(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2018107209
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】東田 理沙
(72)【発明者】
【氏名】莊 心源
【審査官】湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-000469(JP,A)
【文献】特開2012-075640(JP,A)
【文献】特開2003-111731(JP,A)
【文献】特開2012-100822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の水晶体の断層画像を撮影する撮影部と、
演算部と、を備えており、
前記演算部は、
前記撮影部で撮影された前記被検眼の水晶体の断層画像における組織間の境界を検出する境界検出処理と、
前記境界検出処理によって検出された境界によって画定される各組織の異常を検出する異常検出処理と、
異常が検出された前記組織のそれぞれの2次元画像を生成する2次元画像生成処理と、
前記2次元画像に基づいて、前記異常検出処理によって検出された異常に紐づけられた解析項目を解析する解析処理と、を実行可能に構成されて
おり、
前記2次元画像は、
前記異常検出処理で異常が検出された組織が核である場合には、前記核の断層画像であり、
前記異常検出処理で異常が検出された組織が核以外の組織である場合には、当該組織の正面画像である、眼科装置。
【請求項2】
解析結果を表示する表示部をさらに備えており、
前記異常検出処理によって異常が検出されたときは、前記表示部は、前記解析処理によって解析された前記解析項目についての解析結果を表示する、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記異常検出処理で水晶体の核において異常が検出されたときは、前記表示部は、前記撮影部で撮影された水晶体の断層画像を、当該水晶体の断層画像の輝度に基づいて前記水晶体の核内を複数種類の異なる色で彩色して表示する、請求項2に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、眼科装置に関する。詳細には、被検眼の水晶体の断層画像を撮影する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の水晶体の状態を把握するために、水晶体の観察が行われている。水晶体の観察には、細隙灯顕微鏡を用いて観察する方法が一般的に知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、この方法では、医師等の検査者はスリットランプを被検眼に照射して、水晶体の状態を直接観察する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の細隙灯顕微鏡を用いた観察では、検査者が被検眼を直接観察し、被検眼の水晶体の状態を診断する。しかしながら、検査者がスリットランプの光が照射される位置を調整するため、スリットランプを同じ位置に照射することが困難であり、検査ごとに診断結果にばらつきが生じるという問題があった。本明細書は、被検眼の水晶体を精度良く解析する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する眼科装置は、被検眼の水晶体の断層画像を撮影する撮影部と、演算部と、を備えている。演算部は、撮影部で撮影された被検眼の水晶体の断層画像における組織間の境界を検出する境界検出処理と、境界検出処理によって検出された境界によって画定される各組織の異常を検出する異常検出処理と、異常検出処理によって検出された異常に紐づけられた解析項目を解析する解析処理と、を実行可能に構成されている。
【0006】
上記の眼科装置は、撮影部で撮影された被検眼の水晶体の断層像を用いて水晶体を解析する。このため、撮影部を被検眼に対して位置合わせをして水晶体を撮影することで、水晶体の同じ部位について撮影・解析することができ、検査ごとに診断結果にばらつきが生じることを回避できる。また、組織間の境界を検出することによって、組織ごとに解析することが可能となる。そして、検出された異常に紐づけられた解析項目を解析することによって、検出された異常と紐づかない解析項目の解析を省略することができ、解析に必要な処理速度を速くすることができる。このため、診断時間を短くすることができ、被検者の負担を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係る眼科装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図2】スキャニング-アライメント光学系の概略構成を示す図。
【
図3】実施例に係る眼科装置の制御系を示すブロック図。
【
図4】被検眼の水晶体を解析する処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】断層画像において水晶体の組織間の境界を検出した状態を示す模式図。
【
