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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 5/04 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A63F5/04 650
A63F5/04 631
A63F5/04 603A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019098251
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020191988
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】511232514
【氏名又は名称】株式会社BOOOM
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 敬仁
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-096865(JP,A)
【文献】特開2004-129769(JP,A)
【文献】特開2002-224277(JP,A)
【文献】特開2017-064210(JP,A)
【文献】特開2004-057310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の図柄を変動表示又は停止表示するための回転リールと、
前記回転リールの図柄を変動表示させるためのスタートスイッチと、
前記回転リールに対応して設けられ、対応する回転リールの図柄を停止表示させるためのストップスイッチと、
複数の当せん役のいずれかに当せんしたか又はハズレかの抽せんを行う当せん抽せん手段と、
前記複数の当せん役に対応する当せん領域を記憶した役抽せんテーブルと、
前記当せん抽せん手段の抽せん結果と前記ストップスイッチの操作とに基づいて前記回転リールの図柄の停止表示に係る制御を行うリール制御手段と、
有効ライン上に停止表示された前記回転リールの図柄組み合わせに基づいて前記複数の当せん役のいずれかに入賞したか又は入賞しなかったかの判定を行う入賞判定手段と、
前記回転リールの前面に配置された透過液晶パネルと、
を備え、
前記透過液晶パネルは、前記有効ラインから外れて特定図柄が停止表示されたときに、当該特定図柄が停止表示された位置に重なる位置に当該特定図柄が停止表示されたことを示すオーバーレイ表示を行い、
前記オーバーレイ表示を行った状態で次ゲームを実行可能であることを特徴とする、遊技機。
【請求項2】
前記オーバーレイ表示がされた状態でゲームが実行されて前記回転リールの図柄が停止表示され、前記オーバーレイ表示と前記回転リールに停止表示された図柄とによって所定の図柄組み合わせが表示されたときに、遊技者に所定の利益が付与されるように構成されていることを特徴とする、請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記所定の利益は、前記ストップスイッチの有利な操作態様を遊技者に指示する特定遊技に係る利益であることを特徴とする、請求項2記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スロットマシンなどの遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスロットマシンは、図柄を変動表示させる複数の回転リールを備えており、遊技者の操作により回転リールの図柄を停止表示させるようになっている。そして、すべての回転リールを停止したときに、予め定められた図柄組み合わせが有効ライン上に揃うことで入賞が発生するようになっている。
【0003】
こうしたスロットマシンとして、回転リールの前面に透過型の液晶表示装置を配置し、遊技に係る演出を実行するものが存在する。例えば、特許文献1には、ゲームの開始後、すべての回転リールが停止操作されるまでの期間において、回転リールの前面に配置した透過型の液晶表示装置を使用して演出を行うスロットマシンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-97731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来のスロットマシンでは、透過型の液晶表示装置が単に演出に使用されるだけであった。
そこで、本発明は、透過型の液晶表示装置を使用することで、従来にはない新たなゲーム性を実現可能な遊技機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
すなわち、複数の図柄を変動表示又は停止表示するための回転リールと、前記回転リールの図柄を変動表示させるためのスタートスイッチと、前記回転リールに対応して設けられ、対応する回転リールの図柄を停止表示させるためのストップスイッチと、複数の当せん役のいずれかに当せんしたか又はハズレかの抽せんを行う当せん抽せん手段と、前記複数の当せん役に対応する当せん領域を記憶した役抽せんテーブルと、前記当せん抽せん手段の抽せん結果と前記ストップスイッチの操作とに基づいて前記回転リールの図柄の停止表示に係る制御を行うリール制御手段と、有効ライン上に停止表示された前記回転リールの図柄組み合わせに基づいて前記複数の当せん役のいずれかに入賞したか又は入賞しなかったかの判定を行う入賞判定手段と、前記回転リールの前面に配置された透過液晶パネルと、を備え、前記透過液晶パネルは、前記有効ラインから外れて特定図柄が停止表示されたときに、当該特定図柄が停止表示された位置に重なる位置に当該特定図柄が停止表示されたことを示すオーバーレイ表示を行い、前記オーバーレイ表示を行った状態で次ゲームを実行可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記の通りであり、回転リールの前面に配置された透過液晶パネルを備え、透過液晶パネルは、有効ラインから外れて特定図柄が停止表示されたときに、当該特定図柄が停止表示された位置に重なる位置に当該特定図柄が停止表示されたことを示すオーバーレイ表示を行う。そして、このオーバーレイ表示を行った状態で次ゲームを実行可能である。このような構成によれば、オーバーレイ表示を次ゲームに持ち越すことで、停止表示された特定図柄を次ゲーム以降に持ち越すという新たなゲーム性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】スロットマシンの外観図である。
