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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】梁の接続構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
E04B1/348 T
E04B1/348 X
E04B1/348 H
E04B1/348 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019078851
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020176432
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】飯島 秀一郎
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-052436(JP,A)
【文献】特開昭51-127518(JP,A)
【文献】特開2009-155986(JP,A)
【文献】特開2000-352116(JP,A)
【文献】特開2004-150154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04B 1/24
E04B 1/348
E04B 1/38-1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ユニットの躯体を構成する異なる梁の端部同士を接続する接続部と、
前記梁の延在方向から見て当該梁と重なる範囲において前記接続部に設けられると共に吊り具で保持可能な被保持部と、
を有し、
前記接続部は、一つの前記端部が接合された接合壁部を複数備えると共に、
前記被保持部は、複数の前記接合壁部と環を構成した状態で当該接合壁部における前記端部が接合された面と反対側の面同士に架け渡されており、
前記接続部は、第1の梁が接合された前記接合壁部としての第1接合壁部と、当該第1の梁と交差する方向に延びる第2の梁が接合されると共に当該第1接合壁部と連続する前記接合壁部としての第2接合壁部と、を備えた板状とされ、
前記被保持部は、前記第1接合壁部の前記第2接合壁部と反対側の第1端部における建物上方側の部分と当該第2接合壁部の当該第1接合壁部と反対側の第2端部における建物上方側の部分とを繋ぐ第1被保持部と、当該第1端部における建物下方側の部分と当該第2端部における建物下方側の部分とを繋ぐ第2被保持部と、を備えている、
梁の接続構造。
【請求項2】
建物ユニットの躯体を構成する異なる梁の端部同士を接続する接続部と、
前記梁の延在方向から見て当該梁と重なる範囲において前記接続部に設けられると共に吊り具で保持可能な被保持部と、
を有し、
前記接続部は、一つの前記端部が接合された接合壁部を複数備えると共に、
前記被保持部は、複数の前記接合壁部と環を構成した状態で当該接合壁部における前記端部が接合された面と反対側の面同士に架け渡されており、
前記接続部は、第1の梁が接合された前記接合壁部としての第1接合壁部と、当該第1の梁と交差する方向に延びる第2の梁が接合されると共に当該第1接合壁部と連続する前記接合壁部としての第2接合壁部と、当該第2の梁と交差する方向に延びる第3の梁が接合されると共に当該第2接合壁部と連続する第3接合壁部を備えた板状とされ、
前記被保持部は、前記第1接合壁部の前記第2接合壁部と反対側の第1端部における建物上方側の部分と前記第3接合壁部の当該第2接合壁部と反対側の第2端部における建物上方側の部分とを繋ぐ第1被保持部と、当該第1端部における建物下方側の部分と当該第2端部における建物下方側の部分とを繋ぐ第2被保持部と、を備えている、
梁の接続構造。
【請求項3】
建物ユニットの躯体を構成する異なる梁の端部同士を接続する接続部と、
前記梁の延在方向から見て当該梁と重なる範囲において前記接続部に設けられると共に吊り具で保持可能な被保持部と、
を有し、
前記接続部は、一つの前記端部が接合された接合壁部を複数備えると共に、
前記被保持部は、複数の前記接合壁部と環を構成した状態で当該接合壁部における前記端部が接合された面と反対側の面同士に架け渡されており、
前記接続部は、第1の梁が接合された前記接合壁部としての第1接合壁部と、当該第1の梁と交差する方向に延びる第2の梁が接合されると共に当該第1接合壁部と連続する前記接合壁部としての第2接合壁部と、を備えた板状とされ、
