(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】減圧システム、制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
F04B49/10 331K
F04B49/10 331Z
(21)【出願番号】P 2021050428
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 彬徳
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-018169(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052675(WO,A1)
【文献】特開2010-096130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプと、
前記電動ポンプのモータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記モータを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成するトルク指令生成部と、
前記トルク指令をリミット値以下に制限するリミッタと、
前記リミッタを経た前記トルク指令に対応する駆動電力を生成して前記モータに供給する電力変換部と、
減圧された前記一次側空間が前記二次側空間に対し開放され
たことを検知した場合に、前記リミット値を一時的に大きくするリミット変更部と、を備える、減圧システム。
【請求項2】
前記動作指令は目標速度を含み、
前記トルク指令生成部は、前記モータの速度を目標速度に追従させるように前記トルク指令を生成する、請求項1記載の減圧システム。
【請求項3】
前記リミット変更部は、前記二次側空間に対して前記一次側空間が開放された後、前記モータの速度が所定の速度低下条件を満たすまで低下した後にリミット値を大きくする、請求項2記載の減圧システム。
【請求項4】
前記リミット変更部は、前記トルク指令に基づいて前記二次側空間に対する前記一次側空間の開放を検知する、請求項1~3のいずれか一項記載の減圧システム。
【請求項5】
前記リミット変更部は、前記トルク指令生成部が生成する前記トルク指令と、大きくする前の前記リミット値との比較に基づいて前記二次側空間に対する前記一次側空間の開放を検知する、請求項4記載の減圧システム。
【請求項6】
前記モータを起動して前記一次側空間の減圧を開始する際に、前記トルク指令生成部は、前記トルク指令が前記リミット値未満に保たれる加速度で前記モータの速度を徐々に上昇させる、請求項4又は5記載の減圧システム。
【請求項7】
前記二次側空間と前記一次側空間との圧力差が第1レベルである状態で前記モータを目標速度で動作させるには第1トルクを要し、前記二次側空間と前記一次側空間との圧力差が前記第1レベルよりも大きい第2レベルである場合には前記第1トルクよりも大きい第2トルクを要し、
前記リミット変更部は、前記第1トルクから前記第2トルクまでの範囲内で前記リミット値を変更する、請求項1~6のいずれか一項記載の減圧システム。
【請求項8】
前記リミット変更部は、前記リミット値を拡大した後、所定のトルク低下条件を満たすまで前記トルク指令が低下した場合に、前記リミット値を大きくした状態を解除する、請求項1~7のいずれか一項記載の減圧システム。
【請求項9】
前記トルク低下条件は、前記トルク指令が、大きくした後の前記リミット値未満に低下することを含み、
前記リミット変更部は、前記リミット値を大きくした後、前記トルク指令が大きくした後の前記リミット値未満に低下した場合に、前記リミット値を大きくした状態を解除する、請求項8記載の減圧システム。
【請求項10】
前記リミット変更部は、前記トルク指令が前記トルク低下条件を満たすまで低下することなく、前記リミット値を大きくした状態が所定の継続条件を満たすまで継続した場合に、前記リミット値を大きくした状態を解除する、請求項8又は9記載の減圧システム。
【請求項11】
前記継続条件は、前記トルク指令が所定の累積レベルまで累積することを含み、
前記リミット変更部は、前記トルク指令が前記トルク低下条件を満たすまで低下することなく、前記トルク指令が前記累積レベルまで累積した場合に、前記リミット値を大きくした状態を解除する、請求項10記載の減圧システム。
【請求項12】
前記継続条件は、前記リミット値を大きくした状態が所定期間に亘って継続することを含み、
前記リミット変更部は、前記トルク指令が前記トルク低下条件を満たすまで低下することなく、前記リミット値を大きくした状態が前記所定期間に亘って継続した場合に、前記リミット値を大きくした状態を解除する、請求項10又は11記載の減圧システム。
【請求項13】
二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプのモータを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成するトルク指令生成部と、
前記トルク指令をリミット値以下に制限するリミッタと、
前記リミッタを経た前記トルク指令に対応する駆動電力を生成して前記モータに供給する電力変換部と、
減圧された前記一次側空間が前記二次側空間に対し開放され
たことを検知した場合に、前記リミット値を一時的に大きくするリミット変更部と、を備える制御装置。
【請求項14】
二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプのモータを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成することと、
前記トルク指令をリミット値以下に制限することと、
前記リミット値以下に制限された前記トルク指令に対応する駆動電力を生成して前記モータに供給することと、
