(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】レンズシステムおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G02B13/04 D
(21)【出願番号】P 2019562096
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2018047816
(87)【国際公開番号】W WO2019131748
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2017253610
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017253611
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】望月 恵一
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-128480(JP,A)
【文献】特開2016-184136(JP,A)
【文献】特開2012-118243(JP,A)
【文献】特開2010-54693(JP,A)
【文献】特開2010-54692(JP,A)
【文献】特開2017-211480(JP,A)
【文献】特開2000-98222(JP,A)
【文献】特開2017-209154(JP,A)
【文献】特開2010-54694(JP,A)
【文献】特開2003-307672(JP,A)
【文献】特開2016-38547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群と、
フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群と、
フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群と、
物体側に絞りが配置され、フォーカシングの際に固定され、最も像面側に配置された屈折力が正の第4のレンズ群と
から構成され、
前記第3のレンズ群は、前記絞りに隣接して配置された、物体側から正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズからなる接合レンズを含み、
前記第4のレンズ群は、前記絞りに隣接して配置された、物体側から負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第1の接合レンズを含む、レンズシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2のレンズ群は、物体側に凹のメニスカスタイプの正の屈折力のレンズを含む、レンズシステム。
【請求項3】
請求項2において、
前記メニスカスタイプの正の屈折力のレンズは、1枚のレンズまたは接合レンズである、レンズシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1のレンズ群の合成焦点距離G1fと、前記第2のレンズ群の合成焦点距離G2fとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
-0.3≦G1f/G2f<0
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群は、物体側から順に、少なくとも1枚の正の屈折力のレンズと、正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズからなる接合レンズとを含む、レンズシステム。
【請求項6】
請求項5において、
前記第3のレンズ群の前記接合レンズの像面側の面は前記絞りに隣接しており、その面の有効半径G3LSHと、曲率半径G3LSrとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0<|G3LSH/G3LSr|≦0.2
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第4のレンズ群は、物体側から順に、負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第1の接合レンズと、負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第2の接合レンズと、物体側に凹の負のメニスカスレンズと、正の屈折力のレンズとを含む、レンズシステム。
【請求項8】
請求項7において、
前記第4のレンズ群の前記第1の接合レンズの像面側の面の有効半径G4B1SHと、曲率半径G4B1Srとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.005≦|G4B1SH/G4B1Sr|≦0.4
【請求項9】
請求項7または8において、
前記第4のレンズ群の前記正の屈折力のレンズは物体側の面の有効半径G4PSHと、曲率半径G4PSrとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0<|G4PSH/G4PSr|≦0.2
【請求項10】
請求項
1ないし9のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群は、物体側から順に、少なくとも1枚の正の屈折力のレンズと、前記接合レンズとを含む、レンズシステム。
【請求項11】
請求項
1ないし10のいずれかにおいて、
