(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20220928BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B28/02
(21)【出願番号】P 2020558693
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2018044380
(87)【国際公開番号】W WO2020115790
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和寿
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-089212(JP,A)
【文献】国際公開第2005/007773(WO,A1)
【文献】特開2017-160076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02,
C04B40/00-40/06,
C04B103/00-111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分と、下記のB成分とを含有
し、
前記A成分と前記B成分との質量比A:Bが、50:50~99:1であり、
更に、C成分として、不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩から形成された構成単位と、分子中に1~300個の炭素数2~4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体から形成された構成単位とを有するカルボン酸系共重合体を含有し、
前記C成分の質量に対する、A成分とB成分の合計の質量%が、0.1~25%である水硬性組成物用添加剤。
A成分:アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定されるその質量平均分子量M
Aが1000以上100000未満である重合体;
B成分:アクリル酸及び/又はその塩から構成単位からなり、その質量平均分子量M
Bが100000以上50000000以下である重合体;
【請求項2】
請求項
1に記載の水硬性組成物用添加剤を含有する水硬性組成物。
【請求項3】
更に、結合材を含有する請求項
2に記載の水硬性組成物。
【請求項4】
前記結合材100質量部に対する、前記A成分と前記B成分の合計の質量部が、0.00005~0.04質量部である請求項
3に記載の水硬性組成
物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤に関する。更に詳細には、骨材に含まれる微粒分や粘土質の影響を緩和するとともに、かつ、材料分離抵抗性の高い、セメント組成物などに好適に用いることができる水硬性組成物用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物に対して流動性を付与するために、その調製時に、分散剤としてリグニンスルホン酸系分散剤、ナフタレンスルホン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤やポリカルボン酸系分散剤などが用いられている。近年では、充填性の向上や省力化、施工性の向上のために、さらに流動性を高めた水硬性組成物が用いられる機会が多くなっている。このような水硬性組成物として、例えば、スランプフローが500~700mm程度の高流動コンクリートや、スランプフローが350~500mm程度の中流動コンクリートなどの流動性の高いコンクリートが用いられている。
【0003】
このような水硬性組成物を得るために種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1においては、特定のポリカルボン酸系分散剤と、カルボン酸単量体と(メタ)アクリル酸系エステルとの共重合体を配合した混和剤を用いることにより、コンクリートに流動性と材料分離抵抗性を付与できることが提案されている。そして、特許文献1には、原料成分である、特定のポリカルボン酸系分散剤と、カルボン酸単量体と(メタ)アクリル酸系エステルとの共重合体とを組み合わせて一液型混和剤として供給され得ることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特定の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いることにより、高充填性および高流動性のコンクリートが得られることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-89212号公報
【文献】特開平4-139047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水硬性組成物に配合される骨材として、粗骨材や細骨材などが用いられている。これらの粗骨材や細骨材として、自然作用により岩石から形成され、川、山、海、陸から産出される砂利、砂等の天然骨材や、岩石をクラッシャなどで人工的に粉砕して得られる砕石及び砕砂が用いられている。
【0007】
良質な天然骨材が枯渇しつつある中で資源保護の観点や、洗浄の際、環境に与える影響を配慮して、品質として許される範囲内において、天然骨材に付着する微粒分や粘土質を洗い落としたりしないままで使用する場合がある。
【0008】
また、岩石を人工的に粉砕して砕石及び砕砂を製造する際に発生する微粒分や粘土質が付着したままの砕石及び砕砂を使用する場合もある。
【0009】
これらの微粒分や粘土質が骨材に付着したままであると、分散剤の添加量を多くする必要がある。分散剤の添加量を多くするとブリーディングの発生が多くなるという問題がある。また、所定のスランプフローを有し、流動性の高い水硬性組成物を得ようとした際に材料が分離しやすくなるという問題がある。
【0010】
骨材は、採取場所や採取時期により、その組成に違いが生じ、また、品質も相違する。骨材の組成差や品質の相違により水硬性組成物の流動性が一定ではなくなったり、所定の流動性を得るために混和剤の添加量を変化させる必要が生じるという問題がある。
【0011】
また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いた場合、減水剤成分との相溶性が低く、水溶液として一液化ができないという問題がある。
