(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】フレキシブル基板、およびフレキシブル基板を備えるアンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
H01P 3/08 20060101AFI20220928BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20220928BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20220928BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01P3/08 100
H01P3/08 300
H01Q21/06
H01Q21/24
H01Q23/00
(21)【出願番号】P 2021527571
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022106
(87)【国際公開番号】W WO2020261920
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019118424
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 敬生
(72)【発明者】
【氏名】森 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】山田 良樹
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-062544(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186720(WO,A1)
【文献】特開平11-040906(JP,A)
【文献】実開平03-024702(JP,U)
【文献】国際公開第2018/230475(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/08
H01Q 21/06
H01Q 21/24
H01Q 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のフレキシブル基板であって、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面または前記第1面と前記第2面との間の層に設けられる第1線路と、
前記第2面または前記第2面と前記第1線路との間の層に設けられる第2線路と、
前記第1線路と前記第2線路との間の層に前記第1面および前記第2面に沿って延在するように設けられる接地電極とを備え、
前記接地電極は、前記第1線路とともに第1高周波伝送線路を形成し、かつ前記第2線路とともに第2高周波伝送線路を形成し、
前記フレキシブル基板の厚さ方向から前記フレキシブル基板を透視したとき、前記第1線路は、前記第1線路と前記第2線路との間の仮想的な中間線を対称線として、前記第2線路と線対称となる線対称部分を有
し、
前記接地電極は、
前記フレキシブル基板の厚さ方向に並べて配置される第1接地電極および第2接地電極と、
前記第1接地電極と前記第2接地電極とを電気的に接続するビアと、
を含む、フレキシブル基板。
【請求項2】
前記フレキシブル基板の厚さ方向から前記フレキシブル基板を透視したとき、前記第1線路における前記線対称部分は、前記第2線路と平行となる部分を有する、請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記フレキシブル基板の厚さ方向から前記フレキシブル基板を透視したとき、前記第1線路および前記第2線路は、互いに交差する部分を有する、請求項1または2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記フレキシブル基板は、前記第1線路と同じ層に設けられる第3接地電極、または、前記第2線路と同じ層に設けられる第4接地電極をさらに備える、請求項1~
3のいずれかに記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
前記第1線路は、前記第1面と前記接地電極との間の層に設けられ、
前記第2線路は、前記第2面と前記接地電極との間の層に設けられ、
前記フレキシブル基板は、
前記第1線路よりも前記第1面側の層に設けられる第5接地電極と、
前記第2線路よりも前記第2面側の層に設けられる第6接地電極と、
の少なくとも一方をさらに備える、請求項1~
3のいずれかに記載のフレキシブル基板。
【請求項6】
前記フレキシブル基板が前記第1面を内側として曲げられた状態において、
前記第1線路は、第1周波数の信号の伝送に用いられ、
前記第2線路は、前記第1周波数よりも高い第2周波数の信号の伝送に用いられる、請求項1~
5のいずれかに記載のフレキシブル基板。
【請求項7】
前記第1線路および前記第2線路の一方の線路と前記接地電極との距離は他方の線路と前記接地電極との距離よりも短く、かつ前記一方の線路の幅は前記他方の線路の幅よりも小さい、請求項1~
6のいずれかに記載のフレキシブル基板。
【請求項8】
板状のフレキシブル基板であって、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面または前記第1面と前記第2面との間の層に設けられる第1線路と、
前記第2面または前記第2面と前記第1線路との間の層に設けられる第2線路と、
前記第1線路と前記第2線路との間の層に前記第1面および前記第2面に沿って延在するように設けられる接地電極とを備え、
前記接地電極は、前記第1線路とともに第1高周波伝送線路を形成し、かつ前記第2線路とともに第2高周波伝送線路を形成し、
前記フレキシブル基板の厚さ方向から前記フレキシブル基板を透視したとき、前記第1線路は、前記第1線路と前記第2線路との間の仮想的な中間線を対称線として、前記第2線路と線対称となる線対称部分を有し、
前記フレキシブル基板が前記第1面を内側として曲げられた状態において、
前記第1線路は、第1周波数の信号の伝送に用いられ、
前記第2線路は、前記第1周波数よりも高い第2周波数の信号の伝送に用いられる、フレキシブル基板。
【請求項9】
板状のフレキシブル基板と、
給電素子とを備え
、
前記フレキシブル基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面または前記第1面と前記第2面との間の層に設けられる第1線路と、
前記第2面または前記第2面と前記第1線路との間の層に設けられる第2線路と、
前記第1線路と前記第2線路との間の層に前記第1面および前記第2面に沿って延在するように設けられる接地電極とを備え、
前記接地電極は、前記第1線路とともに第1高周波伝送線路を形成し、かつ前記第2線路とともに第2高周波伝送線路を形成し、
前記フレキシブル基板の厚さ方向から前記フレキシブル基板を透視したとき、前記第1線路は、前記第1線路と前記第2線路との間の仮想的な中間線を対称線として、前記第2線路と線対称となる線対称部分を有し、
前記給電素子は、前記フレキシブル基板の前記第1線路および前記第2線路に接続される、アンテナモジュール。
【請求項10】
前記給電素子は、第1素子と第2素子とを含み、
前記第1線路は、前記第1素子に接続され、
前記第2線路は、前記第2素子に接続される、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項11】
前記給電素子は、平板状に形成され、
前記給電素子は、
第1方向を偏波方向とする電波を放射する際に給電される第1給電点と、
前記第1方向と異なる第2方向を偏波方向とする電波を放射する際に給電される第2給電点とを有し、
前記第1線路は、前記第1給電点に接続され、
前記第2線路は、前記第2給電点に接続される、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項12】
前記給電素子は、
電波を放射する第1素子と、
前記第1素子が放射する電波の周波数とは異なる周波数の電波を放射する第2素子とを含み、
前記第1線路は、前記第1素子に接続され、
前記第2線路は、前記第2素子に接続される、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項13】
前記給電素子は、第1素子と第2素子とを含み、
前記第1素子および前記第2素子の各々は、
第1方向を偏波方向とする電波を放射する際に給電される第1給電点と、
前記第1方向と異なる第2方向を偏波方向とする電波を放射する際に給電される第2給電点とを有し、
前記フレキシブル基板は、
前記第1線路と同じ層に設けられる第3線路と、
前記第2線路と同じ層に設けられる第4線路とをさらに備え、