前記第4のレンズ群は、物体側から順に、前記第1の接合レンズと、負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第2の接合レンズと、物体側に凹の負のメニスカスレンズと、正の屈折力のレンズとを含む、レンズシステム。
【請求項12】
請求項
1ないし11のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群の前記接合レンズの像面側の面の有効半径G3LSHと、曲率半径G3LSrと、前記第4のレンズ群の前記第1の接合レンズの像面側の面の有効半径G4B1SHと、曲率半径G4B1Srとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0<|G3LSH/G3LSr|≦0.2
0.005≦|G4B1SH/G4B1Sr|≦0.4
【請求項13】
請求項
1ないし12のいずれかにおいて、
前記第4のレンズ群の前記第1の接合レンズの前記接合面は物体側に凸の面である、レンズシステム。
【請求項14】
請求項
1ないし13のいずれかにおいて、
前記第1のレンズ群は、最も物体側に配置された物体側に凸の負の第1のメニスカスレンズと、物体側に凸の負の第2のメニスカスレンズと、両凹の負レンズとを含み、前記第2のメニスカスレンズと前記負レンズとは、前記第2のメニスカスレンズまたは前記負レンズが物体側になるように隣接して配置されている、レンズシステム。
【請求項15】
請求項
14において、
前記負レンズの物体側の面の端部と前記負レンズの物体側に配置された前記第1のメニスカスレンズまたは前記第2のメニスカスレンズの像面側の面の端部との光軸に沿った第1の距離E1と、前記第2のメニスカスレンズの物体側の面の端部と前記第2のメニスカスレンズの物体側に配置された前記第1のメニスカスレンズまたは前記負レンズの像面側の面の端部と光軸に沿った第2の距離E2とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
E1<E2
【請求項16】
請求項
1ないし15のいずれかに記載のレンズシステムと、
前記レンズシステムの像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシステムおよび撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国特許公開公報2001-228391号には、3群構成のレトロフォーカスタイプのインナーフォーカス式広角レンズ系であって、半画角44゜程度、Fナンバー3.5程度の広角レンズ系が開示されている。この広角レンズ系は、物体側から順に、負の第1レンズ群と、正の第2レンズ群と、絞りを有する正の第3レンズ群とからなり、フォーカシングに際し、第2レンズ群が光軸方向に移動する。
【発明の開示】
【0003】
さらに明るく、フォーカシングによる倍率変動が小さい撮像系が求められている。
【0004】
本発明の一態様は撮像用のレンズシステムであって、物体側から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群と、物体側に絞りが配置され、フォーカシングの際に固定され、最も像面側に配置された屈折力が正の第4のレンズ群とを有するレンズシステムである。
【0005】
このレンズシステムは、負-正-正-正の4群構成のレトロフォーカスタイプで、第2のレンズ群のみがフォーカシングの際に光軸に沿って移動するインナーフォーカス式であり、さらに、固定された第3のレンズ群と第4のレンズ群との間に絞りが配置されているレンズシステムである。最も物体側のレンズ群が負のパワーのレトロフォーカスタイプは広角レンズに適しているが正のパワーが強いためにインナーフォーカスタイプで正のパワーのレンズがフォーカスの際に移動すると倍率が変化しやすい。このため、このレンズシステムにおいては、正のパワーの後群を3群構成に分けてパワーを分散し、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群のパワーを抑制し、フォーカシングの際に第2のレンズ群が移動しても倍率が変動しにくい構成としている。さらに、フォーカシングの際に動かない(固定されている)第3のレンズ群と第4のレンズ群との間に絞りを配置することによりフォーカシングによりF値が変動することを防止している。このため、倍率が変動や、明るさの変動をほとんど考慮することなく、フォーカスを自由に調整できるレンズシステムを提供できる。
【0006】
さらに、第2のレンズ群は、物体側に凹のメニスカスタイプの正の屈折力の1枚のレンズまたは接合レンズを含んでもよい。フォーカシングの際に移動し、負のパワーの第1のレンズ群に最も近い第2のレンズ群に物体側に凹のメニスカスタイプの正の屈折力の1枚または接合レンズを含めてもよい。レトロフォーカスタイプは正の屈折力が強くなりペッツバール和が増大しやすい。このレンズシステムにおいては、正の屈折力の後群の最も物体側となる第2のレンズ群に、物体側に凹の面を配置することによりペッツバール和の増大を抑制して、収差補正がより良好なレンズシステムを提供している。さらに、物体側の第1のレンズ群に向いた面を物体側に凹の面とすることによりフォーカシングの際に動く第2のレンズ群を、特にレンズの周辺部分を、負のパワーの第1のレンズ群に近づけることが可能となり、周辺光を含めて第2のレンズ群により像面側のレンズ群に伝達しやすい。このため、より明るく、F値の小さなレンズシステムを提供できる。また、負のパワーの第1のレンズ群に接近して正のパワーの第2のレンズ群を配置することにより、光束の広がりを抑制でき、像面側の第3のレンズ群以降のサイズを抑制でき、よりコンパクトなレンズシステムを提供できる。
【0007】
