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特許7147896酸素バリア性を有する積層体および該積層体からなる包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】酸素バリア性を有する積層体および該積層体からなる包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220928BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220928BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220928BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220928BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20220928BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20220928BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20220928BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B32B27/00 D
B32B9/00 A
B32B27/40
B32B27/36
C08K5/29
C08K5/52
C08L101/06
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021036105
(22)【出願日】2021-03-08
(62)【分割の表示】P 2016149437の分割
【原出願日】2016-07-29
(65)【公開番号】P2021098373
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】高杉 祐也
(72)【発明者】
【氏名】安冨 琢也
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克伸
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253133(JP,A)
【文献】特開2015-058568(JP,A)
【文献】特開2001-171034(JP,A)
【文献】特開2009-248455(JP,A)
【文献】特開平07-011225(JP,A)
【文献】特開昭61-291129(JP,A)
【文献】特開平07-003437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 - 201/10
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、蒸着膜、バリアコート層、酸素バリア性接着剤層、バリア層、シーラント層をこの順で有する積層体であって、
基材層は、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、アセタール系樹脂フィルムからなる群から選択される樹脂フィルムであり、
その厚さは1μm~300μmであり、
蒸着膜が、アルミ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜のいずれかであり、
バリアコート層が、アルコキシドと水溶性高分子とを、ゾルゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られるアルコキシドの加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物であるガスバリア性組成物からなる膜であり、
酸素バリア性接着剤層が、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)、及びリン酸変性化合物(C)を含有する樹脂であって、樹脂(A)の主骨格が、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテル、又はポリエーテルポリウレタンを含有する接着剤用樹脂組成物からなり、
接着剤層とシーラント層との間に設けられたバリア層は、無機物または無機酸化物からなる蒸着膜(但し、該バリア層を形成する無機物または無機酸化物からなる蒸着膜が、抵抗加熱方式により設けられたアルミニウム蒸着膜である場合を除く。)であり、
前記積層体に、ゲルボフレックステスターで3回の屈曲の負荷を与えた後の、前記積層体の、23℃、90%RH環境下における酸素透過度の、前記屈曲の負荷を与える前からの増加値が0.7~4.0cc/m・day・atmであり、
前記積層体に、ゲルボフレックステスターで3回の屈曲の負荷を与えた後の、前記積層体の、40℃、90%RHの条件下における水蒸気透過度の、前記屈曲の負荷を与える前からの増加値が0.37~0.40g/m・day・atmであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記バリアコート層と接着剤層の間に印刷層を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層体からなる包装材料。
【請求項4】
前記バリアコート層と接着剤層の間に印刷層を有する積層体からなることを特徴とする請求項3に記載の包装材料。
【請求項5】
前記蒸着膜が、アルミ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜のいずれかからなることを特徴とする請求項3または4に記載の包装材料。
【請求項6】
前記バリア層の厚みが1~100nmであることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の包装材料。
