(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ドリルヘッド及びドリル
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B23B51/00 T
B23B51/00 L
(21)【出願番号】P 2022528720
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2021041746
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2020208320
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 竜勢
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】西 健太
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-523073(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150459(WO,A1)
【文献】特開2011-005631(JP,A)
【文献】特表2016-508889(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006005880(DE,A1)
【文献】特開2005-161462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0274794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00 - 51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転されるドリルヘッドであって、
ホルダに取り付けられる第1取り付け面と、前記中心軸に沿う軸方向において前記第1取り付け面の反対側にあるヘッド先端面と、前記第1取り付け面及び前記ヘッド先端面に連なるヘッド外周面とを備え、
前記ヘッド外周面には、前記ヘッド先端面から前記第1取り付け面に達するように前記中心軸回りの螺旋状に延びている第1フルート及び第2フルートが形成されており、
前記第1フルート及び前記第2フルートは、前記中心軸に関して、対称に形成されており、
前記中心軸に沿い、かつ前記第1取り付け面から前記ヘッド先端面に向かう方向に前記第1取り付け面を見た際に、前記第1フルート及び前記第2フルートの各々は、前記中心軸を中心とする円周に沿う周方向において間隔を空けて互いに対向している第1端及び第2端を前記第1取り付け面に有しており、
前記第1取り付け面には、前記軸方向に直交している径方向に沿って延びている第1凸条、第2凸条及び第3凸条が形成されており、
前記第1凸条は、前記周方向において、前記第1フルートの前記第1端と前記第2フルートの前記第2端との間にあり、
前記第2凸条及び前記第3凸条は、前記周方向において、前記第1フルートの前記第2端と前記第2フルートの前記第1端との間にあり、
前記第2凸条は、前記周方向において、前記第3凸条よりも前記第1フルートの前記第2端の近くにあり、
前記周方向における前記第1凸条の中央を通る仮想直線と前記中心軸及び前記第1フルートの前記第1端を通る仮想直線とがなす角度は、前記周方向における前記第1凸条の中央を通る仮想直線と前記中心軸及び前記第2フルートの前記第2端を通る仮想直線とがなす角度に等しい、ドリルヘッド。
【請求項3】
前記周方向における前記第1凸条の中央を通る仮想直線と前記周方向における前記第2凸条の中央を通る仮想直線とがなす角度は、150°以上170°以下であり、
前記周方向における前記第1凸条の中央を通る仮想直線と前記周方向における前記第3凸条の中央を通る仮想直線とがなす角度は、150°以上170°以下である、請求項1又は請求項2に記載のドリルヘッド。
【請求項5】
前記中心軸に沿い、かつ前記第1取り付け面から前記ヘッド先端面に向かう方向に前記第1取り付け面を見た際に、前記第1フルートは、前記第1フルートと前記ヘッド外周面との交線が前記第1フルートの前記第2端から前記周方向に沿って時計回りに延びるようにねじれており、
前記周方向における前記第2凸条の中央を通る仮想直線と前記中心軸及び前記第1フルートの前記第2端を通る仮想直線とがなす角度は、前記周方向における前記第3凸条の中央を通る仮想直線と前記中心軸及び前記第2フルートの前記第1端を通る直線とがなす角度よりも大きい、請求項4に記載のドリルヘッド。
【請求項7】
前記ホルダと、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の前記ドリルヘッドとを備え、
前記ホルダは、前記第1取り付け面に接触している第2取り付け面を有し、
前記第2取り付け面には、前記径方向に沿って延びている第1溝、第2溝及び第3溝が形成されており、
前記第1溝、前記第2溝及び前記第3溝は、それぞれ、前記第1凸条、前記第2凸条及び前記第3凸条に嵌め合わされている、ドリル。
【請求項8】
ドリルヘッドと、
ホルダと、
固定部材とを備え、
前記ドリルヘッドは、前記ホルダに取り付けられる第1取り付け面と、前記ドリルヘッドの中心軸に沿う軸方向において前記第1取り付け面の反対側にあるヘッド先端面と、前記第1取り付け面及び前記ヘッド先端面に連なるヘッド外周面と、前記軸方向に沿って前記第1取り付け面から延びているシャンク軸とを有しており、
前記ヘッド外周面には、前記ヘッド先端面から前記第1取り付け面に達するように前記中心軸回りの螺旋状に延びている第1フルート及び第2フルートが形成されており、
前記第1フルート及び前記第2フルートは、前記中心軸に関して、対称に形成されており、
