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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】撮像用の光学系および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G02B13/04 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019559619
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2018045257
(87)【国際公開番号】W WO2019117067
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2017237491
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】飯嶋 健司
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/146021(WO,A1)
【文献】特開2012-22300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口絞りを挟んで物体側に配置された負の屈折力の第1のレンズ群と、像面側に配置された正の屈折力の第2のレンズ群と、前記第2のレンズ群の像面側に配置された正の屈折力の第3のレンズ群とから構成された撮像用の光学系であって、
前記第1のレンズ群は、物体側から順番に配置された、像面側が凹の負の屈折力の第1のレンズと、像面側に凸の負の屈折力のメニスカスタイプの第2のレンズと、物体側に凸の正の屈折力の第3のレンズとから構成されており、
前記第2のレンズ群は、物体側から順番に配置された、像面側に凸の正の屈折力の第4のレンズと、物体側に凸の負の屈折力のメニスカスタイプの第5のレンズと、物体側に凹の負の屈折力の第6のレンズとから構成され、前記第5のレンズは、物体側から、像面側に凸の正レンズと両凹の負レンズとからなる接合レンズであり、
前記第3のレンズ群は、両凸の正の屈折力の第7のレンズから構成されている、光学系。
【請求項2】
請求項1において、
前記第4のレンズは、絶対値で、他のレンズの焦点距離より小さい焦点距離f4を含む、光学系。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第4のレンズの焦点距離f4は、前記第4のレンズの像面側の面から像面までの距離L4iに対し以下の条件を満たす、光学系。
0.25<f4/L4i<0.75
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群はフォーカシングの際に移動するレンズ群であって、当該光学系の全系の合成焦点距離faと、前記第3のレンズ群の合成焦点距離fg3とが以下の条件を満たす、光学系。
1.2<fg3/fa<4.5
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記第2のレンズ群の前記接合レンズの前記正レンズのアッベ数pfと、前記負レンズのアッベ数nfとが以下の条件を満たす、光学系。
0.35<nf/pf
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかにおいて、
当該光学系の最大直径Hmaxおよび全長ALが以下の条件を満たす、光学系。
4.0<Hmax<5.0
9.0<AL<11.0
ただし、最大直径Hmaxおよび全長ALの単位はmmである。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載の光学系と、
前記光学系の像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラなどの撮像装置に好適な撮像用の光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国特許公開公報2012-032626号には、物体側から像側へ向かって順に、第1レンズ群、開口絞り、第2レンズ群を配設してなり、第1レンズ群は正の屈折力を有するか略アフォーカルで、第2レンズ群は正の屈折力を有する結像レンズにおいて、第1レンズ群を、物体側から像側へ向かって順に、第1aレンズ群、第1bレンズ群、第1cレンズ群を配設して構成し、第2レンズ群を、物体側から像側へ向かって順に、第2aレンズ群、第2bレンズ群、第2cレンズ群を配設して構成し、第2bレンズ群の、最も物体側の面を凹面、最も像側の面を凸面とした結像レンズが開示されている。
【発明の開示】
【0003】
