(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】圧力制御弁およびこの圧力制御弁を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 17/06 20060101AFI20220928BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F16K17/06 A
F16K27/00 D
(21)【出願番号】P 2020570325
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004658
(87)【国際公開番号】W WO2020161900
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後川 将悟
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-055765(JP,A)
【文献】実開昭51-113818(JP,U)
【文献】特開2017-067095(JP,A)
【文献】特開平02-266103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/00-17/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボディと、
前記バルブボディ内に配設され、弁座を有するシート部材と、
前記弁座と当接する位置と前記弁座から離隔する位置との間を第1の方向に移動するポペットと、
前記ポペットを前記弁座に向けて付勢するバネと、
前記バネにおける前記ポペットとは逆側の端部の位置を変更することにより、前記バネによる前記ポペットへの付勢力を調整する調整部材と、
を備えた圧力制御弁において、
前記調整部材を支持した状態で、前記バルブボディ内を前記第1の方向に往復移動可能なスリーブと、
前記スリーブを前記第1の方向に対して位置決めする位置決め部材と、
を備え、
前記スリーブを前記シート部材から離間する方向に移動させることにより、前記ポペットが前記弁座から離隔し、それにより前記
バルブボディ内の作動油の圧抜きが実行される、
圧力制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力制御弁において、
前記位置決め部材は、前記スリーブにおける前記ポペットとは逆側に形成され、前記バルブボディに当接するフランジ部である圧力制御弁。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力制御弁において、
前記スリーブにおける前記第1の方向への往復移動距離を規制する規制部材を備えた圧力制御弁。
【請求項4】
請求項3に記載の圧力制御弁において、
前記位置決め部材が、前記スリーブの端縁に設けられ、前記バルブボディの端縁に当接することにより前記スリーブを前記第1の方向に対して位置決めするフランジであって、
前記スリーブの外周部に、該外周部の全周に亘る凹溝が形成されており、
前記規制部材が、前記バルブボディの側面から内部に向かって配設され、前記凹溝内に配置されている、
圧力制御弁。
【請求項5】
バルブボディと、
前記バルブボディに支持され、第1弁座を有するメインスリーブと、
前記メインスリーブ内において、前記第1弁座と当接する位置と前記第1弁座から離隔する位置との間を第1の方向にスライド可能に配設され、オリフィスが形成されたメインポペットと、
前記メインポペットを前記第1弁座に向けて付勢する第1バネと、
前記メインスリーブにおける前記メインポペットとは逆側の端部に固定され、第2弁座を有するシート部材と、
前記第2弁座と当接する位置と前記第2弁座から離隔する位置との間を前記第1の方向に移動することにより、前記メインポペットに形成されたオリフィスからの作動液の流入を制御するパイロットポペットと、
前記パイロットポペットを前記第2弁座に向けて付勢する第2バネと、
前記第2バネにおける前記パイロットポペットとは逆側の端部の位置を変更することにより、前記第2バネによる前記パイロットポペットへの付勢力を調整する調整部材と、
を備えたバランスピストン型の圧力制御弁において、
前記調整部材を支持した状態で、前記バルブボディ内を前記第1の方向に往復移動可能なスリーブと、
前記スリーブにおける前記パイロットポペットとは逆側に形成され、前記バルブボディに当接することにより、前記スリーブを前記第1の方向に対して位置決めする位置決め部材と、
を備え、
前記スリーブを前記シート部材から離間する方向に移動させることにより、前記パイロットポペットが前記第2弁座から離隔して前記オリフィスを通過する作動油の流れが発生し、前記メインポペットが前記メインスリーブ内をスライドして前記第1弁座から離隔し、それにより前記
バルブボディ内の作動油の圧抜きが実行される、
圧力制御弁。
【請求項6】
作動油の供給ポートと、作動油の排出ポートと、第1の荷役ポートと、第2の荷役ポートとが形成されたハウジングと、