図8】前側皮質のEn-face画像を作成する手順を説明するための図であり、(a)は水晶体の断層画像を示し、(b)は前側皮質のEn-face画像を示す。
【
図9】彩色された核の2次元断層画像を示す模式図。
【
図10】タッチパネルに表示される解析結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0009】
(特徴1)本明細書に開示する眼科装置は、解析結果を表示する表示部をさらに備えていてもよい。異常検出処理によって異常が検出されたときは、表示部は、解析処理によって解析された解析項目についての解析結果を表示してもよい。このような構成によると、検出された異常に紐づけられた解析項目についての解析結果が表示部に表示され、検出された異常の詳細を検査者に報知することができる。
【0010】
(特徴2)本明細書に開示する眼科装置では、異常検出処理で水晶体の核において異常が検出されたときは、表示部は、撮影部で撮影された水晶体の断層画像を、当該水晶体の断層画像の輝度に基づいて水晶体の核内を複数種類の異なる色で彩色して表示してもよい。このような構成によると、水晶体の核に異常が検出された場合に、検査者に核内の状態を認識し易くできる。
【実施例】
【0011】
以下、実施例に係る眼科装置1について説明する。眼科装置1は、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いて被検眼Eの前眼部の断層画像を撮影する。
図1に示すように、眼科装置1は、光源10と、被検眼Eから反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、K-clock信号を生成するK-clock発生装置50を備えている。
【0012】
光源10は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源10から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼Eの深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼Eの深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼Eの内部の各部位(例えば、角膜や水晶体等)の位置を特定することが可能となる。
【0013】
光源10から出力された光は、光ファイバを通ってファイバカプラ12に入力される。ファイバカプラ12に入力された光は、ファイバカプラ12において分波され、光ファイバを通ってファイバカプラ16及びK-clock発生装置50に出力される。なお、K-clock発生装置50については後述する。
【0014】
干渉光学系14は、光源10の光を被検眼Eの内部に照射すると共にその反射光を生成する測定光学系と、光源10の光から参照光を生成する参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を検出するバランス検出器40によって構成されている。
【0015】
測定光学系は、ファイバカプラ16と、サーキュレータ18と、スキャニング-アライメント光学系20によって構成されている。光源10から出力され、ファイバカプラ12を介してファイバカプラ16に入力された光は、ファイバカプラ16において測定光と参照光に分波されて出力される。ファイバカプラ16から出力された測定光は、光ファイバを通ってサーキュレータ18に入力される。サーキュレータ18に入力された測定光は、スキャニング-アライメント光学系20に出力される。スキャニング-アライメント光学系20は、サーキュレータ18から出力された測定光を被検眼Eに照射すると共に、被検眼Eからの反射光をサーキュレータ18に出力する。サーキュレータ18に入力された反射光は、ファイバカプラ38の一方の入力部に入力される。なお、スキャニング-アライメント光学系20については、後に詳述する。
【0016】
参照光学系は、ファイバカプラ16と、サーキュレータ22と、参照部24によって構成されている。ファイバカプラ16から出力された参照光は、光ファイバを通ってサーキュレータ22に入力される。サーキュレータ22に入力された参照光は、参照部24に出力される。参照部24は、コリメータレンズ26、28及び参照ミラー30によって構成されている。参照部24に出力された参照光は、コリメータレンズ26、28を介して参照ミラー30で反射され、再びコリメータレンズ26、28を介して参照部24から出力される。参照部24から出力された参照光は、サーキュレータ22に出力される。コリメータレンズ28及び参照ミラー30は、第2駆動装置54(
図3参照)によってコリメータレンズ26に対して進退動するように構成されている。第2駆動装置54がコリメータレンズ28及び参照ミラー30を移動させることによって、参照光学系の光路長が変化する。これによって、参照光学系の光路長を、測定光学系の光路長と略一致するように調整することができる。サーキュレータ22に入力された参照光は、偏波コントローラ36を介してファイバカプラ38の他方の入力部に入力される。偏波コントローラ36は、ファイバカプラ38に入力される参照光の偏光を制御する素子である。偏波コントローラ36は、パドル型やインライン型等の公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0017】