コンパクトデジタルカメラやミラーレスカメラにおいては、バックフォーカスが短く、コンパクトな撮像用のレンズシステム(光学系)が要望されている。例えば、35mm換算時の焦点距離が30mm前後の広角レンズで、バックフォーカスが短く、周辺光量も十分に確保された光学系であって、コンパクトな光学系が要望されている。
【0004】
本発明の態様の1つは、開口絞りを挟んで物体側に配置された負の屈折力の第1のレンズ群と、像面側に配置された正の屈折力の第2のレンズ群と、第2のレンズ群の像面側に配置された正の屈折力の第3のレンズ群から構成された撮像用の光学系である。第1のレンズ群は、物体側から順番に配置された、像面側に凹の負の屈折力の第1のレンズと、像面側に凸の負の屈折力のメニスカスタイプの第2のレンズと、物体側に凸の正の屈折力の第3のレンズとから構成されており、第2のレンズ群は、物体側から順番に配置された、像面側に凸の正の屈折力の第4のレンズと、物体側に凸の負の屈折力のメニスカスタイプの第5のレンズと、物体側に凹の負の屈折力の第6のレンズとから構成されている。
【0005】
この光学系は全体としてレトロフォーカスタイプであり、周辺光量を確保して明るいレンズシステムを得やすい。さらにこの光学系においては、開口絞りを挟んで、開口絞りの側から順に、開口絞りと反対側に凸の正の屈折力のレンズ(第3のレンズ、第4のレンズ)と、開口絞り側に凸の負のメニスカスレンズ(第2のレンズ、第5のレンズ)と、開口絞り側に凹の負のレンズ(第1のレンズ、第6のレンズ)という対称な構成を含む。すなわち、光学系は、開口絞りを挟んで、外側から、内側が凹の負のレンズ(第1のレンズ、第6のレンズ)、外側が凹で内側が凸の負のメニスカスレンズ(第2のレンズ、第5のレンズ)および外側が凸の正のレンズ(第3のレンズ、第4のレンズ)という対称な構成を含む。したがって、この光学系は、開口絞りを挟んで、収差補正に有効な対称なレンズ構成を採用するとともに、物体側の第1のレンズ群を負-正のレトロフォーカスタイプにすることが可能であり、さらに周辺光量を確保しやすい。
【0006】
特に、この構成では、最も物体側に、マイナスリードの像面側に凹の負レンズと物体側に凹の負のメニスカスレンズにより、凹面が向かい合った負レンズの構成が実現されており、光軸から離れた光線を収集しやすいレンズ構成となっている。このため、光学系の中で最も口径が大きくなりがちな最も物体側のレンズ(第1のレンズ)の口径を小さくでき、例えば、最も像面側のレンズ径よりも小さくすることができる。したがって、コンパクトで、収差補正能力に優れ、さらに周辺光量も十分に確保され、明るく、F値(FNo.)も小さい光学系を提供できる。
【0007】
また、この構成は、開口絞りの像面側に隣接して正の屈折力のレンズを配置することが可能であり、その第4のレンズの焦点距離f4の絶対値を、他のレンズの焦点距離の絶対値より小さくしてもよい。すなわち、最もパワーの大きなレンズを、第4のレンズとして開口絞りの像面側に隣接して配置してもよい。第4のレンズの焦点距離によりバックフォーカスを制御できる。また、第4のレンズと像面である撮像デバイスとの間にパワーの弱い複数のレンズを配置することにより、バックフォーカスが短く諸収差が良好に補正された光学系を提供できる。
【0008】
第4のレンズの焦点距離f4は、第4のレンズの像面側の面から像面までの距離L4iに対し以下の条件(1)を満たしてもよい。
0.25<f4/L4i<0.75 ・・・(1)
下限を下回ると第4のレンズのパワーが強すぎて他のレンズによる諸収差の補正が難しくなる。一方、上限を上回ると第4のレンズのパワーが弱すぎてバックフォーカスが長くなる。
【0009】
第3のレンズ群はフォーカシングの際に移動するレンズ群であってもよい。光学系の全系の合成焦点距離faと、第3のレンズ群の合成焦点距離fg3とが以下の条件(2)を満たしてもよい。
1.2<fg3/fa<4.5 ・・・(2)
下限を下回ると第3のレンズ群のパワーが強すぎて諸収差の補正が難しくなる。上限を上回ると第3のレンズ群のパワーが不足して焦点調整が難しくなり、また、焦点調整のために移動する距離が長くなりバックフォーカスが長くなる。
【0010】
第5のレンズは、物体側から、像面側に凸の正レンズと両凹の負レンズとからなる接合レンズであってもよい。正レンズのアッベ数pfと、負レンズのアッベ数nfとが以下の条件(3)を満たしてもよい。
0.35<nf/pf ・・・(3)
下限を下回ると色収差の補正が困難になる。
【0011】
光学系を構成するいずれかのレンズを接合レンズ(バルサムレンズ)にすることは色収差の補正に有効である。しかしながら、パワーの確保が難しくなるため、第1のレンズ群のレンズあるいは第4のレンズを接合レンズにすることは光学系の全長を長くする要因になる。一方、第4のレンズより像面側のレンズはパワーが小さくてもよく、あるいはパワーが小さいことが望ましく、接合レンズにすることのディメリットは少ない。したがって、第5のレンズおよび第6のレンズの少なくともいずれかのみが接合レンズであってもよい。
【0012】
