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  • 特許-仮設構造及びその構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】仮設構造及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 15/12 20060101AFI20220928BHJP
   E01D 19/02 20060101ALI20220928BHJP
   E02B 3/06 20060101ALI20220928BHJP
   E02B 3/08 20060101ALN20220928BHJP
   E02B 3/04 20060101ALN20220928BHJP
【FI】
E01D15/12
E01D19/02
E02B3/06
E02B3/08 301
E02B3/04 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019062798
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020159162
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】519111268
【氏名又は名称】株式会社グロージオ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 正悟
(72)【発明者】
【氏名】大関 智久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一成
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 五和次
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-292618(JP,A)
【文献】特開2015-227580(JP,A)
【文献】特開2001-115421(JP,A)
【文献】特開2001-295245(JP,A)
【文献】特開2014-025333(JP,A)
【文献】特開2014-025337(JP,A)
【文献】特開2004-285735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E02B 3/04- 3/14
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮橋又は仮桟橋となる仮設構造であって、
少なくも対向する側面に開口が形成され、水底の地盤上に置かれ、重量物が内部に収容される複数の箱状体と、
前記複数の箱状体のそれぞれ上面に固定される桁受けと、
前記桁受けの上に亘って固定される主桁と、
前記主桁の上に設置される覆工板とを備えることを特徴とする仮設構造。
【請求項2】
前記箱状体の上面にも開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の仮設構造。
【請求項3】
前記重量物は岩又は石であることを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設構造。
【請求項4】
仮橋又は仮桟橋となる仮設構造を構築する方法であって、
少なくも対向する側面に開口が形成される複数の箱状体を水底の地盤上に置く工程と、
前記複数の箱状体の内部に重量物を収容する工程と、
前記複数の箱状体のそれぞれ上面に桁受けを固定する工程と、
前記桁受けの上に亘って主桁を固定する工程と、
前記主桁の上に覆工板を設置する工程とを備えることを特徴とする仮設構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮橋又は仮桟橋となる仮設構造及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大きな河川の護岸工事などを行う際、中州に工事用機械を設置するために、工事用機械が通行可能な程度に強固な仮橋を設置する必要がある。また、橋の架け替えや、洪水、地震などで被災した橋を応急的に架けるために仮橋を設置することがある。さらに、水上施工や水中施工を行う際に工事用機械、工事用車両や作業者などが通行するために、仮桟橋を設置することがある。これら仮橋や仮桟橋は、従来、コンクリート製や鋼鉄製の橋脚に、鋼鉄製の橋桁や覆工板を架設などすることにより構築していた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-227580号公報
