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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/02 20060101AFI20220928BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20220928BHJP
   G05G 1/10 20060101ALI20220928BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20220928BHJP
   B62K 23/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F02D11/02 R
F02D11/10 U
G05G1/10 Z
G01B7/30 H
B62K23/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018085701
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019190406
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大城 幸男
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-314929(JP,A)
【文献】特開2002-264876(JP,A)
【文献】特開2011-144715(JP,A)
【文献】特開2005-041259(JP,A)
【文献】特開2003-047204(JP,A)
【文献】特開2014-044036(JP,A)
【文献】実開昭56-169765(JP,U)
【文献】米国特許第08250944(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/02
F02D 11/10
G05G 1/10
G01B 7/30
B62K 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のハンドルバーの先端に取り付けられ、運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、
前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、
前記連動部材の回転に伴って回転する回転部材と、
前記回転部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
所定の電気回路が形成されるとともに、前記回転角度検出手段が取り付けられた基板と、
前記連動部材を回転自在に保持するとともに、前記回転角度検出手段及び基板を収容可能な収容凹部を有するケースと、
を具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、
前記ケースに形成された収容凹部は、前記回転角度検出手段が位置する第1空間と、該第1空間から前記ケースの幅方向に延設された第2空間と、該第2空間から前記回転部材の外径方向であって当該回転部材の取付部位と隣接する位置に亘って形成された第3空間とを有し、前記基板が前記第1空間から第2空間に亘って収容されるとともに、当該基板と車両側とを電気的に接続する配線の接続部が前記第3空間に位置し、且つ、前記第1空間、第2空間及び第3空間がL字状の空間を成すことを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記ケースは、前記第1空間、第2空間及び第3空間をそれぞれ外部に臨ませるL字状の開口を有することを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記ケースは、前記配線を前記第3空間に向かって延設させた状態で固定するための固定部が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記ケースは、前記回転部材を回転自在に保持する凹部と、前記第1空間、第2空間及び第3空間を有する収容凹部とが画成して形成されたことを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記ケースには、前記スロットルグリップの回転操作時、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって付勢するリターンスプリングが取り付けられ、前記連動部材は、前記リターンスプリングを収容する収容溝が形成されるとともに、当該リターンスプリングは、当該収容溝に収容されつつ前記連動部材の回転軸方向の寸法内にオフセットして組み付けられたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両のエンジンが制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及されるに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップに形成された係合部を連動部材に形成された被係合部に係合することにより、これら別体のスロットルグリップと連動部材とを連結させ、連動部材の回転角度を検出することによりスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-224572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、回転角度を検出する磁気センサ(回転角度検出手段)及びその基板がケース内に収容され、当該基板には、車両側とを電気的に接続する配線が接続されているため、その配線の接続部(コネクタ等)の寸法により当該基板を収容するケースの厚さ寸法が比較的大きくなってしまうという問題があった。