(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】棒材供給機
(51)【国際特許分類】
B23B 13/02 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B23B13/02 A
(21)【出願番号】P 2019536401
(86)(22)【出願日】2017-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2017029642
(87)【国際公開番号】W WO2019035207
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507351850
【氏名又は名称】育良精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 清
(72)【発明者】
【氏名】曽根 栄二
(72)【発明者】
【氏名】中里 幸司
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-026472(JP,A)
【文献】国際公開第2005/023469(WO,A1)
【文献】特開平08-141871(JP,A)
【文献】特開平04-020419(JP,A)
【文献】特開2003-276836(JP,A)
【文献】特開昭63-031928(JP,A)
【文献】特開2017-071471(JP,A)
【文献】実開平05-064136(JP,U)
【文献】特開平05-042441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 13/00 - 13/12
B65G 47/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材加工機に対して棒材を供給する棒材供給機であって、
棒材の後端部を前記棒材加工機へ向けて押し込む送り部材と、
前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記棒材加工機へ向けて案内する案内部材と、
前記案内部材上に棒材を移載する棒材移載装置と、
各々が複数の棒材を収容可能な複数の棒材収容バケットと、
前記複数の棒材収容バケットを支持すると共に、前記複数の棒材収容バケットの各々を前記棒材移載装置に対する棒材の受け渡しが可能な棒材受渡位置へと順次に移動させるバケット移動装置と、
を備え
、
前記棒材移載装置は、
傾斜した棚部と、
前記棚部の下端を規定すると共に、下方または前方に退避可能なストッパ壁と、
前記棚部に対して鋭角方向に移動可能に配置されたアームと、
前記アームの先端部に取り付けられ、前記ストッパ壁に当接する棒材の次の棒材を前記棚部に対して押圧保持できるように構成された押圧部材と、
を有しており、
前記押圧部材の、前記ストッパ壁に当接する棒材の次の棒材を押圧するための領域は、前記棚部に対して平行である
ことを特徴とする棒材供給機。
【請求項2】
前記バケット移動装置は、循環移動する無端部材を有しており、
前記複数の棒材収容バケットは、前記無端部材の外側面上に固定されており、当該無端部材の上方に位置する時も下方に位置する時も当該無端部材によって支持されている
ことを特徴とする請求項1に記載の棒材供給機。
【請求項3】
前記バケット移動装置によって支持される前記複数の棒材収容バケットは、供給対象の棒材のサイズに合わせて、棒材の長さ方向に対向する壁の一方及び/または頂壁の位置が変更可能となっている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の棒材供給機。
【請求項4】
前記バケット移動装置によって支持される前記複数の棒材収容バケットには、供給対象の棒材の形状に合わせて、誤挿入防止片の取り付けが可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材供給機。
【請求項5】
前記バケット移動装置によって支持される前記複数の棒材収容バケットは、供給対象の棒材のサイズに合わせて、交換可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の棒材供給機。
【請求項6】
前記バケット移動装置は、前記複数の棒材収容バケットを等間隔に支持しており、
前記複数の棒材収容バケットの支持間隔は、変更可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の棒材供給機。
【請求項7】
前記棒材移載装置には、供給対象の棒材の長さに合わせて間隔調整可能なガイド部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の棒材供給機。