リミット変更部により、減圧された前記一次側空間が前記二次側空間に対し開放され
たことを検知した場合に、前記リミット値を一時的に大きくすることと、を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減圧システム、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空ポンプ内の圧力,ロータの回転数またはロータのアキシャル方向力に基づいて、モータの負荷を検出する負荷検出手段、および負荷検出手段の検出出力に応答して、定常回転時のモータ印加電圧を制御し、負荷変動に対してロータ回転数の変動を小さく抑えるように制御する制御手段を備えた、真空ポンプ用モータ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、二次側空間に対して一次側空間を減圧して行う処理の効率化に有効な減圧システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る減圧システムは、二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプと、電動ポンプのモータを制御する制御装置と、を備え、制御装置は、モータを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成するトルク指令生成部と、トルク指令をリミット値以下に制限するリミッタと、リミッタを経たトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータに供給する電力変換部と、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくするリミット変更部と、を備える。
【0006】
本開示の他の側面に係る制御装置は、二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプのモータを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成するトルク指令生成部と、トルク指令をリミット値以下に制限するリミッタと、リミッタを経たトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータに供給する電力変換部と、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくするリミット変更部と、を備える。
【0007】
本開示の更に他の側面に係る制御方法は、二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプのモータを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成することと、トルク指令をリミット値以下に制限することと、リミット値以下に制限されたトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータに供給することと、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくすることと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、二次側空間に対して一次側空間を減圧して行う処理の効率化に有効な減圧システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】処理システムの構成を例示する模式図である。
【
図3】制御回路のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
〔処理システム〕
図1に示す処理システム1は、ポンプにより、二次側空間に対して一次側空間が減圧された状態にて、一次側空間において処理を行う装置である。一次側空間において行われる処理の内容に特に制限はないが、具体例として、半導体の製造における成膜処理、又はエッチング処理等が挙げられる。
【0012】
図1に示すように、処理システム1は、真空装置2と、減圧システム3とを有する。真空装置2は、チャンバー4と、開閉部材5と、バルブ6とを有する。チャンバー4は、半導体ウェハ等の処理対象物を収容する。処理対象物の搬入・搬出のために、チャンバー4の上部には開口4aが形成されている。開口4aは、チャンバー4の側部に形成されていてもよい。
【0013】
開閉部材5は、開口4aを塞ぐことで、チャンバー4の内部空間4bとチャンバー4の外部空間4cとを隔離する。一例として、開閉部材5は、チャンバー4に対する処理対象物の搬入・搬出に合わせて開口4aを開閉し、チャンバー4内の処理対象物に対し処理が行われる期間には開口4aを閉じた状態に維持する。バルブ6は、チャンバー4の内部空間と、チャンバー4の外部空間とを連通させる流路を開閉する。
【0014】
減圧システム3は、バルブ6が「閉」状態であり、且つ開閉部材5が開口4aを塞いだ状態で、チャンバー4の外部空間4cに対して内部空間4bを減圧する。減圧システム3は、電動ポンプ7と、制御装置8とを有する。
【0015】
電動ポンプ7は、モータ7Mを有し、電力の供給に応じてモータ7Mが生じる動力によって、二次側空間に対し一次側空間を減圧する。例えば電動ポンプ7は、気体輸送式の真空ポンプであり、一次側空間の気体を二次側空間に移送することによって一次側空間を減圧する。電動ポンプ7による気体輸送方式は、容積移送式であってもよく、運動量輸送式であってもよい。
【0016】
一次側は、電動ポンプ7が気体を輸送する方向における上流側を意味し、二次側は、電動ポンプ7が気体を輸送する方向における下流側を意味する。また、一次側空間は、電動ポンプ7の一次側に連通する空間を意味し、二次側空間は、電動ポンプ7の二次側に連通する空間を意味する。電動ポンプ7の一次側は、チャンバー4の内部空間4bに連通しており、電動ポンプ7の二次側は外部空間4cに連通している。このため、減圧システム3においては、チャンバー4の内部空間4bが一次側空間に相当し、チャンバー4の外部空間4cが二次側空間に相当する。