前記中心軸に沿い、かつ前記第1取り付け面から前記ヘッド先端面に向かう方向に前記第1取り付け面を見た際に、前記第1フルート及び前記第2フルートの各々は、前記中心軸を中心とする円周に沿う周方向において間隔を空けて互いに対向している第1端及び第2端を前記第1取り付け面に有しており、
前記第1取り付け面には、前記軸方向に直交している径方向に沿って延びている第1凸条、第2凸条及び第3凸条が形成されており、
前記第1凸条は、前記周方向において、前記第1フルートの前記第1端と前記第2フルートの前記第2端との間にあり、
前記第2凸条及び前記第3凸条は、前記周方向において、前記第1フルートの前記第2端と前記第2フルートの前記第1端との間にあり、
前記第2凸条は、前記周方向において、前記第3凸条よりも前記第1フルートの前記第2端の近くにあり、
前記周方向における前記第1凸条の中央を通る仮想直線と前記中心軸及び前記第1フルートの前記第1端を通る仮想直線とがなす角度は、前記周方向における前記第1凸条の中央を通る仮想直線と前記中心軸及び前記第2フルートの前記第2端を通る仮想直線とがなす角度に等しく、
前記シャンク軸には、切り欠きが形成されており、
前記ホルダは、前記第1取り付け面に接触している第2取り付け面と、前記第2取り付け面に連なるホルダ外周面とを有しており、
前記第2取り付け面には、前記シャンク軸が挿入される第1穴と、前記径方向に沿って延びている第1溝、第2溝及び第3溝が形成されており、
前記第1溝、前記第2溝及び前記第3溝は、それぞれ、前記第1凸条、前記第2凸条及び前記第3凸条に嵌め合わされており、
前記ホルダ外周面には、前記第1穴と連なる第2穴が形成されており、
前記固定部材は、前記第2穴に挿入されることにより、前記切り欠きに接触している、ドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドリルヘッド及びドリルに関する。本出願は、2020年12月16日に出願した日本特許出願である特願2020-208320号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(国際公開第2002/005990号)には、ドリルが記載されている。特許文献1のドリルは、切削ヘッドと、ホルダとを有している。切削ヘッドは、支承面を有している。ホルダは、前面を有している。
【0003】
支承面には、径方向に沿って延びている複数の突起が形成されている。複数の突起の各々は、径方向外側に向かうにしたがって高くなっている。前面には、径方向に沿って複数の凹所が形成されている。複数の凹所の各々は、径方向外側に向かうにしたがって深くなっている。切削ヘッドは、複数の突起の各々を複数の凹所の各々にそれぞれ嵌め合わせることにより、ホルダに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示のドリルヘッドは、中心軸回りに回転される。ドリルヘッドは、ホルダに取り付けられる第1取り付け面と、中心軸に沿う軸方向において第1取り付け面の反対側にあるヘッド先端面と、第1取り付け面及びヘッド先端面に連なるヘッド外周面とを備える。ヘッド外周面には、ヘッド先端面から第1取り付け面に達するように中心軸回りの螺旋状に延びている第1フルート及び第2フルートが形成されている。第1フルート及び第2フルートは、中心軸に関して対称に形成されている。中心軸に沿い、かつ第1取り付け面からヘッド先端面に向かう方向に第1取り付け面を見た際に、第1フルート及び第2フルートの各々は、中心軸を中心とする円周に沿う周方向において間隔を空けて互いに対向している第1端及び第2端を第1取り付け面に有している。第1取り付け面には、軸方向に直交している径方向に沿って延びている第1凸条、第2凸条及び第3凸条が形成されている。第1凸条は、周方向において、第1フルートの第1端と第2フルートの第2端との間にある。第2凸条及び第3凸条は、周方向において、第1フルートの第2端と第2フルートの第1端との間にある。第2凸条は、周方向において、第3凸条よりも第1フルートの第2端の近くにある。周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と中心軸及び第1フルートの第1端を通る仮想直線とがなす角度は、周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と中心軸及び第2フルートの第2端を通る仮想直線とがなす角度に等しい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載のドリルでは、ドリルの外径(切削ヘッドの外径)が小さくなるにしたがって、凹所の深さの最大値及び突起の高さの最大値が小さくなる。そのため、特許文献1に記載のドリルによると、ドリルの外径が小さくなるにしたがって凹所と突起との間の嵌め合わせ力が低下し、ホルダによる切削ヘッドの支持が不安定になるおそれがある。また、ドリルは、回転工具であるため、ホルダによる切削ヘッドの支持の安定性のみならず、工具バランスも維持される必要がある。ここで、工具バランスとは、回転工具の質量の分布を意味する。工具バランスは、回転工具の中心軸に垂直な断面における中心軸から質量までの距離及び質量の配置で決まる。工具バランスが良いとは、回転工具を所定の回転速度で回転させた際に回転工具にかかる遠心力が小さいことを意味する。工具バランスを維持するとは、回転工具の外径が小さくなっても工具バランスが良いことを意味する。
【0008】
