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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】真空ポンプおよび磁気軸受一体型モータ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
F04D19/04 A
F04D19/04 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021523149
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2019020688
(87)【国際公開番号】W WO2020240621
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】森 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 統宏
(72)【発明者】
【氏名】太田 知男
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真紹
(72)【発明者】
【氏名】付 裕
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/093428(WO,A1)
【文献】特開2016-192877(JP,A)
【文献】実開昭64-29289(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
F16C 32/04
H02K 1/27
H02K 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向を有する回転軸を含むロータと、
前記回転軸に設けられた回転翼と、
前記ロータを回転駆動する回転力、および、前記ロータを磁気により支持する軸受力を付与するコイルを含む磁気軸受一体型ステータと、を備え、
前記ロータは、
一対のスペーサー部材と、
前記回転軸の外周に設けられ、組み立て時に前記軸方向に印加される圧力を、前記一対のスペーサー部材を介して受け止めるための支持部材と、
前記支持部材の外周を取り囲むように設けられた永久磁石と、
前記永久磁石の外周において、前記一対のスペーサー部材と前記軸方向に非接触に設けられた円環形状を有する非導電性の保護リングと、を含み、
前記支持部材の前記回転軸の前記軸方向における機械的強度は、前記保護リングの前記軸方向における機械的強度よりも大きい、真空ポンプ。
【請求項2】
前記支持部材の前記軸方向における第1長さは、前記保護リングの前記軸方向における第2長さよりも大きい、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記保護リングは、前記保護リングの前記軸方向における一方側の端部が、前記永久磁石の一方側の端部と、前記支持部材の一方側の端部との間となる位置で、かつ、前記保護リングの前記軸方向における他方側の端部が、前記永久磁石の他方側の端部と、前記支持部材の他方側の端部との間となる位置に配置されている、請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記一対のスペーサー部材は、前記支持部材を挟むように配置されており、
前記支持部材は、前記軸方向における両端面が、それぞれ、前記一対のスペーサー部材と接触しており、前記保護リングは、前記軸方向における少なくとも一方の端面が、前記一対のスペーサー部材の少なくとも一方と非接触である、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記保護リングは、前記回転軸の径方向における前記保護リングの外表面の位置が、前記一対のスペーサー部材の外表面と略同一の位置か、または、前記一対のスペーサー部材の外表面よりも内側の位置となるように構成されている、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記支持部材は、円環形状を有している、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記保護リングは、非導電性の樹脂によって構成されている、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記保護リングは、繊維強化プラスチックによって構成されている、請求項7に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
軸方向を有する回転軸を含むロータと、
前記ロータを回転駆動する回転力、および、前記ロータを磁気により支持する軸受力を付与するコイルを含む磁気軸受一体型ステータと、を備え、
前記ロータは、
一対のスペーサー部材と、
前記回転軸の外周に設けられ、組み立て時に前記軸方向に印加される圧力を、前記一対のスペーサー部材を介して受け止めるための支持部材と、
前記支持部材の外周を取り囲むように設けられた永久磁石と、
前記永久磁石の外周において、前記一対のスペーサー部材と前記軸方向に非接触に設けられた円環形状を有する非導電性の保護リングと、を含み、
前記支持部材の前記回転軸の前記軸方向における機械的強度は、前記保護リングの前記軸方向における機械的強度よりも大きい、磁気軸受一体型モータ。
【請求項10】
前記支持部材の前記軸方向における第1長さは、前記保護リングの前記軸方向における第2長さよりも大きい、請求項9に記載の磁気軸受一体型モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプおよび磁気軸受一体型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空ポンプおよび磁気軸受一体型モータが知られている。このような真空ポンプは、たとえば、特許第3854998号公報に開示されている。
【0003】
上記特許第3854998号公報には、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプに用いられるベアリングレスモータが開示されている。上記特許第3854998号公報に開示されているベアリングレスモータは、回転子と、固定子と、永久磁石とを備える。上記特許第3854998号公報に開示されているベアリングレスモータは、磁極の極性の向きが回転子の半径方向に向かって互いに逆向きになるように永久磁石が配置されている。また、上記特許第3854998号公報に開示されているベアリングレスモータは、固定子に設けられた支持巻線に流れる電流により生じる支持磁束が、永久磁石の間に配置される突極を貫くように構成されている。このように構成することにより、固定子は、非接触で回転子を磁気支持するための支持力を生成している。
【0004】