【請求項8】
棒材加工機に対して棒材を供給する棒材供給機であって、
棒材の後端部を前記棒材加工機へ向けて押し込む送り部材と、
前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記棒材加工機へ向けて案内する案内部材と、
前記案内部材上に棒材を移載する棒材移載装置と、
を備え、
前記棒材移載装置は、
傾斜した棚部と、
前記棚部の下端を規定すると共に、下方または前方に退避可能なストッパ壁と、
前記棚部に対して鋭角方向に移動可能に配置されたアームと、
前記アームの先端部に取り付けられ、前記ストッパ壁に当接する棒材の次の棒材を前記棚部に対して押圧保持できるように構成された押圧部材と、
を有
しており、
前記押圧部材の、前記ストッパ壁に当接する棒材の次の棒材を押圧するための領域は、前記棚部に対して平行である
ことを特徴とする棒材供給機。
【請求項9】
前記棚部の水平面に対する角度は、15~20°であり、
前記アームの移動方向の前記棚部に対する角度は、30~40°である
ことを特徴とする請求項
8に記載の棒材供給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤等の棒材加工機に棒材を給送するための棒材供給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、棒材加工機に対して、送り部材(例えば送り矢)によって棒材を給送する棒材供給機が知られている。送り部材は、一般的に、モータによって回転駆動されるスプロケットに巻き掛けられた無端チェーンに連結されている。
【0003】
送り部材が無端チェーンの走行に伴って前方に移動することで、給材機において送り部材の軌道上に移載された棒材が棒材加工機に向かって押し出され、棒材加工機のチャックによって把持される。その後、棒材加工機によって棒材が所望に加工される。
【0004】
一般的には、給材機において送り部材の軌道上に棒材を移載するために、傾斜した棚部が設けられている。そして、傾斜した棚部に複数本の棒材が連続的に載置されて、最下位置にある棒材が下方側から押し上げられて棚部の下端のストッパ壁を乗り越えることで、送り部材の軌道上に移載されるようになっている。
【0005】
一方、近年では、棒材加工機において、長尺の棒材(長さ1000mm程度以上)のみならず、短尺の棒材(長さ45mm程度)が加工されることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件発明者は、長尺の棒材と短尺の棒材とを同一の棒材加工機を用いて加工できるように、案内部材を共通にして、その側方の一側(右側または左側)に長尺の棒材用の棚部を設置すると共にその側方の他側(左側または右側)に短尺の棒材用の棚部を設置するという配置について検討を重ねてきた。
【0007】
短尺の棒材用の棚部は、案内部材の長さ方向に占める長さが短い。従って、長尺の棒材用の棚部と対称の位置に、大きな空きスペースが生じる。
【0008】
本件発明者は、その空きスペースに短尺の棒材を予め待機させておいて当該短尺の棒材を順次自動的に送り部材の軌道上に移載することができれば、長時間の連続的な棒材供給運転が可能になるという発想を得るに至った。
【0009】
本発明は、以上の背景に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、棒材(特には短尺の棒材)を長時間に亘って連続的に供給することができる棒材供給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、棒材加工機に対して棒材を供給する棒材供給機であって、棒材の後端部を前記棒材加工機へ向けて押し込む送り部材と、前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記棒材加工機へ向けて案内する案内部材と、前記案内部材上に棒材を移載する棒材移載装置と、各々が複数の棒材を収容可能な複数の棒材収容バケットと、前記複数の棒材収容バケットを支持すると共に、前記複数の棒材収容バケットの各々を前記棒材移載装置に対する棒材の受け渡しが可能な棒材受渡位置へと順次に移動させるバケット移動装置と、を備えたことを特徴とする棒材供給機である。
【0011】
本発明によれば、バケット移動装置によって複数の棒材収容バケットの各々が棒材受渡位置へと順次に移動され、棒材を長時間に亘って連続的に供給することができる。
【0012】
例えば、前記バケット移動装置は、循環移動する無端部材を有しており、前記複数の棒材収容バケットは、前記無端部材の外側面上に固定されており、当該無端部材の上方に位置する時も下方に位置する時も当該無端部材によって支持されている。
【0013】
