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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】検査治具及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20220928BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/01 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021115833
(22)【出願日】2021-07-13
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592180823
【氏名又は名称】株式会社メック
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】田代 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】于 男
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186030(JP,A)
【文献】特開平11-316195(JP,A)
【文献】特開平8-201313(JP,A)
【文献】特開2006-250551(JP,A)
【文献】特開昭58-106444(JP,A)
【文献】特開2005-289599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0137407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/00-21/01、21/17-21/61
G01N 21/84-21/958
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を出射する照明装置であり幅方向の長さがW2である照明装置と、
観察位置からみて、検査対象の幅方向とは直交する方向において、前記観察位置を中心として凹形状とされた弧状であり、前記観察位置からの距離を半径とした曲面となるように前記検査対象を支持する支持部と、
前記支持部の前記曲面の周方向における第1位置Pa及び第2位置Pcの範囲において、前記照明光を前記検査対象に対して、垂直に反射させ、前記反射された光を前記観察位置に対して透過させる光学部材と、
前記照明装置と前記光学部材との間に、前記照明装置の長手方向の中心線に沿って帯状に配置され、前記出射される照明光を、検査対象の幅方向に沿う方向において遮光する遮光部であり幅方向の長さがW1である遮光部とを有し、
前記観察位置から前記光学部材までの距離と、前記照明装置から前記光学部材までの距離が等しくなるように設置され、
前記観察位置から前記検査対象を見たときに黒色部分に見える凹みの角度の範囲は、±tan -1 (W1/2/L)、白色に見える凹みの角度範囲は、±tan -1 (W2/2/L)である
検査治具。
【請求項2】
前記支持部は、前記検査対象を前記曲面に沿って周方向に移動可能である請求項1に記載の検査治具。
【請求項3】
前記支持部の位置を前記幅方向とは直交する方向において調整する調整部を有する請求項1又は2に記載の検査治具。
【請求項4】
更に、前記観察位置に設けられる撮像装置を有する請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の検査治具。
【請求項5】
照明装置と光学部材との間に、前記照明装置の長手方向の中心線に沿って帯状に配置され、前記照明装置から出射される照明光を、検査対象の幅方向に沿う方向において遮光する遮光部を設け、
前記検査対象を、観察位置からみて、前記検査対象の幅方向とは直交する方向において、前記観察位置を中心として凹形状とされた弧状であり、前記観察位置からの距離を半径Lとした曲面となるような支持部により支持しておき、
前記照明装置から照明光を出射し、前記支持部の前記曲面の周方向における第1位置Pa及び第2位置Pcの範囲において、前記照明光を光学部材を介して前記検査対象に当てて垂直に反射させ、前記反射された光を前記光学部材を透過させて前記観察位置で観測して、前記検査対象の欠陥を検出する検査方法であり、
前記遮光部の幅方向の長さがW1であり、
前記照明装置の幅方向の長さがW2であり、
前記観察位置から前記光学部材までの距離と、前記照明装置から前記光学部材までの距離が等しくなるように設置されており、
前記観察位置から前記検査対象を見たときに黒色部分に見える凹みの角度の範囲は、±tan-1(W1/2/L)、白色に見える凹みの角度範囲は、±tan-1(W2/2/L)である
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査治具及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来より行われているフィルムの目視検査方法を説明するための図である。図9に示すように、検査対象110の斜め上方に、照明装置120が配置される。照明装置120は、例えば蛍光灯である。検査対象110と照明装置120との間の距離Lxは、2m程度である。検査員は、観測部130において、照明装置120の明るさが変化している周辺部に合わせて、正反射で欠陥を確認する。検査対象110が平坦であれば、均一の明るさに見えるが、凹みがあると明るさが変化して見える。例えば、凹みの角度が、0.15度の場合(半径0.1mmの場合、深さ0.26μmに相当)、反射方向は2倍の0.3度となる。検査対象から照明まで2000mmの場合は、照明の位置で10.5mm(2000×tan0.3度)ずれるため、明るさが変化して見える。