前記被保持部は、前記第1接合壁部と前記第2接合壁部とを繋ぐと共に当該第1接合壁部と当該第2接合壁部との境界部と反対側に凸となって屈曲又は湾曲した筒状又は棒状とされている、
梁の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物ユニットに関する発明が開示されている。この建物ユニットでは、柱の下端部の側面に溶接された溝形鋼製のジョイントピースに床大梁が接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-193362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の先行技術では、建物ユニットを吊り作業等によって移動させるときには、柱等に別途吊具を取り付けるための部材が必要となる。一方で、建物ユニットを移動させた後では吊具を取り付けるための部材が不要となるため、この部材を建物ユニットから取り外す作業が必要となる。このため、上記特許文献1に記載の先行技術は、吊り作業の簡略化を図るという点においては改善の余地が有る。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、吊り作業の簡略化を図ることができる梁の接続構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る梁の接続構造は、建物ユニットの躯体を構成する異なる梁の端部同士を接続する接続部と、前記梁の延在方向から見て当該梁と重なる範囲において前記接続部に設けられると共に吊り具で保持可能な被保持部と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る梁の接続構造では、接続部によって建物ユニットの躯体を構成する異なる梁の端部同士が接続されている。
【0008】
ところで、建物ユニットを吊り作業等によって移動させるときには、建物ユニットの躯体に別途吊具を取り付けるための部材が必要となる。一方で、建物ユニットを移動させた後では、吊具を取り付けるための部材が不要となるため、この部材を建物ユニットから取り外す作業が必要となる。
【0009】
ここで、本態様では、接続部に吊り具で保持可能な被保持部が設けられており、吊り具で被保持部を保持した状態で建物ユニットの吊り作業を行うことができる。しかも、被保持部は、梁の延在方向から見て当該梁と重なる範囲に位置しており、被保持部の周辺に配置される部品に対して当該被保持部が影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、本態様では、被保持部を建物ユニットから除去することなく、建物ユニットの吊り作業を完了することができる。
【0010】
第2の態様に係る梁の接続構造は、第1の態様に係る梁の接続構造において、前記接続部は、一つの前記端部が接合された接合壁部を複数備えると共に、前記被保持部は、複数の前記接合壁部と環を構成した状態で当該接合壁部における前記端部が接合された面と反対側の面同士に架け渡されている。
【0011】
第2の態様に係る梁の接続構造では、接続部が接合壁部を複数備えており、これらの接合壁部にはそれぞれ一つの梁の端部が接合されている。一方、被保持部は、接合壁部における梁の端部が接合された面の反対の面同士に架け渡されており、これらの接合壁部と共に環を構成している。このため、被保持部を安定した状態で建物ユニットの躯体に固定することができると共に、被保持部の一部が開放されているような構成に比し、安定した状態で被保持部を吊り具で保持することができる。
【0012】
第3の態様に係る梁の接続構造は、第2の態様に係る梁の接続構造において、前記接続部は、第1の梁が接合された前記接合壁部としての第1接合壁部と、当該第1の梁と交差する方向に延びる第2の梁が接合されると共に当該第1接合壁部と連続する前記接合壁部としての第2接合壁部と、を備えた板状とされ、前記被保持部は、前記第1接合壁部の前記第2接合壁部と反対側の第1端部における建物上方側の部分と当該第2接合壁部の当該第1接合壁部と反対側の第2端部における建物上方側の部分とを繋ぐ第1被保持部と、当該第1端部における建物下方側の部分と当該第2端部における建物下方側の部分とを繋ぐ第2被保持部と、を備えている。
【0013】
第3の態様に係る梁の接続構造では、接続部が、第1接合壁部と、当該第1接合壁部と連続する第2接合壁部とを備えた板状とされている。そして、第1接合壁部には第1の梁が接合されており、第2接合壁部には第1の梁と交差する方向に延びる第2の梁が接合されている。