【0017】
バルブ6が「閉」状態であり、且つ開閉部材5が開口4aを塞いでいる場合、二次側空間に対して一次側空間が閉鎖される。ここでの閉鎖は、二次側空間と一次側空間との間に、電動ポンプ7を経ない漏れ流路が形成されない状態を意味する。漏れ流路が形成されない状態は、電動ポンプ7を経る減圧流路に比較して流路抵抗が大きい微小な漏れ流路が形成されている状態を含む。
【0018】
少なくとも、バルブ6が「開」状態である場合、又は開閉部材5が開口4aを開いている場合には、二次側空間に対して一次側空間が開放される。ここでの開放は、二次側空間と一次側区間との間に上記漏れ流路が形成されている状態を意味する。二次側空間であるチャンバー4の外部空間4cは、大気開放されていてもよい。この場合、少なくとも、バルブ6が「開」状態であるか、又は開閉部材5が開口4aを開いていることにより、一次側空間が大気開放されることとなる。
【0019】
制御装置8は、電動ポンプ7のモータ7Mを制御する。例えば制御装置8は、
図2に示すように、電力変換回路10と、制御回路100とを有する。電力変換回路10(電力変換部)は、電源9から供給された電力(以下、「電源電力」という。)を駆動電力に変換してモータ7Mに供給する。一例として、電力変換回路10は、整流回路11と、平滑コンデンサ12と、インバータ回路13と、電流センサ14とを有する。整流回路11は、例えばダイオードブリッジ回路であり、上記電源電力を直流電力に変換する。平滑コンデンサ12は、上記直流電力を平滑化する。
【0020】
インバータ回路13は、上記直流電力と上記駆動電力との間の電力変換を行う。例えばインバータ回路13は、力行状態において、直流電力を駆動電力に変換してモータ7Mに供給し、回生状態において、モータ7Mが発電する電力を直流電力に変換する。なお、力行状態とは、インバータ回路13から供給された駆動電力によりモータ7Mが動作する状態であり、回生状態とは、動作に応じた発電電力をモータ7Mがインバータ回路13に供給する状態である。
【0021】
例えばインバータ回路13は、複数のスイッチング素子15を有し、複数のスイッチング素子15のオン・オフを切り替えることによって上記電力変換を行う。スイッチング素子15は、例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であり、ゲート駆動信号に応じてオン・オフを切り替える。
【0022】
電流センサ14は、インバータ回路13とモータ7Mとの間に流れる電流(以下、「出力電流」という。)を検出する。例えば電流センサ14は、三相交流の全相(U相、V相及びW相)の電流を検出するように構成されていてもよいし、三相交流のいずれか2相の電流を検出するように構成されていてもよい。零相電流が生じない限り、U相、V相、及びW相の電流の合計はゼロなので、2相の電流を検出する場合にも全相の電流の情報が得られる。
【0023】
以上に示した電力変換回路10の構成はあくまで一例である。電力変換回路10の構成は、モータ7Mの駆動電力を生成し得る限りにおいていかようにも変更可能である。例えば、整流回路11は交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータ回路やマトリクスコンバータ回路であってもよい。電力変換回路10は、直流化を経ることなく電源電力と駆動電力との双方向の電力変換を行うマトリクスコンバータ回路であってもよい。電源電力が直流電力である場合に、電力変換回路10は整流回路11を有していなくてもよい。
【0024】
制御回路100は、モータ7Mを動作指令に応じて動作させるための駆動電力を生成するように、電力変換回路10を制御する。例えば制御回路100は、電動ポンプ7を動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成することと、トルク指令に対応する駆動電力を生成して電動ポンプ7に供給するように電力変換回路10を制御することと、を実行するように構成されている。
【0025】
二次側空間に対して一次側空間が閉鎖されている場合、モータ7Mが動作指令に応じて動作することによって、二次側空間に対して一次側空間が減圧される。二次側空間に対して一次側空間が開閉された後、二次側空間に対する一次側空間の再減圧を速やかに行うために、制御回路100は、二次側空間に対して一次側空間が開放される期間においてもモータ7Mの動作を継続させる。二次側空間に対して一次側空間が開放されている場合、モータ7Mが動作することによって、上記減圧流路を経て一次側空間から二次側空間に気体が輸送され、上記漏れ流路を経て二次側空間から一次側空間に気体が戻る。
【0026】
二次側空間に対して一次側空間が減圧された状態で、二次側空間に対して一次側空間が開放されると、動作指令に応じた動作を電動ポンプ7に動作を継続させるために必要なトルクが過大となる場合がある。これに対し、制御回路100は、トルク指令をリミット値以下に制限することを更に実行し、リミット値以下に制限されたトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータ7Mに供給するように電力変換回路10を制御する。トルク指令をリミット値以下に制限することによって、トルク指令が過大になることは防がれるが、電動ポンプ7の動作が動作指令から乖離する。
【0027】