【請求項7】
前記接着剤層の接着剤の塗布量が2.0μm~4.0μmであることを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の包装材料。
【請求項8】
前記積層体の、23℃、90%RH環境下における酸素透過度が、0.05~1.00cc/m・day・atmであることを特徴とする請求項4~9のいずれか1項に記載の包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層、接着剤層、バリア層、シーラント層を有する酸素バリア性の積層体、また、基材層、蒸着層、バリアコート層、接着剤層、バリア層、及びシーラント層を有する酸素バリア性の積層体、および、これらの積層体からなる酸素バリア性の包装材料に関し、蒸着層からなるバリア層と該バリア層に接する接着剤層に酸素バリア性に優れた接着剤層を用いる、酸素バリア性に優れる(酸素の透過度が低減された)包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸素バリア性を有する包装材料は、少なくとも、基材層、バリア層、接着剤層、及びシーラント層を有する積層体からなり、酸素バリア性を向上させるためのバリア層として、金属箔、金属あるいは金属酸化物の蒸着膜等が使用されている。
また、バリア層としての金属箔は、高い酸素バリア性を達成することができるが、蒸着膜などに比べて膜が厚く、その結果、金属箔を使用した包装材料も厚くなり、耐折り曲げ性に劣ることが知られている。
これに対し、金属あるいは金属酸化物の蒸着膜等を使用すると膜厚を薄くすることができ、折り曲げ性等に優れているが、蒸着膜面は凹凸を有することからか、十分な酸素バリア性を達成することができないという問題を有していた。
【0003】
更に、特許文献1には、酸素バリア材として、活性水素含有化合物(A)および有機ポリイソシアネート化合物(B)を反応させてなる樹脂硬化物を含む熱硬化型ガス(酸素)バリア性ポリウレタン樹脂であって、該樹脂硬化物中に、メタキシレンジイソシアネート由来の骨格構造が20%質量以上含有され、かつ前記(A)および(B)の内、3官能以上の化合物の占める割合が、(A)と(B)の総量に対して7質量%以上であることを特徴とする熱硬化型酸素バリア性ポリウレタン樹脂を使用したガス(酸素)バリア性複合フィルム(基材フィルム層と熱硬化型ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含む層とを有する)が記載されている。
【0004】
更にまた、特許文献2には、高分子フィルム基材の少なくとも片面に、酸化珪素、または、酸化アルミニウムの薄膜層を形成した透明性を有する被覆フィルムの該薄膜層面と、ヒートシール性樹脂フィルムとを無機の酸化珪素、または、酸化アルミニウムの材料から選ばれる一種以上の粒子とポリエステルポリオールとイソシアネート化合物を含有するバリアー性接着剤を介してドライラミネート法により接着させたことを特徴とするバリアー性積層体、及びこれを用いた包装材料が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、該組成物は極性が高い溶剤を使用しなければならないため、作業性に乏しい。例えばアセトンのような溶解性の高い溶剤を使用した場合には、沸点が低く且つ外気の水を取り込みやすいため、水とイソシアネートとの反応によって調整粘度が上昇しやすいといった問題がある
【0006】
また、特許文献2(特許第3829526号明細書)においては、接着剤に含有されている無機化合物の粒径がナノオーダーの球状ないしは不定形の無機化合物であるため、接着剤自体の酸素バリア性、特に屈曲の負荷を与えた場合の酸素バリア性は高くないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4054972号明細書
【文献】特許第3829526号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決して、酸素バリア性に優れ、耐屈曲性にも優れた積層体および該積層体からなる包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々研究の結果、少なくとも、基材層、接着剤層、バリア層、及びシーラント層を有する積層体および該積層体からなる包装材料、あるいは、基材層、蒸着層、バリアコート層、接着剤層、バリア層、及びシーラント層を有する積層体および該積層体からなる包装材料であって、該バリア層が蒸着層からなり、該接着剤層が酸素バリア性を有することで、上記の目的を達成することを見出した。
【0010】
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.基材層、接着剤層、バリア層、シーラント層を少なくとも有する積層体であって、前記接着剤層が酸素バリア性を有することを特徴とする積層体。
2.前記基材層と接着剤層との間に、蒸着層と、バリアコート層とを有することを特徴とする上記1に記載の積層体。
3.前記バリアコート層と接着剤層の間に印刷層を有することを特徴とする上記2に記載の積層体。
4.基材層、接着剤層、バリア層、シーラント層を少なくとも有する積層体からなり、前記接着剤層が酸素バリア性を有することを特徴とする包装材料。
5.前記基材層と接着剤層との間に、蒸着層と、バリアコート層とを有する積層体からなることを特徴とする上記4に記載の包装材料。
6.前記バリアコート層と接着剤層の間に印刷層を有する積層体からなることを特徴とする上記5に記載の包装材料。
7.前記蒸着層が、アルミ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜のいずれかからなることを特徴とする上記5または6に記載の包装材料。
8.前記バリア層が、アルミ蒸着膜であることを特徴とする上記4~7に記載の包装材料。
9.前記バリア層の厚みが1~100nmであることを特徴とする上記4~8に記載の包装材料。
