(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ
(51)【国際特許分類】
A47K 11/04 20060101AFI20220928BHJP
E03D 9/08 20060101ALI20220928BHJP
A61G 5/10 20060101ALN20220928BHJP
【FI】
A47K11/04
E03D9/08 G
E03D9/08 B
A61G5/10 704
(21)【出願番号】P 2019107815
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516101569
【氏名又は名称】株式会社キョウワコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】柵木 貞雄
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-115551(JP,A)
【文献】特開2001-314350(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104344021(CN,A)
【文献】実開昭60-036465(JP,U)
【文献】特開平09-273203(JP,A)
【文献】特開昭58-026138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/00-11/12
E03D 9/00- 9/16
A61G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式のボウルと、この可搬式ボウルを取り外し可能に収容するとともに使用者が着座可能な台座部と、この台座部に取付けられた給水部を含み、この給水部からの液体を前記ボウルに噴射可能な尻洗浄用の手動式ウォッシャーを備える手動式ウォッシャー付きポータブルトイレであって、
前記
手動式ウォッシャーは、
先端部に握りが形成されかつ前記台座部の一方の側面側に配設されたレバーと、
前記台座部の両側面間に延び、その一端側に前記レバーの一端部が固定して取付けられる軸と、
前記軸に対して向きが固定された弧状のウォッシャーノズルと、
前記ウォッシャーノズルに前記給水部から水または温水を含む液体を選択的に供給する弁部とを備え、
前記軸を介して前記レバーと前記ウォッシャーノズルの回動角を一致させ
、
前記軸は中空軸であり、この中空軸の長手方向中間部に流体出力穴を形成し、
この流体出力穴に連通する流体出力部と、
前記ウォッシャーノズルと前記流体出力部を接続する接続手段と、を設けたことを特徴とする手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【請求項2】
前記ウォッシャーノズルは一円弧状に形成されており、
前記ウォッシャーノズルの先端部であって使用者の尻に最も近接する外側面に尻洗浄穴を形成し、
前記尻洗浄穴は、前記レバーの回動角と同じ角度だけ前記中空軸の中心線周りに円運動を行うことを特徴とする請求項
1に記載の手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【請求項3】
前記給水部は前記台座部の上方に位置する水容器を含み、
前記中空軸の長手方向中間部であって前記流体出力穴が設けられた位置とは異なる位置に流体入力穴が形成されており、
前記弁部は、前記中空軸への取付け穴が形成されかつ前記台座部に固定された流体入力ブロックを有し、前記水容器と前記流体入力ブロックを接続する接続手段を設け、前記流体入力ブロックに、前記中空軸への取付け穴と半径方向外側から連通する半径方向穴を形成し、前記レバーを回動することにより、前記半径方向穴と前記流体入力穴が連通または閉塞されて前記水容器に収容された水を前記中空軸へ供給または供給遮断することを特徴とする請求項1
又は2に記載の手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【請求項4】
前記ウォッシャーノズルを前記中空軸に固定保持するステーを、前記ウォッシャーノズルおよび前記中空軸の外周に溶接、ロー付け、接着等の固定手段で取付けて設け、前記レバーおよび前記中空軸の回動角と前記ウォッシャーノズルの回動角を等しくしたことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【請求項5】
前記軸の長手方向中間部に支持板を、前記ウォッシャーノズルにステーをそれぞれ取付け、前記支持板の一端側と前記ステーの一端側を連結し、前記ウォッシャーノズルは前記軸の中心線を含む面内では回動自在であるが前記軸に直角な面内では変位不可として前記ウォッシャーノズルの回動角を前記レバーの軸に直角な面内の回動角に一致させたことを特徴とする請求項1に記載の手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【請求項6】
前記支持板の長手方向中間部と前記レバーの長手方向中間部を結ぶリンク部材を設け、前記レバー、前記軸、前記ステーおよび前記リンク部材で四節リンクを構成したことを特徴とする請求項
5に記載の手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【請求項7】
前記四節リンクは、前記レバーが左右方向に回動させられると、前記ウォッシャーノズルを左右に回動させることを特徴とする請求項
6に記載の手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【請求項8】