前記ハウジング内を往復移動することにより、前記第1の荷役ポートおよび前記第2の荷役ポートを前記作動油の供給ポートに選択的に接続するスプールと、
油圧パイロット方式により前記スプールを往復移動させるスプール移動機構と、
を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブにおいて、
前記第1の荷役ポートまたは前記第2の荷役ポートの少なくとも一方に連通する作動油の通路に、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧力制御弁を接続し、
前記スリーブを前記シート部材から離間する方向に移動させることにより、前記第1の荷役ポートまたは前記第2の荷役ポートから、前記作動油の排出ポートに至る作動油の通路が開口し、前記第1の荷役ポートまたは前記第2の荷役ポートの加圧された作動油を前記作動油の排出ポートに流出させることで、前記バルブボディ内の作動油の圧抜きが実行される、
油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブ。
【請求項7】
作動油の供給ポートと、作動油の排出ポートと、第1の荷役ポートと、第2の荷役ポートとが形成されたハウジングと、
前記ハウジング内を往復移動することにより、前記第1の荷役ポートおよび前記第2の荷役ポートを前記作動油の供給ポートに選択的に接続するスプールと、
油圧パイロット方式により前記スプールを往復移動させるスプール移動機構と、
を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブにおいて、
前記第1の荷役ポートまたは前記第2の荷役ポートの少なくとも一方に連通する作動油の通路に、
請求項5に記載の圧力制御弁が接続されており、
前記スリーブが前記シート部材から離隔する方向に移動することにより、前記パイロットポペットが前記シート部材から離隔して前記オリフィスを通過する作動油の流れが発生し、前記メインポペットが前記メインスリーブ内をスライドして前記第1弁座から離隔し、それにより、前記第1の荷役ポートまたは前記第2の荷役ポートから、前記作動油の排出ポートに至る作動油の通路が開口し、前記第1の荷役ポートまたは前記第2の荷役ポートの加圧された作動油を前記作動油の排出ポートに流出させることで、前記バルブボディ内の作動油の圧抜きが実行される、
油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力制御弁およびこの圧力制御弁を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両としてのフォークリフト等においては、油圧ポンプにより生じた油圧をアクチュエータとしての油圧シリンダに供給することで、フォークを移動させる構成を有する。油圧ポンプから送液された作動油は、コントロールバルブを介して油圧シリンダに供給される。このようなコントロールバルブとして、オペレータがレバー等の操作部を操作し、このときの操作力を利用してコントロールバルブのスプールを移動させることにより、油圧シリンダに供給する作動油を制御する手動式コントロールバルブが使用されている。
【0003】
また、このようなフォークリフトにおいて、手動式コントロールバルブにかえて電磁比例式コントロールバルブを使用するものも提案されている(特許文献1参照)。この電磁比例コントロールバルブは、アクチュエータとしてソレノイドを使用し、電気信号に基づくソレノイドの駆動とパイロット圧とを利用してスプールを移動させる構成を有する。電磁比例式コントロールバルブは電気信号に基づいて動作を制御することから、フォークリフトにおいて電磁比例式コントロールバルブを使用した場合には、操作部を任意の位置に配置することができ、設計の自由度が向上するというメリットがある。
【0004】
このようなコントロールバルブを使用した油圧回路においては、使用後に油圧シリンダやコントロールバルブおよびこれらを接続する配管内における作動油に、作動圧力が保持される場合がある。このように作動油に残圧がある状態で、配管等を取り外すと、高圧の作動油が噴出して危険であることから、作動油の圧力を低下させる圧抜き作業を行う必要がある。
【0005】
コントロールバルブにおいて圧抜きを実行するためには、圧抜き専用のバイパス回路やバルブを設けることが考えられるが、このような構成を採用した場合においては、高圧部と低圧部を短絡させるためのバイパスラインを設ける必要があり、コントロールバルブが大型化するという問題がある。
【0006】
また、ポンプラインからの高圧の作動油を複動式の油圧シリンダに接続するためのAポートおよびBポートと呼称される一対のポートを有するコントロールバルブにおいては、スプールを移動させたとしても、両方のポートの圧抜きを同時に実行することはできない。このため、Aポートの圧抜きを実行したときにはBポートが高圧状態となり、Bポートの圧抜きを実行したときにはAポートが高圧状態となる。
【0007】