第3のレンズ群は、絞りに隣接して配置された、物体側から正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズからなる接合レンズを含み、第4のレンズ群は、絞りに隣接して配置された、物体側から負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる接合レンズ(最初の接合レンズ、第1の接合レンズ)を含んでもよい。
【0008】
第3のレンズ群に絞りに隣接して、物体側から正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズからなる接合レンズを配置し、第4のレンズ群に、絞りに隣接して、物体側から負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる接合レンズを配置し、絞りに対して接合レンズをパワー配分が対称になる配置を採用している。したがって、諸収差の補正が良好なレンズシステムを提供できる。
【0009】
本発明の他の態様の1つは、上記のレンズシステムと、レンズシステムの像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】レンズシステムおよび撮像装置の一例を示す図であり、
図1(a)はレンズシステムのフォーカスが無限遠の状態を示し、
図1(b)はフォーカスが近距離の状態を示す。
【
図2】
図1に示すレンズシステムの各レンズのデータを示す図。
【
図3】
図1に示すレンズシステムの非球面のデータを示す図。
【
図4】
図1に示すレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図5】
図1に示すレンズシステムの諸収差を示す図。
【
図6】
図1に示すレンズシステムの無限遠における横収差を示す図。
【
図7】
図1に示すレンズシステムの中間距離における横収差を示す図。
【
図8】
図1に示すレンズシステムの最短距離における横収差を示す図。
【
図9】レンズシステムおよび撮像装置の異なる例を示す図であり、
図9(a)はレンズシステムのフォーカスが無限遠の状態を示し、
図9(b)はフォーカスが近距離の状態を示す。
【
図10】
図9に示すレンズシステムの各レンズのデータを示す図。
【
図11】
図9に示すレンズシステムの非球面のデータを示す図。
【
図12】
図9に示すレンズシステムの諸数値を示す図。
【
図13】
図9に示すレンズシステムの諸収差を示す図。
【
図14】
図9に示すレンズシステムの無限遠における横収差を示す図。
【
図15】
図9に示すレンズシステムの中間距離における横収差を示す図。
【
図16】
図9に示すレンズシステムの最短距離における横収差を示す図。
【
図17】レンズシステムおよび撮像装置のさらに異なる例を示す図であり、
図17(a)はレンズシステムのフォーカスが無限遠の状態を示し、
図17(b)はフォーカスが近距離の状態を示す。
【
図18】
図17に示すレンズシステムの各レンズのデータを示す図。
【
図19】
図17に示すレンズシステムの非球面のデータを示す図。
【
図22】
図17に示すレンズシステムの無限遠における横収差を示す図。
【
図23】
図17に示すレンズシステムの中間距離における横収差を示す図。
【
図24】
図17に示すレンズシステムの最短距離における横収差を示す図。
【発明の実施の形態】
【0011】
図1に、撮像用の光学系を備えた撮像装置(カメラ、カメラ装置)の一例を示している。
図1(a)はフォーカシングが無限遠の状態を示し、
図1(b)はフォーカシングが最近距離の状態を示す。このカメラ(撮像装置)1は、レンズシステム(光学系、撮像光学系、結像光学系)10と、レンズシステム10の像面側(画像側、撮像側、結像側)12に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面)5とを有する。この撮像用のレンズシステム10は、物体側11から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群G2と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、物体側11に絞りStが配置され、フォーカシングの際に固定された、屈折力が正の第4のレンズ群G4とから構成されている。
【0012】
このレンズシステム10は、負-正-正-正の4群構成のレトロフォーカスタイプで、第2のレンズ群G2のみがフォーカシングの際に光軸7に沿って移動するインナーフォーカス式であり、さらに、固定された第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間に絞りStが配置されているレンズシステムである。最も物体側11のレンズ群G1が負のパワーのレトロフォーカスタイプは広角レンズに適しているが、一般に後群の正のパワーが強いためにインナーフォーカスタイプで正のパワーのレンズがフォーカスの際に移動すると倍率が変化しやすい。このため、このレンズシステム10においては、正のパワーの後群を3群構成に分けてパワーを分散し、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群G2のパワーを抑制し、フォーカシングの際に第2のレンズ群G2が移動しても倍率が変動しにくい構成としている。さらに、フォーカシングの際に動かない(固定されている)第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間に絞りStを配置することによりフォーカシングによりF値が変動することを防止している。このため、倍率が変動や、明るさの変動をほとんど考慮することなく、フォーカスを自由に調整できるレンズシステムを提供できる。
【0013】