図2】スロットマシンの構成を概略的に示すブロック図である。
図3】スロットマシンの有効ラインを示す説明図である。
図4】各リールの図柄配列を示す図である。
図5】回転リールと透過液晶パネルとの関係を示す概略図である。
図6】透過液晶パネルを正面から見た図である。
図7】オーバーレイ表示を使用した特殊有効ラインを示す説明図である。
図8】回転リールおよび透過液晶パネルの表示内容を説明する図であって、(a)回転リールが回転中の図、(b)回転リールが停止表示された直後の図、(c)透過液晶パネルによるオーバーレイ表示が実行されたときの図、(d)オーバーレイ表示を行った状態で次ゲームが開始し、回転リールが回転中の図である。
図9】回転リールおよび透過液晶パネルの表示内容を説明する図であって、(a)オーバーレイ表示がされた状態でゲームが実行されて回転リールの図柄が停止表示されたときの図、(b)停止表示された回転リールの図柄を示す図、(c)オーバーレイ表示の図柄を示す図、(d)次ゲームのオーバーレイ表示を示す図である。
図10】特殊有効ライン上に特定図柄が揃った場合の上乗せ当せん確率を示す表であって、(a)第1の例に係る当せん確率を示す表、(b)第2の例に係る当せん確率を示す表である。
図11】変形例に係る回転リールおよび透過液晶パネルの表示内容を説明する図であって、(a)オーバーレイ表示がされた状態でゲームが実行されて回転リールの図柄が停止表示されたときの図、(b)透過液晶パネルによるオーバーレイ表示が実行されたときの図、(c)オーバーレイ表示を行った状態で次ゲームが開始し、回転リールが回転中の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態を、遊技機としてスロットマシン10を例に説明する。
(スロットマシン10)
スロットマシン10は、図1に示すように、四角箱状の筐体11と、筐体11の正面側に開閉自在に取り付けられる前扉31を有する。この前扉31には、遊技者側に向かって臨む表示窓12が形成されている。
【0010】
また、前扉31の高さ方向略中央部には、スロットマシン10を作動させるための操作部31Aおよびメダル投入口14が設けられている。操作部31Aには、ベットスイッチ16、精算スイッチ17、スタートスイッチ30、ストップスイッチ50などが設けられている。
【0011】
また、操作部31Aの下方には、下パネル31Bを挟んで、メダルを払い出すためのメダル払い出し口18と、メダル払い出し口18から払い出されたメダルを貯留可能な下皿31Cが設けられている。
【0012】
上記した前扉31の表示窓12には、背後の回転リール40の図柄を見ることができる図柄表示窓13が形成されている。回転リール40は、図柄表示窓13の裏側に配置されて、回転可能にスロットマシン10に取り付けられており、外周表面に表示された複数の図柄を変動表示又は停止表示するためのものである。本実施形態においては、左リール41、中リール42、右リール43の3個の回転リール40が設けられており、それぞれの回転リール40が個別に回転可能となっている。
【0013】
上記した図柄表示窓13からは、3個の回転リール40のそれぞれについて、上段、中段、下段の3段の図柄が表示されるようになっており、計9個の図柄が図柄表示窓13を通して表示されるようになっている。そして、この計9個の図柄の表示位置の組合せによって有効ラインが設定されている。有効ラインとは、3個の回転リール40のそれぞれについて表示位置にある図柄を1個ずつ繋いでできるラインのうち、入賞するために有効となる図柄組合せの並びを規定したラインである。本実施の形態においては、図3に示すように、左リール41の中段の図柄と、中リール42の中段の図柄と、右リール43の中段の図柄と、を繋ぐラインLが有効ラインとして設定されている。この有効ラインに沿って役に対応付けられた図柄組合せが表示されると、当該役に入賞となる。
【0014】
また、本実施形態では、1回のゲームを行うために、メダルを1~3枚ベットする(掛ける)ことが可能となっており、1枚のメダルをベットした場合も、2枚のメダルをベットした場合も、3枚のメダルをベットした場合も、上記したラインLが有効ラインとなるように構成されている。
このスロットマシン10の内部には、図示しないが、スロットマシン10の全体の動作を制御するための制御装置20(図2参照)が内蔵されている。
【0015】
(入力段)
上記制御装置20の入力段には、図2に示すように、投入スイッチ15、ベットスイッチ16、精算スイッチ17、スタートスイッチ30、左ストップスイッチ51、中ストップスイッチ52、右ストップスイッチ53が接続されている。
なお、入力段に接続されるのは上記した各入力装置に限定されるものではない。
【0016】
(投入スイッチ15)
投入スイッチ15は、図1に示すように、メダル投入口14の下方に内蔵されたスイッチであって、投入された遊技メダルを検知するためのものである。投入スイッチ15が遊技メダルを検知すると、最大50枚まで遊技メダルを遊技機内部に貯留(クレジット)することができるようになっている。このようにクレジットされた遊技メダルは、クレジット表示部32に数値として表示され、次ゲーム以降に使用することができる。
【0017】
(ベットスイッチ16)
ベットスイッチ16は、図1に示すように、操作部31Aの上面に位置するスイッチである。ベットスイッチ16を押下することで、クレジットをメダル投入に代えることができる。クレジットをメダル投入に代えることで、ゲームを開始可能な状態となる。
【0018】
(精算スイッチ17)
精算スイッチ17は、図1に示すように、操作部31Aの上面左端に位置するスイッチであって、クレジットされているメダルを払い戻すためのものである。
【0019】
(スタートスイッチ30)
スタートスイッチ30は、図1に示すように、操作部31Aの正面左側に位置するレバーである。ゲームを開始可能な状態でスタートスイッチ30を操作すると、後述するリールユニット60の駆動が開始し、回転リール40の図柄が変動表示される。