さらに、コントロールバルブとして、電磁比例コントロールバルブを使用した場合においては、スプールを移動させるためにパイロット圧が必要となることから、コントロールバルブに高圧の作動油が供給されていない状態においては、スプールの移動により圧抜き作業を実行することは不可能である。フォークリフト等においては、配管等の部品の交換を行う場合に、油圧回路や電気回路が遮断された状態においても、圧抜き作業を実行したいという要請がある。
【0008】
特許文献2は、気体に対する弁装置において、高圧部と低圧部の間にシール部材によりシールされた連通空間を設け、シール部材を連通空間に脱落させることにより圧抜きを行う弁装置が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、流体管内の圧力流体を排出するための連通孔を有するバルブ体と、この連通孔を挟んでバルブ体外周に配置した同径のシール部材と、円周溝を有する流路開放部材とを備え、流路開放部材の移動方向にあるシール部材を円周溝に位置させ、連通孔から円周溝を介してバルブ体と流路開放部材とによって形成される隙間から圧力流体を排出する残圧抜きアダプタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-203510号公報
【文献】特開2012-132503号公報
【文献】特開2001-208221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された電磁比例コントロールバルブにおいては、圧抜き専用のバイパス回路やバルブを設けなければ、圧抜きを実行することはできない。このため、電磁比例コントロールバルブを使用した油圧回路においては、作動油の圧力が低下するまで放置することにより圧抜きを行う必要がある。一方、特許文献2および特許文献3に記載されたように、シール部材を脱落させること等により圧抜きを行う場合には、内部に配置されるシール部材が損傷する可能性があるだけではなく、圧抜き状態を外部から確認し得ないという問題がある。このような問題は、電磁比例コントロールバルブに限らず、各種の油圧機器において生ずる問題である。
【0012】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、専用のバイパス回路を設けることなく容易に圧抜きを実行することが可能な圧力制御弁およびこの圧力制御弁を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、バルブボディと、前記バルブボディ内に配設されたシート部材と、前記シート部材に形成された弁座と当接する位置と前記シート部材に形成された弁座から離隔する位置との間を第1の方向に移動するポペットと、前記ポペットを前記シート部材に形成された弁座に向けて付勢するバネと、前記バネにおける前記ポペットとは逆側の端部の位置を変更することにより、前記バネによる前記ポペットへの付勢力を調整する調整部材と、を備えた圧力制御弁において、前記調整部材を支持した状態で、前記バルブボディ内を前記第1の方向に往復移動可能なスリーブと、前記スリーブを前記第1の方向に対して位置決めする位置決め部材と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、専用のバイパス回路を設けることなく容易に圧抜きを実行することが可能な圧力制御弁およびこの圧力制御弁を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施形態に係る圧力制御弁10を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブ50の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る圧力制御弁10を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブ50(以下、単に「コントロールバルブ50」という)の断面図である。なお、この図においては、スプール60が中立位置に配置された状態を示している。
【0017】
このコントロールバルブ50は、産業車両としてのフォークリフトにおいて貨物を載置したフォーク42を移動させるための油圧シリンダ40に連結されるものである。このコントロールバルブ50は、油圧ポンプから高圧の作動油が導入される作動油の供給ポートであるPポート101と、油圧タンク等の低圧域に開放される作動油に回収ポートであるTポート102とを、油圧シリンダ40のピストン41を移動させるための第1の荷役ポートとしてのAポート103または第2の荷役ポートとしてのBポート104に選択的に接続するためのものである。
【0018】
このコントロールバルブ50は、複数のランド部と複数の溝部とが交互に形成されるとともに、ハウジング51に対して
図1に示す左右方向に往復移動可能なスプール60を備える。このスプール60は、一対のバネ61、62の作用により、