第2のレンズ群G2は、物体側11に凹のメニスカスタイプの正の屈折力の1枚のレンズL21を含む。このレンズL21は接合レンズに置き換えられてもよい、本例では第2のレンズ群G2はメニスカスレンズL21の一枚構成であり、フォーカシングの際に移動し、負のパワーの第1のレンズ群G1に最も近い第2のレンズ群G2のレンズL21が物体側11に凹の正のメニスカスタイプの正の屈折力のレンズとなっている。レトロフォーカスタイプは正の屈折力が強くなりペッツバール和が増大しやすい。このレンズシステム10においては、正の屈折力の後群の最も物体側11となる第2のレンズ群G2のレンズL21に、物体側11に凹の面を配置することによりペッツバール和の増大を抑制して、収差補正、特に、球面収差およびコマ収差を良好に補正できるレンズシステム10を提供している。
【0014】
さらに、物体側11の第1のレンズ群G1に向いたレンズL21の物体側の面を物体側11に凹の面とすることにより、第2のレンズ群G2、具体的にはレンズL21をフォーカシングの際に第1のレンズ群G1に近づけることが可能となる。すなわち、レンズL21の物体側11に凹面を配置することにより、レンズL21の周辺部分を第1のレンズ群G1に近づけることが可能となり、負のパワーの第1のレンズ群G1で広がりやすい光束を、周辺光を含めて第2のレンズ群G2により捉えて像面側12のレンズ群に伝達できる。このため、より明るく、F値の小さなレンズシステム10を提供できる。また、負のパワーの第1のレンズ群G1に接近して正のパワーの第2のレンズ群を配置することにより、光束の広がりを抑制でき、像面側の第3のレンズ群G3以降のサイズを抑制でき、よりコンパクトなレンズシステム10を提供できる。
【0015】
第1のレンズ群の合成焦点距離G1fと、第2のレンズ群の合成焦点距離G2fとが以下の条件を満たすことが好ましい。
-0.3≦G1f/G2f<0・・・(1)
【0016】
レトロフォーカス式の正のパワーの後群を3群構成にすることによりフォーカシングの際に移動させる第2のレンズ群G2のパワーを上記条件(1)の範囲に抑制することによりフォーカシングの際の倍率変動を抑制でき、さらに画角の変動も抑制できる。また、上述したように、このレンズシステム10においては、フォーカシングの際のF値の変動も抑制されている。したがって、フォーカシングによる明るさ、倍率および画角の変動が少なく、ビデオや映画の撮影においてフォーカシングを自由に調整しやすい撮像装置(カメラ)1を提供できる。
【0017】
第1のレンズ群G1は、最も物体側11に配置された物体側11に凸の負の第1のメニスカスレンズL11と、両凹の負レンズL12と、物体側11に凸の負の第2のメニスカスレンズL13とを含む。最も物体側11に、物体側11に凸の負のメニスカスレンズL11を配置し、さらに、その像面側12に、同様に物体側11に凸の負のメニスカスレンズL13を配置する構成は広画角で明るい像を得るレンズシステム10に適している。一方、物体側11に凸の面が重複するためにペッツバール和が増大しやすく収差補正が難しくなる。このため、両凹の負レンズL12を中間に配置することにより、物体側11に凹の面を導入することが可能となりペッツバール和の増大を抑制できる。物体側11に凸の負のメニスカスレンズが隣接した構成に両凹の負レンズを隣接して配置してもよい。すなわち、第2のメニスカスレンズL13と両凹の負レンズL12とは、いずれか一方が物体側11になるように隣接して、入れ替わって配置されていてもよく、ペッツバール和の増大を抑制できる効果が得られる。
【0018】
一方、
図1に示したような、物体側11に凸の負のメニスカスレンズ(第1のメニスカスレンズ)L11、両凹の負レンズL12、物体側11に凸の負のメニスカスレンズ(第2のメニスカスレンズ)L13という組み合わせは、負のパワーのレンズの組み合わせであるが、最も物体側11の2枚のレンズL11およびL12の隣接する面の湾曲方向が異なるので軸上色収差の補正を効果的に行うことができ、さらに、サジタル像面とメジリオナル像面との差を小さく抑えることが可能となる。
【0019】
また、負レンズL12の物体側11の面(物体側に凹の面)は、その面の物体側11に配置される他のレンズの像面側12の面(物体側に凸の面)に、第1のメニスカスレンズL11、負レンズL12および第2のメニスカスレンズL13の組み合わせの中で、できる限り接近して配置されていることが望ましい。本例では、物体側11の第1のメニスカスレンズL11の像面側12の面と、負レンズL12の物体側11の面との距離が、負レンズL12の像面側12の面と、第2のメニスカスレンズL13の物体側の面との距離に対して短く、接近していることが望ましい。負のパワーのレンズ同士の組み合わせで、物体側11に凸の面と凹の面とが向かい合って接近した構成を採用することにより、光束の広がりをそれほど変えずに、それらの向きの異なる2つの面を、光軸からほぼ同じ位置を通過させることができる。広角のレンズシステム10では、物体側11のレンズの曲率が一般的に小さく収差が発生しやすいが、対称な面を向かい合わせて近い曲率の場所を光が通過することにより発生した収差をキャンセル、あるいは抑制できる。この構成は、軸上色収差の補正を効果的に行うために好適であり、サジタル像面とメジリオナル像面との差を小さく抑えることが可能となる。
【0020】
具体的には、負レンズL12の物体側11の面の端部と負レンズL12の物体側11に配置された第1のメニスカスレンズL11または第2のメニスカスレンズL13(本例では第1のメニスカスレンズL11)の像面側12の面の端部との光軸に沿った第1の距離E1と、第2のメニスカスレンズL13の物体側11の面の端部と第2のメニスカスレンズL13の物体側11に配置された第1のメニスカスレンズL11または負レンズL12(本例では負レンズL12)の像面側12の面の端部と光軸に沿った第2の距離E2とが以下の条件を満たすことが望ましい。