前記ウォッシャーノズルは一円弧状に形成されており、前記ウォッシャーノズルの先端部であって大径側である外側面に尻洗浄用の穴を形成し、前記尻洗浄用の穴は、前記レバーの軸に直角な面内の回動角と同じ角度だけ前記軸の軸心周りに円運動を行うことを特徴とする請求項1に記載の手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【請求項9】
前記軸の長手方向中間部に第1のリンク部材を、前記台座部に第3のリンク部材をそれぞれ取付け、前記弁部の弁体がスライド可能に流体入力ブロック本体に係止して第2のリンク部材を構成し、これによりクランクスライダー型の四節リンクを構成したことを特徴とする請求項
5ないし
8のいずれか1項に記載の手動式ウォッシャー付きポータブルトイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォッシャー付きポータブルトイレおよびウォッシャーに係り、特に電源等の手段を必要とせずに手動で動作可能な手動式ウォッシャー付きポータブルトイレおよび手動式ウォッシャーに関する。
【背景技術】
【0002】
傷病人や身体不具合な人または高齢者等の車椅子を使用する人およびベッドから容易に離れることができない人のために、ポータブルトイレが準備されている。このようなポータブルトイレは、例えば病院や介護設備で使用される場合にはベッドのそばに用意されている。また、車椅子で出かける場合等には車椅子での使用を考慮して、車椅子の座面に配置可能となっている。このようなポータブルトイレの例が、特許文献1ないし4に記載されている。
【0003】
特許文献1には、一般各種便器に取り付け可能で、かつポータブルトイレとしても使用できる敬老便器が開示されている。この公報に記載の敬老便器では、便座の左右に手つき台が設けられており、便器後部を前側に出すことで便器背面にウォッシャーや蓋取付け部を設けることを可能にしている。
【0004】
特許文献2には、汚物経路側ユニットを分離することができる水洗ポータブルトイレ装置が開示されており、具体的には、汚物を処理する回転動作部を備えた汚物経路側ユニットと、汚物経路側ユニットの動作部を駆動させる回転駆動部を備えた非汚物経路側ユニットと、動力伝達機構を水洗ポータブルトイレ装置が備えている。そして、汚物経路側ユニットの組立状態を維持したまま回転動作部から非汚物経路側ユニットの回転駆動部を分離可能にしている。
【0005】
特許文献3には、歩行困難な高齢者等が、車椅子に座ったまま緊急に用が足せて、洗浄装置が簡単で、安全かつ軽い睡眠までとれる機能を備えたウォッシャー付きのポータブルトイレを備えたリクライニング車椅子が開示されている。この公報に記載の車椅子では、車椅子の座部に洋式トイレの便座を設け、その裏側にポリエチレン袋製汚物入れを装着してポータブルトイレとしている。左右の肘掛けにビニール製蛇腹式給湯ポンプを取付け、その中に温湯を入れ、給湯ポンプの先に連結したステンレス管を通して温湯を噴出させてウォッシャーとしている。
【0006】
さらに特許文献4には、障害者や足腰の弱くなった高齢者が、車椅子を使って自由に移動でき、さらに車椅子に座ったままで容易に用便ができるようにして、車椅子を利用する人や介護するひとの負担を軽減することが開示されている。この車椅子では、金属製にて構成された車椅子の座面に穴を開け、それを支持する部分を金属の枠で構成し、その内部に局部および便流部をスイングするノズルによる洗浄と温風による殺菌および消臭ができる蓄電池駆動のポータブルトイレと、洗浄用、汚物用、消臭用の各タンクが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-169049号公報
【文献】特開2018-40114号公報
【文献】実用新案登録第3128711号公報
【文献】実用新案登録第3181671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポータブルトイレを使用するのは、例えばベッド上またはベッドの傍、外出先等の容易には洗浄水の供給ができない、および/または電源を見つけ出すことが困難であることが多い。そのため、洗浄水に関しては予め必要と思われる量を準備しておき、電源に関しては商用電源が身近にある場合を除いて、電池を備えるのが一般的である。電池や洗浄水を予め準備する場合には、ポータブルトイレの構造や付属品も含めて、重量が増大する。特に外出先での使用においては、洗浄水が十分あったとしてもポンプ等を使用するために、装置が大がかりになる。
【0009】
上記特許文献1、2には、尻洗浄用ウォッシャー(以下単に、ウォッシャーとも称す)が開示されているが、いずれも電動式の市販のウォッシャーであるので、電力が必須である。また、上記特許文献3のウォッシャーは手押しポンプ式であり電力は必要としないものの、高齢者等が自力で使用するのでポンプ動力が小さく、ノズルを尻位置に近づける必要がある。その結果、ウォッシャーを使用しないときにもノズルが尻位置近くに取り残されてしまう。また、特許文献4には横旋回するノズルを備えたウォッシャーが開示されているが、ノズルをほぼ水平面で旋回させるためにノズル設置空間が増大するとともに、これらは電動であるので、電力が必要となる。