ファイバカプラ38は、入力された被検眼Eからの反射光と参照光を合波して干渉光を生成する。ファイバカプラ38は、生成した干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、バランス検出器40に入力する。バランス検出器40は、ファイバカプラ38から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(干渉信号)に変換する。バランス検出器40は、干渉信号を演算装置60に出力する。
【0018】
ここで、
図2を参照して、スキャニング-アライメント光学系20の構成について説明する。スキャニング-アライメント光学系20は、スキャニング光学系と、前眼部撮影系と、固視標光学系と、アライメント光学系を備えている。
【0019】
図2に示すように、スキャニング光学系は、コリメータレンズ102と、ガルバノスキャナ104と、ホットミラー106と、対物レンズ108を備えている。サーキュレータ18(
図1参照)から出力された測定光は、コリメータレンズ102を介してガルバノスキャナ104に出射される。ガルバノスキャナ104は、第1駆動装置52(
図3参照)によって傾動するように構成されており、第1駆動装置52がガルバノスキャナ104を傾動することで、被検眼Eへの測定光の照射位置が走査される。ガルバノスキャナ104から出射された測定光は、ホットミラー106に照射され、90度の角度で反射される。ホットミラー106に照射された測定光は、対物レンズ108を介して、被検眼Eに照射される。被検眼Eからの反射光は、上記とは逆に、対物レンズ108、ホットミラー106、ガルバノスキャナ104及びコリメータレンズ102を介してサーキュレータ18に入力される。
【0020】
前眼部撮影系は、2つの照明光源110と、対物レンズ108と、ホットミラー106と、コールドミラー112と、結像レンズ114と、CCDカメラ116と、光学制御部118を備えている。2つの照明光源110は、被検眼Eの正面に可視光領域の照明光を照射する。被検眼Eからの反射光は、対物レンズ108、ホットミラー106、コールドミラー112及び結像レンズ114を通過し、CCDカメラ116に入力される。これにより、被検眼Eの正面画像が撮影される。撮影された画像データは、光学制御部118によって画像処理され、タッチパネル56に表示される。
【0021】
固視標光学系は、固視標光源120と、コールドミラー122、124と、リレーレンズ126と、ハーフミラー128と、コールドミラー112と、ホットミラー106と、対物レンズ108を備えている。固視標光源120からの光は、コールドミラー122、124、リレーレンズ126及びハーフミラー128を通過し、コールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された光は、ホットミラー106及び対物レンズ108を通過して被検眼Eに照射される。被検者に固視標光源120からの光を固視させることで、眼球(すなわち、被検眼E)を極力動かさないようにさせることができる。
【0022】
アライメント光学系は、XY方向位置検出系とZ方向位置検出系によって構成されている。XY方向位置検出系は、被検眼E(詳細には、角膜頂点)のXY方向の位置(すなわち、眼科装置1に対する上下左右の位置ずれ)を検出するために用いられる。Z方向位置検出系は、被検眼Eの角膜頂点の前後方向(Z方向)の位置を検出するために用いられる。
【0023】
XY方向位置検出系は、XY位置検出光源130と、コールドミラー124と、リレーレンズ126と、ハーフミラー128と、コールドミラー112と、ホットミラー106と、対物レンズ108と、結像レンズ132と、位置センサ134を備えている。XY位置検出光源130は、位置検出用のアライメント光を照射する。XY位置検出光源130から照射されたアライメント光は、コールドミラー124で反射され、リレーレンズ126及びハーフミラー128を通過し、コールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された光は、ホットミラー106及び対物レンズ108を通過して被検眼Eの前眼部(角膜)に照射される。
【0024】
被検眼Eの角膜表面は球面状であるため、アライメント光は、被検眼Eの角膜頂点の内側で輝点像を形成するように角膜表面で反射される。この角膜表面からの反射光が対物レンズ108に入射され、ホットミラー106を介してコールドミラー112で反射される。コールドミラー112で反射された反射光は、ハーフミラー128で反射され、結像レンズ132を介して位置センサ134に入力される。位置センサ134が輝点の位置を検出することによって、角膜頂点の位置(すなわち、X方向及びY方向の位置)が検出される。
【0025】