二次側空間に対する一次側空間の開放が解除され、再度一次側空間の減圧が開始されると、必要なトルク指令が徐々に低くなり、動作指令に応じたモータ7Mの動作が徐々に回復する。しかしながら、動作指令に応じたモータ7Mの動作の回復に時間を要するので、二次側空間に対して一次側空間を減圧して行う処理の効率が低下する。これに対し、制御回路100は、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくすることを更に実行する。これにより、動作指令に対するモータ7Mの動作の乖離が抑制される。従って、二次側空間に対して一次側空間を減圧して行う処理の効率化に有効である。
【0028】
例えば制御回路100は、機能上の構成要素として、トルク指令生成部111と、リミッタ116と、電流情報取得部112と、電圧指令生成部114と、速度推定部113と、PWM制御部115と、リミット変更部117とを有し、これらの構成要素による制御サイクルを所定の制御周期で繰り返す。
【0029】
トルク指令生成部111は、各制御サイクルにおいて、モータ7Mを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成する。一例として、動作指令は目標速度を含み、トルク指令生成部111は、モータ7Mの速度を目標速度に追従させるようにトルク指令を生成する。例えばトルク指令生成部111は、目標速度とモータ7Mの速度との偏差に比例演算、比例・積分演算、又は比例・積分・微分演算等を行ってトルク指令を生成する。
【0030】
リミッタ116は、各制御サイクルにおいて、トルク指令生成部111により生成されたトルク指令をリミット値以下に制限する。例えばリミッタ116は、トルク指令がリミット値を超えている場合に、トルク指令の値をリミット値に変更する。
【0031】
停止していたモータ7Mを起動して、二次側空間に対する一次側空間の減圧を開始する際に、トルク指令生成部111は、トルク指令が上記リミット値未満に保たれる加速度でモータ7Mの速度を目標速度まで徐々に上昇させてもよい。例えばトルク指令生成部111は、上記加速度で目標速度まで徐々に上昇する速度パターンと、モータ7Mの起動後に実行された制御サイクルの数とに基づいて、現在の制御サイクルにおける速度指令値を算出し、モータ7Mの速度を速度指令値に追従させるようにトルク指令を生成する。
【0032】
電流情報取得部112は、各制御サイクルにおいて、上記出力電流の検出値を電流センサ14から取得する。電圧指令生成部114は、各制御サイクルにおいて、リミッタ116を経たトルク指令に追従したトルクをモータ7Mに発生させるための電圧指令を生成する。例えば電圧指令生成部114は、トルク指令に対応する電流指令を算出し、出力電流を電流指令に追従させるように電圧指令を生成する。
【0033】
速度推定部113は、各制御サイクルにおいて、電圧指令と、出力電流とに基づいてモータ7Mの速度を推定する。モータ7Mの速度を推定する手法の具体例としては、拡張誘起電圧オブザーバを用いた手法等が挙げられる。
【0034】
速度推定部113による速度の推定結果は、上述したトルク指令生成部111によるトルク指令の生成に用いられる。速度推定部113による速度の推定と、その結果を用いたトルク指令の生成とは、同一の制御サイクルにおいて行われてもよい。この場合、速度推定部113は、一つ前の制御サイクルにおいて生成された電圧指令と、出力電流とに基づいて、トルク指令生成部111によるトルク指令の生成に先立ってモータ7Mの速度を推定する。
【0035】
速度推定部113による速度の推定結果を用いたトルク指令の生成は、速度推定部113による速度の推定が行われる制御サイクルの次の制御サイクルで行われてもよい。この場合、速度推定部113は、電圧指令生成部114による電圧指令の生成後に、その生成結果を用いてモータ7Mの速度を推定する。
【0036】
なお、電動ポンプ7は、モータ7Mの速度を検出する速度センサを有していてもよい。この場合、トルク指令生成部111は、速度センサによる検出値を用いてトルク指令を生成してもよく、制御回路100は速度推定部113を有しなくてよい。
【0037】
PWM制御部115は、各制御サイクルにおいて、リミッタ116を経たトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータ7Mに供給するように電力変換回路10を制御する。
例えばPWM制御部115は、各制御サイクルにおいて、電圧指令生成部114により生成された電圧指令に対応する電圧をモータ7Mに印加するように、インバータ回路13の複数のスイッチング素子15のオン・オフを切り替える。
【0038】
リミット変更部117は、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくする。例えばリミット変更部117は、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を、平常リミット値から、平常リミット値よりも大きい増大リミット値に一時的に変更する。
【0039】
リミット変更部117は、二次側空間に対して一次側空間が開放された後、モータ7Mの速度が所定の速度低下条件を満たすまで低下した後に、リミット値を平常リミット値から増大リミット値に変更してもよい。速度低下条件の具体例としては、モータ7Mの速度が所定の低下判定速度まで低下することが挙げられる。
【0040】
リミット変更部117は、トルク指令に基づいて二次側空間に対する一次側空間の開放を検知してもよい。リミット変更部117は、トルク指令生成部111が生成するトルク指令と、大きくする前のリミット値(平常リミット値)との比較に基づいて二次側空間に対する一次側空間の開放を検知してもよい。例えばリミット変更部117は、トルク指令生成部111が生成するトルク指令が平常リミット値を超えるのに応じて二次側空間に対する一次側空間の開放を検知してもよい。
【0041】