【0020】
(ストップスイッチ50)
ストップスイッチ50は、後述するリールユニット60の駆動を停止させるためのものである。具体的には、ストップスイッチ50は、図1に示すように、各回転リール40(左リール41,中リール42,右リール43)に対応した3個のスイッチ(左ストップスイッチ51、中ストップスイッチ52、右ストップスイッチ53)から構成され、各回転リール40の下方に一個ずつ配置されている。回転リール40に対応したストップスイッチ50の操作により、当該対応した回転リール40が回転を停止し、回転リール40の図柄が停止表示されるようになっている。
【0021】
(出力段)
前記制御装置20の出力段には、図2に示すように、リールユニット60、ホッパーユニット65、演出部66(透過液晶パネル67、ランプ68、スピーカ69)、の各パーツが接続されている。
なお、出力段上記した各パーツに限定されるものではない。
【0022】
(リールユニット60)
リールユニット60は、特に図示しないが枠体に固定あるいは支持された3個のステッピングモータと、各々のステッピングモータの出力軸に固定された3個の回転リール40(左リール41,中リール42,右リール43)とから構成されている。各回転リール40は、短円筒状の回転ドラムと、この回転ドラムの周囲に貼付されるテープ状のリールテープとを備えている。このリールテープの外周面には、それぞれ20個の図柄が等間隔で表示されている。
なお、本実施形態に係るスロットマシン10は、複数の図柄が図4に示すような図柄配列で各回転リール40の表面に表示されている。
【0023】
具体的には、左リール41には、回転方向に見て「スイカ」「ベル」「チェリー」「Replay」「特定図柄つきチェリー」「スイカ」「ベル」「チェリー」「Replay」「特定図柄」「スイカ」「ベル」「青7」「Replay」「特定図柄」「スイカ」「ベル」「赤7」「Replay」「特定図柄」の順に図柄が表示されている。
【0024】
また、中リール42には、回転方向に見て「特定図柄」「ベル」「スイカ」「Replay」「ベル」「特定図柄」「ベル」「青7」「Replay」「ベル」「特定図柄」「ベル」「スイカ」「Replay」「ベル」「特定図柄」「ベル」「赤7」「Replay」「ベル」の順に図柄が表示されている。
【0025】
また、右リール43には、回転方向に見て「特定図柄」「スイカ」「ベル」「Replay」「特定図柄」「スイカ」「ベル」「Replay」「特定図柄」「青7」「ベル」「Replay」「特定図柄」「スイカ」「ベル」「Replay」「特定図柄」「赤7」「ベル」「Replay」の順に図柄が表示されている。
【0026】
(ホッパーユニット65)
ホッパーユニット65は、図1に示すように、筐体11の内部に配置されており、ゲームの結果等に基づいてメダルを払い出すためのものである。
【0027】
(演出部66)
演出部66は、制御装置20の制御により、入賞等の報知など、種々の演出を行うものである。具体的には、演出部66は、透過液晶パネル67と、ランプ68と、スピーカ69と、から構成されている。このうち、ランプ68は、発光体の点灯又は点滅により入賞等を報知するためのものである。また、スピーカ69は、入賞音の発生により入賞等を報知するためのものである。
【0028】
透過液晶パネル67は、入賞の報知その他の演出を表示するためのものであり、図5に示すように、回転リール40の前方(遊技者側)に配置されている。この透過液晶パネル67は、液晶画面の表示部の裏側を透けて見せることができるものであり、液晶素子に対して電圧が印加されていない状態で透光性を有するように構成されている。
【0029】
本実施形態に係る透過液晶パネル67は、図1および図5に示すように、図柄表示窓13と重なるように配置されている。このため、この透過液晶パネル67に相対する遊技者は、透過液晶パネル67および図柄表示窓13を通して、背後の回転リール40の図柄を視認できるように構成されている。なお、この透過液晶パネル67の裏面には、図柄表示窓13以外の部分において透過液晶パネル67の背後が視認できないように隠すための遮蔽板35が設けられている。
【0030】
この透過液晶パネル67の表示領域は、その目的によって3つの領域に区分することができる。すなわち、非透過部67aと、透過表示部67bと、非表示部67cと、である。
【0031】
このうち非透過部67aは、図5に示すように、裏面に遮蔽板35が設けられた箇所であり、言い換えると、図柄表示窓13に重なっていない表示領域である。この非透過部67aにおいては、透過液晶パネル67が透けて見えることはないので、一般の非透過型の液晶画面と同様に自由な演出表示を行うことができる。
【0032】
また、透過表示部67bおよび非表示部67cは、図5および図6に示すように、図柄表示窓13に重なった部分である。このうち、透過表示部67bは、図柄表示窓13の上段ラインおよび下段ラインに重なるように設けられた表示領域である。すなわち、透過表示部67bは、図柄表示窓13を通して表示される回転リール40の3段の図柄のうち、上段の図柄および下段の図柄を透視できる位置に設けられた表示領域である。一方、非表示部67cは、図柄表示窓13の有効ライン、すなわち、本実施例においては中段ラインに重なるように設けられた表示領域である。すなわち、非表示部67cは、図柄表示窓13を通して表示される回転リール40の3段の図柄のうち、有効ラインである中段の図柄を透視できる位置に設けられた表示領域である。このため、透過液晶パネル67が図柄表示窓13に重なる部分のうち、上下の1/3の領域が透過表示部67bとなっており、透過表示部67bに挟まれた中間の1/3の領域が非表示部67cとなっている。
【0033】
(制御装置20)
制御装置20は、スロットマシン10の作動を制御するためのものである。この制御装置20は、CPUを中心に構成され、ROM、RAM、I/O等を備えている。そして、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み込むことで、各種の制御を実行するように構成されている。
【0034】