すなわち、従来のスロットルグリップ装置においては、ケースの厚さ方向に対して配線の接続部が突出して配設されていたため、ケースの厚さ方向の寸法が大きくなってしまうのである。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、基板を収容したケースの厚さ方向の寸法を小さくすることができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両のハンドルバーの先端に取り付けられ、運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、前記連動部材の回転に伴って回転する回転部材と、前記回転部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、所定の電気回路が形成されるとともに、前記回転角度検出手段が取り付けられた基板と、前記連動部材を回転自在に保持するとともに、前記回転角度検出手段及び基板を収容可能な収容凹部を有するケースとを具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、前記ケースに形成された収容凹部は、前記回転角度検出手段が位置する第1空間と、該第1空間から前記ケースの幅方向に延設された第2空間と、該第2空間から前記回転部材の外径方向であって当該回転部材の取付部位と隣接する位置に亘って形成された第3空間とを有し、前記基板が前記第1空間から第2空間に亘って収容されるとともに、当該基板と車両側とを電気的に接続する配線の接続部が前記第3空間に位置し、且つ、前記第1空間、第2空間及び第3空間がL字状の空間を成すことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記ケースは、前記第1空間、第2空間及び第3空間をそれぞれ外部に臨ませるL字状の開口を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記ケースは、前記配線を前記第3空間に向かって延設させた状態で固定するための固定部が形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記ケースは、前記回転部材を回転自在に保持する凹部と、前記第1空間、第2空間及び第3空間を有する収容凹部とが画成して形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記ケースには、前記スロットルグリップの回転操作時、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって付勢するリターンスプリングが取り付けられ、前記連動部材は、前記リターンスプリングを収容する収容溝が形成されるとともに、当該リターンスプリングは、当該収容溝に収容されつつ前記連動部材の回転軸方向の寸法内にオフセットして組み付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ケースに形成された収容凹部は、回転角度検出手段が位置する第1空間と、該第1空間から前記ケースの幅方向に延設された第2空間と、該第2空間から回転部材の外径方向であって当該回転部材の取付部位と隣接する位置に亘って形成された第3空間とを有し、基板が第1空間から第2空間に亘って収容されるとともに、当該基板と車両側とを電気的に接続する配線の接続部が第3空間に位置するので、回転部材の外径側位置のデッドスペースを有効利用することができ、基板を収容したケースの厚さ方向の寸法を小さくすることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、ケースは、第1空間、第2空間及び第3空間をそれぞれ外部に臨ませるL字状の開口を有するので、回転角度検出手段及び配線に対する接続部が取り付けられた基板を収容空間に容易に挿通して収容させることができ、組み付け作業性を向上させることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、ケースは、配線を第3空間に向かって延設させた状態で固定するための固定部が形成されたので、配線と基板の接続部との接続状態を良好に維持することができ、基板と車両側との電気的接続を安定して行わせることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、ケースは、回転部材を回転自在に保持する凹部と、第1空間、第2空間及び第3空間を有する収容凹部とが画成して形成されたので、回転部材の回転を安定して行わせることができるとともに、収容凹部に対して樹脂等を