本発明の他の態様の1つは、上記に記載の光学系と、光学系の像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置である。光学系は交換用レンズであってもよく、撮像装置は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、TVカメラ、アクションカメラを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】撮像用の光学系を含む撮像装置の概要を示す図。
図2図1に示す光学系のレンズデータを示す図。
図3図1に示す光学系の非球面のデータを示す図。
図4図1に示す光学系の諸収差を示す図。
図5図1に示す光学系の横収差を示す図。
図6】撮像用の異なる光学系を含む撮像装置の概要を示す図。
図7図6に示す光学系のレンズデータを示す図。
図8図6に示す光学系の非球面のデータを示す図。
図9図6に示す光学系の諸収差を示す図。
図10図6に示す光学系の横収差を示す図。
【発明の実施の形態】
【0014】
図1に、撮像用の光学系を備えた撮像装置(カメラ、カメラ装置)1の一例を示している。このカメラ1は、光学系(撮像光学系、結像光学系、レンズシステム)10と、光学系10の像面側(画像側、撮像側、結像側)12に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面)5とを有する。光学系10は、光軸15に沿って配置された7枚のレンズL1~L7を含む。レンズL5が接合レンズであり、接合レンズを構成するレンズL5-1およびL5-2を含めると、全体として8枚のレンズにより構成されている。これらのレンズL1~L7は、開口絞り(絞り)Stを挟んで物体側11に配置された、全体として負の屈折力の第1のレンズ群G1と、像面側12に配置された、全体として正の屈折力の第2のレンズ群G2と、第2のレンズ群G2の像面側12に配置された正の屈折力の第3のレンズ群G3に分けて構成されている。第3のレンズ群G3はフォーカシング(F)の際に移動するレンズ群である。
【0015】
第1のレンズ群G1は、物体側11から順番に配置された、像面側12に凹の負の屈折力の第1のレンズ(具体的には両凹の負レンズ)L1と、像面側12に凸の負の屈折力のメニスカスタイプの第2のレンズL2と、物体側11に凸の正の屈折力の第3のレンズ(具体的には正のメニスカスレンズ)L3とから構成されている。
【0016】
第2のレンズ群G2は、物体側11から順番に配置された、像面側12に凸の正の屈折力の第4のレンズ(具体的には両凸の正レンズ)L4と、物体側11に凸の負の屈折力のメニスカスタイプの第5のレンズL5と、物体側11に凹の負の屈折力の第6のレンズ(具体的には像面側12に凸の負のメニスカスレンズ)L6とから構成されている。第3のレンズ群G3は、両凸の正レンズL7の一枚構成である。
【0017】
図2に、図1に示す光学系10を構成する各レンズのデータを示している。曲率半径(Rdy)は物体側11から順に並んだ各レンズの各面Suの曲率半径(mm)、間隔Thiは各レンズ面Suの間の距離(mm)、有効径H*2は各レンズ面Suの有効径(直径、mm)、屈折率ndは各レンズの屈折率(d線)、アッベ数νdは各レンズのアッベ数(d線)、各レンズの焦点距離(mm)、各レンズ群の焦点距離(mm)を示している。なお、最終の間隔、本例においてはThi17が光学系10と撮像デバイス5との距離(バックフォーカス、BF)を示す。以下においても同様である。
【0018】
第3のレンズL3の両面Su5およびSu6、第6のレンズL6の両面Su13およびSu14が非球面であり、図3にそれぞれの面の非球面係数を示す。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、図3に示した係数K、A、B、CおよびDを用いて次式で表わされる。以降の実施形態においても同様である。なお、「en」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/R)Y/[1+{1-(1+K)(1/R)1/2
+AY+BY+CY+DY10
【0019】
図4に、光学系10の球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。球面収差は、波長435.8300nm(二点鎖線)と、波長486.1300nm(一点鎖線)と、波長546.0700nm(破線)と、波長587.5600nm(実線)と、656.2800nm(長破線)とを示している。非点収差はタンジェンシャル光線Tとサジタル光線Sとを示している。図5に、光学系10の倍率色収差(横収差)をタンジェンシャル光線およびサジタル光線のそれぞれについて、図4と同じ波長について示している。以下に示す収差図においても同様である。
【0020】
この光学系10の主な性能を示す数値は以下の通りである。
全体の合成焦点距離(fa): 4.85(d線基準の計算、以下同様)