また、上記特許第3854998号公報に開示されているベアリングレスモータは、回転子が回転することにより生じる遠心力によって、永久磁石が飛散することを防ぐために、永久磁石の外周に、固定部材が設けられている。上記特許第3854998号公報には開示されていないが、永久磁石の飛散を防止するための固定部材は、回転子の組み立て時に印加される圧力によって破損しないために、たとえば、ステンレス鋼材によって構成されていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3854998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、たとえば、永久磁石の飛散を防止するための円環形状を有する固定部材がステンレス鋼材によって構成されている場合、磁気支持するための支持力を生成するための磁束によって、固定部材において渦電流が生じる。固定部材において渦電流が生じた場合、消費電力が過大になり、モータを駆動するための電力および磁気支持するための支持力を生成するための電力が損失するという不都合がある。そのため、固定部材を樹脂などの非導電性の材料によって構成することにより、固定部材に渦電流が生じることを抑制することが考えられる。しかし、固定部材を樹脂などによって構成した場合、回転子の組み立て時の圧力によって破損する可能性があるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、組み立て時において固定部材が破損することを抑制することが可能であるとともに、固定部材に渦電流が生じることによる損失を低減することが可能な真空ポンプおよび磁気軸受一体型モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における真空ポンプは、軸方向を有する回転軸を含むロータと、回転軸に設けられた回転翼と、ロータを回転駆動する回転力、および、ロータを磁気により支持する軸受力を付与するコイルを含む磁気軸受一体型ステータと、を備え、ロータは、一対のスペーサー部材と、回転軸の外周に設けられ、組み立て時に軸方向に印加される圧力を、一対のスペーサー部材を介して受け止めるための支持部材と、支持部材の外周を取り囲むように設けられた永久磁石と、永久磁石の外周において、一対のスペーサー部材と軸方向に非接触に設けられた円環形状を有する非導電性の保護リングと、を含み、支持部材の回転軸の軸方向における機械的強度は、保護リングの軸方向における機械的強度よりも大きい。なお、非導電性の保護リングは、絶縁体または半導体を含む。また、軸方向における機械的強度とは、軸方向の圧縮荷重に対する強度(剛性)のことである。
【0009】
この発明の第2の局面における磁気軸受一体型モータは、軸方向を有する回転軸を含むロータと、ロータを回転駆動する回転力、および、ロータを磁気により支持する軸受力を付与するコイルを含む磁気軸受一体型ステータと、を備え、ロータは、一対のスペーサー部材と、回転軸の外周に設けられ、組み立て時に軸方向に印加される圧力を、一対のスペーサー部材を介して受け止めるための支持部材と、支持部材の外周を取り囲むように設けられた永久磁石と、永久磁石の外周において、一対のスペーサー部材と軸方向に非接触に設けられた円環形状を有する非導電性の保護リングと、を含み、支持部材の回転軸の軸方向における機械的強度は、保護リングの軸方向における機械的強度よりも大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の局面では、上記のように、一対のスペーサー部材と、組み立て時に軸方向に印加される圧力を、一対のスペーサー部材を介して受け止めるための支持部材と、支持部材の外周に設けられた永久磁石と、永久磁石の外周に設けられた円環形状を有する非導電性の保護リングと、を含み、支持部材の回転軸の軸方向における機械的強度は、保護リングの軸方向における機械的強度よりも大きい。上記支持部材を備えることにより、組み立て時において保護リングが破損することを抑制することができる。また、上記非導電性の保護リングを備えることにより、保護リングに渦電流が生じることによる損失を低減することができる。これらにより、組み立て時において保護リングが破損することを抑制することが可能であるとともに、保護リングに渦電流が生じることによる損失を低減することができる。
【0011】
また、本発明の第2の局面では、上記のように構成することにより、第1の局面における真空ポンプと同様に、組み立て時において保護リングが破損することを抑制することが可能であるとともに、保護リングに渦電流が生じることによる損失を低減することが可能な磁気軸受一体型モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】真空ポンプの全体構成を示した模式的な断面図である。
図2】回転体、磁気軸受ユニットおよびモータユニットの配置を示した模式図である。
図3】真空ポンプの制御的な構成を説明するためのブロック図である。
図4】磁気軸受ユニットおよびモータユニットを半径方向から見た模式的な断面図である。
図5】モータユニットを軸方向から見た模式的な断面図である。
図6】モータロータを軸方向から見た模式的な断面図である。
図7】モータロータを半径方向から見た模式的な断面図である。
図8】第1変形例によるモータロータを半径方向から見た模式的な断面図である。
図9】第2変形例によるモータロータを半径方向から見た模式的な断面図である。
図10】第3変形例によるモータロータを半径方向から見た模式的な断面図である。
図11】第4変形例によるモータロータを半径方向から見た模式的な断面図である。
図12】第5変形例によるモータロータを軸方向から見た模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1図7を参照して、本発明の一実施形態による磁気軸受一体型モータ22の構成、および、磁気軸受一体型モータ22を備える真空ポンプ100の構成について説明する。
【0015】
(真空ポンプの構成)
図1に示すように、真空ポンプ100は、容器内から気体を排出し、容器内を真空にする(減圧する)ためのポンプである。なお、真空とは、真空ポンプ100の周囲の大気圧より低い圧力の状態とする。
【0016】
真空ポンプ100は、少なくとも1つの吸気口1と、少なくとも1つの排気口2と、少なくとも1つのポンプ部3と、を備える。真空ポンプ100は、ポンプ部3の動作によって、吸気口1からポンプ部3の内部へ気体を吸い込み、吸い込まれた気体を排気口2から排出する。真空ポンプ100は、ポンプ部3を収容するハウジング4を備える。図1の例では、ハウジング4には、1つの吸気口1が形成され、1つのポンプ部3が収容されている。ハウジング4には、排気口2が形成された排気管2aが接続されている。排気口2は、排気管2a、ポンプ部3を介して吸気口1に連通する。
【0017】
また、図1の例では、真空ポンプ100には、ポンプ部3の動作を制御するための制御ユニット5が設けられている。制御ユニット5は、ハウジング4の底部に取り付けられている。制御ユニット5は、真空ポンプ100とは別々に設けられ、有線または無線で真空ポンプ100と通信可能に接続される構成であってもよい。