充填して防水及び防塵を図ることができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、ケースには、スロットルグリップの回転操作時、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって付勢するリターンスプリングが取り付けられ、連動部材は、リターンスプリングを収容する収容溝が形成されるとともに、当該リターンスプリングは、当該収容溝に収容されつつ連動部材の回転軸方向の寸法内にオフセットして組み付けられたので、ケースの厚さ方向の寸法をより一層小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置が適用される車両のスロットルグリップ、カバー部材及びハンドルバーを示す側面図
図2】同スロットルグリップ装置のカバー部材を示す正面図
図3】同スロットルグリップ装置のカバー部材を示す背面図
図4】同スロットルグリップ装置におけるケースの正面側を示す斜視図
図5】同ケースの背面側を示す斜視図
図6】同ケースの内部構成を示す正面図
図7図6におけるVII-VII線断面図
図8図6におけるVIII-VIII線断面図
図9】同スロットルグリップ装置におけるスロットルグリップを示す側面図及び背面図
図10】同スロットルグリップ装置におけるケースを示す正面図及び側面図
図11】同スロットルグリップ装置における連動部材を示す3面図
図12図11におけるXII-XII線断面図
図13図11におけるXIII-XIII線断面図
図14】同スロットルグリップ装置における摩擦板を示す3面図
図15】同スロットルグリップ装置におけるリターンスプリングを示す3面図
図16】同スロットルグリップ装置のケースに回転部材、リターンスプリング及びコイルバネを取り付けた状態を示す斜視図
図17】同スロットルグリップ装置のケースに回転部材及び摩擦板を取り付けた状態を示す斜視図
図18】同スロットルグリップ装置のケースにおける収容凹部を示す底面図
図19】同スロットルグリップ装置のケースにおける収容凹部の第1空間、第2空間及び第3空間の位置関係を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1に示すように、二輪車のハンドルバーHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信するためのもので、図1~9に示すように、スロットルグリップGと、ケース1と、連動部材2と、摩擦板3(抵抗力付与手段)と、リターンスプリング4と、回転部材6と、磁気センサ7(回転角度検出手段)と、プリント基板8とを有して構成されている。
【0019】
ケース1は、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたカバー部材C(図1~3参照)内に配設されたもので、本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容するとともに、連動部材2及び回転部材6等を回転自在に保持するものである。かかるケース1は、図10に示すように、連動部材2を回転自在に収容する第1凹部Aと、回転部材6を回転自在に収容する第2凹部Bとが形成された成形部品から成る。なお、符号5は、ケース1の開口側を塞ぐための蓋部材を示している。
【0020】
なお、カバー部材Cは、図2、3に示すように、上側半割れ部材C1と、下側半割れ部材C2とを合致して組み付けることにより構成され、その内部に本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容し得るとともに、下側半割れ部材C2には、切欠きC2a(図3参照)が形成されている。この切欠きC2aには、ケース1に一体形成された固定部ha及び凸条部hb(図5参照)が嵌合して組み付けられるようになっている。
【0021】
スロットルグリップGは、カバー部材Cから延設されるとともに、車両のハンドルバーHの先端に取り付けられ、運転者が把持しつつ回転操作が可能とされている。かかるスロットルグリップGの基端側には、凹部から成る係合部Ga(図9参照)が形成されており、この係合部Gaが連動部材2の被係合部2a(図4、5、6等参照)に係合することにより、スロットルグリップGと連動部材2とが連結されるようになっている。
【0022】
連動部材2は、スロットルグリップGに形成された係合部Gaと係合し得る被係合部2aを有するとともに、当該スロットルグリップGの回転操作に連動して回転し得るものである。具体的には、本実施形態に係る連動部材2は、図11に示すように、被係合部2aと、収容溝2bと、フランジ2cと、ギア2dと、収容溝2bと連なって形成された係止部2eと、ハンドルバーHを挿通し得る挿通孔2fとを有した環状部材から成る。なお、本実施形態に連動部材2には、後で詳述する摺動面n1が形成されている。
【0023】
被係合部2aは、スロットルグリップGの係合部Gaと対応した位置にそれぞれ形成された凸形状から成り、当該被係合部2aに係合部Gaが嵌入して係合した状態で連動部材2にスロットルグリップGの基端側が接続されている。これにより、スロットルグリップGの回転に伴って連動部材2も回転し得るようになっている。かかる被係合部2aは、連動部材2の表面(ケース1に組み付けられた際、図4に示すように、外部に臨ませ得る一方の面)に形成されるとともに、連動部材2の他方の面には、図11に示すように、収容溝2b、係止部2e及び摺動面n1が形成されている。
