(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20220928BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20220928BHJP
G01N 30/34 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01N30/86 T
G01N30/26 E
G01N30/34 A
G01N30/86 P
(21)【出願番号】P 2021503393
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040447
(87)【国際公開番号】W WO2020179119
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2019040246
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】大橋 浩志
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-281897(JP,A)
【文献】特開平8-54399(JP,A)
【文献】特開昭62-226999(JP,A)
【文献】特表2018-514761(JP,A)
【文献】特開2008-83040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0109473(US,A1)
【文献】実開平5-43068(JP,U)
【文献】クロマトQ&A (12),Wako Analytical Circle,日本,和光純薬工業株式会社,1999年,No.14,P9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 ー 30/96
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の溶媒を送液する送液部と、
前記送液部により送液される前記複数の溶媒を混合するための内部容量をもつミキサと、
前記ミキサにおいて混合された溶媒が移動相として流れる分析流路中に試料を注入する試料注入部と、
前記分析流路上に設けられ、前記試料注入部により注入された試料を成分ごとに分離するための分離カラムと、
前記分析流路上における前記分離カラムの下流に設けられ、前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器と、
前記ミキサに付属し、前記ミキサの前記内部容量に関する情報を記憶する容量情報記憶媒体と、
前記容量情報記憶媒体に記憶されている前記情報を読み取って前記ミキサの前記内部容量を特定するように構成された容量特定部と、を備えた液体クロマトグラフ。
【請求項2】
前記ミキサは、前記内部容量を複数種類の容量のうちのいずれかに設定することができるように構成された容量選択式のミキサであり、
前記容量情報記憶媒体は、前記ミキサが容量選択式のミキサであることを示す情報を記憶しており、
前記容量特定部は、前記容量情報記憶媒体に記憶されている前記情報から前記ミキサが容量選択式のミキサであることを読み取り、前記ミキサの前記内部容量として設定され得る前記複数種類の容量をユーザに示し、前記複数種類の容量のうち前記内部容量として設定されている容量をユーザに選択させ、ユーザが選択した容量を前記ミキサの内部容量として特定するように構成されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記検出器の検出信号から得られる分析データを、前記分析データの取得時に用いられた前記ミキサの前記内部容量とともに出力するように構成された分析データ出力部を備えている、請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項4】
前記分離カラムを内部に収容し、前記分離カラムの温度を所定温度に調節するカラムオーブンを備え、
前記ミキサ及び前記容量情報記憶媒体は前記カラムオーブンに収容され、前記容量特定部は前記カラムオーブンに搭載されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項5】
前記ミキサ及び前記容量情報記憶媒体は前記送液部に収容され、前記容量特定部は前記送液部に搭載されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項6】
前記ミキサ及び前記容量情報記憶媒体は前記試料注入部に収容され、前記容量特定部は前記試料注入部に搭載されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフでは、移動相の流れる分析流路中に試料を注入し、分析流路に注入された試料を移動相によって分離カラムへ導いて成分ごとに分離し、分離された試料成分を検出器により検出する(特許文献1参照)。
【0003】
分析流路中で送液される移動相として、水系溶媒、有機溶媒といった複数の溶媒の混合液がよく用いられ、それら複数の溶媒の混合比率を時間的に変化させるグラジエント分析もよく実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、複数の溶媒を混合して移動相を組成する場合、溶媒を混合するためのミキサがオンライン上に設けられる。液体クロマトグラフに用いられるミキサには、互いに異なる内部容量をもった複数の種類のミキサが存在する。また、複数種類の容量の中から使用する内部容量を選択して設定できるように構成された容量選択式のミキサも存在する。