本開示は、外径が小さくなってもホルダによる支持の安定性及び工具バランスを維持することが可能なドリルヘッドを提供する。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のドリルヘッドによると、外径が小さくなってもホルダによる支持の安定性及び工具バランスを維持することが可能である。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列記して説明する。
【0011】
(1)一実施形態に係るドリルヘッドは、中心軸回りに回転される。ドリルヘッドは、ホルダに取り付けられる第1取り付け面と、中心軸に沿う軸方向において第1取り付け面の反対側にあるヘッド先端面と、第1取り付け面及びヘッド先端面に連なるヘッド外周面とを備える。ヘッド外周面には、ヘッド先端面から第1取り付け面に達するように中心軸回りの螺旋状に延びている第1フルート及び第2フルートが形成されている。第1フルート及び第2フルートは、中心軸に関して対称に形成されている。中心軸に沿い、かつ、第1取り付け面からヘッド先端面に向かう方向に第1取り付け面を見た際に、第1フルート及び第2フルートの各々は、中心軸を中心とする円周に沿う周方向において間隔を空けて互いに対向している第1端及び第2端を第1取り付け面に有している。第1取り付け面には、軸方向に直交している径方向に沿って延びている第1凸条、第2凸条及び第3凸条が形成されている。第1凸条は、周方向において、第1フルートの第1端と第2フルートの第2端との間にある。第2凸条及び第3凸条は、周方向において第1フルートの第2端と第2フルートの第1端との間にある。第2凸条は、周方向において、第3凸条よりも第1フルートの第2端の近くにある。周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と中心軸及び第1フルートの第1端を通る仮想直線とがなす角度は、周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と中心軸及び第2フルートの第2端を通る仮想直線とがなす角度に等しい。
【0012】
上記(1)のドリルヘッドによると、外径が小さくなってもホルダによる支持の安定性及び工具バランスの維持が可能である。
【0013】
(2)上記(1)のドリルヘッドでは、周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と中心軸及び第1フルートの第1端を通る仮想直線とがなす角度が、30°以上70°以下であってもよい。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)のドリルヘッドでは、周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と周方向における第2凸条の中央を通る仮想直線とがなす角度が150°以上170°以下であってもよく、周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と周方向における第3凸条の中央を通る仮想直線とがなす角度が150°以上170°以下であってもよい。
【0015】
(4)上記(3)のドリルヘッドでは、周方向における第2凸条の中央を通る仮想直線と周方向における第3凸条の中央を通る仮想直線とがなす角度が20°以上60°以下であってもよい。
【0016】
上記(3)及び(4)のドリルヘッドによると、周方向における第1凸条、第2凸条及び第3凸条の配置が均等配置に近づくことにより、工具バランスが改善される。
【0017】
(5)上記(4)のドリルヘッドでは、中心軸に沿い、かつ第1取り付け面からヘッド先端面に向かう方向に第1取り付け面を見た際に、第1フルートが、第1フルートとヘッド外周面との交線が第1フルートの第2端から周方向に沿って時計回りに延びるようにねじれていてもよい。周方向における第2凸条の中央を通る仮想直線と中心軸及び第1フルートの第2端を通る仮想直線とがなす角度は、周方向における第3凸条の中央を通る仮想直線と中心軸及び第2フルートの第1端を通る直線とがなす角度よりも大きくてもよい。
【0018】
上記(5)のドリルヘッドによると、第2凸条に嵌め合わされる溝に加わる応力と第3凸条に嵌め合わされる溝に加わる応力とが均等化されるため、第2凸条に嵌め合わされる溝に摩耗が偏ることを抑制できる。
【0019】
(6)上記(5)のドリルヘッドでは、第1凸条の幅が、第2凸条の幅及び第3凸条の幅の1.1倍以上2.0倍以下であってもよい。
【0020】
上記(6)のドリルヘッドによると、第1凸条に嵌め合わされる溝に加わる応力と第2凸条に嵌め合わされる溝及び第3凸条に嵌め合わされる溝に加わる応力とを均等化することができるため、第1凸条に嵌め合わされる溝に摩耗が偏ることが抑制される。
【0021】
(7)本開示の一態様に係るドリルは、ホルダと、上記(1)から(6)のドリルヘッドとを備える。ホルダは、第1取り付け面に接触している第2取り付け面を有している。第2取り付け面には、径方向に沿って延びている第1溝、第2溝及び第3溝が形成されている。第1溝、第2溝及び第3溝は、それぞれ、第1凸条、第2凸条及び第3凸条に嵌め合わされている。
【0022】