【0014】
また、被保持部は、第1被保持部と第2被保持部とを備えている。そして、第1被保持部は、第1接合壁部の第2接合壁部と反対側の第1端部における建物上方側の部分と第2接合壁部の第1接合壁部と反対側の第2端部における建物上方側の部分とを繋いでいる。一方、第2被保持部は、第1端部における建物下方側の部分と第2端部の建物下方側の部分とを繋いでいる。
【0015】
このため、第1接合壁部、第2接合壁部及び第1被保持部で環が構成されると共に、第1接合壁部、第2接合壁部及び第2被保持部で環が構成される。その結果、第1被保持部及び第2被保持部の少なくとも一方を吊り具によって安定した状態で保持することができる。
【0016】
また、第1被保持部及び第2被保持部によって第1接合壁部の第1端部と第2接合壁部の第2端部とが連結されており、接続部を補強することができる。
【0017】
第4の態様に係る梁の接続構造は、第2の態様に係る梁の接続構造において、前記接続部は、第1の梁が接合された前記接合壁部としての第1接合壁部と、当該第1の梁と交差する方向に延びる第2の梁が接合されると共に当該第1接合壁部と連続する前記接合壁部としての第2接合壁部と、当該第2の梁と交差する方向に延びる第3の梁が接合されると共に当該第2接合壁部と連続する第3接合壁部を備えた板状とされ、前記被保持部は、前記第1接合壁部の前記第2接合壁部と反対側の第1端部における建物上方側の部分と前記第3接合壁部の当該第2接合壁部と反対側の第2端部における建物上方側の部分とを繋ぐ第1被保持部と、当該第1端部における建物下方側の部分と当該第2端部における建物下方側の部分とを繋ぐ第2被保持部と、を備えている。
【0018】
第4の態様に係る梁の接続構造では、接続部が、第1接合壁部と、当該第1接合壁部と連続する第2接合壁部と、当該第2接合壁部と連続する第3接合壁部とを備えた板状とされている。そして、第1接合壁部には第1の梁が接合されており、第2接合壁部には第1の梁と交差する方向に延びる第2の梁が接合されており、第3接合壁部には第2の梁と交差する方向に延びる第3の梁が接合されている。このため、本態様では、接続部に3本の梁の端部を集約させることができる。
【0019】
また、第1被保持部及び第2被保持部によって第1接合壁部の第1端部と第3接合壁部の第2端部とが連結されており、接続部を補強することができる。
【0020】
第5の態様に係る梁の接続構造は、第2の態様に係る梁の接続構造において、前記接続部は、複数の接合壁部と、当該接合壁部と連続する前記被保持部としての被保持壁部と、を備えると共に建物高さ方向に延びる角筒状とされている。
【0021】
第5の態様に係る梁の接続構造では、接続部が建物高さ方向に延びる角筒状とされていると共に、複数の接合壁部と、これらの接合壁部と連続する被保持壁部とを備えている。そして、接合壁部には、梁の端部が接合されており、被保持壁部が吊り具で保持される。このため、本態様では、一つの部材を複数の梁の連結及び吊り具による保持に用いることができる。
【0022】
第6の態様に係る梁の接続構造は、第2の態様に係る梁の接続構造において、前記接続部は、第1の梁が接合された前記接合壁部としての第1接合壁部と、当該第1の梁と交差する方向に延びる第2の梁が接合されると共に当該第1接合壁部と連続する前記接合壁部としての第2接合壁部と、を備えた板状とされ、前記被保持部は、前記第1接合壁部と前記第2接合壁部とを繋ぐと共に当該第1接合壁部と当該第2接合壁部との境界部と反対側に凸となって屈曲又は湾曲した筒状又は棒状とされている。
【0023】
第6の態様に係る梁の接続構造では、第1接合壁部、第2接合壁部及び被保持部で環が構成されるため、被保持部を吊り具によって安定した状態で保持することができる。また、被保持部は、第1接合壁部と第2接合壁部との境界部と反対側に凸となって屈曲又は湾曲した筒状又は棒状とされているため、被保持部が建物高さ方向を板厚方向とされた板状とされているような構成に比し、被保持部の剛性を確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、第1の態様に係る梁の接続構造では、吊り作業の簡略化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0025】
第2の態様に係る梁の接続構造では、建物ユニットが安定した状態で建物ユニットの吊り作業を行うことができるという優れた効果を有する。