10.前記接着剤層の接着剤の塗布量が2.0μm~4.0μmであることを特徴とする上記4~9に記載の包装材料。
11.前記積層体の、23℃、90%RH環境下における酸素透過度が、0.05~1.00cc/m2・day・atmであることを特徴とする上記4~10に記載の包装材料

12.前記積層体に、ゲルボフレックステスターで3回の屈曲の負荷を与えた後の、前記積層体の、23℃、90%RH環境下における酸素透過度の、前記屈曲の負荷を与える前からの増加値が0.7~4.0cc/m2・day・atmであることを特徴とする上記
4~11に記載の包装材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層体および該積層体からなる包装材料は、基材層、接着剤層、バリア層、及びシーラント層を少なくとも有する積層体、あるいは、基材層、蒸着層、バリアコート層、接着剤層、バリア層、及びシーラント層を少なくとも有する積層体からなり、蒸着膜であるバリア層と酸素バリア性を有する接着剤層との組み合わせにより、蒸着層表面に生じる凹凸の凹部が、酸素バリア性を有する接着剤により埋められることにより、面方向のバ
リア性を均一とし、バリア層の層厚を薄くして屈曲性を保持しつつ、従来成し得なかった高い酸素バリア性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の包装材料の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
図2】本発明の包装材料の層構成について他の一例を示す概略的断面図である。
図3】本発明の包装材料の層構成について更に他の一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の酸素バリア性積層体および該積層体からなる包装材料について、図面を参照しながら以下に詳しく説明する。
図1~3は、本発明の包装材料を形成する積層体の層構成の一例を示す概略的断面図である。
【0014】
本発明の積層体は、図1に示すように、基材層と、接着剤層と、バリア層と、シーラント層とを、積層してなる構成を基本構造とするものである。
本発明の積層体の他の態様としては、図2に示すように、基材層と接着剤層との間に、蒸着層と、バリアコート層を積層した構成であってもよい。
本発明の積層体のさらに別の態様としては、図3に示すように、バリアコート層と接着剤層との間に、印刷層を積層した構成であってもよい。
上記の例は、本発明の包装材料の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
次に、本発明にかかる酸素バリア性包装材料において使用する積層体の材料、その製造法等について説明する。
本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものを用いることとする。
【0016】
[基材層]
本発明の積層体を構成する基材層としては、化学的ないし物理的強度に優れ、無機酸化物の蒸着膜を形成する条件等に耐え、それら無機酸化物の蒸着膜等の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができる金属、金属酸化物等の無機材料や樹脂等の有機材料を例えばフィルムやシートとして使用することができる。
【0017】
本発明の積層体において、基材層としては、単層フィルムまたは多層積層フィルムが用いられるが、特に限定されず、各種包装材料に用いられる任意のフィルムを使用することができる。これらの中から、包装する内容物の種類や充填後の加熱処理の有無等の使用条件に応じて、適するものを自由に選択して使用する。
【0018】
基材層として好ましく使用されるフィルムの具体例としては、紙、アルミ箔、セロファン、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、オレフィン系樹脂フィルム、酸変性ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、アセタール系樹脂フィルム、これらを一軸または二軸延伸したフィルム、Kコートフィルム、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PV
C)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン
-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなる樹脂フィルム、Kコート延伸ポリプロピレンフィルム、Kコート延伸ナイロンフィルム、これらの2以上のフィルムを積層した複合フィルム等が挙げられる。
【0019】
なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドの一軸または二軸延伸ポリアミドフィルム、そして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムOPP等を好適に使用することができる。
【0020】
(基材層の膜厚)
基材層の厚さは、任意に選択し得るが、成形性や透明性の観点から、1μmから300μm位の範囲から選択して使用することができ、好ましくは1~100μmの範囲である。これより薄いと、強度が不足し、またこれより厚いと、剛性が高くなりすぎて、加工が困難になり得る。
【0021】
(表面処理)
また、基材層(基材のフィルム又はシート)は、接着剤層あるいは(無機酸化物蒸着層)との密着性を向上させるために、ラミネートあるいは(無機酸化物の蒸着)前に基材層(基材フィルム又はシート)の接着剤層側表面に必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的な処理や、化学薬品などを用いて処理する酸化処理などの化学的な処理、接着剤層、プライマーコート剤層、アンダーコート層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を形成する処理、その他前処理を施してもよく、基材フィルムの表面処理後に(無機酸化物の蒸着層)を設け、さらに、該無機酸化物の蒸着層上にガスバリア性塗膜(バリアコート層)を設けた構成としてもよい。