位置センサ134の検出信号は、光学制御部118を介して演算装置60に入力される。この場合、位置センサ134と前眼部撮影系との間でのアライメントが取られていると共に、角膜頂点の所定(正規)の画像取得位置(断層画像取得時に追従させるべき位置)が設定されている。角膜頂点の正規の画像取得位置としては、例えば、CCDカメラ116の撮影画像の中心位置と一致する点である。演算装置60は、位置センサ134の検出に基づいて、正規の画像取得位置に対する検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量を算出する。
【0026】
Z方向位置検出系は、Z位置検出光源140と、結像レンズ142と、ラインセンサ144を備えている。Z位置検出光源140は、被検眼Eに対して斜め方向から検出用の光(スリット光又はスポット光)を照射する。被検眼Eの角膜からの斜め方向の反射光は、結像レンズ142を介してラインセンサ144に入射される。このとき、眼科装置1に対する被検眼Eの前後方向(Z方向)の位置によって、ラインセンサ144に入射される反射光の入射位置が異なる。このため、反射光の入射位置を検出することで、被検眼Eの眼科装置1に対するZ方向の位置が検出される。ラインセンサ144の検出信号は、演算装置60に入力される。
【0027】
K-clock発生装置50(
図1参照)は、等間隔周波数(光の周波数に対して均等な周波数間隔)にて干渉信号のサンプリングを行うために、光源10の光からサンプルクロック(K-clock)信号を光学的に生成する。そして、生成されたK-clock信号は、演算装置60に向けて出力される。これにより、演算装置60がK-clock信号に基づいて干渉信号をサンプリングすることで、干渉信号の歪みが抑えられ、分解能が悪化することが防止される。なお、本実施例では、演算装置60には、K-clock信号が規定するタイミングでサンプリングされた干渉信号が入力されるが、このような構成に限定されない。例えば、演算装置60は、あらかじめ判明している掃引時間に対する周波数を示す関数や同時に取得した掃引プロファイルに対して、一定時間間隔でサンプリングされたデータをスケーリングする処理を施してもよい。なお、干渉光学系14及びK-clock発生装置50は、「撮影部」の一例である。
【0028】
次に、本実施例の眼科装置1の制御系の構成を説明する。
図3に示すように、眼科装置1は演算装置60によって制御される。演算装置60は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置60には、光源10と、第1駆動装置52と、第2駆動装置54と、照明光源110と、固視標光源120と、XY位置検出光源130と、Z位置検出光源140と、光学制御部118と、ラインセンサ144と、バランス検出器40と、K-clock発生装置50と、タッチパネル56が接続されている。
【0029】
演算装置60は、光源10のオン/オフを制御すると共に、第1駆動装置52及び第2駆動装置54を制御することでガルバノスキャナ104及び参照部24を駆動する。また、演算装置60には、バランス検出器40で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力すると共に、K-clock発生装置50で生成されたK-clock信号が入力する。演算装置60は、バランス検出器40からの干渉信号をK-clock信号に基づいてサンプリングする。そして、演算装置60は、サンプリングされた干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼Eの各部位(例えば、角膜、前房、水晶体等)や組織(例えば、水晶体の核、皮質、嚢等)の位置を特定する。演算装置60に入力されたデータや算出結果は、メモリ(図示省略)に記憶される。
【0030】
また、演算装置60は、照明光源110、固視標光源120、XY位置検出光源130のオン/オフを制御する。演算装置60は、CCDカメラ116で撮影され光学制御部118で処理された被検眼Eの正面画像を入力すると共に、光学制御部118を介して位置センサ134で検出された角膜頂点(輝点)の位置を入力する。演算装置60は、入力された被検眼Eの正面画像及び角膜頂点(輝点)の位置に基づいて、角膜頂点(輝点)のXY方向のずれ量を算出する。演算装置60は、ラインセンサ144の検出信号を入力し、被検眼Eの眼科装置1に対するZ方向のずれ量を算出する。演算装置60は、XY方向位置検出系により検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量と、Z方向位置検出系により検出された被検眼EのZ方向の位置ずれ量に基づいて、それらの位置ずれ量を全て0にするように、本体駆動部(図示省略)を制御し、眼科装置1本体を保持台(図示省略)に対して移動させる。
【0031】