【0003】
図10は、従来より行われているフィルムの目視検査方法での欠陥の見え方を説明するための図である。図10において、白色部分140は照明装置120の像である。欠陥部分141は、照明装置120の当たる位置の白色部分140から最も離れた位置付けたキズによる像である。欠陥部分142は、欠陥部分141より白色部分140に近い位置に付けたキズによる像である。欠陥部分143は、白色部分140から最も近い位置に付けたキズによる像である。キズによる欠陥は線状凹みで、キズによる欠陥が検出できれば、欠陥部分141、142、143では、白線が見える。
【0004】
図10の例では、照明装置120の当たる位置の白色部分140の近くにある欠陥部分143では僅かにキズによる白線が見えるが、白色部分140から離れた欠陥部分142及び欠陥部分141では、殆どキズによる白線は見えない。このように、欠陥の見え方は、照明装置120の当たる白色部分140の位置からの距離により変化する。また、目視検査の場合には、欠陥の検出は検査員の熟練度に依存する。
【0005】
また、特許文献1には、遮光マスクで遮光された棒状光源からの光を透明板状体に向けて照射し、透明板状体を介された光を1次元撮像装置で受光して欠陥を検出するものが記載されている。また、特許文献2には、照明からの光をハーフミラーを介して被検査物に照射し、この反射光を撮像素子で撮像し、撮像素子の撮像画面を解析して欠陥の種類を識別するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平08-201313号公報
【文献】特開2014-186030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来の目視によるフィルムの検査方法では、欠陥の見え方は、照明装置の当たる位置からの距離により大きく変化する。このため、フィルムを手にもって見る場合は、検査員は、欠陥が見える位置に安定してフィルムを保持する必要がある。また、どのレベルの欠陥まで検出できるかは、検査員の熟練度に依存する。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明は、検査員の熟練度に依存せず、フィルム等の欠陥を容易に検出できる検査治具及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る検査冶具は、照明光を出射する照明装置であり幅方向の長さがW2である照明装置と、観察位置からみて、検査対象の幅方向とは直交する方向において、前記観察位置を中心として凹形状とされた弧状であり、前記観察位置からの距離を半径とした曲面となるように前記検査対象を支持する支持部と、前記支持部の前記曲面の周方向における第1位置Pa及び第2位置Pcの範囲において、前記照明光を前記検査対象に対して、垂直に反射させ、前記反射された光を前記観察位置に対して透過させる光学部材と、前記照明装置と前記光学部材との間に、前記照明装置の長手方向の中心線に沿って帯状に配置され、前記出射される照明光を、検査対象の幅方向に沿う方向において遮光する遮光部であり幅方向の長さがW1である遮光部とを有し、前記観察位置から前記光学部材までの距離と、前記照明装置から前記光学部材までの距離が等しくなるように設置され、前記観察位置から前記検査対象を見たときに黒色部分に見える凹みの角度の範囲は、±tan -1 (W1/2/L)、白色に見える凹みの角度範囲は、±tan -1 (W2/2/L)である検査冶具である。
【0010】
本発明の一態様に係る検査方法は、照明装置と光学部材との間に、前記照明装置の長手方向の中心線に沿って帯状に配置され、前記照明装置から出射される照明光を、検査対象の幅方向に沿う方向において遮光する遮光部を設け、前記検査対象を、観察位置からみて、前記検査対象の幅方向とは直交する方向において、前記観察位置を中心として凹形状とされた弧状であり、前記観察位置からの距離を半径Lとした曲面となるような支持部により支持しておき、前記照明装置から照明光を出射し、前記支持部の前記曲面の周方向における第1位置Pa及び第2位置Pcの範囲において、前記照明光を光学部材を介して前記検査対象に当てて垂直に反射させ、前記反射された光を前記光学部材を透過させて前記観察位置で観測して、前記検査対象の欠陥を検出する検査方法であり、前記遮光部の幅方向の長さがW1であり、前記照明装置の幅方向の長さがW2であり、前記観察位置から前記光学部材までの距離と、前記照明装置から前記光学部材までの距離が等しくなるように設置されており、前記観察位置から前記検査対象を見たときに黒色部分に見える凹みの角度の範囲は、±tan-1(W1/2/L)、白色に見える凹みの角度範囲は、±tan-1(W2/2/L)である検査方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、落射反射光学系の構成で黒色部分を観察して欠陥を検出する場合に、黒色部分を広げて、欠陥の検出を容易としている。これにより、検査員の熟練度に依存せず、検査対象の欠陥を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る検査治具の説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る検査治具の具体構成を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る検査治具における照明装置及び遮光部の具体例の説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る検査治具における支持部の説明に用いる分解斜視図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る検査治具における支持部の説明図である。