本実施形態に係る制御装置20は、図2に示すように、遊技状態制御手段100、当せん抽せん手段110、役抽せんテーブル120、リール制御手段130、入賞判定手段140、ホッパー制御手段150、演出制御手段200、押し順報知制御手段210、設定手段220、特定遊技制御手段230、遊技区間制御手段240、オーバーレイ表示管理手段250、特殊入賞判定手段260、の各手段として機能する。なお、制御装置20としては、上記した各手段に限定されるものではなく、他の手段を含んでいても良い。
【0035】
(遊技状態制御手段100)
遊技状態制御手段100は、遊技状態の管理を行うためのものである。本実施形態に係るスロットマシン10は複数の遊技状態を備えており、遊技状態制御手段100は現在の遊技状態を記憶するとともに、遊技状態の移行契機となる所定の事象が発生したときに遊技状態を切り替える処理を実行する。
【0036】
本実施形態に係る遊技状態は、リプレイ役の当せん確率等によって規定されるRT状態を含むものである。例えば、工場出荷時又は設定変更時に設定される初期状態や、初期状態よりも相対的にリプレイ役の当せん確率が向上したリプレイ高確率状態などを含んでいる。
【0037】
(当せん抽せん手段110)
当せん抽せん手段110は、複数の当せん役のいずれかに当せんしたか又はハズレかの抽せんを行うためのものである。すなわち、予め定めた抽せん確率に基づいて当せん役に係る抽せんを行うものである。そして、当せん抽せん手段110による抽せんの結果、所定の当せん役に当せんした場合に当せんフラグが成立し、この当せんフラグの成立中に、回転リール40の停止図柄の組み合わせが予め定められた当せん図柄と一致したことを条件に入賞し、遊技者にメダルの払い出しや、特別遊技等の利益が付与されるように設定されている。
【0038】
具体的には、当せん抽せん手段110は、乱数を所定の範囲内で発生させる乱数発生手段を備え、この乱数発生手段が発生する乱数をスタートスイッチ30の操作タイミングで抽出し、抽出した乱数を役抽せんテーブル120に照合することにより抽せんを行う。本実施形態に係る当せん抽せん手段110は、16bitで乱数を発生させるため、0~65535までの65536通りの乱数を発生させるようになっている。後述する役抽せんテーブル120には、この65536通りの乱数のそれぞれに当せん領域が割り当てられており、この役抽せんテーブル120に乱数を照合することにより当せん役またはハズレを特定することができる。
【0039】
本実施形態に係るスロットマシン10は、当せん役として、入賞により遊技メダルを新たに投入することなく再度のゲームを行うことができるリプレイ役と、入賞により遊技メダルを払い出す小役と、を備えている。
【0040】
(役抽せんテーブル120)
役抽せんテーブル120は、当せん抽せん手段110が抽出した乱数がいずれかの当せん役またはハズレに対応するかを定めたものである。この役抽せんテーブル120は、複数の当せん役に対応する当せん領域を記憶しており、具体的には、当せん抽せん手段110において発生する乱数と当せん役との対応表として設けられている。当せん抽せん手段110は、遊技状態や設定値等に応じてこれらの役抽せんテーブル120を切り替えて使用する。これにより、遊技状態ごとに当せん確率が変動するように構成されている。
【0041】
(リール制御手段130)
リール制御手段130は、有効なスタートスイッチ30の操作信号に基づいて回転リール40を回転させるとともに、特に図示しないがリール回転検知センサの検知信号に基づいて図柄の現在位置を認識しつつ、当せん抽せん手段110の抽せん結果および有効なストップスイッチ50の操作タイミングに基づいて、回転リール40の停止を制御するためのものである。
【0042】
このリール制御手段130は、メダルがベットされ、前ゲーム開始から所定時間(いわゆるウエイト時間)が経過しているなど、所定のゲーム開始条件を満たしている場合には、スタートスイッチ30の操作信号に基づいて全ての回転リール40の回転を開始させる。
【0043】
また、回転リール40が回転中にいずれかのストップスイッチ50が操作されると、ストップスイッチ50の操作信号に基づきストップ信号を出力し、操作されたストップスイッチ50に対応する回転リール40の回転を停止させる。
【0044】
なお、リール制御手段130は回転リール40を停止させる際、停止操作がされたときの図柄表示位置を基準として、最大4コマのスベリコマ数で図柄を回転方向に移動させて停止させることができる。このような制御により、当せん抽せん手段110の抽せん結果が「ハズレ」の場合には、3個の回転リール40の図柄が如何なる入賞の態様にも揃わないように蹴飛ばし制御を行う。また、抽せん結果が所定の当せん役に当せんの場合には、3個の回転リール40の図柄が極力当該当せんに係る入賞の態様となるように引き込み制御を行う。
【0045】
このような蹴飛ばし制御及び引き込み制御は、当せん抽せん手段110による役抽せんの結果や、ストップスイッチ50の操作タイミング、停止位置の優先順位などに基づいて計算されて実行される。例えば、2種類以上の役に同時当せんしている場合、各役に対応付けられた優先順位に従って、優先順位の高い役に対応する図柄組合せを有効ライン上に表示できるように引き込み制御が行われる。
【0046】
なお、後述する押し順小役に当せんしている場合には、正解の押し順で各ストップスイッチ50が操作された場合には、停止操作のタイミングに関わらず、当該押し順小役に係る図柄を有効ライン上に引き込んで、押し順小役を入賞させる。一方、その正解の押し順以外の押し順で各ストップスイッチ50が操作された場合には、当該押し順小役に係る図柄が有効ライン上に揃わないようにして、押し順小役が入賞しないように制御する。
【0047】
(入賞判定手段140)
入賞判定手段140は、ストップスイッチ50の操作により3個の回転リール40が停止したときに、その表示態様に基づいて、入賞したか又は入賞なしかの判定を行うためのものである。具体的には、すべての回転リール40の回転が停止した際に、有効ラインLに所定の図柄配列が揃うことを条件として、当該図柄配列に対応した当せん役に入賞したと判定する。そして、入賞がメダル払い出しを伴う場合には、ホッパーユニット65に払い出し入賞信号を出力する(もしくはメダルを払い出す代わりにクレジットに加算する)。また、入賞が遊技状態を移行させるものであれば、遊技状態制御手段100に通知して遊技状態を移行させる。また、リプレイ役が入賞した場合には、自動ベット処理を行い、遊技メダルを新たに投入することなく次ゲームを開始できるようにする。