【0026】
第3の態様に係る梁の接続構造では、重量が大きい建物ユニットの吊り作業に対応することができるという優れた効果を有する。
【0027】
第4の態様に係る梁の接続構造では、建物ユニットの躯体の角部以外の箇所も建物ユニットの吊り作業に用いることができるという優れた効果を有する。
【0028】
第5の態様に係る梁の接続構造では、吊り作業の簡略化を図りつつ、建物ユニットの躯体の構成の複雑化の抑制を図ることができる。
【0029】
第6の態様に係る梁の接続構造では、建物ユニットがより安定した状態で建物ユニットの吊り作業を行うことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態に係る梁の接続構造が適用されたバルコニーユニットにおける要部の構成を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る梁の接続構造が適用されたバルコニーユニットの床フレームの構成を示す平面図である。
図3】第1実施形態に係る梁の接続構造が適用された建物の構成を示す斜視図である。
図4】第2実施形態に係る梁の接続構造が適用された追加ユニットの床フレームの構成を示す平面図である。
図5】第2実施形態に係る梁の接続構造が適用された追加ユニットにおける要部の構成を示す斜視図である。
図6】第3実施形態に係る梁の接続構造が適用されたバルコニーユニットにおける要部の構成を示す斜視図である。
図7】第4実施形態に係る梁の接続構造が適用されたバルコニーユニットにおける要部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図1図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る梁の接続構造について説明する。まず、図3を主に用いて、本実施形態に係る梁の接続構造が適用された建物10の全体構造について説明する。
【0032】
建物10は、複数配置されて建物10の下階側を構成する建物ユニット12と、建物ユニット12の建物上方側に配置されて建物10の上階側を構成する建物ユニット14とを備えている。
【0033】
建物ユニット12は、第1方向(各図に示される矢印1)を長手方向として配置されており、建物ユニット14は、第1方向を長手方向として配置された状態で建物ユニット12の上面に載置されている。また、建物ユニット14の第1方向の長さは、建物ユニット12の第1方向の長さよりも短い長さに設定されており、建物ユニット14の第1方向一方側の側面が、建物ユニット12の第1方向一方側の側面に対して第1方向他方側にオフセットされている。すなわち、建物ユニット14は、セットバックユニットとされている。
【0034】
そして、建物ユニット12の上面における第1方向一方側の部分には、バルコニー16の一部を構成する建物ユニットとしての「バルコニーユニット18」が載置されている。このバルコニーユニット18は、その建物下方側の部分を構成する床部20と、腰壁部22とを含んで構成されている。
【0035】
より詳しくは、図2にも示されるように、床部20は、躯体としての「床フレーム24」と床パネル26とを含んで構成されている。床フレーム24は、第1の梁としての「床大梁28」と、第2の梁としての「床大梁30」とを含んで、平面視で格子状に構成されている。なお、床大梁28、30は、溝形鋼で構成されている。
【0036】
床大梁28は、第1方向に間隔をあけて一対とされて配置されると共に、第1方向と交差する方向、より具体的には、第1方向及び建物高さ方向と直交する第2方向(各図に示される矢印2)に延びている。一方、床大梁30は、第1方向に延びると共に、その長さを床大梁28よりも短い長さに設定されており、床大梁28間に架け渡されている。なお、床大梁30は、第2方向に所定の間隔をあけて複数配置されている。
【0037】
床パネル26は、板状とされると共に、床大梁28、30の上面に敷設されており、床部20の床面を構成している。
【0038】
一方、腰壁部22は、床部20の屋外側の周縁部に沿って配置されると共に、当該周縁部から建物上方側に延びている。
【0039】
ここで、本実施形態では、図1に示されるように、床大梁28と床フレーム24の第2方向両端部に配置された床大梁30との連結部に、本実施形態に係る梁の接続構造が適用されている。以下、本実施形態の要部である梁の接続構造について詳細に説明することとする。
【0040】