【0022】
(フィルムの成形法)
基材層となる樹脂のフィルム又はシートとしては、例えば、上記の樹脂1種又はそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等従来から使用されている製膜化法により、又は、2種以上の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化法により製造することができる。
さらに、フィルムの強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸することができる。
【0023】
(添加剤)
基材層となる樹脂のフィルムは、必要に応じて、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、ガスバリア性等に影響しない範囲で目的に応じて、任意に添加することができる。
【0024】
[接着剤層]
本発明の接着剤層は、酸素バリア性を有する接着剤層であることが必要である。
酸素バリア性を有する接着剤層を形成する接着剤用樹脂組成物としては、例えば、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)、及び特定のリン酸変性化合物
(C)を含有する樹脂であって、主骨格が、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテル、又はポリエーテルポリウレタンを含有してなることに特徴を有しており、更に板状無機化合物を含有することに特徴を有している接着剤用樹脂組成物があげられる。
【0025】
(官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A))
ここで、主骨格がポリエステルを含有している、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)が有する多価カルボン酸成分には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p‘-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。
【0026】
また、多価アルコール成分としては、具体的には、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、芳香族多価フェノールとして、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。
多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応は、公知慣用の方法で行うことができる。
【0027】
(官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B))
官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)としては、ジイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物やエポキシ化合物等、前記樹脂(A)の水酸基と反応しうる公知の化合物が使用できる。中でも、接着性や耐レトルト性の観点から、ポリイソシアネート化合物が好ましく使用することができる。
ポリイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート化合物があり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。
【0028】
たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体
が挙げられる。
【0029】
樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)との硬化塗膜のガラス転移温度が-30℃~80℃の範囲が好ましい。より好ましくは0℃~70℃である。更に好ましくは25℃~70℃である。ガラス転移温度が80℃よりも高い場合、室温付近での硬化塗膜の柔軟性が低くなることにより、基材への密着性が劣ることで接着力が低下するおそれがある。一方-30℃よりも低い場合、常温付近での硬化塗膜の分子運動が激しいことにより十分な酸素バリア性が出ないおそれや、凝集力不足による接着力低下のおそれがある。
【0030】
(リン酸変性化合物(C))
特定のリン酸変性化合物(C)は、本発明の無機系基材に対するラミネート強度を向上させる効果を有し、公知慣用のものを用いることができる。
より具体的には、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、イソ
ドデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等を挙げることができる。
【0031】
(板状無機化合物(D))
接着剤用樹脂組成物では、板状無機化合物を含有することに特徴を有する。
用いられる板状無機化合物は、接着剤用樹脂組成物を硬化させてなる接着剤のラミネート強度と酸素バリア性を向上させる効果を有する。
このようなされる板状無機化合物としては、例えば、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)等を挙げることができる。
【0032】
このような、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)、及び特定のリン酸変性化合物(C)を含有する接着剤用樹脂組成物を用いた酸素バリア性を有する接着剤層の具体例としては、DIC株式会社から販売されている、酸素バリア性接着剤パスリム(PASLIM)のシリーズが使用でき、主骨格がポリエステル系であり、硬化剤がイソシアネート基を2個以上有するである化合物であるPASLIM VM001/VM102CP等が好ましく用いられる。