【0018】
(ポンプ部)
ポンプ部3は、回転体10と回転機構20とを含んでいる。回転体10および回転機構20は、ハウジング4内に収容されている。回転体10が回転機構20により回転駆動されることにより、回転体10とハウジング4との間で気体の吸引力が発生する。
【0019】
図1の構成例では、ポンプ部3は、第1ポンプ構造3aと第2ポンプ構造3bとを含む。図1の例では、真空ポンプ100は、第1ポンプ構造3aと第2ポンプ構造3bとが直列接続された複合型の真空ポンプである。吸気口1からポンプ部3に取り込まれた気体は、第1ポンプ構造3a、第2ポンプ構造3bを順番に通過して、排気口2から排出される。
【0020】
回転体10は、回転軸11と、翼支持部12と、回転翼13と、を含む。回転体10は、回転軸11と、翼支持部12と、回転翼13とが一体回転するように設けられている。第1ポンプ構造3aは、回転体10の回転翼13とハウジング4の固定翼71とによりターボ分子ポンプ(turbomolecular pump)を構成する。回転体10は、翼支持部12から回転軸11の他端11b側に延びて、ハウジング4との間で第2ポンプ構造3bを構成する円筒部14を含む。回転体10には、第1ポンプ構造3aを構成する回転翼13と、第2ポンプ構造3bを構成する円筒部14とが一体で回転するように設けられている。第2ポンプ構造3bは、回転体10の後述する円筒部14と、ハウジング4のポンプステータ73とにより、分子ドラッグポンプ(molecular drag pump)を構成する。
【0021】
以下、回転軸11の中心軸線が延びる方向を、軸方向またはスラスト方向という。回転軸11の半径方向を、単に半径方向またはラジアル方向という。各図において、軸方向をZ方向とし、Z方向のうちZ1方向を一端11a側、Z2方向を他端11b側と呼ぶ。
【0022】
図1に示すように、回転機構20は、回転体10を回転駆動するとともに、回転体10を磁気により支持する磁気軸受一体型モータ22を含む。回転機構20は、回転軸11を中心に回転軸11の周囲を囲むように設けられている。
【0023】
磁気軸受一体型モータ22は、モータステータ22a(図4参照)と、モータロータ22b(図4参照)と、により構成される。モータロータ22bは、軸方向を有する回転軸11を含む。モータステータ22aは、モータロータ22bを回転駆動する回転力、および、モータロータ22bを磁気により支持する軸受力を付与するように構成されている。なお、モータステータ22aおよびモータロータ22bは、それぞれ、請求の範囲の「磁気軸受一体型ステータ」および「ロータ」の一例である。
【0024】
磁気軸受は、2組のラジアル磁気軸受と、1組のスラスト磁気軸受とを含む5軸磁気軸受である。5軸とは、回転体10の並進方向の3方向および傾き方向の2方向の5方向について位置制御および姿勢制御が可能であることを意味する。
【0025】
すなわち、回転機構20は、それぞれ回転軸11の周囲に設けられた第1ラジアル磁気軸受40と、第2ラジアル磁気軸受として機能する磁気軸受一体型モータ22とを含む。回転機構20は、回転軸11の周囲に設けられたスラスト磁気軸受60を含む、磁気軸受は、回転体10を磁気浮上させることにより、回転体10と非接触状態で回転体10を回転可能に支持する。
【0026】
1組のラジアル磁気軸受により、互いに直交する2つのラジアル方向(X方向、Y方向とする)の位置制御(2軸)が可能である。軸方向に並んで配置された2組のラジアル磁気軸受により、X方向回りおよびY方向回りの傾きの姿勢制御が可能である。スラスト磁気軸受により、スラスト方向(Z方向)の位置制御(1軸)が可能である。
【0027】
本実施形態では、回転機構20は、磁気軸受ユニット21と、磁気軸受一体型モータ22とを少なくとも含む。磁気軸受ユニット21は、少なくとも第1ラジアル磁気軸受40を含む。本実施形態では、図1の構成例では、磁気軸受ユニット21は、第1ラジアル磁気軸受40とスラスト磁気軸受60とを一体的に含む単一のユニットである。磁気軸受一体型モータ22は、回転軸11を回転させるモータ、および、回転軸11を磁気支持する第2ラジアル磁気軸受の両方として動作するユニットである。このように、回転軸11を回転させるモータと第2ラジアル磁気軸受との両方として動作する構造は、通常モータとは別個に設けられる1組のラジアル磁気軸受が不要になることから、ベアリングレスモータ、またはセルフベアリングモータなどと呼ばれる。すなわち、「磁気軸受一体型モータ」とは、軸方向の同一位置において、回転軸11を回転させるとともに、回転軸11の磁気軸受として機能するモータである。磁気軸受ユニット21および磁気軸受一体型モータ22の詳細な構成は後述する。
【0028】
ハウジング4は、ベース部4aおよびケース部4bを含む。ベース部4aに回転機構20が設けられ、回転体10の回転軸11が挿入されている。ベース部4aに排気管2aが接続されている。ケース部4bは、ベース部4aの上面に取り付けられている。ケース部4bは、ベース部4aに設置された回転体10の周囲を囲むように円筒状に形成されており、上面に吸気口1が形成されている。
【0029】
また、真空ポンプ100は、複数のメカニカルベアリング6と、複数の変位センサ7a、7b、7c、7dおよび7eと、回転センサ8と、を有する。複数のメカニカルベアリング6は、ベース部4aにおいて、回転軸11の一端11aの近傍と、他端11bの近傍とに設けられている。メカニカルベアリング6は、回転軸11と接触して回転軸11をラジアル方向およびスラスト方向に支持することが可能である。メカニカルベアリング6は、磁気軸受が作動していない時(磁気浮上していない時)や、外乱が発生した場合に、磁気軸受の代わりに回転体10を支持するタッチダウンベアリングである。磁気軸受の作動時には、メカニカルベアリング6と回転軸11(回転体10)とは非接触となる。
【0030】
図3に示すように、変位センサ7a~7dは、それぞれ、回転軸11のラジアル方向(X1方向、Y1方向、X2方向、Y2方向)の変位を検出する。変位センサ7eは、回転軸11のスラスト方向(Z方向)の変位を検出する。回転センサ8は、回転軸11の回転角度を検出する。
【0031】
制御ユニット5は、制御部81と、電源部82と、ユニット駆動部83と、センサ回路部84とを含む。
【0032】
電源部82は、外部電源から電力を取得し、制御部81、ユニット駆動部83およびセンサ回路部84への電力供給を行う。電源部82は、外部からの交流電力を直流電力に変換する電力変換を行う。
【0033】
ユニット駆動部83は、制御部81からの制御信号に基づき、回転機構20への駆動電流の供給を制御する。ユニット駆動部83における電流制御により、回転機構20の磁気軸受一体型モータ22が回転方向の駆動力(トルク)を発生させ、磁気軸受が各方向の支持力をそれぞれ発生させる。ユニット駆動部83は、磁気軸受ユニット21への電流供給を制御するためのインバータ85aおよび85bを含む。ユニット駆動部83は、磁気軸受一体型モータ22への電流供給を制御するためのインバータ85cおよび85dを含む。インバータ85a~85dは、それぞれ、複数のスイッチング素子を含んでいる。