(8)本開示の他の態様に係るドリルは、ドリルヘッドと、ホルダと、固定部材とを備える。ドリルヘッドは、ホルダに取り付けられる第1取り付け面と、ドリルヘッドの中心軸に沿う軸方向において第1取り付け面の反対側にあるヘッド先端面と、第1取り付け面及びヘッド先端面に連なるヘッド外周面と、軸方向に沿って第1取り付け面から延びているシャンク軸とを有している。ヘッド外周面には、ヘッド先端面から第1取り付け面に達するように中心軸回りの螺旋状に延びている第1フルート及び第2フルートが形成されている。第1フルート及び第2フルートは、中心軸に関して対称に形成されている。中心軸に沿い、かつ、第1取り付け面からヘッド先端面に向かう方向に第1取り付け面を見た際に、第1フルート及び第2フルートの各々は、中心軸を中心とする円周に沿う周方向において間隔を空けて互いに対向している第1端及び第2端を第1取り付け面に有している。第1取り付け面には、軸方向に直交している径方向に沿って延びている第1凸条、第2凸条及び第3凸条が形成されている。第1凸条は、周方向において、第1フルートの第1端と第2フルートの第2端との間にある。第2凸条及び第3凸条は、周方向において第1フルートの第2端と第2フルートの第1端との間にある。第2凸条は、周方向において第3凸条よりも第1フルートの第2端の近くにある。周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と周方向における第2凸条の中央を通る仮想直線とがなす角度は、周方向における第1凸条の中央を通る仮想直線と周方向における第3凸条の中央を通る仮想直線とがなす角度よりも大きい。シャンク軸には、切り欠きが形成されている。ホルダは、第1取り付け面に接触している第2取り付け面と、第2取り付け面に連なるホルダ外周面とを有している。第2取り付け面には、シャンク軸が挿入される第1穴と、径方向に沿って延びている第1溝、第2溝及び第3溝とが形成されている。第1溝、第2溝及び第3溝は、それぞれ、第1凸条、第2凸条及び第3凸条に嵌め合わされている。ホルダ外周面には、第1穴に連なる第2穴が形成されている。固定部材は、第2穴に挿入されることにより、切り欠きに接触している。
【0023】
上記(8)のドリルによると、第1取り付け面を第2取り付け面に取り付けることで、固定部材を用いて固定可能な位置にシャンク軸を位置決めすることができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0025】
(実施形態に係るドリルの構成)
実施形態に係るドリル(以下「ドリル100」とする)の構成を説明する。
【0026】
図1は、ドリル100の斜視図である。
図1に示されるように、ドリル100は、ドリルヘッド10と、ホルダ20と、固定部材30とを有している。ドリル100は、中心軸A回りに回転されることにより、切削加工を行う。ドリルヘッド10は、例えば、超硬合金により形成されている。ホルダ20及び固定部材30は、例えば、鋼により形成されている。中心軸Aに沿う方向において、ドリルヘッド10はドリル100の先端側にあり、ホルダ20はドリル100の基端側にある。中心軸Aに沿う方向において、ドリル100の基端側は、ドリル100の先端側の反対側にある。ドリル100は、ホルダ20において工作機械の主軸に取り付けられることにより、中心軸A回りに回転される。
【0027】
<ドリルヘッド10>
ドリルヘッド10は、ドリル100が中心軸A回りに回転される際に、中心軸A1回りに回転される。中心軸A1は、中心軸Aに一致している。以下においては、中心軸Aに沿う方向を軸方向とし、中心軸Aに直交する方向を径方向とし、中心軸Aに直交する面内において中心軸Aを中心とする円周に沿う方向を周方向とする。
図2は、ドリルヘッド10の正面図である。
図3は、ドリルヘッド10の背面図である。
図4は、ドリルヘッド10の側面図である。
図2、
図3及び
図4に示されるように、ドリルヘッド10は、第1取り付け面11と、ヘッド先端面12と、ヘッド外周面13とを有している。
【0028】
第1取り付け面11及びヘッド先端面12は、軸方向におけるドリルヘッド10の端面である。ドリルヘッド10は、第1取り付け面11において、ホルダ20に取り付けられる。ヘッド先端面12は、ドリル100の先端に位置している。ヘッド先端面12は、軸方向における第1取り付け面11の反対面である。ヘッド外周面13は、第1取り付け面11及びヘッド先端面12に連なっている。
【0029】
ヘッド外周面13には、第1フルート14及び第2フルート15が形成されている。ヘッド外周面13は、第1フルート14及び第2フルート15が形成されている部分において中心軸A1側に窪んでいる。第1フルート14及び第2フルート15は、ヘッド先端面12から第1取り付け面11に達するように、中心軸A1回りの螺旋状に延びている。第1フルート14及び第2フルート15は、中心軸A1に関して対称な形状に形成されている。
図2、
図3及び
図4に示される例では、第1フルート14及び第2フルート15は、軸方向に沿ってヘッド先端面12側から見た際に、ヘッド先端面12から第1取り付け面11に進むにしたがって、時計回りにねじれている。このことを別の観点から言えば、第1フルート及び第2フルートは、右ねじれになっている。このことをさらに別の観点から言えば、第1フルート及び第2フルートは、螺旋状に形成されている。
【0030】
ヘッド先端面12は、逃げ面12aと、逃げ面12bとを有している。逃げ面12aと第1フルート14とは、交差している。逃げ面12bと第2フルート15とは、交差している。逃げ面12aと第1フルート14との交差稜線は切れ刃16になっており、逃げ面12bと第2フルート15との交差稜線は切れ刃17になっている。切れ刃16及び切れ刃17は、ヘッド外周面13からヘッド先端面12の中心(ドリル100の先端)に向かって延びている。切れ刃16及び切れ刃17により切削された被削材(切り屑)は、それぞれ第1フルート14及び第2フルート15を通って排出される。すなわち、第1フルート14及び第2フルート15は、切り屑の排出のために形成されている溝である。
【0031】
第1フルート14は、第1端14aと第2端14bとを有している。第2端14bは、周方向において、間隔を空けて第1端14aと対向している。ヘッド外周面13において第1フルート14の延びる方向に沿って第2端14bからヘッド先端面12側に向かって移動すると、第2端14bは、切れ刃16のヘッド外周面13側の端に連なる。
【0032】