【0012】
特許文献1、2に開示された技術では、これらの問題を解決することができなかった。従って、本発明が解決しようとする課題は、骨材に付着した微粒分や粘土質等を洗い落したりしないままであっても、骨材に含まれる微粒分や粘土質の影響を緩和するとともに、かつ、材料分離抵抗性の高い水硬性組成物用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、特定の重合体を有する水硬性組成物用添加剤を用いるのが正しく好適であることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤が提供される。
【0014】
[1] 下記のA成分と、下記のB成分とを含有し、
前記A成分と前記B成分との質量比A:Bが、50:50~99:1であり、
更に、C成分として、不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩から形成された構成単位と、分子中に1~300個の炭素数2~4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体から形成された構成単位とを有するカルボン酸系共重合体を含有し、
前記C成分の質量に対する、A成分とB成分の合計の質量%が、0.1~25%である水硬性組成物用添加剤。
A成分:アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定されるその質量平均分子量MAが1000以上100000未満である重合体;
B成分:アクリル酸及び/又はその塩から構成単位からなり、その質量平均分子量MBが100000以上50000000以下である重合体;
【0015】
(削除)
【0016】
(削除)
【0017】
(削除)
【0018】
[2] 前記[1]に記載の水硬性組成物用添加剤を含有する水硬性組成物。
【0019】
[3] 更に、結合材を含有する前記[2]に記載の水硬性組成物。
【0020】
[4] 前記結合材100質量部に対する、前記A成分と前記B成分の合計の質量部が、0.00005~0.04質量部である前記[3]に記載の水硬性組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水硬性組成物用添加剤によれば、骨材に付着した微粒分や粘土質等を洗い落したりしないままであっても、骨材に含まれる微粒分や粘土質の影響を緩和するとともに、かつ、材料分離抵抗性を高くできるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0023】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤は、A成分と、B成分とを含有する水硬性組成物用添加剤である。
【0024】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するA成分及びB成分は、アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位を有する重合体であり、アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位からなる重合体である。ここで、アクリル酸塩の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。取扱いやすさや入手のしやすさの観点から、好ましくはナトリウム塩、アンモニウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。また、アクリル酸及び/又はその塩は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0025】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するA成分の重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定される質量平均分子量MAが、1000以上100000未満であり、1000以上50000以下であるのが好ましく、1000以上30000以下であるのがより好ましく、1000以上10000以下であるのが更に好ましい。
【0026】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するB成分の重合体は、質量平均分子量MBが、100000以上50000000以下であり、300000以上30000000以下であるのが好ましく、500000以上20000000以下であるのがより好ましく、800000以上10000000以下であるのが更に好ましい。
【0027】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤においては、A成分とB成分の濃度は特に限定されないが、A成分の比率が高すぎると、十分な分離抑制効果が得られず、また、B成分の比率が高すぎると骨材中の微粒分による水硬性組成物の流動性の変動が大きくなってしまうことを防止する観点から、A成分とB成分との質量比A:Bが、1:99~99:1とすることができるが、本発明では、50:50~99:1であり、75:25~99:1であるのが更に好ましく、80:20~99:1であるのが更により好ましく、80:20~96:4であるのが特に好ましい。
【0028】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤は、更に、C成分としてカルボン酸系共重合体を含有するのが好ましい。
【0029】
本発明では、本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供するC成分のカルボン酸系共重合体として、不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩から形成された構成単位と、分子中に1~300個の炭素数2~4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体から形成された構成単位とを有するものである。
【0030】