前記フレキシブル基板の厚さ方向から前記フレキシブル基板を透視したとき、前記第1線路、前記第2線路、前記第3線路および前記第4線路は互いに重ならない部分を有し、
前記第1線路は、前記第1素子の第1給電点に接続され、
前記第2線路は、前記第1素子の第2給電点に接続され、
前記第3線路は、前記第2素子の第2給電点に接続され、
前記第4線路は、前記第2素子の第1給電点に接続される、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項14】
前記第2素子は、前記第1素子に対して所定間隔を隔てて並べて配置される、請求項13に記載のアンテナモジュール。
【請求項15】
前記第2素子は、前記第1素子が放射する電波の周波数とは異なる周波数の電波を放射する、請求項13に記載のアンテナモジュール。
【請求項16】
前記給電素子は、所定間隔を隔てて並べて配置される複数の素子を備え、
前記フレキシブル基板は、前記第1線路および前記第2線路を含む3本以上の線路を備え、
前記3本以上の線路のうちの、互いに隣り合う2つの前記素子にそれぞれ接続される2つの線路は、前記接地電極を挟んで互いに異なる側に配置される、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項17】
板状のフレキシブル基板と、
外部の給電素子に信号を出力するための出力端子とを備え
、
前記フレキシブル基板は、
第1面と、
前記第1面と対向する第2面と、
前記第1面または前記第1面と前記第2面との間の層に設けられる第1線路と、
前記第2面または前記第2面と前記第1線路との間の層に設けられる第2線路と、
前記第1線路と前記第2線路との間の層に前記第1面および前記第2面に沿って延在するように設けられる接地電極とを備え、
前記接地電極は、前記第1線路とともに第1高周波伝送線路を形成し、かつ前記第2線路とともに第2高周波伝送線路を形成し、
前記フレキシブル基板の厚さ方向から前記フレキシブル基板を透視したとき、前記第1線路は、前記第1線路と前記第2線路との間の仮想的な中間線を対称線として、前記第2線路と線対称となる線対称部分を有し、
前記出力端子は、前記フレキシブル基板の前記第1線路および前記第2線路に接続される、アンテナモジュール。
【請求項18】
前記出力端子は、
前記第1線路に接続される第1端子と、
前記第2線路に接続される第2端子とを含み、
前記外部の給電素子は、第1素子と第2素子とを含み、
前記第1端子は、前記第1素子に接続され、
前記第2端子は、前記第2素子に接続される、請求項17に記載のアンテナモジュール。
【請求項19】
前記出力端子は、
前記第1線路に接続される第1端子と、
前記第2線路に接続される第2端子とを含み、
前記外部の給電素子は、
電波を放射する第1素子と、
前記第1素子が放射する電波の周波数とは異なる周波数の電波を放射する第2素子とを含み、
前記第1端子は、前記第1素子に接続され、
前記第2端子は、前記第2素子に接続される、請求項17に記載のアンテナモジュール。
【請求項20】
前記外部の給電素子は、第1素子と第2素子とを含み、
前記第1素子および前記第2素子の各々は、
第1方向を偏波方向とする電波を放射する際に給電される第1給電点と、
前記第1方向と異なる第2方向を偏波方向とする電波を放射する際に給電される第2給電点とを有し、
前記フレキシブル基板は、
前記第1線路と同じ層に設けられる第3線路と、
前記第2線路と同じ層に設けられる第4線路とをさらに備え、
前記フレキシブル基板の厚さ方向から前記フレキシブル基板を透視したとき、前記第1線路、前記第2線路、前記第3線路および前記第4線路は互いに重ならない部分を有し、
前記出力端子は、
前記第1線路に接続される第1端子と、
前記第2線路に接続される第2端子と、
前記第3線路に接続される第3端子と、
前記第4線路に接続される第4端子とを含み、
前記第1端子は、前記第1素子の第1給電点に接続され、
前記第2端子は、前記第1素子の第2給電点に接続され、
前記第3端子は、前記第2素子の第2給電点に接続され、
前記第4端子は、前記第2素子の第1給電点に接続される、請求項17に記載のアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブル基板の屈曲性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2018-531386号公報には、基板の一方の面に形成された第1線路と、基板の他方の面に形成された第2線路と、基板の内層に形成された接地電極を備えるセンサが開示されている。このセンサにおいては、基板の厚さ方向から基板を透視したとき、第1線路と第2線路とが互いに重複する位置に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2016-213927号公報に開示された基板においては、上述のように、基板の厚さ方向において第1線路と第2線路とが重複する位置に配置される。このような配置を可撓性を有するフレキシブル基板に適用すると、第1線路と第2線路との重複部分の厚みが厚くなるため、フレキシブル基板の屈曲性が低下することが懸念される。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、第1線路、接地電極、第2線路がこの順に積層されて形成されるフレキシブル基板において、フレキシブル基板の屈曲性を確保しつつ、第1線路と第2線路とを同じ長さにし易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によるフレキシブル基板は、板状のフレキシブル基板であって、第1面と、第1面と対向する第2面と、第1面または第1面と第2面との間の層に設けられる第1線路と、第2面または第2面と第1線路との間の層に設けられる第2線路と、第1線路と第2線路との間の層に第1面および第2面に沿って延在するように設けられる接地電極とを備える。接地電極は、第1線路とともに第1高周波伝送線路を形成し、かつ第2線路とともに第2高周波伝送線路を形成する。フレキシブル基板の厚さ方向からフレキシブル基板を透視したとき、第1線路は、第1線路と第2線路との間の仮想的な中間線を対称線として、第2線路と線対称となる線対称部分を有する。
【0007】
上記のフレキシブル基板においては、厚さ方向から透視したとき、第1線路および第2線路が、仮想的な中間線を対称線として、互いに線対称となる線対称部分を有している。このような配置によって、第1線路と第2線路とを、フレキシブル基板の厚さ方向において、互いに重ならないようにすることができるので、フレキシブル基板の厚さを薄くすることができる。さらに、第1線路と第2線路とを線対称に配置することで、第1線路と第2線路とを同じ長さにし易くすることができる。その結果、フレキシブル基板の屈曲性を確保しつつ、第1線路と第2線路とを同じ長さにし易くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1線路、接地電極、第2線路がこの順に積層されて形成されるフレキシブル基板において、フレキシブル基板の屈曲性を確保しつつ、第1線路と第2線路とを同じ長さにし易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】アンテナモジュールの配置を説明するための図である。
【
図4】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その1)である。
【
図5】アンテナ装置をY軸の正方向から見たときの断面図(その1)である。
【
図6】フレキシブル基板の部分断面図(その1)である。
【
図7】フレキシブル基板を厚さ方向から透視したときの部分透視図(その1)である。
【
図8】フレキシブル基板を厚さ方向から透視したときの部分透視図(その2)である。
【
図9】フレキシブル基板の部分断面図(その2)である。
【
図10】フレキシブル基板の部分断面図(その3)である。
【
図11】フレキシブル基板の部分断面図(その4)である。
【
図12】フレキシブル基板の部分断面図(その5)である。
【
図13】フレキシブル基板の部分断面図(その6)である。
【
図14】フレキシブル基板の部分断面図(その7)である。
【
図15】フレキシブル基板の部分断面図(その8)である。
【
図16】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その2)である。
【
図17】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その3)である。
【
図18】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その4)である。
【