【0024】
収容溝2bは、連動部材2の他方の面において当該連動部材2の周方向(回転方向)に亘って形成された溝形状から成り、リターンスプリング4を収容し得るよう構成されている。また、連動部材2には、周方向に亘ってフランジ2cが形成されるとともに、所定範囲に亘ってギア2dが形成されている。このギア2dは、図6に示すように、回転部材6の外周に形成されたギアと噛み合う状態で組み付けられており、連動部材2の回転に伴って回転部材6が回転するようになっている。
【0025】
回転部材6は、上述のように連動部材2の回転に伴って連動して回転し得るもので、ケース1の第2凹部Bに収容されるとともに、軸L1(図6~8参照)を中心として回転自在とされている。しかして、連動部材2が回転すると、その回転角度に応じた回転角度にて回転部材6が回転するようになっている。かかる回転部材6には、磁石mが取り付けられており、当該回転部材6の回転に伴って磁石mから生じる磁界の方向が変化するよう構成されている。なお、図7、8中符号aは、回転部材6を連動部材2側に付勢するねじりコイルバネを示している。
【0026】
磁気センサ7(回転角度検出手段)は、図7、8に示すように、回転部材6の軸L1の延長線上の位置に配設されたセンサから成り、回転部材6に取り付けられた磁石mから生じる磁気の変化(磁界の方向の変化)を検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ7は、磁石mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。なお、本実施形態に係る磁気センサ7は、所定の電気回路が印刷にて形成されたプリント基板8に取り付けられている。
【0027】
しかして、スロットルグリップGが回転するのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材6も連動してギア比(連動部材2及び回転部材6のギア比)に応じて回転し、当該回転部材6に取り付けられた磁石mも同一角度だけ回転する。これにより、その回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンが制御され得るようになっている。
【0028】
リターンスプリング4は、スロットルグリップGの回転操作時、当該スロットルグリップG及び連動部材2を初期位置に向かって付勢する付勢手段にて構成されている。本実施形態に係るリターンスプリング4は、図15に示すように、一端4a及び他端4bと、コイル部4cとを有したねじりコイルバネから成り、一端4aが連動部材2の係止部2e(図11参照)に係止されるとともに、他端4bがケース1の係止部1f(図10参照)に係止されて組み付けられるようになっている。
【0029】
すなわち、リターンスプリング4は、その一端4aが連動部材2に取り付けられ、且つ、他端4bがケース1に取り付けられて組み付けられており、スロットルグリップGを回転させると、リターンスプリング4の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップG及び連動部材2を初期位置に戻す力が作用するのである。
【0030】
また、リターンスプリング4の一端4aを係止する係止部2eは、図11、13に示すように、連動部材2における収容溝2bより内径側(連動部材2の中心に対して収容溝2bの形成位置より内側の位置)に形成されている。すなわち、本実施形態に係る収容溝2bは、連動部材2における被係合部2aより外径側(連動部材2の中心に対して被係合部2aの形成位置より外側の位置)に形成されているので、収容溝2bより内側の位置に生じるスペース(被係合部2eが形成される面とは反対側の面のスペース)を利用して係止部2eを形成することができるのである。
【0031】
ここで、本実施形態に係るリターンスプリング4は、図7、12に示すように、少なくともそのコイル部4cの一部が収容溝2bに収容されつつ連動部材2の回転軸方向(同図の左右方向)の寸法α内にオフセット(寸法α内において寸法t重複)して組み付けられている。この場合の寸法αは、連動部材2の幅寸法を示しており、ケース1の厚み寸法βと同じ方向に延びる面の寸法である。なお、本実施形態に係るリターンスプリング4は、そのコイル部4cの一部が連動部材2の回転軸方向の寸法α内において寸法tだけオフセットして組み付けられているが、コイル部4cの全部が連動部材2の回転軸方向の寸法α内にオフセットして組み付けられるようにしてもよい。
【0032】
さらに、本実施形態に係る収容溝2bは、図11、13に示すように、連動部材2における被係合部2aより外径側(連動部材2の中心に対して被係合部2aの形成位置より外側の位置)に形成されている。これにより、リターンスプリング4を構成するねじりコイルバネは、コイル部4cの径が大きいものを使用することとなり、そのコイル部4cの巻き数を任意に設定することにより、付勢力(バネ荷重)を調整することができる。
【0033】