【0010】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、ウォッシャー付きポータブルトイレで用いるウォッシャーの設置面積を増大することなく、簡易にウォッシャーノズルをボウル内の尻洗浄に好適な位置に出し入れできるようにすることである。また、外出時にも好適なように、人力も含めて電力等の一切の外部動力を使用することなく、ウォッシャーから尻洗浄水を尻洗浄に好適な位置へ噴出できるとともに、尻洗浄の要否の切換を手動で可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の特徴は、尻洗浄用の手動式ウォッシャー付ポータブルトイレが、バケツ状に構成された可搬式のボウルと、この可搬式ボウルを取り外し可能に収容するとともに使用者が着座可能な台座部と、この台座部に取付けられた給水部を含み、この給水部からの液体を前記ボウルに噴射可能なウォッシャーを備え、前記ウォッシャーは、先端部に握りが形成されかつ前記台座部の一方の側面側に配設されたレバーと、前記台座部の両側面間に延び、その一端側に前記レバーの一端部が固定して取付けられる軸と、前記軸に対して向きが固定された弧状のウォッシャーノズルと、前記ウォッシャーノズルに前記給水部から水または温水を含む液体を選択的に供給する弁部とを備え、前記軸を介して前記レバーと前記ウォッシャーノズルの回動角を一致させたことにある。
【0012】
そしてこの特徴において、前記軸は中空軸であり、この中空軸の長手方向中間部に流体出力穴を形成し、この流体出力穴に連通する流体出力部と、前記ウォッシャーノズルと前記流体出力部を接続する接続手段とを設けるのが望ましく、前記ウォッシャーノズルは一円弧状に形成されており、前記ウォッシャーノズルの先端部であって使用者の尻に最も接近する外側面に尻洗浄穴を形成し、前記尻洗浄穴は、前記レバーの回動角と同じ角度だけ前記中空軸の中心線周りに円運動を行うことが好ましい。
【0013】
また上記特徴において、前記給水部は前記台座部の上方に位置する水容器を含み、前記中空軸の長手方向中間部であって前記流体出力穴が設けられた位置とは異なる位置に流体入力穴が形成されており、前記弁部は、前記中空軸への取り付け穴が形成されかつ前記台座部に固定された流体入力ブロックを有し、前記水容器と前記流体入力ブロックを接続する接続手段を設け、前記流体入力ブロックに、前記中空軸への取付け穴と半径方向外側から連通する半径方向穴を形成し、前記レバーを回動することにより、前記半径方向穴と前記流体入力穴が連通または閉塞されて前記水容器に収容された水を前記中空軸へ供給または供給遮断するようにするのがよい。
【0014】
さらに上記特徴において、前記ウォッシャーノズルを前記中空軸に固定保持するステーを、前記ウォッシャーノズルおよび前記中空軸の外周に溶接、ロー付け、接着等の固定手段で取付けて設け、前記レバーおよび前記中空軸の回動角と前記ウォッシャーノズルの回動角を等しくすることが好ましく、前記軸の長手方向中間部に支持板を、前記ウォッシャーノズルにステーをそれぞれ取付け、前記支持板の一端側と前記ステーの一端側を連結し、前記ウォッシャーノズルは前記軸の中心線を含む面内では回動自在であるが、前記軸に直角な面内では変位不可として前記ウォッシャーノズルの回動角を前記レバーの軸に直角な面内の回動角に一致させるのが望ましい。
【0015】
さらにまた、前記支持板の長手方向中間部と前記レバーの長手方向中間部を結ぶリンク板を設け、前記レバー、前記軸、前記ステーおよび前記リンク部材で四節リンクを構成してもよく、前記四節リンクは、前記レバーが左右方向に回動させられると、前記ウォッシャーノズルを左右に回動させるようにしてもよい。また、前記ウォッシャーノズルは一円弧状に形成されており、前記ウォッシャーノズルの先端部であって大径側である外側面に尻洗浄用の穴を形成し、前記尻洗浄穴は、前記レバーの軸に直角な面内の回動角と同じ角度だけ前記軸の軸心周りに円運動を行うようにしてもよい。また、前記軸の長手方向中間部に第1のリンク部材を、前記台座部に第3のリンク部材をそれぞれ取付け、前記弁部の弁体がスライド可能に流体入力ブロックに係止して第2のリンク部材を構成し、これによりクランクスライダー型の四節リンクを構成してもよい。
【0016】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、ウォッシャーが、ポータブルトイレに付設されポータブルトイレの台座部に取付けられた給水部を含み、前記給水部からの液体をポータブルトイレのボウルに噴射可能であり、前記ウォッシャーは、先端部に握りが形成されかつ台座部の一方の側面側に配設されたレバーと、台座部の両側面間に延び、その一端側に前記レバーの先端部が固定して取付けられる軸と、前記軸に対して固定された一円弧状のウォッシャーノズルと、前記ウォッシャーノズルに前記給水部から水または温水を含む液体を選択的に供給する弁部とを備え、前記レバーの回動角と前記ウォッシャーノズルの回動角を一致させたことにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ウォッシャー付きポータブルトイレで用いるウォッシャーのウォッシャーノズルを円弧形としたので、レバーの回動と一緒にウォッシャーノズルが軸周りに回動するので、ウォッシャーの設置面積を増大することなく、簡易にウォッシャーノズルをボウル内の尻洗浄に好適な位置に出し入れできる。この状態で、ポータブルトイレの座面から適宜の高さにPETボトル等を利用した給水部を配設したので、動力を使用することなくウォッシャーから尻洗浄水を尻洗浄に好適な位置へ噴出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るウォッシャー付きポータブルトイレの一実施例の斜視図である。
【
図2】
図1に示したポータブルトイレのウォッシャーを示す図であり、(a)図は正面部分断面図、(b)図は部分斜視図である。
【
図3】
図2に示したウォッシャーの動作を説明する図であり、(a)図は模式斜視図、(b)図は模式側面図である。
【
図4】本発明に係るウォッシャーを備えたポータブルトイレのウォッシャーの他の実施例の図であり、(a)図は正面部分断面図であり、(b)図は斜視図である。
【
図5】
図4に示したウォッシャーの、レバーに対応する動作を説明する図である。
【
図6】
図4に示したウォッシャーの主要部の図であり、(a)図はその正面図、(b)図はその側面図である。