【0033】
[バリア層]
本発明の積層体において、シーラント層(ヒートシール層)と接着剤層との間に設けるバリア層としては、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を防ぐガスバリア性を有するバリア膜であり、無機物または無機酸化物からなる蒸着膜が挙げられる。
無機物または無機酸化物からなる蒸着膜としては、具体的には、アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜からなるバリア膜が挙げられ、特に、アルミニウム蒸着膜が挙げられる。
【0034】
バリア層として、蒸着膜を設ける場合は、シーラント層上に直接、接着剤等の接着層を介さずに設けることができる。
必要に応じて、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性を付与することもできる。また、バリア層を2層以上有してもよい。バリア層を2層以上有する場合は、それぞれが同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0035】
通常、蒸着膜の厚さとしては、例えば、10~2000Å位であり、好ましくは10~1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。具体的に説明すると、アルミニウムの蒸着膜の場合には、膜厚は、好ましくは10~600Å位であり、より好ましくは10~400Å位である。また、ケイ素酸化物またはアルミニウム酸化物の蒸着膜の場合には、膜厚は、好ましくは10~500Å位であり、より好ましくは10~300Åである。
【0036】
蒸着膜は、従来公知の無機物または無機酸化物を用いて、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は特に限定されない。蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0037】
本発明において、バリア層となる蒸着膜を、シーラント層の接着剤層側表面に設ける。
また、その際に、シーラント層表面に必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的な処理や、化学薬品などを用いて処理する酸化処理などの化学的な処理を施してもよい。
【0038】
[シーラント層(ヒートシール層)]
本発明の積層体を構成するシーラント層は、本発明の積層体および積層体からなる包装材料にヒートシール性を与えるものでもある。また、本発明の積層体に耐屈曲性、耐衝撃性等の機能を付与するものである。特に耐屈曲性が付与されることで、屈曲後のガスバリア性の低下を抑制することができるものが望ましい。
このため本発明においては、上記のような諸条件を充足する材料を任意に使用することができる。
【0039】
本発明においては、シーラント層としてヒートシール性の樹脂層が望ましい。ヒートシール性の樹脂層は、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよい。
具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、その他等の樹脂の1種ないしそれ以上からなる樹脂のフィルムないしシートあるいはその他塗布膜等を使用することができる。
上記の樹脂層には、必要に応じて、公知の耐屈曲性改良剤、無機又は有機添加剤等を
配合することができる。
【0040】
上記の樹脂層を形成するフィルムないしシートとしては、未延伸フィルムないしシート、あるいは1軸方向または2軸方向に延伸した延伸フィルムないしシート等のいずれのものでも使用することができる。
2軸方向に延伸した延伸フィルムは、例えば50~100℃のロール延伸機により2~4倍に縦延伸し、更に90~150℃の雰囲気のテンター延伸機により3~5倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100~240℃雰囲気中で熱処理して得ることが
できる。 また、延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延伸をしても良い。
【0041】
(シーラント層の膜厚)
上記樹脂のフィルムないしシートからなるシーラント層の厚さは、任意に選択し得るが、包装材料としての強度等の観点から、5~500μm位の範囲から選択して使用することができ、好ましくは10~250μmの範囲である。これより薄いとヒートシールしても充分なラミネート強度が得られず、包装材料としては機能しないし耐突き刺し性等が抵下する。また、これより厚いと、コスト上昇を招くと共にフィルムが硬くなり作業性が悪くなる。
【0042】
[蒸着層]
本発明にかかる包装材料の積層体において、酸素ガスおよび水蒸気等に対するガスバリア性を高めるために、基材層の接着剤層と接する側に蒸着層を設けることができる。該蒸着層は、上記のバリア層と同様に、無機物または無機酸化物からなる蒸着膜が使用できるが、好ましくは、金属蒸着膜としてアルミ蒸着膜、また、金属酸化物蒸着膜として、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜が挙げられる。また、蒸着膜の形成方法についても、上記バリア層の形成方法と同様の公知の方法により形成することができる。
【0043】
本発明において、上記の基材層表面に蒸着層を形成する場合、蒸着層との密着性を向
上させるために、基材層表面は、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的な処理や、化学薬品などを用いて処理する酸化処理などの化学的な処理を施すことが好ましい。