さらに、演算装置60は、タッチパネル56を制御している。タッチパネル56は、被検眼Eの計測結果や解析結果に関する各種の情報を検査者に提供する表示装置であると共に、検査者からの指示や情報を受け付けるユーザインターフェースである。例えば、タッチパネル56は、演算装置60で生成された被検眼Eの水晶体の各組織の画像や解析結果等を表示することができる。また、タッチパネル56は、眼科装置1の各種設定を入力することができる。なお、本実施例の眼科装置1はタッチパネル56を備えているが、このような構成に限定されない。上記の情報の表示及び入力が可能な構成であればよく、モニタと入力装置(例えば、マウスやキーボード等)を備えていてもよい。
【0032】
図4を参照して、被検眼Eの水晶体を解析する処理について説明する。
図4に示すように、まず、演算装置60は、被検眼Eの前眼部の断像画像を取得する(S12)。被検眼Eの前眼部の断層画像を取得する処理は、以下の手順で実行する。まず、検査者がタッチパネル56から検査開始の指示を入力すると、演算装置60は被検眼Eと眼科装置1のアライメントを行う。アライメントは、アライメント光学系で検出されるXY方向及びZ方向のずれ量に基づいて実行される。具体的には、演算装置60は、XY方向位置検出系により検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量と、Z方向位置検出系により検出された被検眼EのZ方向の位置ずれ量がそれぞれ0になるように、眼科装置1本体を保持台(図示省略)に対して移動させる。
【0033】
アライメントが完了すると、演算装置60は、被検眼Eの前眼部の断層画像を撮影する。本実施例において、ステップS12における被検眼Eの前眼部の測定は、ラジアルスキャン方式により実行される。これにより、前眼部の断層画像が全領域に亘って取得される。つまり、
図5に示すように、Bスキャン方向を被検眼Eの角膜頂点から放射方向に設定し、Cスキャン方向を円周方向として断層画像の取込みが行われる。本実施例では、ラジアルスキャン方式で放射状に128方向(具体的には、周方向に等間隔に128方向)の断層画像を撮影する。演算装置60は、取得(撮影)された断層画像のデータを、メモリに取込む。なお、水晶体の断層画像の撮影方法は、ラジアルスキャン方式に限定されない。水晶体の断層画像が全領域に亘って取得できればよく、例えば、ラスタースキャン方式によって撮影されてもよい。すなわち、
図6に示すように、Bスキャン方向を被検眼Eに対して水平方向に設定し、Cスキャン方向を垂直方向として断層画像の取込みが行われてもよい。
【0034】
ステップS12において被検眼Eの前眼部の断層画像を取得すると、演算装置60は、各干渉信号情報が備える輝度情報に基づいて、水晶体の組織間の境界を検出する(S14)。
図7に示すように、演算装置60は、水晶体について、前嚢と前房との境界L1(すなわち、水晶体の前面)と、前嚢と皮質との境界L2と、皮質と核との境界L3、L4と、皮質と後嚢との境界L5と、後嚢と硝子体との境界L6(すなわち、水晶体の後面)を検出する。すなわち、測定光が水晶体の内部を通過する際、各組織の境界L1~L6のそれぞれにおいて一部が反射される。干渉信号情報には、これらの境界L1~L6において反射された反射光の成分が含まれている。ステップS14では、干渉信号情報に含まれるこれらの信号成分に基づいて、水晶体内の組織間の境界L1~L6を検出する。なお、断層画像では、皮質は核によって前房側(
図7では上方)と硝子体側(
図7では下方)に分割されることが多い。このため、以下では、核によって分割された皮質のうち、前房側に位置するものを「前側皮質」と称し、硝子体側に位置するものを「後側皮質」と称することがある。水晶体の組織間の境界を検出することによって、前嚢(境界L1とL2の間の領域)と、前側皮質(境界L2とL3の間の領域)と、核(境界L3とL4の間の領域)と、後側皮質(境界L4とL5の間の領域)と、後嚢(境界L5とL6の間の領域)の各組織を特定することができる。
【0035】
次に、演算装置60は、ステップS14で特定した各組織について、異常があるか否かを判定する(S16)。異常があるか否かは、各組織を構成する画素の輝度情報に基づいて判定する。例えば、組織毎に異なる輝度情報の閾値を予め設定し、組織毎に当該組織を構成する各画素の輝度と当該組織に設定された閾値とを比較し、輝度が閾値を超えたときにその組織に異常部位があると判定する。各組織において混濁が生じていると、当該混濁部位において反射される光成分が多くなるため、当該混濁部位の輝度が高くなる。輝度情報の閾値は、混濁が生じている(又はその疑いがある)と診断されるときの当該部位の断層画像の輝度が含まれるように設定することができる。このとき、混濁が生じていると診断される輝度は、組織毎に異なる。このため、閾値は、組織毎に異なる値として設定する。演算装置60は、組織毎に当該組織に対応する閾値より輝度が高い部位が含まれるか否かを判定し、閾値より高い部位が含まれる場合に当該組織に異常があると判定する。例えば、閾値より高い輝度を有する画素が設定数を超えたときに、当該組織に異常があると判定する。この場合、組織毎に当該組織の大きさが異なるため、組織毎に異常判定を行うための設定数を変えてもよい。なお、上記の例では、組織内の各画素の輝度と閾値を比較して異常があるか否かを判定したが、このような方法に限られない。例えば、各組織を構成する画素の輝度の平均値と閾値とを比較し、当該組織に異常があるか否かを簡易に判定してもよい。