全長(最も物体側の面から最も像面側の面までの距離)(AL): 10.125mm
F値: 2.8
最大画角(半画角): 31.7度
イメージサークル: φ6mm
バックフォーカス(BF): 1.87mm
第4のレンズL4の像面側の面Su9から像面までの距離(L4i): 6.88mm
第4のレンズL4の焦点距離f4: 4.19mm
第3のレンズ群の焦点距離fg3: 8.11mm
条件(1)(f4/L4i): 0.61
条件(2)(fg3/fa): 1.67
条件(3)(nf/pf): 0.51
【0021】
この光学系10はレンズ7枚構成(バルサムを構成する両レンズを含めると8枚構成)で、焦点距離4.85mm(35mm換算時35mm)、前玉径3.3mm、後玉径(直径)4.9mmで、最大直径Hmaxが5mm以下、全長ALが10mm程度(11mm以下)の超小型の広角レンズである。したがって、この光学系10は、以下の条件(4)を満たす小型の光学系である。
4.0<Hmax<5.0
9.0<AL<11.0・・・(4)
最大直径Hmaxおよび全長ALの単位はmmであり、最大直径Mmaxは4.9mm以下であってもよい。また、全長ALは10.2mm以下であってもよい。
【0022】
具体的には、この光学系10は、全体として負-正-正のレトロフォーカスタイプのパワー配置を備えており、周辺光量を確保しやすく、バックフォーカスも確保しやすいタイプである。さらに、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2に着目すると、開口絞りStを挟んで、内側から、開口絞りStと反対側に凸の正の屈折力のレンズL3およびL4、開口絞りSt側に凸の負のメニスカスレンズL2およびL5と、開口絞りSt側に凹の負のレンズL1およびL6が配置された対称な構成を含む。すなわち、光学系10は、開口絞りStを挟んで、負-負-正-絞り-正-負-負の対象なパワー配置を含む。さらに具体的には、開口絞りStを中心として、外側から、内側が凹の負のレンズL1およびL6と、外側が凹で内側に凸の負のメニスカスレンズL2およびL5と、外側が凸の正のレンズL3およびL4とで構成された対称な構成を含む。
【0023】
したがって、レンズ群G1およびG2により、開口絞りStを中心として6枚のレンズL1~L6を対称に配置した構成が実現されており、諸収差を補正しやすい構成となっている。さらに、物体側11においては、物体側11の第1のレンズ群G1の物体側11のレンズL1~L3を負-正のレトロフォーカスタイプにすることが可能であり、レンズ群G1の構成も、さらに周辺光量を確保しやすい構成となっている。
【0024】
特に、この光学系10の対称的な構成では、最も物体側11に、マイナスリードの像面側12に凹の負レンズL1と物体側11に凹の負のメニスカスレンズL2という、凹面が向かい合った負レンズの構成が実現されており、光軸15から離れた光線を収集しやすいレンズ構成となっている。このため、光学系10の中で最も口径が大きくなりがちな最も物体側のレンズ(第1のレンズ)L1の口径を小さくでき、像面側12のレンズL7のレンズ径よりも小さくできる。したがって、コンパクトで、収差補正能力に優れ、さらに周辺光量も十分に確保され、F値(FNo.)が2.8程度と、小さく明るい光学系10となっている。
【0025】
したがって、この光学系10は、前玉であるレンズL1の直径が3.3mmと超小型のレンズシステムでありながら、十分な光量により明るい画像を像面5に結像できる。
【0026】
さらに、この光学系10の対称的な構成は、開口絞りStの像面側12に隣接して正の屈折力の第4のレンズL4が配置され、第4のレンズL4の焦点距離f4の絶対値を、他のレンズの焦点距離の絶対値より小さくし、第4のレンズL4のパワーを最大にすることができる。開口絞りStの像面側12に最大のパワーの第4のレンズL4を配置することにより、第4のレンズL4からの像面である撮像デバイス5までの距離を制御し、第4のレンズL4と撮像デバイス5との間にパワーの弱いレンズを配置して諸収差を補正することにより、光学系10と撮像デバイス5の間隔、すなわち、バックフォーカスBFが結果的に小さい光学系10を提供できる。
【0027】
第4のレンズL4のパワーが強すぎると諸収差の補正が困難になるが、本光学系10の第4のレンズL4の焦点距離f4は、条件(1)を満足しており、バックフォーカスBFが小さく、図4および図5に示すように、諸収差も良好に補正された、超小型の広角レンズとなっている。
【0028】
また、この光学系10においては、対称的な構成の像面側12に正のパワーの第3のレンズ群G3を配置し、諸収差を補正するとともに、フォーカシング(合焦)のために動く構成を採用している。特に、第4のレンズL4の焦点距離f4を条件(1)の範囲に設定し、第4のレンズL4から撮像デバイス5までの距離L4iを確保することにより、第3のレンズ群G3を配置している。また、第3のレンズ群G3を構成する第7のレンズL7の焦点距離は、条件(2)を満足しており、コンパクトな光学系10であって、諸収差の補正が良好に行われ、フォーカシングも良好に行うことができる光学系10となっている。