この場合、無端部材の上下両側のスペースを活用できるため、より多くの棒材を待機させておくことができる。
【0014】
また、前記バケット移動装置によって支持される前記複数の棒材収容バケットは、供給対象の棒材のサイズに合わせて、棒材の長さ方向に対向する壁の一方及び/または頂壁の位置が変更可能となっていることが好ましい。
【0015】
この場合、同一種類の棒材収容バケットによって収容可能な棒材のサイズのバリエーションを拡張することができる。
【0016】
また、前記バケット移動装置によって支持される前記複数の棒材収容バケットには、供給対象の棒材の形状に合わせて、誤挿入防止片の取り付けが可能となっていることが好ましい。
【0017】
本明細書において、棒材とは、直径が均一の素材に限定されず、例えば
図3に示すような大径部と小径部とを有する素材(素形材と呼ばれている)を含む。そのような場合、棒材を棒材収容バケットに収容する(装填する)際、棒材の方向に留意する必要がある。ここで、誤挿入防止片を棒材収容バケットに取り付けておけば、簡易な構成でありながら、棒材の装填方向を効果的に規制することができる。
【0018】
また、前記バケット移動装置によって支持される前記複数の棒材収容バケットは、供給対象の棒材のサイズに合わせて、交換可能となっていることが好ましい。
【0019】
例えば、交換可能な複数種類の棒材収容バケットを用意しておくことにより、供給可能な棒材のサイズのバリエーションを大きく拡張することができる。
【0020】
また、前記バケット移動装置は、前記複数の棒材収容バケットを等間隔に支持しており、前記複数の棒材収容バケットの支持間隔は、変更可能となっていることが好ましい。
【0021】
支持間隔を狭めておけば、待機させておくことができる棒材の数を増やすことができ、より長時間の連続供給が可能である。一方、支持間隔に余裕を持たせておけば、空になった後の棒材収容バケットへの棒材の装填作業が行いやすい。従って、棒材収容バケットの支持間隔を変更可能であれば、作業者は、棒材供給機の運転状況に合わせて当該支持間隔を変更でき、都合がよい。
【0022】
また、前記棒材移載装置には、供給対象の棒材の長さに合わせて間隔調整可能なガイド部材が設けられていることが好ましい。
【0023】
この場合、棒材の移載作業を、より安定的に実施することができる。
【0024】
また、本発明は、棒材加工機に対して棒材を供給する棒材供給機であって、棒材の後端部を前記棒材加工機へ向けて押し込む送り部材と、前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記棒材加工機へ向けて案内する案内部材と、前記案内部材上に棒材を移載する棒材移載装置と、を備え、前記棒材移載装置は、傾斜した棚部と、前記棚部の下端を規定すると共に、下方または前方に退避可能なストッパ壁と、前記棚部に対して鋭角方向に移動可能に配置されたアームと、前記アームの先端部に取り付けられ、前記ストッパ壁に当接する棒材の次の棒材を前記棚部に対して押圧保持できるように構成された押圧部材と、を有することを特徴とする棒材供給機である。
【0025】
本発明によれば、押圧部材によって、ストッパ壁に当接する棒材の次の棒材が棚部に対して押圧保持されるため、棚部の下端として下方または前方に退避可能なストッパ壁を採用することができる。これにより、下端のストッパ壁を乗り越えさせていた従来構成と比較して、棒材の移載作業をより安定的に実施することができる。
【0026】
前記押圧部材の、前記ストッパ壁に当接する棒材の次の棒材を押圧するための領域は、前記棚部に対して平行であることが好ましい。
【0027】
この場合、ストッパ壁に当接する棒材の次の棒材が、棚部に対してより安定的に押圧保持されるため、棒材の移載作業をより一層安定的に実施することができる。
【0028】
好ましくは、前記棚部の水平面に対する角度は、15~20°である。また、好ましくは、前記アームの移動方向の前記棚部に対する角度は、30~40°である。
【0029】
また、本発明は、棒材加工機に対して棒材を供給する棒材供給機であって、棒材の後端部を前記棒材加工機へ向けて押し込む送り部材と、前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記棒材加工機へ向けて案内する案内部材と、前記案内部材上に長尺の棒材を移載する第1棒材移載装置と、前記案内部材上に短尺の棒材を移載する第2棒材移載装置と、各々が複数の短尺の棒材を収容可能な複数の棒材収容バケットと、前記複数の棒材収容バケットを支持すると共に、前記複数の棒材収容バケットの各々を前記第2棒材移載装置に対する短尺の棒材の受け渡しが可能な棒材受渡位置へと順次に移動させるバケット移動装置と、を備え、前記第1棒材移載装置と前記第2棒材移載装置とは、いずれか一方が選択的に利用されるようになっていることを特徴とする棒材供給機である。