電動ポンプ7においては、二次側空間と一次側空間との圧力差が大きくなるにつれて、モータ7Mを目標速度で動作させるためのトルクが小さくなる。このため、二次側空間と一次側空間との圧力差が第1レベルである状態でモータ7Mを動作指令に応じて動作させるには第1トルクを要し、二次側空間と一次側空間との圧力差が第1レベルよりも小さい第2レベルである状態でモータ7Mを動作指令に応じて動作させるには第1トルクよりも大きい第2トルクを要する。リミット変更部117は、第1トルクから第2トルクまでの範囲内でリミット値を変更してもよい。例えば、上記平常リミット値は、第1トルクを超え、第2トルク未満であってもよい。増大リミット値は、平常リミット値を超え、第2トルク以下であってもよい。
【0042】
二次側空間と一次側空間との圧力差は、一次側空間が略真空となるまで減圧された状態で最大レベルとなる。また、二次側空間と一次側空間との圧力差は、二次側空間に対して一次側空間に対して開放された状態で最小レベル(ゼロ)となる。第1レベルが最大レベルであってもよく、第2レベルが最小レベルであってもよいが、第1レベル及び第2レベルには、第2レベルの方が第1レベルよりも小さいこと以外に特に制約はない。
【0043】
リミット変更部117は、リミット値を大きくした後、所定のトルク低下条件を満たすまでトルク指令が低下した場合に、リミット値を大きくした状態を解除してもよい。例えばリミット変更部117は、リミット値を平常リミット値から増大リミット値に変更した後、上記トルク低下条件を満たすまでトルク指令が低下した場合に、リミット値を増大リミット値から平常リミット値に変更してもよい。
【0044】
トルク低下条件は、トルク指令が、大きくされた後のリミット値(増大リミット値)未満に低下することを含んでもよい。例えばリミット変更部117は、リミット値を平常リミット値から増大リミット値に変更した後、トルク指令が増大リミット値未満に低下した場合に、リミット値を増大リミット値から平常リミット値に変更してもよい。
【0045】
リミット変更部117は、トルク指令が上記トルク低下条件を満たすまで低下することなく、リミット値を大きくした状態が所定の継続条件を満たすまで継続した場合に、リミット値を大きくした状態を解除してもよい。例えばリミット変更部117は、リミット値を平常リミット値から増大リミット値に変更した後、トルク指令が上記トルク低下条件を満たすまでトルク指令が低下することなく、リミット値を大きくした状態が上記継続条件を満たすまで継続した場合に、リミット値を増大リミット値から平常リミット値に変更してもよい。
【0046】
継続条件は、トルク指令が所定の累積レベルまで累積することを含んでもよい。例えばリミット変更部117は、トルク指令がトルク低下条件を満たすまで低下することなく、トルク指令が上記累積レベルまで累積した場合に、リミット値を増大リミット値から平常リミット値に変更してもよい。
【0047】
継続条件は、リミット値を大きくした状態が所定期間に亘って継続することを含んでもよい。例えばリミット変更部117は、トルク指令がトルク低下条件を満たすまで低下することなく、リミット値を大きくした状態が所定期間に亘って継続した場合に、リミット値を増大リミット値から平常リミット値に変更してもよい。
【0048】
一例として、リミット変更部117は、各制御サイクルにおいて、トルク指令が平常リミット値を超えているか否かを確認し、連続する所定数の制御サイクルにおいてトルク指令が平常リミット値を超えた場合に、二次側空間に対して一次側空間が開放されたことを検知する。
【0049】
その後、リミット変更部117は、各制御サイクルにおいて、モータ7Mの速度が上記速度低下条件を満たしているかを確認し、モータ7Mの速度が速度低下条件を満たした場合に、リミット値を平常リミット値から増大リミット値に変更する。リミット値が平常リミット値から増大リミット値に変更されると、リミッタ116は、トルク指令値を増大リミット値以下に制限することとなる。
【0050】
リミット値を平常リミット値から増大リミット値に変更した後、リミット変更部117は、各制御サイクルにおいて、トルク指令が上記トルク低下条件を満たすまで低下したか否か、及びリミット値を大きくした状態が上記継続条件を満たすまで継続したか否かを確認し、トルク指令がトルク低下条件を満たすか、リミット値を大きくした状態が上記継続条件を満たすまで継続した場合に、リミット値を増大リミット値から平常リミット値に変更する。リミット値が増大リミット値から平常リミット値に変更されると、リミッタ116は、トルク指令値を平常リミット値以下に制限することとなる。
【0051】
図3は、制御回路100のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図3に示すように、制御回路100は、一つ又は複数のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、スイッチング制御回路195とを含む。ストレージ193は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ193は、二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプ7のモータ7Mを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成することと、トルク指令をリミット値以下に制限することと、リミット値以下に制限されたトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータ7Mに供給することと、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくすることと、を制御回路100に実行させるプログラムを記憶している。
【0052】
メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、制御回路100の各機能ブロックを構成する。入出力ポート194は、プロセッサ191からの指令に従って、電流センサ14との間で電気信号の入出力を行う。スイッチング制御回路195は、プロセッサ191からの指令に従って、インバータ回路13に、スイッチング素子15のオン・オフを切り替えるための駆動信号を出力する。
