。
(6)
前記通信制御部は、基地局から送信されるダウンリンク信号の前記通信部による受信結果に基づき、当該通信部の前記診断に関する処理の実行を制御する、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の通信装置。
(7)
前記基地局は、複数のビームパターンを選択的に切り替えて前記ダウンリンク信号を送信し、
前記通信制御部は、当該複数のビームパターンのうちのいずれかにより前記基地局から送信される前記ダウンリンク信号の受信結果に基づき、前記診断に関する処理の実行を制御する、前記(6)に記載の通信装置。
(8)
前記通信制御部は、前記基地局のカバレッジ内に位置する場合に、当該基地局から送信される前記ダウンリンク信号の受信結果を利用した前記診断に関する処理の実行を制御する、前記(6)または(7)に記載の通信装置。
(9)
前記通信制御部は、前記複数の通信部の少なくともいずれかから送信された無線信号の反射波の受信結果に基づき、当該複数の通信部のうち対象となる通信部の前記診断に関する処理の実行を制御する、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の通信装置。
(10)
前記通信制御部は、前記複数の通信部のうちの少なくともいずれかの通信部による通信に関する履歴に応じて、前記診断の対象とする通信部を決定する、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の通信装置。
(11)
前記通信制御部は、前記複数の通信部のうちの少なくともいずれかの通信部が通信に使用される頻度に応じて、前記診断の対象とする通信部を決定する、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の通信装置。
(12)
前記通信制御部は、前記複数の通信部のうちの少なくともいずれかの通信部による通信に関するエラーの発生頻度に応じて、前記診断の対象とする通信部を決定する、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の通信装置。
(13)
前記通信制御部は、所定の周波数帯の無線信号を受信可能な場合に、当該無線信号の受信結果を利用した前記診断に関する処理の実行を制御する、前記(1)~(12)のいずれか一項に記載の通信装置。
(14)
前記筐体は可動部を備え、
前記通信制御部は、前記可動部の状態に応じて、前記診断に関する処理の実行を制御する、
前記(1)~(13)のいずれか一項に記載の通信装置。
(15)
相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように支持された複数の通信部それぞれの動作を制御する通信制御部を備え、
前記通信制御部は、
前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御し、
当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に係る処理の実行を制御する、
制御装置。
(16)
コンピュータが、
相対的に互いに異なる方向から到来する無線信号を受信するように支持された複数の通信部それぞれの動作を制御することを含み、
前記複数の通信部のうち対象となる通信部による無線信号の受信が優先されるように制御され、
当該受信の結果に基づき当該通信部の診断に係る処理の実行が制御される、
制御方法。
【符号の説明】
【0142】
1 システム
100 基地局
200 端末装置
220 通信部
2001 アンテナ部
2003 無線通信部
2005 制御部
2007 記憶部
2009 報知部
2011 検知部
2013 通信制御部
2015 判定部
2017 報知制御部