IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイボン・プロダクツ株式会社の特許一覧 ▶ 自然免疫応用技研株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】飲食用組成物及びカプセル剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20220928BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20220928BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220928BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/12
A23L5/00 C
A23L5/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018035293
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019146553
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-09-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511184213
【氏名又は名称】エフエムジー&ミッション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508098394
【氏名又は名称】自然免疫応用技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】西澤 愛
(72)【発明者】
【氏名】小林 由佳
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-012520(JP,A)
【文献】特開2017-195830(JP,A)
【文献】特開2007-262024(JP,A)
【文献】特開2009-263518(JP,A)
【文献】特開平01-052725(JP,A)
【文献】食品と開発,2009年,Vol. 44, No. 9,pp. 61-64
【文献】Anticancer Research,2017年,Vol. 37,pp. 3917-3920
【文献】New Food Industry,2017年,Vol. 59, No. 6,pp. 35-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホヤ由来プラズマローゲンと抗酸化剤を含有し、さらにパントエア菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を含有する飲食用組成物。
【請求項2】
ホヤ由来プラズマローゲンと抗酸化剤を含有し、さらに鮭卵巣膜抽出物及びパントエア菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を含有する飲食用組成物。
【請求項3】
抗酸化剤が、α‐トコフェノール、β‐カロテン、レチノール、ユビキノール、アスコルビン酸パルミテートから選ばれるものである、請求項1又は2記載の飲食用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の飲食用組成物を内容物とするカプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホヤから抽出したプラズマローゲンを含有する飲食用組成物及びカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗酸化作用を有する物質は、その効用の一つに、アルツハイマー型認知症等の脳虚血性疾患の治療や予防に対する効果が期待されている。
【0003】
抗酸化作用を有する物質の一つ、プラズマローゲン(プラズマローゲン型リン脂質)は、抗酸化作用、特に認知機能を改善する物質として知られ、それを配合する機能性飲食品が市販されている。プラズマローゲンは、採卵鶏やホタテ、ヒトデ、ホヤ等水産動物から抽出される。中でもホヤは、プラズマローゲン含有量、特にDHA(ドコサヘキサエン酸)結合プラズマローゲン含有量が多いことから、ホヤから抽出したプラズマローゲン(以下、ホヤ由来プラズマローゲン)は認知機能改善作用に大きな効果が得られる物質として期待できる。
【0004】
特許文献1~5には、ホヤから抽出したプラズマローゲンが記載されている。
特許文献1、2には、飲食品分野でも使用できる溶媒により抽出したプラズマローゲン含有物質を用いて、ソフトカプセル等機能性飲食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-262024号公報