【0030】
本発明によれば、共通の棒材加工機に対して長尺の棒材と短尺の棒材とを選択的に供給することができる。そして、バケット移動装置によって複数の棒材収容バケットの各々が棒材受渡位置へと順次に移動されることにより、短尺の棒材を長時間に亘って連続的に供給することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、バケット移動装置によって複数の棒材収容バケットの各々が棒材受渡位置へと順次に移動され、棒材を長時間に亘って連続的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る棒材供給機の概略平面図である。但し、棒材収容バケットが取り外された状態で示されている。
【
図2】
図1の棒材供給機に取り付けられ得る、4種類の棒材収容バケットの各々の三面図である。
【
図3】大径部と小径部とを有する素材の例を示す概略図である。
【
図5】
図2の棒材収容バケットを取り付けた無端ベルトの例を示す概略側面図である。
【
図6】棒材が待機している状態の一例を示す、
図1に対応する概略平面図である。
【
図7】
図1の棒材移載装置の動作を説明するための概略断面図である。
【
図8】
図7の押圧部材の動作を説明するための概略断面図である。
【
図9】ストッパ壁が前方へ退避する場合に、棒材が移動する(転がる)様子を示す概略断面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る棒材供給機の概略平面図である。但し、棒材収容バケットが取り外された状態で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る棒材供給機1の概略平面図である。但し、棒材収容バケット21~24が取り外された状態で示されている。
【0035】
本実施形態の棒材供給機1は、隣接する棒材加工機(不図示)に対して棒材3を供給する機械であり、棒材3の後端部を棒材加工機へ向けて押し込む送り部材としての送り矢12と、当該送り矢12によって押し込まれる棒材3を棒材加工機へ向けて摺動させる(案内する)案内部材11と、送り矢12が後退位置にある時に案内部材11上に棒材3を移載する棒材移載装置4と、を備えている。案内部材11は、例えばVレールであるが、Uレールであってもよいし、中空パイプ等であってもよい。
【0036】
そして、本実施形態の棒材供給機1は、各々が複数の棒材3を整列状態に収容可能な複数の棒材収容バケットを支持すると共に、棒材移載装置4に対する棒材の受け渡しが可能な棒材受渡位置P(
図6参照)へと各棒材収容バケットを順次に移動させるバケット移動装置5を備えている。本実施形態のバケット移動装置5は、駆動モータ51と、2対のプーリ52と、2本の無端ベルト53(無端部材の典型例)と、を有している。
【0037】
図2は、
図1の棒材供給機1の無端ベルト53に取り付けられ得る、4種類の棒材収容バケット21~24の各々の三面図である。棒材収容バケット21~24は、いずれも、L字に折り曲げられた本体部21a~24aと、位置変更可能な対向壁21b~24bと、位置変更可能な頂壁21c~24cと、不図示の一対の側壁と、からなっている。本体部21a~24aと対向壁21b~24bとが、棒材3の長さ方向に対向しており、本体部21a~24aと頂壁21c~24cとが、棒材3の径方向に対向している。一対の側壁は、任意の公知の構成によって、それぞれ任意のタイミングで開閉されるようになっている。
【0038】
対向壁21b~24bは、本体部21a~24aに予め設けられている複数のネジ孔のうち、供給対象(収容対象)の棒材にとって好適な位置にあるネジ孔に対して、ボルト等によって固定される。
【0039】
頂壁21c~24cも、本体部21a~24aに予め設けられている複数のネジ孔のうち、供給対象(収容対象)の棒材にとって好適な位置にあるネジ孔に対して、ボルト等によって固定される。
【0040】
図2(a)の棒材収容バケット21は、50mmまでの長さの棒材用であり、
図2(b)の棒材収容バケット22は、65mmまでの長さの棒材用であり、
図2(c)の棒材収容バケット23は、75mmまでの長さの棒材用であり、
図2(d)の棒材収容バケット24は、100mmまでの長さの棒材用である。これらの寸法値は例であって、限定されるものではない。
【0041】
ここで、棒材3は、直径が均一の素材に限定されず、例えば
図3に示すような大径部と小径部とを有する素材(素形材と呼ばれている)を含む。そのような場合、棒材3を棒材収容バケット21~24に収容する(装填する)際、棒材3の方向に留意する必要がある。
【0042】