【文献】特許2001-115421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仮橋や仮桟橋を構成する橋脚は、構築現場に合わせて形状に工場などで作製した後、構築現場まで運搬し、これに橋桁などを固定している。そのため、仮橋や仮桟橋を構築するために必要な期間が長く費用も大きかった。さらに、仮橋や仮桟橋は数か月などで解体されるものであるが、解体に必要な期間が長く費用も大きかった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、構築及び解体に係る期間及び費用の削減を図ることが可能な仮橋又は仮桟橋となる仮設構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の仮設構造は、仮橋又は仮桟橋となる仮設構造であって、少なくも対向する側面に開口が形成され、水底の地盤上に置かれ、重量物が内部に収容される複数の箱状体と、前記複数の箱状体のそれぞれ上面に固定される桁受けと、前記桁受けの上に亘って固定される主桁と、前記主桁の上に設置される覆工板とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の仮設構造によれば、重量物が内部に収容された複数の箱状体が橋脚と機能するので、重量物が収容される前の箱状体は従来のコンクリート製や鋼鉄製の橋脚と比較して、軽量化ひいては簡素化を図ることが可能となる。これにより、仮橋又は仮桟橋の構築及び解体に係る期間及び費用の削減を図ることが可能となる。
【0008】
本発明の仮設構造において、前記箱状体の上面にも開口が形成されていることが好ましい。
【0009】
この場合、箱状体の上面から重量物を収容することが可能となり、収容作業の簡易化を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明の仮設構造において、前記重量物は岩又は石であることが好ましい。
【0011】
この場合、箱状体の内部に収容された岩や石の間には隙間が多く形成されるので、当該箱状体を開口が形成されている面を上流側及び下流側に向けて河底に設置することにより、河水の流れを妨げることの抑制を図ることが可能となる。
【0012】
本発明の仮設構造の構築方法は、仮橋又は仮桟橋となる仮設構造を構築する方法であって、少なくも対向する側面に開口が形成される複数の箱状体を水底の地盤上に置く工程と、前記複数の箱状体の内部に重量物を収容する工程と、前記複数の箱状体のそれぞれ上面に桁受けを固定する工程と、前記桁受けの上に亘って主桁を固定する工程と、前記主桁の上に覆工板を設置する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の仮設構造の構築方法によれば、上記本発明の仮設構造と同様に、仮橋又は仮桟橋の構築及び解体に係る期間及び費用の削減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る仮橋の模式上面図。
図2図1のIIーII模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の仮設構造の実施形態に係る仮橋10について図面を参照して説明する。
【0016】
仮橋10は、ここでは、図1を参照して、大きな河川Aの川岸Bと中州Cとを結び、重機などの工事用機械が走行可能に構成されている。仮橋10は、箱状体1、桁受け2、主桁3及び覆工板4を備えている。
【0017】
箱状体1は、例えば、直方体状の外形を有するものであり、川底(河床)の地盤Dの上に複数個、仮橋10の架設方向に亘って設置される。箱状体1の内部には、多数の岩や石などの重量物4が収容される。なお、川底は本願発明の水底に相当する。また、図面においては、中央部に位置する2個の箱状体1は隣接して設置されている。
【0018】
ここでは、各箱状体1は、直方体を構成する各線分に位置するH型鋼などの鋼材などからなる棒状体1aが溶接やボルトを用いた締結構造などによって固定されたかご状の構造となっている。なお、補強のために直方体の外面を構成する面の対角線に位置する部分などにも棒状体1aが設けられていてもよい。
【0019】
さらに、各箱状体1の直方体を構成するそれぞれの面に当たる部分には、鉄鋼ワイヤなどが編まれてなる網1bが配置されている。箱状体1として、例えば、市販の沈設かごを用いることも可能であり、これにより安価に箱状体1を得ることができる。
【0020】
なお、箱状体1の外形形状は直方体状に限定されず、円柱形状などであっても、三角柱状や六角柱状などの多角柱形状の他、上下方向に非対称な形状、例えば、角錐台形状、円錐台形状や複数の直方形状が積み重なった形状などであってもよい。
【0021】
このように構成された箱状体1によって、箱状体1の内部に収容される岩や石などの重量物5が外部にこぼれ落ちることの抑制を図ることが可能となっている。さらに、箱状体1の内部に重量物5として岩や石が収容されている場合、岩や石の間、さらには網1bの隙間を河水が自由に流れるので、河川の流れがほとんど堰き止められない。網1bの網目に大きさは、箱状体1内に収容した重量物5が外部にこぼれ落ちないように定まればよく、例えば、1cm以上5cm以下である。
【0022】
なお、箱体状1には、重量物5として岩や石の他に、砂や礫などを収容してもよいが、これらは河川の流れが急であると流れ出るので好ましくない。ただし、箱状体1の下流側の面の下側部分などに堰き止め板などを設けた場合には、砂や礫などを収容してもよい。また、布などからなる網目の細かな袋状体に砂や礫を入れ、この袋状体を箱状体1に収容させてもよい。
【0023】
さらに、箱状体1には、河川の環境を汚染するものでなければ、他のものを重量物5として収容させてもよい。ただし、岩や石は、仮橋10を構築する河川やその川岸などに存在するものを使用することができ、他の場所から運搬する必要がないので好ましい。
【0024】
また、箱状体1の上面には、重量物5を収容する作業が容易となるように、大きめの開口を設けることが好ましい。なお、箱状体1の内部に重量物5を充填する必要はなく、少なくとも河川の流れによって箱状体1が移動しない程度に重量物5を収容すればよい。