【0034】
センサ回路部84は、変位センサ7a~7eおよび回転センサ8を含み、各センサ信号を制御部81に入力するための変換処理を行う回路などを含んで構成されている。センサ回路部84から、変位センサ7a~7eおよび回転センサ8の各センサ信号が制御部81に入力される。
【0035】
制御部81は、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などのプロセッサと、揮発性および/または不揮発性メモリと、を含むコンピュータにより構成されている。
【0036】
制御部81は、ユニット駆動部83を介して、回転機構20の動作制御を行う。制御部81は、センサ回路部84からの各方向のセンサ信号を取得し、取得したセンサ信号に基づいて、インバータ85a、85bおよび85dに設けられている複数のスイッチング素子をオンオフ制御するための制御信号を出力する。これにより、制御部81は、真空ポンプ100の動作中、回転体10が真空ポンプ100のどの固定要素にも接触しないように、各磁気軸受を制御する。
【0037】
制御部81は、回転センサ8のセンサ信号に基づいて、インバータ85cに設けられている複数のスイッチング素子をオンオフ制御するための制御信号を出力する。これにより、制御部81は、回転体10の回転位置に基づいて磁気軸受一体型モータ22の制御を行う。
【0038】
(回転体の構造)
図2に示すように、回転軸11は、一端11aと他端11bとを有する円柱状部材である。図1の例では、一端11aが回転軸11の上端であり、他端11bが回転軸11の下端である。回転軸11は、回転機構20によって、中心軸線周りに回転可能に軸受支持されている。また、回転軸11は、回転機構20により中心軸線周りに回転駆動される。図1の例では、回転軸11が上下方向(鉛直方向)に沿って延びるように設けられた縦型の真空ポンプ100の例を示しているが、回転軸11の方向は特に限定されない。回転軸11は水平方向または斜め方向に向けて配置されていてもよい。
【0039】
翼支持部12は、回転体10のうち、回転翼13と回転軸11とを機械的に接続する部分である。翼支持部12は、回転軸11の一端11a側に接続されている。翼支持部12は、回転軸11の他端11b側に向けて内径が拡大するように延びている。つまり、翼支持部12は、概略で、回転軸11の一端11aに向けた円錐状に形成されている。翼支持部12は、回転軸11の他端11b側から一端11a側に向かって傾斜したテーパ形状部12aを有している。翼支持部12は、回転軸11の一端11aから半径方向に延びるフランジ部12bを有している。テーパ形状部12aは、フランジ部12bの外周端部に機械的に接続している。
【0040】
回転体10は、複数の回転翼13を有している。回転翼13は、翼支持部12の外周面に設けられている。回転翼13は、翼支持部12の外周面からハウジング4の内周面近傍まで半径方向に延びている。
【0041】
回転翼13は、上記のように、ハウジング4との間で第1ポンプ構造3aを構成する。複数の回転翼13は、軸方向に間隔を隔てて複数段設けられている。複数の回転翼13は、テーパ形状部12aの外周面およびフランジ部12bの外周面に沿って並ぶように設けられている。
【0042】
また、図1に示したように、ハウジング4の内周面には、複数の固定翼71が設けられている。各固定翼71は、ハウジング4の内周面から、半径方向内側(回転軸11側)に向けて延びている。複数の固定翼71は、複数の回転翼13と1段ずつ軸方向に交互に並ぶように設けられている。各固定翼71は、軸方向に積層されたスペーサーリング72を介してベース部4a上に載置されている。積層されたスペーサーリング72がベース部4aとケース部4bとの間に挟まれることにより、各固定翼71が位置決めされる。これにより、ポンプ部3は、回転体10の回転翼13(動翼)とハウジング4の固定翼71(静翼)とにより構成された第1ポンプ構造3aを含む。
【0043】
円筒部14は、回転軸11と同軸の円筒形状を有する。円筒部14は、翼支持部12に接続する第1端部14aと、回転軸11の軸方向における翼支持部12とは反対側の第2端部14bと、を有する。円筒部14は、テーパ形状部12aに接続する第1端部14aから、第2端部14bまで、軸方向に沿って直線状に延びている。
【0044】
また、ハウジング4の内周面には、円筒状のポンプステータ73が設けられている。ポンプステータ73の内周面は、円筒部14の外周面と小さな間隔を隔てて半径方向に対向する。ポンプステータ73の内周面には、ねじ溝(図示せず)が形成されている。これにより、ポンプ部3は、回転体10の円筒部14とハウジング4のポンプステータ73とにより構成された第2ポンプ構造3bを含む。なお、ねじ溝(図示せず)は、円筒部14の外周面またはポンプステータ73の内周面のいずれかに形成されていればよい。
【0045】
(回転機構の構造)
図1の例では、回転機構20は、磁気軸受ユニット21と、磁気軸受一体型モータ22との2つのユニットにより構成されている。
【0046】
磁気軸受ユニット21は、回転軸11と翼支持部12との間で回転軸11の周囲に設けられている。磁気軸受一体型モータ22は、磁気軸受ユニット21よりも回転軸11の他端11b側の位置で回転軸11の周囲に設けられている。
【0047】
図4に示すように、磁気軸受ユニット21は、磁気軸受ステータ21aと、磁気軸受ロータ21bとを含む。磁気軸受ステータ21aには、第1ラジアル磁気軸受40を構成する第1コイル41、および、スラスト磁気軸受60を構成するスラストコイル61が設けられる。また、磁気軸受ロータ21bは、複数の電磁鋼板を軸方向に積層することにより構成される。
【0048】
〈磁気軸受一体型モータ〉
図5に示すように、磁気軸受一体型モータ22(モータステータ22a)は、回転軸11の軸方向と直交する面内において、磁気軸受一体型モータ22を構成するモータコイル24と、第2ラジアル磁気軸受を構成する第2コイル51と、モータコイル24および第2コイル51がそれぞれ取り付けられたステータコア25と、を有する。
【0049】
言い換えると、図5に例示する磁気軸受一体型モータ22では、モータコイル24とステータコア25とにより構成されるモータステータ22aに対して、第2ラジアル磁気軸受の第2コイル51がさらに組み付けられている。
【0050】
ステータコア25は、複数のティース25aと、ステータヨーク25bとを含む。ステータヨーク25bが回転軸11の周囲を囲むように円環状に形成されている。複数のティース25aがステータヨーク25bの内周面から回転軸11の中心に向けて半径方向に延びている。複数のティース25aは、周方向に等角度間隔で配置され、隣り合うティース25aの間にコイルを収容するスロット25cが形成されている。
【0051】