図6A】本発明の第1の実施形態に係る検査治具における欠陥検査の説明図である。
図6B】本発明の第1の実施形態に係る検査治具における欠陥検査の説明図である。
図7A】検査対象が直線的に支持されているときの欠陥の見え方を説明するための図である。
図7B】本発明の第1の実施形態に係る検査治具における欠陥の見え方を説明するための図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る検査治具の説明図である。
図9】従来より行われているフィルムの目視検査方法を説明するための図である。
図10】従来より行われているフィルムの目視検査方法での欠陥の見え方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る検査治具1の説明図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1は、照明装置10と、遮光部20と、ハーフミラー(光学部材)30と、支持部40とを含んで構成される。
【0015】
照明装置10は、例えばLED(Light Emitting Diode)からなる棒状照明である。照明装置10は、LED等の光源となる発行素子が長手方向に並べられている。なお、照明装置10は、LED照明に限定されず、蛍光灯等、他の照明を用いても良い。
【0016】
遮光部20は、照明装置10の長手方向の中心線に沿って帯状に配置され、照明装置10とハーフミラー30との間において、照明装置10から出射される照明光を遮光する黒ストライプの遮光板である。遮光部20は、ストライプ状の形状であり、色は黒であるが、照明装置10の光を遮光することができれば、黒以外の色であってもよい。
【0017】
ハーフミラー30は、その主面が照明装置10に対して45度の角度で配置され、照明装置10からの照明光を検査対象50に向けて反射するとともに、検査対象50から反射された光を透過して、観測部60への光路を生成する。
【0018】
支持部40は、欠陥検査の対象となる検査対象50を支持する。支持部40は、検査対象50の幅方向とは直交する方向において凹形状となるように湾曲した形状となっている。また、この凹形状は、観察位置から検査対象50までの距離Lを半径とし、当該観察位置を中心とした弧状となるように窪んでいる。
また、支持部40は、周方向に沿って、移動可能(回転する方向)とされている。
【0019】
検査対象50は、欠陥の検査対象となる部材である。検査対象50としては、例えばフィルム部材が用いられる。検査対象50の欠陥は、例えば検査対象50に付けられたキズ等である。なお、検査対象50は、透明部材であっても良いし、不透明部材であっても良い。
【0020】
観測部60は、検査員が検査対象50の状態を観察し、検査対象50の欠陥を目視により検査する観察位置となる部分である。
【0021】
このように、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1は、照明装置10からの照明光をハーフミラー30で反射させて検査対象50に照射するとともに、検査対象50からの反射光をハーフミラー30を透過させ、観測部60で観測するような、落射反射光学系の構成となっている。
【0022】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1の具体構成を示す斜視図である。図2において、検査治具1の上方に、照明装置10、遮光部20、及びハーフミラー30が配置される。また、検査治具1の上方に、観測部60が設けられる。検査治具1の下方に、支持部40が配置される。支持部40に検査対象50が固定される。
【0023】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1における照明装置10及び遮光部20の説明図である。図3に示すように、照明装置10は棒状照明であり、その長手方向の長さがL1(例えばL1=120mm)であり、幅方向の長さがW2(例えばW2=40mm)である。遮光部20は、照明装置10の中心線に沿って配置され、長手方向の長さがL1(例えばL1=120mm)であり、幅方向の長さがW1(例えばW1=3mm)である。
【0024】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る検査治具における支持部40の説明に用いる分解斜視図である。図4に示すように、支持部40は例えば鉄製であり、検査対象50の幅方向とは直交する方向において凹形状となる載置面41a及び41bを有している。また、支持部40は、検査対象50を支持する部位の一部に、検査対象50を載置する載置面41a及び41bとは反対側の面44とを貫通する貫通穴43が形成されている。図4に示すように、検査対象50は支持部40の載置面41a及び41bに載置され、周縁が例えばマグネットテープ42a及び42bにより支持部40に対して磁力によって吸着させることで、挟持されて固定される。なお、検査対象50を支持部40に固定する方法は、マグネットテープ42a及び42bに限定されない。