【文献】特開2009-263518号公報
【文献】特開2010-65167号公報
【文献】特開2011-93813号公報
【文献】特開2012-210179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、認知機能障害の改善や予防が期待できる飲食用組成物及び前記組成物を内容物とするカプセル剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ホヤ由来プラズマローゲンと抗酸化剤を含有し、さらに鮭卵巣膜抽出物及び/又はパントエア菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を含有する飲食用組成物、及び前記組成物を内容物とするカプセル剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の飲食用組成物は、ホヤ由来プラズマローゲン及び抗酸化剤に加えて、鮭卵巣膜抽出物及び/又はパントエア菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を含有しており、より高い抗酸化作用が得られることが期待される。そのため、本発明の飲食用組成物をカプセル剤として摂取することで、アルツハイマー型認知症等の脳虚血性疾患の改善や予防が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<飲食用組成物>
本発明の飲食用組成物は、ホヤ由来プラズマローゲンと抗酸化剤を含有し、さらに鮭卵巣膜抽出物及び/又はパントエア菌由来のリポポリサッカライド(LPS)を含有する。
【0010】
本発明において、ホヤ由来プラズマローゲンとは、プラズマローゲンを含有するホヤ抽出物を示す。
【0011】
本発明で用いるホヤ由来プラズマローゲンは、特許文献1の段落0023~0026、特許文献2に記載のプラズマローゲン含有脂質の抽出方法により得られる。
【0012】
抽出溶媒や精製溶媒には、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン/水、酢酸エチル、アセトン等を用いる。
【0013】
ホヤ由来プラズマローゲンは、本発明の飲食用組成物中、10~40質量%で含有することが好ましく、15~35質量%で含有するのがより好ましい。
【0014】
抗酸化剤は、脂溶性のものが好ましく、具体的には、a-トコフェノール(ビタミンE)、β-カロテンやレチノール(ビタミンA)等のカロテン類、ユビキノール(補酵素Q)、アスコルビン酸パルミテート等が挙げられる。
【0015】
抗酸化剤は、本発明の飲食用組成物中、0.01~0.5質量%で含有することが好ましく、0.03~0.2質量%で含有するのがより好ましい。
【0016】
鮭卵巣膜抽出物は、プラズマローゲンと同様に、鮭卵巣膜抽出物に含まれるシアル酸が認知機能改善作用を有すると期待されており、サーモンプラセンタ(日本植菌工業(株)登録商標)として知られている。
鮭卵巣膜抽出物は、鮭の卵巣膜を酵素分解して抽出して得られるもので、例えば、特開2004-73186号公報に記載された製造方法により得られる。
【0017】
鮭卵巣膜抽出物は、本発明の飲食用組成物中、0.1~5質量%で含有することが好ましく、0.3~2質量%で含有するのがより好ましい。
【0018】
パントエア菌由来のLPS(以下、パントエア菌LPS)は、パントエア菌により小麦や米糠等が発酵されて得られる糖脂質で、免疫機能活性化剤として有効であることが知られている(特開平4-99481号公報、特開平6-141849公報)。そして、プラズマローゲンと同様に、種々の疾患改善効果(高脂血症、糖尿病、アトピー、感染防御など)も期待される。
【0019】
パントエア菌由来LPSは、本発明の飲食用組成物中、0.1~5質量%で含有することが好ましく、0.3~2質量%で含有するのがより好ましい。
【0020】
本発明の飲食用組成物は、ホヤ由来プラズマローゲンと抗酸化剤と鮭卵巣膜抽出物及び/又はパントエア菌由来LPSを、合計で0.3~10質量%で含有することが好ましく、0.5~5質量%で含有するのがより好ましい。
残部は、下記に挙げる油性成分で、合計で100質量%となる。
【0021】
油性成分は、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、植物性油等、魚油等が挙げられる。
植物性油は、大豆油、サフラワー(菜種)油、ひまわり油、パーム油、ごま油、亜麻仁油、ひまし油、オリーブ油、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、グレープシード油、椿油、米胚芽油、小麦胚芽油等が挙げられる。
魚油は、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
これらは単独でもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0022】