図19】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その5)である。
【
図20】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その6)である。
【
図21】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その7)である。
【
図22】フレキシブル基板の部分断面図(その9)である。
【
図23】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その8)である。
【
図24】フレキシブル基板の部分断面図(その10)である。
【
図25】アンテナ装置をX軸の正方向から見たときの図(その9)である。
【
図26】フレキシブル基板の部分断面図(その11)である。
【
図27】アンテナ装置をY軸の正方向から見たときの断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態1に係るフレキシブル基板を備えたアンテナモジュール100が適用される通信装置10のブロック図の一例である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。
【0012】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200とを備える。アンテナモジュール100は、給電回路の一例であるRFIC110と、アンテナ装置120とを備える。通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ装置120から放射するとともに、アンテナ装置120で受信した高周波信号をダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
【0013】
図1では、説明を容易にするために、アンテナ装置120を構成する複数の給電素子121のうち、4つの給電素子121に対応する構成のみ示され、同様の構成を有する他の給電素子121に対応する構成については省略されている。なお、
図1においては、アンテナ装置120が二次元のアレイ状に配置された複数の給電素子121で形成される例を示しているが、給電素子121は必ずしも複数である必要はなく、1つの給電素子121でアンテナ装置120が形成される場合であってもよい。本実施の形態においては、給電素子121は、略正方形の平板形状を有するパッチアンテナである。
【0014】
RFIC110は、スイッチ111A~111D,113A~113D,117と、パワーアンプ112AT~112DTと、ローノイズアンプ112AR~112DRと、減衰器114A~114Dと、移相器115A~115Dと、信号合成/分波器116と、ミキサ118と、増幅回路119とを備える。
【0015】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがパワーアンプ112AT~112DT側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがローノイズアンプ112AR~112DR側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の受信側アンプに接続される。
【0016】
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119で増幅され、ミキサ118でアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116で4分波され、4つの信号経路を通過して、それぞれ異なる給電素子121に給電される。このとき、各信号経路に配置された移相器115A~115Dの移相度が個別に調整されることにより、アンテナ装置120の指向性を調整することができる。
【0017】
各給電素子121で受信された高周波信号である受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器116で合波される。合波された受信信号は、ミキサ118でダウンコンバートされ、増幅回路119で増幅されてBBIC200へ伝達される。
【0018】
RFIC110は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品として形成される。あるいは、RFIC110における各給電素子121に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、移相器)については、対応する給電素子121毎に1チップの集積回路部品として形成されてもよい。
【0019】
(アンテナモジュールの配置)
図2は、本実施の形態1におけるアンテナモジュール100の配置を説明するための図である。
図2を参照して、アンテナモジュール100は、RFIC110を介して実装基板20の一方の主面21に配置される。以下では、実装基板20の主面21の法線方向を「Z軸方向」、実装基板20の側面22の法線方向を「X軸方向」、Z軸方向およびX軸方向に垂直な方向を「Y軸方向」とも称する。
【0020】
RFIC110には、可撓性を有するフレキシブル基板160を介して、誘電体基板130,131が接続される。誘電体基板130,131には、給電素子121a,121bがそれぞれ配置される。フレキシブル基板160は、誘電体基板130,131の給電素子121a,121bが配置された面とは反対の面、すなわち実装基板20に対向した面に配置されている。
【0021】
アンテナモジュール100から放射可能な電波の周波数帯域は、特に限定されないが、たとえば28GHzおよび/または39GHzのようなミリ波帯の電波にも適用可能である。
【0022】
誘電体基板130は、主面21に沿って延在しており、主面21の法線方向(すなわちZ軸方向)へ電波が放射されるように給電素子121bが配置されている。
【0023】
フレキシブル基板160は、実装基板20の主面21から側面22に面するように湾曲しており、側面22に沿った面に誘電体基板131が配置されている。誘電体基板131には、側面22の法線方向(すなわち、
図2のX軸方向)へ電波が放射されるように給電素子121aが配置されている。このように、湾曲したフレキシブル基板160を用いて2つの誘電体基板130,131を接続することで、異なる2つの方向へ電波を放射することができる。
【0024】
誘電体基板130,131は、たとえば、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂で形成される。なお、誘電体基板130,131は、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)あるいはフッ素系樹脂を用いて形成されてもよい。
【0025】
次に、
図3~
図5を用いて、実施の形態1におけるアンテナ装置120の詳細について説明する。
図3は、アンテナ装置120の斜視図である。
図4は、
図3中のX軸の正方向からアンテナ装置120を見たときの図である。
図5は、
図3中のY軸の正方向からアンテナ装置120を見た断面図である。
【0026】
なお、
図3~
図5においては、説明を容易にするために、誘電体基板131に2つの給電素子121a1,121a2が配置される構成を例として説明するが、
図2で説明したように、誘電体基板131には複数の給電素子121がアレイ状に配置される構成であってもよい。また、
図3~
図5および後述する
図16,17~21、23,25においては、誘電体基板130に配置される給電素子121bを省略しているが、
図2で説明したように、誘電体基板130には複数の給電素子121bがアレイ状に配置される。
【0027】
図2で説明したように、アンテナ装置120は、実装基板20にRFIC110を介して実装されている。誘電体基板130は実装基板20の主面21に対向しており、誘電体基板131は実装基板20の側面22に対向している。上述したように、フレキシブル基板160は、誘電体基板130,131の給電素子121が配置された面とは反対の面、すなわち実装基板20に対向した面に配置されている。
【0028】
誘電体基板131に配置された給電素子121a1,121a2には、RFIC110から第1線路141および第2線路142を介して高周波信号がそれぞれ供給される。
図3の例においては、給電素子121a1の面中心からY軸の負方向にオフセットした位置に設けられる給電点SP1に第1線路141が接続される。これにより、給電素子121a1からは、Y軸方向を励振方向とする偏波がX軸の正方向に放射される。また、給電素子121a2の面中心からY軸の負方向にオフセットした位置に設けられる給電点SP1に第2線路142が接続される。これにより、給電素子121a2からも、給電素子121a1と同様に、Y軸方向を励振方向とする偏波がX軸の正方向に放射される。すなわち、本実施の形態によるアンテナ装置120は、各給電素子121からY軸方向を励振方向とする偏波の電波を放射する、いわゆるシングル偏波タイプのアンテナ装置である。なお、給電素子121a1,121a2は、本開示の「第1素子」、「第2素子」にそれぞれ対応し得る。