【
図7】
図4に示したウォッシャーが備える切換弁の一実施例の動作を説明する図であり、(a)、(c)図はON状態、(b)、(d)図はOFF状態を示す。
【
図8】他の実施例における、レバーの変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ウォッシャー付きポータブルトイレのいくつかの実施例について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係るポータブルトイレ100の一実施例の斜視図である。ポータブルトイレ100は、改装した車椅子式のカートにも搭載できる大きさと重量に構成されている。しかしながらこのポータブルトイレ100は、トイレまでの歩行が困難な人がベッドサイドで使用することもできるように構成されている。
【0020】
ポータブルトイレ100は、使用者が着座する着座部を兼用する、中央部に卵形の開口が形成され使用者が着座可能な蓋25と、使用者の排泄物を一時的に収容するボウル10と、台座部20と、台座部20に固定可能な給水部30と、
図1では破線で示したウォッシャー200を備える。台座部20は、使用者が蓋25に着座したときに両腕を休める肘掛けになる最上部を有する両側面壁22、23、および使用者が着座したときに背面から支持する背面壁24を周囲部に有し、下部にボウル10を取り外し可能に収容する収容部26を備える。ウォッシャー200は、背面壁24の内部に配設されている。ここで、背面壁24は、
図1において符号24が付されている部分である背もたれ部と、破線で示されたウォッシャー200が収納されている背面壁下部とを備えている。ウォッシャー200は、この背面壁下部の内部に配設されている。
【0021】
ウォッシャー200の右側端部であってポータブルトイレ100の外部空間まで延びるレバー220を、ウォッシャー200は有する。レバー220の上端には、本実施例では球状である握り222が取付けられている。レバー220の下端部は詳細を後述する回動軸部230に連結しており、そのため台座部20の右側面壁23には貫通穴23aが形成されている。回動軸部230やレバー220は、ウォッシャー200を構成する。なお、本実施例ではレバー220を右側に配置しているが、使用者の利き腕に応じてレバー220を左側に配置することも可能である。両側面壁22、23の上部には、ポータブルトイレ100を持ち運ぶための持ち手部27が矩形穴状に形成されている。
【0022】
蓋25は、後端部を中心に水平位置から垂直位置を超えた角度まで回動可能であり、つるを有するバケツ状に構成された可搬式のボウル10を、収容部26へ収容するときおよび収容部26から取り出すときに回動される。なお本実施例では、ボウル10は有底のボウル10であって汚物を一時保管しているが、ボウル10に処理部を連接して使用後の臭気対策をするようにしてもよい。その場合、ボウルの底面部には開口が形成され、この開口をホース等で処理部に接続して汚物を処理部に移し、処理液で消臭処理等を実施する。
【0023】
ところで本発明に係るポータブルトイレ100のウォッシャー200は、尻洗浄用である。ウォッシャー200は、詳細を後述するが、ウォッシャーノズル210を有しており、ウォッシャーノズル210の先端部に形成した尻洗浄穴212から温水または水を噴射可能な構成になっている。そして尻洗浄時にはウォッシャーノズル210を使用者の尻付近に配置し、ウォッシャーノズル210を使用しないとき、すなわち排泄時等には動作の邪魔にならないようボウル10から退避させる。そのため本実施例では、可搬式のボウル10の背面側であって上部にウォッシャーノズル210が回動自在に出入りする出入り穴12を形成している。出入り穴12からのウォッシャーノズル210の出入りは、台座部20の背面側空間(背面壁下部)に配設したウォッシャー200の主要部を介して、レバー220を用いて手動で制御される。したがって、一切の外部動力が不要な手動式のポータブルトイレ100が実現される。
【0024】
なお本実施例のウォッシャー200では、ウォッシャーノズル210がボウル10内に出入りするため、ウォッシャーノズル210をボウル10から退避させたときに保管保持する空間が、ボウル10の背後に必要となる。この空間が大きくなるとポータブルトイレ100全体の形状が大きくなり、可搬性が損なわれる。そのため、ウォッシャー200の前後方向の可動範囲の大きさLe(背面壁下部の幅)をできるだけ小さくすることが望まれている。
【0025】
ウォッシャーノズル210に供給する水または温水は、ポータブルトイレ100の特性から、例えばカートに積載した場合等でも利用可能なように、所定量以上の水または温水を保管できる構造としている。この所定量は、ウォッシャーノズル210の尻洗浄穴212から噴射する水または温水の噴射速度と、単位時間当たりの噴射量、および噴射持続時間から決定される。本発明者らの実験的検討から、所定量は2リットル入りのPETボトルをほぼ満杯にすれば十分であった。但し、その場合、所定噴射速度・流量(尻洗浄に十分な噴射速度及び流量)を得るために、PETボトル容器を逆さにして、その出口(キャップ部)をウォッシャーノズル210または出入り穴12の位置から40~50cm以上高くする、つまり40~50cm以上のヘッド(水頭)を設定すれば良いことが分かった。このとき、水または温水が流通する管の内径は8mm以上、より好ましくは10mm以上が必要であり、内径の上限は、極端でなければ大きいほど良いが、12mm以下ならば問題ないことが実験で判明した。また、8mm未満の内径では、所定噴射速度・流量が出ないことも実験により判明した。