床フレーム24の角部(図2の二点鎖線で囲まれている部分)では、床大梁28の「端部28A」と床大梁30の「端部30A」とが「接続部32」を介して接続されている。この接続部32は、それぞれ矩形の板状とされた「第1接合壁部32A」と「第2接合壁部32B」とを備えており、建物高さ方向から見て第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bとは直交した状態で連続している。
【0041】
第1接合壁部32Aは、床大梁28の端面を塞いだ状態で床大梁28に溶接等による図示しない接合部で接合されており、一方、第2接合壁部32Bは、床大梁30の端面を塞いだ状態で床大梁30に溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0042】
また、第1接合壁部32Aにおける端部28Aが接合された面と反対側の「面32A1」と第2接合壁部32Bにおける端部30Aが接合された面と反対側の「面32B1」との間には、「被保持部34」が架け渡されている。
【0043】
詳しくは、被保持部34は、「第1被保持部36」及び「第2被保持部38」を含んで構成されている。そして、第1被保持部36及び第2被保持部38は、第1接合壁部32Aにおける第2接合壁部32Bと反対側の第1端部としての「端部32A2」と第2接合壁部32Bにおける第1接合壁部32Aと反対側の第2端部としての「端部32B2」とを繋いでいる。
【0044】
第1被保持部36は、板厚方向を建物高さ方向とされると共に建物高さ方向から見て第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bとの境界部側に向かって縮幅された台形の板状とされている。この第1被保持部36は、一方側の端部が端部32A2の建物上方側の部分に、他方側の端部が端部32B2の建物上方側の部分に、それぞれ溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0045】
一方、第2被保持部38は、第1被保持部36と同様の構成とされると共に、一方側の端部が端部32A2の建物下方側の部分に、他方側の端部が端部32B2の建物下方側の部分に、それぞれ溶接等による図示しない接合部で接合されている。つまり、第1被保持部36及び第2被保持部38は、建物高さ方向から見て第1接合壁部32A及び第2接合壁部32Bと環を構成した状態となっている。なお、第1被保持部36及び第2被保持部38は、床大梁28、30の延在方向から見て床大梁28、30と重なる範囲に位置している。
【0046】
また、第1被保持部36及び第2被保持部38は、フックやスリングベルト等の吊り具で保持可能とされていると共に、4つの第1被保持部36及び4つの第2被保持部38のうち少なくとも3つを用いることで、バルコニーユニット18の重量を支持することが可能とされている。
【0047】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0048】
本実施形態では、図1に示されるように、接続部32によってバルコニーユニット18の床フレーム24を構成する床大梁28、30の端部同士が接続されている。
【0049】
ところで、バルコニーユニット18を吊り作業等によって移動させるときには、バルコニーユニット18の床フレーム24に別途吊具を取り付けるための部材が必要となる。一方で、バルコニーユニット18を移動させた後では、吊具を取り付けるための部材が不要となるため、この部材をバルコニーユニット18から取り外す作業が必要となる。
【0050】
ここで、本実施形態では、接続部32に吊り具で保持可能な被保持部34が設けられており、吊り具で被保持部34を保持した状態でバルコニーユニット18の吊り作業を行うことができる。しかも、被保持部34は、床大梁28、30の延在方向から見て床大梁28、30と重なる範囲に位置しており、被保持部34の周辺に配置される部品に対して第1被保持部36及び第2被保持部38が影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0051】