すなわち、本実施形態の如く、リターンスプリング4のコイル部4cの径が大きい場合、バネ定数が小さくなって付勢力が小さくなるので、その分、設定し得る付勢力(設定バネ荷重)の下限側を広げることができるとともに、コイル部4cの巻き数を少なくすることにより、設定し得る付勢力(設定バネ荷重)の上限側を広げることができるのである。しかして、リターンスプリング4による付勢力の調整幅(設定することができるバネ荷重の範囲)を広げることができ、バネ荷重の設定の自由度を向上させることができる。
【0034】
摩擦板3(抵抗力付与手段)は、連動部材2に当接して組み付けられ、スロットルグリップGの回転操作時に当該連動部材2に対して摺動して抵抗力を付与し得る円環状部材から成り、図14に示すように、一方の面に凸形状3aが複数(本実施形態においては周方向に亘って3つ)一体形成されるとともに、他方の面が連動部材2の摺動面n1に当接して組み付けられるよう構成されている。一方、図10に示すように、ケース1における挿通孔1aの開口縁部1bには、摩擦板3の凸形状3aと合致して嵌合し得る凹状の嵌合形状1cが形成され、凸形状3aが嵌合形状1cに嵌合することにより摩擦板3がケース1に取り付けられている。
【0035】
なお、本実施形態に係る摩擦板3は、一方の面に凸形状3aが形成されているが、これに代えて或いは共に、凹形状を形成するとともに、ケース1における挿通孔1aの開口縁部1bには、当該摩擦板3の凹形状と合致して嵌合し得る凸状の嵌合形状が形成され、凹形状が嵌合形状に嵌合することにより摩擦板3がケース1に取り付けられるようにしてもよい。しかして、摩擦板3は、一方の面に形成された凸形状3a(又は凹形状)がケース1における挿通孔1aの開口縁部1bに形成された嵌合形状に嵌合することにより、回転方向に対して固定可能とされている。
【0036】
また、ケース1における挿通孔1aの開口縁部1bには、摩擦板3を連動部材2側に付勢させるコイルバネc(付勢手段)を収容するための収容穴1dが複数(本実施形態においては周方向に亘って等間隔に3つ)形成されている。そして、図16に示すように、それぞれの収容穴1dにコイルバネcを収容させた後、図17に示すように、凸形状3aを嵌合形状1cに嵌合させることにより、摩擦板3をケース1における挿通孔1aの開口縁部1bに取り付け可能とされている。さらに、摩擦板3における収容穴1dに対応する位置には、図14に示すように、ボス部3bが突出形成されており、摩擦板3をケース1における挿通孔1aの開口縁部1bに取り付けると、ボス部3bが収容穴1d内に挿通してコイルバネcを確実に保持し得るようになっている。
【0037】
このように、摩擦板3をケース1における挿通孔1aの開口縁部1bに取り付けた状態で連動部材2を第1凹部Aに収容して組み付けると、図7に示すように、コイルバネcにて付勢された摩擦板3の当接面n2が連動部材2の摺動面n1に当接するようになっている。しかして、スロットルグリップGの回転操作により連動部材2が回転すると、当接面n2が摺動面n1に対して摺動して摩擦力を生じさせ、所望の回転負荷を生じさせることができるのである。
【0038】
ここで、本実施形態に係る連動部材2は、図11に示すように、リターンスプリング4を収容する収容溝2bが形成されるとともに、当該収容溝2bの内径側(内側)に摩擦板3(抵抗力付与手段)を摺動させ得る摺動面n1が形成されている。すなわち、連動部材2には、その内径側(回転軸に近い側)に摺動面n1が周方向に亘って形成され、その外側(外径側)に収容溝2bが周方向に亘って形成されており、摺動面n1及び収容溝2bが挿通孔2fを中心とする同心円状にそれぞれ形成されているのである。また、本実施形態に係る連動部材2は、被係合部2aが一方の面に形成されるとともに、収容溝2b及び摺動面n1が他方の面に形成されて構成されている。
【0039】
さらに、本実施形態に係るケース1は、図8、16、17に示すように、磁気センサ7(回転角度検出手段)及びプリント基板8を収容可能な収容凹部1eを有している。かかる収容凹部1eは、磁気センサ7が位置する第1空間S1と、該第1空間S1からケース1の幅方向Yに延設された第2空間S2と、該第2空間S2から回転部材6の外径方向(図18、19において右方向)であって当該回転部材6の取付部位(本実施形態においては第2凹部B)と隣接する位置に亘って形成された第3空間S3とを有し、プリント基板8が第1空間S1から第2空間S2に亘って収容されるとともに、当該プリント基板8と車両側とを電気的に接続する配線の接続部Nが第3空間S3に位置するようになっている。
【0040】
すなわち、第1空間S1及び第2空間S2をケース1の幅方向Y(図8、10、16、17に示すように、回転部材6の回転軸L1に対して直交する方向)に亘って略直線状に形成してプリント基板8を収容させるとともに、第2凹部Bと隣接する位置に形成された第3空間S3にプリント基板8に形成された接続部Nが位置するので、第2凹部Bと隣接する位置のデッドスペースに接続部Nを配設することができ、当該デッドスペースの有効利用を図ることができるのである。なお、接続部Nは、配線hの先端を接続するためのカプラやコネクタ等から成るものであってもよく、或いは配線hをプリント基板8の電気回路に対して半田付け等により直接接続する部位であってもよい。
【0041】