【0044】
[バリアコート層]
本発明においては、上記の基材層に設けられた蒸着層上に、酸素ガスおよび水蒸気等のガスバリア性を高めるために、バリアコート層をさらに設けることができる。
本発明において、バリアコート層を形成するバリア性塗布膜とは、アルコキシドと水溶性高分子とを、ゾルゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られるアルコキシドの加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物等のガスバリア性組成物からなる膜である。該バリア性組成物は、場合により、さらにシランカップリング剤を含有してもよい。
【0045】
該バリア性組成物において用いることができるアルコキシドとしては、一般式R1 nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドを好ましく用いることができる。ここで、金属原子Mとして、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムその他を使用することができる。また、R1及びR2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基等のアルキル基を挙げることができる。同一分子中において、これらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。このようなアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシラン Si(OC254、テトラプロポキシシラン
Si(OC374、テトラブトキシシラン Si(OC494等が挙げられる。
【0046】
また、該バリア性組成物において用いることができる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂若しくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれか又はその両方を好ましく用いることができる。これら樹脂は市販のものを使用してもよく、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体として、株式会社クラレ製、エバールEP-F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。また、ポリビニルアルコールと
して、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS-110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM-20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM-14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。
【0047】
上記ゾルゲル法触媒としては、水に実質的に不溶であり、且つ有機溶媒に可溶な第3級アミンが用いられる。具体的には、例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等を使用することができる。特に、N,N-ジメチルべンジルアミンが好適であり、アルコキシシランおよびシランカップリング剤の合計量100質量部当り、例えば0.01~1.0質量部、特に約0.03質量部
程度を使用することが好ましい。
【0048】
バリア性組成物において用いられる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他を使用することができる。酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシシラン分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、好ましくは0.001~0.05モルであり、より好ましくは0.01~0.03モルである。
また有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等を用いることができる。
【0049】
シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができるが、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。上記のようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。本発明において、上記のようなシランカップリング剤の使用量は、上記のアルコキシド100質量部に対して1~20質量部程度の範囲内で使用することができる。
【0050】
バリア性組成物中の水溶性高分子の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5~500重量部の範囲であることが好ましい。上記において、500重量部を越えると、形成されるバリアコート層の脆性が大きくなり、その耐侯性等も低下することから好ましくない。
【0051】
バリアコート層は、バリアコート層形成用塗工液を用いて、通常用いられる、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の従来公知の手段により、1回あるいは複数回塗布して形成される。
【0052】
バリアコート層の形成方法の具体例について以下に説明する。