本実施形態の棒材収容バケット21~24は、供給対象(収容対象)の棒材3の形状に合わせて、誤挿入防止片28を取り付けることが可能となっている。これにより、簡易な構成でありながら、棒材3の装填方向を効果的に規制できるようになっている。誤挿入防止片28の一例を
図4に示す。
図4の例では、誤挿入防止片28は、棒材3の小径部に対応したスペーサ部材である。
【0043】
さて、
図2(a)の棒材収容バケット21は、無端ベルト53に80mm以上のピッチで取り付けられ得る。80mmピッチで取り付けられた状態を、
図5(a)に示す。
図2(b)の棒材収容バケット22は、無端ベルト53に100mm以上のピッチで取り付けられ得る。100mmピッチで取り付けられた状態を、
図5(b)に示す。
図2(c)の棒材収容バケット23は、無端ベルト53に120mm以上のピッチで取り付けられ得る。120mmピッチで取り付けられた状態を、
図5(c)に示す。
図2(d)の棒材収容バケット24は、無端ベルト53に150mm以上のピッチで取り付けられ得る。150mmピッチで取り付けられた状態を、
図5(d)に示す。これらの寸法値は例であって、限定されるものではない。
【0044】
各々の棒材収容バケット21~24は、複数の棒材3を互いに平行に隣接するように収容可能である。棒材3が待機している状態の一例を、
図1に対応する概略平面図として、
図6に示す。
図6の例は、17列の棒材3が視認可能であって、
図5(b)の構成に対応している。また、一列中の棒材3の数は、6個(材料径により異なる)となっており、各棒材3は、大径部と小径部とを有するタイプのもの(素形材と呼ばれているもの)である。
【0045】
図6に示すように、1つの棒材収容バケットが、棒材移載装置4に対する棒材3の受け渡しが可能な棒材受渡位置Pに位置決めされると、当該棒材収容バケットから、棒材3が棒材移載装置4に受け渡される。棒材収容バケットの棒材受渡位置Pに対する位置決めには、公知の好適な位置検出センサ45(
図1参照)が用いられ得る。
【0046】
当該棒材収容バケットから棒材移載装置4への棒材3の受け渡しが完了したら(詳細は後述する)、棒材収容バケットの1ピッチ分だけ、駆動モータ51が無端ベルト53を移動させる。これにより、次の棒材収容バケットが、棒材移載装置4に対する棒材3の受け渡しが可能な棒材受渡位置Pに位置決めされ、再び
図6の状態になる。
【0047】
本実施形態の棒材移載装置4は、
図7に示すように、傾斜した棚部41と、棚部41の下端を規定すると共に下方に退没可能なストッパ壁42と、棚部41に対して鋭角方向に移動可能に配置されたアーム43と、アーム43の先端部に取り付けられてストッパ壁42に当接する棒材3aの次の棒材3bを棚部41に対して押圧保持できるように構成された押圧部材44と、を有している。本実施形態のストッパ壁42は、エアーシリンダ機構によって出没可能となっている。また、本実施形態のアーム43は、別のエアーシリンダ機構によって移動可能となっている(アーム43が、別のエアーシリンダ機構のロッド部材によって構成されている)。
【0048】
また、
図8に示すように、本実施形態の押圧部材44において、ストッパ壁42に当接する棒材3aの次の棒材3bを押圧するための領域は、棚部41に対して平行になっている。本実施形態の棚部41は、水平面に対して20°の角度に調整され、アーム43の移動方向は更に棚部41に対して36.87°の角度に調整されている。このような角度の採用によって、より広い範囲の棒材の直径に対応することができる。すなわち、供給対象の棒材の直径が変更されても、押圧部材44は、ストッパ壁42に当接する棒材3aの次の棒材3bを的確に押圧することができる。
【0049】
ここで、本件発明者の知見によれば、棚部41の水平面に対する角度は15~20°であることが好ましく、アーム43の棚部41に対する角度は30~40°であることが好ましい。
【0050】
さらに、本実施形態の棒材移載装置4には、棒材3の移載作業をより安定的に実施するために、供給対象の棒材3の長さに合わせて間隔調整可能なガイド部材46が設けられている(
図1及び
図6参照)。
【0051】
なお、
図7からも明らかなように、バケット移動装置5の無端ベルト53は、棚部41と同じ傾斜角度で設けられている。これにより、無端ベルト53に取り付けられる棒材収容バケット21~24も傾斜している。そして、下側となる棒材収容バケット21~24の側壁(不図示)が、収容された棒材3を支持している。
【0052】
次に、本実施形態の棒材移載装置4の作用について説明する。
【0053】
1つの棒材収容バケット21~24が棒材受渡位置Pに位置決めされると、当該棒材収容バケット21~24の下側の側壁が自動的に開放されて、