また、本実施形態に係るケース1は、図18、19に示すように、第1空間S1、第2空間S2及び第3空間S3をそれぞれ外部に臨ませるL字状の開口を有している。なお、本実施形態に係る第3空間S3には、取付ネジのネジ穴が形成されたボス部bを有しているが、かかるボス部bを有さないもの、或いは他の空間にボス部bが形成されたもの等としてもよい。
【0042】
さらに、本実施形態に係るケース1は、配線hを第3空間S3に向かって延設させた状態で固定するための固定部haが一体形成されている。すなわち、固定部haに配線hの先端部近傍を接触させた状態で、例えば結束バンド等にて固定させることにより、配線hの先端が第3空間S3に位置する接続部Nに向かった状態となるよう構成されているのである。
【0043】
またさらに、本実施形態に係るケース1は、図19に示すように、回転部材6を回転自在に保持する凹部(本実施形態における第2凹部B)と、第1空間S1、第2空間S2及び第3空間S3を有する収容凹部1eとが画成(互いに独立した空間となるよう区画)して形成されている。しかるに、収容空間1eには、プリント基板8が収容された状態において、所定の樹脂材等が充填されるようになっている。
【0044】
上記実施形態によれば、連動部材2は、リターンスプリング4を収容する収容溝2bが形成されるとともに、リターンスプリング4は、当該収容溝2bに収容されつつ連動部材2の回転軸方向の寸法α内にオフセットした状態とされ、且つ、収容溝2bは、連動部材2における被係合部2aより外径側に形成されたので、連動部材2及びリターンスプリング4を収容したケース1の厚さ方向の寸法β(図7参照)を小さくするとともに、リターンスプリングによる付勢力の設定の自由度を向上させることができる。よって、ケース1を覆うカバー部材Cの厚さ方向の寸法γ(図1参照)を小さくすることができるので、ハンドルバーHの先端部に別個のスイッチケース等を容易に配設することができるとともに、車種や運転者の嗜好に応じてリターンスプリングの付勢力を容易に設定することができる。
【0045】
また、連動部材2の回転に伴って回転する回転部材6を具備するとともに、磁気センサ7(回転角度検出手段)は、当該回転部材6の回転角度を検出することによりスロットルグリップGの回転角度を検出し得るので、連動部材2は、その収容溝2bにリターンスプリング4を安定して保持する保持機能と、スロットルグリップGの回転力を回転部材6に伝達する伝達機能とを兼ね備えることができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係る連動部材2は、収容溝2bと連なって形成され、リターンスプリング4の一端4aが係止される係止部2eを有するとともに、当該係止部2eは、連動部材2における収容溝2bより内径側に形成されたので、収容溝2bに収容されたリターンスプリング4の付勢力を効率的且つ安定的に連動部材2及びスロットルグリップGに及ばせることができ、且つ、連動部材2における収容溝2bよりも被係合部2a側(内径側)のスペースを活用してリターンスプリング4の一端4aを係止させることができる。またさらに、本実施形態に係る連動部材2は、被係合部2aが一方の面に形成されるとともに、収容溝2bが他方の面に形成された環状部材から成るので、スロットルグリップGの回転操作力の伝達を確実に行わせつつリターンスプリング4を収容溝2bに収容して安定して保持させることができる。
【0047】
加えて、本実施形態に係るケース1は、ハンドルバーHを挿通し得る挿通孔1aが形成されるとともに、当該挿通孔1aの開口縁部1bに沿って摩擦板3(抵抗力付与手段)が取り付けられたので、ケース1における挿通孔1aの開口縁部1bを有効利用することができ、摩擦板3(抵抗力付与手段)を収容したケース1の寸法を小さくすることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る抵抗力付与手段は、一方の面に凸形状3a(又は凹形状)が一体形成されるとともに、他方の面が連動部材2の摺動面n1に当接して組み付けられる摩擦板3から成り、且つ、ケース1における挿通孔1aの開口縁部1bには、当該抵抗力付与手段の凸形状3a(又は凹形状)と合致して嵌合し得る嵌合形状1cが形成され、凸形状3a(又は凹形状)が嵌合形状1cに嵌合することにより摩擦板3がケース1に取り付けられたので、摩擦板3の回転方向の固定を確実に行わせつつケース1の小型化を図ることができる。
【0049】
さらに、ケース1における挿通孔1aの開口縁部1bには、摩擦板3(抵抗力付与手段)を連動部材2側に付勢させるコイルバネc(付勢手段)を収容するための収容穴1dが形成されたので、コイルバネcの付勢力によって摩擦板3による抵抗力を確実に生じさせつつケース1の小型化を図ることができる。なお、コイルバネcに代えて、他の汎用的な付勢手段を収容穴1dに収容するようにしてもよい。
【0050】
またさらに、本実施形態に係るケース1には、スロットルグリップGの回転操作時、当該スロットルグリップG及び連動部材2を初期位置に向かって付勢するリターンスプリング4が取り付けられ、連動部材2は、当該リターンスプリング4を収容する収容溝2bが形成されるとともに、当該収容溝2bの内径側に摩擦板3(抵抗力付与手段)を摺動させ得る摺動面n1が形成されたので、ケース1内におけるスペースの有効利用を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る連動部材2は、被係合部2aが一方の面に形成されるとともに、収容溝2b及び摺動面n1が他方の面に形成された環状部材から成るので、スロットルグリップGの回転操作力の伝達を確実に行わせつつリターンスプリング4を収容溝2bに収容して安定して保持させることができ、且つ、摩擦板3(抵抗力付与手段)の摺動面n1に対する摺動を円滑に行わせることができる。