【0048】
(ホッパー制御手段150)
ホッパー制御手段150は、入賞判定手段140からの払い出し入賞信号、精算スイッチ17の操作信号などに基づいて、ホッパーユニット65を作動させ、メダルの払い出しを制御するためのものである。なお、入賞がメダル払い出しを伴う場合に、この払い出しメダルを自動的にクレジットとして電子的に貯留し、クレジットの許容枚数を超過する払い出し分だけをホッパーユニット65から払い出させるようにしてもよい。
【0049】
(演出制御手段200)
演出制御手段200は、透過液晶パネル67、ランプ68やスピーカ69等の演出部66の作動を制御するためのものである。この演出制御手段200は、ROMに記憶されている演出データをもとに、入賞の報知や押し順報知などの演出を行わせる。
【0050】
また、この演出制御手段200は、複数回のゲームにわたって連続演出を行わせることができる。所定の条件下においてストーリー性のある連続演出を行わせることで、遊技者に有利な状況を示唆し、ゲームを盛り上げることができるようになっている。
【0051】
(押し順報知制御手段210)
押し順報知制御手段210は、後述する有利区間において押し順報知を制御するためのものである。具体的には、この押し順報知制御手段210は、押し順小役に当せんしたときに、当該押し順小役を入賞させるための正解の押し順(ストップスイッチ50の操作順)を取得し、その正解の押し順を報知するための演出を選択する。押し順報知制御手段210が選択した演出は、演出制御手段200に通知されて実行され、これにより押し順報知が実行される。この押し順報知は、例えば、透過液晶パネル67に操作順を表示したり、操作すべきストップスイッチ50をスピーカ69から音声で報知したり、操作すべきストップスイッチ50を光らせたりすることで行われる。
【0052】
なお、押し順小役は所定の押し順でストップスイッチ50が操作されたときに入賞図柄が揃うように制御される小役やリプレイ役である。押し順が報知されない場合、どの押し順小役に当せんしたかが分からず、正解の押し順も分からないため、押し順小役を狙って入賞させることは困難となっている。一方で、正解の押し順が報知される場合には、押し順報知に従ってストップスイッチ50を操作することで容易に押し順小役を入賞させることができるようになっている。
【0053】
押し順報知制御手段210は、一部または全部の押し順小役に関して、特定遊技(ARTまたはAT)中にのみ押し順報知が行われるように制御する。このため、特定遊技中は押し順小役が入賞しやすくなっており、一方、非特定遊技中は押し順小役が入賞しにくくなっている。
【0054】
(設定手段220)
設定手段220は、遊技者への有利度が異なる複数段階の設定値の中から設定値を設定するためのものである。この設定値は、鍵のかけられた筐体11の内部に設けられたスイッチを操作することで変更可能であり、スロットマシン10が設置されたホールの管理者によって、ホールの営業開始前あるいは営業終了後に予め設定される。図示しないが、この設定値ごとに異なる役抽せんテーブル120が設けられており、役抽せんにおいて設定値に応じた役抽せんテーブル120が用いられることにより、設定値に応じてメダルの払出率が変わるようになっている。本実施形態においては、設定値は1~6の6段階からなり、6が最も払出率が高く、5、4、3、2、1の順に値が小さくなるほど払出率が低くなる。払出率の点からでは、設定値として6が設定されているときが遊技者にとって最も遊技に関する有利度が高く、5、4、3、2、1の順に値が小さくなるほど遊技に関する有利度が段階的に低くなる。なお、本実施形態においては設定値を6段階としているが、これに限らず、設定値は5段階以下であってもよい。
【0055】
(特定遊技制御手段230)
特定遊技制御手段230は、特定遊技の実行を制御するためのものである。特定遊技とは、押し順報知制御手段210を作動させることで、遊技者に有利な操作態様を表示する指示機能を発動させた遊技であり、ART(アシストリプレイタイム)やAT(アシストタイム)と呼ばれる遊技である。
【0056】
この特定遊技制御手段230は、後述する有利区間中のゲームにおいて特定遊技抽せんを実行し、特定遊技抽せんに当せんしたときに特定遊技を開始する制御を実行する。なお、本実施形態においては特定遊技抽せんに当せんしたときに特定遊技を開始するようにしているが、これに限らず、特定遊技抽せんを介さずに特定遊技を開始するようにしてもよい。例えば、所定の条件下において有利区間に移行すると、有利区間に移行すると同時に特定遊技を開始するようにしてもよい。
【0057】
特定遊技制御手段230による特定遊技抽せんは、例えば、乱数発生手段が発生する乱数をスタートスイッチ30の操作タイミングで抽出し、抽出した乱数を特定遊技抽せんテーブルに照合することにより行われる。特定遊技抽せんテーブルにおいては、抽出可能なすべての乱数にそれぞれ「当たり」か「ハズレ」が割り当てられているため、乱数を特定遊技抽せんテーブルに照合することにより「当たり」か「ハズレ」を特定することができる。
【0058】
このように開始した特定遊技は、付与された特定遊技ゲーム数を消化するまで継続する。そして付与された特定遊技ゲーム数を消化したら、特定遊技制御手段230は特定遊技を終了させる。
【0059】
なお、特定遊技ゲーム数は、特定遊技の開始時に決定されるとともに、上乗せ抽せんに当せんしたときに加算される。上乗せ抽せんは、特定遊技の実行中に行われる抽せんであり、例えば、乱数発生手段が発生する乱数をスタートスイッチ30の操作タイミングで抽出し、抽出した乱数を上乗せ抽せんテーブルに照合することにより行われる。上乗せ抽せんテーブルにおいては、抽出可能なすべての乱数にそれぞれ「当たり」か「ハズレ」が割り当てられているため、乱数を上乗せ抽せんテーブルに照合することにより「当たり」か「ハズレ」を特定することができる。この上乗せ抽せんに当せんすると、所定のゲーム数が特定遊技ゲーム数に加算される。なお、このように上乗せするゲーム数は予め定められた一定のゲーム数であってもよいし、上乗せするゲーム数を抽せんにより決定するようにしてもよい。