【0029】
さらに、この光学系10は、対称的な構成に含まれる第5のレンズL5を接合レンズ(バルサムレンズ)として、収差補正、特に色収差の補正を良好に行えるようにしている。また、第5のレンズL5を構成するレンズL5-1およびL5-2は、条件(3)を満足しており、色収差の補正に寄与している。第5のレンズL5は、最もパワーの強い第4のレンズL4の像面側12に配置されたレンズであり、パワーが弱くてもよく、あるいはパワーが弱い方が好ましく、色収差の補正に適しており、また、パワーが弱くても光学系10の全長が延びるような影響は与えにくい。一方、第4のレンズL4の物体側11にパワーの弱いレンズを配置することは光学系10の全長が長くなる要因となる。したがって、この光学系10は、コンパクトで色収差も良好に補正された光学系10として適した構成となっている。
【0030】
図6に、異なる撮像用の光学系10を備えたカメラ1の例を示している。この光学系10も実施例1の光学系(レンズシステム)と同様に、超小型の広角レンズであり、開口絞り(絞り)Stを挟んで物体側11に配置された、全体として負の屈折力の第1のレンズ群G1と、像面側12に配置された、全体として正の屈折力の第2のレンズ群G2と、さらに像面側12に配置された正の屈折力の第3のレンズ群G3とから構成されている。
【0031】
この光学系10も光軸15に沿って配置された7枚のレンズL1~L7を含む。レンズL5が接合レンズであり、接合レンズを構成するレンズL5-1およびL5-2を含めると、全体として8枚のレンズにより構成されている。
【0032】
第1のレンズ群G1は、物体側11から順番に配置された、像面側12に凹の負の屈折力の第1のレンズ(具体的には物体側11に凸の負のメニスカスレンズ)L1と、像面側12に凸の負の屈折力のメニスカスタイプの第2のレンズL2と、物体側11に凸の正の屈折力の第3のレンズ(具体的には両凸の正レンズ)L3とから構成されている。
【0033】
第2のレンズ群G2は、物体側11から順番に配置された、像面側12に凸の正の屈折力の第4のレンズ(具体的には両凸の正レンズ)L4と、物体側11に凸の負の屈折力のメニスカスタイプの第5のレンズL5と、物体側11に凹の負の屈折力の第6のレンズ(具体的には像面側12に凸の負のメニスカスレンズ)L6とから構成されている。第3のレンズ群G3は、両凸の正レンズL7の一枚構成である。
【0034】
図7に、図6に示す光学系10を構成する各レンズのデータを示している。図8には、非球面のデータを示し、図9に、光学系10の球面収差、非点収差、歪曲収差を示し、図10に、光学系10の倍率色収差(横収差)をタンジェンシャル光線およびサジタル光線のそれぞれについて示している。
【0035】
この光学系10の主な性能を示す数値は以下の通りである。
全体の合成焦点距離(fa): 3.33(d線基準の計算、以下同様)
全長(AL): 9.930mm
F値: 2.8
最大画角(半画角): 42.0度
イメージサークル: φ6mm
バックフォーカス(BF): 2.08mm
第4のレンズL4の面Su9から像面までの距離(L4i):6.55mm
第4のレンズL4の焦点距離f4: 4.55mm
第3のレンズ群の焦点距離fg3: 8.11mm
条件(1): 0.69
条件(2): 2.44
条件(3): 0.51
【0036】
この撮像光学系10は、焦点距離3.33mm(35mm換算時24mm)、前玉径3.7mm、後玉径(直径)4.42mmで、最大直径Hmaxが4.5mm以下、全長ALが10mm以下の超小型の広角レンズである。この撮像光学系10も条件(1)~(4)をすべて満足する光学系であり、全体として、負-正-正のレトロフォーカスタイプで、さらに、上記の例と同様に、開口絞りStを挟んで配置された第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2により、外側から、内側が凹の負のレンズL1およびL6と、外側が凹で内側に凸の負のメニスカスレンズL2およびL5と、外側が凸の正のレンズL3およびL4とで構成された対称な構成を含む。したがって、物体側11においては、良好に収差補正ができるとともに周辺光量を確保しやすい構成であり、小型でありながら、F値が2.8程度と、小さく明るい光学系10となっている。
【0037】
また、開口絞りStの像面側12に隣接して、最もパワーの大きな正の屈折力の第4のレンズL4が配置されており、バックフォーカスBFが短く、図9および図10に示すように、収差が良好に補正された撮像光学系(レンズシステム)10を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10