図1に示す中立位置に向けて付勢されている。また、このコントロールバルブ50は、スプール60を移動させるための一対のソレノイド52、53と、一対のスプール弁56、57を備える。スプール60は、ソレノイド52におけるプランジャ54とパイロット圧の作動油を受けて機能するスプール弁56との作用により
図1に示す右方向に移動するとともに、ソレノイド53におけるプランジャ55とパイロット圧の作動油を受けて機能するスプール弁57との作用により
図1に示す左方向に移動する。
【0019】
スプール60が
図1に示す状態から右方向に移動したときには、スプール60における溝部63の作用によりPポート101が流路110を介してAポート103に接続されるとともに、スプール60における溝部64の作用によりTポート102がBポート104に接続される。これにより、油圧シリンダ40におけるピストン41は、
図1における右方向に移動する。また、スプール60が
図1に示す状態から左方向に移動したときには、スプール60における溝部64の作用によりPポート101が流路110を介してBポート104に接続されるとともに、スプール60における溝部63の作用によりTポート102がAポート103に接続される。これにより、油圧シリンダ40におけるピストン41は、
図1における左方向に移動する。
【0020】
Aポート103と連通する作動油の通路と、Bポート104に連通する作動油の通路には、各々、この発明の実施形態に係る圧力制御弁10が接続されている。この圧力制御弁10は、通常の動作時には、リリーフ弁として機能するものである。そして、この圧力制御弁10は、作動油の圧抜き手段としても機能するものである。
【0021】
図2は、圧力制御弁10の正面図であり、
図3は、圧力制御弁10の側面図である。また、
図4および
図5は、
図2におけるA-A断面図である。なお、
図4は、通常の状態を示し、
図5は、圧力制御弁10により圧抜き作業を実行する状態を示している。また、
図4および
図5において黒く塗りつぶされた部材は、オーリングである。
【0022】
この圧力制御弁10は、バルブボディ11に支持されるメインスリーブ12と、このメインスリーブ12内においてメインスリーブ12に対してスライド可能に配設されたメインポペット15とを備えたバランスピストン型の構成となっている。メインポペット15は、作動油の通路を形成する中空部材13を備えている。
【0023】
中空部材13を備えるメインポペット15は、付勢手段としてのスプリング16により、
図4における右側の端部がメインスリーブ12に形成された弁座領域と当接する方向に付勢されている。また、メインポペット15の一部である中空部材13には、
図1に示すAポート103またはBポート104とメインスリーブ12内の空間とを連通するオリフィス14が形成されている。このオリフィス14を通過する作動油の流れが生ずると、メインポペット15の前後に作動油の圧力差が生ずる。そして、メインポペット15における上流面(
図4における右側の面)に作用する作動油の圧力が、下流面(
図4における左側の面)に作用する圧力とスプリング16による付勢力の合計値を上回ると、メインポペット15がメインスリーブ12内をスライドし、メインスリーブ12における弁座領域から離隔する。これにより、
図1に示すAポート103またはBポート104からTポート102に至る作動油の通路が開口し、
図1に示すAポート103またはBポート104の余剰作動油をTポート102に流出させることで、バルブボディ11内の作動油の最大圧力を保証している。
【0024】
中空部材13を備えたメインポペット15は、パイロット方式によって移動する。すなわち、メインポペット15におけるオリフィス14の通過流量を制御するため、メインポペット15の下流にパイロットポペット21が配設されている。このパイロットポペット21は、スプリング22の作用により、メインスリーブ12の一端に配設されたシート部材17における弁座面に向けて付勢されている。パイロットポペット21における上流面(シート部材17側の面)に作用する作動油の圧力がスプリング22による付勢力を上回ると、パイロットポペット21はシート部材17の弁座面から離間し、メインスリーブ12内の作動油を
図1に示すTポート102に流出させる。これにより、メインポペット15におけるオリフィス14内を作動油が通過し、メインポペット15における上流面と下流面との間に圧力差が生じることで、メインポペット15が開弁する。
【0025】
パイロットポペット21をシート部材17に向けて付勢するスプリング22におけるパイロットポペット21と当接する側の端部と逆側の端部は、スリーブ23内に配設された位置決め部材25と当接している。スリーブ23は、バルブボディ11に対して、ネジ部71を利用して結合されている。また、スリーブ23と位置決め部材25とは、ネジ部72を利用して結合されている。スリーブ23におけるメインポペット15およびパイロットポペット21の移動方向(第1の方向)の位置は、スリーブ23におけるフランジ部27がバルブボディ11の端縁と当接することにより位置決めされる。スリーブ23におけるフランジ部27は、スリーブ23を第1の方向に対して位置決めするための位置決め部材として機能する。