このため、本実施形態では、被保持部34をバルコニーユニット18から除去することなく、バルコニーユニット18の吊り作業を完了することができる。したがって、本実施形態では、バルコニーユニット18の吊り作業の簡略化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、接続部32が第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bを備えており、第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bにはそれぞれ一つの床大梁の端部が接合されている。一方、被保持部34は、第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bにおける床大梁の端部が接合された面の反対の面同士に架け渡されており、第1接合壁部32A及び第2接合壁部32Bと共に環を構成している。
【0053】
このため、被保持部34を安定した状態でバルコニーユニット18の床フレーム24に固定することができると共に、被保持部34の一部が開放されているような構成に比し、安定した状態で被保持部34を吊り具で保持することができる。したがって、本実施形態では、バルコニーユニット18が安定した状態でバルコニーユニット18の吊り作業を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、接続部32が、第1接合壁部32Aと、第1接合壁部32Aと連続する第2接合壁部32Bとを備えた板状とされている。そして、第1接合壁部32Aには床大梁28が接合されており、第2接合壁部32Bには床大梁28と交差する方向に延びる床大梁30が接合されている。
【0055】
また、被保持部34は、第1被保持部36と第2被保持部38とを備えている。そして、第1被保持部36は、第1接合壁部32Aの端部32A2における建物上方側の部分と第2接合壁部32Bの端部32B2における建物上方側の部分とを繋いでいる。一方、第2被保持部38は、端部32A2における建物下方側の部分と端部32B2の建物下方側の部分とを繋いでいる。
【0056】
このため、第1接合壁部32A、第2接合壁部32B及び第1被保持部36で環が構成されると共に、第1接合壁部32A、第2接合壁部32B及び第2被保持部38で環が構成される。その結果、第1被保持部36及び第2被保持部38の少なくとも一方を吊り具によって安定した状態で保持することができる。
【0057】
また、第1被保持部36及び第2被保持部38によって第1接合壁部32Aの端部32A2と第2接合壁部32Bの端部32B2とが連結されており、接続部32を補強することができる。したがって、本実施形態では、重量が大きいバルコニーユニット18の吊り作業に対応することができる。
【0058】
<第2実施形態>
以下、図4及び図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る梁の接続構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0059】
本実施形態に係る接続構造は、バルコニーユニット18の第2方向への拡張等に用いられる建物ユニットとしての「追加ユニット40」に適用されている。
【0060】
具体的には、追加ユニット40は、基本的にバルコニーユニット18と同様の構成とされており、床部42と、図示しない腰壁部とを含んで構成されている。床部42は、躯体としての「床フレーム44」を備えており、床フレーム44は、第2方向に延びる第1の梁としての「床大梁46」と、床大梁30と、第2方向に延びる第3の梁としての「床大梁48」とを含んで、平面視で格子状に構成されている。なお、床大梁46、48は、溝形鋼で構成されている。
【0061】
床大梁46は、第1方向に間隔をあけて一対とされて配置されると共に、第2方向に延びている。一方、床大梁48は、床大梁46よりも短い長さに設定されると共に、床大梁46と第2方向に間隔をあけて床大梁46の同一直線上に配置されると共に、第2方向に延びている。
【0062】
そして、本実施形態では、床大梁46の「端部46A」と床大梁48の「端部48A」との隙間に床大梁30の端部30Aが面しており、端部46A、端部48A及び端部30Aが「接続部50」を介して接続されている。
【0063】
この接続部50は、それぞれ矩形の板状とされた「第1接合壁部50A」と「第2接合壁部50B」と「第3接合壁部50C」とを備えており、建物高さ方向から見てコ字状に屈曲されている。換言すれば、建物高さ方向から見て第1接合壁部50Aと第2接合壁部50Bとが直交した状態で連続しており、第2接合壁部50Bと第3接合壁部50Cとが直交した状態で連続している。
【0064】