また、PETボトル等のように外部に水タンクを備えるのではなく、背面壁24の背もたれ部の内部に水タンクを備えることができる。その場合、背もたれ部の位置により水頭が20~30cmになることがある。そのときは、所定噴射速度・流量を得るために水または温水が流通する間の内径を13mm以上にすることが好ましくより好ましくは14mm以上である。内径上限は、極端でなければ大きいほど良いが、20mm以下ならば問題ないことが実験により判明した。
【0026】
本実施例においては、ポータブルトイレ100の左後方であって、台座部20に一端側を固定した固定具38と、この固定具38に連接した環状の受け具39を用いて、水または温水を貯蔵可能な水容器32をポータブルトイレ100に対して安定して保持している。水容器32はあらゆる種類のものを使用可能であるが、2リットル入りPETボトルを逆さまにして再利用すれば衝撃等の外力にも耐え、容易に入手できるので便利である。
PETボトルのキャップ部に応じた形状の接続具36を用いて可撓性の接続ホースまたはチューブ42とPETボトル32を接続する。PETボトル32の底面には注水および空気抜きのための開口34が形成されていても良い。またこの開口34には、逆さにしても水が漏れないように蓋を付けるようになっていることが好ましい。
注水及び空気抜きのためには、開口34の代わりにPETボトル32の接続具36側の口を用いても良い。その際、そこに形成された空気抜きの穴から水が漏れないように、PETボトル32内の水面より上まで空気抜きの穴から中空の管を接続することが好ましい。
【0027】
水容器32にPETボトルを再利用しているので、屋外での使用において噴射水が不足しても、他のPETボトルを利用するなどして容易に不足分を補充できる。このように本実施例では、PETボトル内の水または温水の自重だけでウォッシャーノズル210から尻洗浄用の水または温水を噴射するので、電力等の他のエネルギ源を必要とせずに、簡易に排泄後の尻洗浄を実行できる。
【0028】
次に、
図2および
図3を用いてウォッシャー200を詳細に説明する。
図2はウォッシャー200の構成を示す図であり、同図(a)はその正面図を一部断面で示した図、同図(b)はその主要部の斜視図である。
図3はウォッシャー200を構成するレバー220とウォッシャーノズル210の相互の運動状態を説明する図であり、同図(a)はレバー220とウォッシャーノズル210関係を示す模式斜視図であり、同図(b)はそれらの関係を示す模式側面図である。
【0029】
ウォッシャー200は、ほぼ水平に延びる軸部230と、軸部230の右側端部に固定して取付けられたレバー220と、軸部230を構成する中空軸234の長手方向中間部に位置するノズル部208と、ノズル部208とは異なる中空軸234の他の長手方向中間部に位置する弁部250を備える。レバー220には上述したとおり、一端側に握り222が形成されている。一方他端側は、軸234を右側の側面壁23に回転自在に支持する受け部232から外側に延びる補助軸226に、固定具225で固定されている。ここで軸234は、受け部232に図示しない手段により固定されている。これにより、レバー220を
図2(a)の面外へ回動すると、レバー220の回動と同期して軸234が回動する。
【0030】
図示したように、軸234は左右の側面壁22、23にわたって延びている。軸234の他端側は、左側の側面壁22に固定して取付けた受け部22bに挿入されており、受け部22bは受け部232とともに、軸234を回動可能に支持する。なお、受け部22bを自己潤滑性を有するプラスチック製とし、受け部232を金属製とすることで、受け部232とプラスチック製の側面壁23の間、および受け部22bと軸234の間の摺動運動のための潤滑性が得られるが、代わりにこれらの界面に潤滑材や準滑膜等の潤滑手段を適用することもできる。
【0031】
中空軸234の内部には、尻洗浄用の水または温水が供給されるが、その水または温水が中空軸234内に広がるのを防止するために、軸方向(長手方向)に間隔を置いて2カ所ストッパ238が配設されている。ストッパ238は、限りある給水が有効に使用されるように、軸234の中空部のデッドスペースを減らしている。
【0032】
ノズル部208は、弁部250を介して給水部30から給水された水または温水を、使用者の臀部へ噴射する部分であり、先端部であって尻に最も近接する外側面211に尻洗浄穴212が形成されたウォッシャーノズル210と、接続具213を介してウォッシャーノズル210に接続する可撓性の接続ホース214と、一端側が軸234に溶接やロー付け等で取付けられ、軸234の半径方向外方に延びる出力パイプ242を備える。出力パイプ242にはホース継手216を介して接続ホース214が接続される。出力パイプ242が取付けられた軸234の長手方向位置では、出力パイプ242の内径穴位置に流体出力穴が形成されている。これにより、中空軸234の内部に流入した水または温水が、ウォッシャーノズル210へ流通することが可能になる。
【0033】
ウォッシャーノズル210の向きを軸234に直角な方向に固定保持するために、ウォッシャーノズル210を両側から挟むように一対のステー218が配置されている。すなわち、ステー218の一端側は、ウォッシャーノズル210が延びる方向に沿ってウォッシャーノズル210の側面に溶接、ロー付けまたは接着で、他端側は軸234の外周面に溶接等で固定されている。
【0034】
弁部250は、直方体上に構成された本体251を備え、本体251には軸234が貫通するための取付け穴257が形成されている。本体251の軸方向(左右方向)中間部には、軸234に取付けたときに半径方向に向く半径方向穴253が形成されている。半径方向穴253の外側端部には、ホース継手43を介して給水部30の接続ホース42が接続されており、半径方向外側から弁体251内へ水または温水を供給する。本体251は軸234に対して回動可能に取付けられている。給水部30からの水または温水が本体251から漏れるのを防止するために、本体251の内部であって軸方向に半径方向穴253の両側には、Oリング255を配設して良い。しかしながら、本発明で用いる程度の水圧の場合は、Oリング255を配設しなくても部材の嵌合の隙間を調整すれば水漏れを防ぐことができる。