モータコイル24および第2コイル51は、それぞれのティース25aに巻回されている。図5では、モータコイル24および第2コイル51は、回転軸11の軸方向と直交する面内において、半径方向に並んで配置されている。つまり、同一のスロット25c内に、モータコイル24および第2コイル51の両方が配置されている。図5の例では、モータコイル24が半径方向内側に配置され、第2コイル51が半径方向外側に配置されている。
【0052】
モータコイル24および第2コイル51は、互いに別々のコイルであり、電気的に絶縁されている。モータコイル24はインバータ85c(図3参照)に電気的に接続され、第2コイル51はインバータ85d(図3参照)に電気的に接続されている。インバータ85cは、たとえば3相電流(U相、V相、W相)を磁気軸受一体型モータ22へ供給する。磁気軸受一体型モータ22は、U相、V相、W相の3相電流がそれぞれ供給される3組のモータコイル24(Mu、Mv、Mw)を含む。インバータ85dは、たとえば3相電流(U相、V相、W相)を磁気軸受一体型モータ22へ供給する。磁気軸受一体型モータ22は、U相、V相、W相の3相電流がそれぞれ供給される3組の第2コイル51(Su、Sv、Sw)を含む。
【0053】
また、モータロータ22bは、回転軸11と一体で回転するように回転軸11に設けられている。すなわち、回転軸11には、ステータコア25と隙間を隔てて半径方向に対向する位置(軸方向の同一位置)に、永久磁石26が設けられている。図5の例では、回転軸11の周方向の半分に亘ってN極に着磁された永久磁石26が設けられ、回転軸11の周方向の他の半分に亘ってS極に着磁された永久磁石26が設けられている。
【0054】
図5では、2極、6スロット構造の例を示したが、極数、スロット数は特に限定されない。また、図5において、モータコイル24および第2コイル51の各巻線方式は、集中巻きに限られず、分布巻きなどの他の巻線方式であってもよい。
【0055】
制御部81(図3参照)は、インバータ85c(図3参照)を介して各モータコイル24に電流を供給させ、モータコイル24の磁束と永久磁石26の磁束とを相互作用させる。すなわち、磁気軸受一体型モータ22は、モータコイル24の磁束により永久磁石26の磁極に吸引、反発の作用力を付与する。制御部81は、回転体10の回転角度位置に応じて電流を供給するモータコイル24を切り替えることにより、回転する磁束を生成させ、回転体10を所望の回転速度で回転させる。磁気軸受一体型モータ22による回転体10の回転速度は、たとえば1万rpm以上10万rpm以下である。
【0056】
また、制御部81(図3参照)は、インバータ85d(図3参照)を介して第2コイル51に電流を供給させ、第2コイル51の磁束と永久磁石26の磁束との相互作用により、回転軸11(モータロータ22b)とステータコア25(モータステータ22a)との間の隙間に合成磁束の粗密を形成させる。その結果、磁気軸受一体型モータ22は、第2コイル51の磁束と永久磁石26の磁束とが互いに強め合う方向に向かう支持力を回転軸11に付与する。
【0057】
たとえば、図5では、2つの第2コイル51(Su)の磁束と永久磁石26の磁束とにより、モータロータ22bのN極側の隙間では磁束が強め合い、S極側の隙間では磁束が弱め合うため、磁束量が多いN極側(図中右側)に向かう支持力が作用する。図5ではU相の第2コイル51(Su)について例示しているが、各第2コイル51に供給する電流の強さ、向きを制御することにより、任意のラジアル方向に、任意の強さの支持力を発生させることができる。制御部81は、変位センサ7c、7dおよび回転センサ8(図3参照)のセンサ信号に基づき、それぞれの第2コイル51への電流供給を制御することにより、回転体10が半径方向に非接触状態を維持するように磁気軸受一体型モータ22の支持力を制御する。
【0058】
ここで、再び図4を参照して、磁気軸受ユニット21および磁気軸受一体型モータ22を回転軸11に取り付ける作業について説明する。磁気軸受ユニット21および磁気軸受一体型モータ22を回転軸11に取り付ける際には、磁気軸受ユニット21および磁気軸受一体型モータ22をそれぞれ挟むように、スペーサー部材29が設けられる。具体的には、磁気軸受ユニット21および磁気軸受一体型モータ22を回転軸11に取り付ける際に、第1スペーサー部材29a、磁気軸受ユニット21、第2スペーサー部材29b、磁気軸受一体型モータ22、第3スペーサー部材29cが、回転軸11に対してこの順に嵌め込まれる。磁気軸受ユニット21、磁気軸受一体型モータ22および各スペーサー部材29が回転軸11に嵌め込まれた後、リング23に対してZ2方向に向かう圧力が印加されることにより、回転機構20が回転軸11に取り付けられる。すなわち、支持部材27は、スペーサー部材29とともに、回転軸11の一端11aの端部と、リング23とに軸方向に圧縮荷重を印加された状態によって挟持される。また、スペーサー部材29は、回転機構20の位置決め部材として設けられている。
【0059】
図6に示すように、モータロータ22bは、永久磁石26と、支持部材27と、保護リング28とを含む。支持部材27は、回転軸11の外周に設けられている。永久磁石26は、支持部材27の外周を取り囲むように設けられている。保護リング28は、永久磁石26の外周において、一対のスペーサー部材29と軸方向に非接触に設けられている。なお、図6に示す例では、永久磁石26は、直接接触した状態で支持部材27に設けられている。
【0060】
支持部材27は、モータロータ22bを回転軸11に取り付ける際(組み立て時)に軸方向に印加される圧力を、一対のスペーサー部材29を介して受け止めるために設けられている。支持部材27は、円環形状を有している。また、支持部材27は、回転軸11の軸方向に延びる金属製の円筒によって構成されている。具体的には、支持部材27は、ステンレス鋼材によって構成されている。
【0061】
保護リング28は、モータロータ22bを回転させた際に生じる遠心力により、永久磁石26が飛散することを抑制するために設けられている。保護リング28は、円環形状を有している。ここで、磁気軸受一体型モータ22は、モータの機能と磁気軸受の機能とを有している。磁気軸受は、所定の方向に対する軸受力を付与するための磁界を所定の方向に発生させる。そのため、モータロータ22bが回転すると、渦電流が生じる場合がある。渦電流が生じると、消費電力が過大になり、モータを駆動するための電力および磁気支持するための支持力を生成するための電力が損失する。
【0062】
そこで、本実施形態では、保護リング28は、非導電性の材料によって構成されている。保護リング28を構成する非導電性の材料は、支持部材27を構成する金属よりも電気伝導率が低い。具体的には、保護リング28は、非導電性の樹脂によって構成されている。より具体的には、保護リング28は、繊維強化プラスチックによって構成されている。保護リング28は、たとえば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)によって構成されている。CFRPは、内部の炭素繊維が延びる方向に対する強度が大きく、炭素繊維が並ぶ方向に対する強度が小さい。したがって、CFRPの内部の炭素繊維が、回転軸11の軸方向周りの回転方向に沿って延びるように、保護リング28を永久磁石26に設ける。これにより、回転軸11の回転によって生じる遠心力によって、永久磁石26が飛散することを抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、支持部材27に永久磁石26を嵌め込み、接着剤などで固定する。また、支持部材27に嵌め込まれた永久磁石26に、保護リング28を嵌め込み、接着剤などで固定する。そして、永久磁石26および保護リング28が固定された支持部材27が、回転軸11に嵌め込まれる。