E1<E2・・・(2)
多くのケースでは第1の距離E1が最小空気間隔またはレンズの端部(エッジ)同士が接触するように配置され、第1の距離E1は最小空気間隔または0である。
【0021】
第3のレンズ群G3は、物体側11から順に、正の屈折力のレンズL31と、正の屈折力のレンズL32および負の屈折力のレンズL33からなる正の屈折力の接合レンズB31とを含む。レトロフォーカス型の場合、後群に強い正のパワーを配置するが、第3のレンズ群に正の屈折力の接合レンズB31を設けることにより色収差を改善できる。さらに、物体側11に正レンズL31を配置し、物体側11から正レンズL31およびL32が並んだ構成とすることにより、正のパワーの面を分散することが可能となり、光束が急激に曲がることを抑制できる。したがって、この構成は、球面収差の改善に適している。
【0022】
第3のレンズ群G3の接合レンズB31の像面側12の面G3LS(以下の
図2に示す面ではS17)は絞りStに隣接しており、その面の有効半径G3LSHと、曲率半径G3LSrとの比である半球率が以下の条件(3)を満たしてもよい。
0<|G3LSH/G3LSr|≦0.2・・・(3)
非点収差およびコマ収差、特にコマ収差は、絞りStを狭くすることにより改善されるが絞りStを通過する光量が減少するために明るいレンズシステム10を得ることが難しくなる。絞りStの物体側11の面G3LSを上記の条件(3)を満たすような平面に近い面とすることにより、絞りStの直前の面における光束の分散を抑制できる。このため、コマ収差が小さく、明るいレンズシステム10を得ることができる。一方、面G3LSを平面に近くすることによりレンズとしてのパワーは得にくいが、第3のレンズ群G3を上述したように正レンズL31と、正の接合レンズB31との組み合わせにすることにより物体側11の面に正のパワーを分散して第3のレンズ群G3としての所定のパワーを得ることができる。条件(3)の上限は0.1であってもよく、さらに、0.06であってもよい。
【0023】
第4のレンズ群G4は、物体側11から順に、負の屈折力のレンズL41および正の屈折力のレンズL42からなる第1の接合(最初の接合レンズ)レンズB41と、負の屈折力のレンズL43および正の屈折力のレンズL44からなる第2の接合レンズ(次の接合レンズ)B42と、物体側に凹の負のメニスカスレンズL45と、正の屈折力のレンズL46とを含む。この第4のレンズ群G4においては、全体として物体側11から負-正-負-正-負-正のレンズの組み合わせとなり軸上色収差が補正しやすく、さらに像面側12の2枚を独立したレンズとすることにより独立した面を設け、倍率色収差も含めた他の収差の補正も行いやすい構成となっている。
【0024】
さらに、絞りStを挟んで向かい合う第3のレンズ群G3が正-負の構成(接合レンズB31)であるのに対し、第4のレンズ群G4は負-正(接合レンズB41)の対称的なパワー配置となっており、収差補正が良好な構成となっている。すなわち、第3のレンズ群G3が、絞りStに隣接して配置された、物体側11から正の屈折力のレンズL32および負の屈折力のレンズL33からなる接合レンズB31を含み、第4のレンズ群G4が、絞りStに隣接して配置された、物体側11から負の屈折力のレンズL41および正の屈折力のレンズL42からなる接合レンズB41を含む構成は、絞りStを挟んで対称性の高い構成であり、収差が良好に補正しやすい構成である。
【0025】
また、このレンズシステム10においては、第3のレンズ群G3が物体側11から正のパワーのレンズL31および正-負の接合レンズB31を含み、絞りStを挟んで、第4のレンズ群G4は、物体側11から、負-正の接合レンズB41およびB42、負のパワーのレンズL45および正のパワーのレンズL46を含む。したがって、絞りStを挟んで配置された第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4のレンズ配置はパワーの対称性が高く、収差補正に適した構成となっている。
【0026】
さらに、第4のレンズ群G4の第1の接合レンズB41の像面側12の面G4B1S(以下の
図2に示す面ではS21)の有効半径G4B1SHと、曲率半径G4B1Srとの比である半球率が以下の条件(4)を満たしてもよい。
0.005≦|G4B1SH/G4B1Sr|≦0.4・・・(4)
この面G4B1Sは絞りStの像面側12で絞りStに最も隣接する像面側12の面であり、収差補正のためにはある程度の曲率が必要であるが、曲率が大きくなると収差補正が困難になる。したがって、条件(4)の範囲がコマ収差と倍率色収差の補正に適している。条件(4)の下限は0.001であってもよく、0.1であってもよい。条件(4)の上限は、0.25であってもよく、0.2であってもよい。
【0027】
第4のレンズ群G4の接合レンズB41およびB42の接合面は、ともに物体側11に凸であることが望ましく、第3のレンズ群G3の接合レンズB31の接合面(物体側11に凹)と対称であることが望ましい。接合面が絞りStに対して対称的な配置となり、収差補正に適した構成である。
【0028】
さらに、第4のレンズ群G4の最も像面側12の正の屈折力のレンズL46の物体側11の面G4PS(以下の
図2に示す面ではS27)の有効半径G4PSHと、曲率半径G4PSrとの比である半球率が以下の条件(5)を満たしてもよい。
0<|G4PSH/G4PSr|≦0.2・・・(5)