不飽和カルボン酸単量体及び/又はその塩としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及び/又はその塩等が挙げられる。1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する不飽和ジカルボン酸単量体は、一つのカルボン酸又はその塩以外にエステル結合やアミド結合等を有していてもよい。ここで不飽和カルボン酸塩の種類は特に制限されず、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0031】
分子中に1~300個の炭素数2~4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体としては、例えば、α-ビニル-ω-ヒドロキシ(ポリ)オキシブチレン(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-アセチル-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-アセチル-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-アセチル-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、ポリアルキレンポリアミンの活性イミノ基、活性アミノ基にアルキレンオキシドを付加させ、かつ分子中に(メタ)アクリロイル基等の不飽和結合を有するポリアルキレンポリアミン系単量体、二塩基酸とポリアルキレンポリアミンとを縮合させたポリアミドポリアミンの活性イミノ基、アミノ基、アミド残基に対してアルキレンオキシドを付加させ、かつ分子中に(メタ)アクリロイル基等の不飽和結合を有するポリアミドポリアミン系単量体等が挙げられる。
【0032】
C成分であるカルボン酸系共重合体の質量平均分子量は、2000~500000であるのが好ましく、5000~200000であるのがより好ましい。
【0033】
本実施形態の水硬性組成物用添加剤においては、C成分の質量に対する、A成分とB成分の合計の質量%が、0.1~25%であり、0.2~15%であるのが好ましく、0.3~10%であるのが更に好ましく、0.5~5%であるのが更により好ましい。
【0034】
次に、本実施形態の水硬性組成物について説明する。本実施形態の水硬性組成物は、本実施形態の水硬性組成物用添加剤を含む。
【0035】
水硬性組成物用添加剤の水硬性組成物に対する添加方法は、A成分と、B成分と、C成分とをそれぞれ独立して添加してもよく、また同時に添加してもよい。A成分、B成分及びC成分は、粉末として水硬性組成物スラリーに添加してもよく、また、A成分、B成分及びC成分を液体の収縮低減剤や液体の消泡剤等に分散させた状態又は溶解させた状態で水硬性組成物スラリーに添加してもよく、更に、A成分、B成分及びC成分を水に溶解させた状態で水硬性組成物スラリーに添加してもよい。なお、各成分の添加様式が相違していてもよい。例えば、A成分及びB成分は粉末として添加し、C成分を液体の収縮低減剤や液体の消泡剤等に分散させた状態で添加してもよく、その他の添加様式でもよい。
【0036】
C成分であるカルボン酸系共重合体は、水溶液として用いてもよく、水溶液として用いる場合は、A成分とB成分との相溶性の観点から、C成分の1質量%水溶液のpHが2~7であるのが好ましく、2~6であるのがより好ましく、2~5であるのが更に好ましい。
【0037】
本実施形態の水硬性組成物は以上説明したような本実施形態の水硬性組成物用添加剤を使用して調製したものであり、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物であることが好ましい。セメント組成物は、結合材として、少なくともセメントを使用したものであるが、セメントを単独で使用してもよく、また、セメントとポゾラン物質や潜在水硬性をもつ微粉末混和材料を併用してもよい。このようなセメントとしては、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどの各種混合セメントが挙げられる。また、微粉末混和材料としては、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、フライアッシュ、石灰石微粉末等が挙げられる。さらに、膨張材、石膏などを含んでいてもよい。
【0038】
本実施形態の水硬性組成物は、骨材を含むことも好ましい。骨材としては、細骨材や粗骨材などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材のうち、細骨材としては、川砂、山砂、陸砂、珪砂、砕砂、高炉スラグ細骨材などが挙げられ、粗骨材としては、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、高炉スラグ粗骨材などが挙げられる。
【0039】
本実施形態の水硬性組成物においては、結合材100質量部に対する、A成分とB成分の合計の質量部が0.00005~0.04質量部であるのが好ましく、0.0002~0.03質量部であるのがより好ましく、0.0002~0.02質量部であるのが更に好ましく、0.0003~0.01質量部であるのが更により好ましく、0.0004~0.008質量部であるのが特に好ましい。
【0040】
本実施形態の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜、例えば、陰イオン界面活性剤からなるAE調整剤、例えば、オキシアルキレン系の消泡剤、例えば、オキシカルボン酸塩からなる凝結遅延剤、例えば、アルカノールアミンからなる硬化促進剤、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる乾燥収縮低減剤、例えば、イソチアゾリン系化合物からなる防腐剤、例えば、高級脂肪酸誘導体からなる防水剤、例えば、亜硝酸塩からなる防錆剤等を含有させることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0042】
試験区分1(A成分及びB成分としてのアクリル酸及び/又はその塩の重合体)
用いたアクリル酸及び/又はその塩の重合体を表1にまとめて示す。
【0043】
【0044】
表1において、
A-1:ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製アロンT-210)