【0064】
〈モータロータ〉
図7に示す一対のスペーサー部材29(第2スペーサー部材29bおよび第3スペーサー部材29c)は、軸方向において、支持部材27を挟むように配置されている。本実施形態では、モータロータ22bは、スペーサー部材29(第3スペーサー部材29c)を介して支持部材27に対してZ2方向に向かう圧力を印加することにより、回転軸11に取り付けられる。磁気軸受一体型モータ22は、高速回転用のモータである。そのため、高速回転時においてモータロータ22bなどの軸方向における位置が変動しないようにするため、モータロータ22bを回転軸11に取り付ける際には、大きい圧力が印加される。そのため、支持部材27の回転軸11の軸方向における機械的強度は、大きい必要がある。具体的には、支持部材27の回転軸11の軸方向における機械的強度は、保護リング28の軸方向における機械的強度よりも大きい必要がある。
【0065】
図7に示すように、永久磁石26は、軸方向において、長さ91を有している。また、保護リング28は、軸方向において、長さ92を有している。また、支持部材27は、軸方向において、長さ93を有している。支持部材27の軸方向における長さ93は、保護リング28の軸方向における長さ92よりも大きい。なお、長さ93および長さ92は、それぞれ、請求の範囲の「第1長さ」および「第2長さ」の一例である。
【0066】
また、保護リング28は、保護リング28の軸方向における一方側の端部28aが、永久磁石26の一方側の端部26aと、支持部材27の一方側の端部27aとの間となる位置に配置されている。また、保護リング28は、保護リング28の軸方向における他方側の端部28bが、永久磁石26の他方側の端部26bと、支持部材27の他方側の端部27bとの間となる位置に配置されている。すなわち、本実施形態では、保護リング28の軸方向における長さ92は、永久磁石26の長さ91よりも大きく、かつ、支持部材27の長さ93よりも小さい。
【0067】
また、本実施形態では、支持部材27は、軸方向における両端面(端面27cおよび端面27d)が、それぞれ、一対のスペーサー部材29と接触している。具体的には、支持部材27の端面27cは、スペーサー部材29の端面29dと接触している。また、支持部材27の端面27dは、スペーサー部材29の端面29eと接触している。すなわち、支持部材27は、一対のスペーサー部材29によって軸方向の両側から挟み込まれ、軸方向に圧縮荷重を印加された状態で固定されている。なお、図7に示す例は、スペーサー部材29の端面(端面29dおよび端面29e)と、支持部材27の軸方向における両端面(端面27cおよび端面27d)との接触面が、互いに平坦面の場合の例である。
【0068】
また、本実施形態では、保護リング28は、軸方向における少なくとも一方の端面(端面28cまたは端面28d)が、一対のスペーサー部材29の少なくとも一方と非接触である。図7の例では、保護リング28の両端面(保護リング28の端面28cおよび保護リング28の端面28d)が、一対のスペーサー部材29とそれぞれ非接触である。そのため、保護リング28は、一対のスペーサー部材29のいずれからも、軸方向の圧縮荷重を受けることなく、永久磁石26を介して支持部材27に支持されている。
【0069】
また、本実施形態では、保護リング28は、回転軸11の径方向における保護リング28の外表面28eの位置が、一対のスペーサー部材29の外表面29fと略同一の位置か、または、一対のスペーサー部材29の外表面29fよりも内側の位置となるように構成されている。図7の例は、回転軸11の径方向における保護リング28の外表面28eの位置が、一対のスペーサー部材29の外表面29fと略同一の位置となる場合の例である。具体的には、保護リング28およびスペーサー部材29は、回転軸11の回転中心11dからスペーサー部材29の外表面29fまでの距離94と、回転軸11の回転中心11dから保護リング28の外表面28eまでの距離95とが、略等しくなるように構成されている。
【0070】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0071】
本実施形態では、上記のように構成することにより、組み立て時において保護リング28が破損することを抑制することができる。また、保護リング28に渦電流が生じることによる損失を低減することができる。これらにより、組み立て時において保護リング28が破損することを抑制することが可能であるとともに、保護リング28に渦電流が生じることによる損失を低減することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、支持部材27の軸方向における長さ93は、保護リング28の軸方向における長さ92よりも大きい。これにより、組み立て時において印加される圧力を、支持部材27のみに印加することができる。その結果、組み立て時において、保護リング28が破損することを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、保護リング28は、保護リング28の軸方向における一方側の端部28aが、永久磁石26の一方側の端部26aと、支持部材27の一方側の端部27aとの間となる位置で、かつ、保護リング28の軸方向における他方側の端部28bが、永久磁石26の他方側の端部26bと、支持部材27の他方側の端部27bとの間となる位置に配置されている。これにより、モータロータ22bの軸方向において、永久磁石26の両端部(端部26aおよび端部26b)が、保護リング28の両端部(端部28aおよび端部28b)から突出することを抑制することができる。その結果、モータロータ22bの回転時において、遠心力によって永久磁石26が飛散することを抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、一対のスペーサー部材29は、支持部材27を挟むように配置されており、支持部材27は、軸方向における両端面(端面27cおよび端面27d)が、それぞれ、一対のスペーサー部材29と接触しており、保護リング28は、軸方向における少なくとも一方の端面(端面28cまたは端面28d)が、一対のスペーサー部材29の少なくとも一方と非接触である。これにより、スペーサー部材29を介して支持部材27に対して圧力を印加することにより組み立てる際、スペーサー部材29からの圧力を保護リング28ではなく、支持部材27のみに印加することができる。