まず、アルコキシド、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾルゲル法触媒、水、有機溶媒、および、必要に応じてシランカップリング剤等を混合してガスバリア性塗工液を調製する。ガスバリア性塗工液中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、蒸着層(膜)の上に、常法により、上記のガスバリア性塗工液を通常の方法で塗布し、乾燥する。乾燥により、上記アルコキシドおよびビニルアルコールポリマー(およびシランカップリング剤)の重縮合がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。好適には、上記の操作を繰り返して、複数の複合ポリマー層を積層することもできる。
最後に、上記塗工液を塗布した積層体を20~250℃、好ましくは50~220℃の温度で、1秒~10分間加熱する。これにより、蒸着層上にバリアコート層を形成するこ
とができる。
【0053】
バリアコート層は、1層または2層以上を重層した複合ポリマー層であってよい。また、乾燥後のバリアコート層の厚さは0.01~100μmの範囲であり、好ましくは0.01~50μmである。乾燥後の厚さが100μmより小さいと、クラックの発生を抑制することができる。
【0054】
[印刷層]
本発明の積層体からなる包装材料は、必要に応じて、図3に示すように、例えば、バリアコート層と接着剤層との間に、文字、図形、記号、その他の所望の絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成した印刷層を設けることができる。
本発明の積層体および該積層体からなる包装材料は、上記した基材層面とシーラント層の片面にバリア層を設けたバリア層面とを、また、基材層の片面に蒸着層、バリアコート層を設けた基材層のバリアコート層面とシーラント層の片面にバリア層を設けたバリア層面とを、更にまた、必要に応じて印刷層を設けた基材層の印刷面とシーラント層の片面にバリア層を設けたバリア層面とを、それぞれ上記の接着剤層を介してラミネートして製造することができる。
本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例
【0055】
[実施例1]
透明蒸着PET12/酸素バリア接着剤/VM-CPP25
基材層として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し、さらにこれをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記ポリエステル系樹脂のコロナ処理面に、厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0056】
<蒸着条件>
蒸着面:コロナ処理面
導入ガス:ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム1.0:3.0:3.0 (単位:s1m)
真空チャンバ―内の真空度;2~6×10-6mBar
蒸着チャンバ―内の真空度:2~5×10-3mBar
冷却・電極ドラム供給電力:10kW
ライン速度:100m/min
【0057】
次に、上記で膜厚200Å(20nm)の酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス:アルゴンガス=7.0:2.5(単位:s1m)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6
×10-3Torrで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
【0058】
また、シーラント層として、厚さ25μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(2703、東レフィルム加工(株)製)を使用し、CPPフィルムの片面をコロナ処理、次いで、コロナ処理面にアルミ蒸着(膜厚40nm)して、バリア層を形成し、アルミ蒸着CPPフィルム(バリア層を備えたシーラント層)を作製した。
【0059】
次いで、バリアコート層を備えた透明蒸着PETフィルムのバリアコート層面と、バリア層を備えたアルミ蒸着CPPフィルムのバリア層面とを、酸素バリア性を有する接着剤(PASLIM VM001/VM102CP、DIC(株)製)を介してドライラミネ
ートした。このときの接着剤の塗布量は、接着剤層の厚さが乾燥皮膜として3g/m2
なる量とした。ラミネート後、40℃で3日間エージング処理し、実施例1の積層体を得た。
【0060】
[実施例2]
透明蒸着PET12/酸素バリア接着剤/VM-PEF25
基材層として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し、PETフィルムの片面をコロナ処理、次いで、コロナ処理面にシリカ蒸着(膜厚40nm)して、バリアコート層を形成し、シリカ蒸着透明PETフィルム(バリアコート層を備えた基材層)を作製した。
また、シーラント層として、厚さ25μmのポリエチレン(PE)フィルム(ML-TUX-F、三井化学東セロ(株)製)を使用し、PEフィルムの片面をコロナ処理、次いで、コロナ処理面にアルミ蒸着(膜厚40nm)して、バリア層を形成し、アルミ蒸着PEフィルム(バリア層を備えたシーラント層)を作製した。
次いで、バリアコート層を備えた透明蒸着PETフィルムのバリアコート層面と、バリア層を備えたアルミ蒸着PEフィルムのバリア層面とを、酸素バリア性を有する接着剤(PASLIM VM001/VM102CP、DIC(株)製)を介してドライラミネートした。このときの接着剤の塗布量は、接着剤層の厚さが乾燥皮膜として3g/m2とな
る量とした。ラミネート後、40℃で3日間エージング処理し、実施例2の積層体を得た。
【0061】
[実施例3]
透明PET12/酸素バリア接着剤/VM-CPP25
実施例1において、基材層として、2軸延伸PET(東洋紡 T-4102)を用いた、すなわち、蒸着層とバリアコート層のない基材層とを用いた以外は実施例1と同様に実施例3の積層体を得た。
【0062】
[実施例4]
透明蒸着PET12/印刷層/酸素バリア接着剤/VM-CPP25