第2フルート15は、第1端15aと第2端15bとを有している。第2端15bは、周方向において、間隔を空けて第1端15aと対向している。ヘッド外周面13において第2フルート15の延びる方向に沿って第2端15bからヘッド先端面12側に向かって移動すると、第2端15bは、切れ刃17のヘッド外周面13側の端に連なる。
【0033】
第1取り付け面11には、第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cが形成されている。第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cは、径方向に沿って延びている。第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cは、ヘッド外周面13から中心軸A1側に向かって延びている。第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cは、第1取り付け面11から軸方向に沿って突出している。
【0034】
第1凸条11aは、周方向において、第1フルート14の第1端14aと第2フルート15の第2端15bとの間にある。第2凸条11b及び第3凸条11cは、周方向において、第1フルート14の第2端14bと第2フルート15の第1端15aとの間にある。周方向において、第2凸条11bは、第3凸条11cよりも第1フルート14の第2端14bの近くにある。このことを別の観点から言えば、第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cは、中心軸A1に関して、非対称に形成されている。
【0035】
図3に示されるように、第1取り付け面11において、第1凸条11aの周方向における中央を通る仮想直線を、仮想直線VL1とする。同様に、第2凸条11bの周方向における中央を通る仮想直線を仮想直線VL2とし、第3凸条11cの周方向における中央を通る仮想直線を仮想直線VL3とする。仮想直線VL1、仮想直線VL2及び仮想直線VL3は、それぞれ中心軸A1と直交する。
【0036】
図3に示されるように、第1フルート14の第1端14a及び中心軸A1を通る仮想直線を、仮想直線VL4とする。同様に、第1フルート14の第2端14b及び中心軸A1を通る仮想直線を仮想直線VL5とする。同様に、第2フルート15の第1端15a及び中心軸A1を通る仮想直線を仮想直線VL6とする。同様に、第2フルート15の第2端15b及び中心軸A1を通る仮想直線を仮想直線VL7とする。仮想直線VL4、仮想直線VL5、仮想直線VL6及び仮想直線VL7は、それぞれ中心軸A1と直交する。
【0037】
仮想直線VL1と仮想直線VL4とがなす角度θ1は、仮想直線VL1と仮想直線VL7とがなす角度θ2に等しい。但し、本発明の効果を奏する限りにおいて、角度θ1と角度θ2との間の微小な角度誤差は許容される。角度θ1及び角度θ2は、例えば30°以上70°以下である。
【0038】
仮想直線VL1と仮想直線VL2とがなす角度θ3は、仮想直線VL1と仮想直線VL3とがなす角度θ4よりも大きいことが好ましい。すなわち、第2凸条11b及び第3凸条11cは、仮想直線VL1に関して非対称に形成されていることが好ましい。角度θ3及び角度θ4は、150°以上170°以下であることが好ましい。
【0039】
仮想直線VL2と仮想直線VL3とがなす角度θ5は、20°以上60°以下であることが好ましい。なお、角度θ3、角度θ4及び角度θ5の合計は、360°になる。
【0040】
第1フルート14及び第2フルート15は、上記のとおり、ヘッド先端面12側から見て時計回りの螺旋状に形成されている。そのため、中心軸A1に沿い、かつ第1取り付け面11からヘッド先端面12に向かう方向に第1取り付け面11を見た際に、第1フルート14は、第1フルート14とヘッド外周面13との交線(
図3中のCL1)が第1フルート14の第2端14bから周方向に沿って時計回りに延びるようにねじれている。同様に、第2フルート15は、第2フルート15とヘッド外周面13との交線(
図3中のCL2)が、第2フルート15の第2端15bから周方向に沿って時計回りに延びるようにねじれている。仮想直線VL2と仮想直線VL5とがなす角度θ6は、仮想直線VL3と仮想直線VL6とがなす角度θ7よりも大きいことが好ましい。
【0041】
第1凸条11aの幅、第2凸条11bの幅及び第3凸条11cの幅を、それぞれ、第1幅、第2幅及び第3幅とする。第1幅、第2幅及び第3幅は、それぞれの凸条の延びる方向に直交する方向における幅であり、それぞれの凸条のヘッド外周面13側の端において測定される。第1幅は、好ましくは、第2幅及び第3幅よりも大きい。より具体的には、第1幅は、第2幅及び第3幅の1.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、第2幅は、例えば、第3幅に等しい。
【0042】
図4に示されるように、第1取り付け面11には、シャンク軸18が形成されている。シャンク軸18は、軸方向に沿って、第1取り付け面11の中心から延びている。後述する切り欠き18aが形成されている部分を除き、シャンク軸18の軸方向に直交する断面は、例えば円形である。
【0043】
シャンク軸18の外周面には、切り欠き18aが形成されている。切り欠き18aは、傾斜面18bを有している。傾斜面18bは、軸方向(シャンク軸18の延びる方向)に対して、傾斜している。より具体的には、傾斜面18bの法線ベクトルをV1とし、は、シャンク軸18の先端(第1取り付け面11とは反対側の端)からシャンク軸18の基端(第1取り付け面11側の端)に向かう方向の単位ベクトルをV2とする場合、V1とV2とがなす角度は、90°よりも小さい。このことを別の観点から言えば、傾斜面18bに交差し、かつシャンク軸18の軸方向に直交するシャンク軸18の断面の面積は、中心軸A1に沿ってシャンク軸18の先端側からシャンク軸18の基端側に進むにつれて、単調に減少している。