【0006】
液体クロマトグラフィー分析では、使用するミキサの内部容量によって溶媒の混合具合が異なり、それが分析データに影響を与えることも考えられる。そのため、分析の再現性を高めるためには、分析データがどのような内部容量のミキサを用いて取得されたものであるのかをユーザが容易に認識できることが好ましい。しかしながら、これまでの液体クロマトグラフでは、分析に用いられているミキサの容量を分析システム側が認識できておらず、ユーザ自身が使用しているミキサの容量を把握していなければ、分析データがどのようなミキサを用いて取得されたものであるのかを把握する術がなかった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、分析に用いられているミキサの容量を分析システムが認識できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体クロマトグラフは、複数の溶媒を送液する送液部と、前記送液部により送液される前記複数の溶媒を混合するための内部容量をもつミキサと、前記ミキサにおいて混合された溶媒が移動相として流れる分析流路中に試料を注入する試料注入部と、前記分析流路上に設けられ、前記試料注入部により注入された試料を成分ごとに分離するための分離カラムと、前記分析流路上における前記分離カラムの下流に設けられ、前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器と、前記ミキサに付属し、前記ミキサの前記内部容量に関する情報を記憶する容量情報記憶媒体と、前記容量情報記憶媒体に記憶されている前記情報を読み取って前記ミキサの前記内部容量を特定するように構成された容量特定部と、を備えている。
【0009】
ここで、容量情報記憶媒体がミキサに付属するとは、フラッシュメモリなどの容量情報記憶媒体がミキサと直接的に又は間接的に連結されていることを意味する。容量情報記憶媒体がミキサと直接的に連結されているとは、容量情報記憶媒体がミキサに固着されて一体をなしていることを意味し、容量情報記憶媒体がミキサと間接的に連結されているとは、容量情報記憶媒体が紐状の部材等によってミキサと繋がっていることを意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体クロマトグラフによれば、ミキサの内部容量に関する情報を記憶する容量情報記憶媒体をミキサに附属させ、容量情報記憶媒体に記憶されている情報を読み取ってミキサの内部容量を特定するように構成された容量特定部を備えているので、分析に用いられているミキサの容量を分析システムが認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】液体クロマトグラフの一実施例を示す概略構成図である。
【
図2】液体クロマトグラフの他の実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
液体クロマトグラフの一実施例について、
図1を参照しながら説明する。
【0013】
この実施例の液体クロマトグラフは、送液部2、ミキサ6、分析流路8、試料注入部10、分離カラム12、検出器14、容量特定部18及び演算制御部20を備えている。
【0014】
送液部2は複数の溶媒を送液するように構成されており、この実施例では2台の送液ポンプ2a、2bを備えている。なお、送液部2の構成はこれに限定されるものではなく、1台の送液ポンプによって複数の溶媒を送液するように構成されたものであってもよい。
【0015】
ミキサ6は送液部2の下流で、流路4aを通じて送液される溶媒と流路4bを通じて送液される溶媒とを混合するように設けられている。ミキサ6において混合された溶媒が移動相として分析流路8を流れる。
【0016】
試料注入部10は、分析流路8中に試料を注入するものである。分析流路8上における試料注入部10の下流に分離カラム12が設けられ、分析流路8上における分離カラム12の下流に検出器14が設けられている。試料注入部10により分析流路8中に注入された試料はミキサ6からの移動相によって分離カラム12へ搬送され、成分ごとに分離される。分離カラム12にて分離された試料成分は検出器14により検出される。検出器14の検出信号は演算制御部20に取り込まれる。
【0017】
ミキサ6には容量情報記憶媒体16が付属している。容量情報記憶媒体16は、ミキサ6の内部容量に関する情報を記憶している。ミキサ6が複数種類の容量のうちのいずれかの容量に設定することができるように構成された容量選択式のミキサである場合、そのミキサ6に付属している容量情報記憶媒体16にはそのミキサが容量選択式のミキサであることを示す情報が少なくとも記憶されている。容量情報記憶媒体16はフラッシュメモリなどで実現されるものである。
【0018】
容量特定部18は、この液体クロマトグラフのシステムに組み込まれたミキサ6に付属する容量情報記憶媒体16との間で情報通信を行ない得る電子回路の機能として実現されるものである。容量特定部18を機能として実現する電子回路としては、演算制御部20に搭載されている電子回路のほか、ミキサ6が組み込まれたモジュールに搭載されている電子回路が挙げられる。ミキサ6が組み込まれるモジュールとして、
図2に示されているように、分離カラム12を内部に収容して分離カラム12の温度を所定温度に調節するためのカラムオーブン24が挙げられる。このほか、ミキサ6が送液部2に組み込まれている場合には、容量特定部18が送液部2に搭載されていてもよい。ミキサ6が試料注入部10に組み込まれている場合には、容量特定部18が試料注入部10に搭載されていてもよい。