第4のレンズ群G4の最も像面側12の正のパワーのレンズL46は、レンズシステム10の最も像面側12の結像レンズであり、それより物体側11のレンズで分散された光束を集光する機能を果たす。第4のレンズ群G4は、物体側11に2つの接合レンズB41およびB42が配置され、それらに続いて負のメニスカスレンズL45が配置されており、それらにより収差が補正された光束を集光して結像するためには両面が凸で収差が発生しやすい両凸の正レンズよりも、平凸に近いレンズL46の方が最終の収差補正に適している。条件(5)の上限は0.1であってもよく、0.05であってもよい。
【0029】
図面を参照してさらに詳しく説明する。
図1にレンズシステム10の幾つかの状態におけるレンズ配置を示している。
図1(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図1(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、145mm)におけるレンズ配置を示している。
【0030】
このレンズシステム10は、無限遠における焦点距離が29mmの広角レンズであり、映画あるいはビデオ撮影用のカメラ1の交換レンズとして適した構成となっている。レンズシステム10は4群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が負の第1のレンズ群G1、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3、絞りStおよびパワーが正の第4のレンズ群G4からなり、第1のレンズ群G1、第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、像面側12に単調に移動する。
【0031】
図2に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。曲率半径(Ri)は物体側11から順に並んだ各レンズの各面の曲率半径(mm)、間隔diは各レンズ面の間の距離(mm)、有効径(Di)は各レンズ面の有効径(直径、mm)、屈折率ndは各レンズの屈折率(d線)、アッベ数νdは各レンズのアッベ数(d線)を示している。
図2において、面番号にアスタリスクが付記されている面は非球面であり、レンズ名称にアスタリスクが付記されているものは異常分散性ガラスを用いたレンズであることを示している。以下においても同様である。
【0032】
図3には、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示す。この例では、第1のレンズ群G1の最も物体側11のレンズL11の物体側11の面S1と、第4のレンズ群G4のレンズL45の像面側の面S26が非球面となっている。交換レンズであることを考慮した場合、非球面はレンズシステム10の内部の面であることが望ましい。一方、最も物体側11のレンズL11の物体側11の面S1は最も有効径が大きく、非球面化する効果が大きい。したがって、安定して良好に収差補正をするために適している。
【0033】
非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、
図3に示した係数K、A、B、CおよびDを用いて次式(X)で表わされる。以降の実施形態においても同様である。なお、「En」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/R)Y
2/[1+{1-(1+K)(1/R)
2Y
2}
1/2]
+AY
4+BY
6+CY
8+DY
10・・・(X)
【0034】
図4に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(1800mm)、最短(最接近、145mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d10、d12の値を示している。
【0035】
図5に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠(
図5(a))、中間(1800mm)(
図5(b))、最短(最接近、145mm)(
図5(c))のときの球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。また、
図6に、無限遠のときの横収差を示し、
図7に中間(1800mm)のときの横収差を示し、
図8に最短(最接近、145mm)のときの横収差を示している。球面収差は、波長404.6560nm(一点鎖線)と、波長435.8340nm(破線)と、波長486.1330nm(ドット、短破線)と、波長546.0740nm(二点鎖線)と、波長587.5620nm(短一点鎖線)と、波長656.2720nm(実線)とを示している。非点収差は、メリジオナル(タンジェンシャル)光線Mとサジタル光線Saとを示している。以下に示した収差図においても同様である。
【0036】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が15枚のレンズ(L11~L15、L21、L31~L33、L41~L46)からなる。最も物体側11に配置された第1のレンズ群G1は、物体側11から配置された、物体側11に凸の負のパワーのメニスカスレンズ(第1のメニスカスレンズ)L11と、両凹の負レンズL12と、物体側11に凸の負のパワーのメニスカスレンズ(第2のメニスカスレンズ)L13と、両凸の正レンズL14と、物体側11に凹の負のパワーのメニスカスレンズL15との5枚構成である。
【0037】
フォーカスレンズ群である第2のレンズ群G2は、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL21の一枚構成である。
【0038】
第3のレンズ群G3は、物体側11から順に配置された、両凸の正レンズL31と、両凸の正レンズL32および物体側11に凹の負のメニスカスレンズL33からなる接合レンズB31とから構成されている。