【0044】
ドリルヘッド10の外径を、外径Dとする。外径Dは、
図2に示されているように、軸方向に沿ってヘッド先端面12側から見た際のドリルヘッド10の外接円の直径である。外径Dは、15mm以下であることが好ましい。外径Dは、例えば、6mm以上である。
【0045】
<ホルダ20及び固定部材30>
図5は、ホルダ20の正面図である。
図6は、ホルダ20の斜視図である。
図5及び
図6に示されるように、ホルダ20は、軸方向に沿って延びている。ホルダ20は、第2取り付け面21と、ホルダ外周面22とを有している。ホルダ20は、中心軸A2周りに回転される。中心軸A2は、中心軸Aに一致している。
【0046】
第2取り付け面21はホルダ20の軸方向における端面である。第2取り付け面21には、第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21cが形成されている。第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21cは、径方向に沿って延びている。第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21cは、ヘッド外周面13から第2取り付け面21の中心側に向かって延びている。第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21cは、軸方向に沿って第2取り付け面21から窪んでいる。
【0047】
ホルダ外周面22は、第2取り付け面21に連なっている。ホルダ外周面22には、フルート23及びフルート24が形成されている。ホルダ外周面22は、フルート23及びフルート24が形成されている部分において、中心軸A2側に窪んでいる。フルート23及びフルート24は、ホルダ20の中心軸回りの螺旋状に形成されている。フルート23及びフルート24は、第2取り付け面21からドリル100の基端側に向かって延びている。フルート23及びフルート24は、第2取り付け面21側から見て、第1フルート14及び第2フルート15と同一方向にねじれている。すなわち、フルート23及びフルート23は、第2取り付け面21側から見て、時計回りにねじれている。フルート23及びフルート24は、それぞれ、第1フルート14及び第2フルート15に接続されている。
【0048】
フルート23は、第1端23aと、第2端23bとを有している。第2端23bは、周方向において、間隔を空けて第1端23aと対向している。第1端23aは第1端14aに対応するフルート23の周方向における端であり、第2端23bは第2端14bに対応するフルート23の周方向における端である。
【0049】
フルート24は、第1端24aと、第2端24bとを有している。第2端24bは、周方向において、間隔を空けて第1端24aと対向している。第1端24aは第1端15aに対応するフルート24の周方向における端であり、第2端24bは第2端15bに対応するフルート24の周方向における端である。
【0050】
第1溝21aは、周方向においてフルート23の第1端23aとフルート24の第2端24bとの間にある。第2溝21b及び第3溝21cは、周方向において、フルート23の第2端23bとフルート24の第1端24aとの間にある。周方向において、第2溝21bは、第3溝21cよりも、フルート23の第2端23bの近くにある。このことを別の観点から言えば、第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21cは、中心軸A2に関して、非対称に形成されている。
【0051】
図5に示されるように、第2取り付け面21において、第1溝21aの周方向における中央を通る仮想直線を、仮想直線VL8とする。同様に、第2溝21bの周方向における中央を通る仮想直線を、仮想直線VL9とする。同様に、第3溝21cの周方向における中央を通る仮想直線を、仮想直線VL10とする。仮想直線VL8、仮想直線VL9及び仮想直線VL10は、それぞれ中心軸A2と直交する。
【0052】
図5に示されるように、第2取り付け面21においてフルート23の第1端23a及び中心軸A2を通る仮想直線を、仮想直線VL11とする。同様に、フルート23の第2端23b及び中心軸A2を通る仮想直線を仮想直線VL12とする。同様に、フルート24の第1端24a及び中心軸A2を通る仮想直線を、仮想直線VL13とする。同様に、フルート24の第2端24b及び中心軸A2を通る仮想直線を、仮想直線VL14とする。仮想直線VL11、仮想直線VL12、仮想直線VL13及び仮想直線VL14は、それぞれ中心軸A2に直交する。
【0053】
仮想直線VL8と仮想直線VL11とがなす角度θ8及び仮想直線VL8と仮想直線VL14とがなす角度θ9は、それぞれ角度θ1及び角度θ2に等しい。仮想直線VL8と仮想直線VL9とがなす角度θ10及び仮想直線VL8と仮想直線VL10とがなす角度θ11は、それぞれ角度θ4及び角度θ5に等しい。その結果、第1溝21aが第1凸条11aと対向している場合、第2溝21b及び第3溝21cがそれぞれ第2凸条11b及び第3凸条11cに対向している。なお、仮想直線VL9と仮想直線VL10とがなす角度θ12は、角度θ5に等しい。
【0054】