【0036】
次に、演算装置60は、ステップS16で異常が検出された組織について、当該組織毎の2次元画像を作成する(S18)。2次元画像は、上述の各組織のうち、前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢については、その組織のみを抽出した正面画像として作成する。一方、核については、断層画像として作成する。従来の細隙灯顕微鏡を用いて観察する方法では、検査者は、スリットランプを用いて核の状態を観察していた。この場合、検査者は、核を断層画像に近い状態で観察することになる。一方、従来の方法では、核以外の組織(前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢)については、照明光を被検眼Eの眼底に照射し、眼底からの反射光によって観察する徹照法によって観察していた。この場合、検査者は、核以外の組織(前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢)を正面画像に近い状態で観察することになる。組織毎の2次元画像を作成する際に、核については2次元画像を断層画像とし、その他の組織(前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢)については2次元画像を正面画像とすることによって、検査者は、従来の観察方法に近い状態で各組織を診断することができる。
【0037】
ここで、正面画像の作成について、前側皮質を例に説明する。例えば、ステップS16において、前側皮質に異常が検出されたとする。すなわち、前側皮質を特定する領域(境界L2とL3の間の領域)において、前側皮質の輝度情報の閾値として設定された値より輝度が高い部位が検出されたとする。この場合、各断層画像から前側皮質を特定する領域(境界L2とL3の間の領域)を抽出し、前側皮質のみで構成される正面画像を作成する。正面画像は、例えば、En-face(エンファス)画像である。具体的には、3次元データについて、Aスキャン毎に深さ方向で最大値や平均値などを算出し、3次元データを2次元のEn-face画像に圧縮する。
【0038】
例えば、
図8(a)に示すように、演算装置60は、前側皮質を特定する境界L2とL3との間の領域において、矢印で示す深さ方向の輝度をAスキャン毎に平均化する。そして、
図8(b)に示すように、演算装置60は、平均化した輝度を点として表示し、En-face画像を作成する。前嚢、後側皮質、後嚢についても、ステップS16で異常が検出された場合には、演算装置60は、前側皮質と同様の手順で、前嚢、後側皮質又は後嚢のみを表示するEn-face画像を作成する。特定の組織(例えば、前側皮質)のみで構成されるEn-face画像を構築するため、En-face画像において当該組織(例えば、前側皮質)以外の組織(例えば、前嚢、核、後側皮質及び後嚢)が重畳して表示されない。このため、検査者は、当該組織の状態を容易にかつ精度よく把握することができる。
【0039】
次いで、核の2次元断層画像の作成について説明する。ステップS16において核に異常が検出された場合、核の断層画像を輝度情報に基づいて複数種類の色を用いて彩色する。このとき用いる断層画像は、水平方向の断層画像と、当該断層画像から周方向に隣接する複数の断層画像(本実施例では、当該断層画像に対して±1.4度と±2.8度の方向で撮影された計4枚の断層画像)とについて加算平均処理を実行し、スペックルノイズを除去してもよい。例えば、核において混濁が生じている部位では、断層画像の輝度が高く、混濁の度合いが大きいほど輝度が高くなる。そこで、輝度が高くなるにつれて色が変化するように、各画素の輝度情報を色相に置き換える。例えば、ステップS16で用いた核の異常を検出するための輝度情報の閾値より輝度が低い場合には緑色で彩色し、輝度が高くになるにつれて徐々に緑色から黄色になるように彩色する。そして、さらに輝度が高くなるにつれて黄色から赤色になるように彩色する。例えば、白内障が進行している場合(例えば、WHO分類のグレード4以上の場合)、当該画素は赤色に置き換えられる。このように核の断層画像を彩色することによって、断層画像において同じ輝度情報を有する画素は同色で彩色される。
【0040】
核では、断面において外周部分より中央部分のほうが混濁が生じやすい。このため、白内障が進行している被検眼Eの断層画像において、各画素を上述した色相に置き換えると、核の中心部分は赤色に彩色され、中心部分から外周部分に向かって徐々に緑色に近い色に彩色される。例えば、
図9に示すように、核において白内障が進行している場合には、断層画像において、最も中央に位置する領域R1は赤色で彩色され、領域R1の外側に隣接する領域R2は橙色で彩色され、領域R2の外側に隣接する領域R3は黄色で彩色され、最も外周に位置する領域R4は緑色で彩色される。
【0041】