【0035】
本体251を軸234に取付けたときに半径方向穴253が位置する部分であって軸234の周方向1カ所には、軸234の中空部236と半径方向穴253を連通する流体入力穴252が形成されている。レバー220を回動させて、レバー220の動きと同期して回動する軸234に形成した流体入力穴252が半径方向穴253と重なると、給水部30からの水または温水がウォッシャーノズル210側へ流出し、2つの穴252、253が完全に閉塞すれば水または温水の供給を遮断することが可能になる。
【0036】
一方、ウォッシャーノズル210を使用しないときなどはレバー220を回動させないが、そのような状態では、流体入力穴252と半径方向穴253は周方向で異なる位置にあり、流体入力穴252の端面は軸234の外周面で塞がれる。これにより、給水部30からの水または温水が、ウォッシャーノズル210側へ流出することが防止される。このように、軸234に形成した流体入力穴252は、軸234の回動角度に応じて選択的にウォッシャーノズル210への流路を開閉する弁として作用する。
【0037】
なお、軸234の回動に本体251が連れ回りするのを防止するために、本体251の下部であって一側面には、脚部260aと固定部260bからなるL字状の固定手段260が固定具262で固定されている。固定手段260の固定部260bは、台座部20に固定具264で固定されている。
【0038】
本実施例によれば、
図3(a)、(b)に示すように、レバー220をデフォルトの位置である実線で示した位置から、側面壁23に沿って点線で示した位置まで前側へθ°だけ回動すると、レバー220が固定された軸234が回動し、軸234に対してその向きを固定されたウォッシャーノズル210も軸234周りにθ°だけ回動する。そこで、ウォッシャーノズル210の形状をその運動に合わせて、弧状、好ましくは一円弧状に形成する。このようにウォッシャーノズル210が軸234周りに円運動する回動構造としたので、従来の往復動型のウォッシャーノズルに比べて、台座部20の背後でウォッシャーノズルが占有する占有空間を大幅に減らすことができる。また円運動にしたので、ウォッシャーノズル210の退避の際に他の部品との干渉を容易に避けることもできる。
【0039】
なお尻洗浄に使用するためには、ウォッシャーノズル210はボウル10内へ50mm~200mm程度出ている必要があるので、ウォッシャーノズル210の曲率半径Rも50~200mm程度としている。実験的に得られた結果では、最も好ましくは75mmであった。また、給水部30からの給水量や尻洗浄時の快適さを考慮して、尻洗浄穴212の穴径をφ2~3.5mmにしている。実験的に得られた結果ではφ3.5mmが最適であった。
【0040】
次に本発明の他の実施例を、
図4ないし
図7を用いて説明する。
図4は、
図2に対応する図であり、(a)図はウォッシャー200aの一部を断面で示す正面図、(b)図はウォッシャー200aの主要部の斜視図である。
図5は、レバー220とウォッシャーノズル210の動作を説明する斜視図であり、
図3(a)に対応する。
図6は、ウォッシャー200aの主要部の側面図(
図6(a))および正面図(
図6(b))である。
図7は、弁部360の動作を説明する図である。つまり、
図7(a)、(b)は弁部360の主要部の縦断面図、
図7(c)、(d)は水または温水の流入通路395および流出通路397部における横断面図であり、
図7(a)、(c)は、弁部360がON状態を示し、
図7(b)、(d)はOFF状態を示す。
【0041】
本実施例が上記実施例と異なるのは、ウォッシャーノズル210のボウル10への前後方向出入りに加え、ボウル10内で左右方向に先端部を振らすようにしたことにある。使用者が、着座部の蓋25の左右方向中心位置に、正確に位置して着座しない場合でも、ウォッシャーノズル210の先端を左右に振ることで、適正位置にウォッシャーノズル210の尻洗浄穴212を使用者に対して位置させることを可能にしている。なお本実施例においても、レバー220の側面壁23に沿う前後方向の回動が、軸の回動に一致するようにしている。
【0042】
図4に示すように、握り222が設けられた端部とは反対側のレバー320の端部は、もはや軸300に固定されてはおらず、軸300とともに回動するのは維持しながら軸300の長手方向には自在に回動できる構成となっている。そのため、軸300の延長部に介在させた補助軸326には軸方向に長い長穴327が形成されており、補助軸326にレバー軸321の先端部を、軸325周りに回動可能に連結している。これによりレバー軸321、すなわちレバー320は長穴327に沿って回動できる。リンク部材310が、レバー軸321の長手方向中間部に取付け具311を用いて軸311周りに回動可能に取付けられている。リンク部材310の他端部は、ウォッシャーノズル210の向きを軸300に対して固定するステー219の内の、レバー320側に位置するステー219に、取付け具313を介して軸314周りに回動可能に取付けられている。リンク部材310をレバー320とステー219間に延在させるために、側面壁23にはリンク部材の運動を妨害しない大きな貫通穴23bが形成されている。
【0043】
一対のステー219の一端側(上端側)がウォッシャーノズル210に取付けられているのは