そして、第1接合壁部50Aは、床大梁46の端面を塞いだ状態で床大梁46に、第2接合壁部50Bは、床大梁30の端面を塞いだ状態で床大梁30に、第3接合壁部50Cは、床大梁48の端面を塞いだ状態で床大梁48に、それぞれ溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0065】
また、第1接合壁部50Aにおける端部46Aが接合された面と反対側の「面50A1」と第3接合壁部50Cにおける端部48Aが接合された面と反対側の「面50C1」との間には、「被保持部52」が架け渡されている。
【0066】
詳しくは、被保持部52は、「第1被保持部54」及び「第2被保持部56」を含んで構成されている。そして、第1被保持部54及び第2被保持部56は、第1接合壁部50Aにおける第2接合壁部50Bと反対側の第1端部としての「端部50A2」と第3接合壁部50Cにおける第2接合壁部50Bと反対側の第2端部としての「端部50C2」とを繋いでいる。
【0067】
第1被保持部54は、板厚方向を建物高さ方向とされると共に建物高さ方向から見て第2方向に延びる矩形の板状とされている。この第1被保持部54は、一方側の端部が端部50A2の建物上方側の部分に、他方側の端部が端部50C2の建物上方側の部分に、それぞれ溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0068】
一方、第2被保持部56は、第1被保持部54と同様の構成とされると共に、一方側の端部が端部50A2の建物下方側の部分に、他方側の端部が端部50C2の建物下方側の部分に、それぞれ溶接等による図示しない接合部で接合されている。つまり、第1被保持部54及び第2被保持部56は、建物高さ方向から見て第1接合壁部50A、第2接合壁部50B及び第3接合壁部50Cと環を構成した状態となっている。なお、第1被保持部54及び第2被保持部56は、床大梁46、30、28の延在方向から見て床大梁46、30、28と重なる範囲に位置している。
【0069】
また、本実施形態では、床フレーム44の角部において、床大梁同士の連結部に第1実施形態に係る梁の接続構造が適用されている。
【0070】
このような構成によれば、接続部50が、第1接合壁部50Aと、第1接合壁部50Aと連続する第2接合壁部50Bと、第2接合壁部50Bと連続する第3接合壁部50Cとを備えた板状とされている。そして、第1接合壁部50Aには床大梁46が接合されており、第2接合壁部50Bには床大梁30が接合されており、第3接合壁部50Cには床大梁48が接合されている。このため、本実施形態では、接続部50に3本の床大梁の端部を集約させることができる。
【0071】
また、第1被保持部54及び第2被保持部56によって第1接合壁部50Aの端部50A2と第3接合壁部50Cの端部50C2とが連結されており、接続部50を補強することができる。したがって、本実施形態では、床フレーム44の角部以外の箇所も追加ユニット40の吊り作業に用いることができる。
【0072】
<第3実施形態>
以下、図6を用いて、本発明の第3実施形態に係る梁の接続構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、床フレーム24の角部において、床大梁28と床大梁30との連結部に建物高さ方向に延びる角筒状の「接続部60」が設けられている点に特徴がある。
【0074】
具体的には、接続部60は、「接合壁部60A」、「接合壁部60B」及び被保持部としての「被保持壁部60C、60D」を含んで構成されている。接合壁部60Aは、第1接合壁部32Aと同様に床大梁28に接合されており、接合壁部60Bは、第2接合壁部32Bと同様に床大梁30に接合されている。
【0075】
また、被保持壁部60Cは、接合壁部60A及び被保持壁部60Dと連続しており、被保持壁部60Dは、接合壁部60Bと連続しているため、被保持壁部60C、60Dは、接合壁部60A、60Bと共に環を構成した状態となっている。なお、接続部60は、床大梁28、30の延在方向から見て床大梁28、30と重なる範囲に位置している。
【0076】
このような構成によれば、接続部60が建物高さ方向に延びる角筒状とされていると共に、接合壁部60A、60Bと、接合壁部60A、60Bと連続する被保持壁部60C、60Dとを備えている。そして、接合壁部60A、60Bには、それぞれ床大梁の端部が接合されており、被保持壁部が吊り具で保持される。このため、本実施形態においても上述した第1実施形態と基本的に同様の作用並びに効果を奏する。