【0052】
さらに加えて、本実施形態によれば、ケース1に形成された収容凹部1eは、磁気センサ7が位置する第1空間S1と、該第1空間S1からケース1の幅方向Yに延設された第2空間S2と、該第2空間S2から回転部材6の外径方向(図18、19において右方向)であって当該回転部材6の取付部位(本実施形態においては第2凹部B)と隣接する位置に亘って形成された第3空間S3とを有し、プリント基板8が第1空間S1から第2空間S2に亘って収容されるとともに、当該プリント基板8と車両側とを電気的に接続する配線hの接続部Nが第3空間S3に位置するので、回転部材6の外径側位置のデッドスペースを有効利用することができ、プリント基板8を収容したケース1の厚さ方向の寸法αを小さくすることができる。
【0053】
また、本実施形態に係るケース1は、第1空間S1、第2空間S2及び第3空間S3をそれぞれ外部に臨ませるL字状の開口を有するので、磁気センサ7(回転角度検出手段)及び配線hに対する接続部Nが取り付けられたプリント基板8を収容空間1eに容易に挿通して収容させることができ、組み付け作業性を向上させることができる。さらに、本実施形態に係るケース1は、配線hを第3空間S3に向かって延設させた状態で固定するための固定部haが形成されたので、配線hとプリント基板8の接続部Nとの接続状態を良好に維持することができ、プリント基板8と車両側との電気的接続を安定して行わせることができる。
【0054】
またさらに、本実施形態に係るケース1は、回転部材6を回転自在に保持する第2凹部Bと、第1空間S1、第2空間S2及び第3空間S3を有する収容凹部1eとが画成して形成されたので、回転部材6の回転を安定して行わせることができるとともに、収容凹部1eに対して樹脂等を充填して防水及び防塵を図ることができる。
【0055】
さらに、本実施形態によれば、収容空間1eが第1空間S1、第2空間S2及び第3空間を有する構成に加え、ケース1には、スロットルグリップGの回転操作時、当該スロットルグリップG及び連動部材2を初期位置に向かって付勢するリターンスプリングが取り付けられ、連動部材2は、リターンスプリング4を収容する収容溝2bが形成されるとともに、当該リターンスプリング4は、当該収容溝2bに収容されつつ連動部材2の回転軸方向の寸法α内にオフセットして組み付けられたので、ケース1の厚さ方向の寸法βをより一層小さくすることができる。
【0056】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばスロットルグリップGの回転角度を検出する磁気センサ7に代えて、他の汎用的なセンサ(磁石の磁気を検出するものに限らないとともに、非接触式のセンサに限らず接触式のセンサ等も含む)としてもよい。また、本実施形態においては、回転部材6の回転角度を検出してスロットルグリップGの回転角度を検出する構成とされているが、回転部材6を有さず、連動部材2に磁石を形成し、その磁石の磁気変化を磁気センサ(回転角度検出手段)にて検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出するようにしてもよい。
【0057】
さらに、本実施形態に係るリターンスプリングは、ねじりコイルバネから成るものとされているが、他の汎用的な付勢手段としてもよい。また、本実施形態に係る摩擦板3(抵抗力付与手段)は、ケース1における挿通孔1aの開口縁部1bに取り付けられているが、他の部位に取り付けられていてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
ケースに形成された収容凹部は、回転角度検出手段が位置する第1空間と、該第1空間からケースの幅方向に延設された第2空間と、該第2空間から回転部材の外径方向であって当該回転部材の取付部位と隣接する位置に亘って形成された第3空間とを有し、基板が第1空間から第2空間に亘って収容されるとともに、当該基板と車両側とを電気的に接続する配線の接続部が前記第3空間に位置し、且つ、第1空間、第2空間及び第3空間がL字状の空間を成すスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ケース
1a 挿通孔
1b 開口縁部
1c 嵌合形状
1d 収容穴
1e 収容凹部
1f 係止部
2 連動部材
2a 被係合部
2b 収容溝
2c フランジ
2d ギア
2e 係止部
2f 挿通孔
3 摩擦板(抵抗力付与手段)
3a 凸形状
3b ボス部
4 リターンスプリング(ねじりコイルバネ)
4a 一端
4b 他端
4c コイル部
5 蓋部材
6 回転部材
7 磁気センサ(回転角度検出手段)
8 プリント基板
n1 摺動面
n2 当接面
G スロットルグリップ
Ga 係合部
h 配線
ha 固定部
N 接続部
A 第1凹部
B 第2凹部
S1 第1空間
S2 第2空間
S3 第3空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19