従来の細隙灯顕微鏡を用いて観察した場合、白内障の進行状況に応じて、核は異なる色で観察される。すなわち、白内障の進行の程度が低い状態では、核は白色に近い色として観察され、白内障の進行の程度が高くなるに従い、白色から黄色に近くなり、さらには茶色に近い色として観察される。上記のように輝度情報に基づいて核を彩色することによって、検査者は、従来の観察方法に近い色で核の状態を把握することができる。なお、本実施例では、各画素の輝度情報を色相に置き換えているが、各画素についてその画素の周囲の輝度情報を含む輝度情報の平均値に基づいて、当該画素を設定した色相に置き換えてもよい。また、本実施例では、緑色から赤色に変化する色相を用いて各画素を彩色しているが、輝度情報を置き換える際に使用する色は特に限定されない。例えば、従来の細隙灯顕微鏡を用いて観察される色(すなわち、白色、黄色、茶色)に置き換えることで、細隙灯顕微鏡を用いて観察される画像と同等の画像に変換してもよい。
【0042】
次に、ステップS16で異常が検出された組織について、ステップS18で作成された2次元画像に基づいて当該組織のグレーディングを行う(S20)。例えば、ステップS16で異常が検出された各組織について、WHO分類に基づいてグレーディングを行う。
【0043】
具体的には、皮質(前側皮質及び後側皮質)に異常が検出された場合、En-face画像において円周に占める混濁の割合(%)に基づいて皮質を分類する。また、瞳孔中心から3mm以内の範囲の混濁の有無によって皮質の中心の混濁を分類する。例えば、前側皮質のEn-face画像74(
図10参照)において、円周に占める混濁の割合が約30%と算出されたとする。WHO分類では、皮質において円周に占める混濁の割合が25%以上かつ50%未満である場合、グレード2と分類される。また、前側皮質のEn-face画像74において、瞳孔中心3mm以内の範囲に混濁があると判定されたとする。この場合、ステップS20において、前側皮質はグレード2と分類されると共に、前側皮質の中心に混濁ありと分類される。
【0044】
また、核に異常が検出された場合、WHO分類の基準写真との比較によって判定するグレーディング方法に対応するように核を分類する。詳細には、断層画像における核の輝度情報(すなわち、ステップS18で彩色する色)がWHO分類のどの基準写真に対応するのかに基づいて、核をグレーディングする。例えば、彩色された核の断層画像82(
図10参照)において、核の中心部分が黄色で彩色されたとする。断層画像において核が黄色で彩色された場合、当該画素がWHO分類の基準写真において、基準写真2(グレード1)における混濁部位の色に対応するとする。この場合、ステップS20において、核はグレード1と分類される。
【0045】
また、後嚢に異常が検出された場合、混濁の大きさ(mm)に基づいて後嚢を分類する。例えば、後嚢のEn-face画像78(
図10参照)において、混濁の大きさが約4mmと算出されたとする。WHO分類では、混濁の大きさが3mm以上である場合、グレード3と分類される。したがって、ステップS20において、後嚢はグレード3と分類される。
【0046】
最後に、ステップS18及びステップS20で実行された解析結果をタッチパネル56に出力する(S22)。タッチパネル56には、ステップS18で作成された2次元画像72~78、82と、ステップS20で分類された各組織のグレードが表示される。すなわち、タッチパネル56には、異常が検出された組織について、当該組織が表示された2次元画像(En-face画像又は彩色された断層画像)と、当該組織のグレードが表示される。
【0047】
例えば、
図10は、タッチパネル56に表示される解析結果の一例を示している。
図10に示すように、タッチパネル56には、前嚢のEn-face画像72と、前側皮質のEn-face画像74と、後側皮質のEn-face画像76と、後嚢のEn-face画像78と、核が彩色された断層画像82と、グレーディング結果を示す表84が表示されている。さらに、タッチパネル56には、水晶体の断層画像80が表示されている。換言すると、タッチパネル56には、ステップS16で異常が検出され、ステップS18で2次元画像が作成された組織の2次元画像72、74、76、78、82と、その解析結果を示す表84が表示される。タッチパネル56には異常が検出された組織の2次元画像が表示される。
図10では、全ての組織で異常が検出されているため、各組織の2次元画像が全て表示されているが、ステップS
16で異常が検出されなかった組織については2次元画像が表示されないことになる。また、
図10に示すように、ステップS18で作成した2次元画像と共に、ステップS12で取得した断層画像80を併せて表示してもよい。
【0048】
表84は、各組織のグレーディング結果を示している。また、表84には、グレードの判定に用いるために算出した各種の数値が表示されている。例えば、
図10では、皮質の混濁(COR)について、ステップS20で算出された混濁の割合(Total(%))の値(0.3)と、中心(Center)に混濁があること(Yes)が表示されている。そして、これらの値に基づいて判定されたグレード(2及び+)が表示されている。また、核の混濁(NUC)について、ステップS18で彩色された色(すなわち、輝度情報)に基づいて判定された、最も近似している基準写真(<Standard 2)と、その基準写真に対応するグレード(1)が表示されている。また、後嚢の混濁(PSC)について、ステップS20で算出された混濁の大きさ(mm)の値(4)と、その値に基づいて判定されたグレード(3)が表示されている。