A-2:ポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社製ポリアクリル酸5,000)
A-3:ポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社製ポリアクリル酸25,000)
B-1:ポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社製ポリアクリル酸250,000)
B-2:ポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社製ポリアクリル酸1,000,000)
B-3:ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製アロンA-20P-X)
R-1:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製メトローズHi90SH30000)
R-2:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製メトローズHi90SH100000)
d-1:アクリル酸ナトリウムから形成された構成単位
d-2:アクリル酸から形成された構成単位
d-3:アクリル酸から形成された構成単位
d-4:アクリル酸から形成された構成単位
d-5:アクリル酸から形成された構成単位
d-6:アクリル酸ナトリウムから形成された構成単位
【0045】
試験区分2(C成分としてのカルボン酸系共重合体の製造)
【0046】
・製造例1{カルボン酸系共重合体(PC-1)の製造}
蒸留水250g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=50)オキシエチレン330gを温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様のものを使用した)に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃に保持した。次に、1%過酸化水素水16gを3時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水80gにアクリル酸30gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水14gにL-アスコルビン酸2gとチオグリコール酸3gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後、2時間、反応系の温度を65℃に維持し、重合反応を終了した。その後、反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH3に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量35000であった。この反応物をカルボン酸系共重合体(PC-1)とした。
【0047】
・製造例2{カルボン酸系共重合体(PC-2)の製造}
蒸留水150gを反応容器に仕込み、雰囲気を窒素置換し、窒素雰囲気下にて反応系の温度を60℃に保持した。次に蒸留水150g、メタクリル酸20g、α-ヒドロキシ-ω-メタクリロイル-ポリ(n=2)オキシプロピレンポリ(n=113)オキシエチレン320g、ヒドロキシエチルアクリレート10g、及び3-メルカプトプロピオン酸3.5gを均一混合し、単量体混合物水溶液を調整した。この単量体混合物水溶液と10%過硫酸ナトリウム水溶液24gとを4時間かけて反応容器に同時に滴下してラジカル共重合反応を行い、更に、10%過硫酸ナトリウム水溶液6gを1時間かけて滴下して反応を行った。その後、反応系の温度を60℃に保持して1時間、ラジカル共重合反応を行った。次いで、反応系を室温まで冷却した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH5に調整し、蒸留水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量43000であった。この反応混合物をカルボン酸系共重合体(PC-2)とした。
【0048】
・製造例3{カルボン酸系共重合体(PC-3)の製造}
蒸留水150gを反応容器に仕込み、雰囲気を窒素置換し、窒素雰囲気下にて反応系の温度を60℃に保持した。次に蒸留水150g、メタクリル酸35g、α-メトキシ-ω-メタクリロイル-ポリ(n=23)オキシエチレン300g、アクリル酸メチル5g、及び3-メルカプトプロピオン酸3.5gを均一混合し、単量体混合物水溶液を調整した。この単量体混合物水溶液と10%過硫酸ナトリウム水溶液24gとを4時間かけて反応容器に同時に滴下してラジカル共重合反応を行い、更に、10%過硫酸ナトリウム水溶液6gを1時間かけて滴下して反応を行った。その後、反応系の温度を60℃に保持して1時間、ラジカル共重合反応を行った。次いで、反応系を室温まで冷却した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH4に調整し、蒸留水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量43000であった。この反応混合物をカルボン酸系共重合体(PC-3)とした。
【0049】
試験区分3(A成分、B成分の質量平均分子量の測定)
A成分及びB成分の質量平均分子量を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0050】
[A成分及びB成分の質量平均分子量の測定]
アクリル酸及び/又はその塩の重合体の質量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー-多角度光散乱法(GPC-MALS法)及び/またはゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)にて行い、条件を以下のものとした。用いたアクリル酸及び/又はその塩の重合体を表1に示す。
ポリアクリル酸の質量平均分子量が500,000を超えるとGPC法では測定できなかったので、質量平均分子量が500,000を超えたものはGPC-MALS法を用いた。なお、B-1にてGPC-MALS法とGPC法に分子量の差は±3%以内であり同一であるとみなした。
[測定条件]
[GPC-MALS法]
検出器:示差屈折率計(RI)、多角度光散乱検出器(MALS)