【0039】
絞りStを挟んで第3のレンズ群G3に対して像面側12に位置し、最も像面側12に配された第4のレンズ群G4は、両凹の負レンズL41および物体側11の凸の正のメニスカスレンズL42からなる接合レンズB41と、物体側11に凸の負のメニスカスレンズL43および両凸の正レンズL44からなる接合レンズB42と、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL45と、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL46とから構成されている。
【0040】
図1に示したレンズシステム10は、上述した構成をすべて含んでおり、各条件の値は以下の通りである。
条件(1) (G1f/G2f) : -0.12
条件(2) (E1<E2) : (0.4/13.9)
条件(3) (|G3LSH/G3LSr|(|D17/2/R17|)) : 0.02
条件(4) (|G4B1SH/G4B1Sr|(|D21/2/R21|)) : 0.121
条件(5) (|G4PSH/G4PSr|(D27/2/R27)) : 0.031
【0041】
図1に示したレンズシステム10は、条件(1)~(5)のすべてを満足しており、焦点距離が29mm、画角が36.8度と広角で、Fナンバーが1.69と非常に明るいレンズシステムとなっている。さらに、このレンズシステム10においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの際にFナンバーは固定され、焦点距離、画角もほとんど変わらず倍率変動がほとんどなく、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、
図5ないし
図8に示すように、フォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
【0042】
図9に異なるレンズシステム10を示している。
図9(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図9(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、150mm)におけるレンズ配置を示している。このレンズシステム10も全体がレンズ15枚(L11~L15、L21、L31~L33、L41~L46)の構成で、物体側11から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群G2と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、物体側11に絞りStが配置され、フォーカシングの際に固定された、屈折力が正の第4のレンズ群G4とから構成されている。
【0043】
したがって、このレンズシステム10も、負-正-正-正の4群構成のレトロフォーカスタイプで、第2のレンズ群G2のみがフォーカシングの際に光軸7に沿って移動するインナーフォーカス式であり、さらに、固定された第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間に絞りStが配置されているレンズシステムである。第2のレンズ群G2は、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL21の一枚構成であり、無限遠から近距離にフォーカスする際に物体側11から像面側12に単純に移動する。
【0044】
図10に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図11に、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示し、
図12に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(1800mm)、最短(最接近、150mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d10、d12の値を示している。また、
図13に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠(
図13(a))、中間(1800mm)(
図13(b))、最短(最接近、150mm)(
図13(c))のときの球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。
図14ないし16に、無限遠、中間(1800mm)、および最短(最接近、150mm)のときの横収差を示している。
【0045】
このレンズシステム10では、最も物体側の第1のレンズ群G1が、物体側11から、物体側11に凸の負のパワーのメニスカスレンズ(第1のメニスカスレンズ)L11と、物体側11に凸の負のパワーのメニスカスレンズ(第2のメニスカスレンズ)L12と、両凹の負レンズL13と、両凸の正レンズL14と、物体側11に凹の負のパワーのメニスカスレンズL15との5枚構成である。第2のメニスカスレンズと負レンズとが入れ替わった構成となっており、第1の距離E1は、第2のメニスカスレンズL12の像面側12の面の端部と負レンズL13の物体側の面の端部との光軸7に沿った距離となり、第2の距離E2は、第1のメニスカスレンズL11の像面側12の面の端部と第2のメニスカスレンズL12の物体側11の面の端部との距離となる。その他の第1のレンズ群G1の構成および他のレンズ群G2~G4の構成は
図1に示したレンズシステム10と共通する。
【0046】
図9に示したレンズシステム10の各条件の値は以下の通りである。