【0026】
また、位置決め部材25におけるスリーブ23に対するパイロットポペット21の移動方向である第1の方向の位置は、位置決め部材25とネジ部73を利用して結合されるロックナット24により調整可能となっている。パイロットポペット21のシート部材17に対する付勢力は、ロックナット24を利用してスリーブ23に対する位置決め部材25の第1の方向の位置を変化させることにより調整することができる。そして、ロックナット24によりスリーブ23に対する位置決め部材25の第1の方向の位置を固定することにより、パイロットポペット21のシート部材17に対する付勢力を一定とすることができ、これにより、メインポペット15に対するパイロット圧を一定に維持することができる。
【0027】
スリーブ23の外周部には、全周に亘って凹溝26が形成されている。そして、バルブボディ11と螺合するネジ29が、バルブボディ11の側面から内部に向かって配設されている。ネジ29の先端は、凹溝26内に配置されている。このネジ29および凹溝26の作用により、スリーブ23における第1の方向への往復移動距離を規制することができる。ネジ29および凹溝26は、スリーブ23における第1の方向への往復移動距離を規制する規制部材として機能する。
【0028】
以上のような構成を有する圧力制御弁10においては、
図4に示す通常の使用状態では、Aポート103と連通する作動油の通路またはBポート104に連通する作動油の通路内の作動油の圧力が設定値以上となったときには、パイロットポペット21およびメインポペット15が順次移動し、Aポート103と連通する作動油の通路またはBポート104に連通する作動油の通路内の作動油は、Tポート102に流出する。この状態においては、圧力制御弁10はリリーフ弁として機能する。
【0029】
一方、配管等の部品の交換を行うために圧抜き作業を実行するときには、
図5に示すように、バルブボディ11に対してスリーブ23を回転させることにより、スリーブ23をシート部材17から離隔する方向(
図5に示す左方向)に移動させる。これにより、パイロットポペット21およびスプリング22もスリーブ23とともに移動し、パイロットポペット21がシート部材17から離隔する。
【0030】
パイロットポペット21がシート部材17から離隔すると、オリフィス14を通過する作動油の流れが発生し、メインポペット15が中空部材13とともに、メインスリーブ12内をスライドして、メインスリーブ12における弁座領域から離隔する。これにより、
図1に示すAポート103またはBポート104からTポート102に至る作動油の通路が開口し、
図1に示すAポート103またはBポート104の加圧された作動油をTポート102に流出させることで、バルブボディ11内の作動油の圧抜き作業を行うことが可能となる。これにより、油圧回路や電気回路が遮断された状態においても、圧抜き作業を実行することが可能となる。
【0031】
なお、バルブボディ11に対してスリーブ23を回転させることにより、スリーブ23をシート部材17から離隔する方向に移動させたときに、スリーブ23が一定の距離だけ移動すれば、
図5に示すように、ネジ29がスリーブ23に形成された凹溝26の側面に当接する。これにより、スリーブ23が過度に移動し、バルブボディ11から脱落することを防止することが可能となる。
【0032】
圧抜き作業が終了した後には、バルブボディ11に対してスリーブ23を回転させることにより、スリーブ23をシート部材17に近接する方向(第1の方向とは逆方向)に移動させる。スリーブ23は、スリーブ23におけるフランジ部27がバルブボディ11の端縁と当接することにより、当初の位置に位置決めされる。このときには、ロックナット24によりスリーブ23に対する位置決め部材25の第1の方向の位置は一定に維持されている。従って、圧抜き作業後においても、パイロットポペット21のシート部材17に対する付勢力を一定とすることができ、これにより、メインポペット15に対するパイロット圧を一定に維持することが可能となる。従って、リリーフ弁として機能する圧力制御弁10を利用して圧抜き作業を行った場合においても、リリーフ圧力を一定に維持することが可能となる。
【0033】
なお、上述した実施形態においては、この発明の実施形態に係る圧力制御弁10を油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブ50に適用しているが、油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブ50ではなく、スプール60をマニュアルにより移動させる手動式のコントロールバルブにこの発明の実施形態に係る圧力制御弁10を適用してもよい。また、この発明の実施形態に係る圧力制御弁10を、コントロールバルブ以外の油圧回路に適用してもよい。
【0034】