【0077】
さらに、本実施形態では、一つの部材を複数の床大梁の連結及び吊り具による保持に用いることができるため、吊り作業の簡略化を図りつつ、バルコニーユニット18の床フレーム24の構成の複雑化の抑制を図ることができる。
【0078】
<第4実施形態>
以下、図7を用いて、本発明の第4実施形態に係る梁の接続構造について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。
【0079】
本実施形態では、「被保持部70」が、第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bとに架け渡された円筒状の第1被保持部72及び第2被保持部74を備えている点に特徴がある。
【0080】
具体的には、第1被保持部72及び第2被保持部74は、それぞれ第1接合壁部32A及び第2接合壁部32Bに溶接等による図示しない接合部で接合されている。また、第1被保持部72及び第2被保持部74は、第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bとの境界部と反対側に凸となって湾曲している。なお、第1被保持部72と第2被保持部74とは、建物高さ方向に所定の間隔をあけて配置されている。
【0081】
このような構成によれば、第1接合壁部32A、第2接合壁部32B及び被保持部70で環が構成されるため、被保持部70を吊り具によって安定した状態で保持することができる。このため、本実施形態においても上述した第1実施形態と基本的に同様の作用並びに効果を奏する。
【0082】
また、本実施形態では、被保持部70が、第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bとの境界部と反対側に凸となって湾曲した筒状とされているため、被保持部70が建物高さ方向を板厚方向とされた板状とされているような構成に比し、被保持部70の剛性を確保することができる。したがって、本実施形態では、バルコニーユニット18がより安定した状態でバルコニーユニット18の吊り作業を行うことができる。
【0083】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、バルコニーユニットの床フレームに各実施形態に係る梁の接続構造が適用されていたが、これに限らない。例えば、建物ユニット12、14の天井フレーム等に各実施形態に係る梁の接続構造を適用してもよい。
【0084】
(2) また、上述した第1実施形態では、第1被保持部36及び第2被保持部38が板状とされていたが、床フレーム24の角部周辺の構成等に応じて、第1被保持部36及び第2被保持部38が筒状や棒状とされていてもよい。
【0085】
(3) また、上述した第2実施形態では、第1被保持部54及び第2被保持部56が板状とされていたが、床フレーム44の構成等に応じて、第1被保持部54及び第2被保持部56が筒状や棒状とされていてもよい。
【0086】
(4) 加えて、上述した第4実施形態では、被保持部70が第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bとの境界部と反対側に凸となって湾曲した筒状とされていたが、これに限らない。例えば、被保持部70は、棒状であってもよいし、第1接合壁部32Aと第2接合壁部32Bとの境界部と反対側に凸となって屈曲していてもよい。
【符号の説明】
【0087】
18 バルコニーユニット(建物ユニット)
24 床フレーム(躯体)
28 床大梁(第1の梁)
28A 端部
30 床大梁(第2の梁)
30A 端部
32 接続部
32A 第1接合壁部
32A1 面
32A2 端部(第1端部)
32B 第2接合壁部
32B1 面
32B2 端部(第2端部)
34 被保持部
36 第1被保持部
38 第2被保持部
40 追加ユニット(建物ユニット)
44 床フレーム(躯体)
46 床大梁(第1の梁)
46A 端部
48 床大梁(第3の梁)
48A 端部
50 接続部
50A 第1接合壁部
50A1 面
50A2 端部(第1端部)
50B 第2接合壁部
50C 第3接合壁部
50C1 面
50C2 端部(第2端部)
52 被保持部
54 第1被保持部
56 第2被保持部
60 接続部
60A 接合壁部
60B 接合壁部
60C 被保持壁部
60D 被保持壁部
70 被保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7