【0029】
また、本実施の形態においては、アンテナ装置120が、1つの周波数帯域(たとえば28GHzまたは39GHz)の電波を放射する、いわゆるシングルバンドタイプのアンテナ装置である場合について説明する。
【0030】
図5に示すように、フレキシブル基板160は、第1面161aと、第1面161aとは反対の(すなわち第1面161aと対向する)第2面161bとを有する。フレキシブル基板160は、多層構造を有しており、第1面161aから第2面161bまでの間に、第1線路141、接地電極GND、および第2線路142が、この順で所定間隔を隔てて積層されている。フレキシブル基板160の第1線路141、接地電極GND、および第2線路142以外の部分は、誘電体161によって形成されている。なお、
図5には、フレキシブル基板160が第1面161aを内側にして曲げられた状態が示されている。
【0031】
第1線路141、接地電極GND、および第2線路142等を構成する導体は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、および、これらの合金を主成分とする金属で形成される。したがって、第1線路141、接地電極GND、および第2線路142は、可撓性を有さず、塑性変形する。
【0032】
一方、誘電体161は、可撓性を有する素材(液晶ポリマーあるいはフッ素系樹脂等)で形成される。これにより、フレキシブル基板160は、全体として可撓性を有し、所望の角度に曲げることが可能である。
【0033】
第1線路141は、接地電極GNDよりも第1面161a側の層に設けられ、RFIC110と給電素子121a1とを接続する。第1線路141は、フレキシブル基板160において、第1のマイクロストリップラインの信号線路として形成される。なお、第1線路141は第1面161a上に設けられてもよい。
【0034】
第2線路142は、接地電極GNDよりも第2面161b側の層に設けられ、RFIC110と給電素子121a2とを接続する。第2線路142は、フレキシブル基板160において、第2のマイクロストリップラインの信号線路として形成される。なお、第2線路142は第2面161b上に設けられてもよい。
【0035】
接地電極GNDは、第1線路141と第2線路142との間の層に、第1面161aおよび第2面161bに沿って面状に延在する。接地電極GNDは、第1線路141(第1のマイクロストリップライン)と第2線路142(第2のマイクロストリップライン)とで共用される。すなわち、接地電極GNDは、第1線路141とともに第1のマイクロストリップライン(第1高周波伝送線路)を形成するとともに、第2線路142とともに第2のマイクロストリップライン(第2高周波伝送線路)を形成する。高周波伝送線路とは、集中定数の線路ではなく、分布定数の線路であることを意味する。なお、第1面161a、第2面161b、第1線路141、第2線路142、および接地電極GNDは、本開示の「第1面」、「第2面」、「第1線路」、「第2線路」、「接地電極」にそれぞれ対応し得る。
【0036】
図6は、フレキシブル基板160における
図5のVI-VIの部分断面図である。
図6に示すように、第1線路141は接地電極GNDよりも第1面161a側(
図6の下側)の層に設けられ、第2線路142は接地電極GNDよりも第2面161b側(
図6の上側)の層に設けられる。このように第1線路141と第2線路142との間に接地電極GNDが介在することによって、第1線路141と第2線路142とのアイソレーションが確保される。
【0037】
さらに、第1線路141と第2線路142とは、第1面161aおよび第2面161bに沿う方向にずらして配置されている。そのため、第1線路141と第2線路142との間には、第1面161aおよび第2面161bの法線方向に沿った1本の仮想的な中間線LMを引くことができる。
【0038】
なお、本実施の形態によるフレキシブル基板160においては、接地電極GNDよりも第1面161a側の誘電体161の厚さと、接地電極GNDよりも第2面161b側の誘電体161の厚さとがほぼ同じである。さらに、第1線路141と接地電極GNDとの距離と、第2線路142と接地電極GNDとの距離とは、ほぼ同じ所定距離Dである。また、第1線路141の幅と第2線路142の幅とは、ほぼ同じ所定幅Wである。
【0039】
図7は、フレキシブル基板160の厚さ方向(すなわち第1面161aまたは第2面161bの法線方向)からフレキシブル基板160を透視したときの部分透視図である。
図7に示すように、本実施の形態によるフレキシブル基板160においては、フレキシブル基板160の厚さ方向からフレキシブル基板160を透視したとき、第1線路141および第2線路142は、第1線路141と第2線路142との間の仮想的な中間線LMを対称線として、互いに線対称となる線対称部分141a,142aをそれぞれ有している。
【0040】
このような配置によって、第1線路141と第2線路142とを、フレキシブル基板160の厚さ方向において、互いに重ならないようにすることができる。これにより、第1線路141と第2線路142とがフレキシブル基板160の厚さ方向において重なる場合に比べて、フレキシブル基板160の厚さを薄くすることができる。そのため、フレキシブル基板160の屈曲性を確保することができる。
【0041】
さらに、本実施の形態においては、第1線路141と第2線路142とが、仮想的な中間線LMを対称線として、互いに線対称となる線対称部分141a,142aをそれぞれ有している。このように線対称に配置することで、第1線路141と第2線路142とを同じ長さにし易くすることができる。
【0042】
特に、本実施の形態においては、第1線路141と第2線路142とが、仮想的な中間線LMを対称線として、互いに平行となるように配置される。これにより、第1線路141と第2線路142とが互いに平行ではない場合に比べて、第1線路141および第2線路142の長さを短くすることができるとともに、第1線路141および第2線路142を狭い領域に配置することができるため、配線の自由度を確保し易くすることができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態によるフレキシブル基板160は、厚さ方向から透視したとき、第1線路141および第2線路142が、仮想的な中間線LMを対称線として、互いに線対称となる線対称部分141a,142aを有している。このような配置によって、第1線路141と第2線路142とを、フレキシブル基板160の厚さ方向において、互いに重ならないようにすることができるので、フレキシブル基板160の厚さを薄くすることができる。さらに、第1線路141と第2線路142とを線対称に配置することで、第1線路141と第2線路142とを同じ長さにし易くすることができる。その結果、第1線路141、接地電極GND、第2線路142がこの順に積層されて形成されるフレキシブル基板160において、フレキシブル基板160の屈曲性を確保しつつ、第1線路141と第2線路142とを同じ長さにし易くすることができる。
【0044】
<変形例1>
上述の実施の形態によるフレキシブル基板160においては、フレキシブル基板160を厚さ方向から透視したとき、第1線路141および第2線路142が全体的に平行である。
【0045】
しかしながら、第1線路141および第2線路142は、仮想的な中間線LMに対して線対称となる部分を有していればよく、必ずしも全体的に平行であることに限定されない。
【0046】
図8は、本変形例1によるフレキシブル基板160Aを厚さ方向(第2面161bの法線方向)から透視したときの部分透視図である。フレキシブル基板160Aは、上述のフレキシブル基板160の第1線路141および第2線路142を、それぞれ第1線路141Aおよび第2線路142Aに変更したものである。
【0047】
図8に示すように、フレキシブル基板160Aを厚さ方向から透視したとき、第1線路141Aおよび第2線路142Aは、仮想的な中間線LMを対称線として、互いに線対称となる線対称部分141Aa,142Aaをそれぞれ有する。この線対称部分141Aa,142Aaには、互いに平行となる平行部分141Ab,142Abと、直線的ではあるが互いに傾斜する傾斜部分141Ac,142Acとが含まれる。なお、
図8に示す例では、線対称部分として平行部分141Ab,142Abおよび傾斜部分141Ac,142Acを示したが、線対称部分はこれに限定されない。たとえば、線対称部分に、互いに間隔の異なる複数の平行部分が含まれてもよいし、傾斜部分141Ac,142Acのみが含まれてもよい。