【0060】
(遊技区間制御手段240)
遊技区間制御手段240は、遊技区間を制御するためのものである。本実施形態に係るスロットマシン10は、遊技区間として、ストップスイッチ50の押し順が報知されない通常区間と、ストップスイッチ50の押し順を報知可能な有利区間と、を備えている。
【0061】
通常区間とは、当せん役の入賞をアシストできない遊技区間である。具体的には、押し順報知制御手段210による押し順報知ができない遊技区間である。この遊技区間では上記した特定遊技を実行することができない。
【0062】
また、有利区間とは、当せん役の入賞をアシスト可能な遊技区間である。具体的には、押し順報知制御手段210による押し順報知が可能な遊技区間である。この遊技区間では上記した特定遊技を実行可能である(逆に言えば、特定遊技中は必ず有利区間である。ただし、非特定遊技中は有利区間の場合もあるし通常区間の場合もある)。
【0063】
この遊技区間制御手段240は、通常区間のゲーム中(例えばゲームの開始時)に有利区間抽せんを実行し、有利区間抽せんに当せんしたときに遊技区間を有利区間に移行する制御を実行する。遊技区間制御手段240による有利区間抽せんは、例えば、乱数発生手段が発生する乱数をスタートスイッチ30の操作タイミングで抽出し、抽出した乱数を有利区間抽せんテーブルに照合することにより行われる。有利区間抽せんテーブルにおいては、抽出可能なすべての乱数にそれぞれ「当たり」か「ハズレ」が割り当てられているため、乱数を有利区間抽せんテーブルに照合することにより「当たり」か「ハズレ」を特定することができる。
【0064】
この有利区間は、予め定められた所定の有利区間ゲーム数(例えば1500ゲーム)を消化するか、または、予め定められた増加枚数(例えば2400枚)を超えるまで継続する。所定の有利区間ゲーム数を消化したか、または所定の増加枚数を超えたら、遊技区間は通常区間に移行する。なお、このような処理に加え、特定遊技が終了したときに有利区間が終了するようにしてもよい。
【0065】
(オーバーレイ表示管理手段250)
オーバーレイ表示管理手段250は、透過液晶パネル67を使用したオーバーレイ表示を管理するためのものである。オーバーレイ表示とは、有効ライン、本実施例においては有効ラインL(図柄表示窓13の中段ライン)から外れて特定図柄(図4に示す「特定図柄」または「特定図柄つきチェリー」)が停止表示されたときに(すなわち上段または下段に特定図柄が停止表示されたときに)、当該特定図柄が停止表示された位置に重なる位置に当該特定図柄が停止表示されたことを示すための表示である。具体的には、回転リール40の停止図柄に重ねて、特定図柄を示す図形を液晶画面に表示することで、オーバーレイ表示が実行される。
【0066】
このオーバーレイ表示の実施態様については後ほど詳しく説明するが、例えば図8(b)に示すように、図柄表示窓13の上段または下段ラインに特定図柄が停止表示されたときにオーバーレイ表示が実行される。回転リール40の特定図柄に重なるようにオーバーレイ表示が実行されることで、図8(c)に示すように、回転リール40の前面に配置された透過液晶パネル67に特定図柄を示す図形が表示される。このため、オーバーレイ表示が回転リール40の特定図柄と重なって表示されることになる。
【0067】
このオーバーレイ表示は、透過液晶パネル67の透過表示部67bに表示されるようになっており、非表示部67cには表示されない。言い換えると、オーバーレイ表示は、図柄表示窓13の上段ラインまたは下段ラインに重なるように行われ、中段ラインには重ならない。このため、オーバーレイ表示が有効ラインLを構成する図柄を隠してしまうことがないので、オーバーレイ表示が遊技の妨げとなることはない。
【0068】
オーバーレイ表示管理手段250は、図柄表示窓13に表示可能な9個の図柄停止表示位置のうち、どの位置にオーバーレイ表示を行うのかを管理・記憶するためのものである。このオーバーレイ表示管理手段250は、すべての回転リール40が停止されて1ゲームが終了したときに、回転リール40の上段または下段に特定図柄が表示されている場合には、その特定図柄に重なる位置に、透過液晶パネル67を使用してオーバーレイ表示を行うように制御する。
【0069】
このように実行されたオーバーレイ表示は、次ゲームが終了するまで表示が継続される。すなわち、オーバーレイ表示を行った状態で次ゲームを実行可能となっている。このため、あるゲームを実行中には、前回の図柄停止位置に応じて決定されたオーバーレイ表示が継続された状態となっている。なお、本実施形態に係るオーバーレイ表示は、基本的には次ゲームが終了するとリセットされるようになっているが、更に次のゲーム以降まで持ち越されるように設定してもよい。
【0070】
なお、このオーバーレイ表示はすべてのゲームで行う必要はない。本実施形態においては、特定遊技中にのみオーバーレイ表示を行うようにしている。これにより、特定遊技中にのみ、オーバーレイ表示を使用した遊技が実行されるようになっている。
【0071】
(特殊入賞判定手段260)
特殊入賞判定手段260は、ストップスイッチ50の操作により3個の回転リール40が停止したときに、回転リール40の表示態様と上記したオーバーレイ表示とに基づいて、特殊入賞が発生したか否かの判定を行うためのものである。
【0072】
特殊入賞とは、特殊有効ライン上に特定図柄が3個揃うことを条件として入賞するものであり、このときの特定図柄は、オーバーレイ表示された図柄であってもよいし、回転リール40に停止表示された図柄であってもよい。
【0073】
本実施形態においては、図7に示すようなラインが特殊有効ラインとして設定されている。すなわち、(1)左リール41の下段の図柄と中リール42の中段の図柄と右リール43の上段の図柄とを繋ぐラインL1、(2)左リール41の上段の図柄と中リール42の上段の図柄と右リール43の上段の図柄とを繋ぐラインL2、(3)左リール41の中段の図柄と中リール42の中段の図柄と右リール43の中段の図柄とを繋ぐラインL3、(4)左リール41の下段の図柄と中リール42の下段の図柄と右リール43の下段の図柄とを繋ぐラインL4、(5)左リール41の上段の図柄と中リール42の中段の図柄と右リール43の下段の図柄とを繋ぐラインL5、が特殊有効ラインとして設定されている。これらの特殊有効ラインに沿って3個の特定図柄が表示されると、特殊入賞となる。