カラム:昭和電工社製OHpak SB-807 HQ+SB-806M HQ
溶離液:0.1Mトリス緩衝液(pH=0.9、0.1M塩化カリウム添加)/アセトニトリル混合溶媒(混合体積比:7/3)
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
[GPC法]
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:昭和電工社製OHpak SB-G+SB-806M HQ+SB-806M HQ
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流速:0.7mL/分
カラム温度:40℃
標準物質:アジレント社製ポリアクリル酸ナトリウム
【0051】
[C成分の質量平均分子量の測定]
C成分であるカルボン酸系共重合体の質量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)にて行い、条件を以下のものとした。
【0052】
[測定条件]
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:昭和電工社製OHpak SB-G+SB-806M HQ+SB-806M HQ
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流速:0.7mL/分
カラム温度:40℃
標準物質:アジレント社製ポリエチレングリコール/酸化物(PEG/PEO)
【0053】
試験区分4(相溶性の確認)
溶液の相溶性を、C成分のカルボン酸系共重合体を20%としたときの、表2に示すA成分とB成分の比率で十分撹拌混合し、目視により以下の基準で判定した。溶液の濃度調整には上水道水を用いた。
(相溶性の判定基準)
A:沈殿や沈降を判別できない程度であった
B:薄い濁りが確認された
C:沈殿や沈降が確認された
【0054】
【0055】
表2において、
※1:B-2:B-3の質量比B-2:B-3が50:50となるように用いた。
※2:R-1、R-2をB成分に置き換えて添加した
【0056】
試験区分5(水硬性組成物としてのコンクリート組成物の調製)
表2及び表3に記載の配合条件下で、次のようにコンクリート組成物を調製した。50Lのパン型強制練りミキサーに、結合材として普通ポルトランドセメント(密度3.16g/cm3)、フライアッシュ(密度2.29g/cm3、強熱減量2.3%)、高炉スラグ微粉末(密度2.88g/cm3)を投入し、細骨材として大井川水系産陸砂(密度2.58g/cm3)及び粗骨材として岡崎産砕石(密度2.68g/cm3)を投入し、表3の配合No.2においては更にベントナイト(和光純薬工業株式会社製)を投入して10秒間空練りした。その後、目標スランプフローが600±30mm及び空気量が2%以下の範囲となるよう、消泡剤(竹本油脂社製の商品名AFK-2)を結合材100質量部に対し0.005~0.01質量部の範囲で添加すると共に、試験区分4で使用した水硬性組成物用添加剤を練り混ぜ水と共に投入し、90秒間練り混ぜた。なお、添加剤および消泡剤は水の一部とみなした。
【0057】
【0058】
配合材料の練混ぜ及び試験は材料温度を20±3℃に設定し、室温を20±3℃に設定し、湿度を60%以上に設定した環境下で実施した。調製した各例のコンクリート組成物について、練り混ぜ直後のスランプフロー、練り混ぜ直後の空気量、練り混ぜ直後の分離抵抗性及びブリーディングを下記のように求めた。配合No.1の結果を表4に、配合No.2の結果を表5に示した。
【0059】
・スランプフロー:練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1150に準拠してスランプコーンを引き上げてから3分後に測定した。
・空気量:練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1128に準拠して測定した。
・分離抵抗性:練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、スランプコーンを引き上げてから3分後に目視により、以下の基準で行なった。
(分離抵抗性の判定基準)
A:非常に良好(骨材とモルタル・ペーストの分離なし)
B:良好(骨材とモルタル・ペーストが僅かに分離)
C:悪い(骨材とモルタル・ペーストが分離)
D:非常に悪い(骨材とモルタル・ペーストの分離が顕著)
・ブリーディング:JIS-A1123に準拠して測定した。
(ブリーディングの判定基準)
A:非常に良好(ブリーディング率が0.00~4.00%)
B:良好(ブリーディング率が4.01~6.00%)
C:悪い(ブリーディング率が6.00%超)
【0060】
【0061】
表4において、
※1:結合材100質量部に対する、(A)成分と(B)成分の合計の質量部(固形分)
※2:結合材100質量部に対する、(C)成分のみの質量部(固形分)
【0062】
【0063】
表5において、
※1:結合材100質量部に対する、(A)成分と(B)成分の合計の質量部(固形分)
※2:結合材100質量部に対する、(C)成分のみの質量部(固形分)
【0064】
(結果)
表2に示すように、A成分を含まず、B成分の代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む比較例7、8に比べて、A成分及びB成分を含む実施例1~10は、相溶性に優れていることが示された。また、表4に示すように、A成分及びB成分を含む実施例11~20は、A成分を含まないでB成分のみを有する比較例11~15及びB成分を含まないでA成分のみを含有する比較例16に比べて、十分な分離抵抗性を示すとともに、ブリーディング量が少量であることが示された。更に、表5に示すように、A成分を含まないでB成分のみを含有する比較例21~25及びB成分を含まないでA成分のみを含有する比較例26に比べて、A成分及びB成分を含む実施例21~30は、十分な分離抵抗性を示すとともに、ブリーディング量が少量であることが示された。また、A成分を含まず、B成分の代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む比較例17、18、27、28は相溶性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物を調製する際の添加剤として利用することができる。