【0048】
さらに、本実施の形態によるフレキシブル基板160Aは、フレキシブル基板160Aを厚さ方向から透視したとき、第1線路141Aおよび第2線路142Aが互いに交差する交差部分Rを有する。このような交差部分Rを一部に有していても、その他の部分においては厚さ方向には重ならないため、フレキシブル基板160Aの屈曲性にはほとんど影響しない。その結果、フレキシブル基板160Aの屈曲性を低下させることなく、第1線路141Aおよび第2線路142Aの配線自由度を確保することができる。
【0049】
<変形例2>
上述の実施の形態によるフレキシブル基板160においては、第1線路141と第2線路142との間の層に、1層の接地電極GNDが設けられる。
【0050】
しかしながら、第1線路141と第2線路142との間の層に設けられる接地電極は、必ずしも1層であることに限定されず、2層以上であってもよい。
【0051】
図9は、本変形例2によるフレキシブル基板160Bの部分断面図である。フレキシブル基板160Bは、上述のフレキシブル基板160の接地電極GNDを、接地電極GND1、接地電極GND2およびビア162に変更したものである。その他のフレキシブル基板160Bの構成は、上述のフレキシブル基板160と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0052】
接地電極GND1および接地電極GND2は、第1線路141と第2線路142との間の層に、フレキシブル基板160Bの厚さ方向に所定間隔を隔てて並べて配置される。ビア162は、第1線路141と第2線路142とを電気的に接続する。なお、接地電極GND1、接地電極GND2およびビア162は、本開示の「第1接地電極」、「第2接地電極」および「ビア」にそれぞれ対応し得る。
【0053】
このように、第1線路141と第2線路142との間の層に設けられる接地電極を2層以上にすることで、接地電極を1層にする場合に比べて、塑性変形し易い金属層が増加するため、フレキシブル基板160Bを曲げた際の曲げ角度を安定させ易くすることができる。
【0054】
<変形例3>
上述の実施の形態によるフレキシブル基板160においては、第1線路141と第2線路142との間の層に、第1線路141と第2線路142とで共用される接地電極GNDが設けられる。
【0055】
しかしながら、第1線路141と第2線路142とで共用される接地電極GNDに加えて、第1線路141および第2線路142のいずれか一方と同じ層に、他方には共用されない接地電極を設けて、いわゆるコプレーナ型の伝送線路を形成するようにしてもよい。
【0056】
図10は、本変形例3の一例によるフレキシブル基板160C1の部分断面図である。フレキシブル基板160C1は、上述のフレキシブル基板160に対して、第1線路141と同じ層に接地電極GND3を追加したものである。なお、接地電極GND3は、本開示の「第3接地電極」に対応し得る。
【0057】
このようなフレキシブル基板160C1においては、たとえば第1面161aを内側にしてガイド等に当ててフレキシブル基板160C1を所望の角度に曲げる際に、内側に塑性変形し易い接地電極GND3が追加されるため、曲げ角を所望の角度に安定させ易くすることができる。
【0058】
図11は、本変形例3の他の例によるフレキシブル基板160C2の部分断面図である。フレキシブル基板160C2は、上述のフレキシブル基板160に対して、第2線路142と同じ層に接地電極GND4を追加したものである。なお、接地電極GND4は、本開示の「第4接地電極」に対応し得る。
【0059】
フレキシブル基板160C2を第1面161aを内側にして曲げる場合、外側に引っ張り応力が生じるところ、この引っ張り応力が外側の第2線路142に集中すると第2線路142が断線し得る。しかしながら、フレキシブル基板160C2においては、外側の第2線路142と同じ層に接地電極GND4が追加されるため、引っ張り応力が外側の層全体に均一にかかり易くなり、引っ張り応力が第2線路142に集中し難くなる。その結果、外側の第2線路142の断線を生じ難くすることができる。
【0060】
<変形例4>
上述の実施の形態によるフレキシブル基板160においては、第1線路141と第2線路142との間の層に接地電極GNDが設けられる。
【0061】
しかしながら、第1線路141と第2線路142との間の接地電極GNDに加えて、第1線路141よりも第1面161a側の層および第2線路142よりも第2面161b側の層にそれぞれ接地電極GND5,GND6を設けて、いわゆるストリップライン型の伝送線路を形成するようにしてもよい。
【0062】
図12は、本変形例4によるフレキシブル基板160Dの部分断面図である。フレキシブル基板160Dは、上述のフレキシブル基板160に対して、第1線路141よりも第1面161a側の層に接地電極GND5を追加し、第2線路142よりも第2面161b側の層に接地電極GND6を追加したものである。なお、接地電極GND5,GND6は、本開示の「第5接地電極」、「第6接地電極」にそれぞれ対応し得る。
【0063】
このようなフレキシブル基板160Dにおいては、接地電極GND5と接地電極GND6との間に第1線路141および第2線路142が設けられるため、フレキシブル基板160Dの外部に対する内部のアイソレーションを向上させることができる。
【0064】
なお、必ずしも接地電極GND5と接地電極GND6との双方を設ける必要はなく、どちらか一方を設けるようにしてもよい。
【0065】
<変形例5>
上述の本実施の形態においては、アンテナモジュール100がシングルバンドタイプであるため、第1線路141によって伝送される信号の周波数と、第2線路142によって伝送される信号の周波数とは、同じである。
【0066】
しかしながら、アンテナモジュール100が2つの周波数帯域の電波を放射することができる、いわゆるデュアルバンドタイプである場合には、フレキシブル基板160を曲げた状態において、内側となる第1線路141を低い方の周波数の信号の伝送に用い、外側となる第2線路142を高い方の周波数の信号の伝送に用いるようにしてもよい。
【0067】
図13は、本変形例5によるフレキシブル基板160Eの部分断面図である。フレキシブル基板160Eは、上述のフレキシブル基板160の第1線路141および第2線路142を、それぞれ第1線路141Eおよび第2線路142Eに変更したものである。その他のフレキシブル基板160Eの構成は、上述のフレキシブル基板160と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0068】
フレキシブル基板160Eを第1面161aを内側にして曲げた部分において、第1線路141Eは第2線路142Eよりも内側となる。この場合、内側の第1線路141Eには圧縮応力が生じ、この圧縮応力の影響で第1線路141Eの表面がシワ状になって粗さが生じることが懸念される。一方、外側の第2線路142Eには圧縮応力ではなく引っ張り応力が生じるため、第2線路142Eの表面はシワ状にはなり難い。
【0069】
一般的に、交流電流は表皮効果によって電流密度が導体表面で高くなり、周波数が高くなるほど電流が導体表面へ集中する。そのため、表面の粗さが高周波信号の伝送特性に与える影響は、信号の周波数が高いほどより大きくなる。この点を踏まえ、本変形例5によるフレキシブル基板160Eにおいては、曲げ部において内側に配置される第1線路141Eが低い方の周波数(たとえば28GHz)の信号の伝送に用いられ、曲げ部において外側に配置される第2線路142Eが高い方の周波数(たとえば39GHz)の信号の伝送に用いられる。このようにすることで、フレキシブル基板160Eを曲げることによる伝送特性への影響を極力抑えることができる。
【0070】
<変形例6>
上述の実施の形態によるフレキシブル基板160においては、接地電極GNDよりも第1面161a側の誘電体161の厚さ(以下「誘電体161の内側厚さ」ともいう)と、接地電極GNDよりも第2面161b側の誘電体161の厚さ(以下「誘電体161の外側厚さ」ともいう)とがほぼ同じである。また、フレキシブル基板160においては、第1線路141と接地電極GNDとの距離と、第2線路142と接地電極GNDとの距離とがほぼ同じ所定距離Dである。さらに、第1線路141の幅と接地電極GNDの幅とがほぼ同じ所定幅Wである。
【0071】
しかしながら、誘電体161の内側厚さと外側厚さとが異なっていてもよい。また、第1線路141と接地電極GNDとの距離と、第2線路142と接地電極GNDとの距離とが異なっていてもよい。また、第1線路141の幅と接地電極GNDの幅とが異なっていてもよい。
【0072】
図14は、本変形例6の一例によるフレキシブル基板160F1の部分断面図である。