【0053】
なお、制御回路100は、必ずしもプログラムにより各機能を構成するものに限られない。例えば制御回路100は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により少なくとも一部の機能を構成してもよい。
【0054】
〔制御手順〕
続いて、制御方法の一例として、制御回路100が実行する制御手順を例示する。この制御手順は、二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプ7のモータ7Mを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成することと、トルク指令をリミット値以下に制限することと、リミット値以下に制限されたトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータ7Mに供給するように電力変換回路10を制御することと、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくすることと、を含む。
【0055】
例えば
図4に示すように、制御回路100は、まずステップS01,S02を実行する。ステップS01では、トルク指令生成部111が、モータ7Mを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成する。例えばトルク指令生成部111は、モータ7Mの速度を目標速度に追従させるようにトルク指令を生成する。ステップS02では、トルク指令が平常リミット値を超えているか否かをリミッタ116が確認する。
【0056】
ステップS02においてトルク指令が平常リミット値を超えていると判定した場合、制御回路100はステップS03を実行する。ステップS03では、リミッタ116が、トルク指令を平常リミット値に変更する。
【0057】
次に、制御回路100はステップS04を実行する。ステップS02においてトルク指令が平常リミット値を超えていないと判定した場合、制御回路100は、ステップS03を実行することなくステップS04を実行する。ステップS04では、電流情報取得部112が、上記出力電流の検出値を電流センサ14から取得する。
【0058】
次に制御回路100は、ステップS05,S06,S07,S08を実行する。ステップS05では、電圧指令生成部114が、リミッタ116を経たトルク指令に追従したトルクをモータ7Mに発生させるための電圧指令を生成する。例えば電圧指令生成部114は、トルク指令に対応する電流指令を算出し、出力電流を電流指令に追従させるように電圧指令を生成する。ステップS06では、PWM制御部115が、ステップS05において生成された電圧指令に基づく複数のスイッチング素子15のオン・オフを開始する。
【0059】
ステップS07では、速度推定部113が、電圧指令と、出力電流とに基づいてモータ7Mの速度を推定する。ステップS07における推定結果は、次の制御サイクルにおいて、トルク指令生成部111によるトルク指令の生成に用いられる。ステップS08では、二次側空間に対して一次側空間が開放されていることを検知済みであるか否かをリミット変更部117が確認する。例えばリミット変更部117は、二次側空間に対して一次側空間が開放されているか否かを表すチャンバーステータスが「開」となっているか否かを確認する。
【0060】
ステップS08において、二次側空間に対して一次側空間が開放されていることを検知済みでないと判定した場合、制御回路100はステップS11を実行する。ステップS11では、トルク指令が平常リミット値を超えた制御サイクルの連続回数が所定の検知閾値以上となったか否かをリミット変更部117が確認する。
【0061】
ステップS11においてトルク指令が平常リミット値を超えた制御サイクルの連続回数が検知閾値以上となっていないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS01に戻す。以後、トルク指令が平常リミット値を超えた制御サイクルの連続回数が検知閾値以上となるまでは、二次側空間に対して一次側空間は閉鎖されているものとして、リミット値を平常リミット値とした状態での制御サイクルが繰り返される。
【0062】
ステップS11においてトルク指令が平常リミット値を超えた制御サイクルの連続回数が検知閾値以上となったと判定した場合、制御回路100はステップS12を実行する。ステップS12では、リミット変更部117が、二次側空間に対して一次側空間が開放されたことを検知し、上記チャンバーステータスを「閉」から「開」に変更する。その後、制御回路100は処理をステップS01に戻す。
【0063】
ステップS08において二次側空間に対して一次側空間が開放されていることを検知済みであると判定した場合、制御回路100はステップS13を実行する。ステップS13では、モータ7Mの速度が上記速度低下条件を満たしているか否かをリミット変更部117が確認する。
【0064】
ステップS13においてモータ7Mの速度が速度低下条件を満たしていないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS01に戻す。以後、モータ7Mの速度が速度低下条件を満たすまでは、リミット値が平常リミット値に保って制御サイクルが繰り返される。
【0065】
ステップS13においてモータ7Mの速度が速度低下条件を満たしていると判定した場合、制御回路100はステップS14を実行する。ステップS14では、リミット変更部117が、リミット値を平常リミット値から増大リミット値に変更する。
【0066】
次に、制御回路100は、