条件(1) (G1f/G2f) : -0.136
条件(2) (E1<E2) : (0.41/7.75)
条件(3) (|G3LSH/G3LSr|(|D17/2/R17|)) : 0.12
条件(4) (|G4B1SH/G4B1Sr|(|D21/2/R21|)) : 0.036
条件(5) (|G4PSH/G4PSr|(D27/2/R27)) : 0.035
【0047】
図9に示したレンズシステム10も、条件(1)~(5)のすべてを満足しており、焦点距離が29mm、画角が36.8度と広角で、Fナンバーが1.68と非常に明るいレンズシステムとなっている。さらに、このレンズシステム10においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの際にFナンバーは固定され、焦点距離、画角もほとんど変わらず倍率変動がなく、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、
図13ないし
図16に示すように、フォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
【0048】
図17に、さらに異なるレンズシステム10を示している。
図17(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、
図17(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、190mm)におけるレンズ配置を示している。このレンズシステム10も全体がレンズ15枚(L11~L15、L21、L31~L33、L41~L46)の構成で、物体側11から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群G2と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、物体側11に絞りStが配置され、フォーカシングの際に固定された、屈折力が正の第4のレンズ群G4とから構成されている。
【0049】
したがって、このレンズシステム10も、負-正-正-正の4群構成のレトロフォーカスタイプで、第2のレンズ群G2のみがフォーカシングの際に光軸7に沿って移動するインナーフォーカス式であり、さらに、固定された第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間に絞りStが配置されているレンズシステムである。第2のレンズ群G2は、物体側11に凹の正のメニスカスレンズL21の一枚構成であり、無限遠から近距離にフォーカスする際に物体側11から像面側12に単純に移動する。
【0050】
図18に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。
図19に、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示し、
図20に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2000mm)、最短(最接近、190mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d10、d12の値を示している。また、
図21に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠(
図21(a))、中間(2000mm)(
図21(b))、最短(最接近、190mm)(
図21(c))のときの球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。
図22ないし24に、無限遠、中間(2000mm)、および最短(最接近、190mm)のときの横収差を示している。
【0051】
このレンズシステム10では、最も物体側の第1のレンズ群G1が、
図9に示したレンズシステム10と共通し、その他の第1のレンズ群G1の構成および他のレンズ群G2~G4の構成は
図1に示したレンズシステム10と共通する。
【0052】
図17に示したレンズシステム10の各条件の値は以下の通りである。
条件(1) (G1f/G2f) : -0.14
条件(2) (E1<E2) : (0.40/4.97)
条件(3) (|G3LSH/G3LSr|(|D17/2/R17|)) : 0.06
条件(4) (|G4B1SH/G4B1Sr|(|D21/2/R21|)) : 0.0054
条件(5) (|G4PSH/G4PSr|(D27/2/R27)) : 0.043
【0053】
図17に示したレンズシステム10は、条件(1)~(3)および(5)を満足しており、条件(4)については接合レンズB41の像面側12の面S21が平面に近すぎて収差補正の能力が若干不足している傾向にある。しかしながら、異常分散レンズを、接合レンズB42を構成する両方のレンズに採用することなど、主要な箇所にさらに多く配置することによりコマ収差などの収差を良好な範囲まで補正している。このレンズシステム10においても、焦点距離が29mm、画角が36.8度と広角で、Fナンバーが1.66と非常に明るいレンズシステムとなっている。さらに、このレンズシステム10においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの際にFナンバーは固定され、焦点距離、画角もほとんど変わらず倍率変動がほとんどなく、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、
図21ないし
図25に示すように、フォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。