【0025】
なお、箱状体1の各面に網1bが配置されているものに限定されず、少なくとも河川の少なくとも上流側と下流側の面に開口が形成されていればよい。例えば、箱状体1の各面が面状体で覆われており、上流側と下流側の面状体に1又は複数の開口が形成されていてもよい。この場合も、十分な開口面積を確保することにより、河川の流れをほとんど堰き止めないようにすることが可能となる。
【0026】
内部に岩や石などの重量物5が収容された箱状体1は重量が大きく、且つ、河水は箱状体1の網1b及び重量物5の間をすり抜けるので、河川の流れが大きく堰き止められることがないと共に、箱状体1は河水によって移動せず、当初設置した位置に静止した状態が維持される。
【0027】
これにより、重量物5が収容された箱状体1は、直接基礎式の橋脚基礎として機能する。そのため、箱状体1を地盤Dに固定するために杭などを設けるための工事を必要としない。また、上述したように、重量物5が収容された箱状体1内を河水はほとんど抵抗なく流れるので、河川の上流側と下流側との間に箱状体1を設置したことによる水位差はほとんど生じない。
【0028】
なお、箱状体1を傾斜させずに設置するために、必要に応じて川底の地盤Dの整地を行うことが好ましい。この場合、少なくとも箱状体1の下面を構成する鋼材1aが水平になるように地盤Dを整地することが好ましい。箱状体1は、クレーン車などのクレームを用いて吊り上げて河底の所定の位置の地盤D上に設置する。
【0029】
箱状体1は、仮橋10の構築現場で作製してもよいが、工場などで作製したものを現場に運搬してもよい。搬送の段階では、箱状体1に重量物5が収容されていないので軽量であり運搬は容易である。
【0030】
また、箱状体1の所定位置への設置及び撤去は、クレーンを用いて吊り込むことが可能である。そして、箱状体1を設置及び撤去の作業をする際には箱状体1に重量物5を収容しておく必要はないので、小型のクレーンでもこれらの作業が可能である。また、箱状体1に岩や石などの重量物5は油圧ショベルなどを用いて入れることも可能である。これらにより、コンクリートや鋼鉄製の橋脚を用いる場合と比較して、設置及び撤去の作業の簡易化を図ることが可能となる。
【0031】
各箱状体1の上面には桁受け2がそれぞれ固定されている。桁受け2は、H型鋼などの鋼材などからなり、箱状体1を構成する棒状体1aに、ブルマンC型金具を用いて箱状体1の上面に固定されている。ただし、溶接やボルトを用いた締結構造などの他の固定方法を用いて固定してもよい。桁受け2は、従来の仮橋などで橋脚の上に固定されて主桁を受けるものと同じ構成であればよい。
【0032】
複数の桁受け2の上には、これらの桁受け2を亘るように仮橋10の架設方向に延在する主桁3が設置されている。複数本、ここでは2本の主桁3が平行に配置されている。主桁3は、H型鋼などの鋼材からなる。なお、桁受け2の上面に直接的に主桁3が設けられいることに限定されず、桁受け2の上方に他の部材を介して主桁3が設けられていてもよい。
【0033】
主桁3の上には複数の覆工板4が敷設されている。覆工板4は、例えば長方形状の鋼板などからなる。また、覆工板4の他に、補強材などが主桁3に設置されていてもよい。なお、主桁3の上面に直接的に覆工板4が設けられることに限定されず、主桁3の上方に他の部材を介して覆工板4が設けられていてもよい。
【0034】
主桁3及び覆工板4の構成は、鋼鉄製などの橋脚を用いた従来の仮橋にて使用されるものと同じでよい。また、必要に応じて覆工板4の上にガードレールなどの付帯物を設置してもよい。
【0035】
なお、仮橋10の取り付け部は、土嚢6などを用いて補強することが好ましい。取り付け部の地盤に十分な強度があれば不要であるが、中州などは地盤が脆弱である場合が多いので、補強することが好ましい。
【0036】
次に、本発明の仮設構造の実施形態に係る仮橋10の構築方法について説明する。
【0037】
本方法は、複数の箱状体1を川底の地盤D上に置く工程と、これら箱状体1の内部に重量物5を収容する工程と、重量物5を収容した後、又は重量物5を収容する前に、箱状体1のそれぞれに上面に桁受け2を固定する工程と、桁受け2の上に亘って主桁3を固定する工程と、主桁3の上に覆工板4を設置する工程とを備えている。これにより、仮橋10を構築することができる。
【0038】
上述したように、仮橋10は、重量物5を収容した箱状体1を直接基礎式の橋脚基礎としているので、従来のようにコンクリートや鉄鋼製の橋脚基礎とする場合と比べて、構成が簡易化すると共に施工が容易化するので、仮橋10を構築、撤去するために必要な費用の低減及び期間の短縮化を図ることが可能となる。また、箱状体1は再利用することも可能であるので、この点からも費用の削減を図ることが可能となる。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した仮設構造としての仮橋10に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。
【0040】
例えば、仮設構造として仮桟橋を構築してもよい。この場合、海底、湖底又は川底を水底とする地盤に箱状体1が設置されて、覆工板4が海、湖又は河川に突き出たように構成される。
【符号の説明】
【0041】
1…箱状体、 1a…棒状体、 1b…網、 2…桁受け、 3…主桁、 4…覆工板、 5…重量物、 6…土嚢、 A…河川、 B…川岸、 C…中州、 D…川底(水底)の地盤。
図1
図2