【0074】
特殊入賞となった場合、遊技者に所定の利益を付与可能となっている。本実施形態においては、2ライン以上で同時に特殊入賞となった場合に、特定遊技に係る利益が遊技者に付与されるようになっている。また、遊技者に付与される利益としては、特定遊技の上乗せ抽せんの当せん確率が向上するように設定されている。
【0075】
例えば、図10(a)に示すように、特殊入賞したラインの数が1以下の場合には、次ゲームにおける上乗せ抽せんの当せん確率が0%となっている。一方、特殊入賞したラインの数が2以上である場合には、次ゲームにおける上乗せ抽せんの当せん確率が50%となっている。このような設定によれば、2ライン以上で特殊入賞した場合に上乗せ抽せんの当せんが期待できるので、遊技者の期待感を高めることができる。
【0076】
なお、上乗せ抽せんの当せん確率をどのように設定するかは任意であり、上記した図10(a)に示す例に限らない。例えば、図10(b)に示すように、特殊入賞したラインの数が1以下の場合には、次ゲームにおける上乗せ抽せんの当せん確率が0%であり、2ラインで特殊入賞した場合には、次ゲームにおける上乗せ抽せんの当せん確率が50%であり、3ライン以上で特殊入賞した場合には、次ゲームにおける上乗せ抽せんの当せん確率が100%となるようにしてもよい。このように特殊入賞したライン数が増えていくに従って上乗せ抽せんの当せん確率が向上するように設定すれば、特殊入賞したライン数に応じて遊技者の期待感を変化させることができる。
【0077】
(オーバーレイ表示の例)
次に、どのような手順でオーバーレイ表示を実行するかについて、具体例を挙げて説明する。
まず、図8(a)に示すように、遊技者によってスタートスイッチ30が操作されて1回目のゲームが開始すると、回転リール40が回転を開始する。これにより、回転リール40の図柄が変動表示される。
【0078】
遊技者によってストップスイッチ50が操作されてすべての回転リール40が停止すると、図8(b)に示すように、計9個の図柄が停止表示される。このとき、入賞判定手段140は、有効ラインL(中段ライン)の図柄組み合わせを参照して入賞の判定を行う。
【0079】
なお、本実施形態においては、特定の役(例えば、押し順小役、リプレイ役、レア役など)に当せんしたときに、有効ライン外(図柄表示窓13の上段または下段)に特定図柄が停止表示されるように構成されている。
【0080】
次に、オーバーレイ表示管理手段250がオーバーレイ表示を行う。具体的には、図8(c)に示すように、図柄表示窓13の上段または下段に停止表示された回転リール40の特定図柄に重なるように、特定図柄が停止表示されたことを示すオーバーレイ表示を行う。この図8(c)においては、左リール41の下段と、中リール42の下段と、右リール43の上段とに、オーバーレイ表示を行っている。なお、このときにオーバーレイ表示の裏側に回転リール40の停止図柄が薄く透けて見えるようにしてもよい。以上で1回目のゲームが終了する。
【0081】
遊技者によってスタートスイッチ30が操作されて次ゲーム(2回目のゲーム)が開始すると、図8(d)に示すように、回転リール40が再び回転を開始する。このとき、オーバーレイ表示を行った状態で次ゲームが実行されるため、透過液晶パネル67を使用したオーバーレイ表示の裏側で回転リール40の図柄が変動表示されることになる。
【0082】
そして、遊技者によってストップスイッチ50が操作されてすべての回転リール40が停止すると、図9(a)に示すように、計9個の図柄が停止表示される。ただし、左リール41の下段、中リール42の下段、右リール43の上段においては、回転リール40の図柄を覆うようにオーバーレイ表示がされている。
【0083】
すなわち、回転リール40の停止表示は図9(b)に示すような態様となっているが、この上に図9(c)に示すようなオーバーレイ表示がされている。このため、オーバーレイ表示の背後の回転リール40の停止表示図柄(左リール41下段の特定図柄、中リール42下段のベル、右リール43上段のベル)は、オーバーレイ表示に隠されて遊技者が視認しにくくなっている。
【0084】
ただし、中段の有効ラインLにはオーバーレイ表示はされていないので、遊技者が入賞の可否を確かめることは可能である。入賞判定手段140は、中段の有効ラインLの図柄組み合わせを参照して入賞の判定を行う。
【0085】
また、特殊入賞判定手段260は、オーバーレイ表示と回転リール40に停止表示された図柄とによって所定の図柄組み合わせが表示されたか否かを判定する。すなわち、特殊有効ラインL1~5において、オーバーレイ表示であるか回転リール40に停止表示された図柄であるかにかかわらず、特定図柄が3個揃ったラインが存在するかをチェックする。この例では、図9(a)に示すように、右肩上がりの特殊有効ラインL1と、下段の特殊有効ラインL4とに、特定図柄が3個揃っているため、特殊入賞判定手段260は、2ラインで特殊入賞が発生したと判定する。2ライン以上で特殊入賞が発生した場合、既に説明したように、次ゲームで実行される上乗せ抽せんの当せん確率が向上する。
【0086】
その後、現在のオーバーレイ表示をリセットし(非表示にし)、再度、現在の停止表示図柄をもとにオーバーレイ表示を行う。すなわち、図9(b)に示すように、現在の停止表示位置においては、左リール41の下段と右リール43の下段とに特定図柄が停止表示されているため、この2つの位置に重なるようにオーバーレイ表示を行う。
【0087】
そして、遊技者によってスタートスイッチ30が操作されて次ゲーム(3回目のゲーム)が開始すると、図9(d)に示すように、新しいオーバーレイ表示を行った状態で回転リール40の図柄が変動表示される。
【0088】
このように、1ゲームごとにオーバーレイ表示が更新されていくとともに、1ゲームごとに特殊入賞が判定される。これにより、通常の入賞(中段の有効ラインLを使用した当せん役の入賞)とは別に、オーバーレイ表示を使用した特殊入賞が発生するようになっており、今までにない新たなゲーム性が実現されている。