【0025】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1における支持部40の説明図である。図5に示すように、支持部40の曲率の半径Rは、観測部60から検査対象50までの距離Lに対応する(例えばL=R=280mm)。
【0026】
また、図5に示すように、本実施形態に係る検査治具1では、観測部60から検査対象50までの距離と、照明装置10から検査対象50までの距離とが等しくなるようにしている。すなわち、照明装置10からハーフミラー30までの距離Laと、観測部60からハーフミラー30までの距離Lbとが等しく(例えばLa=Lb=50mm)となっている。したがって、観測部60から検査対象50までの距離と、照明装置10から検査対象50までの距離は、共に等しい距離L(例えばL=280mm)となる。
【0027】
また、図5において矢印A1で示すように、支持部40は、半径Rの円周に沿って、周方向に移動可能とされている。これにより、検査対象50の取り付け位置を変更しなくても、支持部40を周方向に少し移動させることで、検査対象50の別の位置を観察することができる。ここでは、観察位置(観測部60)を中心にして支持部40を周方向に回転させるように移動させることができるため、支持部40を移動したとしても、観測部60から検査対象までの距離が変わらない。そのため、検査対象において異なる位置を観察する場合であっても、支持部40を周方向に移動させることで距離Lを一定に保ったまま異なる位置を簡単に観察することができる。よって、異なる位置を観察するために、支持部40に対する検査対象の載置位置を変更する手間を省くことができる。
【0028】
また、支持部40の位置を幅方向とは直交する方向において調整する調整部を有している。支持部40を水平方向に移動させることで、観測部60から見て曲面に対して真っ直ぐな方向、すなわち曲面に対して垂直な方向から観察することができる。
【0029】
次に、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1を使用したフィルムの欠陥検査について説明する。フィルムの欠陥検査を行う場合、検査員は、図4に示したように、検査対象50を支持部40に載置し、フィルムのシワがないように、検査対象50の両縁をマグネットテープ42a及び42bで挟持して固定する。そして、検査員は、照明装置10を点灯させ、観測部60を目視位置として、検査対象50の検査を行う。なお、支持部40には、貫通穴43が形成されている。このため、検査対象50が光を透過する部材であるときに、検査対象の欠陥の有無等を観察しやすい。
【0030】
図1に示したように、照明装置10を点灯させると、照明装置10からの照明光は、ハーフミラー30を反射して、検査対象50に到達する。そして、検査対象50からの反射光は、ハーフミラー30を透過して、観測部60に到達する。
【0031】
ここで、照明装置10とハーフミラー30との間には、遮光部20が設けられている。このため、照明装置10からの照明光のうち、遮光部20の位置にある照明は、遮光部20により遮光される。これにより、照明装置10からの照明がハーフミラー30を反射して検査対象50に当たると、遮光部20に対応する位置の部分は黒色となる。検査対象50に欠陥がなければ、遮光部20に対応する位置の部分は一様な黒色となる。これに対して、検査対象50に欠陥が生じていると、この欠陥により周辺の斜めからの光が散乱し、黒色部分の中に白色の部分が生じてくる。このことから、検査員は、観測部60から検査対象50を目視し、黒色部分の中にある白色部分の状態を見ることで、検査対象50の欠陥を検査することができる。
【0032】
検出できる欠陥は、図3における遮光部20の幅方向の長さW1、照明装置10の幅方向の長さW2、図5における観測部60から検査対象50までの距離Lに依存して決まる。例えば、遮光部20の幅方向の長さW1を3mmとし、観測部60から検査対象50までの距離Lを280mmとすると、黒色部分に見える角度の範囲は、(±0.3度(tan-1(W1/2/L))である。凹みの角度としては1/2となるため、黒色と見える凹みの角度は±0.15度である。また、照明装置10の幅方向の長さW2を40mmとすると、白色に見える範囲は、±4度(tan-1(W2/2/L))である。凹みの角度としては1/2となるため、白色と見える凹みの角度は±2度である。凹みの角度が±2度を超えた場合は、照明の幅以上となるため、黒く見える。
【0033】
また、本実施形態に係る検査治具1では、支持部40は、半径Rの円周に沿って湾曲している。これにより、広い範囲に渡って、検査対象50の欠陥を検査することができる。
【0034】
図6A及び図6Bは、本実施形態に係る検査治具1における欠陥検査の説明図である。前述したように、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1は、照明装置10からの照明光をハーフミラー30で反射させて検査対象50に照射するとともに、検査対象50からの反射光をハーフミラー30を透過させ、観測部60で観測するような、落射反射光学系の構成となっている。この場合、検査対象50が水平に直線的に支持されていると、ハーフミラー30の中心から垂線を下ろした位置に来る部分で、黒色部分が観測できる。すなわち、図6Aにおいて、ハーフミラー30の中心から垂線を下ろした位置に当たる位置Pbで、黒色部分を観測することで、欠陥が検出できる。
【0035】