実施例1において、バリアコート層上に、ウレタン系のインキからなる印刷層を更に設けた以外は実施例1と同様に実施例4の積層体を得た。
【0063】
[比較例1]
透明蒸着PET12/接着剤/VM-CPP25
基材層として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し、PETフィルムの片面をコロナ処理、次いで、コロナ処理面にシリカ蒸着(膜厚40nm)して、バリアコート層を形成し、シリカ蒸着透明PETフィルム(バリアコート層を備えた基材層)を作製した。
また、シーラント層として、厚さ25μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(2703、東レフィルム加工(株)製)を使用し、CPPフィルムの片面をコロナ処理し、片面コロナ処理CPPフィルムを作製した。
次いで、バリアコート層を備えた透明蒸着PETフィルムのバリアコート層面と、片面コロナ処理CPPフィルムのコロナ処理面とを、2液硬化型のウレタン接着剤(RU-40/H-4、ロックペイント(株)製)を介してドライラミネートした。このときの接着剤の塗布量は、接着剤層の厚さが乾燥皮膜として3g/m2となる量とした。ラミネート
後、40℃で3日間エージング処理し、比較例1の積層体を得た。
【0064】
[比較例2]
透明蒸着PET12/接着剤/VM-PEF25
基材層として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用
し、PETフィルムの片面をコロナ処理、次いで、コロナ処理面にシリカ蒸着(膜厚40nm)して、バリアコート層を形成し、シリカ蒸着透明PETフィルム(バリアコート層を備えた基材層)を作製した。
また、シーラント層として、厚さ25μmのポリエチレン(PE)フィルム(ML-TUX-F、三井化学東セロ(株)製)を使用し、PEフィルムの片面をコロナ処理し、片面コロナ処理PEフィルムを作製した。
次いで、バリアコート層を備えた透明蒸着PETフィルムのバリアコート層面と、片面コロナ処理PEフィルムのコロナ処理面とを、2液硬化型のウレタン接着剤(RU-40/H-4、ロックペイント(株)製)を介してドライラミネートした。このときの接着剤の塗布量は、接着剤層の厚さが乾燥皮膜として3g/m2となる量とした。ラミネート後
、40℃で3日間エージング処理し、比較例2の積層体を得た。
【0065】
[比較例3]
透明蒸着PET12/超微粒子化した酸化珪素、酸化アルミニウムを含む接着剤/VM-PEF25
実施例1において、酸素バリア性を有する接着剤(PASLIM VM001/VM102CP、DIC(株)製)を、テレフタール酸とエチレングリコール、1、6ヘキサンジオールの重縮合により得た数平均分子量25000のポリエステルポリオール(固形分40%)の酢酸溶液90重量部に、湿式破砕装置により10nm、15nmにそれぞれ超微粒子化した酸化珪素、酸化アルミニウム粒子の混合物をポリエステルポリオール樹脂に対して10重量%添加し、その後トリメチロールプロパン1モルとトリレンジイソシアネート3モルを反応させて得たウレタンアダクト酢酸溶液(固形分75%)10重量部混合し、さらに酢酸エチルを117重量部加えて得られたウレタン系バリアー性接着剤に変えた以外は実施例1と同様にして比較例3の積層体を得た。
【0066】
[比較例4]
透明蒸着PET12/酸素バリア接着剤/PE/VM-CPP25
実施例1において、バリアコート層を備えた透明蒸着PETフィルムのバリアコート層面に、乾燥後の厚さが3μmとなるように酸素バリア性を有する接着剤(PASLIM VM001/VM102CP、DIC(株)製)をコーティングし、さらにコーティング面上に厚さ15μmとなるようにポリエチレンを溶融押出しし、ポリエチレンの溶融押し出し面とバリア層を備えたアルミ蒸着CPPフィルムのバリア層面とをラミネートした以外は、実施例1と同様にして比較例4の積層体を得た。
【0067】
[ラミネート強度]
実施例1~4及び比較例1~4で得られた各積層体を、それぞれ幅15mmの短冊状に試験片を切り出し、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製 RTC-1310A)を用いて、25℃雰囲気下、T字剥離方式(引張速度50mm/分)により、基材層とシーラント層間を剥離した際の最大荷重を測定し、ラミネート強度(N/15mm)とした。結果を以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
次に、上記実施例1~4、比較例1~4で得られた積層体の酸素バリア性と水蒸気バリア性とを測定した。酸素バリア性の測定には、米国、MOCON社製OXTRAN2/20を使用し、23℃、90%RHの条件下での酸素透過度(cc/m2・day・atm
)を、水蒸気バリア性の測定には、米国、MOCON社製PERMATRAN3/31を使用し、40℃、90%RHの条件下での水蒸気透過度(g/m2・day・atm)を
それぞれ測定した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
更に、上記実施例1~4、比較例1~4で得られた各積層体をA4サイズに裁断し、ゲルボフレックステスターで3回の屈曲の負荷を与えた後、上記と同様にして各積層体の酸素バリア性(23℃、90%RHの条件下での酸素透過度(cc/m2・day・atm
)と水蒸気バリア性(40℃、90%RHの条件下での水蒸気透過度(g/m2・day
・atm)とを測定した。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
酸素バリア性を有する接着剤を使うことで、通常の2液硬化型ウレタン接着剤を使う場合と比較して同等のラミネート強度が確認された。また、蒸着膜をバリア層として用いる積層体フィルム構成での酸素バリア性、特に積層体フィルムに屈曲の負荷を与えた場合の酸素バリア性に優れたバリア性能を有することを確認した。
図1
図2
図3