図7(a)に示すように、当該棒材収容バケット21~24に収容されていた複数の棒材3が棚部41上へと転がっていき、最下の棒材3がストッパ壁42によって停止される。この時、押圧部材44は棒材3の通過領域から退避した位置にある。(もっとも、押圧部材44が所定の棒材3を押圧している状態(後述する
図7(b)乃至
図7(d)の状態)でも、新たな棒材3の棚部41上への供給は可能である。)
【0054】
そして、
図7(b)に示すように、アーム43が移動(伸長)して、押圧部材44が、ストッパ壁42に当接する棒材3aの次の棒材3bを棚部41に対して押圧保持する。
【0055】
この状態で、
図7(c)に示すように、ストッパ壁42が退没する。これによって、ストッパ壁42に当接していた棒材3aが、案内部材11上に転がって移載される。
【0056】
その後、
図7(d)に示すように、ストッパ壁42が再び元の位置に突出する。そして、
図7(e)に示すように、アーム43が移動(収縮)して、押圧部材44が棒材3bを解放することによって、当該棒材3bがストッパ壁42まで転がる。その後、棒材給送のタイミングに合わせて、
図7(b)以後の動作が繰り返される。
【0057】
棚部41上には、棒材3の存在の有無を検知するセンサ47が設けられていて、当該センサ47が棒材無しと判別したタイミングで、バケット移動装置5が1ピッチ分だけ移動され、次の棒材収容バケット21~24が棒材受渡位置Pに位置決めされる。センサ47は、図示例では棒材3の側方に設けられているが、棒材3の下面側等に設けられてもよい。
【0058】
本実施形態の棒材供給機1によれば、例えば
図6に示すように全ての棒材収容バケット22に棒材3を装填しておけば、6×17×2=204個の棒材3を連続供給することができる。これにより、例えば夜間等の長時間の無人供給運転が可能となる。
【0059】
空になった棒材収容バケット21~24への棒材3の再装填は、作業の安全のために棒材供給機1を停止させてから、例えば棒材収容バケット21~24の上側の側壁を開放して、作業者が手動で行う。
【0060】
以上のように、本実施形態の棒材供給機1によれば、バケット移動装置5によって複数の棒材収容バケット21~24の各々を棒材受渡位置Pへと順次に移動することができる。このため、棒材3を長時間に亘って連続的に供給することができる。
【0061】
特に、本実施形態のバケット移動装置5は、循環移動する無端ベルト53を有しており、複数の棒材収容バケット21~24は、無端ベルト53の外側面上に固定されて、当該無端部ベルト53の上方に位置する時も下方に位置する時も当該無端ベルト53によって支持されている。これにより、無端ベルト53の上下両側のスペースを活用でき、より多くの棒材3を待機させておくことができる。
【0062】
また、本実施形態のバケット移動装置5によって支持される複数の棒材収容バケット21~24は、供給対象の棒材3のサイズに合わせて、棒材3の長さ方向に対向する壁の一方である対向壁21b~24bの位置と頂壁21c~24cの位置とを変更可能である。これにより、棒材収容バケット21~24の各々において収容可能な棒材3のサイズのバリエーションが拡張されている。
【0063】
また、本実施形態の棒材収容バケット21~24は、供給対象の棒材3の形状に合わせて、誤挿入防止片28の取り付けが可能となっている。これにより、棒材3を棒材収容バケット21~24に収容する(装填する)際において、棒材3の方向に留意する必要がある場合であっても、誤挿入防止片28を棒材収容バケットに取り付けておくことにより、簡易な構成でありながら棒材3の装填方向を効果的に規制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、バケット移動装置5によって支持される複数の棒材収容バケット21~24(の全体)が、供給対象の棒材3のサイズに合わせて、交換可能となっている。このように、交換可能な複数種類の棒材収容バケット21~24を用意しておくことにより、供給可能な棒材3のサイズのバリエーションが更に大きく拡張されている。
【0065】
また、本実施形態のバケット移動装置5は、複数の棒材収容バケット21~24を等間隔に支持することができ、且つ、複数の棒材収容バケット21~24の支持間隔は、変更可能となっている。例えば、支持間隔を狭めておけば、待機させておくことができる棒材3の数が増えるため、より長時間の連続供給が可能となる。一方、支持間隔に余裕を持たせておけば、空になった後の棒材収容バケット21~24への棒材3の装填作業が行いやすい。このように、棒材供給機1の運転状況に合わせて当該支持間隔を変更できることにより、作業者にとって都合がよい態様を柔軟に採用することができる。
【0066】
また、本実施形態の棒材移載装置4には、供給対象の棒材3の長さに合わせて間隔調整可能なガイド部材46が設けられているため、棒材3の移載作業を、より安定的に実施することができる。
【0067】