その結果、組み立て時に印加される圧力が保護リング28に印加されることをより抑制することが可能となるので、保護リング28が破損することをより抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、保護リング28は、回転軸11の径方向における保護リング28の外表面28eの位置が、一対のスペーサー部材29の外表面29fと略同一の位置か、または、一対のスペーサー部材29の外表面29fよりも内側の位置となるように構成されている。これにより、回転軸11の半径方向において、モータロータ22bが、スペーサー部材29よりも突出することを抑制することができる。したがって、モータロータ22bおよびスペーサー部材29を回転軸11に取り付けた場合でも、回転軸11の半径方向における突出量を、スペーサー部材29の突出量に揃えることができる。その結果、モータステータ22aおよび磁気軸受ユニット21などを取り付けた際の回転軸11との隙間の大きさが略一定となるため、回転軸11を安定して回転させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、支持部材27は、円環形状を有している。これにより、たとえば、支持部材27が複数の部材を組み合わせることにより形成される構成と比較して、部品点数が増加することを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、保護リング28は、非導電性の樹脂によって構成されている。これにより、たとえば、セラミックなどによって保護リングを形成する構成と比較して、保護リング28の重量が大きくなることを抑制することができる。その結果、保護リング28に渦電流が生じることを抑制しつつ、モータロータ22bの軽量化を図ることができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、保護リング28は、繊維強化プラスチックによって構成されている。これにより、たとえば、繊維が含まれていない樹脂によって保護リング28を構成する場合と比較して、保護リング28の機械的強度を大きくすることができる。その結果、保護リング28の軽量化を図りつつ、永久磁石26が飛散することを抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、磁気軸受一体型モータ22は、軸方向を有する回転軸11を含むモータロータ22bと、モータロータ22bを回転駆動する回転力、および、モータロータ22bを磁気により支持する軸受力を付与するモータステータ22aと、を備え、モータロータ22bは、一対のスペーサー部材29と、回転軸11の外周に設けられ、組み立て時に軸方向に印加される圧力を、一対のスペーサー部材29を介して受け止めるための支持部材27と、支持部材27の外周を取り囲むように設けられた永久磁石26と、永久磁石26の外周において、一対のスペーサー部材29と軸方向に非接触に設けられた円環形状を有する保護リング28と、を含み、支持部材27の回転軸11の軸方向における機械的強度は、保護リング28の軸方向における機械的強度よりも大きい。これにより、上記実施形態における真空ポンプ100と同様に、保護リング28に渦電流が生じることによる損失を低減することが可能な磁気軸受一体型モータ22を提供することができる。
【0080】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0081】
(第1変形例)
たとえば、上記実施形態では、保護リング28の端部28aおよび端部28bがスペーサー部材29と非接触となる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、保護リング28の両端部(端部28aおよび端部28b)のいずれかがスペーサー部材29と非接触であれば、どちら一方の端部(端部28aまたは端部28b)は、スペーサー部材29と接触していてもよい。具体的には、図8に示すように、保護リング28の端面28dと、第3スペーサー部材29cの端面29eとが接触することにより、保護リング28とスペーサー部材29とが接触していてもよい。また、図示はしていないが、保護リング28の端面28cと、第2スペーサー部材29bの端面29dとが接触していてもよい。
【0082】
(第2変形例)
また、上記実施形態では、保護リング28の外表面28eと、スペーサー部材29の外表面29fとが略同一の位置となる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、保護リング28の外表面28eは、一対のスペーサー部材29の外表面29fよりも内側の位置となるように構成されていてもよい。具体的には、図9に示すように、回転軸11の回転中心11dから保護リング28の外表面28eまでの距離95が、回転軸11の回転中心11dからスペーサー部材29の外表面29fまでの距離94よりも小さくなるように構成されていてもよい。
【0083】
(第3変形例)
また、上記実施形態では、保護リング28の軸方向における長さ92が、支持部材27の長さ93よりも短くなる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図10に示すように、保護リング28の軸方向における長さ92が、支持部材27の長さ93よりも大きくなるように構成されていてもよい。具体的には、図10に示すように、回転軸11の回転中心11dから保護リング28の外表面28eまでの距離95が、回転軸11の回転中心11dからスペーサー部材29の外表面29fまでの距離94よりも大きくなるように構成されている場合に、保護リング28の軸方向における長さ92が、支持部材27の長さ93よりも大きくなるように構成されていてもよい。
【0084】
(第4変形例)
また、上記実施形態では、モータロータ22bが1対のスペーサー部材29を含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図11に示すように、回転軸11は、回転軸11の一端11a側にリブ部11eを有しており、支持部材27の端面27cが、リブ部11eの端面11fに当接するように構成されていてもよい。また、スペーサー部材29がない場合でも、回転軸11に嵌め込まれる各部材の列の両端が、リブ部11eの端面11fおよびリング23と軸方向に接触するように挟み込み、軸方向の圧縮荷重を全体に加えた状態で固定すればよい。
【0085】
(第5変形例)
また、上記実施形態では、支持部材27が円環形状を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図12に示すように、支持部材27は、円弧形状を有する第1支持部材27eおよび第2支持部材27fにより構成されていてもよい。具体的には、回転軸11の外周に第1支持部材27eおよび第2支持部材27fを配置し、外周に永久磁石26および保護リング28を配置することにより、支持部材27として構成してもよい。
【0086】