また本発明の飲食用組成物において、鮭卵巣膜抽出物及びパントエア菌由来LPSを混合して用いてもよく、鮭卵巣膜抽出物/パントエア菌由来LPS(質量比)=2/1~1/2の範囲で配合されるのが好ましく、1/1~1/1.3の範囲で配合されるのがより好ましい。
【0023】
本発明の飲食用組成物は、そのまま飲食できるものであるが、ホヤ由来プラズマローゲンは特有の臭いと風味を呈することから、特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品、機能性食品、健康補助食品、サプリメント、通常の飲食品等に使用するときには、例えば0.001~0.1質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0024】
また本発明の飲食用組成物は、ホヤ由来プラズマローゲンの形態、臭い、風味の点から、本発明の飲食用組成物を内容物としたカプセル剤に製剤化されることが好ましい。
【0025】
本発明の飲食用組成物を内容物とするカプセル剤は、胃で溶けずに小腸で溶ける腸溶性カプセルに製剤するのが好ましく、その形態はソフトカプセル、シームレスカプセルが好ましい。
具体的には、特許第5878669号公報の腸溶性カプセル、三生医薬(株)製の商品名「E-カプセルクリア(ノンコート)」等の腸溶性ソフトカプセルが挙げられる。
【0026】
カプセル剤を構成するカプセル用皮膜としては、牛または豚由来のゼラチン、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の多価アルコール等を挙げることができ、水を含んでいてもよい。
カプセル用皮膜としては、必要に応じて着色剤、保存剤、甘味料等を含んでいてもよい。
カプセル剤の調製方法は、ロータリーダイ式、シームレス式または平板法などの公知の方法を適用することができる。
【実施例
【0027】
<ホヤ由来プラズマローゲンの調製例>
ホヤ100gを、洗浄、凍結乾燥及び粉砕して、ホヤ乾燥粉末を調製した。前記ホヤ乾燥粉末に、95%エタノール1000mlを加えて45℃の温度で60分間撹拌した。撹拌後、吸引濾過によって濾液を回収し、前記濾液に等量の水を加えて撹拌し、遠心分離して、沈殿する粗ホヤ抽出物を回収した。回収した粗ホヤ抽出物は、95%エタノールで数回洗浄して、減圧乾燥にて溶媒を除去して、ホヤ抽出物を得た。得られたホヤ抽出物は、プラズマローゲン(成分)を含有することを確認した。
【0028】
得られたホヤ抽出物は、褐色~黒色の粘性のあるオイル状で、特有の臭いを有し、やや磯臭さを感じる魚油のような風味を呈した。本発明では、これをホヤ由来プラズマローゲンとした。
【0029】
実施例1(ホヤ由来プラズマローゲン・鮭卵巣膜抽出物含有カプセル剤)
ホヤ由来プラズマローゲン33.3質量%、抗酸化剤としてα-トコフェロール0.1質量%、及び鮭卵巣膜抽出物(商品名「サーモンプラセンタ」三生医薬株式会社製)0.4質量%(残部割合に中鎖脂肪酸で合計100質量%とする。)で混合し、カプセル皮膜材として牛または豚由来ゼラチンとカカオ着色剤を用いて、特許第5878669号公報の実施例に記載されたソフトカプセルの製造方法により、ホヤ由来プラズマローゲン及び鮭卵巣膜抽出物含有カプセル剤(内容物300mg)を調製した。
【0030】
実施例2(ホヤ由来プラズマローゲン・パントエア菌LPS含有カプセル剤)
ホヤ由来プラズマローゲン33.3質量%、抗酸化剤としてα-トコフェロール0.1質量%、及びパントエア菌由来LPS(商品名「パントエア菌LPS」、自然免疫応用技研製)0.4質量%(残部割合に中鎖脂肪酸で合計100質量%とする。)で混合し、カプセル皮膜材として牛または豚由来ゼラチンとカカオ着色剤を用いて、特許第5878669号公報の実施例に記載されたソフトカプセルの製造方法により、ホヤ由来プラズマローゲン及びパントエア菌LPS含有カプセル剤(内容物300mg)を調製した。
【0031】
実施例3(ホヤ由来プラズマローゲン・鮭卵巣膜抽出物・パントエア菌LPS含有カプセル剤)
ホヤ由来プラズマローゲン33.3質量%、抗酸化剤としてα-トコフェロール0.1質量%、鮭卵巣膜抽出物0.33質量%及びパントエア菌由来LPS0.4質量%(残部割合に中鎖脂肪酸で合計100質量%とする。)で混合し、カプセル皮膜材として牛または豚由来ゼラチンとカカオ着色剤を用いて、特許第5878669号公報の実施例に記載されたソフトカプセルの製造方法により、ホヤ由来プラズマローゲン及びパントエア菌LPS含有カプセル剤(内容物300mg)を調製した。
前記鮭卵巣膜抽出物及びパントエア菌由来LPSは、実施例1、2に記載されたものを使用した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の飲食物組成物及びカプセル剤は、認知機能障害の改善及び予防が期待できる機能性食品として使用される。