フレキシブル基板160F1は、上述のフレキシブル基板160に対して、誘電体161の内側厚さを外側厚さよりも薄くし、さらに、上述のフレキシブル基板160の第1線路141および第2線路142を、それぞれ第1線路141F1および第2線路142F1に変更したものである。その他のフレキシブル基板160F1の構成は、上述のフレキシブル基板160と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0073】
誘電体161の内側厚さが外側厚さよりも薄いことに鑑み、第1線路141F1と接地電極GNDとの距離D1は所定距離Dよりも短い値に設定され、第2線路142F1と接地電極GNDとの距離D2は所定距離Dよりも長い値に設定される。また、第1線路141F1の幅W1は所定幅Wよりも小さい値に設定され、第2線路142F2の幅W2は所定幅Wよりも大きい値に設定される。
【0074】
フレキシブル基板160F1においては、第1線路141F1と接地電極GNDとの距離D1が所定距離Dよりも短いため、仮に第1線路141F1の幅W1が所定幅Wのままであると、第1線路141F1の容量性リアクタンスは、距離D1が所定距離Dであるときの値よりも大きくなってしまう。この点に鑑み、フレキシブル基板160F1においては、第1線路141F1の幅W1が所定幅Wよりも小さい値に設定される。これにより、距離D1を所定距離Dよりも短くしたことに起因する第1線路141F1の容量性リアクタンスの増加分を、第1線路141F1の幅W1を所定幅Wよりも小さくしたことに起因する容量性リアクタンスの減少分で相殺することができる。その結果、第1線路141F1のインピーダンスを維持し易くすることができる。
【0075】
また、フレキシブル基板160F1においては、第2線路142F1と接地電極GNDとの距離D2が所定距離Dよりも長いため、仮に第2線路142F1の幅W2が所定幅Wのままであると、第2線路142F1の容量性リアクタンスは、距離D2が所定距離Dであるときの値よりも小さくなってしまう。この点に鑑み、フレキシブル基板160F1においては、第2線路142F1の幅W2が所定幅Wよりも大きい値に設定される。これにより、距離D2を所定距離Dよりも長くしたことに起因する第2線路142F1の容量性リアクタンスの減少分を、第2線路142F1の幅W2を所定幅Wよりも大きくしたことに起因する容量性リアクタンスの増加分で相殺することができる。その結果、第2線路142F1のインピーダンスを維持し易くすることができる。
【0076】
さらに、フレキシブル基板160F1においては、曲げ部分の外側の領域に、所定幅Wよりも大きい幅W2を有する第2線路142F1が配置される。これにより、フレキシブル基板160F1を曲げる際に引っ張り応力が生じる外側の第2線路142F1の剛性を増加させて、第2線路142F1の断線を生じ難くすることができる。
【0077】
図15は、本変形例6の他の例によるフレキシブル基板160F2の部分断面図である。フレキシブル基板160F2は、上述のフレキシブル基板160に対して、誘電体161の内側厚さを外側厚さよりも厚くし、さらに上述のフレキシブル基板160の第1線路141および第2線路142を、それぞれ第1線路141F2および第2線路142F2に変更したものである。その他のフレキシブル基板160F2の構成は、上述のフレキシブル基板160と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0078】
誘電体161の内側厚さが外側厚さよりも厚いことに鑑み、第1線路141F2と接地電極GNDとの距離D3は所定距離Dよりも長い値に設定され、第2線路142F2と接地電極GNDとの距離D4は所定距離Dよりも短い値に設定される。また、第1線路141F2の幅W3は所定幅Wよりも大きい値に設定され、第2線路142F2の幅W4は所定幅Wよりも小さい値に設定される。このように設定することで、上述のフレキシブル基板160F1と同様の理由により、第1線路141F2および第2線路142F2のインピーダンスを維持し易くすることができる。
【0079】
さらに、フレキシブル基板160F2においては、曲げ部分の内側の領域に、接地電極GNDとの距離D3が所定距離Dよりも長い第1線路141F2が配置される。これにより、フレキシブル基板160F2を曲げる際に圧縮応力が生じる内側の第1線路141F2を接地電極GNDから遠ざけておくことができる。これにより、第1面161aを内側にしてフレキシブル基板160F2を曲げる際に生じて圧縮応力の影響で第1線路141F2が接地電極GNDに変位したとしても、第1線路141F2が接地電極GNDに当接し難くすることができる。
【0080】
<変形例7-1>
上述の実施の形態においては、フレキシブル基板160が適用されるアンテナ装置120が、略正方形の平板形状を有する給電素子121(パッチアンテナ)を備える。
【0081】
しかしながら、フレキシブル基板160が適用されるアンテナは、パッチアンテナに限定されるものではなく、他のタイプのアンテナであってもよい。
【0082】
図16は、本変形例7-1によるアンテナ装置120AをX軸の正方向から見たときの図である。アンテナ装置120Aは、上述の
図4に示すアンテナ装置120に対して、給電素子121a1,121a2をそれぞれダイポールアンテナ151,152に変更するとともに、フレキシブル基板160をフレキシブル基板160Gに変更したものである。
【0083】
フレキシブル基板160Gは、上述のフレキシブル基板160の第1線路141および第2線路142を、それぞれ第1線路141Gおよび第2線路142Gに変更したものである。第1線路141Gは、上述の第1線路141に対して、接続先を給電素子121a1からダイポールアンテナ151に変更したものである。第2線路142Gは、上述の第2線路142に対して、接続先を給電素子121a2からダイポールアンテナ152に変更したものである。その他のフレキシブル基板160Gの構成は、上述のフレキシブル基板160と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0084】
このように、フレキシブル基板160Gをダイポールアンテナの接続に用いるようにしてもよい。
【0085】
<変形例7-2>
上述の実施の形態においては、いわゆるシングル偏波タイプのアンテナ装置120にフレキシブル基板160が適用された。
【0086】
しかしながら、フレキシブル基板160が適用されるアンテナは、シングル偏波タイプのアンテナ装置に限定されるものではなく、互いに異なる偏波方向を有する2つの電波を放射することが可能な、いわゆるデュアル偏波タイプのアンテナであってもよい。
【0087】
図17は、本変形例7-2によるアンテナ装置120BをX軸の正方向から見たときの図である。アンテナ装置120Bは、上述のアンテナ装置120に対して、給電素子121を給電素子123に変更するとともに、フレキシブル基板160をフレキシブル基板160Hに変更したものである。
【0088】
給電素子123は、給電素子123の面中心からY軸の負方向にオフセットした位置に設けられる給電点SP3と、給電素子123の面中心からZ軸の負方向にオフセットした位置に設けられる給電点SP4とを備える。
【0089】
フレキシブル基板160Hは、上述のフレキシブル基板160の第1線路141および第2線路142を、それぞれ第1線路141Hおよび第2線路142Hに変更したものである。第1線路141Hは、上述の第1線路141に対して、接続先を給電素子121a1の給電点SP1から給電素子123の給電点SP3に変更したものである。第2線路142Hは、上述の第2線路142に対して、接続先を給電素子121a2の給電点SP1から、給電素子123の給電点SP4に変更したものである。その他のフレキシブル基板160Hの構成は、上述のフレキシブル基板160と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0090】
RFIC110からの高周波信号が第1線路141Hを介して給電点SP3に供給されることによって、給電素子123からは、Y軸方向を偏波方向とする電波(以下「Y偏波」ともいう)が放射される。RFIC110からの高周波信号が第2線路142Hを介して給電点SP4に供給されることによって、給電素子123からは、Z軸方向を偏波方向とする電波(以下「Z偏波」ともいう)が放射される。なお、Y軸方向および給電点SP3は、本開示の「第1方向」および「第1給電点」にそれぞれ対応し得る。また、Z軸方向および給電点SP4は、本開示の「第2方向」および「第2給電点」にそれぞれ対応し得る。
【0091】