以上のように、この発明の第1の態様は、バルブボディと、前記バルブボディ内に配設されたシート部材と、前記シート部材に形成された弁座と当接する位置と前記シート部材に形成された弁座から離隔する位置との間を第1の方向に移動するポペットと、前記ポペットを前記シート部材に形成された弁座に向けて付勢するバネと、前記バネにおける前記ポペットとは逆側の端部の位置を変更することにより、前記バネによる前記ポペットへの付勢力を調整する調整部材と、を備えた圧力制御弁において、前記調整部材を支持した状態で、前記バルブボディ内を前記第1の方向に往復移動可能なスリーブと、前記スリーブを前記第1の方向に対して位置決めする位置決め部材と、を備える圧力制御弁である。
【0035】
この第1の態様に係る圧力制御弁によれば、スリーブを移動させることによりポペットとシート部材の間に通路を形成することで、油圧回路に対して専用のバイパス回路を設けることなく、圧力制御弁において容易に圧抜きを実行することが可能となる。
【0036】
この発明の第1の態様に係る実施形態は、前記位置決め部材は、前記スリーブにおける前記ポペットとは逆側に形成され、前記バルブボディに当接するフランジ部である圧力制御弁である。
【0037】
このような構成を採用することにより、スリーブを容易に適正な位置に位置決めすることが可能となる。
【0038】
この第1の態様に係る他の実施形態は、前記スリーブにおける前記第1の方向への往復移動距離を規制する規制部材を備えた圧力制御弁である。
【0039】
このような構成を採用することにより、スリーブがバルブボディから脱落することを防止することが可能となる。
【0040】
この発明の第1の態様に係るさらに他の実施形態は、バルブボディと、前記バルブボディに支持されたメインスリーブと、前記メインスリーブ内において、前記メインスリーブに形成された弁座と当接する位置と前記メインスリーブに形成された弁座から離隔する位置との間を第1の方向にスライド可能に配設され、オリフィスが形成されたメインポペットと、前記メインポペットを前記メインスリーブに形成された弁座に向けて付勢するメインポペット用のバネと、前記メインスリーブにおける前記メインポペットとは逆側の端部に固定されたシート部材と、前記シート部材に形成された弁座と当接する位置と前記シート部材に形成された弁座から離隔する位置との間を前記第1の方向に移動することにより、前記メインポペットに形成されたオリフィスからの作動液の流入を制御するパイロットポペットと、前記パイロットポペットを前記シート部材に形成された弁座に向けて付勢するパイロットポペット用のバネと、前記パイロットポペット用のバネにおける前記パイロットポペットとは逆側の端部の位置を変更することにより、前記パイロットポペット用のバネによる前記パイロットポペットへの付勢力を調整する調整部材と、を備えたバランスピストン型の圧力制御弁において、前記調整部材を支持した状態で、前記バルブボディ内を前記第1の方向に往復移動可能なスリーブと、前記スリーブにおける前記パイロットポペットとは逆側に形成され、前記バルブボディに当接することにより、前記スリーブを前記第1の方向に対して位置決めするフランジ部と、を備えた圧力制御弁である。
【0041】
このような構成を採用することにより、圧力制御弁をリリーフ弁として機能させた場合に、圧抜き作業後においても、パイロットポペットのシート部材に対する付勢力を一定とすることができ、これにより、メインポペットに対するパイロット圧を一定に維持することができ、リリーフ圧力を一定に維持することが可能となる。
【0042】
この発明の第2実施形態は、作動油の供給ポートと、第1の荷役ポートと、第2の荷役ポートとが形成されたハウジングと、前記ハウジング内を往復移動することにより、前記第1の荷役ポートおよび前記第2の荷役ポートを前記作動油の供給ポートに選択的に接続するスプールと、油圧パイロット方式により前記スプールを往復移動させるスプール移動機構と、を備えた油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブにおいて、前記第1の荷役ポートまたは前記第2の荷役ポートの少なくとも一方に連通する作動油の通路に、上述した第1実施形態に係る圧力制御弁を接続した油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブである。
【0043】
このような構成によれば、油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブに高圧の作動油が供給されていない状態においても、圧抜き作業を実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
10 圧力制御弁
11 バルブボディ
12 メインスリーブ
13 中空部材
14 オリフィス
15 メインポペット
16 スプリング
17 シート部材
21 パイロットポペット
22 スプリング
23 スリーブ
24 ロックナット
25 位置決め部材
26 凹溝
27 フランジ部
29 ネジ
40 油圧シリンダ
50 油圧パイロット式電磁比例コントロールバルブ
51 ハウジング
60 スプール
101 Pポート
102 Tポート
103 Aポート
104 Bポート