第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21cは、それぞれ第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cと嵌め合わせが可能な形状になっている。そのため、第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21cがそれぞれ第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cと対向するように第1取り付け面11を第2取り付け面21に接触させることにより、ドリルヘッド10がホルダ20に取り付けられる。
【0055】
フルート23及びフルート24は、上記のとおり、第2取り付け面21側から見て時計回りの螺旋状に形成されている。そのため、中心軸A2に沿い、かつ第2取り付け面21からホルダ20の基端側(すなわち、ドリル100の基端側)に向かう方向に第2取り付け面21を見た際に、フルート23は、フルート23とホルダ外周面22との交線が、フルート23の第1端23aから周方向に沿って時計回りに延びるようにねじれている。同様に、フルート24は、フルート24とホルダ外周面22との交線が、フルート24の第1端24aから周方向に沿って時計回りに延びるようにねじれている。
【0056】
仮想直線VL9と仮想直線VL12とがなす角度θ13及び仮想直線VL10と仮想直線VL13とがなす角度θ14は、それぞれ、角度θ6及び角度θ7に等しい。
【0057】
第1溝21aの幅、第2溝21bの幅及び第3溝21cの幅を、それぞれ第4幅、第5幅及び第6幅とする。第4幅、第5幅及び第6幅は、それぞれの溝の延びる方向に直交する方向における幅であり、それぞれの溝のホルダ外周面22側の端において測定される。第4幅は、第5幅及び第6幅よりも大きいことが好ましい。より具体的には、第4幅は、第5幅及び第6幅の1.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。なお、第5幅は、例えば、第6幅に等しい。
【0058】
第2取り付け面21には、第1穴21dが形成されている。第1穴21dは、第2取り付け面21の中心部に形成されている。第1穴21dは、軸方向に沿って延びている。ドリルヘッド10がホルダ20に取り付けられている状態において、シャンク軸18は、第1穴21dに挿入されている。
【0059】
ホルダ外周面22には、第2穴25が形成されている。第2穴25は、第1穴21dに連なっている。第2穴25は、傾斜面18bに交差する方向に延びている。第2穴25の延びる方向に沿ってホルダ外周面22を見た際に、第2穴25からは、傾斜面18bが露出している。
【0060】
第2穴25には、固定部材30が挿入されている。より具体的には、第2穴25の内壁面には、ねじ溝が形成されており、固定部材30は、軸にねじ山が形成されているボルトである。固定部材30を第2穴25に回し入れることにより、固定部材30が第2穴25に挿入されている。固定部材30が回転されることにより、固定部材30は、第2穴25の延びる方向に沿って第2穴25内を進み、傾斜面18bに接触する。これによりシャンク軸18が第1穴21dの先端(第2取り付け面21とは反対側の端)側に引き込まれ、ドリルヘッド10がホルダ20に固定される。
【0061】
(実施形態に係るドリルの効果)
以下に、ドリル100の効果を説明する。
【0062】
第1取り付け面11には、第1溝21aに嵌め合わされる第1凸条11aと、第2溝21bに嵌め合わされる第2凸条11bと、第3溝21cに嵌め合わされる第3凸条11cとが形成されている。そのため、ドリルヘッド10は、ホルダ20に取り付けられた状態において、3点支持されている。そのため、ドリルヘッド10は、ホルダ20に安定的に支持されていることになる。
【0063】
例えば特許文献1に記載されているように、ホルダ20との嵌め合わせ力を確保するために、第1取り付け面11に径方向外側に向かうにしたがって高くなる多数の凸条を形成するとともに、第2取り付け面21に径方向外側に向かうにしたがって深くなる多数の溝を形成することが考えられる。しかしながら、以下の理由から、ドリルヘッド10を小径化した場合には、多数の凸条を形成することが困難になる。仮に、凸条の数と高さを保ちつつドリルヘッド10を小径化すると、周方向における凸条の幅が小さくなる。そうすると、凸条の機械的な強度が低下するため、第1取り付け面11に対して凸条を低くする必要が生じる。この場合、凸条が低くなるとともに対応する溝も浅くなる。その結果、凸条と溝との間の嵌め合わせ力が低下するおそれがある。すなわち、ホルダ20によるドリルヘッド10の支持が不安定化するおそれがある。
【0064】
他方で、ドリル100では、第1取り付け面11に形成されている3本の凸条(第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11c)及び第2取り付け面21に形成されている3本の溝(第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21c)による3点支持でドリルヘッド10がホルダ20に支持されるため、ドリルヘッド10の外径が小さい場合でも安定に支持できる。
【0065】
ドリルヘッド10では、角度θ1と角度θ2とが等しくなっている。また、ホルダ20では、角度θ8及び角度θ9が、それぞれ角度θ1及び角度θ2に等しくなっている。つまり、ドリル100では、第1凸条11aが周方向において第1フルート14と第2フルート15との中間に配置されているとともに、第1溝21aが周方向においてフルート23とフルート24との中間に配置されていることになる。そのため、ドリル100によると、工具バランスを維持することができる。
【0066】