図5に示すように、ステップS21,S22を実行する。ステップS21では、トルク指令生成部111が、モータ7Mを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成する。例えばトルク指令生成部111は、モータ7Mの速度を目標速度に追従させるようにトルク指令を生成する。ステップS22では、トルク指令が増大リミット値を超えているか否かをリミッタ116が確認する。
【0067】
ステップS22においてトルク指令が増大リミット値を超えていると判定した場合、制御回路100はステップS23を実行する。ステップS23では、リミッタ116が、トルク指令を増大リミット値に変更する。
【0068】
次に、制御回路100はステップS24を実行する。ステップS22においてトルク指令が増大リミット値を超えていないと判定した場合、制御回路100はステップS23を実行することなくステップS24を実行する。ステップS24では、電流情報取得部112が、上記出力電流の検出値を電流センサ14から取得する。
【0069】
次に、制御回路100は、ステップS25,S26,S27,S28を実行する。ステップS25では、電圧指令生成部114が、リミッタ116を経たトルク指令に追従したトルクをモータ7Mに発生させるための電圧指令を生成する。例えば電圧指令生成部114は、トルク指令に対応する電流指令を算出し、出力電流を電流指令に追従させるように電圧指令を生成する。ステップS26では、PWM制御部115が、ステップS25において生成された電圧指令に基づく複数のスイッチング素子15のオン・オフを開始する。
【0070】
ステップS27では、速度推定部113が、電圧指令と、出力電流とに基づいてモータ7Mの速度を推定する。ステップS27における推定結果は、次の制御サイクルにおいて、トルク指令生成部111によるトルク指令の生成に用いられる。ステップS28では、トルク指令が上記トルク低下条件を満たすまで低下したか否かをリミット変更部117が確認する。
【0071】
ステップS28においてトルク指令がトルク低下条件を満たすまで低下していないと判定した場合、制御回路100はステップS31を実行する。ステップS31では、リミット値を大きくした状態が上記継続条件を満たすまで継続したか否かをリミット変更部117が確認する。
【0072】
ステップS31において、リミット値を大きくした状態が継続条件を満たすまで継続していないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS21に戻す。以後、トルク指令がトルク低下条件を満たすまで低下するか、リセット値を大きくした状態が上記継続条件を満たすまで継続するまで、リミット値を増大リミット値にした状態での制御サイクルが繰り返される。
【0073】
ステップS31において、リミット値を大きくした状態が継続条件を満たすまで継続したと判定した場合、制御回路100はステップS32を実行する。ステップS32では、リミット変更部117が、リミット値を増大リミット値から平常リミット値に変更する。その後、制御回路100は処理をステップS21に戻す。以後、二次側空間に対して一次側空間が未だ開放されているものとして、リミット値を平常リミット値とした状態での制御サイクルが繰り返される。
【0074】
ステップS28においてトルク指令がトルク低下条件を満たすまで低下していると判定した場合、制御回路100はステップS33を実行する。ステップS33では、リミット値が増大リミット値であるか否かをリミット変更部117が確認する。
【0075】
ステップS33においてリミット値が増大リミット値であると判定した場合、制御回路100はステップS34を実行する。ステップS34では、リミット変更部117が、リミット値を増大リミット値から平常リミット値に変更する。
【0076】
次に制御回路100はステップS35を実行する。ステップS33においてリミット値が増大リミット値で無いと判定した場合、制御回路100は、ステップS34を実行することなくステップS35を実行する。ステップS35では、リミット変更部117が、二次側空間に対して一次側空間が閉鎖されたことを検知し、上記チャンバーステータスを「開」から「閉」に変更する。その後、制御回路100は処理をステップS01に戻す。以後、二次側空間に対して一次側空間が閉鎖されているものとし、リミット値を平常リミット値とした状態での制御サイクルが再開される。
【0077】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、減圧システム3は、二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプ7と、電動ポンプ7のモータ7Mを制御する制御装置8と、を備え、制御装置8は、モータ7Mを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成するトルク指令生成部111と、トルク指令をリミット値以下に制限するリミッタ116と、リミッタ116を経たトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータ7Mに供給する電力変換回路10と、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくするリミット変更部117と、を備える。
【0078】
一次側空間が二次側空間に対し開放されると、動作指令に対応した動作をモータに継続させるためのトルク指令がリミット値を超える場合がある。この場合、トルク指令がリミット値に制限されることによって、モータ7Mの動作が動作指令から乖離する。二次側空間に対する一次側空間の開放が解除され、再度一次側空間の減圧が開始されると、必要なトルク指令が徐々に低くなり、モータ7Mの動作が徐々に動作指令に対応する。
【0079】