【0019】
容量特定部18は、容量情報記憶媒体16に記憶されている情報を読み取り、システムに組み込まれているミキサ6の内部容量を特定するように構成されている。また、ミキサ6が容量選択式のミキサである場合、容量特定部18は、容量情報記憶媒体16に記憶されている情報からミキサ6が容量選択式のミキサであることを読み取り、ミキサ6の内部容量として設定され得る複数種類の容量を、容量特定部18を機能として実現する電子回路に電気的に接続されている表示装置に表示する。そして、容量特定部18は、それら複数種類の容量の中から実際にミキサ6の内部容量として設定されている容量をユーザに選択させ、ユーザによって選択された容量をミキサ6の内部容量として特定するように構成されている。ミキサ6の内部容量として設定され得る複数種類の容量に関する情報は、容量情報記憶媒体16に記憶されていてもよいし、容量特定部18を機能として実現する電子回路に組み込まれた記憶装置に記憶されていてもよい。
【0020】
演算制御部20は、専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現される。演算制御部20は、検出器14からの検出信号を用いてクロマトグラムなどの分析データを作成し、出力する分析データ出力部22を備えている。分析データ出力部22は、演算制御部20において所定のプログラムが実行されることにより実現される機能である。分析データ出力部22は、容量特定部18によって特定されたミキサ6の内部容量を分析データとともに出力するように構成されている。これにより、ユーザは、分析データがどのような容量のミキサ6を用いて取得されたものであるかを容易に認識することができる。
【0021】
以上において説明した実施例は本発明に係る液体クロマトグラフの実施形態の一例に過ぎない。本発明に係る液体クロマトグラフの実施形態は以下の通りである。
【0022】
本発明に係る液体クロマトグラフの実施形態では、複数の溶媒を送液する送液部(2)と、前記送液部(2)により送液される前記複数の溶媒を混合するための内部容量をもつミキサ(6)と、前記ミキサ(6)において混合された溶媒が移動相として流れる分析流路(8)中に試料を注入する試料注入部(10)と、前記分析流路(8)上に設けられ、前記試料注入部(10)により注入された試料を成分ごとに分離するための分離カラム(12)と、前記分析流路(8)上における前記分離カラム(12)の下流に設けられ、前記分離カラム(12)において分離した試料成分を検出するための検出器(14)と、前記ミキサ(6)に付属し、前記ミキサ(6)の前記内部容量に関する情報を記憶する容量情報記憶媒体(16)と、前記容量情報記憶媒体(16)に記憶されている前記情報を読み取って前記ミキサ(6)の前記内部容量を特定するように構成された容量特定部(18)と、を備えている。
【0023】
上記実施形態の第1態様では、前記ミキサ(6)は、前記内部容量を複数種類の容量のうちのいずれかに設定することができるように構成された容量選択式のミキサ(6)であり、前記容量情報記憶媒体(16)は、前記ミキサ(6)が容量選択式のミキサ(6)であることを示す情報を記憶しており、前記容量特定部(18)は、前記容量情報記憶媒体(16)に記憶されている前記情報から前記ミキサ(6)が容量選択式のミキサ(6)であることを読み取り、前記ミキサ(6)の前記内部容量として設定され得る前記複数種類の容量をユーザに示し、前記複数種類の容量のうち前記内部容量として設定されている容量をユーザに選択させ、ユーザが選択した容量を前記ミキサ(6)の内部容量として特定するように構成されている。このような態様により、ミキサ(6)が容量選択式のミキサ(6)であっても、そのミキサ(6)の内部容量として設定されている容量を分析システム側に認識させることができる。
【0024】
上記実施形態の第2態様では、前記検出器(14)の検出信号から得られる分析データを、前記分析データの取得時に用いられた前記ミキサ(6)の前記内部容量とともに出力するように構成された分析データ出力部(22)を備えている。このような態様により、ユーザは、分析データの取得時に用いられたミキサ(6)の内部容量を容易に認識することができる。
【0025】
上記実施形態の第3態様では、前記分離カラム(12)を内部に収容し、前記分離カラム(12)の温度を所定温度に調節するカラムオーブン(24)を備え、前記ミキサ(6)及び前記容量情報記憶媒体(16)は前記カラムオーブン(24)に収容され、前記容量特定部(18)は前記カラムオーブン24)に搭載されている。なお、この第3態様は一例であり、前記ミキサ(6)、前記容量情報記憶媒体(16)及び前記容量特定部(18)は、前記送液部(2)や種々の演算処理を行なうための演算制御部(20)に搭載されていてもよい。または、前記ミキサ及び前記容量情報記憶媒体は前記送液部に収容され、前記容量特定部は前記送液部に搭載されていてもよい。あるいは、前記ミキサ及び前記容量情報記憶媒体は前記試料注入部に収容され、前記容量特定部は前記試料注入部に搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
2 送液部
2a,2b 送液ポンプ
4a,4b 流路
6 ミキサ
8 分析流路
10 試料注入部
12 分離カラム
14 検出器
16 容量情報記憶媒体
18 容量特定部
20 演算制御部
22 分析データ出力部
24 カラムオーブン