図2に示す実施例と同様であるが、ステー219の他端側(下端側)は軸300に直接連結はされていない。すなわち、軸300の長手方向中間部に、一対の支持板342の下端部が軸300を挟んで固定して配置している。一方、一対の支持板342の上端部は、対向する一対のステー219間に配置された保持具217を介してステー219の下端側に連結している。そして、一対の支持板342と一対のステー219は、連結部で互いに垂直な配置になっている。
【0044】
図6で最もよく分かるように、一対の支持板342は、PTFEのような潤滑性あるワッシャー344またはブッシュもしくは摺動面を介してステー219を貫通する軸343に連結しており、その結果、保持具217が取付けられたステー219の下端部に連結している。このように構成することにより、ステー219はレバー320が取付けられた軸300の側面壁23に沿う方向の回動(前後方向の回動)に対しては軸300と共にしか動けず、すなわち回動については軸300に対して相対的に変位不可であり、一方左右方向の振れに対応する軸343の中心線周りの回動は、自在となっている。
【0045】
レバー320の先端部の軸325、レバー軸321の中間部に設けた軸312、ステー219に取付けた取付け具313を貫通する軸314および支持板342とステー219の連結部の軸343は、四節リンクの節を構成する。レバー320を左右方向に揺動すると、四節リンクが働いてステー219を揺動させ、ステー219により軸300に対する向きを固定されたウォッシャーノズル210が左右に揺動する。
【0046】
この動作を、ウォッシャー200aを模式的に示した
図5を用いて説明する。レバー320を側面壁23に沿ってデフォルト位置から前後(
図5中、F方向またはB方向)にαだけ回動(面内回動とも称す)させると、ウォッシャーノズル210は、
図2の場合と同様に、軸300の動きを介して前後方向にαだけ回動する。この場合、ステー219と支持板342は、一体の剛な部品として運動する。
【0047】
使用者がポータブルトイレ100を使用時に、ウォッシャーノズル210の前後位置が適正位置になったら、ウォッシャーノズル210を左右に振ることでウォッシャーノズル210の左右位置を定める。すなわち、レバー320を左右方向(
図5中、R方向またはL方向)に回動(面外回動とも称す)させる。レバー320の回動により四節リンクが作動して、リンク部材310が左右に引っ張られ、ステー219は軸343の位置で支持板342に対して回動し、ステー219と支持板342は全体として<形または>形に折れ曲がった形状になる。レバー320の回動角がβであったとすると、ステー219の回動角はβ'となり、レバー320の回動量とは異なる。しかし、ウォッシャーノズル210の左右方向の回動は、前後方向の回動とは異なり微調整であるので、使用しての違和感はない。
【0048】
なおウォッシャーノズル210の左右方向の回動をデフォルト位置に戻すために、ステー219のバネ係止部355に一端を固定されたバネ354がステー219の両側に配置されている。バネ354の他端部は、軸300に取付けた支持部材352に固定されている。これによりレバー320から手を離すと、左右のバネ354が釣り合ってウォッシャーノズル210をデフォルト位置の中立位置へ戻す。
【0049】
ウォッシャー200aが、ウォッシャーノズル210の左右回動機構を備えたので、軸の内部を利用した弁機構を形成することが困難になった。そこで、軸内に水または温水を通す代わりに、弁部360を軸300近傍に構成して装置の大型化を防いでいる。弁部360はクランクスライダ型の四節リンクを利用しており、軸300の長手方向中間部であって
図4では軸300の下側に取付けた、一対の支持板332からなる第1のリンク部材332と、弁部360が備えるロッド状の弁体364である第2のリンク部材、弁体364が貫挿される本体としての流体入力ブロック362、および流体入力ブロック362の変位を制限する枠体380である第3のリンク部材を備える。一対の支持板332は、弁体364の先端部と潤滑性のあるワッシャーまたはブッシュ334を介して連結しており、支持板332に対して弁体364は回動可能である。軸300が回動すると、支持板332はクランクとして作用する。
【0050】
図7に詳細を示すように、弁部360は、軸方向に延びるロッド状の弁体364と、弁体364が貫挿される本体362とを備える。本体362には、弁体364がスライド可能に往復動する貫通穴398が形成されており、この貫通穴398に直交する方向に流入通路395と流出通路397が、貫通穴398を挟んで形成されている。流入通路395と流出通路397の出口側には継手取付け部366が形成されており、ホース継手365が接続される。ホース継手365には給水部30が有する可撓性の接続ホース42およびウォッシャーノズル210に接続する可撓性の接続ホース214が接続される。
【0051】
弁体364の長手方向中間部には、流入通路395および流出通路397の外径と同程度の幅を有する小径部394が形成されている。弁体364が流体入力ブロック362に挿入される部分であって小径部394以外の部分は、同一径の大径部392に構成されている。流入通路395および流出通路397が貫通穴398と交差する部分を、弁体364の大径部392と小径部394が通過することにより、流入通路395と流出通路は非連通および連通状態になる。弁体364の往復動の際に水または温水が外部に漏れるのを防止するために、貫通穴398には軸方向に間隔を置いて複数のOリング396が配置されてもよい。しかしながら、本発明で用いる程度の水圧の場合は、Oリング396を配置しなくても部材の嵌合の隙間を調整すれば水漏れを防ぐことができる。
【0052】