【0089】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態に係るスロットマシン10は、回転リール40の前面に配置された透過液晶パネル67を備え、透過液晶パネル67は、有効ラインLから外れて特定図柄が停止表示されたときに、当該特定図柄が停止表示された位置に重なる位置に当該特定図柄が停止表示されたことを示すオーバーレイ表示を行う。そして、このオーバーレイ表示を行った状態で次ゲームを実行可能である。このような構成によれば、オーバーレイ表示を次ゲームに持ち越すことで、停止表示された特定図柄を次ゲーム以降に持ち越すという新たなゲーム性を実現することができる。
【0090】
例えば、オーバーレイ表示がされた状態でゲームが実行されて回転リール40の図柄が停止表示され、オーバーレイ表示と回転リール40に停止表示された図柄とによって所定の図柄組み合わせが表示されたときに、遊技者に所定の利益が付与されるように構成してもよい。
【0091】
また、所定の利益は、ストップスイッチ50の有利な操作態様を遊技者に指示する特定遊技に係る利益としてもよい。なお、上記した実施形態においては、特定遊技に係る利益として、上乗せ抽せんの当せん確率の向上を例に挙げて説明した。しかしながら、特定遊技に係る利益としてはこれに限らず、特定遊技抽せんの当せん確率の向上としてもよいし、上乗せ抽せんにおける上乗せゲーム数の向上としてもよい。
【0092】
なお、上記した実施形態においては、オーバーレイ表示が持ち越されるのが次ゲームのみであるとして説明したが、これに限らず、オーバーレイ表示が複数ゲームに渡って持ち越されるようにしてもよい。
【0093】
例えば、図11(a)に示すように、左リール41の下段、中リール42の下段、右リール43の上段にオーバーレイ表示がされている状態で、遊技者によってストップスイッチ50が操作されてすべての回転リール40が停止したときに、左リール41の上段、中リール42の上段、右リール43の下段に特定図柄が表示されたとする。この場合、既に実行されているオーバーレイ表示に加えて、新たに特定図柄が停止表示された位置でもオーバーレイ表示を行うようにしてもよい。
【0094】
具体的には、図11(b)に示すように、左リール41の上段および下段、中リール42の上段および下段、右リール43の上段および下段にオーバーレイ表示を実行してもよい。
【0095】
この場合、図11(c)に示すように、左リール41の上段および下段、中リール42の上段および下段、右リール43の上段および下段にオーバーレイ表示を行ったままで次ゲームが開始され、回転リール40の図柄が変動表示される。
【0096】
このようにオーバーレイ表示を複数ゲームに渡って持ち越すようにすることで、特殊入賞の確率が徐々に上がっていくようなゲーム性を実現することが可能である。また、特殊入賞のライン数が増えていくにつれて遊技者の得られる利益が大きくなるようにすれば、オーバーレイ表示が複数ゲームに渡って持ち越された場合に遊技者に大きな期待感を抱かせることができる。
【0097】
なお、オーバーレイ表示を複数ゲームに渡って持ち越す具体的な態様としては、種々のものが考えられる。例えば、通常はオーバーレイ表示を持ち越さない(1ゲームでリセットされる)が、特定の条件(レア役の表示など)を達成したときにのみオーバーレイ表示を持ち越すようにしてもよい。または、予め定められたゲーム数だけオーバーレイ表示を持ち越すようにしてもよい。または、所定の利益(上乗せ抽せんの当せんなど)が遊技者に付与されるまでオーバーレイ表示を持ち越すようにしてもよい。
【0098】
レア役に当せんしたときにオーバーレイ表示を持ち越す実施態様について説明すると、例えば、レア役に当せんしたゲームで図11(a)に示すような態様で停止表示がされたとする。この場合、前回のゲームでオーバーレイ表示されている特定図柄(左リール41の下段、中リール42の下段、右リール43の上段)と、今回停止表示された特定図柄(左リール41の上段、中リール42の上段、右リール43の下段)とを参照し、特殊入賞が発生しているか(特定図柄が揃っているか)が判定される。その後、図11(b)に示すように、レア役に当せんしているためすべてのオーバーレイ表示が持ち越され、その上で新たなオーバーレイ表示が実行される。そして、図11(c)に示すように、これらのオーバーレイ表示を行ったままで次ゲームが開始される。
【0099】
また、上記した実施形態においては、2ライン以上で同時に特殊入賞となった場合に遊技者に利益が付与されるようにしたが、これに限らない。1ラインでも特殊入賞となれば遊技者に利益が付与されるようにしてもよいし、3ライン以上で特殊入賞とならなければ遊技者に利益が付与されないようにしてもよい。
【0100】
また、上記した実施形態においては、特定遊技中にオーバーレイ表示を行うようにしたが、これに限らない。オーバーレイ表示を使用してどのような遊技性を実現するのかといった具体的な設計によって、任意のタイミングでオーバーレイ表示を行うことができる。例えば、すべての遊技でオーバーレイ表示を行うようにしてもよいし、有利区間中にオーバーレイ表示を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10 スロットマシン
11 筐体
12 表示窓
13 図柄表示窓
14 メダル投入口
15 投入スイッチ
16 ベットスイッチ
17 精算スイッチ
18 メダル払い出し口
20 制御装置
30 スタートスイッチ
31 前扉
31A 操作部
31B 下パネル
31C 下皿
32 クレジット表示部
35 遮蔽板
40 回転リール
41 左リール
42 中リール
43 右リール
50 ストップスイッチ
51 左ストップスイッチ
52 中ストップスイッチ
53 右ストップスイッチ
60 リールユニット
65 ホッパーユニット
66 演出部
67 透過液晶パネル
67a 非透過部
67b 透過表示部
67c 非表示部
68 ランプ
69 スピーカ
100 遊技状態制御手段
110 当せん抽せん手段
120 役抽せんテーブル
130 リール制御手段
140 入賞判定手段
150 ホッパー制御手段
200 演出制御手段
210 押し順報知制御手段
220 設定手段
230 特定遊技制御手段
240 遊技区間制御手段
250 オーバーレイ表示管理手段
260 特殊入賞判定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11