しかしながら、一次側空間が二次側空間に対し開放されている期間に、動作指令に対するモータ7Mの動作の乖離が過大になっていると、モータ7Mの動作が動作指令に対応するまでに時間を要する。このため、一次側空間を減圧して行う処理の効率が低下する。これに対し、減圧システム3によれば、一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット変更部117がリミット値を一時的に大きくすることによって、動作指令に対するモータ7Mの動作の乖離が抑制される。従って、二次側空間に対して一次側空間を減圧して行う処理の効率化に有効である。
【0080】
動作指令は目標速度を含み、トルク指令生成部111は、モータ7Mの速度を目標速度に追従させるようにトルク指令を生成してもよい。この場合、リミット変更部117がリミット値を一時的に大きくすることによって、動作指令に対するモータ7Mの動作の乖離がより確実に抑制される。
【0081】
リミット変更部117は、二次側空間に対して一次側空間が開放された後、モータ7Mの速度が所定の速度低下条件を満たすまで低下した後にリミット値を大きくしてもよい。トルク指令値がリミット値に制限された後にリミット値を大きくすると、トルク指令が急に大きくなる。モータ7Mの速度が高い状態でトルク指令が急に大きくなると、電力変換回路10の能力に対して駆動電力が過大になる可能性がある。モータ7Mの速度が所定の速度低下条件を満たすまで待った後にリミット値を大きくすることによって、駆動電力が過大になることを抑制することができる。
【0082】
リミット変更部117は、トルク指令に基づいて二次側空間に対する一次側空間の開放を検知してもよい。この場合、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0083】
リミット変更部117は、トルク指令生成部111が生成するトルク指令と、大きくする前のリミット値との比較に基づいて二次側空間に対する一次側空間の開放を検知してもよい。この場合、二次側空間に対する一次側空間の開放を好感度に検知することができる。
【0084】
モータ7Mを起動して一次側空間の減圧を開始する際に、トルク指令生成部111は、トルク指令がリミット値未満に保たれる加速度でモータ7Mの速度を目標速度まで徐々に上昇させてもよい。この場合、二次側空間に対する一次側空間の開放が、モータ7Mの起動中に誤検知されることを抑制することができる。
【0085】
二次側空間と一次側空間との圧力差が第1レベルである状態でモータ7Mを目標速度で動作させるには第1トルクを要し、二次側空間と一次側空間との圧力差が第1レベルよりも大きい第2レベルである場合には第1トルクよりも大きい第2トルクを要し、リミット変更部117は、第1トルクから第2トルクまでの範囲内でリミット値を変更してもよい。この場合、電力変換回路10の能力に対して駆動電力が過大になる電力変換回路10に対する過負荷が生じることを抑制することができる。
【0086】
リミット変更部117は、リミット値を拡大した後、所定のトルク低下条件を満たすまでトルク指令が低下した場合に、リミット値を大きくした状態を解除してもよい。この場合、二次側空間に対する一次側空間の減圧が開始され、トルク指令が低下するまでは、リミット値を大きくした状態を維持することで、動作指令に対するモータ7Mの動作の乖離をより確実に抑制することができる。
【0087】
トルク低下条件は、トルク指令が、大きくした後のリミット値未満に低下することを含み、リミット変更部117は、リミット値を大きくした後、トルク指令が大きくした後のリミット値(増大リミット値)未満に低下した場合に、リミット値を大きくした状態を解除してもよい。この場合、動作指令に対するモータ7Mの動作の乖離をより確実に抑制することができる。
【0088】
リミット変更部117は、トルク指令がトルク低下条件を満たすまで低下することなく、リミット値を大きくした状態が所定の継続条件を満たすまで継続した場合に、リミット値を大きくした状態を解除してもよい。この場合、効率化と、過負荷抑制との両立を図ることができる。
【0089】
継続条件は、トルク指令が所定の累積レベルまで累積することを含み、リミット変更部117は、トルク指令がトルク低下条件を満たすまで低下することなく、トルク指令が累積レベルまで累積した場合に、リミット値を大きくした状態を解除してもよい。この場合、動作指令に対するモータ7Mの動作の乖離の抑制と、電力変換回路10の能力に対して駆動電力が過大になることの抑制との両立を図ることができる。
【0090】
継続条件は、リミット値を大きくした状態が所定期間に亘って継続することを含み、リミット変更部117は、トルク指令がトルク低下条件を満たすまで低下することなく、リミット値を大きくした状態が所定期間に亘って継続した場合に、リミット値を大きくした状態を解除してもよい。この場合、動作指令に対するモータ7Mの動作の乖離の抑制と、電力変換回路10の能力に対して駆動電力が過大になることの抑制との両立を図ることができる。
【0091】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
3…減圧システム、7…電動ポンプ、7M…モータ、8…制御装置、10…電力変換回路(電力変換部)、111…トルク指令生成部、116…リミッタ、117…リミット変更部。
【要約】
【課題】二次側空間に対して一次側空間を減圧して行う処理の効率化に有効な減圧システムを提供する。
【解決手段】減圧システム3は、二次側空間に対して一次側空間を減圧する電動ポンプ7と、電動ポンプ7のモータ7Mを制御する制御装置8と、を備え、制御装置8は、モータ7Mを動作指令に応じて動作させるようにトルク指令を生成するトルク指令生成部111と、トルク指令をリミット値以下に制限するリミッタ116と、リミッタ116を経たトルク指令に対応する駆動電力を生成してモータ7Mに供給する電力変換回路10と、減圧された一次側空間が二次側空間に対し開放されるのに応じて、リミット値を一時的に大きくするリミット変更部117と、を備える。
【選択図】
図2