図7Aは、検査対象50が直線的に支持されているときの欠陥の見え方を説明するための図である。図7Aにおいて、画像部分70は照明光により白色となる部分であり、黒色部分71は遮光部20により黒色となる部分である。キズによる欠陥があると、欠陥部分72に示すように、黒色部分71の幅の範囲に、白色の線として見える。黒色部分71の範囲は、遮光部20の幅(例えばW2=3mm)と同程度であるので、目視ではキズが見づらい。さらに、検査対象50となるフィルムに撓みがあると、黒色部分は歪んで見える。
【0036】
そこで、本実施形態では、支持部40を半径Rの円周に沿って湾曲させている。図6Bに示すように、支持部40を半径Rの円周に沿って湾曲させることで、位置Pa及び位置Pcの範囲において、照明装置10からハーフミラー30で反射された照明は、検査対象50に対して垂直に当たる。このことから、黒色に見える部分が位置Paから位置Pcの範囲に渡って広くなり、検査対象50の欠陥の検査を容易とすることができる。例えば、図6Bにおいて、θ=5度の場合、観測部60から検査対象50までの半径Rを280mmとすると、位置Aから位置Cの距離は、(280×2×tan5度=49.0mm)となる。また、支持部40を、矢印A1で示すように、観測部60を中心として移動させることで(例えば±10度程度)、更に広い範囲に渡り、検査対象50の欠陥を目視検査することができる。
【0037】
図7Bは、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1における欠陥の見え方を説明するための図である。上述のように、本実施形態に係る検査治具1では、支持部40を半径Rの円周に沿って湾曲させることで、黒色に見える部分の幅を広げることができる。黒色部分の幅は、検査対象50の状態で異なる。図7Bでは、黒色に見える部分は50mm程度である。
【0038】
欠陥部分81~85は、キズを付けたものである。フィルムのキズは、JIS(Japanese Industrial Standards)規格の鉛筆硬度のように、異なる荷重で被検体に故意に付けたキズを対象とする。付いたキズは、表面が滑らかな線状凹みでも、表面が荒れたキズでも良い。キズによる欠陥が検出できれば、欠陥部分81~85では、黒色部分に白線が見える。周辺の白色部分80は、キズではないが、検査対象50となるフィルムの撓みより白く見えている。キズの強さは5ランクとし、欠陥部分81が最も荷重が小さく、欠陥部分82、欠陥部分83、欠陥部分84、欠陥部分85の順に大きい荷重で付けたキズである。
【0039】
図7Bに示すように、欠陥部分81から欠陥部分85まで、白線として欠陥が見える。欠陥部分81の白線は目視で検出できる最低限である。キズの明るさは、最も荷重が小さい欠陥部分81が最も暗く、以下、荷重が大きくなるに従って、欠陥部分82、欠陥部分83、欠陥部分84、欠陥部分85の順に、明るくなっていく。
【0040】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る検査治具1では、照明装置10からの照明光をハーフミラー30で反射させて検査対象50に照射するとともに、検査対象50からの反射光をハーフミラー30を透過させ、観測部60で観測するような、落射反射光学系の構成で、照明装置10とハーフミラー30との間の遮光部20による黒色部分を観察して欠陥を検出している。そして、支持部40を半径Rの円周に沿って湾曲させることで、黒色に見える部分の幅を広げている。これにより、検査員の熟練度に依存せず、検査対象の欠陥を容易に検出することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る検査治具の説明図である。前述の第1の実施形態では、検査員が観測部60から検査対象50の状態を目視により観察し、検査対象50の欠陥を検査している。これに対して、この実施形態では、観測部60の位置に撮像装置90を固定し、撮像装置90の撮像画像から検査対象50の状態を観察し、検査対象50の欠陥を検出できるようにしている。なお、撮像装置90としては、汎用のカメラやスマートフォンのような携帯端末を用いることができる。
【0042】
目視検査の場合には、検査対象50の欠陥の検出は検査員の熟練度に依存する。観測部60の位置に撮像装置90を設置することで、撮像装置90によって検査内容を撮像することができ、この撮像画像から、肉眼ではなく、撮像画像から検査対象50の欠陥を検出できるようになり、検査員の熟練度に依存せずに、欠陥の検出が行える。また、撮像画像を画像データとして保存することも可能となる。他の構成については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0043】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…照明装置、20…遮光部、30…ハーフミラー、40…支持部、50…検査対象
【要約】
【課題】検査員の熟練度に依存せず、フィルム等の欠陥を容易に検出できる検査治具を提供する。
【解決手段】照明光を出射する照明装置と、観察位置からみて、検査対象の幅方向とは直交する方向において凹形状であり、観察位置からの距離を半径とした曲面となるように検査対象を支持する支持部と、照明光を検査対象に対して反射させ、反射された光を観察位置に対して透過させる光学部材と、照明装置と光学部材との間に配置され、出射される照明光を、検査対象の幅方向に沿う方向において遮光する遮光部とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10