このように、フレキシブル基板160Hを、デュアル偏波タイプのアンテナであってもよい。フレキシブル基板160Hにおいて、第1線路141Hと第2線路142Hとの間には、接地電極GNDが配置される。そのため、偏波方向の異なる偏波間(Y偏波とZ偏波との間)のアイソレーションを確保し易くすることができる。
【0092】
<変形例7-3>
上述の実施の形態においては、いわゆるシングルバンドタイプのアンテナ装置120にフレキシブル基板160が適用された。
【0093】
しかしながら、フレキシブル基板160が適用されるアンテナは、シングルバンドタイプのアンテナ装置に限定されるものではなく、いわゆるデュアルバンドタイプのアンテナ装置であってもよい。
【0094】
図18は、本変形例7-3の一例によるアンテナ装置120C1をX軸の正方向から見たときの図である。アンテナ装置120C1は、上述の
図4に示すアンテナ装置120に対して、給電素子121a1,121a2をそれぞれ給電素子124,125に変更するとともに、フレキシブル基板160をフレキシブル基板160Eに変更したものである。フレキシブル基板160Eは、上述の変形例5(
図13参照)で説明したフレキシブル基板160Eと同じである。
【0095】
給電素子124と給電素子125とは、X軸方向から見て互いに重複する位置に、X軸方向に所定間隔を隔てて配置される。給電素子124は、給電素子124の面中心からY軸の負方向にオフセットした位置に設けられる給電点SP5を備える。給電素子125は、給電素子125の面中心からY軸の正方向にオフセットした位置に設けられる給電点SP6を備える。
【0096】
第1線路141Eは、給電素子124の給電点SP5に接続される。RFIC110からの第1周波数(たとえば28GHz)用の高周波信号が第1線路141Eを介して給電素子124の給電点SP5に供給されることによって、給電素子124からは第1周波数のY偏波が放射される。
【0097】
第2線路142Eは、給電素子125の給電点SP6に接続される。RFIC110からの第1周波数よりも高い第2周波数(たとえば39GHz)用の高周波信号が第2線路142Eを介して給電素子125の給電点SP6に供給されることによって、給電素子125からは第2周波数のY偏波が放射される。給電素子125が第1周波数よりも高い第2周波数の電波を放射することに鑑み、給電素子125の一辺の長さは、給電素子124の一辺の長さよりも短い値に設定される。なお、給電素子124,125は、本開示の「第1素子」、「第2素子」にそれぞれ対応し得る。
【0098】
図18に示す例では、給電素子124,125がどちらもY偏波を放射する例を示したが、給電素子124,125が互いに異なる偏波方向の電波を放射するようにしてもよい。たとえば、給電素子125の給電点SP6をY軸方向ではなくZ軸方向にオフセットした位置に設けることによって、給電素子125からZ偏波を放射するようにしてもよい。
【0099】
図19は、本変形例7-3の他の例によるアンテナ装置120C2をX軸の正方向から見たときの図である。アンテナ装置120C2は、上述の
図18に示すアンテナ装置120C1に対して、給電素子124と給電素子125とを、Y軸方向に所定間隔を隔てて並べて配置した点が異なる。なお、給電素子124と給電素子125とは、X軸方向の同じ層に設けられてもよいし異なる層に設けられてもよい。
【0100】
図20は、本変形例7-3の他の例によるアンテナ装置120C3をX軸の正方向から見たときの図である。アンテナ装置120C3は、上述の
図19に示すアンテナ装置120C2に対して、給電素子124をたとえば6GHzの電波を放射する逆F型のアンテナ153に変更し、給電素子125をたとえば24GHzの電波を放射する給電素子121に変更したものである。
【0101】
アンテナ装置120C3においては、フレキシブル基板160Eの曲げ部において内側に配置される第2線路142Eが低い方の周波数(たとえば6GHz)の電波を放射する逆F型のアンテナ153に接続され、曲げ部において外側に配置される第2線路142Eが高い方の周波数(たとえば24GHz)の電波を放射する給電素子121に接続される。
【0102】
アンテナ装置120C1~120C3のいずれにおいても、フレキシブル基板160Eの第1線路141Eと第2線路142Eとの間には、接地電極GNDが配置される。そのため、異なる周波数間のアイソレーションを確保し易くすることができる。
【0103】
<変形例7-4>
フレキシブル基板160に設けられる線路が3本以上である場合においては、各線路を以下のように配置するようにしてもよい。
【0104】
図21は、本変形例7-4の一例によるアンテナ装置120DをX軸の正方向から見たときの図である。アンテナ装置120Dは、上述のアンテナ装置120に対して、シングル偏波タイプの給電素子121a1,121a2を、デュアル偏波タイプの給電素子123a1,123a2にそれぞれ変更するとともに、フレキシブル基板160をフレキシブル基板160Iに変更したものである。
【0105】
給電素子123a1,123a2は、上述の
図17に示す給電素子123を、Y軸方向に所定距離を隔てて並べたものである。したがって、給電素子123a1,123a2の各々は、Y偏波用の給電点SP3と、Z偏波用の給電点SP4とを備える。
【0106】
フレキシブル基板160Iは、第1線路145a、第2線路145b、第3線路145c、および第4線路145dを備える。第1線路145aは、給電素子123a1のY偏波用の給電点SP3に接続される。第2線路145bは、給電素子123a1のZ偏波用の給電点SP4に接続される。第3線路145cは、給電素子123a2のZ偏波用の給電点SP4に接続される。第4線路145dは、給電素子123a2のY偏波用の給電点SP3に接続される。
【0107】
図22は、フレキシブル基板160Iにおける
図21のXXII-XXIIの部分断面図である。
図22に示すように、第1線路145aおよび第3線路145cは、どちらも同じ層、すなわち接地電極GNDよりも第1面161a側(
図22中の下側)の層に設けられる。第2線路145bおよび第4線路145dは、どちらも同じ層、すなわち接地電極GNDよりも第2面161b側(
図22中の上側)の層に設けられる。なお、給電素子123a1、給電素子123a1の給電点SP3、および給電素子123a1の給電点SP4は、本開示の「第1素子」、「第1素子の第1給電点」、「第1素子の第2給電点」にそれぞれ対応し得る。また、給電素子123a2、給電素子123a2の給電点SP3、および給電素子123a2の給電点SP4は、本開示の「第2素子」、「第2素子の第1給電点」、「第2素子の第2給電点」にそれぞれ対応し得る。また、第1線路145a、第2線路145b、第3線路145c、および第4線路145dは、本開示の「第1線路」、「第2線路」、「第3線路」、および「第4線路」にそれぞれ対応し得る。
【0108】
このような配置により、給電素子123a1のY偏波とZ偏波との間のアイソレーション(第1線路145aと第2線路145bとの間のアイソレーション)、および、給電素子123a2のY偏波とZ偏波との間のアイソレーション(第3線路145cと第4線路145dとの間のアイソレーション)を確保することができる。さらに、互いに隣り合う給電素子123a1,123a2のY偏波間のアイソレーション(第1線路145aと第4線路145dとの間のアイソレーション)、および、互いに隣り合う給電素子123a1,123a2のZ偏波間のアイソレーション(第2線路145bと第3線路145cとの間のアイソレーション)も確保することができる。
【0109】
図23は、本変形例7-4の他の例によるアンテナ装置120EをX軸の正方向から見たときの図である。アンテナ装置120Eは、上述の
図18に示すアンテナ装置120C1に対して、シングル偏波タイプの給電素子124,125を、デュアル偏波タイプの給電素子127,128にそれぞれ変更するとともに、フレキシブル基板160Eをフレキシブル基板160Jに変更したものである。
【0110】
給電素子127と給電素子128とは、X軸方向から見て互いに重複する位置に、X軸方向に所定間隔を隔てて配置される。給電素子127は、Y偏波用の給電点SP3と、Z偏波用の給電点SP4とを備える。給電素子128は、Y偏波用の給電点SP7と、Z偏波用の給電点SP8とを備える。
【0111】
フレキシブル基板160Jは、第1線路146a、第2線路146b、第3線路146c、および第4線路146dを備える。第1線路146aは、給電素子127のY偏波用の給電点SP3に接続される。第2線路146bは、給電素子127のZ偏波用の給電点SP4に接続される。第3線路146cは、給電素子128のZ偏波用の給電点SP8に接続される。第4線路146dは、給電素子128のY偏波用の給電点SP7に接続される。
【0112】
図24は、フレキシブル基板160Jにおける
図23のXXIV-XXIVの部分断面図である。
図24に示すように、第1線路146aおよび第3線路146cは、どちらも同じ層、すなわち接地電極GNDよりも第2面161b側(