図7(a)、(c)に示すように、軸300が回動して弁体364の小径部394が流入通路395および流出通路397と貫通穴398の交差部に達すると、流入通路395に導かれた給水部30からの水または温水は小径部394の周囲部を通って流出通路397へ流出する。流出通路397は、ウォッシャーノズル210の中心部に形成された図示しない流路に連通しており、その流路の先端部に設けた尻洗浄穴212から給水部30から導かれた水または温水が噴出するのを可能にする。これが弁部360のON状態である。
【0053】
一方、
図7(b)、(d)に示すように、軸300が回動して弁体364の大径部392が流入通路395および流出通路397と貫通穴398の交差部を完全に塞ぐと、流入通路395に導かれた給水部30からの水または温水は大径部392でせき止められ、ウォッシャーノズル210には、水または温水は供給されない。これが弁部360のOFF状態である。
【0054】
図4(a)に戻って、弁部360が備える本体である流体入力ブロック362が、軸300の回動とともに自由に移動するのを制限するために、流体入力ブロックの反軸300側に枠体380が連結されている。具体的には、両枠部384および固定部386によりΠ字状に形成された枠体380の両枠部384を、潤滑性あるワッシャーまたはブッシュ368を介して軸370を用いて流体入力ブロック362に取付ける。これにより流体入力ブロック362は、枠体380に対して回動可能になる。弁体364に対向する固定部386の背面側である固定面382を、台座部20に固定する。枠体380が台座部20に対して固定されたので、流体入力ブロック362の運動も規制される。このようにして、クランクスライダー型の四節リンクが完成する。
【0055】
次に、
図4に示した実施例に用いるレバーの変形例を
図8を用いて説明する。本変形例のレバー320bが
図4の実施例のレバー320と異なるのは、レバー320bの端部の補助軸326への取付け方である。本変形例では受け部232aの端面に偏心して取付け具324を取付け、軸323により取付け具324を介してレバー軸321を受け部232aに連結している。これにより、レバー320bを面内回動すれば、軸300と同角度でウォッシャーノズル210を回動させることができ、またレバー320bを面外回動すればウォッシャーノズル210を左右に首振りさせることができる。本変形例によっても簡易な方法でウォッシャーノズル210を直交する2方向へ回動させることができる。
【0056】
上記各実施例および変形例によれば、使用者自身が操作可能なレバーを面内回動させるだけで、円弧状のウォッシャーノズルを適正な使用位置へ移動させること、および使用位置から退避させることを、軸周りの円運動だけで達成できる。これにより、ウォッシャーの小型簡素化が可能になるとともに、ウォッシャーが占有する空間を低減でき、ウォッシャーが付設されたポータブルトイレであっても、大型化を防ぐことが可能になる。
【0057】
また、ウォッシャーの動作に、電力等の一切の外部動力を不要にした上に必要な動作もレバーの回動動作だけであるので僅かな力で済み、高齢者等の体力の衰えた使用者であっても使用可能である。さらに、外部動力を使用できない戸外への外出時等においても、容易にウォッシャーを使用することができる。さらにまた、使用する水もPETボトル程度の量で済み、不足の場合には最悪の場合に自販機から飲料水を購入して供給すれば良く、給水不足を懸念する必要が無い。
【0058】
さらに本発明の実施例によれば、ウォッシャーノズルの直交する2方向への回動も可能であり、ポータブルトイレの使用者がポータブルトイレの中心に着座しなくとも、ウォッシャーノズルを左右方向に微調整して適正位置へ移動させることが可能になり、ウォッシャー使用の快適性が向上する。
【符号の説明】
【0059】
10…(可搬式)ボウル、12…出入り穴、20…台座部、22…(左)側面(壁)、22b…、受け部、23…(右)側面(壁)、23a、23b…貫通穴、24…背面(壁)、25…蓋(着座部)、26…収容部、27…持ち手部、30…給水部、32…水容器、34…開口、36…接続具、38…固定具、39…受け具、42…接続ホース(接続手段)、43…ホース継手、100…ポータブルトイレ、200、200a…ウォッシャー、208、208a…ノズル部、210…ウォッシャーノズル、211…外側面、212…尻洗浄穴、213…接続具、214…接続ホース、216…ホース継手、217…保持具、218、219…ステー、220…レバー、221…レバー軸、222…握り、223…係止具、225…固定具、226…補助軸、230…回動軸部、232…受け部、234…(中空)軸、236…中空部(水貯留部)、238…ストッパ、242…出力パイプ、244…流体出力穴、250…弁部、251…本体、252…流体入力穴、253…半径方向穴、255…Oリング、257…取付け穴、258…流体入力ブロック、260…固定手段、260a…脚部、260b…固定部、262、264…固定具、300…軸、310…リンク部材、311…取付け具、312…軸(リンクの節)、313…取付け具、314…軸(リンクの節)、320…レバー、321…レバー軸、323…軸、324…取付け具、325…軸(リンクの節)、326…補助軸、327…長穴、332…支持板(第1のリンク部材)、334…ワッシャー、336…軸(リンクの節)、342…支持板、343…軸(リンクの節)、344…ワッシャー、352…支持部材、354…バネ、355…バネ係止部、360…弁部、362…(流体入力ブロック)本体、364…弁体(第2のリンク部材)、365…ホース継手、366…継手取付け穴、368…ワッシャー、370…軸(リンクの節)、380…枠体(第3のリンク部材)、382…固定面、384…枠部、386…固定部、392…大径部、394…小径部、395…流入通路、396…Oリング、397…流出通路、398…貫通穴(弁体用穴)