【0049】
ステップS16において異常が検出された組織の2次元画像と当該組織のグレードをタッチパネル56に表示することによって、検査者は、異常が検出された組織の状態(すなわち、画像及びグレード)の詳細を容易に把握することができる。
【0050】
本実施例では、光干渉断層法を用いて撮影した被検眼Eの断層画像に基づいて、被検眼Eの水晶体の各組織を解析する。このため、被検眼Eを撮影する際には、常に被検眼Eの同じ位置を撮影することができ、検査ごとに解析結果にばらつきが生じることを回避できる。これによって、被検眼Eの水晶体を精度よく解析することができる。また、従来の細隙灯顕微鏡を用いた方法では、核を観察する際にはスリットランプを用い、核以外の組織を観察する際には徹照法を用いていた。このため、水晶体の各組織全てを観察するためには被検眼Eに照明光を長時間照射する必要があった。本実施例では、被検眼Eの前眼部の断層画像を撮影することによって、水晶体の各組織(前嚢、皮質、核及び後嚢)の断層画像を一度に取得することができる。このため、被検眼Eの前眼部の撮影時間を短くすることができる。また、光干渉断層法では、赤外光を用いて撮影するため、撮影中に被検者は光源10からの光に対して眩しさを感じない。このため、被検者の負担を小さくすることができる。
【0051】
また、本実施例では、ステップS16で異常が検出された組織についてのみ、続くステップS18における組織毎の2次元画像の作成及びステップS20における当該組織の解析を実行する。このため、異常が検出されなかった組織について、ステップS18及びステップS20の処理を省略することができ、演算装置60の処理速度を速くすることができる。
【0052】
なお、本実施例では、ステップS20のグレーディングにおいて、各組織をWHO分類に基づいてグレーディングしていたが、グレーディングの際に基準となる分類方法は特に限定されない。また、本実施例では、異常が検出された組織についてのみ当該組織の2次元画像を作成しているが、このような構成に限定されない。異常が検出された組織だけでなく、異常が検出されなかった組織の2次元画像も作成してもよい。
【0053】
また、本実施例では、ステップS12の被検眼Eの前眼部の断層画像の撮影において、ラジアルスキャン方式のみを用いていたが、このような構成に限定されない。例えば、ラジアルスキャン方式とラスタースキャン方式を組み合わせて、核の2次元断層画像作成用の断層画像と、核以外の組織(前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢)の正面画像作成用の断層画像を別個に撮影してもよい。具体的には、核の2次元断層画像作成用に、ラジアルスキャン方式で被検眼Eの前眼部を撮影する。例えば、放射状に8方向(具体的には、周方向に等間隔に8方向)の断層画像を撮影する。このとき、各方向について同じ位置で複数回(例えば、4回)ずつスキャンし、加算平均処理を実行する。また、核以外の組織(前嚢、前側皮質、後側皮質、後嚢)の正面画像作成用に、ラスタースキャン方式で被検眼Eの前眼部を撮影する。例えば、平行な256断面の断層画像を撮影する。
【0054】
上述した実施例のステップS12のように、1つのスキャン方式(ラジアルスキャン方式)で撮影した断層画像のみを用いて各組織の2次元画像を作成すると、スキャンの回数を1回にすることができる。一方で、核の2次元画像(断層画像)と核以外の2次元画像(正面画像)とで異なる方式で撮影した断層画像を用いると、それぞれ精度よく2次元画像を作成することができる。核について作成される2次元画像は断層画像であるため、各断層画像が角膜頂点を含むように撮影するラジアルスキャンを採用する。一方、核以外の組織について作成される2次元画像はEn-face画像であるため、当該組織全体を撮影できればよい。したがって、ラジアルスキャン方式であっても、ラスタースキャン方式であっても、当該組織全体を撮影できる。しかしながら、被検眼Eの前眼部全体の断層画像を撮影する際には複数枚の画像を撮影するため、撮影開始から終了までに時間を要する。この間に、被検眼Eが動いてしまうことがある。ラジアルスキャン方式で撮影した場合に撮影中に被検眼Eが動いてしまうと、作成したEn-face画像において被検眼Eが動く前後でずれが生じることがある。一方、ラスタースキャン方式で撮影すると、撮影中に被検眼Eが動いても、作成したEn-face画像においてずれが生じ難い。このように、2次元画像を作成する際に組織毎に適した方式で撮影した断層画像を用いることによって、各組織の2次元画像を精度よく作成できる。
【0055】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
10:光源
14:干渉光学系
20:スキャニング-アライメント光学系
24:参照部40:バランス検出器
50:K-clock発生装置
52:第1駆動装置
54:第2駆動装置
56:タッチパネル
60:演算装置
E:被検眼