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、保護リング28がCFRPによって構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、保護リング28は、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)、または、AFRP(Aramid Fiber Reinforced Plastics:アラミド繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックによって構成されていてもよい。また、保護リング28は、モータロータ22bの回転によって生じる遠心力によって永久磁石26が飛散することを抑制可能であれば、セラミックなど、繊維強化プラスチック以外の材料によって構成されていてもよい。しかし、セラミックなどによって保護リング28を構成する場合、繊維強化プラスチックによって保護リング28を構成する場合と比較して、保護リング28の重量が大きくなるため、保護リング28は、繊維強化プラスチックによって構成されることが好ましい。
【0087】
また、上記実施形態では、回転軸11に対して磁気軸受ユニット21を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、磁気軸受ユニット21を設けない構成であってもよい。磁気軸受ユニット21を設けない場合、磁気軸受ユニット21の代わりに、メカニカルベアリングを設けてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、磁気軸受ユニット21が第1ラジアル磁気軸受40と、スラスト磁気軸受60とを含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1ラジアル磁気軸受40と、スラスト磁気軸受60とが、別々に設けられていてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、永久磁石26が、直接接触した状態で支持部材27に設けられる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、永久磁石26が接着剤などにより、間接的に接触した状態で支持部材27に設けられる構成でもよい。
【0090】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0091】
(項目1)
軸方向を有する回転軸を含むロータと、
前記回転軸に設けられた回転翼と、
前記ロータを回転駆動する回転力、および、前記ロータを磁気により支持する軸受力を付与するコイルを含む磁気軸受一体型ステータと、を備え、
前記ロータは、
一対のスペーサー部材と、
前記回転軸の外周に設けられ、組み立て時に前記軸方向に印加される圧力を、前記一対のスペーサー部材を介して受け止めるための支持部材と、
前記支持部材の外周を取り囲むように設けられた永久磁石と、
前記永久磁石の外周において、前記一対のスペーサー部材と前記軸方向に非接触に設けられた円環形状を有する非導電性の保護リングと、を含み、
前記支持部材の前記回転軸の前記軸方向における機械的強度は、前記保護リングの前記軸方向における機械的強度よりも大きい、真空ポンプ。
【0092】
(項目2)
前記支持部材の前記軸方向における第1長さは、前記保護リングの前記軸方向における第2長さよりも大きい、項目1に記載の真空ポンプ。
【0093】
(項目3)
前記保護リングは、前記保護リングの前記軸方向における一方側の端部が、前記永久磁石の一方側の端部と、前記支持部材の一方側の端部との間となる位置で、かつ、前記保護リングの前記軸方向における他方側の端部が、前記永久磁石の他方側の端部と、前記支持部材の他方側の端部との間となる位置に配置されている、項目2に記載の真空ポンプ。
【0094】
(項目4)
前記一対のスペーサー部材は、前記支持部材を挟むように配置されており、
前記支持部材は、前記軸方向における両端面が、それぞれ、前記一対のスペーサー部材と接触しており、前記保護リングは、前記軸方向における少なくとも一方の端面が、前記一対のスペーサー部材の少なくとも一方と非接触である、項目1に記載の真空ポンプ。
【0095】
(項目5)
前記保護リングは、前記回転軸の径方向における前記保護リングの外表面の位置が、前記一対のスペーサー部材の外表面と略同一の位置か、または、前記一対のスペーサー部材の外表面よりも内側の位置となるように構成されている、項目4に記載の真空ポンプ。
【0096】
(項目6)
前記支持部材は、円環形状を有している、項目1に記載の真空ポンプ。
【0097】
(項目7)
前記保護リングは、非導電性の樹脂によって構成されている、項目1に記載の真空ポンプ。
【0098】
(項目8)
前記保護リングは、繊維強化プラスチックによって構成されている、項目7に記載の真空ポンプ。
【0099】
(項目9)
軸方向を有する回転軸を含むロータと、
前記ロータを回転駆動する回転力、および、前記ロータを磁気により支持する軸受力を付与するコイルを含む磁気軸受一体型ステータと、を備え、
前記ロータは、
一対のスペーサー部材と、
前記回転軸の外周に設けられ、組み立て時に前記軸方向に印加される圧力を、前記一対のスペーサー部材を介して受け止めるための支持部材と、
前記支持部材の外周を取り囲むように設けられた永久磁石と、
前記永久磁石の外周において、前記一対のスペーサー部材と前記軸方向に非接触に設けられた円環形状を有する非導電性の保護リングと、を含み、
前記支持部材の前記回転軸の前記軸方向における機械的強度は、前記保護リングの前記軸方向における機械的強度よりも大きい、磁気軸受一体型モータ。
【0100】
(項目10)
前記支持部材の前記軸方向における第1長さは、前記保護リングの前記軸方向における第2長さよりも大きい、項目9に記載の磁気軸受一体型モータ。
【符号の説明】
【0101】
11 回転軸
13 回転翼
22 磁気軸受一体型モータ
22a モータステータ(磁気軸受一体型ステータ)
22b モータロータ(ロータ)
24 モータコイル(コイル)
26 永久磁石
26a 端部(永久磁石の一方側の端部)
26b 端部(永久磁石の他方側の端部)
27 支持部材
27a 端部(支持部材の一方側の端部)
27b 端部(支持部材の他方側の端部)
27c 端面(支持部材の一方側の端面)
27d 端面(支持部材の他方側の端面)
28 保護リング
28a 端部(保護リングの一方側の端部)
28b 端部(保護リングの他方側の端部)
28c 端面(保護リングの一方側の端面)
28d 端面(保護リングの他方側の端面)
29 一対のスペーサー部材
29d 端面(スペーサー部材の一方側の端面)
29e 端面(スペーサー部材の他方側の端面)
51 第2コイル(コイル)
92 長さ(第2長さ)
93 長さ(第1長さ)
100 真空ポンプ
図1
図2
図3
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図12