角度θ3及び角度θ4が150°以上170°以下である場合(角度θ5が20°以上60°以下である場合)、第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11c(第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21c)の周方向における配置が均等配置に近くなる。そのため、この場合には、ドリル100の工具バランスがさらに改善される。
【0067】
図7は、ドリル100の拡大斜視図である。
図7に示されているように、ホルダ20では、中心軸A2に沿い、かつ第2取り付け面21からホルダ20の基端側(すなわち、ドリル100の基端側)に向かう方向DRに第2取り付け面21を見た際に、フルート23は、フルート23とホルダ外周面22との交線がフルート23の第1端23aから周方向に沿って時計回りに延びるようにねじれている。同様に、フルート24は、フルート24とホルダ外周面22との交線がフルート24の第1端24aから周方向に沿って時計回りに延びるようにねじれている。
【0068】
上記のようにフルート23及びフルート24が配置されているため、フルート23に対する第2溝21b近傍の肉厚は、フルート24に対する第3溝21c近傍の肉厚と比べて小さくなる。より具体的には、方向DRに沿った第2溝21bの最深部とフルート23との最短距離である厚さT23が、方向DRに沿った第3溝21cの最深部とフルート24との最短距離であるT24(図示せず)より小さくなる。したがって、第2溝21b近傍の応力は、第3溝21c近傍の応力よりも大きくなりやすい。第2溝21b近傍の応力を緩和させるため、ドリルヘッド10において角度θ6を角度θ7よりも大きくし、対応してホルダ20において角度θ13が角度θ14よりも大きい場合には、フルート23に対する第2溝21b近傍の周方向及び軸方向の肉厚が大きくなる。そのため、この場合、第2溝21bに加わる応力が緩和される。その結果、第2溝21bに摩耗が偏ることが抑制される。
【0069】
フルート23の第1端23aとフルート24の第2端24bとの間では1本の溝(第1溝21a)により切削力が支持されており、フルート23の第2端23bとフルート24の第1端24aとの間では2本の溝(第2溝21b及び第3溝21c)により切削力が支持されているため、第1溝21aには、第2溝21b及び第3溝21cよりも応力が加わりやすい。そのため、第1幅が第2幅及び第3幅よりも大きい(第4幅が第5幅及び第6幅よりも大きい)場合には、第1溝21a近傍の応力が緩和される。その結果、第1溝21aに摩耗が偏ることが抑制される。
【0070】
第1フルート14の第1端14aと第2フルート15の第2端15bとの間には1本の凸条(第1凸条11a)があり、第1フルート14の第2端14bと第2フルート15の第1端15aとの間では2本の凸条(第2凸条11b及び第3凸条11c)がある。そのため、第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cの配置は、中心軸A1に関して非対称である。角度θ3及び角度θ4が互いに異なる場合、第2凸条11b及び第3凸条11cの配置は、仮想直線VL1に関して非対称になる。すなわち、第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cが第1溝21a、第2溝21b及び第3溝21cにそれぞれ嵌め合わされる場合以外は、ドリルヘッド10をホルダ20に取り付けることができない。
【0071】
そのため、角度θ3及び角度θ4が互いに異なる場合には、第1凸条11a、第2凸条11b及び第3凸条11cにより、ドリルヘッド10のホルダ20に対する位置決めが可能となる。このことを別の観点から言えば、ドリルヘッド10がホルダ20に取り付けられれば傾斜面18bが必ず第2穴25から露出することになるため、固定部材30によりドリルヘッド10を引き込みながら固定するために切り欠き18aを複数箇所に形成する必要がない。すなわち、切り欠き18aの形成に伴うシャンク軸18の剛性低下を抑制できる。
【0072】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
100 ドリル、10 ドリルヘッド、11 第1取り付け面、11a 第1凸条、11b 第2凸条、11c 第3凸条、12 ヘッド先端面、12a,12b 逃げ面、13 ヘッド外周面、14 第1フルート、14a 第1端、14b 第2端、15 第2フルート、15a 第1端、15b 第2端、16,17 切れ刃、18 シャンク軸、18a 切り欠き、18b 傾斜面、20 ホルダ、21 第2取り付け面、21a 第1溝、21b 第2溝、21c 第3溝、21d 第1穴、22 ホルダ外周面、23 フルート、23a 第1端、23b 第2端、24 フルート、24a 第1端、24b
第2端、25 第2穴、30 固定部材、A,A1,A2 中心軸、D 外径、DR 方向、T23,T24 厚さ、VL1,VL2,VL3,VL4,VL5,VL6,VL7,VL8,VL9,VL10,VL11,VL12,VL13,VL14 仮想直線、θ1,θ2,θ3,θ4,θ5,θ6,θ7,θ8,θ9,θ10,θ11,θ12,θ13,θ14 角度。
【要約】
ドリルヘッドは、ホルダに取り付けられる第1取り付け面と、中心軸に沿う軸方向において第1取り付け面の反対側にあるヘッド先端面と、第1取り付け面及びヘッド先端面に連なるヘッド外周面とを備えている。ヘッド外周面には、ヘッド先端面から第1取り付け面に達するように中心軸回りの螺旋状に延びている第1フルート及び第2フルートが形成されている。第1フルート及び第2フルートは、中心軸に関して対称に形成されている。第1フルート及び第2フルートの各々は、中心軸を中心とする円周に沿う周方向において間隔を空けて互いに対向している第1端及び第2端を有している。第1取り付け面には、軸方向に直交している径方向に沿って延びている第1凸条、第2凸条及び第3凸条が形成されている。