また、本実施形態の棒材移載装置4によれば、押圧部材44によって、ストッパ壁42に当接する棒材3aの次の棒材3bが棚部41に対して押圧保持されるため、棚部41の下端として下方に退没可能なストッパ壁42を採用することができる。これにより、下端のストッパ壁を乗り越えさせていた従来構成と比較して、棒材3の移載作業をより安定的に実施することができる。
【0068】
特に、押圧部材44の、ストッパ壁42に当接する棒材3aの次の棒材3bを押圧するための領域が、棚部41に対して平行であることにより、ストッパ壁42に当接する棒材3aの次の棒材3bが、棚部41に対してより安定的に押圧保持される。これにより、棒材3の移載作業をより一層安定的に実施することができる。
【0069】
なお、下方に退没可能なストッパ壁42は、前方に退避可能なストッパ壁42bに置換されてもよい。当該ストッパ壁42bの退避に伴って棒材3が移動する(転がる)様子を、
図9(a)及び
図9(b)に示す。この場合、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、ストッパ壁42bの退避移動の速度に合わせて、転がる棒材3を低速で案内することが可能である。
【0070】
また、以上の実施形態において、棒材収容バケット21~24の各々に側壁を設けないで、バケット移動装置5の無端ベルト53の周回軌道を取り囲むようにフレームを設けておいて、当該フレームによって棒材収容バケット21~24に収容された棒材3を支持するようにしてもよい。この場合には、棒材受渡位置Pに対応するフレームの部分において、任意のタイミングで開閉される扉が設けられ、1つの棒材収容バケット21~24が棒材受渡位置Pに位置決めされると、当該扉が自動的に開放される。
【0071】
このような構成によれば、棒材収容バケット21~24の各々に自動開閉機能を有する側壁を設ける必要が無い。但し、最下の棒材3がフレームに対して摺動移動することになるため、当該棒材3に傷が付くことがないよう、フレームに所望のライナを設ける等の対処が必要になることもある。
【0072】
次に、
図10は、本発明の他の実施形態に係る棒材供給機101の概略平面図である。但し、
図1と同様、棒材収容バケット21~24が取り外された状態で示されている。
【0073】
図10の棒材供給機101では、
図1の棒材供給機1に加えて、案内部材11を挟んで棒材移載装置4(第2棒材移載装置)及びバケット移動装置5と反対の側に、長尺の棒材供給のための棚部141(第1棒材移載装置)が設けられている。棚部141は、従来より公知のものと同様である。
【0074】
図10の棒材供給機101によれば、長尺の棒材と短尺の棒材とを、同一の棒材加工機を用いて加工することができる。また、長尺の棒材用の棚部141と対称の位置にあるスペースを有効活用して、短尺の棒材の長時間の連続供給運転が可能である。
【0075】
なお、
図10の棒材供給機101では、長尺の棒材を供給する際には、送り部材としての送り矢12とその駆動機構(スライダ機構と呼ばれる)とが一時的に分離される。具体的には、長尺の棒材を供給する場合、送り矢12と駆動機構とが分離され、送り矢12が一時的に側方に退避される。この状態で、案内部材上に長尺の棒材が移載され、駆動機構のみによって長尺の棒材が送り出される。そして、長尺の棒材の後端部が棒材移載装置4の近傍にまで送り出された後で、駆動機構の先端が後退され、一時的に退避していた送り矢12が元の軌道に戻されて駆動機構の先端と再び接続され、その後、送り矢12によって長尺の棒材が棒材加工機に送られる。
【0076】
なお、短尺の棒材3の典型的な寸法例としては、長さ30~180mm程度、直径10~130mm程度である。
【0077】
また、
図10の棒材供給機101において、棚部141の代わりに、棒材移載装置4及びバケット移動装置5を設けてもよい。すなわち、案内部材11を挟んで、2セットの棒材移載装置4及びバケット移動装置5を設けてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 棒材供給機
11 案内部材
12 送り矢(送り部材の典型例)
21~24 棒材収容バケット
21a~24a 本体部
21b~24b 対向壁(棒材の長さに合わせて位置変更可能)
21c~24c 頂部(棒材の直径に合わせて位置変更可能)
28 誤挿入防止片
3 棒材
3a ストッパ壁に当接している棒材
3b ストッパ壁に当接している棒材の次の棒材
4 棒材移載装置
41 棚部
42 ストッパ壁
42b ストッパ壁
43 アーム
44 押圧部材
45 バケット検知センサ
46 ガイド部材
47 棒材検知センサ
5 バケット移動装置
51 駆動モータ
52 プーリ
53 無端ベルト(無端部材の典型例)
101 棒材供給機
141 長尺の棒材用の棚部