図24中の上側)の層に設けられる。第2線路146bおよび第4線路146dは、どちらも同じ層、すなわち接地電極GNDよりも第1面161a側(
図24中の下側)の層に設けられる。なお、給電素子127、給電素子127の給電点SP3、および給電素子127の給電点SP4は、本開示の「第1素子」、「第1素子の第1給電点」、「第1素子の第2給電点」にそれぞれ対応し得る。また、給電素子128、給電素子128の給電点SP7、および給電素子128の給電点SP8は、本開示の「第2素子」、「第2素子の第1給電点」、「第2素子の第2給電点」にそれぞれ対応し得る。また、第1線路146a、第2線路146b、第3線路146c、および第4線路146dは、本開示の「第1線路」、「第2線路」、「第3線路」、および「第4線路」にそれぞれ対応し得る。
【0113】
このような配置により、給電素子127のY偏波とZ偏波との間のアイソレーション(第1線路146aと第2線路146bとの間のアイソレーション)、および、給電素子128のY偏波とZ偏波との間のアイソレーション(第3線路146cと第4線路146dとの間のアイソレーション)を確保することができる。さらに、給電素子127,128のY偏波間のアイソレーション(第1線路146aと第4線路146dとの間のアイソレーション)、および、給電素子127,128のZ偏波間のアイソレーション(第2線路146bと第3線路146cとの間のアイソレーション)も確保することができる。
【0114】
図25は、本変形例7-4の他の例によるアンテナ装置120FをX軸の正方向から見たときの図である。アンテナ装置120Fは、上述のアンテナ装置120に対して、給電素子121a2のY軸の正方向側にシングル偏波タイプの給電素子121a3を追加するとともに、フレキシブル基板160をフレキシブル基板160Kに変更したものである。
【0115】
フレキシブル基板160Kは、第1線路147a、第2線路147b、および第3線路147cを備える。第1線路147aは、給電素子121a1の給電点SP1に接続される。第2線路147bは、給電素子121a2の給電点SP1に接続される。第3線路147cは、給電素子121a3の給電点SP1に接続される。
【0116】
図26は、フレキシブル基板160Kにおける
図25のXXVI-XXVIの部分断面図である。
図26に示すように、第1線路147aおよび第3線路147cは、どちらも同じ層、すなわち接地電極GNDよりも第2面161b側(
図26中の上側)の層に設けられる。第2線路147bは、接地電極GNDよりも第1面161a側(
図26中の下側)の層に設けられる。
【0117】
このような配置により、互いに隣り合う給電素子間のアイソレーション(第1線路147aと第2線路147bとの間のアイソレーション、および、第2線路147bと第3線路146cとの間のアイソレーション)を確保することができる。
【0118】
<変形例8>
上述の実施の形態によるアンテナモジュール100は、フレキシブル基板160と給電素子121a(121a1,121a2)とを含む。しかしながら、給電素子は必ずしもアンテナモジュールの内部に配置されることに限定されず、給電素子がアンテナモジュールの外部に配置されていてもよい。
【0119】
図27は、本変形例8によるアンテナモジュール100Gを備える通信装置10GをY軸の正方向から見たときの断面図である。通信装置10Gは、アンテナモジュール100Gと、誘電体基板131Gとを備える。アンテナモジュール100Gは、RFIC110と、フレキシブル基板160Lとを備える。
【0120】
フレキシブル基板160Lは、上述の実施の形態によるフレキシブル基板160に対して、誘電体基板130、131を取り除くとともに、出力端子T1,T2を追加したものである。出力端子T1は、第1線路141の端部に接続される。出力端子T2は、第2線路142の端部に接続される。
【0121】
誘電体基板131Gには、給電素子121a1,121a2が配置される。誘電体基板131Gは、通信装置10Gの全体を覆おう筐体10aの側壁に配置される。給電素子121a1,121a2は、ポゴピンP1,P2を介して、アンテナモジュール100Gの出力端子T1,T2にそれぞれ接続される。
【0122】
すなわち、本変形例8においては、給電素子121a1,121a2がアンテナモジュール100Gの外部に配置されている。そして、アンテナモジュール100Gには、外部の給電素子121a1,121a2に接続するための出力端子T1,T2が備えられる。出力端子T1,T2は、ポゴピンP1,P2によって、給電素子121a1,121a2にそれぞれ接続される。
【0123】
このように、給電素子121a1,121a2をアンテナモジュール100Gの外部の筐体10aに配置し、アンテナモジュール100Gの出力端子T1,T2をたとえばポゴピンP1,P2により筐体10aの給電素子121a1,121a2に接続するようにしてもよい。なお、出力端子T1,T2は、本開示の「第1端子」、「第2端子」にそれぞれ対応し得る。
【0124】
なお、上述の
図27においては給電素子121a1,121a2が筐体10aの側壁に配置される誘電体基板131Gに設けられる例が示されるが、筐体10aの側壁の一部または全部を誘電体で形成して、給電素子121a1,121a2を筐体10aの側壁に埋め込むようにしてもよい。
【0125】
また、本変形例8は、上述の
図16~
図21、
図23、
図25に示すアンテナ装置にも適
用することができる。たとえば、上述の
図21に示すように第1~第4線路145a~145dを備えるアンテナ装置120Dに対しては、給電素子123a1,123a2をアンテナモジュールの外部に配置するとともに、第1~第4線路145a~145dの端部にそれぞれ接続される第1~第4出力端子を設け、第1~第4出力端子をたとえば4つのポゴピンにより各給電素子123a1,123a2の給電点SP3,SP4にそれぞれ接続するようにすればよい。
【0126】
<変形例9>
上述の実施の形態においては、RFIC110と給電素子121との接続にフレキシブル基板160を用いる例について説明した。しかしながら、フレキシブル基板160の用途は、RFIC110と給電素子121との接続に限定されるものではない。たとえば、RFIC110とBBIC200との接続にフレキシブル基板160を用いるようにしてもよい。
【0127】
また、フレキシブル基板160をアンテナモジュール以外に適用するようにしてもよい。たとえば、撮像素子およびマザーボードを備えるカメラにフレキシブル基板160を適用する場合には、撮像素子とマザーボードとの接続にフレキシブル基板160を適用するようにしてもよい。
【0128】
<変形例10>
上述の実施の形態においては、フレキシブル基板160がアンテナモジュールに搭載され、曲げられた状態で示されている。しかしながら、アンテナモジュールに搭載される前の単品の状態(曲げられていない状態)のフレキシブル基板160であっても、本開示の「フレキシブル基板」に対応する。
【0129】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0130】
10,10G 通信装置、10a 筐体、20 実装基板、21 主面、22 側面、100,100G アンテナモジュール、111A~113D,117 スイッチ、112AR~112DR ローノイズアンプ、112AT~112DT パワーアンプ、114A~114D 減衰器、115A~115D 移相器、116 信号合成/分波器、118 ミキサ、119 増幅回路、120,120A,120B,120C1,120C2,120C3,120D,120E,120F アンテナ装置、121,121a,121a1,121a2,121a3,121b,123,123a1,123a2,124,125,127,128 給電素子、130,131,131G 誘電体基板、141,141A,141E,141F1,141F2,141G,141H,145a,146a,147a 第1線路、142,142A,142E,142F1,142F2,142G,142H,145b,146b,147b 第2線路、145c,146c,147c 第3線路、145d,146d 第4線路、141a,141Aa,142a,142Aa 線対称部分、141Ab,142Ab 平行部分、141Ac,142Ac 傾斜部分、151,152 ダイポールアンテナ、153 アンテナ、160,160A,160B,160C2,160C1,160D,160E,160F1,160F2,160G,160H,160I,160J,160K,160L フレキシブル基板、161 誘電体、161a 第1面、161b 第2面、162 ビア、GND,GND1,GND2,GND3,GND4,GND5,GND6 接地電極、P1,P2 ポゴピン、T1,T2 出力端子。